説明

透明液体肥料の製造方法

【課題】 安価で透明安定性に優れた主成分として硝酸マグネシウムおよび硝酸カルシウムを含有する透明液体肥料の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の主成分として硝酸マグネシウムおよび硝酸カルシウムを含有する透明液体肥料の製造方法は、ドロマイトを水に添加して攪拌混合しながら硝酸を添加して中和し、硝酸マグネシウムおよび硝酸カルシウムを生成させ、次いで加里成分となる化合物、窒素成分となる化合物および微量要素成分となる化合物からなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物を添加、溶解させた後、40〜80℃の温度条件下に高分子凝集剤を添加、混合し、静置して不溶解分を沈降分離することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主成分として硝酸マグネシウムおよび硝酸カルシウムを含有する透明液体肥料の製造方法に関する。詳しくはドロマイトを使用し、透明安定性に優れた、主成分として硝酸マグネシウムおよび硝酸カルシウムを含有する透明液体肥料を安価に製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硝酸マグネシウムおよび硝酸カルシウムを含有する透明液体肥料は、一般に窒素成分となる化合物としてアンモニア、炭酸アンモニウム、硝酸、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸マグネシウム等を、マグネシウム成分となる化合物として水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム等を、カルシウム成分となる化合物として水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム等の工業用薬品を使用して、所望する品種に応じて適量を水に溶解させ、これを濾過し、不溶解分を除去することにより製造されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特公平5―77639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような方法によって得られる主成分として硝酸マグネシウムおよび硝酸カルシウムを含有する透明液体肥料は、マグネシウム成分およびカルシウム成分となる原料として工業用薬品を使用するため高価になる欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、主成分として硝酸マグネシウムおよび硝酸カルシウムを含有する透明液体肥料の製造方法について鋭意検討した結果、マグネシウム成分およびカルシウム成分となる原料として安価な天然に産するドロマイト(主成分が炭酸マグネシウムと炭酸カルシウムの混合物)を使用し、硝酸を用いて中和反応を行い、高分子凝集剤を添加して不溶解分を沈降除去することによって、安価で透明安定性に優れた、主成分として硝酸マグネシウムおよび硝酸カルシウムを含有する透明液体肥料を製造することができることを見出し、本発明に至った。
【0005】
すなわち、主成分として硝酸マグネシウムおよび硝酸カルシウムを含有する透明液体肥料の製造方法において、ドロマイトを水に添加して攪拌混合しながら硝酸を添加して中和し、硝酸マグネシウムおよび硝酸カルシウムを生成させ、次いで加里成分となる化合物、窒素成分となる化合物および微量要素成分となる化合物からなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物を添加、溶解させた後、40〜80℃の温度条件下に高分子凝集剤を添加、混合し、静置して不溶解分を沈降分離することを特徴とする透明液体肥料の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の方法に得られる透明液体肥料は、原料として安価な天然産のドロマイトを使用するため、従来品に比べて極めて安価であり、また、透明度が高く、かつ透明安定性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明において、肥料原料として、通常、工業用として市販されている天然産のドロマイト(主成分が炭酸マグネシウムと炭酸カルシウムの混合物)を使用する。
通常、撹拌機を有した反応槽に水を入れ、撹拌しながら、反応槽上部よりドロマイトを除々に添加する方法が採用される。添加方法はこれに制限されることはなく、当該分野で公知の方法が適用し得る。
ドロマイトの使用量は、所望する肥料品種の成分に応じて適宜調整される。
【0008】
次に得られたドロマイトの懸濁水溶液に硝酸を添加し、中和して硝酸マグネシウムおよび硝酸カルシウムを生成させる。硝酸の添加方法は特に制限されることはなく、当該分野で公知の方法が適用し得る。一般的には、反応槽上部より除々に添加する方法が採られる。
使用する硝酸は純粋である必要はなく、通常、工業用として市販されている硝酸濃度62〜67.5%のものが使用されるが、これに限定されるものではない。添加量は前記ドロマイトを中和するに必要な量が添加される。
【0009】
次に得られた溶液に、加里成分となる化合物、窒素成分となる化合物および微量要素成分となる化合物からなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物を添加、溶解させる。
加里成分となる化合物としては、塩化加里、硫酸加里、硝酸加里、水酸化加里等が、窒素成分となる化合物としては、アンモニウム、水酸化アンモニウム、硝酸アンモニウム等が、微量要素成分となる化合物としては、EDTA鉄、EDTA亜鉛、EDTA銅、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸銅、塩化マンガン、硫酸マンガン、モリブデン酸アンモニウム、ホウ砂、ホウ酸等が挙げられる。
これらの使用量は、所望する肥料品種の成分に応じて適宜調整される。
【0010】
次に得られた溶液に、高分子凝集剤を添加、混合し、静置して不溶解分を沈降分離させる。
使用する高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド系のノニオン系、アニオン系、およびカチオン系が挙げられるが、中でもノニオン系が好ましい。
高分子凝集剤の添加時の反応物の温度は低過ぎると不溶解分の凝集効果が低く、また高過ぎてもそれに見合う効果は得られず、経済的に不利となるので、通常、約40〜80℃、好ましくは約60〜70℃に保持した状態で行なわれる。
添加量も少な過ぎると不溶解分の凝集効果が低く、また多過ぎてもそれに見合う効果は得られず、経済的に不利となるので、通常、製品の透明液体肥料に対して約2〜20ppm、好ましくは約5〜10ppmである。
添加方法は特に制限されることはなく、当該分野で公知の方法が適用し得る。一般的には前記同様に、反応槽上部より除々に添加する方法が採られる。この時、高分子凝集剤は水への溶解速度が遅いため、一般工業的に行なわれている約0.1〜0.2%の水溶液のものが使用される。
【0011】
高分子凝集剤を添加、混合した後、静置する時間は特に限定されるものではなく、通常、約12時間から3日間静置し、沈降した不溶解分を分離することによって、透明な液体肥料が得られる。
【実施例】
【0012】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
なお、実施例中の部および%は特記しない限り全て重量部および重量百分率を示す。
【0013】
実施例1
温度制御可能な撹拌機付き反応槽に水を4000kg仕込み、撹拌しながら反応槽上部より天然産のドロマイト(成分;炭酸マグネシウム:32.5%、炭酸カルシウム:64.2%)9000kgを約50kg/分の速度で添加し、次いで67.5%硝酸溶液17700kgを約10kg/分の速度で添加し、中和反応を行い、硝酸マグネシウムおよび硝酸カルシウムを生成させた。
次いで得られた溶液に、硝酸アンモニウム2240kgと塩化加里1150kgを約50kg/分の速度で添加し、溶解させた。約5時間撹拌して完全に溶解させた。
次いで、溶液の温度を65℃に保持しながら、ノニオン系ポリアクリルアミド(スミフロック(商標登録)FN―20H、住友化学株式会社製)の0.1%水溶液320kg(製品の透明液体肥料当り10ppm相当)を添加し、5分間混合させた。次いで、撹拌を停止し、48時間静置させ、不溶解分を分離して、上澄液(製品の透明液体肥料)約32000kgを得た。
【0014】
この透明液体肥料の各成分濃度は下記の通りであった。
0℃および40℃の恒温槽に6ケ月保存後も沈殿物および結晶物の析出は見られず、透明性は安定していた。
全窒素 10.27%
硝酸態窒素 9.10%
アンモニア態窒素 1.17%
水溶性KO 2.10%
水溶性MgO 4.11%
水溶性CaO 9.52%



【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分として硝酸マグネシウムおよび硝酸カルシウムを含有する透明液体肥料の製造方法において、ドロマイトを水に添加して攪拌混合しながら硝酸を添加して中和し、硝酸マグネシウムおよび硝酸カルシウムを生成させ、次いで加里成分となる化合物、窒素成分となる化合物および微量要素成分となる化合物からなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物を添加、溶解させた後、40〜80℃の温度条件下に高分子凝集剤を添加、混合し、静置して不溶解分を沈降分離することを特徴とする透明液体肥料の製造方法。
【請求項2】
高分子凝集剤がノニオン系ポリアクリルアミドであり、その添加量が得られる透明液体肥料に対して2〜20ppmである請求項1記載の透明液体肥料の製造方法。




【公開番号】特開2006−225175(P2006−225175A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37388(P2005−37388)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】