説明

透明物品およびその製造方法

【課題】有機物である光吸収剤を含みながらも、機械的強度に優れたシリカ系膜を提供する。
【解決手段】透明基体1と、前記透明基体の表面に形成された有機物および無機酸化物を含む有機無機複合膜2とを含む透明物品であって、前記有機無機複合膜が前記無機酸化物としてシリカを含み、前記有機無機複合膜が前記シリカを主成分とし、前記有機無機複合膜の表面に対して実施するJIS R 3212に規定されたテーバー摩耗試験の後に、前記有機無機複合膜が前記透明基体から剥離せず、前記有機物の少なくとも一部が紫外線吸収剤である、透明物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明基体と透明基体上に形成された薄膜とを有し、この薄膜が有機物である光吸収剤を含む透明物品に関する。また、本発明は、この透明物品のゾルゲル法による製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス材料は一般に硬質であり、基体を被覆する膜の形態でも利用される。しかし、ガラス質の膜を得ようとすると、熔融法では高温処理が必要になるため、基体および膜を構成する材料が制限される。
【0003】
ゾルゲル法は、金属の有機または無機化合物の溶液を出発原料とし、溶液中の化合物の加水分解反応および縮重合反応によって、溶液を金属の酸化物または水酸化物の微粒子が溶解したゾルとし、さらにゲル化させて固化し、このゲルを必要に応じて加熱して酸化物固体を得る方法である。
【0004】
ゾルゲル法は、低温でのガラス質の膜の製造を可能とする。ゾルゲル法によりシリカ系膜を形成する方法は、例えば、特開平11−269657号公報に開示されている。
【0005】
一般に、ゾルゲル法により形成したシリカ系膜は、熔融法により得たガラス質の膜と比較すると、機械的強度に劣る。
【0006】
特開平11−269657号公報には、シリコンアルコキシドおよびその加水分解物(部分加水分解物を含む)の少なくとも1つがシリカ換算で0.010〜3重量%、酸0.0010〜1.0規定、および水0〜10重量%を含有するアルコール溶液をコーティング液として基体に塗布してシリカ系膜を形成する方法、が開示されている。
【0007】
この方法により得られたシリカ系膜は、乾布摩耗試験に耐える程度の強度を有し、十分であるとは言えないまでも、ゾルゲル法により得られた膜としては、良好な機械的強度を有する。しかし、特開平11−269657号公報が開示する方法により成膜できるシリカ系膜は、実用に耐える外観を確保しようとすると、その膜厚が最大でも250nmに制限される。ゾルゲル法により形成されるシリカ系膜の厚みは、通常、100〜200nm程度である。
【0008】
コーティング液を複数回に渡って塗布して多層膜を形成することで、シリカ系膜を厚膜化することができる。しかし、各層の界面の密着性が低くなり、シリカ系膜の耐摩耗性が低下する場合がある。また、シリカ系膜の製造プロセスが複雑化するという問題もある。
【0009】
以上のような事情から、ゾルゲル法により、膜厚が250nmを超える程度に厚く、かつ機械的強度に優れたシリカ系膜を得ることは困難であった。
【0010】
ゾルゲル法により、無機物と有機物とを複合させた有機無機複合膜を形成する技術が提案されている。ゾルゲル法は、低温での成膜を特徴とするため、有機物を含むシリカ系膜の成膜を可能とする。ゾルゲル法による有機無機複合膜は、例えば、特開平3−212451号公報、特開平3−56535号公報、特開2002−338304号公報に開示されている。
【0011】
ゾルゲル法によるシリカ系膜の機械的強度を向上させるには、シリカ系膜を450℃以上で熱処理することが望ましい。しかし、有機無機複合膜をこの程度の高温で熱処理すると、膜中の有機物が分解してしまう。有機物が分解しない範囲で熱処理しなければならないという制約は、ゾルゲル法以外の液相成膜法においても、形成する膜の機械的強度の向上を制限している。このため、有機物を含む場合には、機械的強度に優れたシリカ系膜を形成することが困難であると考えられてきた。
【0012】
ガラス、樹脂等の透明基体には、種々の目的から、有機物である光吸収剤を含有する膜が形成されることがある。このような膜は、光吸収剤の吸収波長に応じて、着色コーティング、偏光板、色変換フィルタ(特開2000−182780号公報)、光学フィルタ(特開2005−189738号公報)、カラーフィルタ(特開2000−111721号公報)、発光素子(特開2000−150156号公報)、光ディスクに代表される光記録媒体(特開2003−217174号公報)など多くの応用がなされている。
【発明の開示】
【0013】
本発明は、有機物である光吸収剤を含みながらも、機械的強度に優れたシリカ系膜を提供することを目的とする。
【0014】
本発明は、透明基体と、前記透明基体の表面に形成された有機物および無機酸化物を含む有機無機複合膜とを含む透明物品であって、前記有機無機複合膜が前記無機酸化物としてシリカを含み、前記有機無機複合膜が前記シリカを主成分とし、前記有機無機複合膜の表面に対して実施するJIS R 3212に規定されたテーバー摩耗試験の後に、前記有機無機複合膜が前記透明基体から剥離せず、前記有機物の少なくとも一部が紫外線吸収剤である、透明物品を提供する。
【0015】
本発明は、その別の側面から、透明基体と、前記透明基体の表面に形成された有機物および無機酸化物を含む有機無機複合膜とを含む透明物品であって、前記有機無機複合膜が前記無機酸化物としてシリカを含み、前記有機無機複合膜が前記シリカを主成分とし、前記有機無機複合膜の表面に対して実施するJIS R 3212に規定されたテーバー摩耗試験の後に、前記有機無機複合膜が前記透明基体から剥離せず、前記有機物の少なくとも一部が有機色素である、透明物品を提供する。
【0016】
本明細書において、主成分とは、含有率が最も高い成分をいう。含有率は質量%基準で評価する。JIS R 3212によるテーバー摩耗試験は、市販のテーバー摩耗試験機を用いて実施できる。この試験は、上記JISに規定されているとおり、500g重の荷重を印加しながら行う、回転数1000回の摩耗試験である。
【0017】
本発明は、その別の側面から、透明基体と、前記透明基体の表面に形成された有機物および無機酸化物を含む有機無機複合膜とを含み、前記有機無機複合膜が前記無機酸化物としてシリカを含み、前記有機無機複合膜が前記シリカを主成分とし、前記有機物の少なくとも一部が紫外線吸収剤である、透明物品の製造方法であって、前記透明基体の表面に前記有機無機複合膜の形成溶液を塗布する工程と、前記透明基体に塗布された形成溶液から当該形成溶液に含まれる液体成分の少なくとも一部を除去する工程と、を含み、前記形成溶液が、シリコンアルコキシド、強酸、水、アルコール、および有機物を含み、前記有機物の少なくとも一部が紫外線吸収剤であり、前記シリコンアルコキシドの濃度が、当該シリコンアルコキシドに含まれるシリコン原子をSiO2に換算したときのSiO2濃度により表示して3質量%を超え、前記強酸の濃度が、前記強酸からプロトンが完全に解離したと仮定したときのプロトンの質量モル濃度により表示して0.001〜0.2mol/kgの範囲にあり、前記水のモル数が、前記シリコンアルコキシドに含まれるシリコン原子の総モル数の4倍以上であり、前記透明基体を400℃以下の温度に保持しながら、前記透明基体に塗布された形成溶液に含まれる液体成分の少なくとも一部を除去する、透明物品の製造方法を提供する。
【0018】
本発明は、その別の側面から、透明基体と、前記透明基体の表面に形成された有機物および無機酸化物を含む有機無機複合膜とを含み、前記有機無機複合膜が前記無機酸化物としてシリカを含み、前記有機無機複合膜が前記シリカを主成分とし、前記有機物の少なくとも一部が有機色素である、透明物品の製造方法であって、前記透明基体の表面に前記有機無機複合膜の形成溶液を塗布する工程と、前記透明基体に塗布された形成溶液から当該形成溶液に含まれる液体成分の少なくとも一部を除去する工程と、を含み、前記形成溶液が、シリコンアルコキシド、強酸、水、アルコール、および有機物を含み、かつ、前記有機物として有機色素を含み、前記シリコンアルコキシドの濃度が、当該シリコンアルコキシドに含まれるシリコン原子をSiO2に換算したときのSiO2濃度により表示して3質量%を超え、前記強酸の濃度が、前記強酸からプロトンが完全に解離したと仮定したときのプロトンの質量モル濃度により表示して0.001〜0.2mol/kgの範囲にあり、前記水のモル数が、前記シリコンアルコキシドに含まれるシリコン原子の総モル数の4倍以上であり、前記透明基体を400℃以下の温度に保持しながら、前記透明基体に塗布された形成溶液に含まれる液体成分の少なくとも一部を除去する、透明物品の製造方法を提供する。
【0019】
本発明によれば、ゾルゲル法により、膜厚が250nmを超える程度に厚くても、膜の機械的強度に優れ、光吸収能が高い有機無機複合膜を形成できる。有機物を含むにもかかわらず、本発明による有機無機複合膜は、熔融法により得たガラス板に匹敵する程度に優れた耐摩耗性を有しうる。
【0020】
本発明の製造方法によれば、形成溶液の一度の塗布により、例えば膜厚が250nmを超える程度に厚く、機械的強度に優れるとともに光吸収能が高い膜を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の透明物品の一例を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の液晶ディスプレイパネル用バックライトの使用状態の一例を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の液晶ディスプレイパネルの使用状態の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、まずゾルゲルプロセスについて説明する。
【0023】
シリコンアルコキシドを出発原料とするゾルゲル法の場合、膜の形成溶液(コーティング液)に含まれるシリコンアルコキシドは、コーティング液中において、水と触媒との存在の下、加水分解反応および縮重合反応を経てシロキサン結合を介したオリゴマーとなり、これに伴ってコーティング液はゾル状態となる。
【0024】
ゾル状態となったコーティング液は基体(透明基体)に塗布され、塗布されたコーティング液からはアルコールなどの有機溶媒、水が揮発する。この乾燥工程において、オリゴマーは濃縮され、縮重合反応が進行して分子量が大きくなり、やがて流動性を失う。こうして、基体上に半固形状のゲルからなる膜が形成される。ゲル化の直後は、シロキサン結合のネットワークの隙間に、有機溶媒や水が満たされている。ゲルから溶媒や水が揮発すると、シロキサンポリマーが収縮し、縮重合反応がさらに進行して、膜が硬化する。
【0025】
従来のゾルゲル法により得たゲルでは、有機溶媒や水が除去された後に残された隙間は、400℃程度までの熱処理を行った後にも、完全に埋まることなく細孔として残存していた。細孔が残ると、膜の機械的強度は十分に高くはならない。このため、従来は、硬質な膜を得るために、400℃を上回る高温、例えば450℃以上、好ましくは500℃以上、での熱処理を必要としていた。
【0026】
ゾルゲル法によるシリカ系膜の熱処理における、反応と温度との関係についてさらに詳しく述べる。約100〜150℃の熱処理では、コーティング液に含まれている溶媒や水が蒸発する。約250〜400℃の熱処理では、原料に有機材料が含まれていると、その有機材料が分解し、蒸発する。400℃を超える温度で熱処理すると、通常、膜には有機材料が残らない。約500℃以上の熱処理では、ゲル骨格の収縮が起こり、膜が緻密になる。
【0027】
上記のとおり、通常のゾルゲル反応では、ゲル化の直後には、形成されたネットワークの隙間に有機溶媒や水が満たされている。この隙間の大きさは、溶液中でのシリコンアルコキシドの重合の形態に依存することが知られている。
【0028】
重合の形態は、溶液のpHによって大きく変化する。酸性の液中では、シリコンアルコキシドのオリゴマーは直鎖状に成長しやすい。このような液を基体に塗布すると、直鎖状のオリゴマーが折り重なって網目状組織を形成し、得られる膜は比較的隙間の小さい緻密な膜となる。しかし、直鎖状のポリマーが折り重なった状態で固化されるため、ミクロ構造は強固ではなく、隙間から溶媒や水が揮発する際にクラックが入りやすい。
【0029】
一方、アルカリ性の液中では、球状のオリゴマーが成長しやすい。このような液を基体に塗布すると、球状のオリゴマーが互いにつながった構造を形成し、比較的大きな隙間を有する膜となる。この隙間は、球状のオリゴマーが結合し成長して形成されるため、隙間から溶媒や水が揮発する際にクラックは入りにくい。
【0030】
本発明者は、比較的緻密な膜を形成できる酸性領域で、強酸の濃度、水分量などを適切に調整すると、ある条件下では、厚膜としても緻密でクラックのない膜を形成できるという知見を見出し、さらにこの知見を発展させることにより、本発明を完成した。
【0031】
シラノールの等電点は2であることが知られている。これは、コーティング液のpHが2であると、液中においてシラノールが最も安定に存在できる、ということを示している。つまり、加水分解されたシリコンアルコキシドが溶液中に多量に存在する場合においても、溶液のpHが2程度であれば、脱水縮重合反応によりオリゴマーが形成される確率が非常に低くなる。この結果、加水分解されたシリコンアルコキシドが、モノマーまたは低重合の状態で、コーティング液中に存在しやすくなる。
【0032】
pHが2程度の領域では、シリコンアルコキシドは、1分子当たり1個のアルコキシル基が加水分解され、シラノールとなった状態で安定化される。例えば、テトラアルコキシシランには4つのアルコキシル基があるが、そのうちの1つのアルコキシル基が加水分解され、シラノールとなった状態で安定化されるのである。
【0033】
ゾルゲル溶液に、強酸を添加し、強酸のプロトンが完全に解離したとしたときのプロトンの質量モル濃度(以下、単に「プロトン濃度」と称することがある)で、0.001〜0.2mol/kg、好ましくは0.001〜0.1mol/kg程度となるようにすると、溶液のpHは3〜1程度となる。この範囲にpHを調整すると、コーティング液中で、シリコンアルコキシドがモノマーまたは低重合のシラノールとして安定して存在することができる。
【0034】
コーティング液は、水およびアルコールの混合溶媒を含み、必要に応じて他の溶媒を添加することが可能であるが、そのような混合溶媒の場合にも、強酸を用い、かつ強酸からプロトンが完全に解離したと仮定したときのプロトンの質量モル濃度を上記の範囲となるようにすることで、pH2前後の液とすることができる。
【0035】
プロトンの質量モル濃度の計算に当たっては、使用する酸の水中での酸解離指数が、4以上のプロトンを考慮する必要はない。例えば、弱酸である酢酸の水中での酸解離指数は4.8であるから、コーティング液に酢酸を含ませた場合にも、酢酸のプロトンは上記のプロトン濃度には含めない。
【0036】
また例えば、リン酸の解離段は3段であり、1分子につき3つのプロトンが解離する可能性がある。しかし、1段目の解離指数は2.15であり強酸とみなせるが、2段目の解離指数は7.2であり、3段目の解離指数はさらに大きい値となる。したがって、強酸からの解離を前提とする上記のプロトン濃度は、リン酸1分子からは、1個のプロトンしか解離しないものとして計算すればよい。1個のプロトンが解離した後のリン酸は強酸ではなく、2段目以降のプロトンの解離を考慮する必要はない。本明細書において、強酸とは、具体的には、水中での酸解離指数が4未満のプロトンを有する酸をいう。
【0037】
なお、プロトン濃度を強酸のプロトンが完全に解離したとしたときの濃度として規定する理由は、アルコールのような有機溶媒と水との混合液中では、強酸の解離度を正確に求めることが困難であるためである。
【0038】
このようにコーティング液のpHを1〜3程度に保ち、これを基体表面に塗布して乾燥させると、低重合状態にあるシリコンアルコキシドが密に充填されるため、細孔が小さく、かなり緻密な膜が得られる。
【0039】
この膜は緻密ではあるが、シリコンアルコキシドの加水分解および縮重合反応が不十分であることに起因して、200〜300℃の低温度域での加熱では、ある硬度以上にはならない。そこで、シリコンアルコキシドの加水分解および縮重合反応が、コーティング液の塗布後において容易に進行するように、水を、シリコンアルコキシドに対して過剰に添加することとした。加水分解および縮重合反応が進行しやすい状態とすると、高温に加熱しなくても膜が硬くなる。具体的には、シリコンアルコキシドに含まれるシリコン原子の総モル数に対し、加水分解に必要とされる最大のモル数、すなわち4倍以上のモル数の水を添加しておくこととする。水の添加量の上限は例えば20倍とすることができる。
【0040】
コーティング液の乾燥時には、溶媒の揮発と並行して水も蒸発する。これを考慮すると、水のモル数は、シリコン原子の総モル数に対し、4倍を超える程度、例えば5倍〜20倍、とすることが好ましい。
【0041】
なお、シリコンアルコキシドでは、1つのシリコン原子について最大4つのアルコキシル基が結合しうる。アルコキシル基の数が少ないアルコキシドでは、加水分解に必要な水のモル数は少なくなる。また、4つのアルコキシル基がシリコン原子に結合したテトラアルコキシシランであっても、その重合体(例えば、コルコート製「エチルシリケート40」などとして市販されている)では、加水分解に必要な水の総モル数は、シリコン原子の4倍よりも少ない(重合体のSiのモル数をnとすると(n≧2)、化学量論的に加水分解に必要な水のモル数は、(2n+2)モルとなる)。重合度の高いアルコキシシラン原料を使うほど、加水分解に必要な水のモル数は少なくなる。したがって、現実には、シリコンアルコキシドの加水分解に必要な水のモル数は、シリコンアルコキシドに含まれるシリコン原子の総モル数の4倍を下回ることもあるが、過剰な水の添加がむしろ好ましいことを考慮し、本発明による方法では、コーティング液に、シリコン原子の総モル数の4倍以上のモル数の水を含有させることとした。
【0042】
化学量論的に加水分解に必要なモル数を超える水を添加すると、乾燥工程における水の蒸発に伴う毛管収縮が大きくなり、シリコンアルコキシドの拡散および濃縮が起こりやすくなり、加水分解および縮重合反応が促進される。溶媒の揮発および水の蒸発に伴って、塗布されたコーティング液のpHが上記の範囲から変動することも、加水分解および縮重合反応が促進される要因の一つとなる。こうして、緻密な膜を形成し、かつ加水分解および縮重合反応を十分に進行させると、硬質の膜が形成される。その結果、従来よりも低温の熱処理により、機械的強度に優れた単層の膜を得ることができる。
【0043】
この方法を用いると、厚くても機械的強度に優れたシリカ系膜を得ることができる。厚い膜を得るためには、シリコンアルコキシドの濃度が比較的高くなるように、例えばシリコンアルコキシドに含まれるシリコン原子を、SiO2に換算したときのSiO2濃度により表示して3質量%を超えるように、コーティング液を調製するとよい。
【0044】
本発明による方法では、従来よりも低温で焼成すれば足りるため、光吸収剤に代表される有機物をコーティング液に添加しても、有機物は膜中で分解せずに残存する。こうして、本発明によれば、機械的強度に優れ、光吸収能が高いシリカ系膜を形成することが可能となる。このシリカ膜は、それ自体が機械的強度に優れている。したがって、実用的な機械的強度を得るために、シリカ系膜の上にハードコート層などを形成する必要はない。このように、本発明の有機無機複合膜は、単層であっても機械的強度に優れている。
【0045】
コーティング液には、さらに、親水性有機ポリマーを添加するとよい。親水性有機ポリマーは、塗布したコーティング液に含まれる液体成分の蒸発に伴って、生じることのあるクラックの発生を抑制する。また、親水性有機ポリマーは、液中に生成したシリカ粒子の間に介在し、液体成分の蒸発に伴う膜収縮の影響を緩和する。このように、親水性有機ポリマーを添加すると、膜の過剰な硬化収縮を抑えることができるため、膜中の応力が緩和されると考えられる。親水性有機ポリマーは、膜の収縮を抑制し、膜の機械的強度を保持する役割を果たすこととなる。
【0046】
本発明による方法では、従来よりも低温で膜を加熱すれば足りるため、加熱後も親水性有機ポリマーは膜に残存することとなる。このため、さらに厚膜化しても、親水性有機ポリマーが膜中に存在した状態で、機械的強度に優れた膜を得ることが可能となる。このように有機無機複合膜は、有機物として親水性有機ポリマーを含んでいてもよい。
【0047】
親水性有機ポリマーは、予めコーティング液に添加しておくとよい。このコーティング液から形成した有機無機複合膜では、有機物と無機物とが分子レベルで複合化していると考えられる。
【0048】
種々の実験結果を参照すると、親水性有機ポリマーは、ゾルゲル反応によって形成されるシリカ粒子の成長を抑制し、膜の多孔質化を抑制しているようでもある。
【0049】
親水性有機ポリマーとしては、ポリオキシアルキレン基を含むポリマーを例示できる。ポリオキシアルキレン基を含む親水性有機ポリマーとしては、ポリエチレングリコール、ポリエーテル型の界面活性剤を例示できる。
【0050】
コーティング液には、紫外線吸収能を有する親水性有機ポリマーを紫外線吸収剤として添加してもよいし、紫外線吸収能を有しない親水性有機ポリマーを添加してもよい。
【0051】
紫外線吸収能を有しない親水性有機ポリマーとしては、ポリオキシアルキレン基(ポリアルキレンオキシド構造)を含むポリマーや、ポリビニルカプロラクタム、PVP(ポリビニルピロリドン)とビニルエーテルの共重合体などを例示できる。
【0052】
コーティング液には、その他の成分、例えばリン酸、リン酸塩、リン酸エステルなどのリン供給源を添加してもよい。
【0053】
以上のようなゾルゲル法の改善により、本発明によれば、有機物を含むにもかかわらず、JIS R 3212に規定されたテーバー摩耗試験を適用しても、基体から剥離せず、光吸収能を有する有機無機複合膜が形成された物品、が提供される。
【0054】
有機無機複合膜の膜厚は、例えば250nmを超え5μm以下であり、好ましくは300nmを超え5μm以下であり、さらに好ましくは500nm以上5μm以下である。この膜厚は、1μm以上、さらには1μmを超えていてもよく、4μm以下であってもよい。
【0055】
本発明によれば、テーバー摩耗試験の後に測定した、当該テーバー摩耗試験を適用した部分のヘイズ率を4%以下、さらには3%以下、とすることもできる。これは、熔融法により得たガラス質膜に相当する機械的強度である。
【0056】
本発明による有機無機複合膜では、光吸収剤(例えば紫外線吸収剤、有機色素)に代表される有機物の質量が、有機無機複合膜の総質量に対して0.1〜40%、特に2〜40%、であることが好ましい。本発明による有機無機複合膜はリンを含んでいてもよい。
【0057】
本発明による有機無機複合膜は、微粒子を含んでいてもよい。微粒子の添加により、膜に機能を付加できる。本明細書では、「微粒子」を、5nm以上の粒径を有する粒子を意味する用語として用いる。「微粒子」の粒径は、5nm以上10μm以下、好ましくは5nm以上300nm以下である。微粒子は特に限定されず、例えば有機物微粒子、導電性酸化物微粒子(例えば、インジウム錫酸化物微粒子、アンチモン錫酸化物微粒子)などを挙げることができる。有機物微粒子としては、ラテックスなどを例示できる。
【0058】
本発明によれば、微粒子を1質量%以上含みながらも、上記テーバー摩耗試験の後に測定した、当該テーバー摩耗試験を適用した部分のヘイズ率が4%以下、好ましくは3%以下、である有機無機複合膜を形成することも可能である。
【0059】
本発明の方法では、シリコンアルコキシド、強酸、水およびアルコールを含み、さらに有機物を含むコーティング液を用いる。有機物の少なくとも一部は光吸収剤である。有機物の別の一部は、紫外線吸収能を有しない親水性有機ポリマーであってよい。親水性有機ポリマーは、通常、強酸とは別の成分として添加されるが、強酸として機能するポリマー、例えばリン酸エステル基を含むポリマー、を強酸の少なくとも一部として添加してもよい。
【0060】
紫外線吸収剤は、紫外域(長波長側の境界は400nmである)における膜の吸収を増大させる成分である。紫外線吸収剤は、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒドロキシフェニルトリアジン系およびシアノアクリレート系から選ばれる少なくとも1種の化合物である。これらの化合物の中には、色素として販売されているものもあるが、一般的な分類を考慮して、本明細書では有機色素には該当しないものとする。紫外線吸収剤は、ポリメチン系、イミダゾリン系、クマリン系、ナフタルイミド系、ペリレン系、アゾ系、イソインドリノン系、キノフタロン系およびキノリン系から選ばれる少なくとも1種の有機色素であってもよい。紫外線吸収能を有する有機色素を用いると、長波長側の紫外線をより確実に遮蔽できる。ポリメチン系有機色素は、シアニン系、メロシアニン系、スリチル系およびローダシアニン系から選ばれる少なくとも1種の有機色素を含む。アゾ系有機色素は、スチルベン系有機色素を含む。
【0061】
本明細書では、有機色素を、300nm以上2500nm以下の波長に吸収を有する有機物を意味する用語として用いる。有機色素は、例えば、300nm以上400nm以下の波長に吸収を有する、ポリメチン系など上記に列挙した紫外線吸収能を有する有機色素を含んでいてもよい。有機色素は、また例えば、紫外線吸収能を有しない有機色素、より具体的には、紫外線吸収能を有さず、可視光域(400〜700nm)および/または近赤外域(700〜2500nm)に吸収を有する有機色素であってもよい。有機色素は、近赤外域に吸収を有する有機色素を含んでいてもよい。
【0062】
有機色素および/または紫外線吸収剤である光吸収剤は、コーティング液に十分に溶解、分散しうるため、本発明の有機無機複合膜では、光吸収剤は微粒子として含まれていなくてもよい。このように、本発明の有機無機複合膜は、微粒子を含まない膜であってもよい。
【0063】
有機物は、紫外線吸収剤に加え、紫外線吸収能を有しない有機色素および紫外線吸収能を有しない親水性有機ポリマーから選ばれる少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。
【0064】
有機無機複合膜やコーティング液は、有機物として、紫外線吸収剤に加え、近赤外域に吸収を有する有機色素を含んでいてもよい。また、有機無機複合膜やコーティング液は、紫外線吸収剤に加え、微粒子として、インジウム錫酸化物およびアンチモン錫酸化物微粒子から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。また、有機無機複合膜やコーティング液は、有機物として、紫外線吸収剤に加え、近赤外域に吸収を有する有機色素を含むとともに、微粒子として、インジウム錫酸化物およびアンチモン錫酸化物微粒子から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0065】
本明細書において、有機物が紫外線吸収能を有するか否かは、400nm以下の波長に吸収を有するか否かに基づいて判断する。また、有機物が近赤外域に吸収を有するか否かは、700〜2500nmの波長範囲に吸収を有するか否かに基づいて判断する。
【0066】
シリコンアルコキシドは、テトラアルコキシシランおよびその重合体から選ばれる少なくとも1種が好適である。シリコンアルコキシドおよびその重合体は、加水分解されたアルコキシル基を含んでいてもよい。
【0067】
シリコンアルコキシドの濃度は、当該シリコンアルコキシドに含まれるシリコン原子をSiO2に換算したときのSiO2濃度により表示して、3質量%以上であればよく、30質量%以下、14質量%以下、さらには14質量%未満であってもよい。コーティング液におけるシリコンアルコキシドの濃度が高すぎると、基体から剥離するようなクラックが発生することがある。
【0068】
有機物の濃度は、シリコンアルコキシドの濃度をSiO2濃度により表示したときの当該SiO2に対して60質量%以下とするとよい。有機物の濃度は、上記SiO2に対して0.1質量%以上、特に5質量%以上、とすることが好ましい。
【0069】
本発明の方法における乾燥工程では、基体上に塗布された形成溶液の液体成分、例えば水およびアルコール、の少なくとも一部、好ましくは実質的に全部、が除去される。
【0070】
乾燥工程は、室温(例えば20℃)で行われる風乾工程と、室温よりも高温でかつ300℃以下、例えば100〜200℃、の雰囲気中で行われる熱処理工程と、をこの順に含むことが好ましい。風乾工程は、相対湿度が40%以下、さらには30%以下に制御された雰囲気中で行うとよい。相対湿度を上記程度に制御することにより、膜のクラックの発生をより確実に防止できる。なお、風乾工程における相対湿度の下限は、特に制限されず、15%、さらには20%であってよい。風乾工程では、形成溶液の塗布方法によって異なるが、どのような塗布方法においても、少なくとも数秒間(例えば2〜3秒以上)の風乾時間が存在する。風乾時間の上限は、例えば製造工程におけるバッチの都合により、数分から数十分以下、例えば5分、10分、20分などとするとよく、さらには24時間以下としてもよい。
【0071】
形成溶液の塗布の際に基体が接する雰囲気も制御することが好ましい。本発明の方法では、雰囲気の相対湿度を40%以下に保持しながら、形成溶液を透明基体に塗布することが好ましい。塗布時の雰囲気の相対湿度が高すぎると、膜が十分に緻密化せず、膜にクラックが発生することがある。
【0072】
本発明によれば、形成溶液を塗布する工程と、塗布された当該形成溶液に含まれる液体成分の少なくとも一部を除去する工程と、をそれぞれ1回ずつ実施することにより、膜厚が例えば250nmを超え5μm以下である程度に厚い単層の有機無機複合膜を形成することができる。
【0073】
本発明の製造方法に用いる強酸としては、塩酸、硝酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸を例示できる。強酸のうち、揮発性の酸は、加熱時に揮発して硬化後の膜中に残存することがないので、好ましく用いることができる。硬化後の膜中に酸が残ると、無機成分の結合の妨げとなって、膜硬度が低下するおそれがあることが知られている。
【0074】
本発明による有機無機複合膜は、比較的低温の熱処理で熔融ガラスに匹敵する膜硬度を有している。この有機無機複合膜を、自動車用あるいは建築用の窓ガラスに適用しても、十分実用に耐える。
【0075】
有機物の多くは、200〜300℃の温度で分解が始まるものが多い。無機物であっても、例えばインジウム錫酸化物(ITO)微粒子は、250℃以上の加熱で熱遮蔽能が低下する。
【0076】
本発明では、必要に応じ、液体成分の除去に際して透明基体を加熱するとよい。この場合は、機能性材料の耐熱性に応じ、適宜、透明基体の加熱温度を調整すべきである。本発明では、100〜300℃の加熱であっても、有機無機複合膜を十分に硬化させることが可能である。
【0077】
透明基体としては、ガラス板または樹脂板を例示できる。厚さが0.1mmを超える、さらには0.3mm以上、特に0.5mm以上の透明基体を用いると、クラックの発生やテーバー摩耗試験後の膜剥離をより確実に防止できる。基体の厚さの上限は特に制限されないが、例えば20mm以下、さらには10mm以下であってよい。
【0078】
本発明によれば、優れた紫外線吸収能を発揮しながらも、可視光線透過率が70%以上、好ましくは85%以上、である透明物品を提供できる。ただし、本明細書にいう「透明物品」は、その物品を透して反対側を見ることができる程度の透明性を有する物品の意味であり、その可視光線透過率が上記に制限されるわけではない。車両の窓ガラスとして用いるには、急冷処理により強化されたガラス板が多用されるが、本発明では、これに限らず、急冷処理により強化されたガラス板を除く各種ガラス板を透明基体としてもよい。急冷処理とは、加熱したガラス板をその表面から急速に冷却し(通常はガラス板の表面に空気を吹き付ける)、ガラス板の表面に圧縮応力層を形成する処理をいう。
【0079】
透明物品の紫外線遮蔽性能をさらに向上させるために、透明基体として、紫外線吸収成分を含むガラス組成を有するガラス板を用いてもよい。紫外線吸収成分としては、酸化チタンおよび酸化セリウムから選ばれる少なくとも1種が例示できる。また、透明基体として、紫外線吸収成分であるFe23の含有率を通常よりも高めたガラス板を用いてもよい。このようなガラス板としては、0.2質量%以上のFe23を含むガラス組成を有するガラス板が好ましい。紫外線吸収成分を含むガラス板は、3.1mmの厚みに成形したときに、紫外線透過率が5〜40%、波長370nmにおける光の透過率が20〜50%、可視光透過率が70%以上となる組成を有することが好ましい。
【0080】
本発明による透明物品は、透明基体として例えば紫外線吸収成分を含む上記のガラス板を用いることにより、紫外線透過率が1.1%以下、場合によっては0.8%以下であって、波長370nmにおける光の透過率が2.0%以下、場合によっては1.6%以下という、高い紫外線遮蔽能を有しうる。
【0081】
紫外線透過率が低くても紫外域における長波長側の光の透過率が高ければ、日焼け防止効果のように、紫外域における長波長側の光の遮蔽率にも影響を受ける効果を十分に得ることはできない。本発明による透明物品を窓ガラスとして用いると、皮膚の老化を促進し皮膚ガンを誘発する日焼けについて、高い防止効果を得ることができる。このように、本発明による透明物品は、車両用または建築用の窓ガラスであってもよい。この場合、透明基体はガラス板とするとよい。
【0082】
本発明の透明物品は、高い紫外線遮蔽能に限らず、近赤外線や所定波長の可視光線の高い遮蔽能も有しうる。
【0083】
高エネルギーの可視光線(青色光)は、紫外線と同様に、例えば、体内時計に代表される生体リズムの調整、成長ホルモンの分泌、性腺の周期的活動、血圧調整、免疫機能などの、脳の視床下部・下垂体系が司る、生体機能の維持活動に影響を与える。例えば、夜間に強い青色光を見ると体内時計が乱れる。また例えば、青色光以下の短波長光は、網膜の少し手前で結像されるため、網膜に達する前に散乱して眩しさを感じさせたり、ストレスを生じさせて免疫不全を引き起したりすることもある。本発明の透明物品によれば、生体への悪影響が大きい青色光以下の短波長光を顕著に遮蔽でき、健康で快適な空間を提供することができる。
【0084】
電子機器の遠隔操作用端末において使用される光信号の波長は800〜1200nmの範囲にある。このため、例えば、プラズマディスプレイから発生する短波長側の近赤外線(波長700〜1200nm)が端末の使用環境内に漏出すると、電子機器が端末からの信号を正確に読み取ることができず誤作動することがある。また、カメラなどの撮像素子や自動露出計などの受光素子の分光感度は可視域から近赤外域にあり、近赤外線を排除しなければ、人間の視感度とのズレから露出不足やカラーバランスなどの不具合を起こす。本発明の透明物品によれば、短波長側の近赤外線を選択的に遮蔽でき、電子機器の誤作動、撮像素子および受光素子の誤動作を防止できる。また、本発明の透明物品によれば、近赤外線(波長700〜2500nm)を顕著に遮蔽することにより太陽光線に含まれる熱線を遮蔽できる。
【0085】
本発明の透明物品は、図1に示すように、透明基体1の上に有機無機複合膜2が形成されたものである。
【0086】
本発明は、例えば、紫外線による樹脂部品の劣化を防止した、液晶ディスプレイ用バックライト、液晶ディスプレイパネルなどの提供にも適用できる。多くの樹脂部品から構成されている液晶ディスプレイでは、バックライトからの光に含まれる紫外線による樹脂部品の劣化が問題を引き起こす場合がある。本発明による有機無機複合膜は、その用途が限られるわけではないが、液晶ディスプレイのような樹脂を含むデバイスにおいて顕著な効果を発揮しうる。
【0087】
本発明による液晶ディスプレイ用バックライト100は、図2に示すように、発光面11を有する基体10と、基体10の発光面11に形成された有機物および無機酸化物を含む有機無機複合膜20とを含み、有機無機複合膜20が無機酸化物としてシリカを含み、有機無機複合膜20が当該シリカを主成分とし、有機無機複合膜20の表面に対して実施するJIS R 3212に規定されたテーバー摩耗試験の後に、有機無機複合膜20が基体10から剥離せず、上記有機物の少なくとも一部が紫外線吸収剤である、液晶ディスプレイ用バックライトである。液晶ディスプレイ用バックライト100は、有機無機複合膜20が面するように液晶ディスプレイパネル250の裏面側に配置される。
【0088】
また、本発明による液晶ディスプレイパネル200は、図3に示すように、光の透過面31を有する液晶パネル30と、液晶パネル30の透過面31に形成された有機物および無機酸化物を含む有機無機複合膜20とを含み、有機無機複合膜20が無機酸化物としてシリカを含み、有機無機複合膜20が当該シリカを主成分とし、有機無機複合膜20の表面に対して実施するJIS R 3212に規定されたテーバー摩耗試験の後に、有機無機複合膜20が液晶パネル30から剥離せず、上記有機物の少なくとも一部が紫外線吸収剤である、液晶ディスプレイパネルである。液晶ディスプレイパネル200の内部へと紫外線が入射する面を透過面31としてこの面31に紫外線遮蔽能を有する有機無機複合膜20を形成すると、ディスプレイ内部の樹脂の劣化を抑制できる。液晶ディスプレイパネル200は、透過面31が液晶ディスプレイ用バックライト150に面するように配置される。
【0089】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。
【0090】
(実施例A1)
実施例A1では、紫外線吸収剤として、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(親水性有機ポリマー)を用いた。
【0091】
純水16.61g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.90g、エチルアルコール(片山化学製)46.89g、エチルシリケート40(コルコート製)32.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中のシリコンアルコキシド(シリカ換算)、プロトン濃度、水の含有量などを、表1に示す。なお、水の含有量には、エチルアルコール中に含まれる水分(0.35質量%)を加えて計算している。プロトン濃度は、塩酸に含まれるプロトンがすべて解離したとして算出した。水の含有量およびプロトン濃度の計算方法は、以下のすべての実施例、比較例において同一である。
【0092】
なお、ここで用いた「エチルシリケート40」は、以下の式(1)で表され、シリカ分(SiO2)として40質量%相当分を含有する無色透明の液体である。さらには、鎖状構造の縮重合体の他に、分岐状または環状構造の縮重合体も含んでいる。「エチルシリケート40」に代表されるシリコンアルコキシドの重合体は、シリカの供給効率、粘度、比重、保存安定性などに優れており、使用時の取り扱いも容易であるため、シリコンアルコキシドの一部または全部として用いてもよい。
CH3CH2O(Si(OCH2CH32nOCH2CH3 (1)
ここで、nの平均値は5である。
【0093】
次いで、洗浄したソーダ石灰珪酸塩ガラス基板(100×100mm、厚み:3.1mm)上に、相対湿度(以下、単に「湿度」という)30%、室温下で、形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温(20℃)で約30分程度乾燥した後、予め200℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚2500nmの透明度の高い膜であった。
【0094】
なお、上記ソーダ石灰珪酸塩ガラス基板の組成は、以下のとおりである(単位:質量%)。
SiO2:72.3%、Al23:1.4%、MgO:4.1%、CaO:8.1%、Na2O:13.1%、K2O:0.7%、Fe23に換算した全酸化鉄:0.08%、SO3:0.2%。
【0095】
以下、当該組成を有するガラス基板を、FL基板と称する。
【0096】
膜の硬さの評価は、JIS R 3212に準拠した摩耗試験によって行った。すなわち、市販のテーバー摩耗試験機(TABER INDUSTRIES社製5150 ABRASER)を用い、500gの荷重で1000回摩耗を行い、摩耗試験前後のヘイズ率の測定を行った。膜厚、クラックの有無、テーバー試験前後のヘイズ率およびテーバー試験後の膜剥離の有無を表2に示す。なお、ブランクとして、熔融ガラス板である上記のFL基板についてのヘイズ率も表2に示す。ヘイズ率は、スガ試験機社製HGM−2DPを用いて測定した。
【0097】
光学特性は、分光光度計(島津製作所製UV-3000PC)を用いて測定し、波長365nmにおける光線の透過率と、JIS R 3106に従って算出した可視光線透過率および紫外線透過率によって判定した。可視光線透過率、紫外線透過率および波長365nmにおける透過率の値も表2に示す。
【0098】
この紫外線吸収膜付きガラス板は、テーバー試験後のヘイズ率が3.5%と十分に低く、自動車用、建築用の窓ガラスとして十分な実用性を有している。なお、自動車用の窓ガラスでは、テーバー試験後のヘイズ率は4%以下が求められている。
【0099】
(実施例A2)
実施例A2では、実施例A1における形成溶液に、さらにポリエチレングリコール(PEG)を加えた。PEGは、紫外線吸収能を有しない親水性有機ポリマーである。
【0100】
純水18.02g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.90g、ポリエチレングリコール400(関東化学製)0.26g、エチルアルコール(片山化学製)45.22g、エチルシリケート40(コルコート製)32.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表1に示す。
【0101】
次いで、実施例A1と同様にして、洗浄したFL基板上に形成溶液を塗布して膜を形成した。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表2に示す。
【0102】
(実施例A3)
実施例A3では、実施例A1における形成溶液に、さらにリン酸を加えた。
【0103】
純水16.66g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.90g、エチルアルコール(片山化学製)46.79g、エチルシリケート40(コルコート製)32.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10g、リン酸(85質量%、関東化学製)0.046gを添加、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表1に示す。
【0104】
次いで、実施例A1と同様にして、洗浄したFL基板上に形成溶液を塗布して膜を形成した。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表2に示す。
【0105】
(実施例A4)
実施例A4は、実施例A1における形成溶液のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の濃度を増加させ、さらに塗布、室温乾燥後の加熱温度を低下させた。
【0106】
純水16.60g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)5.20g、エチルアルコール(片山化学製)45.60g、エチルシリケート40(コルコート製)32.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表1に示す。
【0107】
次いで、洗浄したFL基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め160℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、3000nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表2に示す。
【0108】
(実施例A5)
実施例A5は、紫外線吸収剤としてシアニン系有機色素を用い、さらにポリエーテルリン酸エステル系ポリマーを添加した。ポリエーテルリン酸エステル系ポリマーは、紫外線吸収能を有しない親水性有機ポリマーである。
【0109】
純水19.45g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)1.00g、ポリエーテルリン酸エステル系ポリマー(日本ルーブリゾール製ソルスパース41000)4.55g、エチルアルコール(片山化学製)42.40g、エチルシリケート40(コルコート製)32.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表3に示す。
【0110】
次いで、洗浄したFL基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め200℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚3100nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表4に示す。
【0111】
(実施例A6〜A8)
実施例A6〜A8では、塗布、室温乾燥後の加熱温度を除いて実施例A5と同様にして紫外線吸収膜付きガラス板を得た(表3参照)。各紫外線吸収膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表4に示す。
【0112】
(実施例A9)
実施例A9では、紫外線吸収剤として、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(紫外線吸収剤A)およびアゾ系有機色素(紫外線吸収剤B)を用いた。
【0113】
純水16.83g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)4.00g、アゾ系有機色素(東京化成製AlizarinYellowGG)0.08g、エチルアルコール(片山化学製)46.49g、エチルシリケート40(コルコート製)32.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表5に示す。
【0114】
次いで、洗浄したFL基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め110℃に昇温したオーブンに投入し60分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚2900nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表6に示す。
【0115】
(実施例A10)
実施例A10では、紫外線吸収剤として、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(紫外線吸収剤A)およびシアニン系有機色素(紫外線吸収剤B)を用いた。
【0116】
純水12.68g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.2g、エチルアルコール(片山化学製)59.02g、エチルシリケート40(コルコート製)25.00g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表5に示す。
【0117】
次いで、洗浄したFL基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚1700nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表6に示す。
【0118】
(実施例A11)
実施例A11では、実施例A10における形成溶液中の有機色素濃度を増加させた。
【0119】
純水12.68g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.3g、エチルアルコール(片山化学製)58.92g、エチルシリケート40(コルコート製)25.00g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表5に示す。
【0120】
次いで、洗浄したFL基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚1800nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表6に示す。
【0121】
(実施例A12)
実施例A12では、実施例A10における形成溶液中のSiO2濃度を増加させた。
【0122】
純水13.99g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.2g、エチルアルコール(片山化学製)55.21g、エチルシリケート40(コルコート製)27.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表5に示す。
【0123】
次いで、洗浄したFL基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚1900nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表6に示す。
【0124】
(実施例A13)
実施例A13では、実施例A12における形成溶液中の有機色素濃度を増加させ、さらにPEGを添加した。
【0125】
純水13.98g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、ポリエチレングリコール200(関東化学製)0.60g、エチルアルコール(片山化学製)54.57g、エチルシリケート40(コルコート製)27.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表7に示す。
【0126】
次いで、洗浄したFL基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚2100nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表8に示す。
【0127】
(実施例A14)
実施例A14では、実施例A13における形成溶液中のSiO2濃度を増加させた。
【0128】
純水15.30g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、ポリエチレングリコール200(関東化学製)0.60g、エチルアルコール(片山化学製)50.75g、エチルシリケート40(コルコート製)30.00g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10g、を添加、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表7に示す。
【0129】
次いで、洗浄したFL基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚2400nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表8に示す。
【0130】
(実施例A15)
実施例A15では、実施例A14における形成溶液中のSiO2濃度をさらに増加させた。
【0131】
純水16.62g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、ポリエチレングリコール200(関東化学製)0.60g、エチルアルコール(片山化学製)46.93g、エチルシリケート40(コルコート製)32.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを添加、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表7に示す。
【0132】
次いで、洗浄したFL基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、2500nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表8に示す。
【0133】
(実施例A16)
実施例A16では、さらにITO微粒子を添加し、またポリエーテルリン酸エステル系ポリマーを添加した。
【0134】
純水13.98g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、エチルアルコール(片山化学製)54.56g、ITO微粒子分散液(ITOを40質量%含むエチルアルコール溶液、三菱マテリアル製)5.63g、ポリエーテルリン酸エステル系ポリマー(日本ルーブリゾール製ソルスパース41000)0.60g、エチルシリケート40(コルコート製)21.88g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを混合、撹拌して、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表9に示す。
【0135】
次いで、洗浄したFL基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分間加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚2100nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表10に示す。なお、本例および後述する実施例A17では、305×305mmに形成したFL基板を用いた。
【0136】
(実施例A17)
実施例A17では、実施例A16における形成溶液中のポリエーテルリン酸エステル系ポリマー濃度を低下させた。
【0137】
純水13.98g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、エチルアルコール(片山化学製)54.86g、ITO微粒子分散液(ITOを40質量%含むエチルアルコール溶液、三菱マテリアル製)5.63g、ポリエーテルリン酸エステル系ポリマー(日本ルーブリゾール製ソルスパース41000)0.30g、エチルシリケート40(コルコート製)21.88g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを攪拌、混合し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表9に示す。
【0138】
次いで、実施例A16と同様にして、洗浄したFL基板上に形成溶液を塗布して膜を形成した。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表10に示す。
【0139】
実施例A16およびA17で得た紫外線吸収膜は、ITO微粒子を含有しており、紫外線遮蔽能に加えて、長波長側の近赤外線(波長1200〜2500nm)の遮蔽能にも優れていた。
【0140】
200℃を超える温度に曝されると、有機物からなる紫外線吸収剤は分解し、ITO微粒子は酸化されるため、紫外線遮蔽能や長波長側の近赤外線遮蔽能は低下しやすくなる。しかし、実施例A16およびA17では、200℃以下という低い焼成温度を適用しているため、紫外線や長波長側の近赤外線を遮蔽する機能は高く維持されていた。
【0141】
(実施例A18)
実施例A18では、ポリカーボネート基板を透明基体として用いた。
【0142】
[プライマー層の形成]
エチルアルコール(片山化学製)99.50g、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学製)0.40g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の3-アミノプロピルトリエトキシシラン(アミノプロピルシルセスキオキサン(RSiO1.5)換算)、プロトン濃度および水の含有量を表11に示す。なお、ここでも、水の含有量は、エチルアルコール中に含まれる水分を0.35質量%として加えた上で計算している。
【0143】
次いで、洗浄したポリカーボネート基板(100×100mm)上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約1分程度乾燥した後、予め110℃に昇温したオーブンに投入し30分加熱し、その後冷却した。
【0144】
[紫外線吸収層の形成]
純水17.28g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)5.00g、エチルアルコール(片山化学製)43.87g、エチルシリケート40(コルコート製)33.75g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表12に示す。
【0145】
次いで、プライマー層を形成したポリカーボネート基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め110℃に昇温したオーブンに投入し60分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付き樹脂板の各種特性を表13に示す。
【0146】
実施例A18で得た膜について、テープ剥離試験を行ったところ、全く膜剥離が起こらず、耐磨耗性に加え、基板との密着性にも優れていることが確認できた。
【0147】
この紫外線吸収膜をFL基板上に成膜した紫外線吸収膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表14に示す。
【0148】
(実施例A19)
実施例A19では、紫外線吸収剤として、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(紫外線吸収剤A)およびシアニン系有機色素(紫外線吸収剤B)を用いた。
【0149】
純水12.68g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.2g、エチルアルコール(片山化学製)59.02g、エチルシリケート40(コルコート製)25.00g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表17に示す。
【0150】
表17における紫外線吸収剤A,Bの含有率は、溶液全体に対する比率である。例えば実施例A19において、紫外線吸収剤は、合計3.20質量%含まれている。この含有率は、シリコンアルコキシドの濃度をSiO2の濃度により表示したときの当該濃度(10.0%)に対して、32.0質量%に相当する。いずれの実施例においても、紫外線吸収剤A,Bの合計質量は、膜の総質量に対して、0.1〜40%になっている。
【0151】
次いで、洗浄したソーダ石灰珪酸塩ガラス基板(100×100mm;厚み3.1mm)上に、湿度30%、室温下で、形成溶液をフローコート法にて塗布した。このガラス基板は、紫外線吸収成分を含むガラス組成を有し、それ自体が、必ずしも十分とは言えないが所定の紫外線遮蔽能を有する。以下、このガラス基板を、UVカットガラス基板と称する。そのまま、室温(20℃)で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚1700nmの透明度の高い膜であった。
【0152】
なお、UVカットガラス基板の組成は、以下のとおりである(単位:質量%)。
SiO2:70%、Al23:1.6%、MgO:3.2%、CaO:8.3%、Na2O:14%、K2O:0.6%、Fe23に換算した全酸化鉄:0.9%(Fe23は全体の組成に対し0.6%)、TiO2:0.1%、CeO2:0.9%。
【0153】
こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表18に示す。なお、ブランクとして、熔融ガラス板である上記UVカットガラス基板の各種特性も表18に示す。波長370nmにおける光線の透過率も、分光光度計(島津製作所製、UV−3000PC)を用いて測定した。
【0154】
(実施例A20)
実施例A20では、実施例A19における形成溶液中の有機色素濃度を増加させた。
【0155】
純水12.68g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.3g、エチルアルコール(片山化学製)58.92g、エチルシリケート40(コルコート製)25.00g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表17に示す。
【0156】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚1800nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表18に示す。
【0157】
(実施例A21)
実施例A21では、実施例A19における形成溶液中のSiO2濃度を増加させた。
【0158】
純水13.99g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.2g、エチルアルコール(片山化学製)55.21g、エチルシリケート40(コルコート製)27.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表17に示す。
【0159】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚1900nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表18に示す。
【0160】
(実施例A22)
実施例A22では、実施例A21における形成溶液中の有機色素濃度を増加させた。
【0161】
純水13.98g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、エチルアルコール(片山化学製)55.17g、エチルシリケート40(コルコート製)27.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表17に示す。
【0162】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚1900nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の各種特性を表18に示す。
【0163】
(実施例A23)
実施例A23では、実施例A22における形成溶液中の酸濃度を低下させた。
【0164】
純水14.02g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、エチルアルコール(片山化学製)55.18g、エチルシリケート40(コルコート製)27.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.05gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表17に示す。
【0165】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚1900nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の各種特性を表18に示す。
【0166】
(実施例A24)
実施例A24では、実施例A22における酸濃度を増加させた。
【0167】
純水13.92g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、エチルアルコール(片山化学製)55.13g、エチルシリケート40(コルコート製)27.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.20gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表17に示す。
【0168】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚1900nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の各種特性を表18に示す。
【0169】
(実施例A25)
実施例A25では、実施例A24における形成溶液中の酸濃度をさらに増加させた。
【0170】
純水13.85g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、エチルアルコール(片山化学製)55.10g、エチルシリケート40(コルコート製)27.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.30gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表17に示す。
【0171】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚1900nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の各種特性を表18に示す。
【0172】
(実施例A26)
実施例A26では、実施例A25における形成溶液中の酸濃度をさらに増加させた。
【0173】
純水13.80g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、エチルアルコール(片山化学製)55.05g、エチルシリケート40(コルコート製)27.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.40gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表17に示す。
【0174】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚1900nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の各種特性を表18に示す。
【0175】
(実施例A27)
実施例A27では、実施例A22における形成溶液中の紫外線吸収剤濃度を低下させた。
【0176】
純水13.98g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)2.50g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、エチルアルコール(片山化学製)55.67g、エチルシリケート40(コルコート製)27.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表17に示す。
【0177】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚1900nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の各種特性を表18に示す。
【0178】
(実施例A28)
実施例A28では、実施例A22における形成溶液に、さらにPEGを添加した。
【0179】
純水13.98g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、ポリエチレングリコール200(関東化学製)0.60g、エチルアルコール(片山化学製)54.57g、エチルシリケート40(コルコート製)27.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表19に示す。
【0180】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚2100nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の各種特性を表20に示す。
【0181】
(実施例A29)
実施例A29では、実施例A28における形成溶液中のSiO2濃度を増加させた。
【0182】
純水15.30g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、ポリエチレングリコール200(関東化学製)0.60g、エチルアルコール(片山化学製)50.75gに、エチルシリケート40(コルコート製)30.00g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを添加、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表19に示す。
【0183】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚2400nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の各種特性を表20に示す。
【0184】
(実施例A30)
実施例A30では、実施例A29における形成溶液中のSiO2濃度をさらに増加させた。
【0185】
純水16.62g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、ポリエチレングリコール200(関東化学製)0.60g、エチルアルコール(片山化学製)46.93gに、エチルシリケート40(コルコート製)32.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを添加、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表19に示す。
【0186】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、2500nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の各種特性を表20に示す。
【0187】
(実施例A31)
実施例A31では、実施例A28における形成溶液中の酸濃度を低下させた。
【0188】
純水14.02g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、ポリエチレングリコール200(関東化学製)0.30g、エチルアルコール(片山化学製)54.88g、エチルシリケート40(コルコート製)27.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.05gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表19に示す。
【0189】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚2100nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の各種特性を表20に示す。
【0190】
(実施例A32)
実施例A32では、実施例A28における形成溶液中の酸濃度を増加させた。
【0191】
純水13.92g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、ポリエチレングリコール200(関東化学製)0.30g、エチルアルコール(片山化学製)54.83g、エチルシリケート40(コルコート製)27.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.20gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表19に示す。
【0192】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚2100nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の各種特性を表20に示す。
【0193】
(実施例A33)
実施例A33では、実施例A32における形成溶液中の酸濃度をさらに増加させた。
【0194】
純水13.85g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、ポリエチレングリコール200(関東化学製)0.30g、エチルアルコール(片山化学製)54.80g、エチルシリケート40(コルコート製)27.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.30gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表19に示す。
【0195】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚2100nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の各種特性を表20に示す。
【0196】
(実施例A34)
実施例A34では、実施例A33における形成溶液中の酸濃度をさらに増加させた。
【0197】
純水13.80g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、ポリエチレングリコール200(関東化学製)0.30g、エチルアルコール(片山化学製)54.75g、エチルシリケート40(コルコート製)27.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.40gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表19に示す。
【0198】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚2100nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の各種特性を表20に示す。
【0199】
(実施例A35)
実施例A35では、実施例A28における形成溶液中の紫外線吸収剤濃度を低下させた。
【0200】
純水14.04g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)2.50g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、ポリエチレングリコール200(関東化学製)0.25g、エチルアルコール(片山化学製)55.36g、エチルシリケート40(コルコート製)27.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表19に示す。
【0201】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚2000nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の各種特性を表20に示す。
【0202】
(実施例A36)
実施例A36では、実施例A35における形成溶液中の酸濃度を低下させた。
【0203】
純水14.02g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)2.50g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、ポリエチレングリコール200(関東化学製)0.25g、エチルアルコール(片山化学製)55.43g、エチルシリケート40(コルコート製)27.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.05gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表19に示す。
【0204】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚2000nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の各種特性を表20に示す。
【0205】
(実施例A37)
実施例A37では、実施例A36における形成溶液中のSiO2原料の半分(質量比)をテトラエトキシシランとした。
【0206】
純水14.05g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)2.50g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、ポリエチレングリコール200(関東化学製)0.25g、エチルアルコール(片山化学製)50.05g、テトラエトキシシラン(信越化学工業製)19.10g、エチルシリケート40(コルコート製)13.75g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.05gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表19に示す。
【0207】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚2000nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の各種特性を表20に示す。
【0208】
(実施例A38)
実施例A38では、実施例A36における形成溶液中のSiO2原料をテトラエトキシシランとした。
【0209】
純水16.30g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)2.50g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、ポリエチレングリコール200(関東化学製)0.25g、エチルアルコール(片山化学製)42.46g、テトラエトキシシラン(信越化学工業製)38.19g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.05gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表19に示す。
【0210】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚2000nmの透明度の高い膜であった。こうして得た紫外線吸収膜付きガラス板の各種特性を表20に示す。
【0211】
(実施例A39)
実施例A39では、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(紫外線吸収剤A)および紫外線吸収能を有するシアニン系有機色素(紫外線吸収剤B)に加えて、近赤外域に吸収を有するシアニン系有機色素(近赤外域に吸収を有する有機色素)を用いた。
【0212】
純水7.94g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)0.30g、紫外線吸収能を有するシアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、近赤外域に吸収を有するシアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−125)0.10g、エチルアルコール(片山化学製)72.26g、テトラエトキシシラン(信越化学工業製)19.10g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.05gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表23に示す。
【0213】
次いで、洗浄したFL基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め200℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚600nmの透明度の高い膜であった。こうして得た有機無機複合膜付きガラス板の各種特性を表24に示す。なお、ブランクとして、FL基板の各種特性も表24に示す。700nmを超えて1200nm以下の波長範囲における光線の最低透過率も、分光光度計(島津製作所製、UV−3000PC)を用いて測定した。
【0214】
(実施例A40)
実施例A40では、実施例A39における形成溶液中の近赤外域に吸収を有する有機色素の濃度を低下させた。
【0215】
純水7.94g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)0.30g、紫外線吸収能を有するシアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、近赤外域に吸収を有するシアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−125)0.20g、エチルアルコール(片山化学製)72.16g、テトラエトキシシラン(信越化学工業製)19.10g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.05gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表23に示す。
【0216】
次いで、洗浄したFL基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め200℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚600nmの透明度の高い膜であった。こうして得た有機無機複合膜付きガラス板の各種特性を表24に示す。
【0217】
(実施例A41)
実施例A41では、実施例A39における室温乾燥後の加熱温度を140℃に引き下げた。得られた膜は、膜厚600nmの透明度の高い膜であった。こうして得た有機無機複合膜付きガラス板の各種特性を表24に示す。
【0218】
表24に示すとおり、実施例A39〜A41で得た有機無機複合膜は、いずれも、紫外線遮蔽能に加えて、短波長側の近赤外線(波長700〜1200nm)の遮蔽能にも優れていた。
【0219】
(実施例A42)
実施例A42では、形成溶液中に、近赤外域に吸収を有する有機色素に代えて、ITO微粒子およびポリエーテルリン酸エステル系ポリマーを添加した。
【0220】
純水31.14g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)0.30g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、エチルアルコール(片山化学製)42.51g、ITO微粒子分散液(ITOを40質量%含むエチルアルコール溶液、三菱マテリアル製)6.00g、ポリエーテルリン酸エステル系ポリマー(日本ルーブリゾール製ソルスパース41000)0.60g、テトラエトキシシラン(信越化学工業製)19.10g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表25に示す。
【0221】
次いで、洗浄したFL基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め200℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚1000nmの透明度の高い膜であった。こうして得た有機無機複合膜付きガラス板の各種特性を表26に示す。なお、ブランクとして、FL基板の各種特性も表26に示す。
【0222】
(実施例A43)
実施例A43では、実施例A42における形成溶液中のプロトン濃度を低下させた。
【0223】
純水31.19g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)0.30g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、エチルアルコール(片山化学製)42.51g、ITO微粒子分散液(ITOを40質量%含むエチルアルコール溶液、三菱マテリアル製)6.00g、ポリエーテルリン酸エステル系ポリマー(日本ルーブリゾール製ソルスパース41000)0.60g、テトラエトキシシラン(信越化学工業製)19.10g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.05gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表25に示す。
【0224】
次いで、洗浄したFL基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め200℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚900nmの透明度の高い膜であった。こうして得た有機無機複合膜付きガラス板の各種特性を表26に示す。
【0225】
(実施例A44)
実施例A44では、実施例A42における形成溶液中のSiO2濃度を増加させた。
【0226】
純水34.00g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)0.30g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、エチルアルコール(片山化学製)37.92g、ITO微粒子分散液(ITOを40質量%含むエチルアルコール溶液、三菱マテリアル製)6.00g、ポリエーテルリン酸エステル系ポリマー(日本ルーブリゾール製ソルスパース41000)0.60g、テトラエトキシシラン(信越化学工業製)20.83g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表25に示す。
【0227】
次いで、洗浄したFL基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め200℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚1000nmの透明度の高い膜であった。こうして得た有機無機複合膜付きガラス板の各種特性を表26に示す。
【0228】
(実施例A45)
実施例A45では、実施例A42における形成溶液中のITO微粒子の濃度を低下させた。
【0229】
純水31.12g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)0.30g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、エチルアルコール(片山化学製)46.03g、ITO微粒子分散液(ITOを40質量%含むエチルアルコール溶液、三菱マテリアル製)2.50g、ポリエーテルリン酸エステル系ポリマー(日本ルーブリゾール製ソルスパース41000)0.60g、テトラエトキシシラン(信越化学工業製)19.10g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表25に示す。
【0230】
次いで、洗浄したFL基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め200℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚800nmの透明度の高い膜であった。こうして得た有機無機複合膜付きガラス板の各種特性を表26に示す。
【0231】
(実施例A46)
実施例A46では、実施例A43における形成溶液中の紫外線吸収剤の濃度を増加させ、室温乾燥後の加熱温度を引き下げた。
【0232】
純水13.98g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、エチルアルコール(片山化学製)46.11g、ITO微粒子分散液(ITOを40質量%含むエチルアルコール溶液、三菱マテリアル製)5.63g、ポリエーテルリン酸エステル系ポリマー(日本ルーブリゾール製ソルスパース41000)0.60g、テトラエトキシシラン(信越化学工業製)30.38g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.05gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度を表25に示す。
【0233】
次いで、洗浄したFL基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚1900nmの透明度の高い膜であった。こうして得た有機無機複合膜付きガラス板の各種特性を表26に示す。
【0234】
表26に示すとおり、実施例A42〜A47で得た紫外線吸収膜は、紫外線遮蔽能に加えて、長波長側の近赤外線(波長1200〜2500nm)の遮蔽能にも優れていた。
【0235】
(比較例A1)
比較例A1では、実施例A1におけるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤に代えて、ポリエーテルリン酸エステル系ポリマーを用いた。
【0236】
純水19.45g、ポリエーテルリン酸エステル系ポリマー(日本ルーブリゾール製ソルスパース41000)5.20g、エチルアルコール(片山化学製)42.75g、エチルシリケート40(コルコート製)32.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表15に示す。
【0237】
次いで、洗浄したFL基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め200℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚3400nmの透明度の高い膜であった。しかし、この膜付きガラス基板は、紫外線透過率が66.7%、波長365nmにおける光線の透過率が87.5%と、紫外線遮蔽能に乏しかった(表16参照)。
【0238】
(比較例A2)
比較例A2では、有機物を添加していない。
【0239】
純水27.16g、エチルアルコール(片山化学製)27.49g、テトラエトキシシラン(信越化学製)45.14g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10g、リン酸(85質量%、関東化学製)0.11gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表15に示す。
【0240】
次いで、洗浄したFL基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め200℃に昇温したオーブンに投入し40分加熱し、その後冷却した。その結果、剥離を伴ったクラックが発生し、膜として成立しなかった。
【0241】
(比較例A3)
比較例A3では、プロトン濃度を低下させた。
【0242】
純水19.57g、ポリエチレングリコール200(関東化学製)1.35g、エチルアルコール(片山化学製)58.25g、テトラエトキシシラン(信越化学製)20.83g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.001gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表15に示す。
【0243】
次いで、洗浄したFL基板上に、形成溶液を塗布しようとしたが、液が基板からはじかれ、膜を形成することができなかった。これは、酸の濃度が低く、液中でシリコンアルコキシドの加水分解が十分に進行しなかったためであると考えられる。
【0244】
(比較例A4)
比較例A4では、水の含有量を低下させた。
【0245】
純水4.14g、ポリエーテルリン酸エステル系ポリマー(日本ルーブリゾール製ソルスパース41000)0.75g、ポリエチレングリコール200(関東化学製)0.25g、エチルアルコール(片山化学製)74.03g、テトラエトキシシラン(信越化学製)20.83g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを混合、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表15に示す。
【0246】
次いで、洗浄したFL基板上に、湿度30%、室温下でコーティング液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約5分程度、風乾した後、予め200℃に昇温したオーブンに投入し12分加熱し、その後冷却した。
【0247】
得られた膜は、膜厚600nmの透明度の高い膜で、剥離を伴うクラックは見られなかった。しかし、テーバー摩耗試験を実施したところ、テーバー摩耗試験後、膜が剥離した(表16参照)。
【0248】
(比較例A5)
比較例A5では、比較例A1においてFL基板に代えてUVカットガラス基板を用いた。
【0249】
形成溶液中の各成分の濃度などを表21に示す。得られた膜は、膜厚3400nmの透明度の高い膜であった。しかし、こうして得た有機無機複合膜付きガラス板は、紫外線透過率が11.8%、波長370nmにおける光線の透過率が32.3%と、紫外線遮蔽能に乏しかった(表22参照)。
【0250】
(比較例A6)
比較例A6では、比較例A2においてFL基板に代えてUVカットガラス基板を用いた。
【0251】
本例は、比較例A2と同様、剥離を伴ったクラックが発生し、膜として成立しなかった。
【0252】
(比較例A7)
比較例A7では、比較例A3においてFL基板に代えてUVカットガラス基板を用いた。
【0253】
本例は、比較例A3と同様、形成溶液を塗布しようとしても、液が基板からはじかれ、膜を形成することができなかった。
【0254】
(比較例A8)
比較例A8では、比較例A4においてFL基板に代えてUVカットガラス基板を用いた。
【0255】
形成溶液中の各成分の濃度などを表21に示す。得られた膜は、膜厚600nmの透明度の高い膜で、剥離を伴うクラックは見られなかった。しかし、テーバー摩耗試験を実施したところ、テーバー摩耗試験後、膜が剥離した(表22参照)。
【0256】
(実施例B1)
実施例B1では、有機色素としてシアニン系有機色素を、親水性有機ポリマーとしてポリエーテルリン酸エステル系ポリマーを用いた。
【0257】
エチルアルコール(片山化学製)42.40gに、エチルシリケート40(コルコート製)32.50g、純水19.45g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10g、ポリエーテルリン酸エステル系ポリマー(日本ルーブリゾール製ソルスパース41000)4.55g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)1.00gを添加、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表27に示す。
【0258】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め200℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚3100nmの透明度の高い有機無機複合膜であった。こうして得た有機無機複合膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表28に示す。
【0259】
(実施例B2〜B4)
実施例B2〜B4では、室温乾燥後の加熱温度を実施例B1よりも低下させた。
【0260】
得られた膜は、いずれも膜厚3100nmの透明度の高い有機無機複合膜であった。こうして得た有機無機複合膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表28に示す。
【0261】
表28に示すとおり、実施例B1〜B4で得た有機無機複合膜付きガラス板は、いずれも、高い紫外線遮蔽能を有し、波長370nmにおける光線透過率が2.5%以下であり、膜の形成によって波長370nmにおける光線透過率は25%以上低下した。
【0262】
(実施例B5)
実施例B5では、有機色素としてシアニン系有機色素を、親水性有機ポリマーとしてベンゾトリアゾール系化合物を用いた。
【0263】
純水12.68g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.2g、エチルアルコール(片山化学製)59.02g、エチルシリケート40(コルコート製)25.00g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを添加、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表29に示す。
【0264】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚1900nmの透明度の高い有機無機複合膜であった。こうして得た有機無機複合膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表30に示す。
【0265】
(実施例B6)
実施例B6では、実施例B5における形成溶液中の有機色素濃度を増加させた。
【0266】
純水12.68g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.3g、エチルアルコール(片山化学製)58.92g、エチルシリケート40(コルコート製)25.00g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを添加、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表29に示す。
【0267】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚1900nmの透明度の高い有機無機複合膜であった。こうして得た有機無機複合膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表30に示す。
【0268】
(実施例B7)
実施例B7では、実施例B5における形成溶液中のSiO2濃度を増加させた。
【0269】
純水13.99g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.2g、エチルアルコール(片山化学製)55.21g、エチルシリケート40(コルコート製)27.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを添加、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表29に示す。
【0270】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚2100nmの透明度の高い有機無機複合膜であった。こうして得た有機無機複合膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表30に示す。
【0271】
(実施例B8)
実施例B8では、実施例B7における形成溶液に、親水性有機ポリマーとしてさらにポリエチレングリコールを添加するとともに、形成溶液中の有機色素濃度を増加させた。
【0272】
純水13.98g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)3.00g、シアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−863)0.25g、エチルアルコール(片山化学製)54.57gに、エチルシリケート40(コルコート製)27.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10g、ポリエチレングリコール200(関東化学製)0.60gを添加、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表29に示す。
【0273】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚2200nmの透明度の高い有機無機複合膜であった。こうして得た有機無機複合膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表30に示す。
【0274】
(実施例B9)
実施例B9では、有機色素としてアゾ系有機色素を、親水性有機ポリマーとしてベンゾトリアゾール系化合物を用いた。
【0275】
純水16.75g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製TINUVIN 1130)4.00g、アゾ系有機色素(東京化成製AlizarinYellow GG)0.084g、エチルアルコール(片山化学製)46.57g、エチルシリケート40(コルコート製)32.50g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを添加、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表29に示す。
【0276】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め110℃に昇温したオーブンに投入し60分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚2700nmの透明度の高い有機無機複合膜であった。こうして得た有機無機複合膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表30に示す。
【0277】
表30に示すとおり、実施例B5〜B9で得た有機無機複合膜付きガラス板は、いずれも、高い紫外線遮蔽能を有し、波長370nmにおける光線透過率が2.0%以下であり、膜の形成によって波長370nmにおける光線透過率は28%以上低下した。
【0278】
(実施例B10)
実施例B10では、有機色素としてベーススチリル系有機色素を、親水性有機ポリマーとしてポリエーテルリン酸エステル系ポリマーを用いた。
【0279】
エチルアルコール(片山化学製)45.48gに、エチルシリケート40(コルコート製)32.50g、純水16.62g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10g、ポリエーテルリン酸エステル系ポリマー(日本ルーブリゾール製ソルスパース41000)5.20g、ベーススチリル系有機色素(林原生物化学研究所製NK−1977)0.10gを添加、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表31に示す。
【0280】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め200℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚3400nmの透明度の高い有機無機複合膜であった。こうして得た有機無機複合膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表32に示す。この膜は、550nm付近に大きな吸収極大を有するピンク色の着色膜であった。
【0281】
(実施例B11)
実施例B11では、有機色素として近赤外域に吸収を有する有機色素を、親水性有機ポリマーとしてポリエーテルリン酸エステル系ポリマーを用いた。
【0282】
エチルアルコール(片山化学製)46.13gに、エチルシリケート40(コルコート製)32.50g、純水16.62g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10g、ポリエーテルリン酸エステル系ポリマー(日本ルーブリゾール製ソルスパース41000)4.55g、近赤外域に吸収を有する有機色素(山田化学製IR−301)0.10gを添加、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表31に示す。
【0283】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め160℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚3100nmの透明度の高い有機無機複合膜であった。こうして得た有機無機複合膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表32に示す。この膜は、薄青色の着色膜であった。
【0284】
(実施例B12)
実施例B12では、有機色素としてクマリン系蛍光色素を、親水性有機ポリマーとしてポリエーテルリン酸エステル系ポリマーを用いた。
【0285】
エチルアルコール(片山化学製)27.07gに、テトラエトキシシラン(信越化学工業製)36.11g、エチルシリケート40(コルコート製)6.50g、純水25.62g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10g、ポリエーテルリン酸エステル系ポリマー(日本ルーブリゾール製ソルスパース41000)4.55g、クマリン系蛍光色素(林原生物化学研究所製NKX−1595)0.05gを添加、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表33に示す。
【0286】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚3100nmの透明度の高い有機無機複合膜であった。こうして得た有機無機複合膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表34に示す。この膜は、ブラックライト(フナコシ株式会社製UVL−56)照射により、黄色の発光を示す膜であった。
【0287】
(実施例B13)
実施例B13では、実施例B12における形成溶液中の有機色素、親水性有機ポリマーおよびシリコンアルコキシドの濃度を低下させた。
【0288】
エチルアルコール(片山化学製)51.555gに、テトラエトキシシラン(信越化学工業製)25.00g、エチルシリケート40(コルコート製)4.50g、純水17.58g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10g、ポリエーテルリン酸エステル系ポリマー(日本ルーブリゾール製ソルスパース41000)1.26g、クマリン系蛍光色素(林原生物化学研究所製NKX−1595)0.005gを添加、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表33に示す。
【0289】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め140℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚1200nmの透明度の高い有機無機複合膜であった。こうして得た有機無機複合膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表34に示す。この膜も、ブラックライト(フナコシ株式会社製UVL−56)照射により、黄色の発光を示す膜であった。
【0290】
(実施例B14〜B17)
実施例B14〜B17では、クマリン系蛍光色素に代えて下記の有機色素を用いたこと以外は、実施例B13と同様にして有機無機複合膜を形成した。
(実施例B14):ナフタルイミド系集光性色素(BASFジャパン製Lumogen F Violet 570)
(実施例B15):ペリレン系集光性色素(BASFジャパン製Lumogen F Yellow 083)
(実施例B16):ペリレン系集光性色素(BASFジャパン製Lumogen F Red 300)
(実施例B17):ペリレン系集光性色素(BASFジャパン製Lumogen F Orange 240)
【0291】
得られた膜は、いずれも膜厚1200nmの透明度の高い有機無機複合膜であった。こうして得た有機無機複合膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表34に示す。いずれの膜も、ブラックライト(フナコシ株式会社製UVL−56)照射により、発光を示す膜であった。
【0292】
(実施例B18)
実施例B18では、ポリカーボネート樹脂基板上に有機無機複合膜を形成した。
【0293】
<プライマー層の形成>
エチルアルコール(片山化学製)99.50gに、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業製KBE−903)0.40g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10gを添加、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中のシリコンアルコキシド(アミノプロピルシルセスキオキサン(RSiO1.5)換算)、プロトン濃度および水の含有量を表35に示す。なお、ここでも、水の含有量は、エチルアルコール中に含まれる水分を0.35質量%として加えた上で計算している。
【0294】
次いで、洗浄したポリカーボネート樹脂基板(100mm×100mm;厚さ3.0mm)上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約1分程度乾燥した後、予め110℃に昇温したオーブンに投入し30分加熱し、その後冷却することによりプライマー層を形成した。
【0295】
<有機無機複合膜の形成>
プライマー層上に、湿度30%、室温下で、実施例B12と同様の形成溶液(表36参照)をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め110℃に昇温したオーブンに投入し60分加熱し、その後冷却することにより有機無機複合膜を形成した。得られた膜は、膜厚2800nmの透明度の高い膜であった。こうして得た有機無機複合膜付き樹脂板の膜厚および各種特性を表37に示す。この膜も、ブラックライト(フナコシ株式会社製UVL−56)照射により、黄色の発光を示す膜であった。
【0296】
また、得られた膜について、JIS K 5400の碁盤目テープ法に準じたテープ剥離試験を行ったところ、全く膜剥離が起こらず、耐磨耗性に加え、樹脂基板との密着性にも非常に優れていることが確認できた。
【0297】
なお、このテープ剥離試験は次のようにして行った。まず、カッターナイフを用いて有機無機複合膜の表面に5mm間隔で、膜を貫通して樹脂基板に届くように、縦方向の切り込みを入れた後、当該縦方向に直交する横方向にも同様の切り込みを入れ、5mm角で9個の碁盤目を形成したサンプルを作製した。次に、この碁盤目の上に、JIS Z 1522に規定する粘着テープ(ニチバン製LP−24、幅:24mm、厚さ:0.054mm、粘着力:4.01N/10mm)を、接着部分の長さが約50mmとなるように貼り付けた。その後、JIS S 6050に規定する消しゴムを用いて粘着テープの表面を擦りつけることにより、粘着テープをサンプルに密着させた。1〜2分後、この粘着テープを、有機無機複合膜の表面に対して90度の方向に瞬間的に(例えば0.2秒間以内で)引き剥がし、碁盤目状の切り込みの状態を観察することにより評価した。
【0298】
(実施例B19)
実施例B19では、有機色素として近赤外域に吸収を有するシアニン系有機色素を、親水性有機ポリマーとしてポリエーテルリン酸エステル系ポリマーを用いた。
【0299】
エチルアルコール(片山化学製)48.64gに、テトラエトキシシラン(信越化学工業社製)31.25g、純水18.65g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10g、ポリエーテルリン酸エステル系ポリマー(日本ルーブリゾール製ソルスパース41000)1.26g、近赤外域に吸収を有するシアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−125)0.10gを添加、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表38に示す。
【0300】
次いで、洗浄したFL基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め200℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚1200nmの透明度の高い有機無機複合膜であった。こうして得た有機無機複合膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表39に示す。
【0301】
(実施例B20)
実施例B20では、実施例B19における形成溶液中の有機色素濃度を増加させた。
【0302】
エチルアルコール(片山化学製)48.54gに、テトラエトキシシラン(信越化学工業社製)31.25g、純水18.65g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10g、ポリエーテルリン酸エステル系ポリマー(日本ルーブリゾール製ソルスパース41000)1.26g、近赤外域に吸収を有するシアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−125)0.20gを添加、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表38に示す。
【0303】
次いで、洗浄したFL基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め200℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚1300nmの透明度の高い有機無機複合膜であった。こうして得た有機無機複合膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表39に示す。
【0304】
(実施例B21)
実施例B21では、実施例B20における形成溶液中の有機色素濃度をさらに増加させた。
【0305】
エチルアルコール(片山化学製)71.94gに、テトラエトキシシラン(信越化学工業社製)17.36g、純水10.15g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10g、ポリエーテルリン酸エステル系ポリマー(日本ルーブリゾール製ソルスパース41000)0.15g、近赤外域に吸収を有するシアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−125)0.30gを添加、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表38に示す。
【0306】
次いで、洗浄したFL基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め200℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚600nmの透明度の高い有機無機複合膜であった。こうして得た有機無機複合膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表39に示す。
【0307】
(実施例B22)
実施例B22では、実施例B20における形成溶液中の親水性有機ポリマー濃度を増加させた。
【0308】
エチルアルコール(片山化学製)24.65gに、テトラエトキシシラン(信越化学工業社製)36.11g、エチルシリケート40(コルコート製)6.50g、純水27.14g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10g、ポリエーテルリン酸エステル系ポリマー(日本ルーブリゾール製ソルスパース41000)5.20g、近赤外域に吸収を有するシアニン系有機色素(林原生物化学研究所製NK−125)0.30gを添加、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表38に示す。
【0309】
次いで、洗浄したソーダ石灰珪酸塩ガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め200℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。得られた膜は、膜厚3400nmの透明度の高い有機無機複合膜であった。こうして得た有機無機複合膜付きガラス板の膜厚および各種特性を表39に示す。
【0310】
表39に示すとおり、実施例B19〜B22で得た有機無機複合膜は、いずれも、短波長側の近赤外線(波長700〜1200nm)の遮蔽能に優れていた。
【0311】
(比較例B1)
比較例B1では、形成溶液において親水性有機ポリマーを添加しなかった。
【0312】
エチルアルコール(片山化学製)31.61gに、テトラエトキシシラン(信越化学製)36.11g、エチルシリケート40(コルコート製)6.50g、純水25.63g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10g、アゾ系有機色素(東京化成製AlizarinYellow GG)0.05gを添加、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表40に示す。
【0313】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め200℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。その結果、剥離を伴ったクラックが発生し、膜として成立しなかった。
【0314】
(比較例B2)
比較例B2では、形成溶液中の水の含有量を低下させた。
【0315】
エチルアルコール(片山化学製)45.79gに、テトラエトキシシラン(信越化学製)36.11g、エチルシリケート40(コルコート製)6.50g、純水7.55g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)0.10g、ポリエーテルリン酸エステル系ポリマー(日本ルーブリゾール製ソルスパース 41000)3.90g、アゾ系有機色素(東京化成製AlizarinYellow GG)0.05gを添加、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表40に示す。
【0316】
次いで、洗浄後したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め200℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。その結果、剥離を伴ったクラックが発生し、膜として成立しなかった。
【0317】
(比較例B3)
比較例B3では、形成溶液中のプロトン濃度を極度に増加させた。
【0318】
エチルアルコール(片山化学製)57.59gに、テトラエトキシシラン(信越化学製)20.83g、純水17.63g、濃塩酸(35質量%、関東化学製)3.00g、ポリエーテルリン酸エステル系ポリマー(日本ルーブリゾール製ソルスパース 41000)0.77g、ポリエチレングリコール200(関東化学製)0.13g、アゾ系有機色素(東京化成製AlizarinYellow GG)0.05gを添加、撹拌し、形成溶液を得た。この溶液中の各成分の濃度などを表40に示す。
【0319】
次いで、洗浄したUVカットガラス基板上に、湿度30%、室温下で形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約30分程度乾燥した後、予め200℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却した。その結果、膜厚800nmの膜が得られたが、ほぼ全面に剥離を伴ったクラックが発生し、膜の特性を評価できなかった。
【0320】
【表1】

【0321】
【表2】

【0322】
【表3】

【0323】
【表4】

【0324】
【表5】

【0325】
【表6】

【0326】
【表7】

【0327】
【表8】

【0328】
【表9】

【0329】
【表10】

【0330】
【表11】

【0331】
【表12】

【0332】
【表13】

【0333】
【表14】

【0334】
【表15】

【0335】
【表16】

【0336】
【表17】

【0337】
【表18】

【0338】
【表19】

【0339】
【表20】

【0340】
【表21】

【0341】
【表22】

【0342】
【表23】

【0343】
【表24】

【0344】
【表25】

【0345】
【表26】

【0346】
【表27】

【0347】
【表28】

【0348】
【表29】

【0349】
【表30】

【0350】
【表31】

【0351】
【表32】

【0352】
【表33】

【0353】
【表34】

【0354】
【表35】

【0355】
【表36】

【0356】
【表37】

【0357】
【表38】

【0358】
【表39】

【0359】
【表40】

【産業上の利用可能性】
【0360】
本発明は、有機物である光吸収剤を含みながらも、機械的強度に優れたシリカ系膜を有する透明物品を提供するものとして、透明物品を利用する各分野において多大な利用価値を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基体と、前記透明基体の表面に形成された有機物および無機酸化物を含む有機無機複合膜とを含む透明物品であって、
前記有機無機複合膜が前記無機酸化物としてシリカを含み、
前記有機無機複合膜が前記シリカを主成分とし、
前記有機無機複合膜の表面に対して実施するJIS R 3212に規定されたテーバー摩耗試験の後に、前記有機無機複合膜が前記透明基体から剥離せず、
前記有機物の少なくとも一部が紫外線吸収剤である、
透明物品。
【請求項2】
前記紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒドロキシフェニルトリアジン系およびシアノアクリレート系から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む請求項1に記載の透明物品。
【請求項3】
前記紫外線吸収剤が、紫外線吸収能を有する有機色素を含む請求項1に記載の透明物品。
【請求項4】
前記紫外線吸収能を有する有機色素が、ポリメチン系、イミダゾリン系、クマリン系、ナフタルイミド系、ペリレン系、アゾ系、イソインドリノン系、キノフタロン系およびキノリン系から選ばれる少なくとも1種の有機色素を含む請求項3に記載の透明物品。
【請求項5】
前記有機物が、前記紫外線吸収剤に加え、紫外線吸収能を有しない有機色素および紫外線吸収能を有しない親水性有機ポリマーから選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載の透明物品。
【請求項6】
前記有機物が、前記紫外線吸収剤に加え、紫外線吸収能を有しない親水性有機ポリマーを含む請求項1に記載の透明物品。
【請求項7】
前記有機物が、前記紫外線吸収剤に加え、近赤外域に吸収を有する有機色素を含む請求項1に記載の透明物品。
【請求項8】
前記有機無機複合膜が単層である請求項1に記載の透明物品。
【請求項9】
前記有機無機複合膜の膜厚が、250nmを超え5μm以下である請求項1に記載の透明物品。
【請求項10】
前記有機無機複合膜の膜厚が、300nmを超え5μm以下である請求項9に記載の透明物品。
【請求項11】
前記有機無機複合膜の膜厚が、1μm以上5μm以下である請求項10に記載の透明物品。
【請求項12】
前記テーバー摩耗試験の後に測定した、当該テーバー摩耗試験を適用した部分のヘイズ率が4%以下である請求項1に記載の透明物品。
【請求項13】
前記有機無機複合膜における前記紫外線吸収剤の質量が、前記有機無機複合膜の総質量に対して0.1〜40%である請求項1に記載の透明物品。
【請求項14】
前記有機無機複合膜が、微粒子を含む請求項1に記載の透明物品。
【請求項15】
前記微粒子が、インジウム錫酸化物微粒子およびアンチモン錫酸化物微粒子から選ばれる少なくとも1種を含む請求項14に記載の透明物品。
【請求項16】
前記透明基体が、ガラス板または樹脂板である請求項1に記載の透明物品。
【請求項17】
可視光線透過率が70%以上である請求項1に記載の透明物品。
【請求項18】
前記透明基体がガラス板であり、紫外線透過率が1.1%以下であって波長370nmにおける光の透過率が2.0%以下である請求項17に記載の透明物品。
【請求項19】
前記透明基体が、急冷処理により強化されたガラス板である請求項1に記載の透明物品。
【請求項20】
前記透明基体が、酸化チタンおよび酸化セリウムから選ばれる少なくとも1種を含むガラス組成を有するガラス板である請求項1に記載の透明物品。
【請求項21】
前記透明基体が、0.2質量%以上のFe23を含むガラス組成を有するガラス板である請求項1に記載の透明物品。
【請求項22】
前記透明基体が、3.1mmの厚みに成形したときに、紫外線透過率が5〜40%、波長370nmにおける光の透過率が20〜50%、可視光透過率が70%以上となる組成を有するガラス板である請求項1に記載の透明物品。
【請求項23】
前記透明基体がガラス板であり、前記透明物品が車両用または建築用の窓ガラスである請求項1に記載の透明物品。
【請求項24】
透明基体と、前記透明基体の表面に形成された有機物および無機酸化物を含む有機無機複合膜とを含み、前記有機無機複合膜が前記無機酸化物としてシリカを含み、前記有機無機複合膜が前記シリカを主成分とし、前記有機物の少なくとも一部が紫外線吸収剤である、透明物品の製造方法であって、
前記透明基体の表面に前記有機無機複合膜の形成溶液を塗布する工程と、
前記透明基体に塗布された形成溶液から当該形成溶液に含まれる液体成分の少なくとも一部を除去する工程と、を含み、
前記形成溶液が、シリコンアルコキシド、強酸、水、アルコール、および有機物を含み、前記有機物の少なくとも一部が紫外線吸収剤であり、
前記シリコンアルコキシドの濃度が、当該シリコンアルコキシドに含まれるシリコン原子をSiO2に換算したときのSiO2濃度により表示して3質量%を超え、
前記強酸の濃度が、前記強酸からプロトンが完全に解離したと仮定したときのプロトンの質量モル濃度により表示して0.001〜0.2mol/kgの範囲にあり、
前記水のモル数が、前記シリコンアルコキシドに含まれるシリコン原子の総モル数の4倍以上であり、
前記透明基体を400℃以下の温度に保持しながら、前記透明基体に塗布された形成溶液に含まれる液体成分の少なくとも一部を除去する、
透明物品の製造方法。
【請求項25】
雰囲気の相対湿度を40%以下に保持しながら、前記形成溶液を前記透明基体に塗布する、請求項24に記載の透明物品の製造方法。
【請求項26】
前記有機物の濃度が、前記シリコンアルコキシドの濃度をSiO2濃度により表示したときの当該SiO2に対して60質量%以下である請求項24に記載の透明物品の製造方法。
【請求項27】
前記シリコンアルコキシドが、テトラアルコキシシランおよびその重合体から選ばれる少なくとも1種を含む請求項24に記載の透明物品の製造方法。
【請求項28】
前記シリコンアルコキシドの濃度が前記SiO2濃度により表示して30質量%以下である請求項24に記載の透明物品の製造方法。
【請求項29】
前記水のモル数が、前記シリコンアルコキシドに含まれるシリコン原子の総モル数の5倍〜20倍である請求項24に記載の透明物品の製造方法。
【請求項30】
前記形成溶液を塗布する工程と、塗布された当該形成溶液に含まれる液体成分の少なくとも一部を除去する工程と、をそれぞれ1回ずつ実施することにより、膜厚が250nmを超え5μm以下である前記有機無機複合膜を形成する請求項24に記載の透明物品の製造方法。
【請求項31】
透明基体と、前記透明基体の表面に形成された有機物および無機酸化物を含む有機無機複合膜とを含む透明物品であって、
前記有機無機複合膜が前記無機酸化物としてシリカを含み、
前記有機無機複合膜が前記シリカを主成分とし、
前記有機無機複合膜の表面に対して実施するJIS R 3212に規定されたテーバー摩耗試験の後に、前記有機無機複合膜が前記透明基体から剥離せず、
前記有機物の少なくとも一部が有機色素である、
透明物品。
【請求項32】
前記有機色素が、紫外線吸収能を有する有機色素を含む請求項31に記載の透明物品。
【請求項33】
前記紫外線吸収能を有する有機色素が、ポリメチン系、イミダゾリン系、クマリン系、ナフタルイミド系、ペリレン系、アゾ系、イソインドリノン系、キノフタロン系およびキノリン系から選ばれる少なくとも1種の有機色素を含む請求項32に記載の透明物品。
【請求項34】
前記有機色素が、近赤外域に吸収を有する有機色素を含む請求項31に記載の透明物品。
【請求項35】
前記有機無機複合膜が単層である請求項31に記載の透明物品。
【請求項36】
前記有機無機複合膜の膜厚が、250nmを超え5μm以下である請求項31に記載の透明物品。
【請求項37】
前記有機無機複合膜の膜厚が、300nmを超え5μm以下である請求項36に記載の透明物品。
【請求項38】
前記有機無機複合膜の膜厚が、1μm以上5μm以下である請求項37に記載の透明物品。
【請求項39】
前記テーバー磨耗試験の後に測定した、当該テーバー磨耗試験を適用した部分のヘイズ率が4%以下である請求項31に記載の透明物品。
【請求項40】
前記有機無機複合膜における前記有機物の質量が、前記有機無機複合膜の総質量に対して0.1〜40%である請求項31に記載の透明物品。
【請求項41】
前記有機無機複合膜が、前記有機色素に加え、親水性有機ポリマーを含む請求項31に記載の透明物品。
【請求項42】
前記有機無機複合膜が、前記有機色素に加え、前記有機物の一部として、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒドロキシフェニルトリアジン系およびシアノアクリレート系から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む請求項31に記載の透明物品。
【請求項43】
前記透明基体が、ガラス板または樹脂板である請求項31に記載の透明物品。
【請求項44】
前記透明基体がガラス板であり、前記透明物品が車両用または建築用の窓ガラスである請求項31に記載の透明物品。
【請求項45】
前記透明基体の厚さが0.1mmを超える請求項31に記載の透明物品。
【請求項46】
透明基体と、前記透明基体の表面に形成された有機物および無機酸化物を含む有機無機複合膜とを含み、前記有機無機複合膜が前記無機酸化物としてシリカを含み、前記有機無機複合膜が前記シリカを主成分とし、前記有機物の少なくとも一部が有機色素である、透明物品の製造方法であって、
前記透明基体の表面に前記有機無機複合膜の形成溶液を塗布する工程と、
前記透明基体に塗布された形成溶液から当該形成溶液に含まれる液体成分の少なくとも一部を除去する工程と、を含み、
前記形成溶液が、シリコンアルコキシド、強酸、水、アルコール、および有機物を含み、かつ、前記有機物として有機色素を含み、
前記シリコンアルコキシドの濃度が、当該シリコンアルコキシドに含まれるシリコン原子をSiO2に換算したときのSiO2濃度により表示して3質量%を超え、
前記強酸の濃度が、前記強酸からプロトンが完全に解離したと仮定したときのプロトンの質量モル濃度により表示して0.001〜0.2mol/kgの範囲にあり、
前記水のモル数が、前記シリコンアルコキシドに含まれるシリコン原子の総モル数の4倍以上であり、
前記透明基体を400℃以下の温度に保持しながら、前記透明基体に塗布された形成溶液に含まれる液体成分の少なくとも一部を除去する、
透明物品の製造方法。
【請求項47】
前記有機物が、前記有機色素に加え、親水性有機ポリマーを含む請求項46に記載の透明物品の製造方法。
【請求項48】
雰囲気の相対湿度を40%以下に保持しながら、前記形成溶液を前記透明基体に塗布する、請求項46に記載の透明物品の製造方法。
【請求項49】
前記シリコンアルコキシドが、テトラアルコキシシランおよびその重合体から選ばれる少なくとも1種を含む請求項46に記載の透明物品の製造方法。
【請求項50】
前記シリコンアルコキシドの濃度が前記SiO2濃度により表示して30質量%以下である請求項46に記載の透明物品の製造方法。
【請求項51】
前記水のモル数が、前記シリコンアルコキシドに含まれるシリコン原子の総モル数の5倍〜20倍である請求項46に記載の透明物品の製造方法。
【請求項52】
前記形成溶液を塗布する工程と、塗布された当該形成溶液に含まれる液体成分の少なくとも一部を除去する工程とを、それぞれ1回ずつ実施することにより、膜厚が250nmを超え5μm以下である前記有機無機複合膜を形成する請求項46に記載の透明物品の製造方法。
【請求項53】
発光面を有する基体と、前記基体の前記発光面に形成された有機物および無機酸化物を含む有機無機複合膜とを含み、
前記有機無機複合膜が前記無機酸化物としてシリカを含み、
前記有機無機複合膜が前記シリカを主成分とし、
前記有機無機複合膜の表面に対して実施するJIS R 3212に規定されたテーバー摩耗試験の後に、前記有機無機複合膜が前記基体から剥離せず、
前記有機物の少なくとも一部が紫外線吸収剤である、
液晶ディスプレイ用バックライト。
【請求項54】
光の透過面を有する液晶パネルと、前記液晶パネルの前記透過面に形成された有機物および無機酸化物を含む有機無機複合膜とを含み、
前記有機無機複合膜が前記無機酸化物としてシリカを含み、
前記有機無機複合膜が前記シリカを主成分とし、
前記有機無機複合膜の表面に対して実施するJIS R 3212に規定されたテーバー摩耗試験の後に、前記有機無機複合膜が前記液晶パネルから剥離せず、
前記有機物の少なくとも一部が紫外線吸収剤である、
液晶ディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−168540(P2012−168540A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−48170(P2012−48170)
【出願日】平成24年3月5日(2012.3.5)
【分割の表示】特願2007−522346(P2007−522346)の分割
【原出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】