透明窓を有するセキュリティドキュメント
【課題】本発明は、第一光学エレメント(15)が配置された透明窓(12)と、第二光学エレメント(16)が配置された第二透明窓(13)とを有するセキュリティドキュメント(1)に関する。
【解決手段】第一透明窓(12)および第二透明窓(13)は、第一および第二光学エレメント(15、16)が互いに重なり合った関係にされ得るように、セキュリティドキュメント(1)のキャリア(11)に相互に間隔をおいた関係に配置される。第一光学エレメント(15)は第一透過性ミクロレンズフィールドを有し、第二光学エレメント(16)は第二透過性ミクロレンズフィールドを有する。第二ミクロレンズフィールドが第一ミクロレンズフィールドと重ね合わされるときに第一光学効果が生じる。
【解決手段】第一透明窓(12)および第二透明窓(13)は、第一および第二光学エレメント(15、16)が互いに重なり合った関係にされ得るように、セキュリティドキュメント(1)のキャリア(11)に相互に間隔をおいた関係に配置される。第一光学エレメント(15)は第一透過性ミクロレンズフィールドを有し、第二光学エレメント(16)は第二透過性ミクロレンズフィールドを有する。第二ミクロレンズフィールドが第一ミクロレンズフィールドと重ね合わされるときに第一光学効果が生じる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は第一光学エレメントと、第二光学エレメントが配置された透明窓とを有するセキュリティドキュメント、特に紙幣(banknote)または身分証明書に関する。第一および第二光学エレメントは、第一および第二光学エレメントが互いに重なり合わされ得るように、セキュリティドキュメントのキャリアに相互に間隔をおいた関係に配置される。
【背景技術】
【0002】
EP0930979B1は、可撓性プラスチックキャリアを有する自己検査紙幣を開示している。可撓性プラスチックキャリアは透明材料を有し、きれいで透明な表面が窓として残されている濁った被覆材料を備えている。
【0003】
拡大レンズが確認手段として窓に配置されている。さらに、小さな文字、細かな線あるいはフィリグリーパターンを示すミクロプリント領域が紙幣に設けられている。ここで、紙幣を確認または検査するために、紙幣は折り畳まれて透明窓とミクロプリント領域とが重なり合った関係にされる。拡大レンズはこのとき、ミクロプリントを観察者にとって可視にし、紙幣を確認するために用いられ得る。
【0004】
他方では、EP0930979B1は、透明窓に歪みレンズ、光学フィルター、または偏光フィルターを配置することを提案している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで本発明の目的は、改良されたセキュリティドキュメントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、第一光学エレメントが配置された第一透明窓と、第二光学エレメントが配置された第二透明窓とが設けられたセキュリティドキュメントによって達成される。第一透明窓および第二透明窓は、第一および第二光学エレメントが互いに重なり合う関係にされ得るように、セキュリティドキュメントのキャリアに相互に間隔をおいた関係に配置されている。第一光学エレメントは第一透過性ミクロレンズフィールドを有し、第二光学エレメントは第二透過性ミクロレンズフィールドを有している。第二ミクロレンズフィールドと第一ミクロレンズフィールドとが重ね合わされたとき第一光学効果が生じる。
【0007】
第一ミクロレンズフィールドが第二ミクロレンズフィールドと重ね合わされたとき、他の技術によって模倣されるのが非常に困難な、また相互に重なり合う第一および第二ミクロレンズフィールドの間の間隔に強く依存する、容易に記憶される目立った光学効果が生じる。第一および第二ミクロレンズフィールドを重ね合わせるときに生じる第一光学効果のこれらの特徴によって、ミクロレンズフィールドがセキュリティドキュメントの透明窓に配置されるときに、明瞭で目立った安全特性によってセキュリティドキュメントの信頼性を確認するオプションが使用者に提供される。これにより本発明は容易に確認され模倣が困難なセキュリティドキュメントを作ることを可能にする。
【0008】
本発明の有利な構成は付随する請求項に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の好適な実施例によると、第一ミクロレンズフィールドのミクロレンズのレンズ間隔と第二ミクロレンズフィールドのミクロレンズのレンズ間隔とは、相互に重ね合わされたミクロレンズフィールドによって分割された光線の個々の光ビームが普通のピクセルに対応するように選択される。この点において、ミクロレンズのレンズ間隔は、個々のミクロレンズフィールドまたはアレイのミクロレンズの横の間隔を意味する。これにより、二つのミクロレンズフィールドの重なり合いが一体となった画像を形成し、システム全体は、ほぼ単一の巨視的レンズのように働き、しかしながらこの特徴は、従来の巨視的レンズの特徴とは著しく異なる。このようなシステムは実像および虚像、単一の画像およびまた多数から成る画像とを形成することができる。
【0010】
同様の効果の巨視的レンズが第一および第二ミクロレンズフィールドを重ね合わせたときに形成されるように、二つのミクロレンズフィールドのミクロレンズのレンズ間隔は、第一および第二ミクロレンズフィールドの相互に関連するレンズのずれにおける変化が事実上の巨視的レンズの光軸から始まって一定であるように選択されることが好ましい。本発明の好適な実施例によると、これはミクロレンズが周期的ラスタに従って一定のレンズ間隔でそれぞれ互いに間隔をおいて配置されている二つのミクロレンズフィールドによって達成される。この場合、第一ミクロレンズフィールドのミクロレンズのレンズ間隔は第二ミクロレンズフィールドのミクロレンズのレンズ間隔と異なっている。このようなミクロレンズフィールドは特に容易に形成され得る。この点において、第一ミクロレンズフィールドのミクロレンズのレンズ間隔は第二ミクロレンズフィールドのミクロレンズのレンズ間隔の整数倍であることが好ましい。
【0011】
ミクロレンズフィールドを重ね合わせることによって高解像度の一体となった画像を達成することを可能とするために、この点においてミクロレンズの直径が人間の眼の解像能力より小さくなるように選択されるのが有利であり、その結果第一および第二ミクロレンズフィールドのミクロレンズのレンズ間隔が300μmより小さくなるように選択されるのが好ましい。さらにこの目的のために、ミクロレンズの焦点距離は画像および物体との距離と比較して小さくなるように選択される。
【0012】
この点において、第一ミクロレンズフィールドが負の焦点距離の複数のミクロレンズから形成され、第二ミクロレンズフィールドが正の焦点距離の複数のミクロレンズから形成される。これらのミクロレンズフィールドは分割された複数の光ビームの結像において、ケプラー・テレスコープ(Kepler Telescope)の態様において協同する。ミクロレンズフィールドのためのこのような構成によって、巨視的なレンズシステムと同様であるが従来のレンズシステムのものと著しく異なる特徴を有する光学効果を達成することが可能となる。したがって著しく目立ちそのため容易に記憶される光学効果を達成することが可能となる。
【0013】
さらに、第一ミクロレンズフィールドが正の焦点距離の複数のミクロレンズから形成され、第二ミクロレンズフィールドが負の焦点距離の複数のミクロレンズから形成されることもまた可能であり、これらのミクロレンズフィールドはガリレオ・テレスコープ(Gallileo Telescope)の態様において協同する。この場合もまた、第一および第二ミクロレンズフィールドが相互に重なり合った関係にあるとき、巨視的レンズのものと同様であるが従来の巨視的レンズシステムとは異なる効果を達成することが可能となる。
【0014】
本発明のさらに好適な実施例によると、二つのミクロレンズフィールドは同質のものではなく、局所的に異なるレンズ間隔、レンズの直径またはレンズの焦点距離といったパラメータを有する。横のずれによって、さまざまなミクロレンズの組み合わせや様々な光学機能が生じ得る。これにより新規な容易に思い出されるさらなる安全特性がセキュリティドキュメントに組み込まれることが可能となる。
【0015】
ここで、第一および/または第二ミクロレンズフィールドの一つ以上のパラメータが(普通の)ラスタに従って周期的に変化することが好ましい。さらに、ミクロレンズフィールドのパラメータが予め決定された態様に事実上連続的に変化することも可能である。
【0016】
したがって、例えば情報アイテムが、ミクロレンズのレンズ間隔が異なるおよび/またはミクロレンズの焦点距離が異なるような二つ以上の領域を有するミクロレンズフィールドによって少なくともミクロレンズフィールドに導入されることが可能である。ミクロレンズフィールドを重ね合わせるときに、結果として生じる結像機能は第一および第二領域において変化し、これによりミクロレンズフィールドのパラメータにおける変化にコード化された情報が観察者に対して可視となる。
【0017】
さらに、基礎的な周期ラスタに対するミクロレンズのレンズ間隔の位相ずれによって隠されている情報アイテムがモアレパターンの態様で一つ以上のミクロレンズフィールドにコード化され、これらの情報アイテムが第一および第二ミクロレンズフィールドが重ね合わされるときに可視にされることもまた可能である。
【0018】
セキュリティドキュメントの耐偽造性は、第一および第二ミクロレンズフィールドにおける付加的な情報アイテムをコード化する上述の手段によってさらに改良され得る。
【0019】
本発明のさらに好適な実施例によると、セキュリティエレメントは不透明の第三光学エレメントを有し、第一および/または第二ミクロレンズフィールドが第三光学エレメントと重ね合わされたときに、一つ以上のさらなる光学効果が形成される。さらに、二つのミクロレンズフィールドを重ね合わせることによって生じる第一の安全特性に対して、ミクロレンズと、例えば反射性光学可変エレメントまたは高解像度プリントとを重ね合わせることによってさらなる安全特性が生じ得る。この場合、ミクロレンズフィールドは例えばモアレアナライザとして働くことが出来る。
【0020】
本発明のさらに好適な実施例によると、第一および/または第二光学エレメントはそれぞれ第一および第二光学エレメントにおいて一方が他方にわたって配置された二つのミクロレンズサブフィールドを含む。二つのミクロレンズサブフィールドが例えばフィルムの反対側に配置され、向かい合って配置されたフィルムのミクロレンズ表面を形成する。したがって、例えば第一光学エレメントの一表面が一つのミクロレンズサブフィールドの形状によって決定され、前述の表面とは反対の第一光学エレメントの表面は他のミクロレンズサブフィールドの形状によって決定される。ここで、一つの光学エレメントのミクロレンズサブフィールドの形状が第二の光学エレメントのミクロレンズサブフィールドの形状を打ち消すならば、第一および第二光学エレメントが重ね合わされるときに生じる光学効果は、第一および第二光学エレメントの向きに、つまり、透明窓が重なり合った関係にされるようにセキュリティドキュメントがどの方向に折り畳まれるあるいは撓められるかに依存する。
【0021】
二つのミクロレンズフィールドのレンズの間の間隔が折り畳まれるまたは撓められる方向に依存して変化するようにミクロレンズフィールドがセキュリティドキュメントの透明窓に配置されることによって、同様の効果がまた達成され得る。
【0022】
第一および/または第二光学エレメントが、第一または第二ミクロレンズフィールドをそれぞれ形成するレリーフ構造が形成された複製ラッカー層を有することが好ましい。さらにここでは、さらなる光学分離層によるレリーフ構造の密閉および/またはUV複製によるレリーフ構造の成形が有利であることが分かっている。
【0023】
この場合、第一および第二ミクロレンズフィールドのミクロレンズが光学回折効果を有し光学回折手段によってミクロレンズフィールドの効果を生じるレリーフ構造によって形成されることが好ましい。このような“回折レンズ”は、断面深さが可視光の波長より小さい二成分回折レリーフ構造(二成分の薄い回折レンズ)と、可視光の波長より小さい断面深さの連続回折レリーフ形状(連続形状の薄い回折レンズ)と、可視光の波長より大きい断面深さの回折連続レリーフ形状(連続形状の厚い回折レンズ)とによって形成されることができる。しかしながら、ミクロレンズフィールドは複製ラッカー層に屈折して作用するマクロ構造の形態に形成されることも可能である。このマクロ構造は、突然な変化のない連続的で安定した表面形状を有する。この場合、マクロ構造の断面深さは可視光の波長より数倍大きい。
【0024】
第一および/または第二光学エレメントが転写フィルムの転写層によって形成されることが好ましい。これは、間隔、平面性などに関する許容値と同様にミクロレンズフィールドの質に関する要求を満たすことを可能にする。
【実施例】
【0025】
添付する図面を参照して例として次ぎの多くの実施例によって本発明は記載される。
【0026】
図1は有価ドキュメント1、例えば紙幣または小切手を示す。しかしながら有価ドキュメント1が識別ドキュメント、例えば身分証明書または通行証を示すことも可能である。
【0027】
セキュリティドキュメント1は透明窓12および13を有する可撓性キャリア11を備えている。キャリア11は、その上にプリントが施され、さらなる安全特性、例えば透かしまたはセキュリティスレッドが設けられた紙材からなるのが好ましい。次に、窓形状の開口がこの紙製キャリアに例えばスタンピングまたはレーザーによって導入され、それにより図1に示される透明窓12および13が提供される。次いで透明窓12および13は透過性ミクロレンズフィールドまたはアレイを有する光学エレメントによって再び閉じられる。従って、第一透過性ミクロレンズフィールド15が透明窓12の領域に配置され、第二透過性ミクロレンズフィールド16が透明窓13の領域に配置される。
【0028】
しかしながら、キャリア11がプラスチックフィルムまたは1つ以上の紙およびプラスチック材料層を含むラミネートであることもまた可能である。従って、透明なまたは部分的に透明な材料が予めキャリア11の材料として用いられることもまた可能であり、したがって、このキャリアが透明窓12および13を生じるようにスタンピングまたは切削によって部分的に取り除かれる必要がない。これは、例えばキャリア11が透明窓12および13の領域で濁りを有さない場合である。さらに、透明窓12および13が紙生産手順において予め形成され、透明ミクロレンズフィールド15および16を有する光学エレメントがセキュリティスレッドの態様でキャリア11に導入されることもまた可能である。
【0029】
さらに、キャリア11は−例えばパスポートの場合−接着または縫合によって結合された2つのページを有することもまた可能である。
【0030】
図1に示されるように細長い形状のパッチ14がさらにキャリア11に適用され、このパッチは透明窓13の領域を覆っている。透明ミクロレンズフィールドまたはアレイ16はパッチ14に導入される。パッチ14は転写フィルム、例えばホットスタンピングフィルムの転写層であることが好ましく、これは圧力および熱の作用下で接着剤層によってキャリア11に結合される。図1に示されるように、透明窓13の領域に配置された透過性ミクロレンズフィールド16に加えて、パッチ14は1つ以上のさらなる光学エレメント、例えば図1に示されるさらなる光学エレメント17を有することもまた可能である。光学エレメント17は、例えば回折格子、ホログラム、キネグラム(登録商標、KINEGRAM)、部分金属化、HRI(高屈折率)層、干渉層システム、架橋性液晶層、または作用色素によるプリントである。
【0031】
さらに、透明窓12がキャリア11に図1に示す位置で導入されずに、細長い形状のパッチが透明窓12および13の両者を覆うように細長い形状のパッチ14の領域においてキャリア11に組み込まれることもまた可能である。従ってミクロレンズフィールド15および16の両者が普通のフィルムエレメントに導入されることも可能であり、それにより有価ドキュメント1の生産は大幅に改良される。
【0032】
セキュリティドキュメント1は例えば転写フィルムによって適用されキャリア11を撓めることによって、折りたたむことによってまたは曲げることによって透明窓12および13と重なり合う関係にされ得るさらなる安全特性を有する。このように、図1は例として好ましくは反射性の光学可変エレメントあるいはセキュリティインプリントであるさらなる光学エレメント18を示す。
【0033】
セキュリティドキュメントを確認することを目的として、キャリア11の透明窓12および13は例えばキャリア11を折りたたむことによって重ね合わさった関係にされ、ミクロレンズフィールド15および16は図2に示されるように重なり合う。次いで、一方が他方にわたって配置された二つのミクロレンズフィールド15および16を通して観るときに生じる光学効果が確認される。従って例えば観察方向2に配置された対象、グラフ表示、または特有の確認パターンが透過性ミクロレンズフィールド15および16を通して観察される。また、セキュリティドキュメント1の光学エレメントがさらにセキュリティドキュメント1を折り畳むことによって観察方向に配置され、透明ミクロレンズフィールド15および16を通して観察されることもまた可能である。
【0034】
ここで、対象を透過性ミクロレンズフィールド15および16を通して観察するときに生じる光学効果が、図3aおよび3bを参照して記載される。
【0035】
図3aは図2に示された観察状況において互いの間隔がdで互いに関連して配置されたミクロレンズフィールド15および16の部分を示す。
【0036】
ミクロレンズフィールド15は、図3cに示されるように相互に並列に並べられた関係で配置された複数のミクロレンズ21を有する。ミクロレンズフィールド16は複数のミクロレンズ22を有する。このとき互いに関連づけられミクロレンズフィールド15および16によって形成されたシステムの概念的な光軸から間隔rで配置された二つのレンズ21および22が観察される場合、それらの平行な光軸は、ずれΔrを有する。次いで、二つのミクロレンズフィールドの間隔がミクロレンズ21および22の焦点距離の合計に相当するという仮定の上で、角度αで入射する平行光ビームはレンズ21の軸からf1αの間隔の点に集光される。ここで、f1はレンズ21の焦点距離である。次にレンズ21および22の間のずれΔrによって、光ビームは角度βでレンズ22を通過する。ここで、
【数1】
であり、さらにf2はレンズ22の焦点距離である。次いで、光線の光源がミクロレンズフィールド15から距離uであり、レンズ21が光線位置rを占めている場合が考えられるとき、光ビームの横の位置はミクロレンズ22r−βxからxの間隔となる。これにより、前述の式および角度αをα=r/uによって置き換えることによって次のような結果となる。
【数2】
【0037】
ミクロレンズフィールド15および16によって分けられる全ての部分光線はミクロレンズフィールドを通った後に同じ点に集光されるように、yはrから独立であることが必要である。したがって対象物の距離が有限であり像距離が焦点距離に相当するという仮定の上で、二つのミクロレンズフィールド15および16の図3aに示される配置の焦点距離として次式が適用される。
【数3】
【0038】
これは、微分係数∂Δr/∂rが一定であるときに、ミクロレンズフィールド15および16によって形成される結像系の焦点距離Fが一定であることを意味する。これは、例えばミクロレンズフィールド15および16のミクロレンズが互いに一定の異なるレンズ間隔をおいて配置される場合である。これは、例えば図3aに示される例において、ミクロレンズ21および22はそれぞれ互いに一定のレンズ間隔p1およびp2で配置され、図3cに示されるように周期的ラスタによって互いに関連して方向付けられる場合である。
【0039】
この条件が満たされるとき一体となった画像が生じ、図3aに示されたシステムの結像機能は二つの巨視的レンズ21および22から成る従来のレンズシステムのものにほとんど対応する。
【0040】
今、ミクロレンズフィールド15のミクロレンズが一定のレンズ間隔p1で互いに間隔を置いて配置され、且つミクロレンズフィールド16のレンズが一定の間隔p2で互いに間隔を置いて配置される特有な場合がさらに観察されるとき、図3bに示された概要に基づいて、次のような関係が結果として生じる。
【0041】
図3bはミクロレンズフィールド15および16を示し、光軸上のミクロレンズフィールド16から距離gで間隔を置かれ、第一ミクロレンズフィールドによって、ミクロレンズから距離s1で間隔を置かれ横の間隔ynを含む一連の点に結像された点を示す。これらの点はミクロレンズフィールド16からs2の距離であり、光軸上の点に距離bで結像される。
【0042】
図3bに示された状況が生じるように、次の条件が設定されなければならない。
【数4】
ミクロレンズフィールド15および16のシステムが薄いレンズのシステムとして観測されるとき、システムの焦点距離のために、ミクロレンズフィールド15の側面からの光の入射で、焦点距離は
【数5】
となり、ミクロレンズフィールド16の側面からの光の入射で、焦点距離は
【数6】
となる。
【0043】
このように、結像機能は、ミクロレンズフィールド15の側面からの光の入射で次のように記載されることができる。
【数7】
【0044】
したがって、普通のレンズとは対照的に、ミクロレンズフィールド15および16によって生じる結像機能は、ミクロレンズフィールド15および16のための正の焦点距離のミクロレンズ(ケプラー・テレスコープ(Kepler telescope))を用いる場合には、“従来の”レンズシステムに対して次の特殊性を含む。
【0045】
対象をミクロレンズフィールド15の側から観測するとき、ミクロレンズフィールド16の側から対象を観測するときよりも異なる画像が表示される。それぞれの観察方向に依存して焦点距離の符号が変化する。さらに、負の焦点距離では、|s|<Ff1/f2である物体距離sでの実像が存在する。正の焦点距離では、撮影距離は常に焦点距離より小さい。さらに、直立の画像が生じる。
【0046】
ミクロレンズフィールド15のミクロレンズは正の焦点距離を有し、ミクロレンズフィールド16のミクロレンズは負の焦点距離を有する(ガリレオ・テレスコープ(Gallileo telescope)状況において、従来のレンズの結像機能に対する違いは以下である。
【0047】
システムの焦点距離の符号は、従来のレンズの場合のように、システムが回転されたときに変化しない。しかしながら、それにも拘わらず焦点距離は観察方向に依存する。このシステムは、対象が屈折率f1/f2の媒体にある従来レンズのように働く。
【0048】
上述した条件を満たし、従ってその処理のときに従来レンズと同様の光学的な機能を生じるミクロレンズフィールド15および16としてミクロレンズフィールドを用いる代わりに、上述の条件を満たさないミクロレンズフィールドを用いることもまた可能である。このように、例えば1つまたは両方のミクロレンズフィールドのミクロレンズのレンズ間隔が、人目を引く目立った歪み効果が生じるように部分的に連続的に変化することもまた可能である。同様にミクロレンズフィールドのミクロレンズの焦点距離が少なくともミクロレンズフィールドの領域で連続的に変化されることは可能である。これにより、同様にこのような歪み効果が生じ得る。ミクロレンズフィールド15および16の両者におけるミクロレンズの屈折率およびミクロレンズの有効焦点距離またはミクロレンズの間隔が少なくとも部分的に変化するとき、二つのミクロレンズフィールド15および16が横にずれるとき結果として生じる結像機能は互いに変化する。これは、セキュリティドキュメント1におけるさらなるセキュリティ機能として働き得る。
【0049】
さらに、ミクロレンズフィールド15および16にミクロレンズの焦点距離とミクロレンズの間隔とが明らかに一定であるが隣接する領域とは異なるような領域が設けられることもまた可能である。この場合、二つのミクロレンズフィールド15および16のうち1つだけが相互に並列の関係に配置された複数の従来の異なるレンズに対応する結像機能を提供する構成であるとき、個々の準領域に関して適用する光学結像機能は上述の関係によって画定される。ミクロレンズフィールド15および16の両者がそのような構成から成る場合、光学結像機能は二つのミクロレンズフィールド15および16が互いに対して横にずれるとき変化する。このずれはセキュリティドキュメントを確認するためのさらなる安全特性として用いられ得る。
【0050】
ミクロレンズフィールド15および16のレンズ間隔は、入射光線を分割することによって生じる部分光線が人間の眼の解像能力以下の直径を有するように選択されることが好ましい。したがってミクロレンズフィールド15および16の間隔が250μmと25μmとの間の範囲にあることが好ましい。これは、ミクロレンズフィールド15および16によって生じる一体となった画像が良い解像度を有することを保証する。ミクロレンズフィールド15および16によって生じる結像機能の光学的な質に関してなされる要求が低い場合、ミクロレンズフィールド15および16のミクロレンズのレンズ間隔を増加することもまた可能である。
【0051】
ミクロレンズフィールド15を有する透明窓12の領域に配置された光学エレメントの詳細な構造は、図3cおよび4を参照して以下に説明される。
【0052】
図4は厚さ約100μmの紙材を含み、透明窓12の領域においてスタンピングまたは切削処理によって形成された開口を有するキャリア11を示す。フィルムエレメント20が好ましくは熱および圧力で、この熱および圧力によって活性化されたフィルムエレメント20の接着剤層によってキャリア11の紙材に施される。図4に示される凹部は光学エレメント20の領域にここで適用された圧力によって同時に形成される。
【0053】
フィルムエレメント20はキャリアフィルム22、接着層23、複製ラッカー層24、光学分離層25および接着剤層26を有する。
【0054】
キャリアフィルム22は層厚さ10〜200μmのPETまたはBOPPフィルムを有する。キャリアフィルム22の機能はキャリア11において開口を越えて橋渡すのに必要な安定性を提供するためである。接着層23は厚さ0.2〜2μmであり、印刷加工によってキャリアフィルム22に施される。複製ラッカー層24は熱可塑性または架橋性ポリマーを含み、ここにはレリーフ構造27が熱および圧力の作用下で複製ツールによって、またはUV複製によって複製される。光学分離層25は屈折率が複製ラッカー層24の屈折率と著しく異なる材料を含む。この場合、複製ラッカー層24と光学分離層25との間の屈折率における差が著しく大きくなるように、光学分離層25はHRI(高屈折率)またはLRI(低屈折率)層を含むことが好ましい。さらに、複製ラッカー層のポリマーがナノパーティクルでドープされることによって、または高屈折率を有するポリマー、例えば感光性ポリマーを複製ラッカー層に用いることによって、複製ラッカー層24に可能な限り高い屈折率を達成することも可能である。さらに、光学分離層が可能な限り厚くなることもまた有利である。このように、レリーフ構造27のレリーフ深さを減少させることが可能であり、これは、ミクロレンズフィールド1のミクロレンズが巨視的な構造によって画定された屈折レンズの形態に形成されるときに特に有利である。
【0055】
しかしながら、ミクロレンズフィールド15がこのように密閉された構造に実施されずに光学分離層25なしで済ませることもまた可能である。さらに、レリーフ構造27が直接外気と接触するように、接着剤層26がレリーフ構造27の領域において取り除かれることも可能である。
【0056】
レリーフ構造27は、図3cに示される形態の相互に並列した関係に配置された複数の巨視的レンズによってミクロレンズフィールド15を提供するレリーフ構造である。しかしながら、レリーフ構造27が光学回折手段によって凸または凹のミクロレンズを含むミクロレンズフィールドの効果を生じる回折レリーフ構造であることもまた可能である。
【0057】
凸または凹レンズの効果はこの場合、表面領域にわたってその回折周波数および必要ならばさらなる回折定数に関して連続的に変化する回折レリーフ構造によって生じ得る。例として、光学回折手段によってレンズの中心で放物面の中心部から始まり、この中心部に対して環状に配置された複数の溝が設けられ、回折周波数が中心部から連続的に増加する凸レンズの効果を生じることが可能である。凹レンズの効果は、光学回折手段によって反対の構造によって生じうる。光学回折手段によって相互に並列した関係に配置された複数のミクロレンズを有するミクロレンズフィールドの効果を生じるために、このような複数のレリーフ構造がチェスボード状の態様に、相互に並列した関係で配置される。さらに、これらのレリーフ構造が六方で並列した関係で配置されることもまた可能である。さらに、このような“回折レンズ”の構成に関して、書籍“ミクロ−オプティクス(Micro−Optics)”、ハンス・ペーター ヘルツィグ(Hans Peter Herzig)、テーラー&フランシス(Taylor and Francis)出版、ロンドン、1997の章に留意すべきである。
【0058】
この種の“回折”ミクロレンズフィールドの利用は、ミクロレンズフィールドを形成するのに必要なレリーフ構造27のレリーフ深さが減少され得るという利点を有し、これは、ミクロレンズフィールド15のミクロレンズのレンズ間隔がより大きい、具体的に言うと焦点距離の短いときに特に有利である。
【0059】
図4に示された構造および光学エレメント20の配置は、ミクロレンズフィールドを生じる表面構造が非常に実質的に損傷や処理操作から保護されるという利点を有する。
【0060】
本発明のさらなる実施例は、図5を参照して以下に説明される。
【0061】
図5はセキュリティドキュメント3の観察状況の概略図を示す。ここでは、セキュリティドキュメント3を確認するために、セキュリティドキュメント3の透明窓に配置された二つのミクロレンズフィールド31および32が重ね合わされた関係にされている。ミクロレンズフィールド31は、正の焦点距離を有する周期的ラスタに従って配置されたミクロレンズを伴った領域を有する。さらに、領域33においてミクロレンズフィールド31を実現する光学エレメントでは、ミクロレンズフィールドがセキュリティドキュメント3の下面から間隔d1であるような構成となっている。
【0062】
ミクロレンズフィールド32は領域34を有し、この領域34では、正の焦点距離を有する複数のミクロレンズが第一ラスタに従って配置される。このミクロレンズフィールド32はさらにこの領域を取り囲む領域35を有し、この領域35では、負の焦点距離を有する複数のミクロレンズが第二周期的ラスタに従って配置される。ここで、ミクロレンズフィールド32を実現する光学エレメントの構成は、領域34のミクロレンズにセキュリティドキュメント3の下側から間隔d2の間隔をあけている。
【0063】
ミクロレンズフィールド31および32が設けられた光学エレメントは、この場合、図5に示されるように、ミクロレンズフィールド31および32を生じる表面構造は熱および圧力による複製ツールによって導入された熱可塑性フィルム体、例えば層厚さ10〜50μmのPETまたはBOPPフィルムを有する。ある状況下では、このフィルム体は次ぎにさらなる層、例えば光学分離層または保護ラッカー層でさらに覆われ、次いで透明光学窓の領域においてセキュリティドキュメント3のキャリアに適用される。しかしながら、図5の光学エレメントが図4の光学エレメント20のように構築されることもまた可能である。
【0064】
ここで、セキュリティドキュメント3は折り畳まれ、ミクロレンズフィールド31および32が重なり合う関係にされるとき、ミクロレンズフィールド31および32の領域33と領域34とがそれぞれ重なり合った領域において第一光学結像機能が生じ、ミクロレンズフィールド31および32に領域33と領域35とがそれぞれ重なり合った領域において第二光学結像機能が生じる。この場合、第一光学結像機能は、領域33および34のミクロレンズの焦点距離と、領域33および34のミクロレンズの間隔とに依存する上述の特徴(ケプラー・テレスコープ)を有する。一方、領域33および35のミクロレンズの焦点距離および領域33および35におけるミクロレンズの間隔によって決定される第二光学結像機能は、それらとは著しく異なった特徴(ガリレオ・テレスコープ)を有する。この場合、間隔d1およびd2はセキュリティドキュメント3の下側が互いに直接向かい合うとき、間隔d1およびd2の合計が領域33および34におけるミクロレンズの焦点距離の合計に相当し、間隔d1が領域33および35におけるミクロレンズの焦点距離の合計に相当するように、間隔d1およびd2が選択されることが好ましい。例として、次の値が間隔d1およびd2と、領域33、34および35におけるミクロレンズの焦点距離とに採用され得る。つまり、d1=d2=1mm、f33=0.125mm、f34=0.075mmおよびf35=−0.025mmであって、ここでf33は領域33におけるミクロレンズの焦点距離を表し、f34は領域34におけるミクロレンズの焦点距離を表し、f35は領域35におけるミクロレンズの焦点距離を表す。
【0065】
さらに、ミクロレンズフィールド31および32を相互に重なり合わせることによって生じる結像機能は、それらを重なり合わせる透明窓の間隔によってもまた決定される。光学窓の互いの間隔における変化による光学結像機能の変化は付加的な目覚ましい光学的安全特性として働く。この点において、上述した間隔d1およびd2の選択は、光学エレメントが互いに直接向かい合って配置されるとき、明確に画定され相互に整合された第一および第二の結像機能が生じることを保証する。
【0066】
この場合、領域34は、パターンの形状、例えばグラフィック表示またはテキストの形状に形成されたパターン領域を形成して、異なる結像機能がコード化された付加的な情報を含むことが好ましい。このような異なる結像機能を有するパターン形状の領域の並列は、従来のレンズシステムによって模倣されることができないので、記憶するのが容易で他の技術を用いて模倣されるのが非常に困難な光学効果を本発明によって生じさせることが可能となる。
【0067】
さらに、すでに述べたように、ミクロレンズフィールド31は、ミクロレンズの間隔および/または焦点距離が異なる二つの領域を有することもまた可能である。ミクロレンズフィールド31がこのような構成となることも可能である。この場合、部分的に生じる光学結像機能がミクロレンズフィールド31および32の互いに対する横位置にさらに依存し、ミクロレンズフィールド31および32の互いに対して横にずれるとき、光学結像機能は変化し結像機能においてコード化された異なる情報アイテムがそれぞれ関連する横位置に依存して可視となる。
【0068】
図6はセキュリティドキュメント4の観察状況を示す。このセキュリティドキュメント4では、セキュリティドキュメント4の透明光学窓に配置された二つのミクロレンズフィールド41および42がセキュリティドキュメントの確認のために重なり合った関係にされている。この場合、ミクロレンズフィールド41は、領域46において周期的ラスタに対して方向付けられた一定の焦点距離の複数のミクロレンズを有する。ミクロレンズフィールド42はミクロレンズの焦点距離およびミクロレンズのレンズ間隔が異なる領域48および47を有する。この配置は、ミクロレンズ41および42が重なり合ったときに、すでに図5を参照して述べた光学効果を生じる。さらに、セキュリティドキュメント4は図6に示されるようにセキュリティドキュメント4のキャリアに適用されたさらなる光学エレメント45および44を有する。
【0069】
光学エレメント45はモアレパターン・BR>フ形状のインプリントであることが好ましい。この場合、モアレパターンは、ミクロレンズフィールド41の領域46がモアレアナライザとして機能し、光学エレメント45とミクロレンズフィールド41とが重なり合うときに光学エレメント45のモアレパターンにコード化されたモアレ画像が現れるようにミクロレンズフィールド41に適合される。この場合、ミクロレンズフィールド41のミクロレンズがモアレ拡大レンズを形成し、コード化された(繰り返しの小さい)情報アイテムをモアレ拡大する。これにより、潜在的な(例えば位相コード化された)情報アイテムが可視となる。
【0070】
さらに、光学エレメント45がモアレアナライザの形態のインプリントであり、ミクロレンズフィールド41が潜在的な(例えば位相コード化された)モアレ画像がコード化されたモアレパターンを形成することもまた可能である。
【0071】
この点において、モアレパターンという言葉は、構造を繰り返すことによって形成されるパターンを示す。ここで、このパターンは、構造を繰り返すことによって形成されモアレアナライザとして働くさらなるパターンと重ね合われるとき、またはそれを通して観察されたときにモアレパターンに隠された新たなパターン、つまりモアレ画像を表示する。もっとも簡単な場合、このモアレ効果は二つの線状ラスタの重ね合わせによって生じ、ここでは一つの線状ラスタがモアレ画像を生じるために部分的に位相移動される。線形の線状ラスタだけでなく、線状ラスタの線が曲線部を有する、例えば波状または円形の形状に配置されることも可能である。さらに、互いに曲がっているか重なり合っている二つ以上の線状ラスタに組み立てられたモアレパターンを用いることもまた可能である。このような線状ラスタにおけるモアレ画像の複合化は線状ラスタの部分的な位相移動によってもまた生じる。ここで二つ以上の異なるモアレ画像がこのようなモアレパターンにコード化され得る。さらに、いわゆる“スクランブルド インディカ(登録商標、Scrambled Indica)”技術またはホールパターン(さまざまな構造の環状、長円形、または角状ホール)に基づいたモアレパターンおよびモアレアナライザを用いることもまた可能である。
【0072】
光学エレメント44は、反射性光学エレメント、例えばモアレパターンの形状の部分的な金属化または部分的に金属化された回折構造である。この場合、光学エレメント44は、それらが領域46に配置されたミクロレンズフィールドによって重ね合わされたとき反射において目立った光学効果を表示する反射性ミクロレンズのフィールドまたはアレイを有することもまた可能である。
【0073】
図7a〜7cはセキュリティドキュメント5の様々な観察状況を示す。図7aに示された観察状況では、セキュリティドキュメント5は透明窓がセキュリティドキュメント5のミクロレンズフィールド51および52と重なり合う関係になるように折り畳まれている。図7bに示されるように、ここではセキュリティドキュメント5は、図7cに示される観察状況において図7aに示されるようにミクロレンズフィールド51および52の下側が互いに向かい合うのではなく、ミクロレンズフィールド51および52の上側がたがいに向かい合うように、他の方向に折り畳まれている。
【0074】
図7a〜7cに示されるように、ミクロレンズフィールド51および52がそれぞれ厚さd1おおよびd2の個々のレンズ体を有し、両側で構造化されている。その結果、ミクロレンズフィールド51の光学的な機能が、図3a〜3cを参照して述べた関係による二つのミクロレンズサブフィールド53および54の連携によって生じる。対応する様式において、ミクロレンズフィールド52は相互に並列した関係に配置された二つのミクロレンズサブフィールド55および56によって形成される。さらに図7a〜7cに示されるように、ミクロレンズフィールド51および52のレンズ体は、密閉されて光学分離層または保護層によって両側で覆われている。
【0075】
この場合、図7aに示されるように、ミクロレンズサブフィールド54および55は、ミクロレンズサブフィールド54および55によって生じる光学結像機能が互いに打ち消し合うように反対の形状を含む。従って、図7aに示される観察状況では、光学結像機能はミクロレンズサブフィールド53および56、つまりそれらのミクロレンズフィールドのレンズ間隔および焦点距離の重ね合わせによって生じる光学効果として生じる。これは、図7cの観察状況における場合ではなく、この観察状況は従来のレンズと同様の効果を生じない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明によるセキュリティドキュメントの図。
【図2】透明窓を重ね合わせるためにセキュリティドキュメントが折り畳まれた観察状況における図1のセキュリティドキュメントの原寸ではない概略断面図。
【図3a】図1のセキュリティドキュメントの相互に重なり合った二つのミクロレンズフィールドの概略図。
【図3b】図3aに示されるミクロレンズフィールドが重なり合ったときに生じる光学効果を説明するための略図。
【図3c】図3aに示されるようなミクロレンズフィールドの概略平面図。
【図4】図1のセキュリティドキュメントの部分の断面図。
【図5】本発明によるさらなるセキュリティドキュメントの概略図。
【図6】本発明によるさらなるセキュリティドキュメントの概略図。
【図7a】様々な観察状況における本発明によるさらなるセキュリティドキュメントを概略的に示す図。
【図7b】様々な観察状況における本発明によるさらなるセキュリティドキュメントを概略的に示す図。
【図7c】様々な観察状況における本発明によるさらなるセキュリティドキュメントを概略的に示す図。
【技術分野】
【0001】
本発明は第一光学エレメントと、第二光学エレメントが配置された透明窓とを有するセキュリティドキュメント、特に紙幣(banknote)または身分証明書に関する。第一および第二光学エレメントは、第一および第二光学エレメントが互いに重なり合わされ得るように、セキュリティドキュメントのキャリアに相互に間隔をおいた関係に配置される。
【背景技術】
【0002】
EP0930979B1は、可撓性プラスチックキャリアを有する自己検査紙幣を開示している。可撓性プラスチックキャリアは透明材料を有し、きれいで透明な表面が窓として残されている濁った被覆材料を備えている。
【0003】
拡大レンズが確認手段として窓に配置されている。さらに、小さな文字、細かな線あるいはフィリグリーパターンを示すミクロプリント領域が紙幣に設けられている。ここで、紙幣を確認または検査するために、紙幣は折り畳まれて透明窓とミクロプリント領域とが重なり合った関係にされる。拡大レンズはこのとき、ミクロプリントを観察者にとって可視にし、紙幣を確認するために用いられ得る。
【0004】
他方では、EP0930979B1は、透明窓に歪みレンズ、光学フィルター、または偏光フィルターを配置することを提案している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで本発明の目的は、改良されたセキュリティドキュメントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、第一光学エレメントが配置された第一透明窓と、第二光学エレメントが配置された第二透明窓とが設けられたセキュリティドキュメントによって達成される。第一透明窓および第二透明窓は、第一および第二光学エレメントが互いに重なり合う関係にされ得るように、セキュリティドキュメントのキャリアに相互に間隔をおいた関係に配置されている。第一光学エレメントは第一透過性ミクロレンズフィールドを有し、第二光学エレメントは第二透過性ミクロレンズフィールドを有している。第二ミクロレンズフィールドと第一ミクロレンズフィールドとが重ね合わされたとき第一光学効果が生じる。
【0007】
第一ミクロレンズフィールドが第二ミクロレンズフィールドと重ね合わされたとき、他の技術によって模倣されるのが非常に困難な、また相互に重なり合う第一および第二ミクロレンズフィールドの間の間隔に強く依存する、容易に記憶される目立った光学効果が生じる。第一および第二ミクロレンズフィールドを重ね合わせるときに生じる第一光学効果のこれらの特徴によって、ミクロレンズフィールドがセキュリティドキュメントの透明窓に配置されるときに、明瞭で目立った安全特性によってセキュリティドキュメントの信頼性を確認するオプションが使用者に提供される。これにより本発明は容易に確認され模倣が困難なセキュリティドキュメントを作ることを可能にする。
【0008】
本発明の有利な構成は付随する請求項に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の好適な実施例によると、第一ミクロレンズフィールドのミクロレンズのレンズ間隔と第二ミクロレンズフィールドのミクロレンズのレンズ間隔とは、相互に重ね合わされたミクロレンズフィールドによって分割された光線の個々の光ビームが普通のピクセルに対応するように選択される。この点において、ミクロレンズのレンズ間隔は、個々のミクロレンズフィールドまたはアレイのミクロレンズの横の間隔を意味する。これにより、二つのミクロレンズフィールドの重なり合いが一体となった画像を形成し、システム全体は、ほぼ単一の巨視的レンズのように働き、しかしながらこの特徴は、従来の巨視的レンズの特徴とは著しく異なる。このようなシステムは実像および虚像、単一の画像およびまた多数から成る画像とを形成することができる。
【0010】
同様の効果の巨視的レンズが第一および第二ミクロレンズフィールドを重ね合わせたときに形成されるように、二つのミクロレンズフィールドのミクロレンズのレンズ間隔は、第一および第二ミクロレンズフィールドの相互に関連するレンズのずれにおける変化が事実上の巨視的レンズの光軸から始まって一定であるように選択されることが好ましい。本発明の好適な実施例によると、これはミクロレンズが周期的ラスタに従って一定のレンズ間隔でそれぞれ互いに間隔をおいて配置されている二つのミクロレンズフィールドによって達成される。この場合、第一ミクロレンズフィールドのミクロレンズのレンズ間隔は第二ミクロレンズフィールドのミクロレンズのレンズ間隔と異なっている。このようなミクロレンズフィールドは特に容易に形成され得る。この点において、第一ミクロレンズフィールドのミクロレンズのレンズ間隔は第二ミクロレンズフィールドのミクロレンズのレンズ間隔の整数倍であることが好ましい。
【0011】
ミクロレンズフィールドを重ね合わせることによって高解像度の一体となった画像を達成することを可能とするために、この点においてミクロレンズの直径が人間の眼の解像能力より小さくなるように選択されるのが有利であり、その結果第一および第二ミクロレンズフィールドのミクロレンズのレンズ間隔が300μmより小さくなるように選択されるのが好ましい。さらにこの目的のために、ミクロレンズの焦点距離は画像および物体との距離と比較して小さくなるように選択される。
【0012】
この点において、第一ミクロレンズフィールドが負の焦点距離の複数のミクロレンズから形成され、第二ミクロレンズフィールドが正の焦点距離の複数のミクロレンズから形成される。これらのミクロレンズフィールドは分割された複数の光ビームの結像において、ケプラー・テレスコープ(Kepler Telescope)の態様において協同する。ミクロレンズフィールドのためのこのような構成によって、巨視的なレンズシステムと同様であるが従来のレンズシステムのものと著しく異なる特徴を有する光学効果を達成することが可能となる。したがって著しく目立ちそのため容易に記憶される光学効果を達成することが可能となる。
【0013】
さらに、第一ミクロレンズフィールドが正の焦点距離の複数のミクロレンズから形成され、第二ミクロレンズフィールドが負の焦点距離の複数のミクロレンズから形成されることもまた可能であり、これらのミクロレンズフィールドはガリレオ・テレスコープ(Gallileo Telescope)の態様において協同する。この場合もまた、第一および第二ミクロレンズフィールドが相互に重なり合った関係にあるとき、巨視的レンズのものと同様であるが従来の巨視的レンズシステムとは異なる効果を達成することが可能となる。
【0014】
本発明のさらに好適な実施例によると、二つのミクロレンズフィールドは同質のものではなく、局所的に異なるレンズ間隔、レンズの直径またはレンズの焦点距離といったパラメータを有する。横のずれによって、さまざまなミクロレンズの組み合わせや様々な光学機能が生じ得る。これにより新規な容易に思い出されるさらなる安全特性がセキュリティドキュメントに組み込まれることが可能となる。
【0015】
ここで、第一および/または第二ミクロレンズフィールドの一つ以上のパラメータが(普通の)ラスタに従って周期的に変化することが好ましい。さらに、ミクロレンズフィールドのパラメータが予め決定された態様に事実上連続的に変化することも可能である。
【0016】
したがって、例えば情報アイテムが、ミクロレンズのレンズ間隔が異なるおよび/またはミクロレンズの焦点距離が異なるような二つ以上の領域を有するミクロレンズフィールドによって少なくともミクロレンズフィールドに導入されることが可能である。ミクロレンズフィールドを重ね合わせるときに、結果として生じる結像機能は第一および第二領域において変化し、これによりミクロレンズフィールドのパラメータにおける変化にコード化された情報が観察者に対して可視となる。
【0017】
さらに、基礎的な周期ラスタに対するミクロレンズのレンズ間隔の位相ずれによって隠されている情報アイテムがモアレパターンの態様で一つ以上のミクロレンズフィールドにコード化され、これらの情報アイテムが第一および第二ミクロレンズフィールドが重ね合わされるときに可視にされることもまた可能である。
【0018】
セキュリティドキュメントの耐偽造性は、第一および第二ミクロレンズフィールドにおける付加的な情報アイテムをコード化する上述の手段によってさらに改良され得る。
【0019】
本発明のさらに好適な実施例によると、セキュリティエレメントは不透明の第三光学エレメントを有し、第一および/または第二ミクロレンズフィールドが第三光学エレメントと重ね合わされたときに、一つ以上のさらなる光学効果が形成される。さらに、二つのミクロレンズフィールドを重ね合わせることによって生じる第一の安全特性に対して、ミクロレンズと、例えば反射性光学可変エレメントまたは高解像度プリントとを重ね合わせることによってさらなる安全特性が生じ得る。この場合、ミクロレンズフィールドは例えばモアレアナライザとして働くことが出来る。
【0020】
本発明のさらに好適な実施例によると、第一および/または第二光学エレメントはそれぞれ第一および第二光学エレメントにおいて一方が他方にわたって配置された二つのミクロレンズサブフィールドを含む。二つのミクロレンズサブフィールドが例えばフィルムの反対側に配置され、向かい合って配置されたフィルムのミクロレンズ表面を形成する。したがって、例えば第一光学エレメントの一表面が一つのミクロレンズサブフィールドの形状によって決定され、前述の表面とは反対の第一光学エレメントの表面は他のミクロレンズサブフィールドの形状によって決定される。ここで、一つの光学エレメントのミクロレンズサブフィールドの形状が第二の光学エレメントのミクロレンズサブフィールドの形状を打ち消すならば、第一および第二光学エレメントが重ね合わされるときに生じる光学効果は、第一および第二光学エレメントの向きに、つまり、透明窓が重なり合った関係にされるようにセキュリティドキュメントがどの方向に折り畳まれるあるいは撓められるかに依存する。
【0021】
二つのミクロレンズフィールドのレンズの間の間隔が折り畳まれるまたは撓められる方向に依存して変化するようにミクロレンズフィールドがセキュリティドキュメントの透明窓に配置されることによって、同様の効果がまた達成され得る。
【0022】
第一および/または第二光学エレメントが、第一または第二ミクロレンズフィールドをそれぞれ形成するレリーフ構造が形成された複製ラッカー層を有することが好ましい。さらにここでは、さらなる光学分離層によるレリーフ構造の密閉および/またはUV複製によるレリーフ構造の成形が有利であることが分かっている。
【0023】
この場合、第一および第二ミクロレンズフィールドのミクロレンズが光学回折効果を有し光学回折手段によってミクロレンズフィールドの効果を生じるレリーフ構造によって形成されることが好ましい。このような“回折レンズ”は、断面深さが可視光の波長より小さい二成分回折レリーフ構造(二成分の薄い回折レンズ)と、可視光の波長より小さい断面深さの連続回折レリーフ形状(連続形状の薄い回折レンズ)と、可視光の波長より大きい断面深さの回折連続レリーフ形状(連続形状の厚い回折レンズ)とによって形成されることができる。しかしながら、ミクロレンズフィールドは複製ラッカー層に屈折して作用するマクロ構造の形態に形成されることも可能である。このマクロ構造は、突然な変化のない連続的で安定した表面形状を有する。この場合、マクロ構造の断面深さは可視光の波長より数倍大きい。
【0024】
第一および/または第二光学エレメントが転写フィルムの転写層によって形成されることが好ましい。これは、間隔、平面性などに関する許容値と同様にミクロレンズフィールドの質に関する要求を満たすことを可能にする。
【実施例】
【0025】
添付する図面を参照して例として次ぎの多くの実施例によって本発明は記載される。
【0026】
図1は有価ドキュメント1、例えば紙幣または小切手を示す。しかしながら有価ドキュメント1が識別ドキュメント、例えば身分証明書または通行証を示すことも可能である。
【0027】
セキュリティドキュメント1は透明窓12および13を有する可撓性キャリア11を備えている。キャリア11は、その上にプリントが施され、さらなる安全特性、例えば透かしまたはセキュリティスレッドが設けられた紙材からなるのが好ましい。次に、窓形状の開口がこの紙製キャリアに例えばスタンピングまたはレーザーによって導入され、それにより図1に示される透明窓12および13が提供される。次いで透明窓12および13は透過性ミクロレンズフィールドまたはアレイを有する光学エレメントによって再び閉じられる。従って、第一透過性ミクロレンズフィールド15が透明窓12の領域に配置され、第二透過性ミクロレンズフィールド16が透明窓13の領域に配置される。
【0028】
しかしながら、キャリア11がプラスチックフィルムまたは1つ以上の紙およびプラスチック材料層を含むラミネートであることもまた可能である。従って、透明なまたは部分的に透明な材料が予めキャリア11の材料として用いられることもまた可能であり、したがって、このキャリアが透明窓12および13を生じるようにスタンピングまたは切削によって部分的に取り除かれる必要がない。これは、例えばキャリア11が透明窓12および13の領域で濁りを有さない場合である。さらに、透明窓12および13が紙生産手順において予め形成され、透明ミクロレンズフィールド15および16を有する光学エレメントがセキュリティスレッドの態様でキャリア11に導入されることもまた可能である。
【0029】
さらに、キャリア11は−例えばパスポートの場合−接着または縫合によって結合された2つのページを有することもまた可能である。
【0030】
図1に示されるように細長い形状のパッチ14がさらにキャリア11に適用され、このパッチは透明窓13の領域を覆っている。透明ミクロレンズフィールドまたはアレイ16はパッチ14に導入される。パッチ14は転写フィルム、例えばホットスタンピングフィルムの転写層であることが好ましく、これは圧力および熱の作用下で接着剤層によってキャリア11に結合される。図1に示されるように、透明窓13の領域に配置された透過性ミクロレンズフィールド16に加えて、パッチ14は1つ以上のさらなる光学エレメント、例えば図1に示されるさらなる光学エレメント17を有することもまた可能である。光学エレメント17は、例えば回折格子、ホログラム、キネグラム(登録商標、KINEGRAM)、部分金属化、HRI(高屈折率)層、干渉層システム、架橋性液晶層、または作用色素によるプリントである。
【0031】
さらに、透明窓12がキャリア11に図1に示す位置で導入されずに、細長い形状のパッチが透明窓12および13の両者を覆うように細長い形状のパッチ14の領域においてキャリア11に組み込まれることもまた可能である。従ってミクロレンズフィールド15および16の両者が普通のフィルムエレメントに導入されることも可能であり、それにより有価ドキュメント1の生産は大幅に改良される。
【0032】
セキュリティドキュメント1は例えば転写フィルムによって適用されキャリア11を撓めることによって、折りたたむことによってまたは曲げることによって透明窓12および13と重なり合う関係にされ得るさらなる安全特性を有する。このように、図1は例として好ましくは反射性の光学可変エレメントあるいはセキュリティインプリントであるさらなる光学エレメント18を示す。
【0033】
セキュリティドキュメントを確認することを目的として、キャリア11の透明窓12および13は例えばキャリア11を折りたたむことによって重ね合わさった関係にされ、ミクロレンズフィールド15および16は図2に示されるように重なり合う。次いで、一方が他方にわたって配置された二つのミクロレンズフィールド15および16を通して観るときに生じる光学効果が確認される。従って例えば観察方向2に配置された対象、グラフ表示、または特有の確認パターンが透過性ミクロレンズフィールド15および16を通して観察される。また、セキュリティドキュメント1の光学エレメントがさらにセキュリティドキュメント1を折り畳むことによって観察方向に配置され、透明ミクロレンズフィールド15および16を通して観察されることもまた可能である。
【0034】
ここで、対象を透過性ミクロレンズフィールド15および16を通して観察するときに生じる光学効果が、図3aおよび3bを参照して記載される。
【0035】
図3aは図2に示された観察状況において互いの間隔がdで互いに関連して配置されたミクロレンズフィールド15および16の部分を示す。
【0036】
ミクロレンズフィールド15は、図3cに示されるように相互に並列に並べられた関係で配置された複数のミクロレンズ21を有する。ミクロレンズフィールド16は複数のミクロレンズ22を有する。このとき互いに関連づけられミクロレンズフィールド15および16によって形成されたシステムの概念的な光軸から間隔rで配置された二つのレンズ21および22が観察される場合、それらの平行な光軸は、ずれΔrを有する。次いで、二つのミクロレンズフィールドの間隔がミクロレンズ21および22の焦点距離の合計に相当するという仮定の上で、角度αで入射する平行光ビームはレンズ21の軸からf1αの間隔の点に集光される。ここで、f1はレンズ21の焦点距離である。次にレンズ21および22の間のずれΔrによって、光ビームは角度βでレンズ22を通過する。ここで、
【数1】
であり、さらにf2はレンズ22の焦点距離である。次いで、光線の光源がミクロレンズフィールド15から距離uであり、レンズ21が光線位置rを占めている場合が考えられるとき、光ビームの横の位置はミクロレンズ22r−βxからxの間隔となる。これにより、前述の式および角度αをα=r/uによって置き換えることによって次のような結果となる。
【数2】
【0037】
ミクロレンズフィールド15および16によって分けられる全ての部分光線はミクロレンズフィールドを通った後に同じ点に集光されるように、yはrから独立であることが必要である。したがって対象物の距離が有限であり像距離が焦点距離に相当するという仮定の上で、二つのミクロレンズフィールド15および16の図3aに示される配置の焦点距離として次式が適用される。
【数3】
【0038】
これは、微分係数∂Δr/∂rが一定であるときに、ミクロレンズフィールド15および16によって形成される結像系の焦点距離Fが一定であることを意味する。これは、例えばミクロレンズフィールド15および16のミクロレンズが互いに一定の異なるレンズ間隔をおいて配置される場合である。これは、例えば図3aに示される例において、ミクロレンズ21および22はそれぞれ互いに一定のレンズ間隔p1およびp2で配置され、図3cに示されるように周期的ラスタによって互いに関連して方向付けられる場合である。
【0039】
この条件が満たされるとき一体となった画像が生じ、図3aに示されたシステムの結像機能は二つの巨視的レンズ21および22から成る従来のレンズシステムのものにほとんど対応する。
【0040】
今、ミクロレンズフィールド15のミクロレンズが一定のレンズ間隔p1で互いに間隔を置いて配置され、且つミクロレンズフィールド16のレンズが一定の間隔p2で互いに間隔を置いて配置される特有な場合がさらに観察されるとき、図3bに示された概要に基づいて、次のような関係が結果として生じる。
【0041】
図3bはミクロレンズフィールド15および16を示し、光軸上のミクロレンズフィールド16から距離gで間隔を置かれ、第一ミクロレンズフィールドによって、ミクロレンズから距離s1で間隔を置かれ横の間隔ynを含む一連の点に結像された点を示す。これらの点はミクロレンズフィールド16からs2の距離であり、光軸上の点に距離bで結像される。
【0042】
図3bに示された状況が生じるように、次の条件が設定されなければならない。
【数4】
ミクロレンズフィールド15および16のシステムが薄いレンズのシステムとして観測されるとき、システムの焦点距離のために、ミクロレンズフィールド15の側面からの光の入射で、焦点距離は
【数5】
となり、ミクロレンズフィールド16の側面からの光の入射で、焦点距離は
【数6】
となる。
【0043】
このように、結像機能は、ミクロレンズフィールド15の側面からの光の入射で次のように記載されることができる。
【数7】
【0044】
したがって、普通のレンズとは対照的に、ミクロレンズフィールド15および16によって生じる結像機能は、ミクロレンズフィールド15および16のための正の焦点距離のミクロレンズ(ケプラー・テレスコープ(Kepler telescope))を用いる場合には、“従来の”レンズシステムに対して次の特殊性を含む。
【0045】
対象をミクロレンズフィールド15の側から観測するとき、ミクロレンズフィールド16の側から対象を観測するときよりも異なる画像が表示される。それぞれの観察方向に依存して焦点距離の符号が変化する。さらに、負の焦点距離では、|s|<Ff1/f2である物体距離sでの実像が存在する。正の焦点距離では、撮影距離は常に焦点距離より小さい。さらに、直立の画像が生じる。
【0046】
ミクロレンズフィールド15のミクロレンズは正の焦点距離を有し、ミクロレンズフィールド16のミクロレンズは負の焦点距離を有する(ガリレオ・テレスコープ(Gallileo telescope)状況において、従来のレンズの結像機能に対する違いは以下である。
【0047】
システムの焦点距離の符号は、従来のレンズの場合のように、システムが回転されたときに変化しない。しかしながら、それにも拘わらず焦点距離は観察方向に依存する。このシステムは、対象が屈折率f1/f2の媒体にある従来レンズのように働く。
【0048】
上述した条件を満たし、従ってその処理のときに従来レンズと同様の光学的な機能を生じるミクロレンズフィールド15および16としてミクロレンズフィールドを用いる代わりに、上述の条件を満たさないミクロレンズフィールドを用いることもまた可能である。このように、例えば1つまたは両方のミクロレンズフィールドのミクロレンズのレンズ間隔が、人目を引く目立った歪み効果が生じるように部分的に連続的に変化することもまた可能である。同様にミクロレンズフィールドのミクロレンズの焦点距離が少なくともミクロレンズフィールドの領域で連続的に変化されることは可能である。これにより、同様にこのような歪み効果が生じ得る。ミクロレンズフィールド15および16の両者におけるミクロレンズの屈折率およびミクロレンズの有効焦点距離またはミクロレンズの間隔が少なくとも部分的に変化するとき、二つのミクロレンズフィールド15および16が横にずれるとき結果として生じる結像機能は互いに変化する。これは、セキュリティドキュメント1におけるさらなるセキュリティ機能として働き得る。
【0049】
さらに、ミクロレンズフィールド15および16にミクロレンズの焦点距離とミクロレンズの間隔とが明らかに一定であるが隣接する領域とは異なるような領域が設けられることもまた可能である。この場合、二つのミクロレンズフィールド15および16のうち1つだけが相互に並列の関係に配置された複数の従来の異なるレンズに対応する結像機能を提供する構成であるとき、個々の準領域に関して適用する光学結像機能は上述の関係によって画定される。ミクロレンズフィールド15および16の両者がそのような構成から成る場合、光学結像機能は二つのミクロレンズフィールド15および16が互いに対して横にずれるとき変化する。このずれはセキュリティドキュメントを確認するためのさらなる安全特性として用いられ得る。
【0050】
ミクロレンズフィールド15および16のレンズ間隔は、入射光線を分割することによって生じる部分光線が人間の眼の解像能力以下の直径を有するように選択されることが好ましい。したがってミクロレンズフィールド15および16の間隔が250μmと25μmとの間の範囲にあることが好ましい。これは、ミクロレンズフィールド15および16によって生じる一体となった画像が良い解像度を有することを保証する。ミクロレンズフィールド15および16によって生じる結像機能の光学的な質に関してなされる要求が低い場合、ミクロレンズフィールド15および16のミクロレンズのレンズ間隔を増加することもまた可能である。
【0051】
ミクロレンズフィールド15を有する透明窓12の領域に配置された光学エレメントの詳細な構造は、図3cおよび4を参照して以下に説明される。
【0052】
図4は厚さ約100μmの紙材を含み、透明窓12の領域においてスタンピングまたは切削処理によって形成された開口を有するキャリア11を示す。フィルムエレメント20が好ましくは熱および圧力で、この熱および圧力によって活性化されたフィルムエレメント20の接着剤層によってキャリア11の紙材に施される。図4に示される凹部は光学エレメント20の領域にここで適用された圧力によって同時に形成される。
【0053】
フィルムエレメント20はキャリアフィルム22、接着層23、複製ラッカー層24、光学分離層25および接着剤層26を有する。
【0054】
キャリアフィルム22は層厚さ10〜200μmのPETまたはBOPPフィルムを有する。キャリアフィルム22の機能はキャリア11において開口を越えて橋渡すのに必要な安定性を提供するためである。接着層23は厚さ0.2〜2μmであり、印刷加工によってキャリアフィルム22に施される。複製ラッカー層24は熱可塑性または架橋性ポリマーを含み、ここにはレリーフ構造27が熱および圧力の作用下で複製ツールによって、またはUV複製によって複製される。光学分離層25は屈折率が複製ラッカー層24の屈折率と著しく異なる材料を含む。この場合、複製ラッカー層24と光学分離層25との間の屈折率における差が著しく大きくなるように、光学分離層25はHRI(高屈折率)またはLRI(低屈折率)層を含むことが好ましい。さらに、複製ラッカー層のポリマーがナノパーティクルでドープされることによって、または高屈折率を有するポリマー、例えば感光性ポリマーを複製ラッカー層に用いることによって、複製ラッカー層24に可能な限り高い屈折率を達成することも可能である。さらに、光学分離層が可能な限り厚くなることもまた有利である。このように、レリーフ構造27のレリーフ深さを減少させることが可能であり、これは、ミクロレンズフィールド1のミクロレンズが巨視的な構造によって画定された屈折レンズの形態に形成されるときに特に有利である。
【0055】
しかしながら、ミクロレンズフィールド15がこのように密閉された構造に実施されずに光学分離層25なしで済ませることもまた可能である。さらに、レリーフ構造27が直接外気と接触するように、接着剤層26がレリーフ構造27の領域において取り除かれることも可能である。
【0056】
レリーフ構造27は、図3cに示される形態の相互に並列した関係に配置された複数の巨視的レンズによってミクロレンズフィールド15を提供するレリーフ構造である。しかしながら、レリーフ構造27が光学回折手段によって凸または凹のミクロレンズを含むミクロレンズフィールドの効果を生じる回折レリーフ構造であることもまた可能である。
【0057】
凸または凹レンズの効果はこの場合、表面領域にわたってその回折周波数および必要ならばさらなる回折定数に関して連続的に変化する回折レリーフ構造によって生じ得る。例として、光学回折手段によってレンズの中心で放物面の中心部から始まり、この中心部に対して環状に配置された複数の溝が設けられ、回折周波数が中心部から連続的に増加する凸レンズの効果を生じることが可能である。凹レンズの効果は、光学回折手段によって反対の構造によって生じうる。光学回折手段によって相互に並列した関係に配置された複数のミクロレンズを有するミクロレンズフィールドの効果を生じるために、このような複数のレリーフ構造がチェスボード状の態様に、相互に並列した関係で配置される。さらに、これらのレリーフ構造が六方で並列した関係で配置されることもまた可能である。さらに、このような“回折レンズ”の構成に関して、書籍“ミクロ−オプティクス(Micro−Optics)”、ハンス・ペーター ヘルツィグ(Hans Peter Herzig)、テーラー&フランシス(Taylor and Francis)出版、ロンドン、1997の章に留意すべきである。
【0058】
この種の“回折”ミクロレンズフィールドの利用は、ミクロレンズフィールドを形成するのに必要なレリーフ構造27のレリーフ深さが減少され得るという利点を有し、これは、ミクロレンズフィールド15のミクロレンズのレンズ間隔がより大きい、具体的に言うと焦点距離の短いときに特に有利である。
【0059】
図4に示された構造および光学エレメント20の配置は、ミクロレンズフィールドを生じる表面構造が非常に実質的に損傷や処理操作から保護されるという利点を有する。
【0060】
本発明のさらなる実施例は、図5を参照して以下に説明される。
【0061】
図5はセキュリティドキュメント3の観察状況の概略図を示す。ここでは、セキュリティドキュメント3を確認するために、セキュリティドキュメント3の透明窓に配置された二つのミクロレンズフィールド31および32が重ね合わされた関係にされている。ミクロレンズフィールド31は、正の焦点距離を有する周期的ラスタに従って配置されたミクロレンズを伴った領域を有する。さらに、領域33においてミクロレンズフィールド31を実現する光学エレメントでは、ミクロレンズフィールドがセキュリティドキュメント3の下面から間隔d1であるような構成となっている。
【0062】
ミクロレンズフィールド32は領域34を有し、この領域34では、正の焦点距離を有する複数のミクロレンズが第一ラスタに従って配置される。このミクロレンズフィールド32はさらにこの領域を取り囲む領域35を有し、この領域35では、負の焦点距離を有する複数のミクロレンズが第二周期的ラスタに従って配置される。ここで、ミクロレンズフィールド32を実現する光学エレメントの構成は、領域34のミクロレンズにセキュリティドキュメント3の下側から間隔d2の間隔をあけている。
【0063】
ミクロレンズフィールド31および32が設けられた光学エレメントは、この場合、図5に示されるように、ミクロレンズフィールド31および32を生じる表面構造は熱および圧力による複製ツールによって導入された熱可塑性フィルム体、例えば層厚さ10〜50μmのPETまたはBOPPフィルムを有する。ある状況下では、このフィルム体は次ぎにさらなる層、例えば光学分離層または保護ラッカー層でさらに覆われ、次いで透明光学窓の領域においてセキュリティドキュメント3のキャリアに適用される。しかしながら、図5の光学エレメントが図4の光学エレメント20のように構築されることもまた可能である。
【0064】
ここで、セキュリティドキュメント3は折り畳まれ、ミクロレンズフィールド31および32が重なり合う関係にされるとき、ミクロレンズフィールド31および32の領域33と領域34とがそれぞれ重なり合った領域において第一光学結像機能が生じ、ミクロレンズフィールド31および32に領域33と領域35とがそれぞれ重なり合った領域において第二光学結像機能が生じる。この場合、第一光学結像機能は、領域33および34のミクロレンズの焦点距離と、領域33および34のミクロレンズの間隔とに依存する上述の特徴(ケプラー・テレスコープ)を有する。一方、領域33および35のミクロレンズの焦点距離および領域33および35におけるミクロレンズの間隔によって決定される第二光学結像機能は、それらとは著しく異なった特徴(ガリレオ・テレスコープ)を有する。この場合、間隔d1およびd2はセキュリティドキュメント3の下側が互いに直接向かい合うとき、間隔d1およびd2の合計が領域33および34におけるミクロレンズの焦点距離の合計に相当し、間隔d1が領域33および35におけるミクロレンズの焦点距離の合計に相当するように、間隔d1およびd2が選択されることが好ましい。例として、次の値が間隔d1およびd2と、領域33、34および35におけるミクロレンズの焦点距離とに採用され得る。つまり、d1=d2=1mm、f33=0.125mm、f34=0.075mmおよびf35=−0.025mmであって、ここでf33は領域33におけるミクロレンズの焦点距離を表し、f34は領域34におけるミクロレンズの焦点距離を表し、f35は領域35におけるミクロレンズの焦点距離を表す。
【0065】
さらに、ミクロレンズフィールド31および32を相互に重なり合わせることによって生じる結像機能は、それらを重なり合わせる透明窓の間隔によってもまた決定される。光学窓の互いの間隔における変化による光学結像機能の変化は付加的な目覚ましい光学的安全特性として働く。この点において、上述した間隔d1およびd2の選択は、光学エレメントが互いに直接向かい合って配置されるとき、明確に画定され相互に整合された第一および第二の結像機能が生じることを保証する。
【0066】
この場合、領域34は、パターンの形状、例えばグラフィック表示またはテキストの形状に形成されたパターン領域を形成して、異なる結像機能がコード化された付加的な情報を含むことが好ましい。このような異なる結像機能を有するパターン形状の領域の並列は、従来のレンズシステムによって模倣されることができないので、記憶するのが容易で他の技術を用いて模倣されるのが非常に困難な光学効果を本発明によって生じさせることが可能となる。
【0067】
さらに、すでに述べたように、ミクロレンズフィールド31は、ミクロレンズの間隔および/または焦点距離が異なる二つの領域を有することもまた可能である。ミクロレンズフィールド31がこのような構成となることも可能である。この場合、部分的に生じる光学結像機能がミクロレンズフィールド31および32の互いに対する横位置にさらに依存し、ミクロレンズフィールド31および32の互いに対して横にずれるとき、光学結像機能は変化し結像機能においてコード化された異なる情報アイテムがそれぞれ関連する横位置に依存して可視となる。
【0068】
図6はセキュリティドキュメント4の観察状況を示す。このセキュリティドキュメント4では、セキュリティドキュメント4の透明光学窓に配置された二つのミクロレンズフィールド41および42がセキュリティドキュメントの確認のために重なり合った関係にされている。この場合、ミクロレンズフィールド41は、領域46において周期的ラスタに対して方向付けられた一定の焦点距離の複数のミクロレンズを有する。ミクロレンズフィールド42はミクロレンズの焦点距離およびミクロレンズのレンズ間隔が異なる領域48および47を有する。この配置は、ミクロレンズ41および42が重なり合ったときに、すでに図5を参照して述べた光学効果を生じる。さらに、セキュリティドキュメント4は図6に示されるようにセキュリティドキュメント4のキャリアに適用されたさらなる光学エレメント45および44を有する。
【0069】
光学エレメント45はモアレパターン・BR>フ形状のインプリントであることが好ましい。この場合、モアレパターンは、ミクロレンズフィールド41の領域46がモアレアナライザとして機能し、光学エレメント45とミクロレンズフィールド41とが重なり合うときに光学エレメント45のモアレパターンにコード化されたモアレ画像が現れるようにミクロレンズフィールド41に適合される。この場合、ミクロレンズフィールド41のミクロレンズがモアレ拡大レンズを形成し、コード化された(繰り返しの小さい)情報アイテムをモアレ拡大する。これにより、潜在的な(例えば位相コード化された)情報アイテムが可視となる。
【0070】
さらに、光学エレメント45がモアレアナライザの形態のインプリントであり、ミクロレンズフィールド41が潜在的な(例えば位相コード化された)モアレ画像がコード化されたモアレパターンを形成することもまた可能である。
【0071】
この点において、モアレパターンという言葉は、構造を繰り返すことによって形成されるパターンを示す。ここで、このパターンは、構造を繰り返すことによって形成されモアレアナライザとして働くさらなるパターンと重ね合われるとき、またはそれを通して観察されたときにモアレパターンに隠された新たなパターン、つまりモアレ画像を表示する。もっとも簡単な場合、このモアレ効果は二つの線状ラスタの重ね合わせによって生じ、ここでは一つの線状ラスタがモアレ画像を生じるために部分的に位相移動される。線形の線状ラスタだけでなく、線状ラスタの線が曲線部を有する、例えば波状または円形の形状に配置されることも可能である。さらに、互いに曲がっているか重なり合っている二つ以上の線状ラスタに組み立てられたモアレパターンを用いることもまた可能である。このような線状ラスタにおけるモアレ画像の複合化は線状ラスタの部分的な位相移動によってもまた生じる。ここで二つ以上の異なるモアレ画像がこのようなモアレパターンにコード化され得る。さらに、いわゆる“スクランブルド インディカ(登録商標、Scrambled Indica)”技術またはホールパターン(さまざまな構造の環状、長円形、または角状ホール)に基づいたモアレパターンおよびモアレアナライザを用いることもまた可能である。
【0072】
光学エレメント44は、反射性光学エレメント、例えばモアレパターンの形状の部分的な金属化または部分的に金属化された回折構造である。この場合、光学エレメント44は、それらが領域46に配置されたミクロレンズフィールドによって重ね合わされたとき反射において目立った光学効果を表示する反射性ミクロレンズのフィールドまたはアレイを有することもまた可能である。
【0073】
図7a〜7cはセキュリティドキュメント5の様々な観察状況を示す。図7aに示された観察状況では、セキュリティドキュメント5は透明窓がセキュリティドキュメント5のミクロレンズフィールド51および52と重なり合う関係になるように折り畳まれている。図7bに示されるように、ここではセキュリティドキュメント5は、図7cに示される観察状況において図7aに示されるようにミクロレンズフィールド51および52の下側が互いに向かい合うのではなく、ミクロレンズフィールド51および52の上側がたがいに向かい合うように、他の方向に折り畳まれている。
【0074】
図7a〜7cに示されるように、ミクロレンズフィールド51および52がそれぞれ厚さd1おおよびd2の個々のレンズ体を有し、両側で構造化されている。その結果、ミクロレンズフィールド51の光学的な機能が、図3a〜3cを参照して述べた関係による二つのミクロレンズサブフィールド53および54の連携によって生じる。対応する様式において、ミクロレンズフィールド52は相互に並列した関係に配置された二つのミクロレンズサブフィールド55および56によって形成される。さらに図7a〜7cに示されるように、ミクロレンズフィールド51および52のレンズ体は、密閉されて光学分離層または保護層によって両側で覆われている。
【0075】
この場合、図7aに示されるように、ミクロレンズサブフィールド54および55は、ミクロレンズサブフィールド54および55によって生じる光学結像機能が互いに打ち消し合うように反対の形状を含む。従って、図7aに示される観察状況では、光学結像機能はミクロレンズサブフィールド53および56、つまりそれらのミクロレンズフィールドのレンズ間隔および焦点距離の重ね合わせによって生じる光学効果として生じる。これは、図7cの観察状況における場合ではなく、この観察状況は従来のレンズと同様の効果を生じない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明によるセキュリティドキュメントの図。
【図2】透明窓を重ね合わせるためにセキュリティドキュメントが折り畳まれた観察状況における図1のセキュリティドキュメントの原寸ではない概略断面図。
【図3a】図1のセキュリティドキュメントの相互に重なり合った二つのミクロレンズフィールドの概略図。
【図3b】図3aに示されるミクロレンズフィールドが重なり合ったときに生じる光学効果を説明するための略図。
【図3c】図3aに示されるようなミクロレンズフィールドの概略平面図。
【図4】図1のセキュリティドキュメントの部分の断面図。
【図5】本発明によるさらなるセキュリティドキュメントの概略図。
【図6】本発明によるさらなるセキュリティドキュメントの概略図。
【図7a】様々な観察状況における本発明によるさらなるセキュリティドキュメントを概略的に示す図。
【図7b】様々な観察状況における本発明によるさらなるセキュリティドキュメントを概略的に示す図。
【図7c】様々な観察状況における本発明によるさらなるセキュリティドキュメントを概略的に示す図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一光学エレメント(15)が配置された第一透明窓(12)と、第二光学エレメント(16)が配置された第二透明窓(13)とを有するセキュリティドキュメント(1、3、4、5)、特に紙幣(banknote)または身分証明書であって、前記第一透明窓(12)および前記第二透明窓(13)が、前記第一および第二光学エレメント(15、16)が互いに重なり合った関係にされ得るように前記セキュリティドキュメントのキャリア(11)に相互に間隔をおいた関係に配置され、
前記第一光学エレメント(15)が第一透過性ミクロレンズフィールド(15、31、41、51)を有し、前記第二光学エレメント(16)が第二透過性ミクロレンズフィールド(16、32、42、52)を有し、
前記第二ミクロレンズフィールドが前記第一ミクロレンズフィールドと重なり合うとき第一光学効果が生じることを特徴とするセキュリティドキュメント。
【請求項2】
前記第一および第二透過性ミクロレンズフィールド(15、16、31、32、41、42、51、52)はミクロレンズ(21)のパラメータレンズ間隔(P1、P2)および前記ミクロレンズ(21)の焦点距離によって画定されることを特徴とする請求項1に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項3】
前記第一ミクロレンズフィールド(15)のミクロレンズの光軸が第一周期ラスタに従って一定の前記レンズ間隔(P1)で平行の関係に間隔をおいて配置され、前記第二ミクロレンズフィールド(16)のミクロレンズの光軸は第二周期ラスタに従って一定の前記レンズ間隔(P2)で平行の関係に間隔をおいて配置されることを特徴とする請求項2に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項4】
前記第一ミクロレンズフィールドのミクロレンズのレンズ間隔(P1)は前記第二ミクロレンズフィールドのミクロレンズのレンズ間隔(P2)と異なることを特徴とする請求項2または3に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項5】
前記第一ミクロレンズフィールドのミクロレンズのレンズ間隔は前記第二ミクロレンズフィールドのミクロレンズのレンズ間隔の整数倍であることを特徴とする請求項4に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項6】
前記第一および第二ミクロレンズフィールドのミクロレンズの前記レンズ間隔は300μmより小さいことを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項7】
前記第一ミクロレンズフィールド(15、31、41、51)は正の焦点距離の複数のミクロレンズを有し、前記第二ミクロレンズフィールド(16、32、42、52)は正の焦点距離の複数のミクロレンズを有することを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項8】
前記第一ミクロレンズフィールド(15、31、41、51)は正の焦点距離の複数のミクロレンズを有し、前記第二ミクロレンズフィールド(16、32、42、52)は負の焦点距離の複数のミクロレンズを有することを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項9】
前記第一および第二ミクロレンズフィールドのミクロレンズの前記焦点距離は、前記第一および第二透明窓が重ね合わさるときに前記第一および第二ミクロレンズフィールドのミクロレンズがそれらの焦点距離の合計に従って互いに間隔をおいて配置されるように選択されることを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項10】
前記第一および/または第二ミクロレンズフィールドは前記ミクロレンズのレンズ間隔が異なる二つ以上の領域を有することを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項11】
前記第一および/または第二ミクロレンズフィールド(32、42)は前記ミクロレンズの焦点距離が異なる二つ以上の領域を有することを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項12】
前記第一および/または第二ミクロレンズフィールドは前記ミクロレンズのレンズ間隔が基礎的な周期ラスタに関して位相移動された二つ以上の領域を有することを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項13】
前記第一および/または第二ミクロレンズフィールドは前記ミクロレンズのレンズ間隔が徐々に変化する領域を有することを特徴とする請求項2に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項14】
前記第一および/または第二ミクロレンズフィールドは前記ミクロレンズのレンズ間隔が徐々に変化する領域を有することを特徴とする請求項1または13に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項15】
前記セキュリティドキュメント(4)は不透明第三光学エレメント(45、44)を有し、前記第一および第二光学エレメントが前記第三光学エレメントと重なり合う時第二光学効果が生じることを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項16】
前記第三光学エレメント(45)は潜在的なモアレパターンを有することを特徴とする請求項15に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項17】
前記第三光学エレメントが前記第一および第二ミクロレンズフィールドをそれぞれ形成するレリーフ構造(27)は形成された複製ラッカー層(24)を有することを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項18】
前記第一および/または第二ミクロレンズフィールドの前記ミクロレンズは、光学回折効果を有し光学回折手段によって前記ミクロレンズフィールドの効果を生じ、その構造深さがほぼ10μmであるレリーフ構造(27)によって形成されることを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項19】
前記第一および/または第二光学エレメント(15、16)はトランスファーフィルム、特にホットスタンピングフィルムのトランスファー層(20)を備えていることを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項20】
前記セキュリティドキュメントの前記キャリア(11)は、前記透明窓(12、13)が導入された紙材を含むことを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項1】
第一光学エレメント(15)が配置された第一透明窓(12)と、第二光学エレメント(16)が配置された第二透明窓(13)とを有するセキュリティドキュメント(1、3、4、5)、特に紙幣(banknote)または身分証明書であって、前記第一透明窓(12)および前記第二透明窓(13)が、前記第一および第二光学エレメント(15、16)が互いに重なり合った関係にされ得るように前記セキュリティドキュメントのキャリア(11)に相互に間隔をおいた関係に配置され、
前記第一光学エレメント(15)が第一透過性ミクロレンズフィールド(15、31、41、51)を有し、前記第二光学エレメント(16)が第二透過性ミクロレンズフィールド(16、32、42、52)を有し、
前記第二ミクロレンズフィールドが前記第一ミクロレンズフィールドと重なり合うとき第一光学効果が生じることを特徴とするセキュリティドキュメント。
【請求項2】
前記第一および第二透過性ミクロレンズフィールド(15、16、31、32、41、42、51、52)はミクロレンズ(21)のパラメータレンズ間隔(P1、P2)および前記ミクロレンズ(21)の焦点距離によって画定されることを特徴とする請求項1に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項3】
前記第一ミクロレンズフィールド(15)のミクロレンズの光軸が第一周期ラスタに従って一定の前記レンズ間隔(P1)で平行の関係に間隔をおいて配置され、前記第二ミクロレンズフィールド(16)のミクロレンズの光軸は第二周期ラスタに従って一定の前記レンズ間隔(P2)で平行の関係に間隔をおいて配置されることを特徴とする請求項2に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項4】
前記第一ミクロレンズフィールドのミクロレンズのレンズ間隔(P1)は前記第二ミクロレンズフィールドのミクロレンズのレンズ間隔(P2)と異なることを特徴とする請求項2または3に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項5】
前記第一ミクロレンズフィールドのミクロレンズのレンズ間隔は前記第二ミクロレンズフィールドのミクロレンズのレンズ間隔の整数倍であることを特徴とする請求項4に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項6】
前記第一および第二ミクロレンズフィールドのミクロレンズの前記レンズ間隔は300μmより小さいことを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項7】
前記第一ミクロレンズフィールド(15、31、41、51)は正の焦点距離の複数のミクロレンズを有し、前記第二ミクロレンズフィールド(16、32、42、52)は正の焦点距離の複数のミクロレンズを有することを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項8】
前記第一ミクロレンズフィールド(15、31、41、51)は正の焦点距離の複数のミクロレンズを有し、前記第二ミクロレンズフィールド(16、32、42、52)は負の焦点距離の複数のミクロレンズを有することを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項9】
前記第一および第二ミクロレンズフィールドのミクロレンズの前記焦点距離は、前記第一および第二透明窓が重ね合わさるときに前記第一および第二ミクロレンズフィールドのミクロレンズがそれらの焦点距離の合計に従って互いに間隔をおいて配置されるように選択されることを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項10】
前記第一および/または第二ミクロレンズフィールドは前記ミクロレンズのレンズ間隔が異なる二つ以上の領域を有することを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項11】
前記第一および/または第二ミクロレンズフィールド(32、42)は前記ミクロレンズの焦点距離が異なる二つ以上の領域を有することを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項12】
前記第一および/または第二ミクロレンズフィールドは前記ミクロレンズのレンズ間隔が基礎的な周期ラスタに関して位相移動された二つ以上の領域を有することを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項13】
前記第一および/または第二ミクロレンズフィールドは前記ミクロレンズのレンズ間隔が徐々に変化する領域を有することを特徴とする請求項2に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項14】
前記第一および/または第二ミクロレンズフィールドは前記ミクロレンズのレンズ間隔が徐々に変化する領域を有することを特徴とする請求項1または13に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項15】
前記セキュリティドキュメント(4)は不透明第三光学エレメント(45、44)を有し、前記第一および第二光学エレメントが前記第三光学エレメントと重なり合う時第二光学効果が生じることを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項16】
前記第三光学エレメント(45)は潜在的なモアレパターンを有することを特徴とする請求項15に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項17】
前記第三光学エレメントが前記第一および第二ミクロレンズフィールドをそれぞれ形成するレリーフ構造(27)は形成された複製ラッカー層(24)を有することを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項18】
前記第一および/または第二ミクロレンズフィールドの前記ミクロレンズは、光学回折効果を有し光学回折手段によって前記ミクロレンズフィールドの効果を生じ、その構造深さがほぼ10μmであるレリーフ構造(27)によって形成されることを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項19】
前記第一および/または第二光学エレメント(15、16)はトランスファーフィルム、特にホットスタンピングフィルムのトランスファー層(20)を備えていることを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項20】
前記セキュリティドキュメントの前記キャリア(11)は、前記透明窓(12、13)が導入された紙材を含むことを特徴とする前述の請求項のいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【公表番号】特表2008−513817(P2008−513817A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531640(P2007−531640)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【国際出願番号】PCT/EP2005/009584
【国際公開番号】WO2006/029745
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(506151626)オーファウデー キネグラム アーゲー (30)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【国際出願番号】PCT/EP2005/009584
【国際公開番号】WO2006/029745
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(506151626)オーファウデー キネグラム アーゲー (30)
【Fターム(参考)】
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