説明

透明膜検査装置及び検査方法

【課題】基板上に成膜された透明膜の外縁を明確に特定することで、精度の高い成膜パターンの検査を行うことができる。
【解決手段】透明膜検査装置1は、透明膜Mの外縁Meを含む被検査範囲の観察像を形成する観察光学系10と、被検査範囲を含む基板S上に照明光を照射する照明光源20と、観察光学系10の光路内に配置されて当該光路の一部を遮光する遮光部材30とを備える。遮光部材30は、観察像内に全遮光部分から徐々に明度が高くなる半遮光部分を含む遮光部分を形成し、この遮光部分が透明膜Mの外縁Meの像に被さるように配置される。観察光学系10は、透明膜Mの外縁Meの側面で反射した光を観察像内に結像させることで、遮光部分にコントラストの高い透明膜Mの外縁Meの線像を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイなどの基板上に形成される透明膜の検査装置及び検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OLED)、プラズマディスプレイ(PDP)などのフラットパネルディスプレイのような電子機器は、基板上に、様々な材料の薄膜を積層することで各種機能を付与している。ここで付与される機能の中には高い光透過率が求められる場合があり、そのような機能を得るためには透明膜が形成される。各種フラットパネルディスプレイの透明電極、LCDにおける配向膜やカラーフィルター膜、OLEDにおける有機発光膜などが前述した透明膜の一例である。以下の説明での透明膜は、可視光域の光を所定の割合で透過する薄膜であり、所謂半透明の膜を含んでいる。
【0003】
電子機器の基板上に形成される薄膜が各種機能を発揮するためには、その薄膜の成膜状態が適正であることが求められる。各薄膜が所望の機能を発揮して良質な電子機器製品が得られるように、電子機器の製造工程には成膜工程の後に検査工程を設けて成膜状態の良否判定を行っている。
【0004】
下記特許文献1には、基板上に成膜された透明電極の成膜状態を視認しながら検査できる検査装置が記載されている。この検査装置は、基板上を照明する光源と、基板上における透明電極の成膜状態を撮像するカメラと、照明光を基板上の被撮像面に照射し、基板上の被撮像面をカメラの撮像面に結像させる照明・観察光学系を備えており、観察光学系の光路中に波長フィルタを設けている。この従来技術は、検査対象の透明電極が形成された層と形成されていない層とで特定波長光の反射率に差が生じることを利用し、この特定波長光を選択的に通過する波長フィルタを介してカメラで透明電極の端部を撮像して、透明電極の成膜状態を示す濃淡画像を得るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−195531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基板上に成膜される薄膜の検査の中には、薄膜が基板上に所望のパターン形状で過不足無く成膜されているか否かを確認する検査がある。この場合、検査対象の薄膜が透明膜であると、膜パターンの輪郭を視認することが困難であり、精度の高い検査を行うことができない問題がある。また、基板上における透明膜の下地層に配線パターンなどのストライプ状の線パターンや反射率・透過率が異なる層のパターンが存在する場合には、透明膜の外縁が下地層のパターンに埋没して両者の識別が困難になり、更に膜パターンの輪郭を特定することが困難になる。
【0007】
これに対して、前述した従来技術は、特定波長光の選択で検査対象の透明膜が形成されている層と形成されていない層の間で反射率を大きく異ならせることができないので、高い精度の検査を可能にするほどの視認性向上は期待できない。また、多層に亘って異なるパターンの透明膜が積層されているような場合には、異なる反射率で画像に明暗を作っているパターンが検査対象の透明膜のパターンであるか反射率の異なる下地層のパターンであるかの区別がつかず、やはり、検査対象の透明膜の膜パターンを明確に特定することができない問題が生じる。
【0008】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、基板上に成膜された透明膜の外縁を明確に特定することで、精度の高い成膜パターンの検査を行うことができること、特に、基板上の下地層に線パターンや反射率・透過率が異なる層のパターンが存在する場合にも、下地層のパターンに埋没すること無く検査対象の透明膜の外縁を明確に特定することができること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明の透明膜検査装置及び透明膜検査方法は、以下の構成を少なくとも具備する。
【0010】
基板上に成膜された透明膜の外縁を観察することで、透明膜の成膜パターンを検査する検査装置であって、検査対象となる透明膜の外縁を含む被検査範囲の観察像を形成する観察光学系と、前記被検査範囲を含む前記基板上に照明光を照射する照明光源と、前記観察光学系の光路内に配置されて当該光路の一部を遮光する遮光部材とを備え、前記遮光部材は、前記観察像内に全遮光部分から徐々に明度が高くなる半遮光部分を含む遮光部分を形成し、当該遮光部分が前記外縁の像に被さるように配置され、前記観察光学系は、前記外縁の側面で反射した光を前記観察像内に結像させることで、前記遮光部分にコントラストの高い前記外縁の線像を形成することを特徴とする透明膜検査装置。
【0011】
基板上に成膜された透明膜の外縁を観察することで、透明膜の成膜パターンを検査する検査方法であって、前記基板上に照明光を照射し、前記基板上に配置される観察光学系によって、検査対象となる透明膜の外縁を含む被検査範囲の観察像を形成し、前記観察光学系の光路内に当該光路の一部を遮光する遮光部材を配置し、前記観察像内に全遮光部分から徐々に明度が高くなる半遮光部分を含む遮光部分を形成し、当該遮光部分が前記外縁の像に被さるように、前記遮光部材を位置調整し、前記外縁の側面で反射した光を前記観察像内に結像させることで、前記遮光部分にコントラストの高い前記外縁の線像を形成することを特徴とする透明膜検査方法。
【発明の効果】
【0012】
このような特徴を有する本発明は、基板上に成膜された透明膜の外縁を観察することで、透明膜の成膜パターンを検査するに際して、透明膜の外縁を含む被検査範囲の観察像内に、遮光部分を形成し、この遮光部分にコントラストの高い透明膜外縁の線像を形成するので、透明膜の外縁を明確に特定することができ、精度の高い成膜パターンの検査を行うことができる。特に、基板上の下地層に線パターンや反射率・透過率が異なる層のパターンが存在する場合であっても、下地層の各種パターンが遮光部分によって隠されるので、下地層のパターンに埋没すること無く検査対象の透明膜の外縁を明確に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る透明膜検査装置の構成例を示した説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る透明膜検査装置の機能を示した説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係る透明膜検査装置によって得られる被検査範囲の観察像写真を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る透明膜検査装置の構成例を示した説明図である。透明膜検査装置1は、観察光学系10、照明光源20、遮光部材30を基本構成として備えており、基板S上に成膜された透明膜Mの外縁Meを観察することで、透明膜Mの成膜パターンを検査する装置である。ここでの透明膜Mは前述したように半透明膜を含んでいる。検査対象の透明膜Mは、図示のように基板S上に直接成膜されるものに限らず、基板上の他の層の上に成膜されるものであってもよい。この透明膜検査装置1は、検査対象の透明膜Mが所望のパターン形状で過不足無く成膜されているか否かを確認することで、成膜状態の良否を検査することができるものである。
【0015】
観察光学系10は、検査対象となる透明膜Mの外縁Meを含む被検査範囲の観察像を形成する光学系である。図1の例では、観察光学系10は、基板S上の被検査範囲を撮像装置(例えば、CCDカメラ)11の撮像面11Aに結像するための光学系であり、対物レンズ12と撮像装置11の結像レンズ11Bなどを含んでいる。本発明の実施形態における観察光学系10は、これに限らず、顕微鏡によって基板S上の被検査範囲を目視するための接眼レンズなどを含む光学系であってもよい。
【0016】
照明光源20は、前述した被検査範囲を含む基板S上に照明光を照射する光源である。照明光源20は、被検査対象の観察像を得るために少なくとも可視光域の波長帯域を含む光源であることが必要であり、特に、観察像として撮像装置11でカラー画像を得るためには白色光源であることが好ましい。図1に示した例では、照明光源20から出射した照明光は、照明光学系21を介して基板S上の被検査範囲に照射されている。照明光学系21は、図示の例では、観察光学系10の光路上に配置されたハーフミラー22を含んでおり、照明光学系21の光路と観察光学系10の光路がハーフミラー22の基板S側で重なっている。図示の例では、照明光学系21は照明装置20Aにおけるレンズ(コンデンサーレンズなど)20Bと対物レンズ12を含んでいる。照明光源20は図示の例に限らず、被検査範囲を含む基板S上に照明光を直接照射するものであってもよい。
【0017】
遮光部材30は、観察光学系10の光路内に配置されて、観察光学系10の光路の一部を遮光する機能を有する。観察光学系10の光路中に配置される遮光部材30は被検査範囲の観察像内に非結像の影を形成する。図示の例では、遮光部材30は観察光学系10の光路内に配置されるエッジ30aの位置を観察光学系10の光軸10aに対して垂直方向に移動調整自在に配備している。このようにエッジ30aの位置を移動調整することによって、観察像内の影の範囲を調整自在にしている。また、図示の例では、遮光部材30は、ハーフミラー22の基板S側で照明光源20から出射される照明光の一部を遮光している。
【0018】
図2は、前述した構成を備えた本発明の実施形態に係る透明膜検査装置の機能を示した説明図である。ここで、横軸は結像面内における位置を示し、縦軸はその位置における明度を示している。透明膜検査装置1によると、遮光部材30は、観察像内に形成される非結像の影によって、観察像内に全遮光部分と全遮光部分から徐々に明度が高くなる半遮光部分を形成する(以下、全遮光部分と半遮光部分を合わせて遮光部分という)。そして、遮光部材30は、半遮光部分を含む遮光部分が透明膜Mの外縁Meの像に被さるように配置される。この際、観察光学系10は、透明膜Mの外縁Meの側面で反射した光(乱反射を含む)を観察像内に結像させることで、遮光部分にコントラストの高い外縁Meの線像を形成する。
【0019】
図3は、本発明の実施形態に係る透明膜検査装置によって得られる被検査範囲の観察像写真を示した説明図である。この写真は、透明なガラス製の基板S上に透明膜M(ポリイミド膜)を成膜し、透明膜Mの外縁Meを含む被検査範囲の観察像を撮像装置11の撮像面11Aに結像させて取得した画像写真である。この写真から明らかなように、観察像内には、遮光部材30によって半遮光部分と全遮光部分からなる遮光部分が形成されており、この遮光部分内に透明膜Mの外縁Meの側面で反射された光を結像した線像が形成されている。このように、遮光部分内にコントラストの高い外縁Meの線像を形成することで、透明膜Mの外縁Meが形成する輪郭を明確に特定することができる。これにより、検査対象の透明膜Mが所望のパターン形状で過不足無く成膜されているか否かを明確に確認することができ、成膜状態の良否を精度良く検査することができる。
【0020】
また、本発明の実施形態に係る透明膜検査装置1によると、被検査範囲の観察像内では、透明膜Mにおける外縁Meの線像画像の背面画像が遮光部分になるので、透明膜Mの下地層に各種のパターンが形成されている場合であっても、遮光部分によってこのパターンが消されることになり、透明膜Mの外縁Meの線像のみを明確に浮かび上がらせることができる。これによって、基板S上の下地層に線パターンや反射率・透過率が異なる層のパターンが存在する場合であっても、下地層のパターンに埋没すること無く検査対象の透明膜Mの外縁Meを明確に特定することができる。
【0021】
以下に、本発明の実施形態に係る透明膜検査装置1を用いた透明膜の検査方法を説明する。照明光源20から基板S上に照明光を照射し、基板S上に配置される観察光学系10によって、検査対象となる透明膜Mの外縁Meを含む被検査範囲の観察像を形成する。図1に示した例では撮像装置11の撮像面11Aに観察像を形成している。
【0022】
次に、観察光学系10の光路内に観察光学系10の光路の一部を遮光する遮光部材30を配置する。そして、遮光部材30におけるエッジ30aの位置を移動調整することで、観察像内に全遮光部分から徐々に明度が高くなる半遮光部分を含む遮光部分を形成し、この遮光部分が外縁Meの像に被さるように、遮光部材30を適正位置に調整する。この状態で、外縁Meの側面で反射した光は結像光学系10によって観察像内に結像させることになり、遮光部分にコントラストの高い外縁Meの線像が形成される。この外縁Meの線像によって被検査範囲における透明膜Mの成膜状態を検査する。
【0023】
その後は、基板Sと観察光学系10の位置を相対的に移動させ、設定されている透明膜Mの成膜パターンに沿って被検査範囲を移動させ、その都度前述した手順で被検査範囲における透明膜Mの成膜状態を検査する。そして、検査対象の透明膜Mの輪郭全体に亘って被検査範囲を走査し、各被検査範囲で成膜状態の検査を行うことで、透明膜Mが適正な成膜パターンを形成しているか否かを判定する。
【符号の説明】
【0024】
1:透明膜検査装置,
10:観察光学系,10a:光軸,
11:撮像装置,11A:撮像面,11B:結像レンズ,12:対物レンズ,
20:照明光源,
20A:照明装置,20B:レンズ,21:照明光学系,22:ハーフミラー,
30:遮光部材,30a:エッジ,
S:基板,M:透明膜,Me:外縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に成膜された透明膜の外縁を観察することで、透明膜の成膜パターンを検査する検査装置であって、
検査対象となる透明膜の外縁を含む被検査範囲の観察像を形成する観察光学系と、前記被検査範囲を含む前記基板上に照明光を照射する照明光源と、前記観察光学系の光路内に配置されて当該光路の一部を遮光する遮光部材とを備え、
前記遮光部材は、前記観察像内に全遮光部分から徐々に明度が高くなる半遮光部分を含む遮光部分を形成し、当該遮光部分が前記外縁の像に被さるように配置され、
前記観察光学系は、前記外縁の側面で反射した光を前記観察像内に結像させることで、前記遮光部分にコントラストの高い前記外縁の線像を形成することを特徴とする透明膜検査装置。
【請求項2】
前記観察像は前記被検査範囲を撮像する撮像装置の撮像面に形成されることを特徴とする請求項1記載の透明膜検査装置。
【請求項3】
前記照明光源から出射した照明光は、前記観察光学系の光路上に配置されたハーフミラーを介して前記被検査範囲に照射され、
前記遮光手段は、前記ハーフミラーの前記基板側で前記照明光の一部を遮光することを特徴とする請求項1又は2記載の透明膜検査装置。
【請求項4】
前記遮光部材は、前記観察光学系の光路内に配置されるエッジの位置を前記観察光学系の光軸に対して垂直方向に移動調整自在に配備したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明膜検査装置。
【請求項5】
基板上に成膜された透明膜の外縁を観察することで、透明膜の成膜パターンを検査する検査方法であって、
前記基板上に照明光を照射し、前記基板上に配置される観察光学系によって、検査対象となる透明膜の外縁を含む被検査範囲の観察像を形成し、
前記観察光学系の光路内に当該光路の一部を遮光する遮光部材を配置し、
前記観察像内に全遮光部分から徐々に明度が高くなる半遮光部分を含む遮光部分を形成し、当該遮光部分が前記外縁の像に被さるように、前記遮光部材を位置調整し、
前記外縁の側面で反射した光を前記観察像内に結像させることで、前記遮光部分にコントラストの高い前記外縁の線像を形成することを特徴とする透明膜検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−113812(P2013−113812A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262857(P2011−262857)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】