説明

透明樹脂組成物

【課題】安価で接着性が良好である変成シリコーン樹脂系透明樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 架橋可能な加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン重合体と、アミノ基を有機基として有する加水分解性シランと、スチレン樹脂およびキシレン樹脂の少なくとも一方と、を含有する透明樹脂組成物である。この樹脂組成物は優れた透明性を有し、かつ接着性が良好である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明樹脂組成物に関し、より詳しくは、硬化後透明な皮膜を有する湿気硬化性の変成シリコーン樹脂系樹脂組成物(変成シリコーン樹脂系湿気硬化性透明樹脂組成物)に関する。
【背景技術】
【0002】
変成シリコーン樹脂系湿気硬化性樹脂組成物は、主に接着剤やシーリング材の用途に用いられている。一般的に、変成シリコーン樹脂である加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン重合体に、補強等の目的で炭酸カルシウム、接着性付与の目的でアミノ基を有機基として有する加水分解性シラン、脱水剤、硬化触媒が、それぞれ添加された組成が知られている。ところが、この樹脂組成物は炭酸カルシウムのために、不透明となる。このように不透明であると、これを接着剤やシーリング材に用いた場合、例えば、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ガラスなどの透明な被着材の接着部やシーリング部や、接着体における接着はみ出し部が不透明となり、外観上美観を損ねることから好ましくない。
炭酸カルシウムによる不透明性を解決するために、炭酸カルシウムの代わりにシリカ微粉末を用いた樹脂組成物では、液状状態(硬化前)では透明であるが、硬化物はアミノ基含有シランのため白濁し、やはり透明性が著しく損なわれる。
【0003】
硬化物も透明な変成シリコーン樹脂系樹脂組成物にするためには、接着付与剤であるアミノ基含有シランを添加しない方法がある。しかし、この樹脂組成物は接着性が乏しいという欠点がある。このため、あらかじめ被着材の表面をプライマー等によって処理するなどの必要があり、作業工程が煩雑となる不都合がある。
【0004】
上記各欠点を解決する樹脂組成物として、例えば以下の特許文献1のような接着性が良好で且つ透明な変成シリコーン樹脂系樹脂組成物が提案されている。
即ち、特許文献1に開示された樹脂組成物は、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン重合体と、加水分解性シリル基を有するアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステル共重合体の混合物に、疎水性微粉末シリカおよびアミノ基を有するシランカップリング剤(アミノ基を有機として有する加水分解性シランと同義)を添加した組成物である。
【特許文献1】特許第3435351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、加水分解性シリル基を有するアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステル共重合体は高価であり、このため、これらを用いた接着剤やシーリング材も高価となってしまうという課題があった。
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意研究した結果、湿気硬化性樹脂成分として上記アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステル共重合体を使用せず、より安価に入手可能な加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン重合体のみを用いた場合に、優れた透明性を有し、かつ接着性が良好で安価な透明樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の透明樹脂組成物は、架橋可能な加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン重合体と、アミノ基を有機基として有する加水分解可能なシランと、スチレン樹脂およびキシレン樹脂の少なくとも一方と、を含有してなることを特徴とする。
【0008】
また、上記樹脂組成物に、シリカ微粉末を配合することにより、硬化物に補強効果を与えられ、硬化物の凝集力を上げることができる。
【0009】
さらに、上記シリカ微粉末が疎水性基によって表面処理されていることにより、高粘度化を抑えることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって得られる樹脂組成物は、優れた透明性を有し、かつ接着性が良好である。そして、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン重合体のみを湿気硬化性樹脂成分として用いることで、加水分解性シリル基を有するアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステル共重合体を用いた場合に比べて安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明に係る実施形態について説明する。
まず、本発明に使用される、架橋可能な加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン重合体(A)の分子骨格であるポリオキシアルキレン重合体部分は、基本的に化学式1、即ち「化1」に示される。
【0012】
【化1】

【0013】
上記した「化1」において、Rは2価の有機基である。特に炭素数3〜4の炭化水素基であると好ましい。例えば、メチルエテニル基、エチルエテニル基、イソブチレニル基、ブテニル基等が挙げられる。この分子骨格は、1種のみの繰り返し単位でも、2種以上の繰り返し単位でもよい。特に、Rがメチルエテニル基であるポリオキシプロピレン骨格が好ましい。
【0014】
また、重合体A中の加水分解性シリル基は、化学式2、即ち「化2」に示される。
【0015】
【化2】

【0016】
上記した「化2」において、Rは炭素数1〜20の置換または非置換の1価の有機基または、トリオルガノシロキシ基を表す。例えばメチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基、トリメチルシロキシ等のトリオルガノシロキシ基等が挙げられる。この中で、メチル基が特に好ましい。
また、Xは水酸基またはアルコキシ基等の加水分解性基を表す。具体的には例えば、水酸基、塩素等のハロゲン、メトキシ基などのアルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アミド基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等の置換基が挙げられる。特に、メトキシ基やエトキシ基が取扱の点より好ましい。aは0,1,または2、bは0,1,2,または3で、a=b=0をとらない整数をそれぞれ表す。nは0〜18の整数を表す。特に、経済性等の点からn=0、b=1,2,または3の整数がそれぞれ好ましい。
【0017】
上記重合体A中の加水分解性シリル基数は、平均で1個以上、さらには1.1個以上、特に1.5個以上が、また分子末端に存在することが硬化性の点より好ましい。また、上記重合体Aの数平均分子量は、500〜30,000が好ましい。
上記重合体Aは、例えば特開昭63−112642号に示された、公知の方法で製造することができる。また、上記重合体Aは、具体的には例えば、株式会社カネカ製の商品、MSポリマー(登録商標)、サイリル(登録商標)や、旭硝子株式会社製の商品、エクセスター(登録商標)等が市販されており、これらを使用できる。
【0018】
一方、本発明において使用される、アミノ基を有機基として有する加水分解性シラン(B)は、化学式3、即ち「化3」に示される。
【0019】
【化3】

【0020】
上記した「化3」において、RおよびRは水素または有機基を表す。有機基としては、例えばメチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基、アミノエチル基等の置換基を有するアルキル基等が挙げられる。RおよびRは同一でも異なっていてもよい。Rは2価の有機基である。RおよびXは化2中のRおよびXと同様である。nは1,2,または3を表す。この加水分解性シランとして、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(R=R=H,R=CHCHCH,X=OCH,n=3)およびN−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(R=H,R=HNCHCH,R=CHCHCH,X=OCH,n=3)等が挙げられる。
このシランBの添加量は、重合体A100重量部に対し、0.1〜50重量部が、さらに1〜10重量部が好ましい。
【0021】
さらに、本発明に使用されるスチレン樹脂(C)は、スチレン、α−メチルスチレンのようなα位が置換されたスチレン、ビニルトルエンのようなベンゼン環が置換されたスチレン等の、スチレン類似体および同族体を、単独もしくは複数を重合させたもの、および、これらスチレン、スチレン類似体および同族体に、脂肪族石油樹脂、脂環族石油樹脂、芳香族石油樹脂などを共重合させたものをあげることができる。このスチレン系樹脂は、市販されているものから、適宜選択して使用することができる。
【0022】
本発明に使用されるキシレン樹脂(D)は、キシレンとホルムアルデヒドの反応物や、メシチレンとホルムアルデヒドの反応物、キシレンとフェノールとホルムアルデヒドの反応物等が挙げられる。このキシレン樹脂は市販されているものから、適宜選択して使用できる。
上記スチレン樹脂Cおよびキシレン樹脂Dは、それぞれ単独でも複数種類添加してもよく、またスチレン樹脂Cとキシレン樹脂Dを併用してもよい。
このスチレン樹脂Cおよびキシレン樹脂Dの添加量は、上記重合体A100重量部に対し、スチレン樹脂Cおよびキシレン樹脂Dの合計で1〜500重量部が、さらに5〜100重量部が好ましい。
【0023】
また、本発明に使用されるシリカ微粉末(E)としては、ヒュームドシリカやシリカエアロゲル等が挙げられる。また、このシリカ微粉末Eは、全てまたは一部が疎水性基で表面処理されていてもよい。シリカ微粉末の表面が疎水性基で処理されていると、高粘度化が抑えられる。
疎水性基で表面処理されたシリカ微粉末としては、表面無処理のシリカ微粉末を有機ケイ素化合物で処理した物が挙げられる。有機ケイ素化合物として、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルシロキサン、トリメトキシオクチルシラン等が挙げられる。なお、無処理のシリカ微粉末および表面処理されたシリカ微粉末を併用することもできる。
このシリカ微粉末Eの添加量は、上記重合体A100重量部に対し、0.1〜100重量部が、さらに1〜30重量部が好ましい。
【0024】
また、本発明の透明樹脂組成物には、その他、例えば、硬化触媒、希釈剤、脱水剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、アミノ基を有機基として有する以外のシランカップリング剤等の公知の添加剤を添加することができる。
【0025】
上記硬化触媒としては、例えば有機スズ、無機スズ、有機チタネート、アミン、リン酸エステル、リン酸エステルとアミンの反応物、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物等の公知の変成シリコーン樹脂用硬化触媒が使用できる。また、希釈剤としては、フタル酸エステル、ポリオキシアルキレン等の公知の希釈剤が使用できる。
さらに、脱水剤としては、ビニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、オルトケイ酸エステル、無水硫酸ナトリウム、ゼオライト等の公知の脱水剤が使用できる。さらにまた、シランカップリング剤としては、有機基にアミノ基以外のグリシジル基、メタクリロキシ基、メルカプト基等を有するシランカップリング剤が使用できる。
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
エクセスターS3430(加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン重合体のみの変成シリコーン樹脂:旭硝子株式会社製)を100g、FTR(登録商標)8080(スチレン系樹脂:三井化学株式会社製)を50g、自公転式撹拌機にて混練りしながら、120℃の下で減圧して脱水を行った。
【0027】
冷却後、エチルシリケート28(テトラエトキシシラン:コルコート株式会社製)を2g、KBM603(N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業株式会社製)を3g、No.918(ジブチルスズオキシドとフタル酸2−エチルヘキシルの反応物:三共有機合成化学株式会社製)を3g添加し、均一になるまで撹拌した後に取り出し、樹脂組成物を得た。
【実施例2】
【0028】
エクセスターS3430を100g、アエロジル(登録商標)300(シリカ微粉末:日本アエロジル工業株式会社製)を5g、FTR8080を10g、自公転式撹拌機にて混練りしながら、120℃下減圧し脱水を行った。冷却後、エチルシリケート28を2g、KBM603を3g、No.918を3g添加した。均一になるまで撹拌した後に取り出し、樹脂組成物を得た。
【実施例3】
【0029】
エクセスターS3430を100g、アエロジルR972(疎水性基にて表面処理されたシリカ微粉末:日本アエロジル工業株式会社製)を10g、FTR8080を10g、自公転式撹拌機にて混練りしながら、120℃の下で減圧して脱水を行った。冷却後、エチルシリケート28を2g、KBM603を3g、No.918を3g添加した。均一になるまで撹拌した後に取り出し、樹脂組成物を得た。
【実施例4】
【0030】
エクセスターS3430を100g、アエロジルR972を10g、ニカノール(登録商標)Y1000(キシレン樹脂:三菱瓦斯化学株式会社製)を10g、自公転式撹拌機にて混練りしながら、120℃の下で減圧して脱水を行った。冷却後、エチルシリケート28を2g、KBM603を3g、No.918を3g添加した。均一になるまで撹拌した後に取り出し、樹脂組成物を得た。
【実施例5】
【0031】
エクセスターS3430を100g、アエロジルR972を10g、FTR8080を5g、ニカノールY1000を5g、自公転式撹拌機にて混練りしながら、120℃の下で減圧して脱水を行った。冷却後、エチルシリケート28を2g、KBM603を3g、No.918を3g添加した。均一になるまで撹拌した後に取り出し、樹脂組成物を得た。
【0032】
エクセスターS3430を100g、アエロジルR972を10g、自公転式撹拌機にて混練りしながら、120℃下減圧し脱水を行った。冷却後、エチルシリケート28を2g、KBM603を3g、No.918を3g添加した。均一になるまで撹拌した後に取り出し、樹脂組成物を得た(表2における「比較例1」に示す)。
【0033】
エクセスターS3430を100g、アエロジルR972を10g、自公転式撹拌機にて混練りしながら、120℃下減圧し脱水を行った。冷却後、エチルシリケート28を2g、No.918を3g添加した。均一になるまで撹拌した後に取り出し、樹脂組成物を得た(表2における「比較例2」に示す)。
【0034】
エクセスターS3430を100g、アエロジルR972を10g、FTR8080を10g、自公転式撹拌機にて混練りしながら、120℃の下で減圧して脱水を行った。冷却後、エチルシリケート28を2g、No.918を3g添加した。均一になるまで撹拌した後に取り出し、樹脂組成物を得た(表2における「比較例3」に示す)。
【0035】
上記で得られた各樹脂組成物について、透明性の確認および接着性の確認を以下の手順で行った。
即ち、透明性の確認は、上記で得られた樹脂組成物にてガラス板相互を接着し、硬化後、目視によって行った。また、接着性の確認は、次のように行った。幅25mm、長さ50mmの硬質ポリ塩化ビニル板を幅25mm、長さ12.5mmの接着面積になるように、相互に接着した。室温下にて7日間養生後、引張り速度を50mm/分として、引張りせん断強さを測定し、接着性の確認とした。
【0036】
上記各確認の結果を「表1」および「表2」に示した。なお、透明性において、○は透明、Xは不透明を表す。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
「実施例1〜5」より得られた樹脂組成物は、いずれも優れた透明性を有しており、良好な接着性を示した。スチレン樹脂およびキシレン樹脂を添加していない「比較例1」では、接着性は良好であったが、不透明であった。アミノ基含有シランを添加していない「比較例2〜3」は、透明性は良好であったが、接着性は乏しかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋可能な加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン重合体と、アミノ基を有機基として有する加水分解可能なシランと、スチレン樹脂およびキシレン樹脂の少なくとも一方と、を含有してなることを特徴とする透明樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリオキシアルキレン重合体100重量部に対して、前記アミノ基を有機基として有する加水分解可能なシランを0.1〜50重量部含有する、ことを特徴とする請求項1に記載の透明樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリオキシアルキレン重合体100重量部に対して、前記スチレン樹脂と前記キシレン樹脂とが合計で1〜500重量部含有されている、ことを特徴とする請求項1に記載の透明樹脂組成物。
【請求項4】
シリカ微粉末をさらに含有してなる、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載の透明樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリオキシアルキレン重合体100重量部に対して、前記シリカ微粉末を、0.1〜100重量部含有してなる、ことを特徴とする請求項4に記載の透明樹脂組成物。
【請求項6】
前記シリカ微粉末の少なくとも一部が、疎水性基によって表面処理されている、ことを特徴とする請求項4または5に記載の透明樹脂組成物。

【公開番号】特開2008−115255(P2008−115255A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−298860(P2006−298860)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(000111384)ノガワケミカル株式会社 (6)
【Fターム(参考)】