説明

透明複合シート

【課題】顔料、色素、染料など従来の着色材を使用せずに、発色する透明複合シートを提供すること。
【解決手段】透明樹脂と球状ナノ微粒子を含む透明複合シートであって、前記球状ナノ微粒子が充填配列構造をなしていることを特徴とする透明複合シートであり、好ましくは、前記球状ナノ粒子が光照射下で、特定の波長の光を選択し、構造発色するものであり、前記球状ナノ粒子の一次粒子の平均粒子径が15〜400nmであり、前記球状ナノ粒子の含有量が0.1〜70体積%である透明複合シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造発色性を有する透明複合シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂シートを着色するためには着色顔料、色素、染料等を含有させることが必須である。顔料の粒子径が大きいものを使用するとシートは不透明になり、粒子径をナノスケールの小さいものを使用した場合も粒子が凝集するためシートが不透明になる。又、色素、染料は耐熱性が劣り、又経時変化が大きい問題がある。
【0003】
顔料、色素、染料など従来の色材のように一部の光を吸収することによる着色方法以外の方法として、球状ナノ微粒子のコロイド微結晶の構造発色を利用した光学発色体が開示されている(例えば特許文献1 参照)。しかしながら、透明性を維持したままの構造発色を示す透明シートは得られていなかった。
【0004】
【特許文献1】特開2007−182392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、顔料、色素、染料など従来の着色材を使用せずに、発色する透明複合シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、以下の通りである。
(1)透明樹脂と球状ナノ微粒子を含む透明複合シートであって、前記球状ナノ微粒子が充填配列構造をなしていることを特徴とする透明複合シート。
(2)前記球状ナノ粒子が光照射下で、特定の波長の光を選択し、構造発色するものである(1)の透明複合シート。
(3)前記球状ナノ粒子の一次粒子の平均粒子径が15〜400nmである(1)又は(2)の透明複合シート。
(4)前記球状ナノ粒子の含有量が0.1〜70体積%である(1)〜(3)いずれかの透明複合シート。
【発明の効果】
【0007】
本発明による透明複合シートは、着色材を使用せずに発色するので透明性、耐熱性、耐久性に優れ、例えば、透明板、光学レンズ、光ディスク基板、液晶表示素子用プラスチック基板、カラーフィルター用基板、有機EL表示素子用プラスチック基板、太陽電池基板、タッチパネル、光学素子、光導波路、LED封止材等に好適に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、透明樹脂と球状ナノ微粒子を含む透明複合シートであって、球状ナノ微粒子が充填配列構造をなしていることを特徴とするものであり、球状ナノ粒子が光照射下で、特定の波長の光を選択し、構造発色する透明複合シートである。
【0009】
本発明で用いられる透明樹脂は、特に制限されないが、2つ以上の官能基を有する化合物を含有する樹脂組成物を熱、光等により硬化・架橋して得られるものが好ましい。2つ以上の官能基を有する化合物としては、(メタ)アクリレート、エポキシ化合物、グリシジル型エポキシ樹脂、オキセタン化合物、オキセタニル基を有する化合物、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0010】
グリシジル型エポキシ樹脂としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂またはこれらの水添化物、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート骨格を有するエポキシ樹脂、カルド骨格を有するエポキシ樹脂、ポリシロキサン構造を有するエポキシ樹脂が挙げられ、脂環式エポキシ樹脂としては例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3‘、4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2,8,9−ジエポキシリモネン、ε−カプロラクトンオリゴマーの両端にそれぞれ3,4−エポキシシクロヘキシルメタノールと3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸がエステル結合したもの、水添ビフェニル骨格、及び水添ビスフェノールA骨格を有する脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。)等が好適に用いられる。
【0011】
ただし、耐熱性、線膨張係数の点で、脂環式構造を有し、2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、脂環式構造を含む2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートであれば特に制限されないが、耐熱性や透明性の点から下記の化学式(1)及び化学式(2)より選ばれた少なくとも1種以上の(メタ)アクリレートが好ましい。
【0012】
【化1】

(式(1)中、R1及びR2は、互いに異なっていても良く、水素原子又はメチル
基を示す。aは1又は2を示し、bは0又は1を示す。)
【0013】
【化2】

【0014】
式(1)、式(2)で示される(メタ)アクリレートの中でも、反応性、熱安定性の面から、式(1)、式(2)より選ばれた少なくとも1種のアクリレートが好ましく、さらに好ましくは、一般式(1)において、R1、R2が水素で、aが1、bが0である構造を持つジシクロペンタジエニルジアクリレート、一般式(2)において、Xが−CH2OCOCH=CH2、R3、R4が水素で、pが1である構造を持つパーヒドロ−1,4;5,8−ジメタノナフタレン−2,3,7−(オキシメチル)トリアクリレート、 X、R3、R4がすべて水素で、pが0または1である構造を持つアクリレートより選ばれた少なくとも1種以上のアクリレートであり、粘度等の点を考慮すると、最も好ましくは、 X、R3、R4がすべて水素で、pが0である構造を持つノルボルナンジメチロールジアクリレートである。式(2)で示される(メタ)アクリレートは、特開平5−70523で示される公知の方法で得ることができる。
【0015】
本発明で用いられる官能基を有する化合物中には、柔軟性を付与する等の目的で、要求される特性を極端に損なうことのない範囲で、単官能の化合物を含有させることができる。
【0016】
本発明で用いられる球状ナノ微粒子は、特に制限されるものではないが、ケイ素を含有する金属酸化物の微粒子、半導体微粒子などが挙げられる。ケイ素を含有する金属酸化物の微粒子としては、乾燥された粉末状のシリカ微粒子、有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)を使用することができる。分散性の点で、有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)を用いることが好ましい。
【0017】
有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)を用いる場合の有機溶媒としては、樹脂組成物中に使用する有機成分が溶解するものを用いることが好ましく、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類が挙げられる。脱溶媒のしやすさから、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、n−プロピルアルコール等のアルコール系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系の有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ、シリカゾル、シリカ微粒子を用いることが好ましく、さらに好ましくは、イソプロピルアルコールに分散されたコロイダルシリカである。特に、イソプロピルアルコールに分散されたコロイダルシリカを用いた場合は、脱溶媒後の粘度が他の溶剤系に比べて低く、粘度が低い複合体組成物を安定して作製するのに適している。
【0018】
これらの有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)、シリカ微粒子は、要求される特性を極端に損なうことのない範囲で、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等のカップリング剤で表面処理されたものであっても良く、有機溶媒に分散させるために、界面活性剤等の分散剤を使用しているものであっても良い。
【0019】
半導体微粒子としては、光や電子線のようなエネルギーを吸収することにより、2つのエネルギー順位の差に反比例する波長の光を発する性質を有するものであれば、特に制限されないが、カルコゲン化物を含有する微粒子が好適に用いられる。
カルコゲン化物としては、カルコゲン(周期律表のVI族元素のうち、酸素(O)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、ポロニウム(Po)の5元素の総称)を含む化合物を称し、特に、周期律表のII族元素とVI族元素との化合物であるII−VI族化合物が好ましい。さらに好ましくは、ZnS、CdS、ZnSe、CdSe、ZnTe、CdTe、ZnOから選択される少なくとも1種である。
【0020】
半導体微粒子は、発行効率を増加させるため、ボーア半径の2倍よりも小さな粒子径の半導体超微粒子をマトリックス中に凝集なく均一に分散してなる微粒子にすることが好ましい。マトリックスには、種々の無機物、有機物を用いることができる。無機物としては、ケイ素系の化合物などが挙げられる。有機物としては、耐熱性の面から、ポリイミドや脂環式構造を有する樹脂などが挙げられる。マトリックス中にケイ素やチタンを含有するカップリング剤を使用することもできる。
【0021】
透明複合シート中の球状ナノ微粒子の含有量は0.1〜70vol%が好ましく、さらに好ましくは、15〜60vol%、より好ましくは、20〜60vol%、最も好ましくは、20〜35vol%である。この範囲であれば、透明複合シート作成前の複合体組成物の流動性、分散性が良好であるため、製造が容易であり、透明性を維持したままの構造発色を示すシートを製造することができる。
【0022】
球状ナノ微粒子の一次粒子の平均粒径は、15〜400nmが好ましく、透明性と流動性とのバランスの点で、さらに好ましくは50〜150nm、最も好ましくは80〜120nmである。平均粒径が下限値未満では、作製した複合体組成物の粘度が極端に増大するため、シリカ微粒子の充填量が制限されるとともに分散性が悪化し、十分な透明性を得ることができない場合があった。また、上限値を超えると透明性が著しく悪化する恐れがあるので好ましくない。
【0023】
波長400〜500nmの光線透過率を低下させないために、1次粒径が400nm以上の微粒子が5%以下の割合で存在する微粒子を用いることが好ましく、その割合が0%であることがより好ましい。
【0024】
本発明における透明複合シートにおいて、透明性を維持したまま構造発色を示すためには、透明複合シート中における微粒子の配列が充填配列であることが必要である。
【0025】
本発明おける透明複合シートにおいて、透明性とは、シートを透過する光線量のことであり、透明性が高い複合シートは透過する光線量が多いことを意味する。透明性の判定は、透明複合シートのD65標準光源における全光透過率を測定し、70%以上である場合に透明であると判定する。
【0026】
本発明おける透明複合シートにおいて、充填配列とは、一次粒子もしくは高次粒子が規則正しく並んでいる配列を意味し、不均一な凝集構造が見られない状態をいう。充填配列であるかどうかの判別は、定量的に、以下のように実施できる。透明複合シートの小角X線散乱測定により得られる小角X線散乱プロファイルにおいて、粒子径に相当するピークが少なくともひとつ以上存在し、好ましくは高次のピークまで一定間隔でピークトップが観察された場合、微粒子の1次粒子が充填配列構造を有すると判別する。
【0027】
本発明における透明複合シートにおいて、構造発色とは、構造色とも呼ばれ規則的に並んだ立体構造に起因して光が散乱する現象のことである。構造発色を示すかどうかの判別は、定量的に、以下のように実施できる。透明複合シートの波長分散の光線透過率において構造発色する色の波長領域の光線透過率、例えば青色なら300から500nmの光線透過率において最も高い全光線透過率に対して10%以上の減少が観察された場合、構造発色を示すと判別する。
【0028】
本発明の透明複合シートの製造方法は、透明樹脂の原料となる官能基を有する化合物を含有する樹脂組成物と球状ナノ微粒子とからなる複合体組成物を、熱、光等により硬化・架橋して得られる。
【0029】
本発明で作製される複合体組成物中には、複合体組成物作製時に重合反応が進行し、粘度が上昇することを防ぐ目的で、重合禁止剤を含有させても良い。
【0030】
複合体組成物中には、必要に応じて、透明性、耐溶剤性、耐熱性等の特性を損なわない範囲で、熱可塑性又は熱硬化性のオリゴマーやポリマーを併用することができる。又、必要に応じて、透明性、耐溶剤性、耐液晶性、耐熱性等の特性を損なわない範囲で、少量の酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、他の無機フィラー等の充填剤等を含んでいても良い。
【0031】
複合体組成物を製造する方法としては、特に限定されないが、球状ナノ微粒子としてシリカ(シリカゾル)を用いる場合の例を以下に示す。
(1)有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)と樹脂組成物及びその他の配合物を混合し、必要に応じて、撹拌しながら減圧することにより有機溶媒を除去する方法、
(2)有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)と樹脂組成物及びその他の配合物を混合し、必要に応じて、脱溶媒した後、キャストし、さらに脱溶媒させる方法、
(3)粉末状のシリカ微粒子と樹脂組成物及びその他の配合物を混合し、分散能力の高い混合装置を用いて乾燥した分散させる方法、
などが挙げられる。
【0032】
分散能力が高い装置としては、例えば、特殊機化工業(株)製のフィルミックスや種々のビーズミル等が挙げられる。分散能力が高い装置を使用するときは、混合又は混練中に、反応が急速に進まないように、温度が上昇しすぎないよう注意する必要がある。
【0033】
複合体組成物を製造するときの、複合体組成物の温度は、30〜100℃に保つことが好ましく、脱溶媒スピードとのバランスで、さらに好ましくは30〜70℃、最も好ましくは、35〜60℃である。温度を上げすぎると、流動性が極端に低下したり、ゲル状になってしまい、シート化できなくなる。
【0034】
有機溶媒に分散したコロイダルシリカを用いる場合、この有機溶媒を複合体組成物中に残存させても良い。有機溶媒を含有させる場合、熱処理等の後処理工程を設け、最終的に複合シートから有機溶媒を脱離させればよい。有機溶媒の複合体組成物中における含有量は、架橋工程や熱処理等によって揮発成分を除去する工程で、発泡する、シートにうねりが発生する、着色するなどの問題を回避するためには、複合体組成物の10重量%以下が好ましく、さらに好ましくは、5重量%以下であり、最も好ましくは、3重量%以下である。
【0035】
複合体組成物を、熱、光等により硬化・架橋して透明複合シートが得られる。
シート化する方法としては、複合体組成物をキャストし、必要に応じ乾燥させる方法、表面平滑性を持つガラス板、プラスチック板、金属板等の間に所望のシート厚さが得られるようにスペーサーを挟み、複合体組成物を挟み込む方法等がある。後者を用いて、活性エネルギー線等で硬化させる場合は、少なくとも1方は、透明なガラス板、プラスチック板を使用する必要がある。
【0036】
複合体組成物を架橋させる方法としては、活性エネルギー線により硬化させる方法、熱をかけて熱重合させる方法等があり、これらを併用することもできる。使用する活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。紫外線を発生させるランプとしては、例えば、メタルハライドタイプ、高圧水銀灯ランプ等が挙げられる。
硬化反応の完結、揮発分の除去をする等の目的で、さらに高温での熱処理工程を併用することが好ましい。
【0037】
複合体組成物を紫外線等の活性エネルギー線により硬化させる場合は、複合体組成物中にラジカル、カチオン等を発生する光重合開始剤を含有させることが好ましい。その際に用いる光重合開始剤としては、例えばラジカル発生剤としてはベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが挙げられ、カチオン発生剤としては芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩等が挙げられる。これらの光重合開始剤は2種以上を併用しても良い。
【0038】
光重合開始剤の複合体組成物中における含有量は、適度に硬化させる量であればよく、複合体組成物中の官能基を含有する有機成分100重量部に対し、0.01〜2重量部が好ましく、さらに好ましくは、0.02〜1重量部であり、最も好ましくは、0.1〜0.5重量部である。光重合開始剤の添加量が多すぎると、重合が急激に進行し、複屈折の増大、着色、硬化時の割れ等の問題が発生する。また、少なすぎると組成物を十分に硬化させることができず、架橋後に型に付着して取れない等の問題が発生する。
【0039】
複合体組成物に熱をかけて熱重合させる場合は、必要に応じて、複合体組成物中に熱重合開始剤を含有させることができる。その際に用いる熱重合開始剤としては、ラジカル発生剤としてはベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)等が挙げられ、カチオン発生剤としては芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、アンモニウム塩、アルミニウムキレート、三フッ化ホウ素アミン錯体等が挙げられる。使用量は、複合体組成物中の官能基を含有する有機成分100重量部に対し、3重量部以下が好ましい。
【0040】
活性エネルギー線による硬化及び/又は熱重合による架橋後に高温で熱処理する場合は、その熱処理工程の中に、線膨張係数を低減する等の目的で、窒素雰囲気下又は真空状態で、200℃〜300℃、1〜24時間の熱処理工程を含ませることが好ましい。
【0041】
本発明の透明複合シートを、液晶表示素子用プラスチック基板、カラーフィルター用基板、有機EL表示素子用プラスチック基板、太陽電池基板、タッチパネル等として用いる場合は、シートの厚みが50〜2000μmであることが好ましく、より好ましくは50〜400μmである。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の内容を実施例により詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り以下の例に限定されるものではない。
【0043】
《実験例1》
(1)複合体組成物
化学式(2)において、X、R3、R4がすべて水素で、pが0である構造を持つノルボルナンジメチロールジアクリレート(TO−2111;東亞合成株式会社製)5重量部、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン1重量部、イソプロピルアルコール分散型コロイダルシリカ20重量部(シリカ含量30重量%、平均粒子径100nm、日産化学製)を配合し、40℃で撹拌しながら減圧下揮発分を除去した。その後、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバスペシャリティケミカル製のイルガキュア184)を0.03重量部添加して溶解させた後、さらに減圧下揮発分を除去し、複合体組成物を得た。複合体組成物中の溶剤含有量は10%未満であった。
複合体組成物の硬化アニール後の400℃、1時間加熱後の重量残さからシリカ体積分率は33vol%であった。
【0044】
(2)シート化
(1)で得られた複合体組成物を所定の温度(60〜80℃)のオーブンで加熱し、ガラス板上に作成した厚み0.4mmの枠内に注入し、上部よりガラス板をのせ枠内に複合体組成物を充填した。
(3)架橋
(2)で得られた、ガラス板に挟んだ複合体組成物に、両面から約500mJ/cm2のUV光を照射して硬化させ、ガラスからシートを剥離した。
(4)熱処理
(3)で得られたシートを、それぞれ、真空オーブン中で、約100℃で3時間加熱後、さらに約275℃で3時間加熱し、光学シートを得た。
【0045】
以上のようにして作製した透明複合シートについて、下記に示す評価方法により、各種特性を測定した。
【0046】
(a)ヘイズ及び全光線透過率
日本電色工業株式会社製NDH2000を用いて測定した。
(b)波長依存性の全光線透過率
分光光度計U3200(日立製作所製)で測定した。
(c)基板の厚さ
マイクロメータにより、フィルム中央部(リタデーション測定点)を測定した。
【0047】
(d)小角X線散乱測定
イメージングプレート検出器を備えた小角散乱測定装置で測定した。
【0048】
《実験例2》
イソプロピルアルコール分散型コロイダルシリカとして、シリカ含量30重量%、平均粒子径15nmの粒子を用いた他は、実験例1と同様にして透明複合体シートを作製した。
【0049】
《実験例3》
イソプロピルアルコール分散型コロイダルシリカとして、シリカ含量30重量%、平均粒子径45nmの粒子を用いた他は、実験例1と同様にして透明複合体シートを作製した。
【0050】
実験例の評価結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
実験例1のシートの小角X線散乱測定データを図1に示す。長周期構造の散乱ピークが高次まで明瞭に観察され、微粒子が充填配列されていることが示唆される。
【0053】
実験例1、3のシートの全光線透過率のデータを図2に示す。実験例1のシートは、青色波長領域の透過率が減少しており、青色波長が反射するために青色に発光した。

【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実験例1のシートの小角X線散乱測定のデータ
【図2】実験例1(平均粒径100nm)および実験例3(平均粒径15nm)のシートの光線透過率のデータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂と球状ナノ微粒子を含む透明複合シートであって、前記球状ナノ微粒子が充填配列構造をなしていることを特徴とする透明複合シート。
【請求項2】
前記球状ナノ粒子が光照射下で、特定の波長の光を選択し、構造発色するものである請求項1記載の透明複合シート。
【請求項3】
前記球状ナノ粒子の一次粒子の平均粒子径が15〜400nmである請求項1又は2記載の透明複合シート。
【請求項4】
前記球状ナノ粒子の含有量が0.1〜70体積%である請求項1〜3いずれか一項に記載の透明複合シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−111805(P2010−111805A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286572(P2008−286572)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】