説明

透明被膜付基材および透明被膜形成用塗布液

【課題】応力が加わった場合にも粒子とマトリックスの間で剥離が生じたりボイドが発生することがなく、このため耐擦傷性、膜強度、基材との密着性等の向上に好適な透明被膜付基材に関する。
【解決手段】基材と、該基材表面に形成された透明被膜とを有する透明被膜付基材であって、該透明被膜がマイクロリング状無機酸化物粒子と有機無機ハイブリッドマトリックス成分とを含み、かつ透明被膜中のマイクロリング状無機酸化物粒子の含有量が固形分として0.01〜80質量%の範囲にあることを特徴とする透明被膜付基材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な内部に貫通孔を有するマイクロリング状無機酸化物粒子を用いた透明被膜付基材および透明被膜形成用塗布液とに関する。
【0002】
さらに詳しくは、無機酸化物粒子が内部に貫通孔を有しているためにマトリックス成分が貫通孔に浸入して透明被膜が形成され、応力が加わった場合にも粒子とマトリックスの間で剥離が生じたりボイドが発生することがなく、このため耐擦傷性、膜強度、基材との密着性等の向上に好適に用いることのできる透明被膜付基材および透明被膜形成用塗布液とに関する。
【背景技術】
【0003】
従来より、ガラス、プラスチックシート、プラスチックレンズ等の基材表面の耐擦傷性を向上させるため、基材表面にハードコート機能を有する透明被膜を形成することが知られており、このような透明被膜として有機樹脂膜あるいは無機膜をガラスやプラスチック等の表面に形成することが行われている。さらに、有機樹脂膜あるいは無機膜中に樹脂粒子あるいはシリカ等の無機粒子を配合してさらに耐擦傷性を向上させることが行われている。
【0004】
しかしながら、透明被膜形成用塗布液に微粒子を分散させる際に、マトリックス成分または分散媒と粒子の親和性が低いと、粒子が凝集したり、塗布液の安定性が低下し、得られる透明被膜の透明性、ヘーズ等の他、耐擦傷性、膜強度、密着性等が不充分となることがあった。
【0005】
さらに、透明被膜に応力が加わった場合に、用いる粒子が大きいと粒子とマトリックスとが剥離してボイドが生じる場合があった。また、基材が可撓性のあるプラスチック基材の場合は粒子が小さい場合でもボイドが生じ透明被膜の透明性、ヘーズが悪化する場合があった。
【0006】
また、本出願人は、特許文献1(国際公開公報WO95/33787号)にて、熱可塑性フィルムにシリカとシリカ以外の複合酸化物からなる微粒子を添加することを開示している。しかし、この微粒子は通常の球状粒子であり、本発明のようなリング状の粒子について何ら示唆していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開公報WO95/33787号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願人は、このような問題点に鑑み鋭意検討した結果、従来の形状とは異なり、中心部に貫通孔を有する粒子を使用すれば、貫通孔にマトリックス成分が浸入できるため、粒子とマトリックス成分とが剥離することもなく、上記課題を解決できると考えた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような新規なリング状粒子について、さらに検討したところ、シリカゾルを特定の条件で噴霧乾燥したのち、特定の処理をするかあるいは微粒子形成時に特定成分を溶出させ、さらに酸・アルカリ処理したのち水熱処理すると、貫通孔を有するマイクロリング状
粒子が得られることを発見した。このようにして得られた貫通孔を有するマイクロリング状粒子を用いた透明被膜は耐擦傷性、膜強度、密着性等に優れるとともに応力を加えた場合にもボイドを生じにくく、このため透明性、ヘーズが悪化しないことを見出して本発明を完成するに至った。
【0010】
なお、従来本発明のようなリング状粒子は知られていなかった。たとえば、特開2006-7205号公報では、リング状の成形体が例示されているものの、これは、粒子を成形体に成
形したものであり、粒子そのものではない。
【0011】
本発明の要件は以下の通りである。
[1]基材と、該基材表面に形成された透明被膜を有する透明被膜付基材であって、該透明
被膜がマイクロリング状無機酸化物粒子と有機無機ハイブリッドマトリックス成分とを含み、かつ透明被膜中のマイクロリング状無機酸化物粒子の含有量が固形分として0.01〜80質量%の範囲にある透明被膜付基材。
[2]前記マイクロリング状無機酸化物粒子の平均外径(DO)が10nm〜20μmの範囲にあり、貫通孔の平均径(DI)が1nm〜12μmの範囲にあり、リング幅(WR)と平均外径(DO)との比(WR)/(DO)が0.2〜0.45の範囲にある[1]の透明被膜付基材。
[3]前記マイクロリング状無機酸化物粒子を構成する無機酸化物が、シリカ系無機酸化物
である[1]または[2]の透明被膜付基材。
[4]前記マイクロリング状無機酸化物粒子が下記式(1)で表される有機ケイ素化合物で表面処理されている[1]〜[3]の透明被膜付基材。
n-SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:0〜3の整数)
[5]前記Rが、ハロゲン置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基
、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アミノ基、アミド基、エポキシ基、カルボキシル基、ケトン基、エーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ホスフェート基、ハロゲン基、チオール基、スルホニル基から選ばれる少なくとも1種以上の有機官能基を含む[4]の透明被膜付基材。
[6]前記透明被膜の膜厚(Th)が50nm〜20μmの範囲にある[1]〜[5]の透明被膜付基材。
[7]前記マイクロリング状無機酸化物粒子の平均外径(DO)が10nm〜20μmの範囲にあり、平均外径(DO)と膜厚(Th)との比(DO)/(Th)が0.3〜1.0の範囲にある[1]〜[6]の透明被膜付基材。
[8]前記有機無機ハイブリッドマトリックス成分が、下記式(2)で表される有機珪素化合物の加水分解重縮合物を含む[1]〜[7]の透明被膜付基材。
n-SiX4-n (2)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン、水素から選ばれる少なくとも1種であり、nは1〜3の整数を示す)
[9]前記有機無機ハイブリッドマトリックス成分が、さらに下記式(3)で表される有機珪素化合物の加水分解重縮合物を含む[8]の透明被膜付基材。
SiX4 (3)
(但し、式中、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン、水素から選ばれる少なくとも1種である)
[10]マイクロリング状無機酸化物粒子と有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分と有機溶媒とを含む透明被膜形成用塗布液。
[11]前記マイクロリング状無機酸化物粒子の平均外径(DO)が10nm〜20μmの範
囲にあり、貫通孔の平均径(DI)が1nm〜12μmの範囲にあり、リング幅(WR)と平均外径(DO)との比(WR)/(DO)が0.2〜0.45の範囲にある[10]の透明被
膜形成用塗布液。
[12]前記マイクロリング状無機酸化物粒子を構成する無機酸化物が、シリカ系無機酸化物である[10]または[11]の透明被膜形成用塗布液。
[13]前記マイクロリング状無機酸化物粒子が下記式(1)で表される有機ケイ素化合物で表
面処理されている[10]〜[12]の透明被膜形成用塗布液。
n-SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素から選ばれる少なくとも1種を示し、nは0〜3の整数を示す)
[14]前記Rが、ハロゲン置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アミノ基、アミド基、エポキシ基、カルボキシル基、ケトン基、エーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ホスフェート基、ハロゲン基、チオール基、スルホニル基から選ばれる少なくとも1種以上の有機官能基を含む[13]の透明被膜形成用塗布液。
[15]前記有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分が、下記式(2)で表される有機珪素
化合物の加水分解物を含む[10]〜[14]の透明被膜形成用塗布液。
n-SiX4-n (2)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン、水素から選ばれる少なくとも1種を示す。nは1〜3の整数を示す)
[16]前記有機無機ハイブリッドマトリックス成分が、さらに下記式(3)で表される有機珪
素化合物の加水分解物を含む[15]の透明被膜形成用塗布液。
SiX4 (3)
(但し、式中、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン、水素から選ばれる少なくとも1種を示す)
[17]前記マイクロリング状無機酸化物粒子の濃度が固形分として0.0001〜48質量%の範囲にあり、有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分の濃度が固形分として0.2〜57質量%の範囲にあり、全固形分濃度が1〜60質量%の範囲にある[10]〜[16]の透明被膜形成用塗布液。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、無機酸化物粒子が内部に貫通孔を有しているために有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分が貫通孔に浸入して透明被膜が形成され、応力が加わった場合にも粒子とマトリックスの間で剥離が生じたりボイドが発生することがなく、このため耐擦傷性、膜強度、基材との密着性等の向上に好適に用いることのできるマイクロリング状無機酸化物粒子を用いた透明被膜付基材および透明被膜形成用塗布液を提供することができる。
【0013】
有機無機ハイブリットマトリックスを併用することで、有機無機ハイブリッドマトリックス併用することで、耐熱性に優れ、硬度にも優れた透明被膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のマイクロリング状無機酸化物粒子の概略モデル図を示す。
【図2】実施例1で得られたマイクロリング状シリカ粒子の拡大SEM写真を示す。
【図3】実施例1で得られたマイクロリング状シリカ粒子のSEM写真を示す。
【図4】実施例7で得られたマイクロリング状シリカ粒子のSEM写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、先ず、本発明に係る透明被膜付基材について説明する。
透明被膜付基材
本発明に係る透明被膜付基材は、基材と、該基材表面に形成された透明被膜を有する透明被膜付基材であって、該透明被膜がマイクロリング状無機酸化物粒子と有機無機ハイブリッドマトリックス成分とを含み、透明被膜中のマイクロリング状無機酸化物粒子の含有量が固形分として0.01〜80質量%の範囲にあることを特徴としている。
【0016】
基材
本発明に用いる基材としては、従来公知のものを特に制限なく使用することが可能であり、ガラス、ポリカーボネート(PC)、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、シクロポリオレフィン、ノルボルネン等のプラスチックシート、プラスチックフィルム等、プラスチックパネル等が挙げられる。中でも樹脂系基材を好適に用いることができる。また、このような基材上に、他の被膜が形成された被膜付基材を用いこともできる。他の被膜としては従来公知のプライマー膜、ハードコート膜、高屈折率膜、導電性膜等が挙げられる。
【0017】
マイクロリング状無機酸化物粒子
本発明に用いるマイクロリング状無機酸化物粒子は、平均外径(DO)が10nm〜2
0μmの範囲にあり、貫通孔の平均径(DI)が1nm〜12μmの範囲にあり、リング
幅(WR)と平均外径(DO)との比(WR)/(DO)が0.2〜0.45の範囲にあることを特徴としている。本発明に係るマイクロリング状無機酸化物粒子は貫通孔を有している。
【0018】
図1に、本発明に係るマイクロリング状無機酸化物粒子の平面モデル図を示す。
【0019】
図1中、DOは外径を表し、DIは貫通孔の径を表し、WRはリング幅を表す。
【0020】
マイクロリングを構成する無機酸化物としては、マイクロリング状無機酸化物粒子が得られれば特に制限はないが、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニア、シリカ・ボリア等の酸化物、複合酸化物等が挙げられる。
本発明では、シリカまたはシリカとシリカ以外の酸化物とからなるシリカ系複合酸化物が好ましい。
シリカ系複合酸化物としてはシリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニア、シリカ・ボリア等が挙げられる。シリカ系複合酸化物の場合、シリカの含有量が50質量%以上のものが好ましい。
【0021】
このようなシリカ、あるいはシリカを主成分とするシリカ系無機酸化物以外の酸化物、複合酸化物では、必ずしも所望のマイクロリング状無機酸化物粒子を得ることができないこともある。
【0022】
マイクロリング状粒子は、貫通孔が少なくとも1個以上で構成する粒子であってもよい
。さらに、1次粒子がリング状であってもよく、また2次粒子(すなわち複数の粒子の集合体)がリング状を形成していてもよい。このような本発明に係るマイクロリング状粒子の電子顕微鏡写真を図2、3および4に示す。図2、3は後述する実施例1、図4は実施例7で得られたマイクロリング状粒子の電子顕微鏡写真(SEM)である。
【0023】
1次粒子からリング状粒子を構成する場合、その粒子径は、10〜500nm、さらには10〜300nmの範囲にあることが望ましい。2次粒子からリング状粒子を構成する場合、2次粒子を構成する1次粒子の粒子径は、通常3〜100nm、さらには5〜50nmの範囲にあることが望ましい。
【0024】
本発明に用いるマイクロリング状無機酸化物粒子の平均外径(DO)は10nm〜20
μmの範囲にあり、さらには20nm〜20μmの範囲にあることが好ましい。平均外径が前記範囲の下限未満のものは、得ること自体が困難であり、また貫通孔を設けることも難しくなる。平均外径の上限は特に制限されるものではないが、前記範囲の上限を越えると、透明被膜形成用塗布液に用いた場合に容易に沈降したり分離する場合があり、得られる透明被膜の透明性やヘーズ、膜強度、耐擦傷性、基材との密着性が不充分となる場合がある。但し、用途によっては、上記上限を超えたものでも使用可能である。
【0025】
貫通孔の平均径(DI)は、外径にもよるが、1nm〜12μm、さらには2nm〜1
0μmの範囲にあることが好ましい。また、リング幅(WR)と平均外径(DO)との比(WR)/(DO)が0.2〜0.45、さらには0.25〜0.4の範囲にあることが好ましい。
【0026】
貫通孔を前記範囲の下限未満にすること自体が困難であり、また平板状の粒子と何ら代わることが無く、本発明の耐擦傷性、膜強度、基材との密着性等を向上させる効果が得られない場合がある。貫通孔が大きすぎると、外径にもよるが、リング形状の効果が乏しく、粒子の強度が低くなり、充分な膜強度、耐擦傷性等が得られない場合がある。(WR
/(DO)が小さすぎると、粒子径の割にリング幅が狭いので粒子強度が低く、透明被膜
に用いても充分な膜強度、耐擦傷性等が得られない場合がある。(WR)/(DO)が大きすぎると、平均外径の大きさによっては貫通孔が小さすぎてしまい、貫通孔を設ける効果が発現できない場合もあり、透明被膜に応力を加えた場合にボイドが生成する場合がある。
【0027】
また前記した平均外径(DO)、貫通孔の平均径(DI)およびリング幅(WR)は、粒
子の電子顕微鏡写真を撮影し、100個の粒子について平均外径(DO)、貫通孔の平均
径(DI)およびリング幅(WR)測定し、その平均値として得られる。
【0028】
表面処理
本発明に係るマイクロリング状無機酸化物粒子は、必要に応じて有機ケイ素化合物等で処理されていてもよい。
【0029】
有機ケイ素化合物で表面処理されていると、マトリックス中に均一に分散し、マトリックスが貫通孔に浸入した透明被膜を形成することができ、ボイドの生成が抑制され、膜強度、耐擦傷性等に優れた透明被膜を得ることができる。さらには、マトリックス形成成分と基材調製時に共に重合反応する官能基を有する有機ケイ素化合物で表面処理を行うことで、形成された塗膜の膜強度、耐擦傷性、密着性の増加することが期待される。
【0030】
有機ケイ素化合物としては、下記式(1)で表されるものが好ましい。
【0031】
n-SiX4-n (1)
但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素から選ばれる少なくとも1種を示す。nは0〜3の整数であり、好ましくは1〜3の整数である。
【0032】
かかる有機ケイ素化合物は、少なくも1個の炭化水素基を有するため、特に互いに混合しにくい疎水性マトリックス成分との親和性が高く、マトリックス中に金属酸化物粒子を偏在させることなく分散させることができ、基材との密着性、耐擦傷性等が向上したハードコート膜付基材を得ることができる。
【0033】
前記Rが、ハロゲン置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、エポキシ基、カルボキシル基、ケトン基、エーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ホスフェート基、ハロゲン基、チオール基、スルホニル基から選ばれる少なくとも1種以上の有機官能基を含むことが好ましい。このような有機官能基を有することで、特にマトリックス成分として有機官能基を有するものと組合わせたときに、耐擦傷性、膜強度、密着性等に優れ、また応力がかかってもボイドを生じにくく、このため被膜付基材の透明性、ヘーズが悪化しない。また、このように組合わせることで、非常に少量であっても本発明のマイクロリング状粒子を使用する効果が高く発現される。
【0034】
このような式(1)で表される有機ケイ素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフ
ルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル-3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキ
シメチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリエキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
、γ−(β−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリ
ロオキシメチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリエキシシラ
ン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、
γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、
ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラオクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、3-ウレイドイソプロピルプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキ
シシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、
トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン等が挙げられる。
【0035】
これらの有機ケイ素化合物は、後述するマトリックス成分との反応性に鑑み、適宜選択される。
【0036】
このような有機ケイ素化合物で表面処理されていると、後述する有機無機ハイブリッドマトリックス成分との親和性が高く、マイクロリング状粒子のリング部分のマトリックスとの接着性を高め、その結果、硬度に優れた透明被膜を得ることができる。
【0037】
有機ケイ素化合物による処理方法は、従来公知の方法を採用することができ、例えば、マイクロリング状無機酸化物粒子のアルコール分散液に有機ケイ素化合物を必要量加え、これに水を加え、必要に応じて加水分解用触媒として酸またはアルカリを加えて有機ケイ
素化合物を加水分解することによって表面処理することができる。
【0038】
有機ケイ素化合物の使用量はマイクロリング状無機酸化物粒子の大きさにもよるが、Rn-SiO(4-n)/2としてマイクロリング状無機酸化物粒子の概ね2〜50質量%、さらには5〜20質量%の範囲にあることが好ましい。
【0039】
マイクロリング状無機酸化物粒子の製造方法
このようなマイクロリング状無機酸化物粒子は、上記した粒子径(平均外径)、貫通孔等を有する粒子が得られれば特に制限はないが、本発明に用いるマイクロリング状無機酸化物粒子の製造方法としては、以下の方法が好ましい。
(第1の製造方法)
先ず、平均粒子径が概ね3〜100nmの従来公知の前記無機酸化物ゾルを噴霧乾燥して、少なくとも表面に窪み(凹部)を有する粒子を調製する。噴霧乾燥方法としては、例えば、本願出願人の出願による特開昭61−174103号公報に開示した方法に準拠して製造することができる。
【0040】
この時、噴霧乾燥雰囲気の温度は、噴霧する無機酸化物ゾルの濃度によっても異なるが、概ね20〜150℃、好ましくは30〜120℃の範囲にあることが好ましい。
【0041】
噴霧乾燥雰囲気の温度が20℃未満の場合は所望の貫通孔または凹部ができない場合があり、150℃を越えるとリングが薄くなりすぎたり、破壊した破片状の粒子となる場合がある。
【0042】
また、無機酸化物ゾルの濃度は、無機酸化物ゾルの種類、粒子の大きさによっても異なるが0.1〜50質量%、さらには1〜20質量%の範囲にあることが好ましい。
【0043】
無機酸化物ゾルの濃度が低過ぎても、高すぎても噴霧乾燥で貫通孔または凹部を有する粒子が得られず、単なる微粒子が得られる場合がある。
【0044】
また、必要に応じて噴霧乾燥雰囲気の湿度を調節することができる。この時の湿度は、乾燥速度を補助的に調節し、所望の貫通孔を生成させるためで、湿度は概ね3〜13vol%、好ましくは5〜9vol%の気流中に噴霧して乾燥する。
【0045】
なお、噴霧方法は特に制限はないが、アトマイザー法、ノズル法等従来公知の方法を採用することができる。
【0046】
ついで、得られた粒子を酸または塩基で処理する。酸としては、粒子を構成する酸化物の種類によっても異なるが、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、有機酸等が挙げられ、塩基としてNaOH、KOH、アンモニア、第4級アンモニウムハイドロオキサイド等が挙げられる。
【0047】
酸または塩基で処理すると、凹部が浸食されて貫通孔が形成され、さらに貫通孔の大きさ、リング幅等を前記所望の大きさに調整することができる。
【0048】
上記した第1の製造方法で得られるマイクロリング状無機酸化物粒子の大きさは、平均粒子径が概ね0.5〜20μmである。
(第2の製造方法)
第2の製造方法は、例えば、本願出願人の出願による特開2001−233611号公報、特開2004−203683号公報等に開示した中空シリカ系微粒子の製造方法に準拠して製造することができる。
【0049】
具体的には、シリカとシリカ以外の無機酸化物とからなる複合酸化物微粒子を核として使用する。このとき、必要に応じて10nm以下のシリカ被覆層(1)を形成してもよい。
【0050】
そして、かかる核粒子からシリカ以外の無機酸化物を酸にて除去する。
【0051】
酸でシリカ以外の無機酸化物を除去すると、表面に凹部を有する多孔質粒子となり、これが前駆体となる。この前駆体に、さらに必要に応じてシリカ被覆層(2)を形成してもよ
い。
【0052】
得られたリング状粒子の前駆体を酸または塩基で処理するか、水熱処理することによって得ることができる。
【0053】
上記において、シリカ以外の無機酸化物を酸にて除去した段階で表面に凹部を有する粒子が得られ、ついで酸または塩基で処理するか、水熱処理することによって貫通孔を有するマイクロリング状無機酸化物粒子が得られる。なお、このような処理することなく、単にシリカ被覆層を形成しただけでは、中空粒子となる。
【0054】
酸(無機酸化物を溶解するものおよび、後段の処理に使用されるもの)およびアルカリの種類としては、特に制限されないが、前記第1の製造方法で例示したものと同じものが挙げられる。
【0055】
この方法で得られるマイクロリング状無機酸化物粒子の大きさ(粒子外径)は、平均粒子径が概ね10〜500nm(0.5μm)である。
【0056】
なお、以上のようにして貫通孔形成の処理を行う前の粒子は凡球状粒子であり、貫通孔形成後のリング粒子の厚みは平均外径(DO)以下となる。
【0057】
こうして調製したマイクロリング状無機酸化物粒子を必要に応じて、前記したような有機ケイ素化合物で表面処理してもよい。
【0058】
透明被膜中のマイクロリング状無機酸化物粒子の含有量は固形分として0.01〜80質量%、さらには0.05〜75質量%の範囲にあることが好ましい。
【0059】
透明被膜中のマイクロリング状無機酸化物粒子の含有量が少ないと、耐擦傷性、膜強度等が不充分となる場合があり、多すぎてもマトリックス成分が少なく、基材との密着性、透明性、ヘーズ、耐擦傷性等が不充分となる場合がある。
【0060】
本発明では、目的に応じて、前記マイクロリング状無機酸化物粒子以外に、従来公知の粒子を混合して用いることができる。例えば、低屈折率無機酸化物粒子、高屈折率無機酸化物粒子、導電性無機酸化物粒子等を使用することができる。
【0061】
有機無機ハイブリッドマトリックス成分
本発明に用いる有機無機ハイブリッドマトリックス成分としては有機珪素化合物が用いられる。なかでも、下記式(2)で表される加水分解性有機珪素化合物の加水分解重縮合物
であることが好ましい。
n-SiX4-n (2)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン、水素から選ばれる少なくとも1種であり、nは1〜3の整数を示す)
このような有機珪素化合物としては前記した式(2)で表される有機珪素化合物のn=1
,2,3の有機珪素化合物が挙げられる。
【0062】
本発明では、前記有機無機ハイブリッドマトリックス成分が、さらに下記式(3)で表さ
れる有機珪素化合物の加水分解重縮合物を含んでいてもよい。
SiX4 (3)
(但し、式中、X:炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン、水素から選ばれる少なくとも1種)
具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシシラン、テトラブトキシシランなどの加水分解重縮合物が挙げられる。
【0063】
このような有機珪素化合物の加水分解重縮合物の含有量は有機無機ハイブリッドマトリックス成分中に固形分として1〜50質量%、さらには2〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
【0064】
本発明では、有機無機ハイブリッドマトリックス成分として、さらに下記式(4)で表さ
れる2官能シリコン樹脂を用いることができる。
【0065】
【化1】

【0066】
(但し、R1〜R5は置換、非置換の炭素数1〜6のアルキル基、X1、X2はアクリル基、メタクリル基、グリシジル基、を表し、同じであってもよく、異なっていてもよい。nは1〜10の正数を示す)
具体的には、ジアクリレート変成ポリシロキサン、ジメタクリル変成ポリシロキサン、ジグリシジル変成ポリシロキサン、ジポリエステル変性ポリシロキサン、ジポリエーテル変性ポリシロキサン等、およびこれらの混合物が挙げられる。このとき、2官能シリコン樹脂はモノマーを用いることが好ましい。
このような2官能シリコン樹脂を用いると、撥水性、撥油性、耐指紋付着性、耐薬品性等に優れ、1官能シリコン樹脂の脱離(以下、ブリードアウトということがある)を抑制することができ、撥水性、撥油性、耐指紋付着性、耐薬品性を長期に維持することができる。
【0067】
このような2官能シリコン樹脂の含有量は有機無機ハイブリッドマトリックス成分中に固形分として0.1〜10質量%、さらには0.5〜8質量%の範囲にあることが好ましい。
【0068】
さらに、本発明では、有機無機ハイブリッドマトリックス成分として下記式(5)で表さ
れる1官能シリコン樹脂を用いることができる。
【0069】
【化2】

【0070】
(但し、R1〜R5は置換、非置換の炭素数1〜3のアルキル基、Xはアクリル基、メタクリル基、グリシジル基、を表す。nは1〜20の正数を示す)
具体的には、アクリル変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、グリシジル変成ポリシロキサン、ポリエステル変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン等およびこれらの混合物が挙げられる。例えば、片末端(メタ)アクリルシリコン、片末端グリシジルシリコンオイル等が挙げられる。また、アクリル系シリコン樹脂モノマーまたはそのポリマー(シリコンオイル)、エポキシ系シリコン樹脂モノマーまたはそのポリマー(シリコンオイル)も好適である。このとき、1官能シリコン樹脂としてはモノマーを用いることが好ましい。
【0071】
このような1官能シリコン樹脂を用いると、撥水性、撥油性、耐指紋付着性、耐薬品性等に優れた透明被膜を得ることができる。また、1官能シリコン樹脂を前記2官能シリコン樹脂と併用すると1官能シリコン樹脂の脱離を抑制することができ、撥水性、撥油性、耐指紋付着性、耐薬品性を長期に維持することができる。
【0072】
このような1官能シリコン樹脂の含有量は有機無機ハイブリッドマトリックス成分中に固形分として0.1〜10質量%、さらには0.5〜8質量%の範囲にあることが好ましい。
【0073】
透明被膜中の有機無機ハイブリッドマトリックス成分の含有量は固形分として20〜99.99質量%、さらには25〜99.95質量%の範囲にあることが好ましい。有機無機ハイブリッドマトリックス成分の含有量が少ないと、基材との密着性、透明性、ヘーズ、耐擦傷性等が不充分となる場合がある。有機無機ハイブリッドマトリックス成分の含有量が多すぎても、却って粒子の量が少なくなり耐擦傷性、膜強度等が不充分となる場合がある。しかしながら、有機無機ハイブリッドマトリックス成分と基材調製時に重合反応する官能基を有する有機ケイ素化合物で表面処理を行った粒子を用いた場合、含有量が少なくても形成された塗膜は高い膜強度、耐擦傷性、密着性が増加する。
【0074】
このような有機無機ハイブリッドマトリックスを使用することで、硬度、耐熱性に優れた透明被膜を得ることができる。
【0075】
かかる有機無機ハイブリッドマトリックスを使用することで、有機樹脂マトリックスと比べて耐熱性、硬度等は優た被膜を形成できる。
【0076】
本発明では、有機無機ハイブリッドマトリックス成分に加えてOH基を有する有機樹脂を使用することができる。OH基を有する有機樹脂としては、2-ヒドロキシエチルアク
リレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、メタクリル酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、グリセリンジメタクリレート、2-ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート等が挙げられ
る。このようなOH基を有する有機樹脂を有機無機ハイブリッドマトリックス成分と混合して使用すると基材の種類によっても異なるが、密着性に優れた透明被膜を得ることができる。基材によっては密着性が不良になる場合があり、たとえば、基材がTACの場合、2-ヒドロキシエチルアクリレートの(少量の)使用によって密着性を向上させることが
可能となる。かかる有機樹脂を使用する場合、必要に応じて触媒を含んでいてもよい。
【0077】
マトリックス成分中のOH基を有する有機樹脂の含有量は1〜20質量%、さらには2〜15質量%の範囲にあることが好ましい。
【0078】
マトリックス成分中のOH基を有する有機樹脂の含有量が1質量%未満の場合は、密着性を向上させる効果が不充分となる場合があり、20質量%を越えると、さらに密着性が向上することもなく、硬度が低下したり、耐熱性が不充分となる場合がある。
【0079】
本発明に係る透明被膜の膜厚(Th)は、使用するリング状粒子の大きさにもよるが、
50nm〜20μm、さらには100nm〜20μmの範囲にあることが好ましい。但し、膜厚はリング状粒子の大きさを越えることはない。
【0080】
透明被膜の膜厚が薄過ぎると、耐擦傷性、膜強度が不充分となる場合がある。膜厚が厚すぎると、膜の厚さが不均一になったり、透明被膜にクラックやボイドを生じたり、このため膜強度が不充分となったり、プラスチック等の基材ではカーリング(湾曲あるいは反り)を生じる場合がある。
【0081】
本発明では、透明被膜の膜厚(Th)が50nm〜20μmの範囲にある場合、1次粒
子からリング状粒子を構成し、その粒子径(平均外径(DO))が、10〜500nmに
ある場合、平均外径(DO)と膜厚(Th)との比(DO)/(Th)が0.05〜1.0、好ましくは0.1〜0.9の範囲にある透明被膜とすることが好ましい。
【0082】
マイクロリング状無機酸化物粒子が二次粒子から形成される場合、粒子径(平均外径(DO))と膜厚(Th)との比(DO)/(Th)が0.3〜1.0、好ましくは0.5〜0.9の範囲にある透明被膜とすることが好ましい。
【0083】
前記(DO)/(Th)が小さいと、基材との密着性を向上させる効果、硬度、耐擦傷性を向上させる効果等が不充分となり、前記(DO)/(Th)が大きくすると透明被膜表面に凹凸が形成される場合があり、耐擦傷性、鉛筆硬度等が低下する場合がある。(DO
/(Th)が前記範囲にあれば、より基材との密着性、硬度、耐擦傷性等に優れた透明被
膜付基材を得ることができる。
【0084】
つぎに、本発明に係る透明被膜形成用塗布液について説明する。
[透明被膜形成用塗布液]
本発明に係る透明被膜形成用塗布液は、前記マイクロリング状無機酸化物粒子と有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分と有機溶媒とからなることを特徴としている。
マイクロリング状無機酸化物粒子
マイクロリング状無機酸化物粒子としては前記したマイクロリング状無機酸化物粒子が用いられる。
【0085】
有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分
有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分としては、前記式(2)で表される有機珪素
化合物の加水分解物であることが好ましい。
【0086】
このような有機珪素化合物としては前記した有機珪素化合物が挙げられる。
【0087】
さらに、本発明では、前記有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分が、さらに前記式(3)で表される有機珪素化合物の加水分解物を含んでいてもよい。
【0088】
このような有機珪素化合物の加水分解物の含有量は、得られる透明被膜中の有機無機ハイブリッドマトリックス成分中に固形分として1〜50質量%、さらには2〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
【0089】
さらに、本発明では、前記した1官能シリコン樹脂、2官能シリコン樹脂を混合して用いることができる。さらにまた、前記したOH基を有する有機樹脂マトリックス形成成分を使用することができる。
【0090】
有機溶媒
本発明に用いる有機溶媒としては前記有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分を分散できるとともに前記したマイクロリング状無機酸化物粒子を均一に分散することができれば特に制限はなく、従来公知の溶媒を用いることができる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール(IPA)、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプロピルグリコールなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジプロピルケトン、メチルペンチルケトン、ジイソブチルケトン、イソホロン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用することもできる。
【0091】
塗布液組成
透明被膜形成用塗布液中の有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分とマイクロリング状無機酸化物粒子との合計濃度は特に制限されないが、固形分として1〜60質量%、さらには2〜50質量%の範囲にあることが好ましい。
【0092】
前記合計濃度が少なすぎると、一回の塗布では所定の膜厚が得られないことがあり、塗布、乾燥を繰り返すと密着性等が不充分となったり、経済性において不利である。
【0093】
前記合計濃度が高すぎると、得られる透明被膜の厚さが不均一になる場合がある。
【0094】
透明被膜形成用塗布液中のマイクロリング状無機酸化物粒子の濃度は、得られる透明被膜中のマイクロリング状無機酸化物粒子の含有量が前記したように固形分として0.01〜80質量%、さらには0.05〜75質量%の範囲となるように用いる。
【0095】
また、透明被膜形成用塗布液中の有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分の濃度は、得られる透明被膜中の有機無機ハイブリッドマトリックス成分の含有量が前記したように固形分として20〜99.99質量%、さらには25〜99.95質量%の範囲となるように用いる。
【0096】
さらに具体的には、透明被膜形成用塗布液中のマイクロリング状無機酸化物粒子の濃度
は、固形分として0.0001〜48質量%、さらには0.0005〜30質量%の範囲にあることが好ましい。透明被膜形成用塗布液中の有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分の濃度は、固形分として0.2〜57質量%、さらには0.5〜54質量%の範囲にあることが好ましい。
【0097】
上記した透明被膜形成用塗布液をディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法、バーコート法、グラビア印刷法、マイクログラビア印刷法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、紫外線照射、加熱処理等常法によって硬化させることによって透明被膜を形成することができる。
【0098】
得られた透明被膜の膜厚は、50nm〜20μmの範囲にあることが好ましい。
【0099】
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0100】
[実施例1]
マイクロリング状無機酸化物粒子(1)の調製
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:CataloidTM SI−30、平均粒子径1
2nm、SiO2濃度30質量%)を噴霧乾燥装置の対向式2流体ノズルに供給し、処理
液量120L/Hr、ノズル圧力0.45MPa、乾燥雰囲気温度50℃、湿度7.2VOl%、の条件下に噴霧乾燥して、表面に凹部を有する無機酸化物粒子を調製した。
【0101】
ついで、濃度25質量%のテトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液10gに、表面に凹部を有する無機酸化物粒子1gを添加し、25℃で12時間撹拌した後、濾過し、充分に洗浄し、ついで120℃で10時間乾燥してマイクロリング状無機酸化物粒子(1)を調製した。
【0102】
ついで、マイクロリング状無機酸化物粒子(1)400gをメタノール1600gに分散
させ、固形分濃度20質量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(1)メタノール分散液を
調製した。
【0103】
マイクロリング状無機酸化物粒子(1)メタノール分散液2000gに表面処理剤として
γ-アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM−5103
、SiO2成分81.2質量%)40gとメタノール2000g、濃度28質量%のアン
モニア水を0.15g入れ50℃で18時間攪拌して表面処理を行った。このあと、エタノールに溶媒置換して固形分濃度20質量%の表面処理したマイクロリング状無機酸化物粒子(1) エタノール分散液を調製した。
得られたマイクロリング状無機酸化物粒子(1)について、走査型電子顕微鏡写真(SEM
)を撮影し、平均外径(DO)、貫通孔の平均径(DI)を測定し、結果を表1に示す。
【0104】
有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分(1)の調製
有機珪素化合物としてメチルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM-13)
を454.5g、エタノール185.5g、純水360.0gの混合溶液を濃硝酸でpH1.0に調整した後、50℃で2時間加水分解させた。その後、濃度1質量%のアンモニア水を添加し、pHを7.0に調整した後、さらに50℃で2時間撹拌した。次にロータリーエバポレーターで、水、アルコールを留去し、エチレングリコールモノプロピルエーテルと溶媒置換し、固形分濃度が20質量%のエチレングリコールモノプロピルエーテル溶媒に分散した有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分(1)を調製した。
【0105】
透明被膜形成用塗布液(1)の調製
固形分濃度20重量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(1) エタノール分散液7.5gと有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分(1)330.75gと、2-ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学製:ライトエステルHOA)7.35gと光重合開始剤1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン(株)製イルガキュア184)3.0gと、イソプロパノールとエチレングリコールモノプロピルエーテルの1/1(重量比)混合溶媒154.4gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(1)を調製した

【0106】
透明被膜付基材(F-1)の製造
透明被膜形成用塗布液(1)をTACフィルム(パナック(株)製:FT−PB80UL
−M、厚さ:80μm、屈折率1.49、基材透過率93.0%、ヘーズ0.2%)にバーコーター法(バー#20)で塗布し、100℃で5分間乾燥した後、高圧水銀灯(120W/cm)を搭載した紫外線照射装置(日本電池(株)製UV照射装置: CS30L
21−3)で600mJ/cm2照射して硬化させ、透明被膜付基材(F-1)を調製した。こ
のときの透明被膜の厚さは4μmであった。
【0107】
得られた透明被膜の全光線透過率およびヘーズをヘーズメーター(日本電色工業(株)製)により測定し、結果を表に示す。さらに、鉛筆硬度、可撓性、耐擦傷性および密着性を以下の方法および評価基準で評価し、結果を表に示す。
鉛筆硬度の測定
JIS−K−5400に準じて鉛筆硬度試験器により測定した。
耐擦傷性の測定
#0000スチールウールを用い、荷重500g/cm2で50回摺動し、膜の表面を
目視観察し、以下の基準で評価し、結果を表に示す。
【0108】
評価基準:
筋条の傷が認められない : ◎
筋条に傷が僅かに認められる: ○
筋条に傷が多数認められる : △
面が全体的に削られている : ×
密着性
透明被膜付基材(F-1)の表面にナイフで縦横1mmの間隔で11本の平行な傷を付け1
00個の升目を作り、これにセロハンテープ(登録商標)を接着し、ついで、セロハンテープ(登録商標)を剥離したときに被膜が剥離せず残存している升目の数を、以下の4段階に分類することによって密着性を評価した。結果を表に示す。
【0109】
残存升目の数100個 : ◎
残存升目の数93〜97個: ○
残存升目の数85〜92個: △
残存升目の数84個以下 : ×
可撓性(ボイド)
透明被膜付基材(F-1)の幅1cm、長さ5cmの切片を作成し、切片の一端を固定し、
他端を上下5cmの幅で湾曲させる操作を20回繰り返した後、目視観察し、以下の基準で評価した。
【0110】
透明被膜は元のまま透明性を維持していた : ◎
透明被膜の透明性が僅かに低下していた : ○
透明被膜に白化が認められた : △
透明被膜にボイドの生成による白化が認められた : ×
[実施例2]
透明被膜形成用塗布液(2)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度20質量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(1) エタノール分散液3.0gと有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分(1)53
7.3g、2-ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学製:ライトエステルHOA)
11.94gと光重合開始剤1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン(株)製イルガキュア184)4.8gと、イソプロパノールとエチレングリコールモノプロピルエーテルの1/1(重量比)混合溶媒247.76gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(2)を調製した。
【0111】
透明被膜付基材(F-2)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(2)を用いた以外は同様にして透明被膜付基
材(F-2)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。
【0112】
得られた透明被膜の全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、可撓性、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表に示す。
【0113】
[実施例3]
透明被膜形成用塗布液(3)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度20質量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(1) エタノール分散液37.5gと有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分(1)3
03.75g、2-ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学製:ライトエステルHO
A)6.75gと光重合開始剤1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン(株)製イルガキュア184)2.7gと、イソプロパノールとエチレングリコールモノプロピルエーテルの1/1(重量比)混合溶媒152.0gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(3)を調製した。
【0114】
透明被膜付基材(F-3)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(3)を用いた以外は同様にして透明被膜付基
材(F-3)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。
【0115】
得られた透明被膜の全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、可撓性、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表に示す。
【0116】
[実施例4]
透明被膜形成用塗布液(4)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度20質量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(1) エタノール分散液0.75gと有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分(1)1
349.33g、2-ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学製:ライトエステルH
OA)29.98gと光重合開始剤1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン(株)製イルガキュア184)12.0gと、イソプロパノールとエチレングリコールモノプロピルエーテルの1/1(重量比)混合溶媒619.94gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(4)を調製した。
【0117】
透明被膜付基材(F-4)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(4)を用いた以外は同様にして透明被膜付基
材(F-4)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。
【0118】
得られた透明被膜の全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、可撓性、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表に示す。
【0119】
[実施例5]
マイクロリング状無機酸化物粒子(2)の調製
実施例1と同様にして調製したマイクロリング状無機酸化物粒子(1)200gをエタノ
ール800gに分散させ、固形分濃度20質量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(2)
エタノール分散液を調製した。なお、表面処理は行なっていない。
【0120】
透明被膜形成用塗布液(5)の調製
固形分濃度20質量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(2) エタノール分散液7.5gと有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分(1) 330.75g、2-ヒドロキシエ
チルアクリレート(共栄社化学製:ライトエステルHOA)7.35gと光重合開始剤1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン(株)製イルガキュア184)3.0gと、イソプロパノールとエチレングリコールモノプロピルエーテルの1/1(重量比)混合溶媒154.4gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(5)を調製した

【0121】
透明被膜付基材(F-5)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(5)を用いた以外は同様にして透明被膜付基
材(F-5)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。
【0122】
得られた透明被膜の全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、可撓性、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表に示す。
【0123】
[実施例6]
有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分(2)の調製
有機珪素化合物としてメチルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM-13)
を409.1g、正珪酸エチル(多摩化学製:エチルシリケート28)を69.4g、エタノール185.5g、純水360.0gの混合溶液を濃硝酸でpH1.0に調整した後、50℃で2時間加水分解させた。その後、濃度1質量%のアンモニア水を添加し、pHを7.0に調整した後、さらに50℃で2時間撹拌した。次にロータリーエバポレーターで、水、アルコールを留去し、エチレングリコールモノプロピルエーテルと溶媒置換し、固形分濃度が20質量%のエチレングリコールモノプロピルエーテル溶媒に分散した有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分(2)を調製した。
【0124】
透明被膜形成用塗布液(6)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度20質量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(1) エタノール分散液7.5gと有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分(2) 330.75g、2-ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学製:ライトエステルHOA
)7.35gと光重合開始剤1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン(株)製イルガキュア184)3.0gと、イソプロパノールとエチレングリコールモノプロピルエーテルの1/1(重量比)混合溶媒154.4gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(6)を調製した。
【0125】
透明被膜付基材(F-6)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(6)を用いた以外は同様にして透明被膜付基
材(F-6)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。
【0126】
得られた透明被膜の全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、可撓性、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表に示す。
【0127】
[実施例7]
マイクロリング状無機酸化物粒子(3)の調製
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:CataloidTM SI−550、平均粒子径
5nm、SiO2濃度20質量%)100gに純水3900gを加えて98℃に加温し、
この温度を保持しながら、SiO2として濃度1.5質量%の珪酸ナトリウム水溶液13345gとAl23としての濃度0.5質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液13345gを添加して、SiO2・Al23粒子分散液(平均粒子径35nm)を得た。このときの反応液のpHは12.0であった。
【0128】
ついで、SiO2として濃度1.5質量%の珪酸ナトリウム水溶液109830gとAl23としての濃度0.5質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液36610gを添加して複合酸化物微粒子(3)(平均粒子径60nm)の分散液を得た。このときの反応液のpHは1
2.0であった。
【0129】
ついで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%になった複合酸化物微粒子(3)の
分散液500gに純水1125gを加え、さらに濃塩酸(濃度35.5質量%)を滴下し
てpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと
純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離・洗浄して固形分濃度20質量%のシリカ系中空微粒子の水分散液を得た。
【0130】
ついで、シリカ系中空微粒子の水分散液150gと、純水500g、エタノール1750gおよび濃度28質量%のアンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO2濃度28質量%)47gを添加してシリカ被覆層を形成し、純
水5Lを加えながら限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20質量%のシリカ被覆層を形成したシリカ系中空微粒子の水分散液を得た。
【0131】
つぎに、シリカ被覆層を形成したシリカ系中空微粒子分散液にアンモニア水を添加して分散液のpHを10.5に調整し、ついで200℃にて11時間熟成した後、常温に冷却した。ついで、水酸化ナトリウムを添加してpHを12に調整し、80℃で12時間撹拌した後、充分に洗浄し、ついで、限外濾過膜でエタノールに溶媒置換して固形分濃度20質量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(3)のエタノール(水)分散液を得た。
【0132】
得られたマイクロリング状無機酸化物粒子(3)について、走査型電子顕微鏡写真(SE
M)を撮影し、平均外径(DO)、貫通孔の平均径(DI)を測定し、結果を表1に示す。
【0133】
透明被膜形成用塗布液(7)の調製
固形分濃度20質量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(3) エタノール分散液7.5gと有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分(1) 330.75g、2-ヒドロキシエ
チルアクリレート(共栄社化学製:ライトエステルHOA)7.35gと光重合開始剤1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン(株)製イルガキュア184)3.0gと、イソプロパノールとエチレングリコールモノプロピルエーテルの1/1(重量比)混合溶媒154.4gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(7)を調製した

【0134】
透明被膜付基材(F-7)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(7)を用い、バーコーター法(バー#3)で
塗布した以外は同様にして透明被膜付基材(F-7)を調製した。このときの透明被膜の厚さ
は0.6μmであった。
【0135】
得られた透明被膜の全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、可撓性、耐擦傷性および密着性
を評価し、結果を表に示す。
【0136】
[実施例8]
マイクロリング状無機酸化物粒子(4)の調製
実施例7と同様にして固形分濃度20質量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(3)の
エタノール(水)分散液を得た。
【0137】
ついで、限外濾過膜でメタノールに溶媒置換し、濃縮して固形分濃度20質量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(3)メタノール分散液を調製した。
【0138】
マイクロリング状無機酸化物粒子(3)メタノール分散液2000gに表面処理剤として
γ-アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM−5103
、SiO2成分81.2質量%)40gとメタノール2000g、濃度28質量%のアン
モニア水を0.15g入れ50℃で18時間攪拌して表面処理を行った。このあと、エタノールに溶媒置換して固形分濃度10質量%の表面処理したマイクロリング状無機酸化物粒子(4) エタノール分散液を調製した。
【0139】
得られたマイクロリング状無機酸化物粒子(4)について、走査型電子顕微鏡写真(SE
M)を撮影し、平均外径(DO)、貫通孔の平均径(DI)を測定し、結果を表1に示す。
【0140】
透明被膜形成用塗布液(8)の調製
固形分濃度20質量%の表面処理したマイクロリング状無機酸化物粒子(4)エタノール
分散液7.5gと、実施例6と同様にして調製した有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分(2) 330.75g、2-ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学製:ライト
エステルHOA)7.35gと光重合開始剤1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン(株)製イルガキュア184)3.0gと、イソプロパノールとエチレングリコールモノプロピルエーテルの1/1(重量比)混合溶媒154.4gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(8)を調製した。
【0141】
透明被膜付基材(F-8)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(8)を用い、バーコーター法(バー#3)で
塗布した以外は同様にして透明被膜付基材(F-8)を調製した。このときの透明被膜の厚さ
は0.6μmであった。
【0142】
得られた透明被膜の全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、可撓性、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表に示す。
【0143】
[実施例9]
透明被膜付基材(F-9)の製造
実施例1と同様にして調製した透明被膜形成用塗布液(1)をPETフィルム(東洋紡(
株)製:コスモシャインA−4300、厚さ:188μm、屈折率1.65、基材透過率90.0%、ヘーズ0.6%))にバーコーター法(バー#20)で塗布し、100℃で5分間乾燥した後、高圧水銀灯(120W/cm)を搭載した紫外線照射装置(日本電池(株)製UV照射装置: CS30L21−3)で600mJ/cm2照射して硬化させ、
透明被膜付基材(F-9)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。
[実施例10]
透明被膜付基材(F-10)の製造
実施例8と同様にして調製した透明被膜形成用塗布液(8)をPETフィルム(東洋紡(
株)製:コスモシャインA−4300、厚さ:188μm、屈折率1.65、基材透過率90.0%、ヘーズ0.6%))にバーコーター法(バー#20)で塗布し、100℃で
5分間乾燥した後、高圧水銀灯(120W/cm)を搭載した紫外線照射装置(日本電池(株)製UV照射装置: CS30L21−3)で600mJ/cm2照射して硬化させ、
透明被膜付基材(F-10)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。
【0144】
[比較例1]
無機酸化物粒子(R1)の調製
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:CataloidTM S-20L、平均粒子径15nm、SiO2濃度20質量%)を噴霧乾燥装置の対向式2流体ノズルに供給し、処理液
量20L/Hr、ノズル圧力0.40MPa、乾燥雰囲気温度120℃、湿度7.2VOl%、の条件下に噴霧乾燥して、無機酸化物粒子(R1)を調製した。得られた無機酸化物粒子(R1)には貫通孔はなく、平均粒径は4μmであった。
【0145】
ついで、無機酸化物粒子(R1)400gをメタノール1600gに分散させ、固形分濃度20質量%の無機酸化物粒子(R1)メタノール分散液を調製した。
【0146】
無機酸化物粒子(R1)メタノール分散液2000gに表面処理剤としてγ-アクリロオキ
シプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM−5103、SiO2成分8
1.2質量%)40gとメタノール2000g、濃度28質量%のアンモニア水を0.15g入れ50℃で18時間攪拌して表面処理を行った。このあと、エタノールに溶媒置換して固形分濃度10質量%の表面処理した無機酸化物粒子(R1) エタノール分散液を調製
した。
【0147】
透明被膜形成用塗布液(R1)の調製
実施例1において、マイクロリング状無機酸化物粒子(1)の代わりに表面処理した無機
酸化物粒子(R1)を用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(R1)を調製した。
【0148】
透明被膜付基材(RF-1)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R1)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(RF-1)を製造した。得られた透明被膜付基材(RF-1)について、透明被膜の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、可撓性、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表に示す。
【0149】
[比較例2]
無機酸化物粒子(R2)の調製
シリカ・アルミナゾル(日揮触媒化成(株)製: Fine CataloidTM US
BB−120、平均粒子径25nm、SiO2・Al23濃度20質量%、固形分中Al23含有量27質量%)100gに純水3900gを加えて98℃に加温し、この温度を保
持しながら、SiO2として濃度1.5質量%の珪酸ナトリウム水溶液1750gとAl23としての濃度0.5質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液1750gを添加して、SiO2・Al23粒子分散液(平均粒子径35nm)を得た。このときのAl23/SiO2モル比=0.2、であった。また、このときの反応液のpHは12.0であった。
【0150】
ついで、SiO2として濃度1.5質量%の珪酸ナトリウム水溶液6,300gとAl23としての濃度0.5質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液2,100gを添加して複合酸化物微粒子(2)(平均粒子径50nm)の分散液を得た。
【0151】
ついで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%になった複合酸化物微粒子(2)の
分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(濃度35.5質量%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと
純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離・洗浄して固形分濃度20質量%のシリカ系中空微粒子の水分散液を得た。
【0152】
ついで、シリカ系中空微粒子の水分散液150gと、純水500g、エタノール1,750gおよび濃度28質量%のアンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO2濃度28質量%)140gを添加してシリカ被覆層を形成し
、純水5Lを加えながら限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20質量%のシリカ被覆層を形成したシリカ系中空微粒子の水分散液を得た。
【0153】
つぎに、シリカ被覆層を形成したシリカ系中空微粒子分散液にアンモニア水を添加して分散液のpHを10.5に調整し、ついで200℃にて11時間熟成した後、常温に冷却し、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:DIAIONTM SK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、ついで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:DIAIONTMSA20A)200gを用いて3時間イオン交換し、さらに陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:DIAIONTM SK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して
洗浄を行い、固形分濃度20質量%の無機酸化物粒子(R2)の水分散液を得た。得られた無機酸化物粒子(R2)には貫通孔はなく、平均粒径は60nmであった。
【0154】
ついで、無機酸化物粒子(R2)水分散液を限外濾過膜にてメタノールに溶媒置換し、固形分濃度20質量%の無機酸化物粒子(R2)メタノール分散液を調製した。
【0155】
無機酸化物粒子(R2)メタノール分散液2000gに表面処理剤としてγ-アクリロオキ
シプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM−5103、SiO2成分8
1.2質量%)40gとメタノール2000g、濃度28質量%のアンモニア水を0.15g入れ50℃で18時間攪拌して表面処理を行った。このあと、エタノールに溶媒置換して固形分濃度10質量%の表面処理した無機酸化物粒子(R2) エタノール分散液を調製
した。
【0156】
透明被膜形成用塗布液(R2)の調製
実施例8において、マイクロリング状無機酸化物粒子(4) エタノール分散液の代わりに表面処理した無機酸化物粒子(R2) エタノール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜形
成用塗布液(R2)を調製した。
【0157】
透明被膜付基材(RF-2)の製造
実施例8において、透明被膜形成用塗布液(R2)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(RF-2)を製造した。得られた透明被膜付基材(RF-2)について、透明被膜の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、可撓性、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表に示す。
【0158】
[比較例3]
透明被膜形成用塗布液(R3)の調製
実施例8において、マイクロリング状無機酸化物粒子(2)の代わりにシリカゾル(日揮
触媒化成(株)製:CataloidTM SI−45P、平均粒子径45nm、SiO2濃度30質量%)を用いた以外は同様にして表面処理した無機酸化物粒子(R3) アルコール
分散液を調製し、ついで、透明被膜形成用塗布液(R3)を調製した。
【0159】
透明被膜付基材(RF-3)の製造
実施例8において、透明被膜形成用塗布液(R3)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(RF-3)を製造した。得られた透明被膜付基材(RF-3)について、透明被膜の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、可撓性、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表に示す。
【0160】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材表面に形成された透明被膜とを有する透明被膜付基材であって、該透明被膜がマイクロリング状無機酸化物粒子と有機無機ハイブリッドマトリックス成分とを含み、かつ透明被膜中のマイクロリング状無機酸化物粒子の含有量が固形分として0.01〜80質量%の範囲にあることを特徴とする透明被膜付基材。
【請求項2】
前記マイクロリング状無機酸化物粒子の平均外径(DO)が10nm〜20μmの範囲
にあり、貫通孔の平均径(DI)が1nm〜12μmの範囲にあり、リング幅(WR)と平均外径(DO)との比(WR)/(DO)が0.2〜0.45の範囲にあることを特徴とす
る請求項1に記載の透明被膜付基材。
【請求項3】
前記マイクロリング状無機酸化物粒子を構成する無機酸化物が、シリカ系無機酸化物であることを特徴とする請求項1または2に記載の透明被膜付基材。
【請求項4】
前記マイクロリング状無機酸化物粒子が下記式(1)で表される有機ケイ素化合物で表面
処理されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明被膜付基材。
n-SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:0〜3の整数)
【請求項5】
前記Rが、ハロゲン置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アミノ基、アミド基、エポキシ基、カルボキシル基、ケトン基、エーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ホスフェート基、ハロゲン基、チオール基、スルホニル基から選ばれる少なくとも1種以上の有機官能基を含むことを特徴とする請求項4に記載の透明被膜付基材。
【請求項6】
前記透明被膜の膜厚(Th)が50nm〜20μmの範囲にあることを特徴とする請求
項1〜5のいずれかに記載の透明被膜付基材。
【請求項7】
前記マイクロリング状無機酸化物粒子の平均外径(DO)が10nm〜20μmの範囲
にあり、平均外径(DO)と膜厚(Th)との比(DO)/(Th)が0.3〜1.0の範囲にあることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の透明被膜付基材。
【請求項8】
前記有機無機ハイブリッドマトリックス成分が、下記式(2)で表される有機珪素化合物
の加水分解重縮合物を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の透明被膜付基材。
n-SiX4-n (2)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン、水素から選ばれる少なくとも1種であり、nは1〜3の整数を示す)
【請求項9】
前記有機無機ハイブリッドマトリックス成分が、さらに下記式(3)で表される有機珪素
化合物の加水分解重縮合物を含むことを特徴とする請求項8に記載の透明被膜付基材。
SiX4 (3)
(但し、式中、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン、水素から選ばれる少なくとも1種である)
【請求項10】
マイクロリング状無機酸化物粒子と有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分と有機
溶媒とを含むことを特徴とする透明被膜形成用塗布液。
【請求項11】
前記マイクロリング状無機酸化物粒子の平均外径(DO)が10nm〜20μmの範囲
にあり、貫通孔の平均径(DI)が1nm〜12μmの範囲にあり、リング幅(WR)と平均外径(DO)との比(WR)/(DO)が0.2〜0.45の範囲にあることを特徴とす
る請求項10に記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項12】
前記マイクロリング状無機酸化物粒子を構成する無機酸化物が、シリカ系無機酸化物であることを特徴とする請求項10または11に記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項13】
前記マイクロリング状無機酸化物粒子が下記式(1)で表される有機ケイ素化合物で表面
処理されていることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液。
n-SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素から選ばれる少なくとも1種を示し、nは0〜3の整数を示す)
【請求項14】
前記Rが、ハロゲン置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アミノ基、アミド基、エポキシ基、カルボキシル基、ケトン基、エーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ホスフェート基、ハロゲン基、チオール基、スルホニル基から選ばれる少なくとも1種以上の有機官能基を含むことを特徴とする請求項13に記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項15】
前記有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分が、下記式(2)で表される有機珪素化
合物の加水分解物を含むことを特徴とする請求項10〜14のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液。
n-SiX4-n (2)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン、水素から選ばれる少なくとも1種を示す。nは1〜3の整数を示す)
【請求項16】
前記有機無機ハイブリッドマトリックス成分が、さらに下記式(3)で表される有機珪素
化合物の加水分解物を含むことを特徴とする請求項15に記載の透明被膜形成用塗布液。SiX4 (3)
(但し、式中、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン、水素から選ばれる少なくとも1種を示す)
【請求項17】
前記マイクロリング状無機酸化物粒子の濃度が固形分として0.0001〜48質量%の範囲にあり、有機無機ハイブリッドマトリックス形成成分の濃度が固形分として0.2〜57質量%の範囲にあり、全固形分濃度が1〜60質量%の範囲にあることを特徴とする請求項10〜16のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−6002(P2012−6002A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146928(P2010−146928)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】