説明

透明樹脂組成物および光半導体装置

【課題】透明性および熱履歴を受けた後の透明性、耐熱性、信頼性に優れる、特に光半導体装置封止用として好ましい樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)(メタ)アクリル変性シリコーン化合物、(B)カーボネート基を有する(メタ)アクリル樹脂および(C)硬化触媒を必須成分とし、成分(A)と成分(B)の合計量100質量部中、前記成分(A)を20〜95質量部の割合で含有し、かつ、前記成分(B)を5〜80質量部の割合で含有することを特徴とする透明樹脂組成物および同組成物を硬化させることにより封止してなる光半導体装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLED、フォトトランジスタ、フォトダイオード、CCD等の光半導体等の封止用樹脂組成物およびレンズなど透明な成形品に関する。さらに詳しくは、適正範囲の弾性率、Tgを有し、又は耐紫外線や耐熱劣化性を有する、透明樹脂組成物およびそれを使用して封止された光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光半導体はそれを外部環境から保護するために透明樹脂で封止されているが、光半導体素子の封止に用いられる透明樹脂には、透明性、耐湿性、耐熱性が求められるため、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂が用いられている(例えば、特許文献1〜3参照)。また、レンズなど透明樹脂を用いた成形品では、もともとアクリル樹脂が使用されているが、近年耐リフロー性を要求されるようになり、アクリル樹脂で寸法安定性、耐熱性に優れていることが求められるようになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−307087号公報
【特許文献2】WO2007/129536号パンフレット
【特許文献3】特表2008-537968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
耐熱性を向上させるためにはシリコーン骨格の導入が好ましいが、寸法安定性を求めるとエポキシ樹脂やアクリル樹脂のような有機材料やシリカなど無機充填剤を配合することが好ましい。しかしながら、紫外線照射される環境で透明性を維持するために、エポキシ樹脂よりアクリル樹脂が好ましい。
また、エポキシ樹脂を酸無水物で硬化させる系では酸無水物の揮発も多い上、アクリル樹脂との併用ではエポキシ樹脂とアクリル樹脂双方とも反応しづらくなるため、エポキシ樹脂をカチオン硬化させることが好ましい。
本発明はこのような従来の事情に対処するためになされたもので、透明性および耐熱性、信頼性に優れる、特に光半導体装置封止用として好ましい樹脂組成物およびその硬化物で封止された光半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記の目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、(メタ)アクリル変性シリコーン化合物とカーボネート基を有する(メタ)アクリル樹脂および硬化触媒を必須成分とすることにより、透明性、耐熱性、信頼性に優れる、特に光半導体装置封止用として好ましい透明樹脂組成物および光半導体装置が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
また、オキセタン基を有する(メタ)アクリル樹脂やグリシジル基と炭素−炭素二重結合を有する化合物や無機充填剤を配合することにより、さらに耐熱信頼性、基板との接着性、低収縮性の向上を図ることができる。
すなわち、本発明は、下記
(1)(A)(メタ)アクリル変性シリコーン化合物、(B)カーボネート基を有する(メタ)アクリル樹脂および(C)硬化触媒を必須成分とし、成分(A)と成分(B)の合計量100質量部中、前記成分(A)を20〜95質量部の割合で含有し、かつ、前記成分(B)を5〜80質量部の割合で含有することを特徴とする透明樹脂組成物、
(2)成分(C)の含有量が成分(A)と成分(B)の合計量100質量部に対して0.1〜1質量部である上記(1)に記載の透明樹脂組成物、
(3)さらに(D)オキセタン基を有する(メタ)アクリル樹脂を前記成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して10〜70質量部含有する上記(1)または(2)に記載の透明樹脂組成物、
(4)さらに(E)グリシジル基と炭素−炭素二重結合を有する化合物を成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して10〜50質量部含有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の透明樹脂組成物および
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の透明樹脂組成物を硬化させることにより封止してなる光半導体装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、透明性および熱履歴を受けた後の透明性、耐熱性、信頼性に優れる、特に光半導体装置封止用として好ましい樹脂組成物およびその硬化物で封止された光半導体装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、成分(A)について説明する。
本発明で用いられる成分(A)の(メタ)アクリル変性シリコーン化合物は、(メタ)アクリル基が、シリコーン骨格の側鎖や末端など、どの位置に導入されていても構わない。具体例として、信越化学工業製X−22−164(シリコーン骨格がメタクリルエステル位置に導入されている。官能基当量190)、X−22−164As(シリコーン骨格がメタクリルエステル位置に導入されている。当量450)、X−22−164A(シリコーン骨格がメタクリルエステル位置に導入されている。官能基当量860)等が使用できる。
その他の例としては、(メタ)アクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、[(メタ)アクリルオキシプロピル]メチルシロキサン、[(メタ)アクリルオキシプロピル]メチルシロキサンとジメチルシロキサンの共重合体等が用いられる。なお、前記化合物の(メタ)アクリル基の末端にメチル基が導入されているものも使用できる。1分子中の官能基数は2つ以上が好ましいが官能基数が1つのものでもかまわない。
官能基当量は100〜1000が好ましい範囲であり、この範囲であれば、得られた透明樹脂組成物のタック性および硬化物の耐熱性が良好になる。
本発明の透明樹脂組成物における成分(A)の割合は、成分(A)と成分(B)の合計量100質量部中20〜95質量部であることが必須であり、50〜95質量部であることが好ましい。
成分(A)の割合が20質量部未満であると得られた透明樹脂組成物またはその硬化物の耐熱性が低下する。また95質量部を超えると硬化物にクラックや剥離を生ずる。
【0008】
次に、成分(B)について説明する。
成分(B)のカーボネート基を有する(メタ)アクリル樹脂としては、得られた透明樹脂組成物の硬化物が無色透明で変色し難いものであれば、どのようなカーボネート基を有する(メタ)アクリル樹脂を単独もしくは併用してもよい。具体例として、宇部興産(株)製UM−90(1/3)DM〔シクロヘキサン基を骨格に有するメタクリルオリゴマーと直鎖アルキル基を有するメタクリルオリゴマーを1:3で共重合したもの〕、UM−90(3/1)DM〔シクロヘキサン基を骨格に有するメタクリルオリゴマーと直鎖アルキル基を有するメタクリルオリゴマーを3:1で共重合したもの〕が挙げられる。
カーボネート基を有する(メタ)アクリル樹脂のその他の例としては、カーボネート基とアルキル基を骨格に有する(メタ)アクリルオリゴマー、前記アルキル基に代えてシクロアルキル基、複素環を導入したものも使用できるが、耐紫外線性を有するためには芳香環、アミノ基、チオール基を有する化合物は好ましくない。
さらに、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ブチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートおよびポリエチレングリコールジグリシジルエーテルから選ばれる少くとも1種と二酸化炭素とを反応させて得られた5員環環状カーボネート基含有アクリルモノマーを重合して得られる樹脂が挙げられる。
本発明の透明樹脂組成物中の成分(B)の割合は、成分(A)と成分(B)の合計量100質量部中5〜80質量部であることが必須であり、5〜50質量部であることが好ましい。
成分(B)の割合が5質量部未満であると硬化物にクラックや剥離を生ずる。また80質量部を超えると得られた透明樹脂組成物またはその硬化の物耐熱性が低下する。
【0009】
次に、成分(C)について説明する。
成分(C)の硬化触媒としては、熱硬化型の触媒でも光硬化型の触媒でも構わない。例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾフェノン、アセトフェノン等が挙げられる。また、トリアルキルスルホニウム塩やトリアリールスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩などが挙げられ、単独もしくは2種類以上を併用してもよい。
本発明の透明樹脂組成物中の成分(C)である硬化触媒の割合は、成分(A)と成分(B)の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1〜1質量部である。成分(C)の割合が0.1質量部未満であると硬化が不十分となるおそれがある。また1質量部を超えると、耐熱性、成形作業性および硬化物の電気特性が悪くなり好ましくない。
【0010】
次に、成分(D)について説明する。
本発明の透明樹脂組成物中の成分(D)のオキセタン基を有する(メタ)アクリル樹脂はオキセタン基と(メタ)アクリル基の間の構造は硬化物が無色透明で変色し難いものであれば、どのようなオキセタン基を有する(メタ)アクリル樹脂を単独もしくは併用してもよい。具体例としては宇部興産製OXMA〔オキセタン基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体〕等が使用できる。
また、この成分(D)の割合は、成分(A)と成分(B)の合計量100質量部に対して10〜70質量部であることが好ましく、より好ましくは10〜40質量部である。
成分(D)の割合が10質量部未満であると接着性の向上や信頼性向上があまり見られない。成分(D)の割合が70質量部を超えると硬化性が悪くなり、表面未硬化によるタック性が残り、汚れやすい。しかも作業性が悪い。また、未硬化部分が多いと本発明の透明樹脂組成物で封止された半導体装置の信頼性や耐候性が悪くなる。
【0011】
次に、成分(E)について説明する。
本発明の透明樹脂組成物中の成分(E)のグリシジル基と炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、グリシジル基と(メタ)アクリル基を有するものでも、グリシジル基とエチレン基やブタジエン基などのアルケニル基を有するものでも硬化物が無色透明で変色し難いものであれば、どのようなグリシジル基と炭素−炭素二重結合を有する化合物を単独もしくは併用して用いてもよい。具体例としては、グリシジルメタクリレート、エポキシ化ポリブタジエン(アデカ製、BF−1000)等が挙げられる。
ここで、成分(E)の割合は、成分(A)と成分(B)の合計量100質量部に対して10〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは10〜30質量部である。
成分(E)の割合が10質量部未満であると接着性の向上や信頼性の向上があまり見られない。成分(E)の割合が50質量部を超えると本発明の透明樹脂組成物で封止された半導体装置の耐紫外線性が低下したり、もろくなるので好ましくない。
【0012】
本発明には、目的に反しない限り、無機充填剤を配合することができる。無機充填剤は、分散させたときに着色させないものであればどのような無機充填剤でも構わないが、より好ましくは、平均一次粒子径が5〜40nm程度の無機充填剤であり、単独もしくは併用してもよい。例えば、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニア、酸化亜鉛、酸化バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミ等が挙げられ、これらは、単独または2種以上混合して用いることができる。
この無機充填剤の平均一次粒子径は、例えばレーザー回折散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製、装置名:LA−920)を用いて測定することができる。
また、この無機充填剤の割合は、成分(A)と成分(B)の合計量100質量部に対して1〜60質量部となる範囲が好ましく、10〜50質量部となる範囲がより好ましい。無機充填剤の割合が10質量部未満では、硬化物の耐熱性、寸法安定性、機械的強度を十分に向上させることができず、また、60質量部を超えると、十分に分散させることが困難になり、成形性(流動性)や硬化物の耐熱性、機械的強度、寸法安定性等が低下する。
無機充填剤の配合は、これを上記樹脂に分散させる場合は常温あるいは加熱混合、あるいは均一分散に特に有効な方法としては遊星式撹拌装置や三本ロールの使用が好ましい。
【0013】
また、本発明の透明樹脂組成物には本発明の目的に反しない限り、上述以外の(メタ)アクリル樹脂、エポキシ化合物、オキセタン化合物、カップリング剤、酸化防止剤、離型剤等を使用することができる。
(メタ)アクリル樹脂としては一官能または二官能以上の(メタ)アクリル化合物、環状基を有する(メタ)アクリル化合物または共重合体が挙げられる。具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の重合体または共重合体が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
エポキシ化合物としては、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、多官能型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、各種ノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
オキセタン化合物としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、2−エチルヘキシルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタニルメタクリレート、ビス[(1−エチル(3−オキセタニルメチルエーテル))]など一官能、二官能以上のオキセタン化合物等が挙げられる。
酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−ヒドロトルエン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール等のフェノール系酸化防止剤、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト等のリン系酸化防止剤、ジフェニルアミン等のアミン系酸防止剤等が挙げられる。
カップリング剤としては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤や、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート等のチタネート系カップリング剤等が挙げられる。
【0014】
なお、上記無機充填剤と他の成分との混合には、加熱混合など、通常の撹拌方法を用いることができる。
【0015】
本発明の光半導体装置は、上記の透明樹脂組成物を用いて各種の光半導体素子を封止することにより製造することができる。封止可能な光半導体素子としては、LED、フォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトサイリスタ、フォトコンダクタ等が例示される。
封止方法あるいは成形方法としては、LIM成形法(液状樹脂射出成形法)、圧縮成形法、注型法等が適用可能である。本発明の樹脂組成物を加熱して硬化させ、最終的にその硬化物によって封止された光半導体装置が得られる。
本発明の透明樹脂組成物を加熱硬化させる際の温度は、100〜170℃程度、好ましくは120〜150℃である。
このようにして得られた光半導体装置における硬化物は、優れた透明性を有し、加熱履歴を受けた後も透明性を示すとともに、温度サイクル試験〔TCT(Thermo Cycle Test)〕においても高い信頼性等を有している。
【実施例】
【0016】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例および比較例において「部」は「質量部」を表わす。
【0017】
[実施例1]
成分(A)の(メタ)アクリル変性シリコーン化合物として、メタクリル変性シリコーン樹脂〔信越化学工業社製、商品名 X−22−164〕90質量部および成分(B)のカーボネート基を有する(メタ)アクリル樹脂として、カーボネート基を有するメタクリル樹脂[宇部興産(株)製、商品名:UM−90(1/3)DM〕10質量部、成分(C)の硬化触媒として、ジクミルパーオキサイド[日本油脂(株)製、商品名:パークミルD]0.1質量部をフラスコを用いて25℃で混合して液状の透明樹脂組成物を得た。
【0018】
[実施例2〜10、比較例1〜4]
樹脂組成を表1記載のものとした以外は、実施例1と同様の手順によって液状の透明樹脂組成物を得た。
【0019】
<半導体装置の作製>
実施例1〜12および比較例1〜4で得られた透明樹脂組成物をLED(発光素子)のSMD(表面実装ディバイス)の枠に注型し、100℃で2時間、150℃で2時間加熱硬化させ透明樹脂組成物で封止された半導体装置を作製した。
【0020】
<評価項目>
[タック性]
成形品に金属粉を散布し空気を吹き付けて金属粉を除去し、除去できるか否かで下記の基準で判定した。
○:除去できる。
×:除去できない。
【0021】
[透明性]
透明樹脂組成物を100℃で2時間、150℃で2時間の条件で加熱成形し、20mm×20mm×1mmの試験片を作製した。この試験片について、日本分光社製の分光光度計(V−570)を用いて波長460nmの光透過率(%)を測定した。
【0022】
[常温弾性率、Tg]
透明樹脂組成物を100℃で2時間、150℃で2時間の条件で加熱成形して48mm×5mm×2mmの試験片を作製した。この試験片について、セイコー社製の動的粘弾性測定装置(DMS110)を用いて測定した。
【0023】
[耐熱性]
透明樹脂組成物を100℃で2時間、150℃で2時間加熱成形し、20mm×20mm×1mmの試験片を得た。この試験片を150℃で168時間放置しておき、分光光度計〔日本分光(株)製、V−570〕を用いて波長460nmの光透過率を測定し、以下の基準で評価した(BaSO4標準板を100%とする)。
◎:透過率に対して85%以上のもの
○:80%以上、85%未満のもの
△:75%以上、80%未満のもの
×:75%未満のもの
【0024】
[TCT]
LED(発光素子)のSMDの枠に透明樹脂組成物を注型して、100℃で2時間、150℃で2時間加熱成形し、気相で−40℃(30分)→室温(5分)→120℃(30分)→室温(5分)の温度サイクルを100サイクル繰り返し、クラックや剥離のNG数を数えた。
【0025】
【表1】

【0026】
表1から明らかなように、実施例ではいずれもTCT、タック性に関しては良好であった。また、オキセタニルメタクリレートやグリシジルメタクリレートを併用することにより耐熱性が向上している。これに対し、(メタ)アクリル変性シリコーン化合物あるいはカーボネート基を有する(メタ)アクリル樹脂を単独で用いた比較例1、2では、温度サイクル試験でクラックや剥離が生じた。比較例3、4のように、従来用いられている汎用のエポキシ変性シリコーン化合物やシリコーンゴムを用いたものでは各種特性が劣った。
【0027】
実施例および比較例で使用した成分(A)〜(F)は以下の通りである。
<成分(A)―(メタ)アクリル変性シリコーン化合物>
(1)X−22‐164:信越化学工業(株)製のメタクリル変性シリコーン樹脂(官能基当量190)
(2)X−22‐164As:信越化学工業(株)製のメタクリル変性シリコーン樹脂(官能基当量450)
(3)X−22‐164A:信越化学工業(株)製のメタクリル変性シリコーン樹脂(官能基当量860)
<成分(B)―カーボネート基を有する(メタ)アクリル樹脂>
(1)UM−90(1/3)DM:宇部興産(株)製のカーボネート基を有するメタクリルオリゴマー共重合体(シクロヘキサン基を有するメタクリルオリゴマー/直鎖アルキル基を有するオリゴマー=1/3で共重合したもの)
(2)UM−90(3/1)DM:宇部興産(株)製のカーボネート基を有するメタクリルオリゴマー共重合体(シクロヘキサン基を有するメタクリルオリゴマー/直鎖アルキル基を有するメタクリルオリゴマー=3/1で共重合したもの)
<成分(C)―硬化触媒>
(1)パークミルD:日本油脂(株)製のジクミルパーオキサイド
(2)SI110L:三新化成(株)製のベンジルメチル−p−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファート:48.5質量%、γ−ブチロラクトン:50.4質量%−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムメチルサルフェート:1.5質量%の混合物
<成分(D)>
OXMA:宇部興産(株)製のオキセタニルメタクリレート(分子量184)
<成分(E)>
(1)GMA:関東化学(株)製のグリシジルメタクリレート(試薬グレード)
(2)BF−1000:ADEKA(株)製のエポキシ化ポリブタジエン[粘度366Pas(25℃)]
<比較用成分>
(1)X−22‐169As:信越化学工業(株)製のエポキシ変性シリコーンオイル(官能基当量500)
(2)MHPA:新日本理化(株)製のメチルヘキサヒドロフタル酸無水物
(3)YE5822:Momentive社製の液状シリコーンゴム
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の透明樹脂組成物は、各種光半導体素子、具体的にはフォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトサイリスタ、フォトコンダクタ等を硬化・封止するための樹脂として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(メタ)アクリル変性シリコーン化合物、(B)カーボネート基を有する(メタ)アクリル樹脂および(C)硬化触媒を必須成分とし、成分(A)と成分(B)の合計量100質量部中、前記成分(A)を20〜95質量部の割合で含有し、かつ、前記成分(B)を5〜80質量部の割合で含有することを特徴とする透明樹脂組成物。
【請求項2】
成分(C)の含有量が成分(A)と成分(B)の合計量100質量部に対して0.1〜1質量部である請求項1に記載の透明樹脂組成物。
【請求項3】
さらに(D)オキセタン基を有する(メタ)アクリル樹脂を前記成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して10〜70質量部含有する請求項1または2に記載の透明樹脂組成物。
【請求項4】
さらに(E)グリシジル基と炭素−炭素二重結合を有する化合物を成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して10〜50質量部含有する請求項1〜3のいずれかに記載の透明樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の透明樹脂組成物を硬化させることにより封止してなる光半導体装置。

【公開番号】特開2011−225779(P2011−225779A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99191(P2010−99191)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】