説明

透明配線板及びこれを用いた入力装置

【課題】導電パターンが視認されにくい透明配線板及びこれを用いた入力装置を提供すること。
【解決手段】絶縁性を有する透明基体2、及び、導電性を有する金属繊維からなり透明基体2内に配設された網状部材、を備える透明導電膜12、22と、シート状をなし、少なくともその厚さ方向を向く一方の面に透明導電膜12、22が設けられた基材と、を備えた透明配線板であって、透明基体2には、網状部材が配置される導電部と、網状部材が部分的に除去されることにより、金属繊維4a同士が絶縁されるように配置された絶縁部Iと、が設けられ、絶縁部Iの金属繊維4aは、所定方向に沿うように延びていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル、プラズマディスプレイの電磁波シールド等、画像表示装置の前面に設けられる透明配線板及びこれを用いた入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルにおいては、液晶ディスプレイ等の画像表示装置の前面に、電極シートとして、透明な絶縁基板(基材)の表面に透明導電層(透明導電膜)を形成した透明配線板を有する入力装置が設置されている。
入力装置の透明配線板の透明導電層を構成する材料としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)やポリエチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸に代表されるπ共役系導電性高分子(有機導電体)が広く知られている。
【0003】
ところで、タッチパネル用入力装置に使用される透明配線板においては、回路パターンやアンテナアレイパターンを形成することがある。
パターンの形成方法としては、例えば、特許文献1には、透明基材の表面の全面に、塗工により透明導電層を形成した後、COレーザやQスイッチを利用したパルス幅100n秒程度のYAGレーザを照射して、絶縁にする部分の透明導電層をアブレーションにより除去する方法が開示されている。
特許文献2、3には、スクリーン印刷法やグラビア印刷法等の印刷により透明基材の表面に導電部を所定のパターンで形成する方法が開示されている。
特許文献4には、透明基材の表面の全面に、塗工により透明導電層を形成した後、プラズマエッチングにより、絶縁にする部分の透明導電層を除去する方法が開示されている。
特許文献5には、バインダ(樹脂)中に金属ナノワイヤ(金属極細繊維)を分散させ硬化してなる透明導電膜に、レーザを照射して絶縁化し、導電パターン(配線パターン)を形成する技術が開示されている。尚、透明導電膜から外部へ突出した金属ナノワイヤはレーザで除去することとしている。
特許文献6には、タッチパネル用ITO蒸着基板に対して紫外線レーザを使用し、ビーム径とレンズの焦点距離を制御し、集光エリア内の加工幅を制御することで10μm程度の微細なアブレーションにより微細パターンを形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−118381号公報
【特許文献2】特開2005−527048号公報
【特許文献3】特開2008−300063号公報
【特許文献4】特開2009−26639号公報
【特許文献5】特開2010−44968号公報
【特許文献6】特開2008−91116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、上記有機導電体は緑〜青に、ITOは薄い黄に着色している。そのため、特許文献1〜4の方法で絶縁基板上に導電パターンを形成すると、導電部は各導電膜を形成する導電体固有の有色、絶縁基板のみの絶縁部は無色になる。したがって、得られた透明配線板を入力装置に用いて画像表示装置の前面に設置した際には、絶縁部の幅(絶縁部の延在方向に垂直な幅寸法)を僅少にしなければ、導電パターンが視認されてしまうという問題が生じた。
【0006】
また、特許文献6においては、加工に高次高調波を利用した紫外線レーザを使用する必要があり、また、アブレーション領域の幅を制御する目的で、レーザビーム径やズームレンズ焦点距離を調整するため、市販のレーザ加工機では対応が難しいという問題がある。
【0007】
その一方、特許文献5においては、加工を複雑にし過ぎることなく、視認されにくい導電パターンを形成できるという利点を有している。
しかしながら、得られた透明配線板においては、バックライト等の透過光(透明配線板の裏面から照射される光線、図8を参照)や、透明配線板に対して外部から垂直に(つまり透明配線板の厚さ方向に)照射される光線(透明配線板の表面から照射される光線、図9を参照)に対しては、導電パターンが視認されにくいものの、例えば図10に示されるように、透明配線板の厚さ方向に対して傾斜する方向から光線が照射された場合に、導電パターンが視認される問題があった。尚、図10において、黒っぽく(暗く)見える右側領域が導電パターンの絶縁部、白っぽく(明るく)見える左側領域が導電パターンの導電部である。
【0008】
具体的には、例えばこの透明配線板がタッチパネルに用いられ、該パネルの厚さ方向が水平方向を向くように操作者に対面して使用される場合において、タッチパネルのバックライトが点灯していない状態では、天井照明等の鉛直方向からの光線(つまり立設されたタッチパネルに対して斜め上方から照射される光線)によって、タッチパネルの導電パターンが視認されやすかった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、導電パターンが視認されにくい透明配線板及びこれを用いた入力装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち本発明は、絶縁性を有する透明基体、及び、導電性を有する金属繊維からなり前記透明基体内に配設された網状部材、を備える透明導電膜と、シート状をなし、少なくともその厚さ方向を向く一方の面に前記透明導電膜が設けられた基材と、を備えた透明配線板であって、前記透明基体には、前記網状部材が配置される導電部と、前記網状部材が部分的に除去されることにより、前記金属繊維同士が絶縁されるように配置された絶縁部と、が設けられ、前記絶縁部の前記金属繊維は、所定方向に沿うように延びていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る透明配線板において、前記絶縁部の前記金属繊維が、前記透明導電膜に外部から照射される光線の入射方向に対して、垂直となるように延びていることとしてもよい。
【0012】
また、本発明に係る透明配線板において、前記金属繊維は、銀を主成分としていることとしてもよい。
【0013】
また、本発明に係る透明配線板において、前記絶縁部には、前記透明基体が溶けることなく、前記所定方向に延びる金属繊維以外の金属繊維が除去されて形成された空隙が配置されていることとしてもよい。
【0014】
また、本発明に係る入力装置は、前述した透明配線板を、厚さ方向に積層するように一対備えた入力部材と、前記透明導電膜に電気的に接続され、入力信号を検出する検出手段と、を備えたことを特徴としている。
【0015】
また、本発明に係る入力装置において、前記絶縁部の前記金属繊維が、水平方向に沿うように延びていることとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る透明配線板及びこれを用いた入力装置によれば、導電パターンが視認されにくい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る入力装置の入力部材を簡略化して示す側断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る入力装置に用いられる透明配線板の透明導電膜の網状部材(導電部)及びレーザ加工前の透明導電層を説明する部分拡大写真である。
【図3】本発明の一実施形態に係る入力装置に用いられる透明配線板の透明導電膜において、網状部材が部分的に除去されることにより形成された空隙(絶縁部)及び残存する金属極細繊維を説明する部分拡大写真である。
【図4】本発明の一実施形態に係る入力装置の透明配線板を製造する製造装置(レーザ加工機)を簡略化して示す側面図である。
【図5】図4の透明配線板及び製造装置の変形例を示す側面図である。
【図6】透明基体を溶かすことなく、網状部材の金属極細繊維を全て除去して空隙とした、本発明の参考例としての絶縁部を説明する部分拡大写真である。
【図7】本発明に係る入力装置の入力部材(透明導電膜及び透明配線板)を説明する斜視図である。
【図8】従来の透明配線板を用いたタッチパネルの裏面から、バックライトを照射した状態を示す部分拡大写真である。
【図9】従来の透明配線板を用いたタッチパネルの表面から、該パネルの厚さ方向に沿って入射するように外部光線を照射した状態を示す部分拡大写真である。
【図10】従来の透明配線板を用いたタッチパネルの表面から、該パネルの厚さ方向に対して傾斜して入射するように外部光線を照射した状態を示す部分拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の透明配線板(導電パターン形成基板)及びこれを用いた入力装置は、例えば、透明アンテナ、透明電磁波シールド、静電容量方式或いはメンブレン式の透明タッチパネルなどの透明入力装置のように、透明部分に配線パターンを形成する製品に適用することができる。また、本発明の透明配線板及びこれを用いた入力装置は、自動車のハンドル等に付随する静電容量入力装置など、3次元成型品、或いは3次元の加飾成型品の表面に設けられる静電容量センサ等に必要な電極を形成する目的で用いることができる。
尚、本実施形態でいう「透明」とは、50%以上の光線透過率を有するものを指す。
【0019】
図1及び図7は、本発明の一実施形態に係るメンブレン式タッチパネル(入力装置)用の入力部材1を示している。図1〜図3において、このメンブレン式タッチパネルは、透明配線板10、20を、厚さ方向に積層するように一対備えた入力部材1と、透明配線板10、20の透明導電膜12、22に電気的に接続され、入力信号を検出する検出手段(不図示)と、を備えている。検出手段としては、例えばインターフェイス回路を用いることができる。この入力装置は、抵抗膜式のタッチパネルである。
また、透明配線板10、20は、絶縁性を有する透明基体2、及び、導電性を有する金属極細繊維(金属繊維)4からなり透明基体2内に配設された網状部材3、を備える透明導電膜12、22と、シート状をなし、少なくともその厚さ方向を向く一方の面に透明導電膜12、22が設けられた絶縁基板(基材)11、21と、を備えている。
【0020】
入力部材1は、LCDなどの画像表示装置(不図示)の入力者側に設置されるものである。図7において、入力部材1は、例えば、行(X)方向に沿う電極100(透明導電膜12の後述する導電部Cに相当)が並列配置された透明配線板10と、この透明配線板10に対向するように画像表示装置側に配置され、行(X)方向に直交する列(Y)方向に沿う電極(透明導電膜22の導電部Cに相当)が並列配置された透明配線板20と、これらの間に設けられた透明なドットスペーサ30とを備えている。また、図7に符号101で示されるものは、例えばAgペーストをスクリーン印刷してなる引き出しパターンである。透明配線板10(20)において隣り合う電極100同士は、後述するレーザ加工により互いに絶縁されている。
そして、入力部材1は、操作者の入力操作により、透明配線板10の電極100と透明配線板20の電極とが直流的に接触・導通する構成とされている。
【0021】
図1において、透明配線板10は、透明な絶縁基板11と、絶縁基板11において少なくとも画像表示装置側を向く面に設けられた透明導電膜12と、を備えている。
透明配線板20は、透明な絶縁基板21と、絶縁基板21において少なくとも入力者側を向く面に設けられた透明導電膜22と、を備えている。
【0022】
絶縁基板11、21としては、絶縁性を有するとともに、表面に透明導電膜12、22を形成でき、かつ、後述するレーザ加工に対して、所定の照射条件において外観変化の生じにくいものを用いることが好ましい。具体的には、例えば、ガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)を代表とするポリエステル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)などの絶縁性材料が挙げられる。また、シート状をなす絶縁基板11、21とは、板状のもの、可撓性を有するフィルム状のもの、立体的(3次元)に成型された成型品等を含んでいる。
【0023】
この入力部材1を透明タッチパネルに使用する場合、絶縁基板11、21には、ガラス板やPETフィルム等が用いられる。また、入力部材1を、自動車のハンドル等に付随する静電容量入力装置など、静電容量センサ等に必要な電極として使用する場合、絶縁基板11、21には、ABS樹脂などからなる成型品、或いはこれにフィルムのラミネートや転写などで加飾層を設けた加飾成型品等が用いられる。
【0024】
例えば、本発明を、本実施形態のように、押圧により上下(前後)2枚の電極膜(透明導電膜)12、22を接触導通させるメンブレン入力などの透明タッチパネルとして利用する場合、入力者側の絶縁基板11としては、入力者側からの外力に対して可撓しやすいもの(例えば透明樹脂フィルム)を用いることが好ましく、画像表示装置側の絶縁基板21としては、ドットスペーサ30を介して透明配線板10を支持しやすい所定以上(例えば絶縁基板11と同等以上)の硬度を有するものを用いることが好ましい。また、このようなタッチパネルでは、隣接する電極100間に一定の電位差を設けて使用することが必須であり、銅や亜鉛、スズ、特に銀などの金属を用いた透明導電膜12、22では、マイグレーション防止のため、導電パターンを区分する絶縁部の幅(絶縁部の延在方向に垂直な幅寸法)を確保することが好ましい。
【0025】
また、一対の透明配線板10、20の透明導電膜12、22同士は、互いに接近した状態とされつつもドットスペーサ30により間隔をあけられて対向配置されている。そして、透明配線板10が入力者側から画像表示装置側へ向けて押圧された際に、該透明配線板10の絶縁基板11及び透明導電膜12が撓むとともに、該透明導電膜12が透明配線板20の透明導電膜22に接触可能とされている。この接触により、電気的信号が生じるように構成されている。すなわち、入力部材1は、入力者の入力操作によって、透明導電膜12、22の一部同士が直流的に接触可能とされている。
【0026】
また、図2に示すように、透明導電膜12、22は、絶縁性の基相である透明基体2と、導電性を有する複数の極細金属繊維4同士が互いに接触(連結)した状態で透明基体2内に固定されてなる網状部材3と、を備えている。透明基体2は、液状の状態において後述する網状部材3の素線(繊維)間に充填(含浸)可能とされた、例えば、熱、紫外線、電子線、放射線等により硬化する性質の硬化性樹脂からなる。
【0027】
また、網状部材3は、透明基体2内に分散されて互いに電気的に連結された複数の金属極細繊維4からなる。詳しくは、これら金属極細繊維4同士は、絶縁基板11、21の表面(透明導電膜12、22が形成される面)の面方向に沿って互いに異なる向きに不規則に延在しているとともに、その少なくとも一部以上が互いに重なり合う(接触し合う)程度に密集して配置されており、このような配置によって互いに電気的に連結(接続)されている。
【0028】
すなわち、網状部材3は、絶縁基板11、21の表面上において、面状(本実施形態では絶縁基板11、21の形状に対応する平面状。尚、絶縁基板の形状に対応して、平面状以外の曲面状等であってもよい)に拡がるように形成されているとともに、導電性の2次元ネットワークを構成しており、透明導電膜12、22の透明基体2内において網状部材3が配置された領域は、導電部Cとされている。また、網状部材3の金属極細繊維4は、透明基体2内に埋設される部分と、該透明基体2の表面から突出される部分とを有している。
【0029】
具体的に、このような金属極細繊維4としては、銅、白金、金、銀、ニッケル等からなる金属ナノワイヤや金属ナノチューブが挙げられる。本実施形態においては、金属極細繊維4として、銀を主成分とする金属ナノワイヤ(銀ナノワイヤ)が用いられている。金属極細繊維4は、例えばその直径が0.3〜100nm程度、長さが1μm〜100μm程度に形成されている。
【0030】
尚、網状部材3として、前述した金属極細繊維4以外の、シリコンナノワイヤやシリコンナノチューブ、金属酸化物ナノチューブ、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラファイトフィブリル等の繊維状部材(金属極細繊維)が用いられるとともに、これらが分散・連結されて構成されていても構わない。
【0031】
そして、図3に示されるように、透明導電膜12、22の透明基体2内において、網状部材3が部分的に除去されることにより、金属極細繊維4同士が絶縁されるように配置された領域が、絶縁部Iとされている。すなわち、透明基体2の絶縁部Iにおいて、レーザ加工等により除去されずに残存する金属極細繊維4aは、互いに離間されて所定方向に沿うように延びており、図示の例では、これら金属極細繊維4aは、水平方向(図3における左右方向)に配向するように延びている。
【0032】
また、絶縁部Iには、透明基体2が溶けることなく、前記所定方向に延びる金属極細繊維4a以外の金属極細繊維4が除去されて形成された空隙5が複数配置されている。詳しくは、これら空隙5は、網状部材3の金属極細繊維4が配置される領域にパルス状レーザを照射して、金属極細繊維4a以外の金属極細繊維4を蒸発・除去することにより形成されており、さらに該パルス状レーザを、直線偏光、円偏光及び楕円偏光のいずれかとすることで、前記所定方向に配向した金属極細繊維4aが、透明基体2内に確実に残存するよう調整することが可能である。尚、レーザ偏光については、直線偏光及び楕円偏光のいずれかであることがより好ましい。
【0033】
このパルス状レーザの発振器としては、パルス幅が5〜300n秒程度の、加工機として一般に広く使用されているYAGレーザ又はYVOレーザにおいて、円偏光を得るための1/4λの波長板を除外したものが使用できるほか、特に簡便には、市販の円偏光のレーザ加工機において、1/4λの波長板を挿入(配設)することも可能である。また、パルス幅30p秒未満の極短パルスレーザ、特に1p秒未満のフェムト秒レーザを用いることで、特にレーザ照射エリアが目立たない、外観に優れた透明配線板10、20を得ることができる。
【0034】
また、絶縁部Iの空隙5は、透明基体2の表面(露出された面)の面方向のうち、前記所定方向以外の方向に延在又は点在する長穴状(長丸穴状)又は穴状(丸穴状)をそれぞれなしており、前記表面に開口する部分を有して形成されている。詳しくは、空隙5は、蒸発・除去された金属極細繊維4の配置されていた位置に対応するように配置されているとともに、該金属極細繊維4の直径と略同等の直径(内径)を有し、該金属極細繊維4の長さ以下に形成されている。
【0035】
より詳しくは、1つの金属極細繊維4(ここで言う金属極細繊維4は、金属極細繊維4a以外の金属極細繊維4を指す)が完全に蒸発・除去されるか、少なくとも一部が蒸発・除去されることにより、該金属極細繊維4をその延在する方向に分割(分断)するようにして、複数の空隙5が互いに間隔をあけて形成されている。すなわち、前記金属極細繊維4の相当位置に対応して、互いに離間する複数の空隙5が、全体として線状をなすように延在又は点在して形成されている。尚、前記1つの金属極細繊維4の相当位置に対応して、空隙5が線状をなすように1つだけ形成されていてもよい。
【0036】
絶縁部Iにおいては、これら空隙5が形成されることにより、前記所定方向を向く金属極細繊維4a以外の導体である金属極細繊維4が除去されているとともに、前記導電性の2次元ネットワークが部分的に除去されて(消失して)いる。
このように、絶縁部Iにおいては、透明基体2から金属極細繊維4a以外の金属極細繊維4が除去されている一方、金属極細繊維4a同士は互いに絶縁された状態で残存している。
【0037】
絶縁部Iの金属極細繊維4aが延在する前記所定方向は、例えば、透明導電膜12、22の面中心を通る仮想の中心線(図3においては、面中心を通る仮想の水平線)に対して、±30°の範囲内である。すなわち、前記所定方向が±30°の範囲内(前記仮想の中心線を中心とした振り幅(面中心回りの回転角度)が片側30°で、計60°の範囲内)である場合に、絶縁部Iの絶縁性を確保できる。一方、前記所定方向が±30°の範囲外とされた場合には、金属極細繊維4a同士が接触する可能性が高くなり、絶縁部Iの絶縁性が確保しにくくなるおそれがある。尚、前記所定方向は、±20°が好ましく、±10°がより望ましい。
【0038】
また、絶縁部Iの金属極細繊維4aは、透明導電膜12、22に外部から照射される光線の入射方向に対して、垂直となるように延びている。具体的に、透明配線板10、20が入力装置の入力部材1に用いられた本実施形態では、これら透明配線板10、20の絶縁部Iの金属極細繊維4aは、室内の天井照明から照射される鉛直方向からの光線に対して垂直となるように、略水平方向に沿って延びている。
【0039】
次に、本実施形態に係る入力装置の透明配線板を製造する製造装置及び製造方法について説明する。
本実施形態で説明する透明配線板の製造方法では、絶縁基板11(21)の一方の面に形成された透明導電層(導電パターン形成前の透明導電膜)aに極短パルスのレーザ光Lを所定のパターンで照射する方法を用いている。
尚、以下の説明において、レーザ加工前における絶縁基板11(21)と該絶縁基板11(21)の一方の面に形成された透明導電層aとを有する積層体のことを、透明配線板用積層体Aという。
【0040】
まず、本実施形態の透明配線板の製造方法で使用する製造装置40について説明する。図4に示すように、この製造装置40は、レーザ光Lを発生させるレーザ光発生手段41と、レーザ光Lを集光する集光手段である凸レンズ等の集光レンズ42と、透明配線板用積層体Aが載置されるステージ43と、を備えている。製造装置40のレーザ光Lは、例えば、共振器内に偏光子を配設して特定方向の振動を通すことにより偏光させられているとともに、これを分解した垂直偏波の位相と水平偏波の位相とを、1/4λずつ相対的にずらすことにより、直線偏光及び円偏光のいずれかに設定可能となっている。尚、これら垂直偏波及び水平偏波の位相差を、1/4λの整数倍以外に設定することにより、楕円偏光にも設定可能である。
【0041】
この製造装置40におけるレーザ光発生手段41としては、波長2μm未満でパルス幅が200n秒未満のレーザ光(可視光または赤外線のレーザ光)を発生させるものが使用される。また、容易に利用できる点では、レーザ光Lのパルス幅は1〜100n秒であることが好ましい。
【0042】
集光レンズ42は、透明導電層aと集光レンズ42との間にレーザ光Lの焦点Fが位置するように配置される。これにより、絶縁基板11(21)及びステージ43に当たるレーザ光Lのスポット径が、透明導電層aに当たるレーザ光Lのスポット径より大きくなり、絶縁基板11(21)及びステージ43に当たるレーザ光Lのエネルギ密度が小さくなるため、絶縁基板11(21)及びステージ43の損傷を防止できるとともに、ステージ43の平面度などに起因する透明導電層aの厚み方向の位置ずれに対し、照射エネルギ密度の変化を小さく抑えることができる。
【0043】
集光レンズ42としては、低い開口数(NA<0.3)のものが好ましい。具体的には、集光レンズ42の開口数がNA<0.1とされることにより、レーザ光Lの照射条件設定が容易となり、特にレーザ光Lの焦点Fが透明導電層aと集光レンズ42との間に位置する場合の該焦点Fにおける空気のプラズマ化に伴うエネルギ損失とレーザ光Lの拡散を防止することができる。
【0044】
さらに、透明導電層aが、例えば金属極細繊維4からなる網状部材3の繊維(素線)間に樹脂からなる透明基体2を充填(含浸)して形成されているとともに、透明樹脂フィルムからなる絶縁基板11(21)上に設けられている場合、前述の設定によって、透明導電層aの透明基体2内に埋設された金属極細繊維4a以外の金属極細繊維4を透明基体2の表面から噴出させて確実に除去することができる。従って、所望の絶縁部Iの形状に対応して空隙5が確実に形成されることになり、絶縁化処理が確実かつ容易に実現できる。
【0045】
また、レーザ光Lを透明導電層a上に照射した照射スポットが、点状ではなく面状に形成されるため、透明導電層aを加工しつつも絶縁基板11(21)に影響を与えないような照射エネルギ密度の制御が、従来の方法に比較して容易となる。さらに、透明導電層aに対して線幅の太い絶縁パターンを一括して描画することが可能になり、所謂塗りつぶし加工が容易になるとともに、前記絶縁パターンの幅を大きく取ることができることから、絶縁部Iの絶縁性が向上する。
【0046】
また、ステージ43は、水平方向に2次元的に移動可能になっている。ステージ43は、少なくとも上面側が透明な部材または光線吸収性を有する部材で構成されていることが好ましい。
ステージ43は、絶縁基板11(21)が透明でレーザ光Lの出力が1Wを超える場合、ナイロン系の樹脂材料若しくはシリコーンゴム系の高分子材料を用いることが好ましい。
【0047】
次に、前述した製造装置40を用いた入力装置の透明配線板の製造方法について説明する。
まず、ステージ43の上面に透明配線板用積層体Aを、透明導電層aが絶縁基板11(21)より上に配置されるように載置する。
【0048】
次いで、レーザ光発生手段41よりレーザ光Lを出射させ、レーザ光Lを集光レンズ42により集光する。その集光したレーザ光Lの、焦点Fを過ぎてスポット径が広がった部分を透明導電層aに照射する。その際、ステージ43を、レーザ光Lの照射が所定のパターンになるように移動させる。
【0049】
透明導電層aに照射するレーザ光Lのエネルギ密度及び単位面積あたりの照射エネルギは、レーザのパルス幅により異なるが、直線描画を行った場合の描画幅が30μmの場合において、1パルスあたり3〜300μJ、好ましくは10〜100μJ、望ましくは18〜70μJが好適に用いられる。
すなわち、1パルスあたりのエネルギが上記数値範囲よりも小さな値に設定された場合、絶縁部Iの絶縁が不十分になるおそれがある。また、上記数値範囲よりも大きな値に設定された場合、加工痕が目立つようになり、透明タッチパネルや透明電磁波シールドなどの用途では不適当となる。
尚、これらの値(上記エネルギ量)は、集光系(集光レンズ42)を通った後の加工エリアにおけるレーザビームの出力値であり、集光点(焦点F)近傍の測定が困難であれば、集光系を出た直後のレーザ光Lのビーム径が十分に大きい箇所で測定するか、それも困難であれば、集光点を経てビームが適当に拡散した箇所で測定することが可能である。
【0050】
また、図4に符号Dで示されるものは、透明導電層aの表面(上面)と焦点Fとの距離である。距離Dは、集光レンズ42の焦点距離FLの−3%〜3%の範囲内に設定される。好ましくは、距離Dは、焦点距離FLの0.5%〜2%の範囲内に設定される。さらに望ましくは、距離Dは、焦点距離FLの1.5%〜2%の範囲内に設定される。距離Dが上記数値範囲に設定されることにより、絶縁部Iにおける金属極細繊維4の除去(空隙5の形成)が確実に行えるとともに電気的に高い信頼性を有する絶縁パターン(導電パターン)を形成でき、かつ、絶縁基板11(21)の損傷に起因する加工痕を確実に防止できる。
【0051】
また、精度の高い導電パターンを形成する点では、透明導電層aの同一部分にレーザ光Lを断続的に複数回照射することが好ましい。具体的には、断続的に3〜500回照射することが好ましく、20〜200回照射することがより好ましい。3回以上の照射であれば、より確実に絶縁化でき、500回以下であれば、レーザ光Lが照射された透明基体2部分の溶解又は蒸発による除去を防止できる。
【0052】
このようにして、透明導電層aにパターニングが施され、導電部Cと絶縁部Iとからなる導電パターンを備えた透明導電膜12(22)が形成されるとともに、透明配線板用積層体Aが、透明配線板10(20)とされる。
【0053】
尚、上記説明においては、XYステージなどの移動式ステージ43に透明配線板用積層体Aを載せてパターニングを行うこととしたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、透明配線板用積層体Aを固定状態とし、集光系部材を相対的に移動させる方法、ガルバノミラー等を用いてレーザ光Lを走査しスキャンする方法、又は、上記したもの同士を組み合わせてパターニングを行うことが可能である。
レーザ光Lが円偏光とされ、ガルバノミラーを使用したレーザ加工機で透明配線板10(20)を製造する場合、ガルバノミラーの後(レーザ光Lの下流側)に1/4λ位相板を設置する。これにより、既存のレーザ加工機を簡単に本用途に使用することが可能である。
【0054】
上記製造方法に使用される透明配線板用積層体Aは、以下に示すものである。
透明配線板用積層体Aの透明導電層aのうち、網状部材3を構成する無機導電体としては、銀、金、ニッケルなどの金属ナノワイヤが挙げられる。また、透明導電層aのうち、透明基体2を構成する絶縁体としては、透明な熱可塑性樹脂(ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、フッ化ビニリデン)、熱や紫外線や電子線や放射線で硬化する透明な硬化性樹脂(メラミンアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル変性シリケートなどのシリコーン樹脂)が挙げられる。
【0055】
また、図5は本実施形態の変形例であり、図示の例では、透明配線板用積層体Aにおける絶縁基板11(21)の上下両面に、透明導電層aが一対設けられている。この場合、集光レンズ42として焦点距離FLが50mm以上で開口数が0.2未満のものを使用すると、レーザ光Lの広がりを小さくできる。そのため、レンズの位置調整が容易になるとともに、絶縁基板11(21)の両面におけるスポット径の差が小さくなり、両方の透明導電層aに当たるエネルギ密度が略同等になるため、両面の透明導電層aに同一の絶縁パターンを一括して形成させることができる。
また、絶縁基板11(21)の両面に形成された透明導電層aのうち、片面側の透明導電層aのみを絶縁化する場合には、集光レンズ42として開口数が0.5より大きいものを使用することとしてもよい。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係る透明配線板10(20)及びこれを用いた入力装置によれば、透明導電膜12(22)の透明基体2において、導電性を有する網状部材3の配置領域が導電部Cとされ、網状部材3が部分的に除去されることにより空隙5が形成されるとともに、所定方向に配向されて残存する金属極細繊維4a同士が互いに絶縁して配置された領域が絶縁部Iとされている。すなわち、導電部Cにおいては、金属極細繊維4同士が連結されてなる網状部材3により導電性が確保されており、絶縁部Iにおいては、網状部材3が部分的に除去されて空隙5が形成されることにより、所定方向に沿うように延びる金属極細繊維4aが形成されつつも、これら金属極細繊維4a同士の電気的な絶縁状態が確実に得られるようになっている。
【0057】
そして、本発明の発明者らは、透明配線板及び入力装置について鋭意研究を重ねた結果、透明配線板10、20の絶縁部Iにおいて所定方向に延びる金属極細繊維4aを積極的に残存させることにより、導電パターンを視認しにくくすることができるという知見を得るに至った。
【0058】
すなわち、本実施形態で説明したように、例えば透明配線板10、20がタッチパネル(入力装置)に用いられ、該パネルの厚さ方向が水平方向を向くように操作者に対面して使用される場合においては、図6(参考例)に示されるように、絶縁部Iの網状部材3が全て除去され、これに伴い金属極細繊維4が空隙5に全て置き換わるように除去された場合は、タッチパネルのバックライトが点灯していない状態では、天井照明等の鉛直方向からの光線(つまり立設されたタッチパネルに対して斜め上方から照射する光線)によって、タッチパネルの導電パターンが視認されることがあった。これは、タッチパネルに斜め上方から照射される光線に対して、導電部Cでは金属極細繊維4が操作者側に向けて光線を反射する一方、絶縁部Iでは金属極細繊維4が存在せず空隙5のみのため、操作者側に向けて光線を反射できないことによるもの(或いはヘイズ値の違いによるもの)と考えられる。
一方、図3に示す本実施形態のように、絶縁部Iに所定方向(本実施形態では水平方向)に延在する金属極細繊維4aを残存させた場合は、タッチパネルに対して斜め上方(本実施形態では鉛直方向)から照射される光線に対して、これら金属極細繊維4aが導電部Cの金属極細繊維4同様に操作者側に向けて光線を反射する(或いはヘイズ値の差異が小さくなる)ので、絶縁部Iと導電部Cとの見かけ上の差異がなくなって、導電パターンが視認されにくくなる。しかも、絶縁部Iの金属極細繊維4a同士は、所定方向に沿うように配向して延びているから、前述の効果を奏しつつも互いに接触しにくくされており、これにより該絶縁部Iにおける絶縁性が確保される。
【0059】
このように、本実施形態の透明配線板10、20及びこれを用いた入力装置によれば、導電パターンが視認されにくく、外観に優れており、かつ、導電部C及び絶縁部Iの電気的特性(性能)が安定して確保されて、製品としての信頼性が高められる。
【0060】
また、絶縁部Iの金属極細繊維4aが、透明導電膜12、22に外部から照射される光線の入射方向に対して垂直となるように延びているので、下記の効果を奏する。
すなわち、室内の天井照明下で使用される場合など、タッチパネルの透明配線板10、20に対して一定の方向から外部光線が入射することが明らかな場合には、この外部光線の入射方向に対して垂直となるように絶縁部Iの金属極細繊維4aを延在させることによって、前述の効果をより安定的に得ることができる。
【0061】
また、網状部材3は、透明基体2内に分散されて互いに電気的に連結された金属極細繊維4からなるので、該網状部材3は、市販の金属ナノワイヤや金属ナノチューブ等の金属極細繊維4を用いて比較的容易に形成できる。
【0062】
さらに、本実施形態のように、金属極細繊維4に銀を主成分としたものを用いた場合、該金属極細繊維4を比較的容易に入手して網状部材3として用いることができる。また、絶縁部Iの網状部材3(金属極細繊維4)をレーザ加工により部分的に除去する際に、市販の一般的なレーザ加工機で対応可能である。また、銀を主成分とする金属極細繊維4は、光線透過率が高く、かつ、表面抵抗率が低い無色透明の導電パターンを形成できることから、より好ましい。
【0063】
また、レーザ加工機(製造装置)40として、パルス幅1p秒未満の極短パルスレーザ(フェムト秒レーザ)を用いた場合には、レーザ加工後の透明配線板10(20)における導電パターン(絶縁パターン)を確実に目立たなくすることができるので、より望ましい。
【0064】
また、絶縁部Iにおいては、透明基体2が溶けることなく、所定方向に延びる金属極細繊維4a以外の金属極細繊維4が除去されて空隙5が形成されている。すなわち、除去された金属極細繊維4に置き換わるように空隙5が形成されることによって、導電部Cと絶縁部Iとは、互いに色調や透明性が近似することになり、肉眼等によっては互いに判別(視認)されなくなっている。よって、絶縁部Iの幅を大きく形成しても配線パターンが視認されるようなことがない。
【0065】
尚、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、前述の実施形態では、絶縁基板11、21がともに透明であることとしたが、これら絶縁基板11、21のいずれか又は両方にある程度の透明性を有した着色が施されていても構わない。
【0066】
また、透明配線板10、20には、粘着、反射防止、ハードコート及びドットスペーサなどの機能層を任意で付加することとしてもよい。
特に、YAGレーザやYVOレーザの基本波など波長が1000nm近辺のレーザを用いるとともに、上記機能層として、アクリル系高分子素材を使用する場合には、外観特性の観点から、レーザ照射後に機能層を設けることが好ましい。
【0067】
また、前述の実施形態では、絶縁部Iの金属極細繊維4a以外の金属極細繊維4を除去することにより空隙5を形成することとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、絶縁部Iにおいて金属極細繊維4a以外の金属極細繊維4を除去するとともに、該金属極細繊維4に対応する透明基体2部分を溶かすことにより、該絶縁部Iに空隙5を形成することなく金属極細繊維4aのみを残存させることとしても構わない。ただし、絶縁部Iに空隙5を形成することによって、前述した効果が得られることから好ましい。
【0068】
また、前述の実施形態では、タッチパネルに照射される外部光線の入射方向が、鉛直方向のうち天井照明等による上方からのものとしたが、これに限定されるものではなく、鉛直方向のうちアッパーライト等による下方からのものであってもよい。また、外部光線の入射方向は、鉛直方向以外の例えば水平方向からであってもよく、この場合、絶縁部Iの金属極細繊維4aの延在方向は鉛直方向に沿うように設定される。
【0069】
また、前述の実施形態では、透明配線板10、20を抵抗膜式のタッチパネルに用いることとしたが、これに限定されるものではなく、該透明配線板10、20を静電容量式のタッチパネルに用いてもよい。
【0070】
その他、本発明の前述の実施形態等で説明した構成要素を、適宜組み合わせても構わない。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前述の構成要素を周知の構成要素に置き換えることも可能である。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0072】
[実施例1]
厚さ100μmの透明なポリエステル(PET)フィルム(絶縁基板11、21)に、Cambrios社のOhm(商品名)インク(金属極細繊維4)を塗布乾燥後、紫外線硬化性のポリエステル樹脂インク(透明基体2)を上塗りして、乾燥・紫外線処理を施すことにより、PETフィルム上に線径50nm程度、長さ15μm程度の銀繊維(金属極細繊維4)からなる導電性の2次元ネットワーク(網状部材3)を有する耐摩擦性の透明導電層aを形成した(図2を参照)。
【0073】
この銀ナノワイヤ導電フィルム(透明配線板10、20)の透明導電層aの表面抵抗は、230Ω/□、光線透過率は95%であった。
次いで、この銀ナノワイヤ導電フィルムを、長さ80mm、幅50mmの長方形に切断加工し、銀ナノワイヤ導電フィルム試験片とした。
【0074】
波長730nm、パルス幅130f秒、繰り返し周波数1kHz、ビーム径5mmの直線偏光のフェムト秒レーザ(製造装置40)を用い、焦点距離FL=100mmの集光レンズ42と、照射領域のサイズが50×50mmのガルバノミラーとを設け、ストローク200×200mmのXYステージに設けた載置台(厚さ5mmのナイロン板)上に前記銀ナノワイヤ導電フィルムの試験片を配置した(図4を参照)。この試験片における透明導電層aの表面から集光レンズ42側に向かって1.5mm離間した位置にレーザ光Lの焦点Fが設定されるように調整した後、集光点を1mm/秒で試験片の幅方向に横断させるように移動して、直線描画(絶縁パターンの形成)を行った。
この時、集光点(焦点F)よりレンズ側70mmの位置における出力は10mWであった。
【0075】
次いで、この試験片における照射面(レーザ照射領域)を走査型電子顕微鏡で観察し、絶縁部Iに残存する銀ナノワイヤ(金属極細繊維4a)が配向する方向(所定方向)を確認するとともに、その方向を載置台に記入した。
【0076】
次いで、絶縁部Iに残存する銀ナノワイヤ4aの配向方向(平均的な配向の向き)がタッチパネルのX方向と一致するように、銀ナノワイヤ導電フィルム(150×150mmの透明配線板)を載置台に載せ、さらに照射パターンを回転させることで、残存する銀ナノワイヤ4aの前記配向方向と入力装置のX方向とのなす角度が20度以内になるように調整した。この状態で、前述したレーザ照射条件により照射を行い、X側、Y側の透明配線板10、20を得た。
そして、これら透明配線板10、20同士を透明な両面粘着フィルムで貼り合わせ、静電容量式のタッチパネルを製造した。
【0077】
このタッチパネルに対して、パネル厚さ方向に対して30度傾斜した角度から白色LED懐中電灯の外部光線を照射したところ、X方向やXY方向(X方向及びY方向の中間を通る斜め方向)からの照射では配線パターンが視認されたものの、Y方向からの照射に対して配線パターンは視認されなかった。すなわち、天井照明など室内に据え付けられた一定の方向(Y方向)からの外部光線に対しては、タッチパネルの配線パターンが視認されにくいことが確認できた。
【0078】
[実施例2]
円偏光の市販のレーザ加工機(波長1064nm、出力12W、パルス幅20n秒、繰り返し周波数100kHz、ビーム径6.7mmのYVOレーザである製造装置40)を用い、焦点距離FL=300mmの集光レンズ42とガルバノミラーを使用して、ジュラコン(登録商標)上に前記銀ナノワイヤ導電フィルムの試験片を配置した。この試験片における透明導電層aの表面から集光レンズ42側に向かって1mm離間した位置にレーザ光Lの焦点Fが設定されるように調整した後、集光点を100mm/秒で試験片の幅方向に横断させるように移動して、直線描画を行った。それ以外は、実施例1と同様の条件として、タッチパネルを製造した。
【0079】
このタッチパネルに対して、パネル厚さ方向に対して30度傾斜した角度から白色LED懐中電灯の外部光線を照射したところ、実施例1と同様の結果が得られた。
【0080】
[比較例]
波長10.6μm、出力15Wの炭酸ガスレーザ(連続発振)を用い、焦点距離FL=300mmの集光レンズ42とガルバノミラーを使用して、試験片における透明導電層aの表面から集光レンズ42側に向かって3mm離間した位置にレーザ光Lの焦点Fが設定されるように調整した後、集光点を300mm/秒で試験片の幅方向に横断させるように移動して、直線描画を行った。それ以外は、実施例1と同様の条件として、タッチパネルを製造した。
【0081】
このタッチパネルに対して、パネル厚さ方向に対して30度傾斜した角度から白色LED懐中電灯の外部光線を照射したところ、X方向、Y方向、XY方向からの全ての照射において配線パターンが視認された。
特に、この比較例においては、各透明配線板10、20単体としてよりも、両面粘着フィルムによりこれら透明配線板10、20同士が互いに貼り合わされ、タッチパネルとなったときに、配線パターンがより顕著に視認されやすいことがわかった。
尚、このタッチパネルのレーザ照射領域を走査型電子顕微鏡で観察したところ、銀ナノワイヤ4が全て除去されているとともに透明基体2が溶けていて、空隙5は存在しなかった。
【符号の説明】
【0082】
1 入力部材
2 透明基体
3 網状部材
4 金属極細繊維(金属繊維)
4a 絶縁部において所定方向に延びる金属極細繊維(金属繊維)
5 空隙
10、20 透明配線板
11、21 絶縁基板(基材)
12、22 透明導電膜
C 導電部
I 絶縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を有する透明基体、及び、導電性を有する金属繊維からなり前記透明基体内に配設された網状部材、を備える透明導電膜と、
シート状をなし、少なくともその厚さ方向を向く一方の面に前記透明導電膜が設けられた基材と、を備えた透明配線板であって、
前記透明基体には、
前記網状部材が配置される導電部と、
前記網状部材が部分的に除去されることにより、前記金属繊維同士が絶縁されるように配置された絶縁部と、が設けられ、
前記絶縁部の前記金属繊維は、所定方向に沿うように延びていることを特徴とする透明配線板。
【請求項2】
請求項1に記載の透明配線板であって、
前記絶縁部の前記金属繊維が、前記透明導電膜に外部から照射される光線の入射方向に対して、垂直となるように延びていることを特徴とする透明配線板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の透明配線板であって、
前記金属繊維は、銀を主成分としていることを特徴とする透明配線板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の透明配線板であって、
前記絶縁部には、前記透明基体が溶けることなく、前記所定方向に延びる金属繊維以外の金属繊維が除去されて形成された空隙が配置されていることを特徴とする透明配線板。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の透明配線板を、厚さ方向に積層するように一対備えた入力部材と、
前記透明導電膜に電気的に接続され、入力信号を検出する検出手段と、を備えたことを特徴とする入力装置。
【請求項6】
請求項5に記載の入力装置であって、
前記絶縁部の前記金属繊維が、水平方向に沿うように延びていることを特徴とする入力装置。

【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−97996(P2013−97996A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239437(P2011−239437)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】