説明

透明熱伝導性組成物

【課題】透明性および熱伝導性に優れ、種々の用途に対応することのできる透明熱伝導性組成物を提供する。
【解決手段】樹脂と、フィラーとを含有する透明熱伝導性組成物において、フィラーに、
平均粒子径が1〜100μmであり、熱伝導率が2W/m・K以上である熱伝導性フィラーと、平均粒子径が1〜100nmであり、屈折率が1.8以上である高屈折率フィラーとを含有させる。このような透明熱伝導性組成物によれば、目的および用途に応じて種々の樹脂およびフィラーを用いることができるとともに、優れた透明性および熱伝導性を確保することができる。そのため、このような透明熱伝導性組成物は、透明性および熱伝導性が要求される種々の放熱用途に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性および熱伝導性を有する透明熱伝導性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッドデバイス、高輝度LEDデバイス、電磁誘導加熱デバイスなどでは、半導体素子により電力を変換・制御するパワーエレクトロニクス技術が採用されている。パワーエレクトロニクス技術では、大電流を熱などに変換するため、半導体素子の近傍に配置される材料には、高い放熱性(高熱伝導性)が要求されている。
【0003】
また、高輝度LEDデバイスなどにおいては、非発光部のみならず、発光部からも放熱させることが要求されており、そのため、透明性および熱伝導性にすぐれる放熱材が、要求されている。
【0004】
例えば、透明な高分子組成物である液状シリコーン樹脂およびその硬化剤に、屈折率調整剤のシリコーンオイルと、硬化触媒とを添加し、マトリクス材とするとともに、そのマトリクス材中に、熱伝導性充填材として非晶性球状シリカを配合させて得られる透明熱伝導性組成物が、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−248311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、引用文献1に記載の透明熱伝導性組成物は、屈折率調整剤によってシリコーン樹脂の屈折率が調整され、透明性に優れるが、このような屈折率調整剤で屈折率を調整できる樹脂は限られ、また、その樹脂と屈折率との差が小さい熱伝導性充填材も限られるため、樹脂および熱伝導性充填材の選択性が乏しく、多様性に劣り、種々の用途に対応できないという不具合がある。
【0007】
本発明の目的は、透明性および熱伝導性に優れ、種々の用途に対応することのできる透明熱伝導性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の透明熱伝導性組成物は、樹脂と、フィラーとを含有し、前記フィラーが、平均粒子径が1〜100μmであり、熱伝導率が2W/m・K以上である熱伝導性フィラーと、平均粒子径が1〜100nmであり、屈折率が1.8以上である高屈折率フィラーとを含有していることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の透明熱伝導性組成物は、100μmの厚みにおいて、ヘイズ値が、0%を超過し10%以下であり、全光線透過率が、70%以上であることが好適である。
【0010】
また、本発明の透明熱伝導性組成物では、前記熱伝導性フィラーの含有割合が、透明熱伝導性組成物の総量に対して、30〜90体積%であることが好適である。
【0011】
また、本発明の透明熱伝導性組成物では、前記高屈折率フィラーの含有割合が、透明熱伝導性組成物の総量に対して、10体積%以下であることが好適である。
【0012】
また、本発明の透明熱伝導性組成物では、前記高屈折率フィラーが、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛およびチタン酸バリウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好適である。
【0013】
また、本発明の透明熱伝導性組成物は、光半導体を封止するための封止材として用いられることが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の透明熱伝導性組成物によれば、目的および用途に応じて種々の樹脂およびフィラーを用いることができるとともに、優れた透明性および熱伝導性を確保することができる。
【0015】
そのため、本発明の透明熱伝導性組成物は、透明性および熱伝導性が要求される種々の放熱用途に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の透明熱伝導性組成物は、樹脂と、フィラーとを含有している。
【0017】
樹脂は、フィラーを分散できるもの、つまり、フィラーが分散される分散媒体(マトリックス)であって、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0018】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0019】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体など)、アクリル樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチルなど)、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド(ナイロン(登録商標))、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリルスルホン、熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリアミノビスマレイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリメチルペンテン、フッ化樹脂、液晶ポリマー、オレフィン−ビニルアルコール共重合体、アイオノマー、ポリアリレート、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体などが挙げられる。
【0020】
なお、樹脂には、上記した各成分(重合物)の他に、例えば、ポリマー前駆体(例えば、オリゴマーを含む低分子量ポリマーなど)、および/または、モノマーが含まれる。
【0021】
これら樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0022】
このような樹脂として、好ましくは、熱硬化性樹脂、より好ましくは、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。
【0023】
エポキシ樹脂としては、特に制限されず、公知のエポキシ樹脂、具体的には、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂などの芳香族系エポキシ樹脂、例えば、トリエポキシプロピルイソシアヌレート、ヒダントインエポキシ樹脂などの含窒素環エポキシ樹脂、さらには、脂肪族型エポキシ樹脂(脂肪族脂環式エポキシ樹脂を含む。)、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0024】
また、エポキシ樹脂には、例えば、イミダゾール化合物、アミン化合物、酸無水物化合物、アミド化合物、ヒドラジド化合物、イミダゾリン化合物、フェノール化合物、ユリア化合物、ポリスルフィド化合物などの硬化剤や、さらには、例えば、トリエチレンジアミン、トリ−2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノールなどの3級アミン化合物、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエートなどのリン化合物、例えば、4級アンモニウム塩化合物、例えば、有機金属塩化合物、例えば、それらの誘導体などの硬化促進剤を含有させて、エポキシ樹脂組成物として調製することができる。なお、硬化剤および硬化促進剤の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて適宜設定される。
【0025】
また、硬化剤および/または硬化促進剤は、必要により、溶媒により溶解および/または分散された溶媒溶液および/または溶媒分散液として調製できる。
【0026】
溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(2−ブタノン)などケトン類、例えば、酢酸エチルなどのエステル類、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド類などの有機溶媒などが挙げられる。また、溶媒として、例えば、水、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール(2−プロパノール)、メトキシエタノールなどのアルコール類などの水系溶媒も挙げられる。溶媒として、好ましくは、有機溶媒、さらに好ましくは、ケトン類、アミド類が挙げられる。
【0027】
熱硬化性ポリイミド樹脂は、例えば、ポリアミド酸樹脂を、加熱によりイミド化することによって、得ることができる。
【0028】
ポリアミド酸樹脂は、特に制限されないが、例えば、酸二無水物(例えば、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)など)と、ジアミン(例えば、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(3−BAPS)など)とを反応させることにより、得ることができる。
【0029】
この反応においては、酸二無水物とジアミンとを、実質的に等モル比となるような割合で反応させる。
【0030】
また、酸二無水物とジアミンとを、適宜の有機溶媒、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒中で、常温常圧の下、所定の時間反応させることによって、ポリアミド酸樹脂の溶液として得ることができる。
【0031】
なお、このようにして得られるポリアミド酸樹脂には、必要に応じて、エポキシ樹脂、ビスアリルナジックイミド、マレイミドなどを、適宜の割合で配合してもよい。
【0032】
シリコーン樹脂としては、公知のシリコーン樹脂、具体的には、例えば、メチル系シリコーンアルコキシオリゴマー、メチルフェニル系シリコーンアルコキシオリゴマー、有機官能基(アルコキシ基を除く)含有オリゴマーなどが挙げられる。
【0033】
このようなシリコーン樹脂において、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。また、有機官能基(アルコキシ基を除く)としては、例えば、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基、アミノ基などが挙げられる。
【0034】
なお、シリコーン樹脂が複数のアルコキシ基および/または有機官能基(アルコキシ基を除く)を有する場合には、それらは同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0035】
また、これらアルコキシ基および/または有機官能基の含有割合は、目的および用途に応じて適宜設定される。
【0036】
なお、樹脂としては、上記した樹脂に限定されず、種々の樹脂を用いることができる。
【0037】
また、このような樹脂は、通常、23℃において、液状、半固形状態および固形状態のいずれかの形態であるが、用いられる樹脂の形状は、特に制限されず、目的及び用途に応じて、適宜選択される。
【0038】
樹脂の屈折率は、例えば、1.4〜2.0、好ましくは、1.4〜1.8である。
【0039】
フィラーは、熱伝導性フィラーと、高屈折率フィラーとを含有している。
【0040】
熱伝導性フィラーは、例えば、球状、板状(鱗片状)の充填剤であって、平均粒子径が、1〜100μmであり、熱伝導率が、2W/m・K以上である。
【0041】
詳しくは、熱伝導性フィラーの光散乱法により測定される平均粒子径(板状粒子である場合には、その最大長さ)は、上記したように、1〜100μm、好ましくは、10〜180μm、より好ましくは、20〜100μmである。
【0042】
また、熱伝導性フィラーの熱伝導率は、上記したように、2W/m・K以上、好ましくは、3W/m・K以上、より好ましくは、5W/m・K以上である。
【0043】
また、熱伝導性フィラーの屈折率は、例えば、1.4〜2.0、好ましくは、1.4〜1.8である。
【0044】
このような熱伝導性フィラーとしては、例えば、無機粒子などが挙げられ、無機粒子としては、例えば、炭化物、窒化物、酸化物、水酸化物、金属、炭素系材料などが挙げられる。
【0045】
炭化物としては、例えば、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化アルミニウム、炭化チタン、炭化タングステンなどが挙げられる。
【0046】
窒化物としては、例えば、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化クロム、窒化タングステン、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、窒化リチウムなどが挙げられる。
【0047】
酸化物としては、例えば、酸化鉄、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。また、酸化物として、チタン酸バリウムなどの遷移金属酸化物などや、さらには、金属イオンがドーピングされている、例えば、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズなどが挙げられる。
【0048】
水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
【0049】
金属としては、例えば、銅、金、ニッケル、錫、鉄、または、それらの合金が挙げられる。
【0050】
炭素系材料としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、ダイヤモンド、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、ナノホーン、カーボンマイクロコイル、ナノコイルなどが挙げられる。
【0051】
また、無機粒子は、その流動性などの観点から、必要により、シランカップリング剤などによって、公知の方法により表面処理されていてもよい。
【0052】
これら熱伝導性フィラーは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0053】
また、熱伝導性フィラーは、必要により、上記した溶媒の分散液として調製することもできる。
【0054】
そのような場合において、熱伝導性フィラーの固形分濃度は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0055】
高屈折率フィラーは、例えば、球状の充填剤であって、平均粒子径が、1〜100nmであり、屈折率が、1.8以上である。
【0056】
詳しくは、高屈折率フィラーの光散乱法により測定される平均粒子径は、上記したように、1〜100nm、好ましくは、1〜80nm、より好ましくは、1〜50nmである。
【0057】
また、高屈折率フィラーの屈折率は、上記したように、1.8以上、好ましくは、1.85以上、通常、2.7以下である。
【0058】
このような高屈折率フィラーとしては、例えば、上記した無機粒子などが挙げられる。
【0059】
これら高屈折率フィラーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0060】
高屈折率フィラーとして、好ましくは、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウムが挙げられる。
【0061】
また、高屈折率フィラーは、必要により、上記した溶媒の分散液として調製することもできる。
【0062】
そのような場合において、高屈折率フィラーの固形分濃度は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0063】
また、透明熱伝導性組成物においては、高屈折率フィラーによって樹脂の屈折率が調整されている。
【0064】
高屈折率フィラーを含む樹脂の屈折率は、例えば、1.4〜1.8、好ましくは、1.45〜1.76であって、そのような高屈折率フィラーを含む樹脂の屈折率と、熱伝導性フィラーの屈折率との差の絶対値が、例えば、0.05未満、好ましくは、0.03未満、より好ましくは、0.01未満、とりわけ好ましくは、0である。
【0065】
高屈折率フィラーを含む樹脂の屈折率と熱伝導性フィラーの屈折率との差の絶対値が上記範囲であれば、透明熱伝導性組成物の優れた透明性を確保することができる。
【0066】
そして、透明熱伝導性組成物は、上記した各成分を、上記した割合で、公知の方法で攪拌混合することによって、調製される。
【0067】
攪拌混合では、各成分を効率よく混合すべく、例えば、溶媒を上記した各成分とともに配合するか、または、例えば、加熱により樹脂を溶融させることができる。
【0068】
溶媒としては、上記と同様の有機溶媒が挙げられる。また、上記した樹脂や、硬化剤および/または硬化促進剤、さらには、フィラーが、溶媒溶液および/または溶媒分散液として調製されている場合には、攪拌混合において溶媒を追加することなく、溶媒溶液および/または溶媒分散液の溶媒をそのまま攪拌混合のための混合溶媒として供することができる。あるいは、攪拌混合において溶媒を混合溶媒としてさらに追加することもできる。
【0069】
また、混合攪拌においては、必要により、公知の分散剤を配合することもできる。
【0070】
なお、分散剤が配合される場合において、その配合割合は、目的および用途に応じて適宜設定される。
【0071】
また、溶媒を用いて攪拌混合する場合には、攪拌混合の後、必要により、溶媒を除去する。
【0072】
溶媒を除去するには、例えば、室温にて、1〜48時間放置するか、例えば、40〜100℃で、0.5〜3時間加熱するか、または、例えば、0.001〜50kPaの減圧雰囲気下で、20〜60℃で、0.5〜3時間加熱する。
【0073】
加熱により樹脂を溶融させる場合には、加熱温度が、例えば、40〜150℃、好ましくは、70〜140℃である。
【0074】
透明熱伝導性組成物において、フィラー(熱伝導性フィラーおよび高屈折率フィラーの総量)の配合割合は、透明熱伝導性組成物の総量(固形分総量)に対して、例えば、10〜90質量%、好ましくは、20〜80質量%であり、樹脂の配合割合は、透明熱伝導性組成物の総量(固形分総量)に対して、例えば、10〜90質量%、好ましくは、20〜80質量%である。また、フィラーの配合割合は、樹脂100質量部に対して、例えば、50〜300質量部、好ましくは、100〜300質量部でもある。
【0075】
また、熱伝導性フィラーの配合割合は、質量基準で、透明熱伝導性組成物の総量(固形分総量)に対して、例えば、10〜70質量%、好ましくは、30〜60質量%であり、体積基準で、透明熱伝導性組成物の総量(固形分総量)に対して、例えば、10〜90体積%、好ましくは、30〜90体積%である。
【0076】
このような透明熱伝導性組成物によれば、より優れた熱伝導性を確保することができる。
【0077】
また、高屈折率フィラーの配合割合は、質量基準で、透明熱伝導性組成物の総量(固形分総量)に対して、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、通常、5質量%以上であり、体積基準で、透明熱伝導性組成物の総量(固形分総量)に対して、例えば、15体積%以下、好ましくは、12体積%以下、より好ましくは、10体積%以下である。
【0078】
このような透明熱伝導性組成物によれば、より優れた透明性を確保することができる。
【0079】
また、透明熱伝導性組成物の熱伝導率は、例えば、0.2W/m・K以上、好ましくは、0.3W/m・K以上、より好ましくは、0.5W/m・K以上、さらに好ましくは、0.6W/m・K以上、通常、10W/m・K以下である。
【0080】
なお、透明熱伝導性組成物の熱伝導率は、パルス加熱法により測定する。パルス加熱法では、キセノンフラッシュアナライザー「LFA−447型」(NETZSCH社製)が用いられる。
【0081】
透明熱伝導性組成物を、後述の方法により、厚み100μmmのシート状に成形した場合において、そのヘイズ値は、例えば、0%を超過し15%以下、好ましくは、0%を超過し10%以下、より好ましくは、0%を超過し7%以下である。
【0082】
ヘイズ値は、光源から入射する透過光(平行光)が、シート状の透明熱伝導性組成物を透過して散乱するときの、透過光に対する散乱光の割合であって、下記式(1)で示される。
【0083】
ヘイズ値(%)=(散乱光量)/(全透過光量)×100 (1)
ヘイズ値が上記範囲内であれば、より透明性に優れた透明熱伝導性組成物を得ることができる。一方、ヘイズ値が上記範囲を超える場合には、散乱光が増加し、白濁して見える場合がある。
【0084】
なお、ヘイズ値は、JIS K7136(2000年)に準拠して、ヘイズメーター(日本電色工業社の「NDH2000」や、村上色彩技術研究所社の「HM−150型」)により測定される。
【0085】
また、透明熱伝導性組成物を、厚み100μmmのシート状に成形した場合において、その全光線透過率は、例えば、60%以上、好ましくは、70%以上、より好ましくは、75%以上である。
【0086】
全光線透過率は、光源から入射する光(入射光)が、シート状の透明熱伝導性組成物を透過するときの、入射光に対する透過光の割合であって、下記式(2)で示される。
全光線透過率(%)=(透過光量)/(入射光量)×100 (2)
全光線透過率が上記範囲に満たない場合には、光学特性が低下する場合がある。
【0087】
なお、全光線透過率は、JIS K7361−1(1997年)に準拠して、ヘイズメーター(日本電色工業社、「NDH2000」や、村上色彩技術研究所社の「HM−150型」)により測定される。
【0088】
ヘイズ値および全光線透過率が上記範囲であれば、より優れた透明性を確保することができる。
【0089】
次いで、透明熱伝導性組成物を、シート状に成形する方法について説明する。
【0090】
透明熱伝導性組成物をシート状に成形する場合には、例えば、上記した方法で各成分を攪拌混合して得られた透明熱伝導性組成物を、必要により、基材に塗布した後、熱プレスする。
【0091】
具体的には、透明熱伝導性組成物を、例えば、必要により、2枚の離型フィルムを介して熱プレスし、プレスシートを得る。
【0092】
熱プレスの条件は、温度が、例えば、50〜150℃、好ましくは、60〜140℃であり、圧力が、例えば、1〜100MPa、好ましくは、5〜50MPaであり、時間が、例えば、0.1〜100分間、好ましくは、1〜10分間である。
【0093】
また、必要により、透明熱伝導性組成物を真空熱プレスすることもできる。真空熱プレスにおける真空度は、例えば、1〜100Pa、好ましくは、5〜50Paであり、温度、圧力および時間は、上記した熱プレスのそれらと同様である。
【0094】
また、この方法では、例えば、2枚の離型フィルムのそれぞれに、透明熱伝導性組成物を塗布し、それら透明熱伝導性組成物が重なるように、2枚の離型フィルムを介して、透明熱伝導性組成物を熱プレスすることもできる。
【0095】
また、樹脂が熱硬化性樹脂である場合には、例えば、熱プレス工程後に、未硬化(あるいは半硬化(Bステージ状態))のシートを熱硬化させることによって、硬化後のシートを作製することができる。
【0096】
透明熱伝導性組成物からなるシートを熱硬化させるには、上記した熱プレスまたは乾燥機が用いられる。好ましくは、乾燥機が用いられる。かかる熱硬化の条件は、温度が、例えば、60〜250℃、好ましくは、80〜200℃であり、圧力が、例えば、100MPa以下、好ましくは、50MPa以下である。
【0097】
このようにして得られる、シート状の透明熱伝導性組成物の厚みは、例えば、50〜1000μm、好ましくは、100〜800μmである。
【0098】
そして、本発明の透明熱伝導性組成物によれば、熱伝導性フィラーにより熱伝導性を確保する一方、高屈折率フィラーによって樹脂の屈折率を調整することができるので、目的および用途に応じて種々の樹脂およびフィラーを用いることができるとともに、優れた透明性および熱伝導性を確保することができる。
【0099】
そのため、本発明の透明熱伝導性組成物は、透明性および熱伝導性が要求される種々の放熱用途に用いることができる。具体的には、発光デバイスの封止材、とりわけ、光半導体(例えば、近紫外発光ダイオードや青色発光ダイオードなどの発光ダイオードなど)を封止するための封止材として、好適に用いることができる。
【0100】
透明熱伝導性組成物を、光半導体を封止するための封止材として用いる場合には、例えば、透明熱伝導性組成物は、未硬化(あるいは半硬化(Bステージ状態))のシートとして形成される。
【0101】
そして、例えば、外部から電力が供給される回路基板の上に、単数または複数の光半導体(発光ダイオードなど)を設置し、ワイヤなどにより光半導体と回路基板とを電気的に接合する。また、その回路基板の上に、光半導体を囲むように公知のハウジングを設け、そのハウジング内に、未硬化(あるいは半硬化(Bステージ状態))のシート状の透明熱伝導性組成物を、充填する。
【0102】
このとき、透明熱伝導性組成物は、押圧によって変形し、これにより、光半導体およびワイヤに密着する。
【0103】
このようにして、光半導体を、透明熱伝導性組成物によって封止することができる。
【0104】
なお、透明熱伝導性組成物およびハウジングの上には、必要により、蛍光体プレートやレンズなどが配置される。
【0105】
そして、このような透明熱伝導性組成物は、優れた透明性および熱伝導性を備えるため、光半導体から生じる光を遮ることなく、かつ、優れた放熱効率で、光半導体を封止することができる。
【実施例】
【0106】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例に限定されない。
【0107】
実施例1
攪拌機、還流冷却器および窒素導入管を備えた容器において、高屈折率フィラーとしての平均粒子径7nmの酸化ジルコニウム(屈折率1.86)の水分散液(商品名NZD−3005 固形分濃度30質量% 住友大阪セメント製)5.0gに、メタノール5.0gと、2−プロパノール5.0gと、濃塩酸1滴とを加え、pHを2程度に調整した。次いで、表面処理剤として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤 商品名KBM403 信越化学製)0.15gを2−プロパノール1gに溶解させた溶液を、滴下ロートから10分間かけて滴下し、60℃で1時間加熱攪拌した。反応終了後、室温に冷却し、2−ブタノンで溶媒置換し、表面処理された酸化ジルコニウムのナノ粒子分散液(固形分濃度30質量%)を得た。
【0108】
次いで、得られた分散液に、脂肪族脂環式のエポキシ樹脂(商品名セロキサイド2021P エポキシ当量128〜140g/eqiv. ダイセル化学製)2gと、酸無水物化合物(硬化剤 商品名リカシッドMH−700 ヘキサヒドロフタル酸無水物/4−メチル−ヘキサヒドロフタル酸無水物 新日本理化製)1.5gとを溶解させた。
【0109】
さらに、熱伝導性フィラーとして水酸化アルミニウム(商品名H−10 熱伝導率5W/m・K 屈折率1.57 平均粒子径約50μm 昭和電工製)5gを加え、ホモジナイザーを用いて、熱伝導性フィラーを分散させた。
【0110】
次いで、得られた分散液を、シリコーン剥離処理を施したポリエチレンテレフタレート基材に、乾燥後の膜厚が75μmになるように塗工し、60℃で5分間乾燥した。
【0111】
その後、得られた膜を2枚重ね、100℃に加熱したプレス機によって、膜厚が100μmになるようにスペーサーを用いて、熱プレスした。その後、加圧したまま150℃に昇温し、10分間保持して硬化反応を完結させることにより、透明熱伝導性組成物をシート状に成形した。
【0112】
なお、透明熱伝導性組成物の総量に対して、高屈折率フィラー(酸化ジルコニウム)の含有割合は、6体積%、熱伝導性フィラー(水酸化アルミニウム)の含有割合は、40体積%であった。
【0113】
そして、得られた透明熱伝導性組成物のシートの熱伝導率は、1.1W/m・Kであった。
【0114】
また、ヘイズ値は、3.2%、全光線透過率が、83%であった。
【0115】
また、高屈折率フィラーを含む樹脂の屈折率を測定したところ、1.57であり、一方、高屈折率フィラーを含まない樹脂の屈折率は、1.51であった。また、熱伝導性フィラーの屈折率は、1.57であり、上記の高屈折率フィラーを含む樹脂の屈折率との差の絶対値は、0であった。
【0116】
実施例2
高屈折率フィラーとして、酸化チタンの粉末(ルチル型 石原産業製 屈折率2.4)20gと、分散剤(商品名Disperbyk−111 ビックケミー製)2gとを、N,N−ジメチルアセトアミド50gに加えた。次いで、その全量と、直径0.1mmのジルコニアビーズ50gとを、ガラス瓶に入れて、ペイントシェーカーで2時間分散させることにより、平均粒子径65nmの酸化チタンの分散液を得た。
【0117】
上記した酸化チタンの分散液4gを、予め、固形分濃度35質量%となるように調製されたポリアミド酸樹脂溶液(ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン/3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)7.2gに、攪拌しながら加え、酸化チタン濃度が樹脂に対して10体積%の割合で含有される樹脂溶液を得た。
【0118】
次いで、熱伝導性フィラーとして窒化ホウ素(商品名PT−110 熱伝導率60W/m・K 屈折率1.74 平均粒子径50μm モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製)10gを上記の分散液に加え、混合装置(T.K.ハイビスミックス2P−03 プライミクス製)を用いて、0.6mmHgまで減圧しながら、30分間、回転数30rpmで混合分散し、分散液(透明熱伝導性組成物)を調製した。
【0119】
次いで、得られた分散液を、ガラス板に乾燥後の膜厚が100μmになるように塗工し、10℃で1時間、150℃で1時間、250℃で1時間処理し、イミド化するとともに透明熱伝導性組成物をシート状に成形した。
【0120】
なお、透明熱伝導性組成物の総量に対して、高屈折率フィラー(酸化チタン)の含有割合は、3体積%、熱伝導性フィラー(窒化ホウ素)の含有割合は、36体積%であった。
【0121】
そして、得られた透明熱伝導性組成物のシートの熱伝導率は、7.2W/m・Kであった。
【0122】
また、ヘイズ値は、5.9%、全光線透過率が、78%であった。
【0123】
また、高屈折率フィラーを含む樹脂の屈折率を測定したところ、1.74であり、一方、高屈折率フィラーを含まない樹脂の屈折率は、1.71であった。また、熱伝導性フィラーの屈折率は、1.74であり、上記の高屈折率フィラーを含む樹脂の屈折率との差の絶対値は、0であった。
【0124】
実施例3
攪拌機、還流冷却器および窒素導入管を備えた容器において、高屈折率フィラーとしての平均粒子径7nmの酸化ジルコニウム(屈折率1.86)の水分散液(商品名NZD−3005 固形分濃度30質量% 住友大阪セメント製)10.0gに、2−プロパノール10.0gと、メトキシエタノール2gと、濃硝酸1滴とを加え、pHを2程度に調整した。
【0125】
次いで、シリコーン樹脂原料として、メチル系シリコーンアルコキシオリゴマー(商品名X−40−9225 中分子量タイプ 信越化学製)4gと、メチル系シリコーンアルコキシオリゴマー(商品名X−40−9246 高分子量タイプ 信越化学製)2gとを、70℃にて2時間かけて滴下し、その後、反応温度を100℃に昇温して1時間加熱攪拌した。
【0126】
次いで、熱伝導性フィラーとして破砕シリカ(商品名SQ−H22 熱伝導率2.5W/m・K 屈折率1.45 平均粒子径約22μm 林化成)5gを加え、攪拌した後、室温まで冷却して、減圧下において低沸点成分を除去した。
【0127】
その後、得られた分散液を、シリコーン剥離処理を施したポリエチレンテレフタレート基材に、乾燥後の膜厚が100μmとなるように塗工し、100℃で1時間乾燥した。次いで、150℃で5時間加熱して硬化させることにより、透明熱伝導性組成物をシート状に成形した。
【0128】
なお、透明熱伝導性組成物の総量に対して、高屈折率フィラー(酸化ジルコニウム)の含有割合は、9体積%、熱伝導性フィラー(破砕シリカ)の含有割合は、31体積%であった。
【0129】
そして、得られた透明熱伝導性組成物のシートの熱伝導率は、0.6W/m・Kであった。
【0130】
また、ヘイズ値は、1.8%、全光線透過率が、89%であった。
【0131】
また、高屈折率フィラーを含む樹脂の屈折率を測定したところ、1.45であり、一方、高屈折率フィラーを含まない樹脂の屈折率は、1.41であった。また、熱伝導性フィラーの屈折率は、1.45であり、上記の高屈折率フィラーを含む樹脂の屈折率との差の絶対値は、0であった。
【0132】
比較例1
高屈折率フィラーを配合しない以外は、実施例1と同様にして、透明熱伝導性組成物を調製し、透明熱伝導性組成物を100μmのシート状に成形した。
【0133】
そして、得られた透明熱伝導性組成物のシートの熱伝導率は、1.2W/m・Kであった。
【0134】
また、ヘイズ値は、12.4%、全光線透過率が、58%であった。
【0135】
比較例2
高屈折率フィラーを配合しない以外は、実施例2と同様にして、透明熱伝導性組成物を調製し、透明熱伝導性組成物を100μmのシート状に成形した。
【0136】
そして、得られた透明熱伝導性組成物のシートの熱伝導率は、6.9W/m・Kであった。
【0137】
また、ヘイズ値は、16.4%、全光線透過率が、11%であった。
【0138】
比較例3
高屈折率フィラーを配合しない以外は、実施例3と同様にして、透明熱伝導性組成物を調製し、透明熱伝導性組成物を100μmのシート状に成形した。
【0139】
そして、得られた透明熱伝導性組成物のシートの熱伝導率は、0.6W/m・Kであった。
【0140】
また、ヘイズ値は、11.4%、全光線透過率が、62%であった。
【0141】
実施例4
熱プレスにおいて10分間保持しなかった以外は実施例1と同様にして、透明熱伝導性組成物を調製するとともにシート状(半固形状態(Bステージ))に成形した。
【0142】
次いで、光半導体としての青色発光ダイオード(商品名C460MB290 クリー製)を、上記のシートで、常法により封止した。
【0143】
青色発光ダイオードの明るさとして、その輝度を、輝度計(MCPD−3000 大塚電子)を用いて測定した。
【0144】
透明熱伝導性組成物による封止前の輝度を100%として、その輝度を比較することにより、光の取り出し効率を求めたところ、光の取り出し効率は、封止前に対して、170%であった。
【0145】
また、青色発光ダイオードの放熱特性を評価するための、サーモグラフィー(FLIR SC660 FLIR製)により、発光ダイオード点灯時の温度を測定したところ、チップ周辺の温度が70℃であった。
【0146】
比較例4
封止材として、市販品のシリコーンエラストマー(商品名KE−1052 信越化学社製)を用いた以外は、実施例4と同様にして、光半導体を封止した。
【0147】
また、青色発光ダイオードの明るさとして、その輝度を、輝度計(MCPD−3000 大塚電子)を用いて測定した。
【0148】
透明熱伝導性組成物による封止前の輝度を100%として、その輝度を比較することにより、光の取り出し効率を求めたところ、光の取り出し効率は、封止前に対して、160%であった。
【0149】
また、青色発光ダイオードの放熱特性を評価するための、サーモグラフィー(FLIR SC660 FLIR製)により、発光ダイオード点灯時の温度を測定したところ、チップ周辺の温度が約100℃であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、フィラーとを含有し、
前記フィラーが、平均粒子径が1〜100μmであり、熱伝導率が2W/m・K以上である熱伝導性フィラーと、平均粒子径が1〜100nmであり、屈折率が1.8以上である高屈折率フィラーとを含有していることを特徴とする、透明熱伝導性組成物。
【請求項2】
100μmの厚みにおいて、
ヘイズ値が、0%を超過し10%以下であり、
全光線透過率が、70%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の透明熱伝導性組成物。
【請求項3】
前記熱伝導性フィラーの含有割合が、透明熱伝導性組成物の総量に対して、30〜90体積%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の透明熱伝導性組成物。
【請求項4】
前記高屈折率フィラーの含有割合が、透明熱伝導性組成物の総量に対して、10体積%以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の透明熱伝導性組成物。
【請求項5】
前記高屈折率フィラーが、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛およびチタン酸バリウムからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の透明熱伝導性組成物。
【請求項6】
光半導体を封止するための封止材として用いられることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の透明熱伝導性組成物。

【公開番号】特開2012−229317(P2012−229317A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97896(P2011−97896)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】