説明

透明液状光触媒

【課題】 超微粒子繊維状酸化チタンを衣服の繊維内に均一に単独分散して繊維へ強固に付着させ、粒子表面の露出度を大きくすると共に、極めて低い温度で乾燥して、繊維状酸化チタン超微粒子を衣服の繊維に強固に長期間固着させる。
【解決手段】
液状光触媒中の無機元素が半定量値において、少なくともTiが90〜97wt%、Siが2.3〜3.0wt%、Agが1.4〜2.2wt%、Znが0.2〜0.3wt%含み、前記液状光触媒中の有機元素が定量値において、少なくともCが55〜65wt%、Hが8〜12wt%、Nが0.2〜0.4wt%含み、酸化チタンが繊維状の超微粒子であり、平均繊維幅及び厚さが1〜50nm、平均繊維長さが10〜1000nm、平均アスペクト比が2〜100、比表面積が30m/g以上である透明液状光触媒とした。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、病院、老人ホーム、クリーニング店、食品加工工場、畜産施設、スポーツ施設等に設置して、特に衣服、白衣、トレーニング服等繊維製品の脱臭・殺菌を行うための透明液状光触媒に関するものである。
【発明の背景】
【0002】
近時、酸化チタンの光触媒作用を利用した脱臭及び殺菌機能を備えた各種製品が開発されている。これらの製品は、酸化チタン等の光触媒作用により、製品表面に付着した微生物や臭気物質が分解されることによる防菌、防臭する効果をねらったものである。この酸化チタンの光触媒作用は、酸化チタン粒子に紫外線を照射することにより、光触媒の表面に発生した正孔が、光触媒表面の吸着水と反応して、ラジカルOH(水酸基ラジカル)が生成され、このラジカルOHが有機物の分子結合を切断することにより、これが粒子表面へ拡散して周囲の有機物質へ酸化又は還元作用としてはたらくためと考えられている。
【0003】
酸化チタンは、その化学的特性を利用した用途が広く、例えば酸素と適当な結合力を有すると共に耐酸性を有するため、酸化還元触媒あるいは担体、紫外線の遮断力を利用した化粧材料またはプラスティックの表面コート剤、さらには高屈折を利用した反射防止コート剤、導電性を利用した帯電防止材として用いられたり、これら効果を組み合わせて機能性ハードコート材に用いられたり、さらに光触媒作用を使用した防菌剤、防汚剤、超親水性被膜などに用いられている。
【0004】
光触媒として使用される酸化チタンは無定型酸化チタンのみならず、アナタース型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン、ルチル型酸化チタン及びこれらの混晶体、共晶体などの結晶性の酸化チタンが好ましく、特にアナタース型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタンはバンドギャップが高いので広く利用されている。
【0005】
また、前記酸化チタン粒子及び酸化チタンと酸化チタン以外の酸化物からなる酸化チタン系複合酸化物粒子の水分散ゾルの濃度としては特に制限はないが、酸化物として5〜40重量%の範囲にあり、このような濃度範囲にあれば、ゾルは安定であり、アルカリ処理時に粒子が凝集することがなく、効率的に酸化チタン粒子を製造できることが知られている。
【0006】
また、このような光触媒作用を有する酸化チタン被膜は、製膜時に高温処理(150℃〜400℃以上)が必要であるため、耐熱性のないガラス、プラスティック、木材、繊維、布などへの製膜は困難である。このため、高温処理した酸化チタン粒子を用いて被膜形成用塗布液を調整し、この塗布液を基材上に塗布して被膜を形成することによって、比較的低温で硬化膜を形成することが試みられている。しかしながら、高温処理された酸化チタン粒子は一般に粒子径が大きく、屈折率が高いために被膜中での酸化チタン粒子による光の散乱が大きく、透明性にすぐれた酸化チタン被膜が得られない欠点がある。
【0007】
さらに、酸化チタン被膜の形成方法としては、酸化チタン塗布液を基材表面にスピナー法、バーコーター法、スプレー法、ディップ法、フレキソ法などで塗布した後、乾燥し、高温で過熱硬化することが知られている。
【背景技術】
【0008】
従来、例えば引用文献1(特開2000−288405号公報)には、「繊維状酸化チタンを造粒し多孔質粒子にしたことを特徴とする光触媒体、繊維状酸化チタン及び粒子状酸化チタンの混合物を造粒し多孔質粒子にしたことを特徴とする光触媒体」が提供されている。
【0009】
そして、該公報[0012]に「これらの繊維状酸化チタンの形状としては、平均繊維径0.05〜30μm、好ましくは0.1〜5μm、平均繊維長3〜500μm、好ましくは5〜200μm、平均アスペクト比3〜1000、好ましくは6〜200のものを例示できる」旨説明されている。
【0010】
しかしながら、この発明においては、造粒体を多孔質粒子として被処理物に対する接触面積を増大させ、高い光触媒活性が得られるようにしようとするものであるが、繊維径が粗く繊維長さが長いため、衣服の繊維に噴霧した場合に、ナノメートル単位の粒子でないため繊維内に充分に分散せず、繊維への付着力が弱い。また、ナノメートルの分散体でなく多孔質体であるので、酸化チタンの比表面積が制限され、粒子表面の露出割合が全体として極めて少なく、高い光触媒活性作用を得ることができない。
【0011】
また、引用文献2(特開2001−205099号公報)には、「二酸化チタン(TiO)を用いた光触媒において、該二酸化チタンは、空孔率が5〜90%である多孔質のチタン(Ti)合金を焼結することにより酸化して形成したアナターゼ型の二酸化チタンであることを特徴とする光触媒」が記載されている。
【0012】
そして、[0024]に「本発明の二酸化チタン触媒101・・・で1200〜1350℃で焼結することにより形成したチタン合金であり、チタン微粉末は20nm〜200μm程度の微粒子である」旨、また「このチタン合金は、その後800℃以下の酸化雰囲気中で酸化させることにより、・・・空孔率(又は気孔率)が5〜90%であるアナターゼ型の多孔質の二酸化チタン合金となる」旨説明されている。
【0013】
しかしながら、この発明においては、空孔率5〜90%の多孔質チタン合金であり、繊維状でないか、または繊維をメッシュ状に織り込んだ織物を焼成したものであり、衣服に噴霧した場合に繊維への付着力が弱く、メッシュ状に織り込んだ焼成物は衣服の繊維内に充分に入り込まず付着力も悪い。
【0014】
また、引用文献3(特開2005−329101号公報)には、「持ち運び可能な一体型のものであって、複数本の紫外線ランプと送風機からなり、空気が紫外線に照射されるエリアを長尺状空間とし、該空間の長手方向に紫外線ランプを設置したオゾン発生装置によって室内にオゾンを供給すると共に、該室内に光触媒の粉体を液体に懸濁させた懸濁液を噴霧することを特徴とする脱臭及び悪臭発生予防方法」が記載されている。
【0015】
そして、[0025]に「この光触媒は微粉末として市販されている。サイズは数nm〜数μm程度のものである。これを、水やアルコールに加えて懸濁液とする」旨、[0027]にこの光触媒懸濁液を噴霧すると、例えば、布や壁面に付着しそこに残存する。よって、その付近に存在する有機物を光分解反応によって分解することは当然であるが、将来その付近に付着したものも分解する。よって、予防効果を発揮するのである」旨説明されている。
【0016】
しかしながら、光触媒懸濁液の噴霧は[0026]に記載の通り、「通常の霧吹きのようなものや、スプレーでよい」旨説明され、[0030]〜[0033]に記載の通り、光触媒懸濁液の噴霧は、この発明のオゾン発生装置とは別途に行うものである。したがって、この発明の光触媒懸濁液の噴霧は、オゾン発生装置によるオゾン供給後に別途行う予防方法の後工程として提供されている。
【0017】
また、引用文献3には酸化チタンの粒子径が数nm〜数μmと記載されているのみで、酸化チタンが繊維状である旨の記載がなく、繊維幅及び厚さ、繊維長さ、アスペクト比、比表面積が不明である。したがって、衣服へ噴霧した場合に繊維へ充分な付着力が得られるかどうか理解できない。
【0018】
また、引用文献4(特開2005−034254号公報)には、「少なくとも光触媒と、気体分子の平均径以上の孔を有する構造体とを備え、前記光触媒が前記構造体に担持された消臭体であり、消臭体に少なくとも紫外線を含む光を照射する照射手段、送風手段を備えた脱臭装置」が記載されている。
【0019】
そして、[0039]には[0038]に説明される方法にて作成された酸化チタンを含む脱臭体(ナノ脱臭体)を図4に示すような「測定皿44に脱臭体を入れて」測定した旨、また図5に示すハニカム体は[0041]に「この脱臭体(酸化チタンを含む)をシリカゾル30wt%を含むスラリーにし、セラミックハニカムにディップ後、乾燥焼成した200セルのハニカム体」である旨説明されている。
【0020】
したがって、この発明における脱臭体は、気体分子の平均径以上の多孔質構造体、または脱臭体(酸化チタンを含む)ハニカム体であり、衣服の繊維に噴霧できる繊維状の超微粒子を含有する透明液状触媒ではない。
【0021】
また、引用文献5(特開平9−104852号公報)には、「抗菌部材または帯電防止剤の内一方を含んだことを特徴とする糊」[請求項1]であって、「空気圧または気化ガスにより糊が噴霧されるスプレー型とし」[請求項6]、「この糊には二酸化チタン等の光触媒を含み、光触媒の外形寸法が0.03〜100μm粉末状であり、塗布後乾燥させること、被塗布物が衣類又は紙類であり、スプレー塗布後アイロンかけにより糊を乾燥、固定するようにすること」[請求項20]〜[請求項25]が記載されている。
【0022】
そして、[0022]〜[0023]には「本発明は・・・家庭用または業務用における糊付けおよびアイロン掛け作業の一環として、抗菌部材または帯電防止剤の内少なくとも一方を衣類やタオル、シーツ類に簡単に塗布し付着固定させられる。その結果、家庭においても殺菌した衣類を着用可能にし、健康で快適な生活を可能にする」旨説明されている。
【0023】
さらに、[0050]には「糊に含ませる二酸化チタンまたは二酸化チタンと活性炭との混合物等からなる光触媒の微粉末粒子は0.03〜100μmの外形を有し・・・数μm〜100μmの膜厚にスプレー塗布または印刷すればよい」旨説明されている。
【0024】
しかしながら、この発明においては、酸化チタン等の光触媒の微粉末粒子は0.03〜100μmの外形と極めて粗く、酸化チタンは繊維状である旨の記載がなく、繊維幅及び厚さ、繊維長さ、アスペクト比、比表面積が不明なため、衣服に噴霧した場合、繊維に対する充分な付着力を有するかどうか不明である。また、被塗布物が衣服である旨記載されているが、糊状であるため衣服の繊維内に充分進入できないと共に、糊状であるので水分が多く乾燥時間が長くかかり、さらに光触媒粒子に前記糊が被服するため粒子の表面露出度が極めて悪い。
【0025】
また、引用文献6(特開平10−314543号公報)には、「脱臭塔3内で被処理空気11中の悪臭ガス成分を二酸化チタン粒子5に吸着し、この二酸化チタン粒子5を管37を通して再生塔7に導き、ブラックライト照明器31からブラックライトを照射することで、吸着した悪臭ガス成分を酸化分解し再生する」旨記載されている。
【0026】
そして、「二酸化チタン粒子は比重が軽く、また直径を1.4〜2.0mmとすることで、空気流によって容易に流動状態になる」[0026]」旨、また、「・・・浮遊する二酸化チタン粒子5に対し、再生棚27の側方に設けられたブラックライト照明器31から紫外線などのブラックライトが照射される。この照射により、二酸化チタン粒子5に吸着されていた悪臭ガス成分はブラックライトの光エネルギーで酸化分解し無臭化される。二酸化チタン粒子5は光触媒として酸化分解を促進する。このようにして二酸化チタン粒子5は再び吸着性能を再生する」[0027]旨説明されている。
【0027】
しかしながら、この発明においては、酸化チタン粒子は1.4〜2.0mmと粗く[請求項2]、また衣服の繊維に噴霧した場合に、ナノメートル単位の粒子でないため繊維内に充分に分散せず繊維への付着力が弱い。また、ナノメートルの分散体でなく比表面積が限定され、粒子表面の露出割合が少なく、高い光触媒活性作用を得ることができない。
【0028】
また、引用文献7(実用新案登録第3124458号公報)には、「機体、オゾン発生機器、殺菌装置、ファン、設置テーブルから構成された多機能殺菌除臭装置であって、内部に殺菌・消毒を行う物品を収容する空間を有し、上部に通風孔を設けた密閉型の箱からなる機体と、機体内部上端に設置されてオゾンを噴出して殺菌するオゾン発生機器と、機体内壁面に設置され、同様に殺菌・徐臭作用を行う殺菌装置と、機体上方に設置し通風孔から機体内部の空気を外部に排出するファンと、殺菌・消毒を行う物品を載置するテーブルとから構成されることを特徴する多機能殺菌除臭装置」[請求項1]が記載されている。
【0029】
そして、「前記殺菌装置が紫外線管[請求項6]、光触媒殺菌器[請求項7]、ブラックライト紫外線管[請求項9]」である旨が記載されている。
【0030】
この殺菌装置は[0010]に説明されているように、それぞれが独立した殺菌装置であり、酸化チタンからなる光触媒の活性化を促進するために設けられた紫外線管、ブラックライト紫外線管ではない。
【0031】
また、引用文献8(特開平11−028144号公報)には、「箪笥等に吊り下げるフックを備えた衣類保持用内型と蝶番により貝殻状に開閉でき、かつ前記衣類保持用内型と間隙を保持して取り付けられる外カバーと、前記外カバー内壁に開口した排気口及び空気噴出穴と、脱臭器及びファンを備えた脱臭箱と、前記排気口と前記脱臭箱を連通し、その内部を排気が通流する排気管と、前記空気吹出穴と前記脱臭箱を連通し、その内部を空気が通流する吸気管とを備えたことを特徴とする衣類脱臭装置」[請求項1]が記載されている。
【0032】
そして、「前記脱臭器として紫外線脱臭器、光触媒脱臭器、オゾン脱臭器、オゾン触媒脱臭器のうち少なくとも1つの脱臭器を備える」[請求項5]旨記載されている。
【0033】
この殺菌装置は[0020]〜[0022]に説明されているように、「・・・衣類表面に近距離から強く空気を吹出させ、衣類表面を常に新鮮な空気で置換して悪臭を揮発させ、さらに排気中の悪臭を脱臭するようにしたものである。・・・しかも、脱臭剤を使用しないため衣類のシミとか変質の危険が全くない」旨説明されている。
【0034】
即ち、この発明においては、光触媒脱臭器13については、繊維状酸化チタンである旨の記載がない。したがって、衣服の繊維に噴霧した場合に繊維へ充分な付着力があるかどうか理解できない。また、酸化チタンが分散体でなく多孔質体であるので比表面積が制限され、粒子表面の露出割合が少なく高い光触媒活性作用を得ることができない。
【0035】
また、引用文献9(特開平10−323239号公報)には、「密閉可能に構成された衣類を収納するための収納容器と、この収納容器に設けられ前記衣類に付着した防虫剤および/またはドライクリーニング溶剤の微粒子から発生するガスを分解および/または吸着する脱臭部とを備えることを特徴とする衣類用の脱臭装置」[請求項1]が記載されている。
【0036】
また、「前記脱臭部は、紫外線ランプと、この紫外線ランプからの紫外線を受光する光触媒とを備える」[請求項4]旨、また「・・・前記収納容器に密封された空気を、当該収納容器内で前記脱臭部を通して強制的に循環させる送風手段とが配置されている」[請求項5]旨記載されている。
【0037】
そして、「脱臭部は紫外線ランプと、この紫外線ランプからの紫外線を受光する光触媒とを備え・・・光触媒が反応し、その表面において、有毒ガスを分解し、無害・無臭なものに変化させる。これにより、有害ガスを除去できる」[0012][0013]旨説明されている。
【0038】
しかしながら、この発明においては、光触媒脱臭器13については、酸化チタンである旨の記載がなく、また酸化チタンの繊維状微粉末を含む溶剤を衣服の繊維に噴霧するものでない。
【0039】
引用文献1 特開2000−288405号公報
引用文献2 特開2001−205099号公報
引用文献3 特開2005−329101号公報
引用文献4 特開2005−034254号公報
引用文献5 特開平09−104852号公報
引用文献6 特開平10−314543号公報
引用文献7 実用新案登録第3124458号公報
引用文献8 特開平11−028144号公報
引用文献9 特開平10−323239号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
本発明は、繊維状酸化チタンを衣服の繊維内に分散して繊維へ強固に付着させて、粒子表面の露出度を90%以上と極めて大きくすると共に、熱風乾燥時における熱風の温度を繊維に支障のない30〜120℃と極めて低い温度で乾燥して、繊維状酸化チタンを熱風により衣服の繊維全体へ均一に強固に固着乾燥させて高い光触媒活性作用を得ることができる透明液状光触媒を提供することにある。
【課題を解決する手段】
【0041】
請求項1の発明は、液状光触媒中の無機元素が半定量値において、少なくともTiが90〜97wt%、Siが2.3〜3.0wt%、Agが1.4〜2.2wt%、Znが0.2〜0.3wt%含み、前記液状光触媒中の有機元素が定量値において、少なくともCが55〜65wt%、Hが8〜12wt%、Nが0.2〜0.4wt%含み、酸化チタンが繊維状の超微粒子であり、平均繊維幅及び厚さが1〜50nm、平均繊維長さが10〜1000nm、平均アスペクト比が2〜100、比表面積が30m/g以上である透明液状光触媒を提供するものである。
【0042】
この発明においては、繊維状酸化チタン超微粒子を衣服の繊維内に単独分散して繊維へ強固に付着させて、粒子表面の露出度を90%以上と極めて大きくすることができると共に、乾燥時における熱風の温度を繊維に支障のない30〜120℃と極めて低い温度で乾燥固着でき、繊維状酸化チタンを熱風により衣服の繊維全体へ強固に乾燥固着させて暗い密閉室内であっても高い光触媒活性作用を得ることができる。また、前記液状光触媒が透明であるから処理後繊維物が変色させない。そして、長期に渡り防臭、殺菌、防カビ効果を持続させることのできる透明光触媒脱臭を提供することができる。また、衣服の繊維は、原料となる出発糸と、この糸を縫い合わせた中間原料糸と、この中間原料糸を縫い合わせた最終の織り込み繊維とから構成されているが、本発明の繊維状酸化チタン超微粒子は、原料となる出発糸の繊維にまで進入させて固着することができるので、強固に固着させて長期に渡り上記効果を持続させることができる。
【0043】
また、前記液状光触媒中の無機元素が半定量値において、少なくともTiが90〜97wt%、Siが2.3〜3.0wt%、Agが1.4〜2.2wt%、Znが0.2〜0.3wt%含む透明液状光触媒であるため、上記の酸化物が残存することにより得られる酸化チタンの紫外線吸収領域、誘電率、光触媒活性、プロトン導電性、固体酸特性等を調整することができ、さらに熱的安定性や化学的安定性等を調節することもできる。また、Agを添加することにより、暗い密閉室内であっても高い光触媒活性作用を得ることができる。さらに、Siを含むことにより粘度を低くして流動性を高めることができ、繊維状酸化チタン超微粒子を衣服の繊維内に容易に進入させると共に、速やかに乾燥させることができる。上記範囲外であるとこれらの効果が得られないものと思われる。
【0044】
また、前記液状光触媒中の有機元素が定量値において、少なくともCが55〜65wt%、Hが8〜12wt%、Nが0.2〜0.4wt%含む透明液状光触媒であるため、CHNの有機元素が上記の範囲にあると、熱風乾燥時における熱風の温度を繊維に支障のない30〜120℃と極めて低い温度で繊維状酸化チタンを衣服の繊維に強固に固着させることができると共に、乾燥速度を極めて速くすることができる。上記範囲外であるとこれらの効果が得られないものと思われる。
【0045】
さらに、前記液状光触媒中における繊維状酸化チタンが超微粒子であり、平均繊維幅及び厚さが1〜50nm、平均繊維長さが10〜1000nm、平均アスペクト比が2〜100、比表面積が30m/g以上である透明液状光触媒であるため、極めて微粒の繊維状酸化チタンを衣服の繊維内にくまなく分散させて衣服の繊維へ強固に付着させできると共に、粒子表面の露出度を90%以上極めて大きくでき、高い光触媒活性作用を得ることができる。また、極めて微粒の繊維状酸化チタンを衣服の繊維内にくまなく分散させて熱風乾燥時における熱風の温度を繊維に支障のない30〜120℃と極めて低い温度で乾燥させることができる。上記範囲外であると、繊維状酸化チタンの反応拡散が充分に行われず、高い光触媒活性作用を得ることができない。好ましくは、平均繊維幅及び厚さが10〜30nm、平均繊維長さが20〜100nm、平均アスペクト比が3〜50、比表面積が50m/g以上である
【発明を実施するための形態】
【0046】
繊維状酸化チタン超微粒子の生成は、酸化チタン系複合酸化物が水に分散してなる水分散ゾルを、少なくともSiO、AgO、ZnOのアルカリ金属水酸化物の存在下で水熱処理することにより得られる。これら繊維状酸化チタンの粒子径は、繊維幅及び厚さが1〜50nm、繊維長さが10〜1000nm、アスペクト比が2〜100以上が好ましく使用され、酸化チタン系複合酸化物粒子の水分散ゾルを用いる。上記粒子径であれば安定な水分散ゾルが得られ、非常に高いレベルで単独の粒子分散性に優れた繊維状酸化チタン超微粒子が得られる。
【0047】
前記酸化チタン粒子、酸化チタンと酸化チタン以外の酸化物からなる酸化チタン系複合酸化物粒子の水分散ゾルの濃度としては、酸化物として2〜50重量%の範囲にあることが好ましい。このような濃度範囲であれば、ゾルは安定であり、アルカリ処理時に粒子が凝集することもなく、効率的に繊維状酸化チタン超微粒子を生成させることができる。
【0048】
上記のように、特にSiO、AgO、ZnOのアルカリ金属水酸化物が含まれると、繊維状酸化チタン超微粒子が生成しやすく、繊維状酸化チタン超微粒子の紫外線吸収領域や光触媒活性を調整することができ、さらに熱的安定性や化学的安定性を得ることができる。上記酸化チタン以外の酸化物の含有量は1〜25重量%、好ましくは3〜8重量%である。このような範囲において繊維状酸化チタン超微粒子は高いレベルで生成する。
【0049】
本実施例では、複合酸化チタン超微粒子に対してチタン過酸化物または複合チタン過酸化物と、有機高分子化合物とからなるバインダーを使用する。このようなチタン過酸化物または複合チタン過酸化物は通常溶液状態(透明液状光触媒)となる。このようなチタン過酸化物または複合チタン過酸化物は、前記複合酸化チタン微粒子と同程度の屈折率を有しているので、被膜構成成分による光の散乱がなく、透明性に優れた液状光触媒とすることができる。
【実施例】
【0050】
塩化チタン水溶液を純水で希釈してTiOとして濃度5重量%の塩化チタン水溶液を調整した。この水溶液を、温度を5℃に調整した濃度15%のアンモニア水に添加して中和・加水分解した。ついで生成したゲルを濾過洗浄し、TiOとして濃度9重量%のオルソチタン酸のゲルを得た。
【0051】
このオルソチタン酸のゲル100gを純水2900gに分散させた後、濃度35重量%の過酸化水素水800gを加え、攪拌しながら85℃で3時間加熱し、ペルオキソチタン酸水溶液を調整した。得られたペルオキソチタン酸水溶液のTiOとして濃度は0.5重量%であった。ついで95℃で10時間加熱して酸化チタン粒子分散液とし、この酸化チタン粒子分散液に分散液中のTiOに対するモル比が0.016となるようにテトラメチルアンモニウムハイドロオキサドを添加した。ついで、SiO、AgO、ZnOを若干量添加して、230℃で5時間水熱処理して複合酸化チタン粒子分散液、即ち本発明で使用する透明液状光触媒を調整した。この時の酸化チタンは、平均繊維幅及び厚さが1〜50nm、平均繊維長さが10〜1000nm、平均アスペクト比が2〜100の繊維状酸化チタン超微粒子であった。
【0052】
上記透明液状光触媒の無機元素及び有機元素の組成比の測定結果を以下に示す。尚、透明液状光触媒の組成を把握するために、この透明液状光触媒から水を蒸発させて、溶解成分のみを濃縮採取し、それに含まれる無機元素及び有機元素の量を調べた。試料溶液をビーカーに入れ、120℃のホットプレートを用いて水を蒸発させ、触媒成分を濃縮採取した。有機物の存在が予想されるのでCHN分析も追加した。
【0053】
無機元素の定性・半定量(蛍光X線法);
以下の装置・条件で測定し、含有元素の定性・半定量を行った。
装置;理学電気(株)製 全自動蛍光X線分析装置、RIX−3000
管球;Rh管球 測定径;25mmφ
【0054】

【0055】
CHNの定量(燃焼熱伝導度法);
装置;ヤナコ製 MT−700CN
【0056】

【0057】
測定結果の解析
前記測定結果より、液状光触媒に含まれる元素量は、以下のように計算される。

【0058】
上記無機元素の含有量は、下記式で測定値から算出した。
無機元素含有量=無機元素測定値×(100−CHN含有量)/100
すなわち、有機物由来と考えられるCHNの含有量(約70%)を全量から除き、その残りの(約30%)を無機元素含有量で割り振った。ただし、本測定では、必ず含まれている0(酸素)の含有量を把握できないため、無機元素の含有量には“<”を付した。Tiの形態をTiOと仮定すると、含まれるTiとOとの重量比は100:67となり、上表の推算値は次表のように換算される。
【0059】

【0060】
CNは有機バインダーに由来する元素と判断され、含有物の約70%以上(その他、酸素Oが存在している可能性も高い)を占めている。Ti(TiO)は光触媒の主成分である。
【0061】
Agは、主に抗菌作用物質として添加された成分であるが、その含有量はTiOに比べて遥かに少ないものと判断される。また、Agの添加により暗い密閉室内であっても高い光触媒活性作用を得ることができる
【0062】
Znは光触媒の吸着性向上のために添加されたものである。酸性のTiOに塩基性のZnOを添加する場合もある。
【0063】
Siはバインダー成分(シリカゾル)であり、粘度を低くすることができ、流動性も高めることができる。尚、K,Clは本質的成分ではない。
【0064】
滅菌試験
試験方法;光照射フィルム密着法
対 照;ポリエステルフィルム
照射条件;約1000〜2000 Lx
室 温;20〜25℃

【0065】
上記試験結果から考証すると、高い滅菌効果が確認できる。また、遮光の場合でも高い滅菌効果があるが、これは添加された銀(AgO)の銀イオンの効果も発揮されているものと思われる。
【0066】
滅菌評価
1.綿タオル1kgを30分間本発明の光触媒脱臭殺菌方法を利用した装置に投入し、100℃で熱風を送風して乾燥し試料タオルを得た。また、前記処理した試料タオルの一部は洗剤(花王石鹸(株)製 ハイトップ)を使用して、10分間洗濯した後、水道水で5分間水洗いすることを50回繰り返し、最後に100℃で乾燥して他の試料タオルを得た。
2.前記綿タオルの代わりに、1kgのポリエステル繊維布を使用した。それ以外は上記と同様の操作を行った。
3.抗菌試験大腸菌と黄色葡萄状球菌をリン酸バッファーに懸濁させ、200mlの三角フラスコにこの溶液75mlと上記本発明で使用する透明液状光触媒0.75gを入れ、25℃±5℃に保持して、回転数330rpmで1時間振動処理した。この処理液の生菌数を測定して下記滅菌率を算出した。
【0067】

【0068】
以上の結果から、本発明の光触媒脱臭殺菌方法によると、綿布は勿論のこと、ポリエステル繊維に対しても優れた滅菌性を示し、また洗濯をしてもその滅菌性は殆ど低下しないことが理解される。これは本発明の光触媒脱臭殺菌方法及び透明液状光触媒によると酸化チタン超微粒子の繊維に対する付着力が極めて強固であるためと考えられる。
【0069】
本発明で使用される紫外線照射手段はブラックライトであり、以下の300〜400nmの波長領域である。また、暗い密閉室内であっても高い光触媒活性作用を得ることができる。
【0070】

【0071】
本発明を利用する前記滅菌評価に使用した装置としては、例えば、密閉室内で透明液状光触媒を衣服の周囲方向に向かって1つ若しくは複数のノズルから噴出させると共に、密閉室内に充満する霧状の透明液状光触媒を1つ若しくは複数の送風口より熱風を吹き出させて、透明液状光触媒の酸化チタン超微粒子を衣服の繊維内へ進入させ、酸化チタン超微粒子を衣服の繊維に付着させて固着乾燥するようにする。密閉室は四角や円形箱体であってもよい。また、ブラックライトは衣服の繊維に付着した酸化チタン超微粒子を均一に照射するような箇所に1個若しくは複数個を密閉室内壁に設ける。さらに、上記熱風を最初に噴射し、処理後冷風を噴射して透明液状光触媒の硬化を促進させることもできる。
【発明の効果】
【0072】
この発明においては、繊維状酸化チタン超微粒子を衣服の繊維内に単独分散して繊維へ強固に付着させて、粒子表面の露出度を90%以上と極めて大きくすることができると共に、熱風乾燥時における熱風の温度を繊維に支障のない30〜120℃と極めて低い温度で乾燥固着でき、繊維状酸化チタンを熱風により衣服の繊維全体へ強固に乾燥固着させて暗い室内であっても高い光触媒活性作用を得ることができる。また、前記液状光触媒が透明であるから処理後繊維物を変色させない。そして、長期に渡り防臭、殺菌、防カビ効果を持続させることのできる透明光触媒脱を提供することができる。また、衣服の繊維は、原料となる出発糸と、この糸を縫い合わせた中間原料糸と、この中間原料糸を縫い合わせた最終の織り込み繊維とから構成されているが、本発明の繊維状酸化チタン超微粒子は、原料となる出発糸の繊維にまで進入させて固着することができるので、強固に固着させて長期に渡り上記効果を持続させることができる透明光触媒を提供することができる。
【0073】
また、上記の酸化物が残存することにより得られる酸化チタンの紫外線吸収領域、誘電率、光触媒活性、プロトン導電性、固体酸特性等を調整することができ、さらに熱的安定性や化学的安定性等を調節することもできる。また、Agを添加することにより、暗い室内であっても高い光触媒活性作用を得ることができる。さらに、Siを含むことにより、粘度を低くすることができ流動性も高めることができる。さらに、CHNの有機元素が上記の範囲にあると、前記熱風乾燥手段における熱風の温度を繊維に支障のない30〜120℃と極めて低い温度で繊維状酸化チタンを衣服の繊維に強固に固着させることができると共に、乾燥速度を極めて速くすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状光触媒中の無機元素が半定量値において、少なくともTiが90〜97wt%、Siが2.3〜3.0wt%、Agが1.4〜2.2wt%、Znが0.2〜0.3wt%含み、前記液状光触媒中の有機元素が定量値において、少なくともCが55〜65wt%、Hが8〜12wt%、Nが0.2〜0.4wt%含み、酸化チタンが繊維状の超微粒子であり、平均繊維幅及び厚さが1〜50nm、平均繊維長さが10〜1000nm、平均アスペクト比が2〜100、比表面積が30m/g以上である透明液状光触媒。

【公開番号】特開2011−224570(P2011−224570A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161307(P2011−161307)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【分割の表示】特願2008−271407(P2008−271407)の分割
【原出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(506374030)株式会社 鹿児島イーデン電気 (3)
【Fターム(参考)】