説明

透明電極の観察装置および透明電極の観察方法

【課題】石英ガラスなどのガラスに較べて紫外線透過率の低い樹脂シートの表面に形成した透明電極の検査に必要な測定精度を得ることのできる透明電極の観察装置を提供すること。
【解決手段】樹脂シートFの表面に形成された透明電極Pの光透過率が50%以下となる200〜300nmの波長帯域の紫外線光を含む光を照射する光源1と、光源1から照射された紫外線光によって励起され、蛍光発光した樹脂シートFの光の強度が0.1以上となる400〜500nmの波長帯域の光を透過する光学フィルタ2と、光学フィルタ2を透過した可視域の波長に感度を有する画像を撮影するカメラ3とを備えたので、透明電極Pが形成された部位は暗くなり、それ以外の部位は明るく撮影される。これにより、可視光では視認が困難な透明電極Pの形状を特定でき、透明電極Pの検査に必要な測定精度を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明電極の観察装置および透明電極の観察方法に関するもので、特に、樹脂シートの表面に形成された透明電極の観察に好適な透明電極の観察装置および透明電極の観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石英ガラスなどのガラスの表面に形成された透明電極は、ガラスを境にして透明電極側に配置された、紫外線光を照射する光源と、ガラスを境にして透明電極と反対側に配置された、紫外線光の強度を計測する計測器とにより、観察される。これは、石英ガラスなどのガラスが紫外線光を透過する一方、酸化インジウムスズ(以下、「ITO」という)などで形成された透明電極が紫外線光を反射または吸収することを利用したもので、ガラスを透過した紫外線光の強度と透明電極を透過した紫外線光の強度とが接近する場合に透明電極にピンホールなどの欠点があると判断する(たとえば、特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−282441号公報
【特許文献2】特開2010−175433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、石英ガラスなどのガラスに代えて樹脂シートの表面に透明電極を形成した場合には、樹脂シートを透過した紫外線光の強度と透明電極を透過した紫外線光の強度との間に明確な差が現れないので、透明電極の検査に必要な測定精度を得ることができない。これは、樹脂シートが石英ガラスなどのガラスに較べて紫外線透過率が低いことによる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、石英ガラスなどのガラスに較べて紫外線透過率の低い樹脂シートの表面に形成した透明電極の検査に必要な測定精度を得ることのできる透明電極の観察装置および透明電極の観察方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、樹脂シートの表面に形成された透明電極の光透過率が50%以下となる波長帯域の紫外線光を少なくとも含む光を照射する光照射手段と、前記光照射手段から照射された紫外線光によって励起され、蛍光発光した前記樹脂シートを観察する観察手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、上記発明において、前記透明電極には、透明電極と同一の材料で形成されたマークが含まれることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記発明において、前記観察手段は、前記蛍光発光した前記樹脂シートの光の強度を測定する測定手段と、前記測定手段が測定した光の強度に基づいて、前記透明電極の形状を計測する計測手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、前記観察手段は、365nm以上の波長帯域の光のみを透過する光学フィルタ手段と、前記光学フィルタ手段を透過した可視域の波長に感度を有する画像を撮影する撮像手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、前記撮像手段が撮影した画像に基づいて、前記透明電極の形状欠点を検査する検査手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、前記光照射手段は、予め定めた波長帯域の紫外線光のみを透過する光学フィルタを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、前記透明電極の透過率が50%以下となる波長帯域の紫外線光が波長332nm以下の紫外線光であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、前記撮像手段が撮像した画像に基づいて、透明電極を位置合わせするアライメント手段を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、樹脂シートの表面に形成された透明電極の光透過率が50%以下となる波長帯域の紫外線光を含む光を前記樹脂シートの透明電極が形成された側から照射し、照射した紫外線光によって励起され、蛍光発光した前記樹脂シートを観察することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記発明において、前記透明電極には、透明電極と同一の材料で形成されたマークが含まれることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記発明において、蛍光発光した前記樹脂シートの光の強度を測定し、測定した光の強度に基づいて、前記透明電極の形状を計測することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、上記発明において、蛍光発光した前記樹脂シートの光のうち、365nm以上の波長帯域の光のみを透過させ、透過した可視域の波長に感度を有する画像を撮影することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、上記発明において、紫外線光を予め定めた波長帯域の紫外線光のみを透過させる光学フィルタを透過させることにより、前記透明電極の光透過率が50%以下となる波長帯域の紫外線光とすることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、上記発明において、前記透明電極が酸化インジウムスズの薄膜であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、上記発明において、前記透明電極の透過率が50%以下となる波長帯域の紫外線光が波長332nm以下の紫外線光であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、上記発明において、前記樹脂シートが透明なプラスチックシートであることを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、上記発明において、前記透明なプラスチックシートがポリエチレンテレフタレートを主成分とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかる透明電極の観察装置は、樹脂シートの表面に形成された透明電極の光透過率が50%以下となる波長帯域の紫外線光を含む光を照射し、蛍光発光した樹脂シートを観察するので、透明電極が形成された部位は暗くなり、それ以外の部位は明るくなる。これにより、可視光では視認が困難な透明電極の形状を特定でき、透明電極の検査に必要な測定精度を得ることができる。
【0024】
本発明にかかる透明電極の観察方法は、樹脂シートの表面に形成された透明電極の光透過率が50%以下となる波長帯域の紫外線光を含む光を樹脂シートの透明電極が形成された側から照射し、蛍光発光した樹脂シートを観察するので、透明電極が形成された部位は暗くなり、それ以外の部位は明るくなる。これにより、可視光では視認が困難な透明電極の形状を特定でき、透明電極の検査に必要な測定精度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の実施の形態で観察する透明電極が形成された樹脂シートを示す模式図である。
【図2】図2は、図1に示した透明電極の分光透過率を示す図である。
【図3】図3は、図1に示した樹脂シートの蛍光スペクトルを示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態1である透明電極の観察装置を示す概念図である。
【図5】図5は、図4に示した透明電極の観察装置の制御構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、図4および図5に示した透明電極の観察装置で得られる画像を示す図である。
【図7】図7は、図6に示した画像を二値化したものを示す図である。
【図8】図8は、透明電極の欠点を抽出する手法を説明するための説明図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態2である透明電極の観察装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明にかかる透明電極の観察装置および透明電極の観察方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態で観察する透明電極が形成された樹脂シートを示す模式図である。本発明の実施の形態で観察する透明電極Pが形成された樹脂シートFは、合成樹脂による有機系材料のシートであって、紫外線光を照射した場合に照射した紫外線光によって励起され、蛍光発光する組成を有するものである。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)の樹脂シートのほか、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、環状ポリオレフィン(COP)、透明ポリイミドなどの樹脂シートを用いることができるが、本実施の形態では、ポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分とする樹脂シート(以下、「PETシート」という)を用いることにする。なお、樹脂シートFには、樹脂シートFの片面または両面に、ウェットコーティングやドライコーティングしたものが含まれる。具体的には、接着性やブロッキング性、透明性などを向上させるため、表面または裏面に、アクリル系やポリエステル系、ウレタン系などのコーティング材、または、純金属、各種合金などの金属材料、もしくは、酸化物などの化合物材料による機能性膜が付与されたものが含まれる。
【0028】
一方、本発明の実施の形態で観察する透明電極Pは、樹脂シートFの表面に形成された透明な電極であって、酸化インジウムスズ(ITO)のほか、酸化亜鉛(ZnO)、高分子膜などで形成することができるが、本実施の形態では、ITOの薄膜で形成するものとする。
【0029】
図2は、図1に示した透明電極の分光透過率、具体的には、ITOの分光透過率を示す図であって、光の波長(Wavelength)(nm)を横軸に、光透過率(T)(%)を縦軸に示したものである。図2に示すように、ITOの分光透過率において、332nm以下の波長帯域の光は、光透過率が50%以下となり、307nm以下の波長帯域の光は、光透過率が1%以下となる。
【0030】
図3は、図1に示した樹脂シートの蛍光スペクトル、具体的には、波長254nmの紫外線光を照射した場合のPETシートの蛍光スペクトルを示す図であって、光の波長(Wavelength)(nm)を横軸に、光の強度(intensity)を縦軸に示したものである。図3に示すように、PETシートの蛍光スペクトルにおいて、波長が406nmのときに強度が最大となり、365nm以上の波長帯域の光は、強度が0.1以上となる。
【0031】
[実施の形態1]
図4は、本発明の実施の形態1である透明電極の観察装置を示す概念図であり、図5は、図4に示した透明電極の観察装置の制御構成を示すブロック図である。図4に示すように、透明電極の観察装置は、樹脂シートFの表面に形成された透明電極Pの光透過率が50%以下となる波長帯域の紫外線光を樹脂シートFの透明電極Pが形成された側から照射し、照射した紫外線光によって励起され、蛍光発光した樹脂シートFを観察するもので、図5に示すように、光照射手段100と、観察手段200とを備えている。
【0032】
光照射手段100は、樹脂シートFの表面に形成された透明電極Pの光透過率が50%以下となる波長帯域の紫外線光を含む光を照射する光源1で、予め定めた波長帯域の紫外線光をのみを透過させる光学フィルタ(図示せず)を備えている。光源1が、樹脂シートFの表面に形成された透明電極Pの光透過率が50%以下となる波長帯域の紫外線光を含む光を照射するのは、樹脂シートFを励起し、蛍光発光させる一方、透明電極Pに紫外線光を遮断させるためであり、紫外線光が照射され、励起されると、樹脂シートFは蛍光発光して明るくなる一方、紫外線光が遮断され、紫外線光がほとんど到達しないと樹脂シートFは暗くなる。したがって、紫外線光が照射され、励起された部位(樹脂シートF)は蛍光発光することにより明るくなり、紫外線光が遮断され、紫外線光がほとんど到達しなかった部位(樹脂シートF)は暗くなる。これにより、可視光では視認することが困難な透明電極Pの形状を特定できる。なお、透明電極Pについてより鮮明な像が求められる場合には、透明電極Pの光透過率が1%以下となる波長帯域の紫外線光を照射する光源1を用いる。
【0033】
図2に示すように、ITOの光透過率が50%以下となるのは、332nm以下の波長帯域であり、透明電極PにITOの薄膜を用いる場合には、332nm以下の波長帯域の紫外線光を含む光を照射する光源1を用いる。本実施の形態では、200〜300nmの波長帯域の紫外線光、たとえば、254nmの波長の紫外線光を照射する光源1を用いる。
【0034】
なお、光源1が照射する紫外線光の波長帯域の制限は、透明電極Pの形状の特定に作用する波長帯域について規定するものである。光透過率が50%以上の波長帯域の光が照射されても、後述する観察手段200で測定される光の強度に占めるオフセット成分の比率が増加するだけある。オフセット成分の比率が増加しても、樹脂シート上の透明電極Pとそれ以外の部分との判別には影響がないことから、光源1が照射する紫外線光には、透過率が50%以上の波長帯域の光が含まれていても良い。
【0035】
観察手段200は、光源1から照射された紫外線光によって励起され、蛍光発光した樹脂シートFを観察するためのもので、蛍光発光した樹脂シートFの光の強度を測定する測定手段20と、測定手段20が測定した光の強度に基づいて、透明電極Pの形状を計測する計測手段30とを備えている。
【0036】
蛍光発光した樹脂シートFの光の強度を測定するのは、所定値(たとえば、0.1)以上の光の強度を有する可視光を透過する光学フィルタ(光学フィルタ手段)2であり、光学フィルタ2を透過した可視光は所定値(たとえば、0.1)以上の強度を有することになる。また、光学フィルタ2により、光源1から照射される可視光成分や外乱光などのノイズ成分が除去される。
【0037】
図3に示すように、波長254nmの紫外線光を照射した場合のPETシートの蛍光スペクトルにおいて、強度が0.1以上となるのは、365nm以上の波長帯域であり、樹脂シートFにPETシートを用いる場合には、365nm以上の波長帯域の光を透過する光学フィルタを用いる。本実施の形態では、400〜500nmの波長帯域の可視光を透過する光学フィルタ2を用いる。
【0038】
透明電極Pの形状を計測するのは、光学フィルタ(光学フィルタ手段)2を透過した可視域の波長に感度を有するカメラ(撮像手段)3であり、カメラ3が撮影した画像は、図6に示すように、透明電極Pが形成された部位は暗くなり、それ以外の部位は明るく表される。また、ピンホール、短絡などの形状欠点も明るく表される。
【0039】
透明電極の観察装置は、さらに、検査手段400を備えている。検査手段400は、上述したカメラ(撮像手段)3が撮影した画像に基づいて、透明電極Pを検査するもので、透明電極Pに含まれる形状欠点を検査する。検査手段400は、図7に示すように、カメラ3が撮影した画像を二値化し、予め設定され、メモリに記憶されたマスタ画像と比較し、透明電極Pに含まれる欠点を明示する。具体的には、図8に示すように、二値化した撮影画像の位置ズレを補正した後に、二値化したマスタ画像と二値化した位置ズレ補正済み撮影画像との排他的論理和を求める。このように、排他的論理和を求めれば、マスタ画像と異なる部位のみを抽出することができる。そして、このように求めた異なる部位(欠点候補)の面積等を計測することにより、欠点か否かを判定する。たとえば、図8に示す例では、欠け、突起、短絡、ピンホール、断線などの欠点が明示される。
【0040】
透明電極の観察装置は、さらに、アライメント手段500を備えている。アライメント手段500は、上述したカメラ(撮像手段)3が撮像した画像に基づいて、透明電極Pや樹脂シートFの表面に透明電極Pを設ける際に透明電極Pと同一の材料で形成されたマーク(アライメントマーク)の位置情報を元に樹脂シートFを位置合わせするもので、たとえば、透明電極Pやマークの位置を特定したり、透明電極Pやマークの位置を元に樹脂シートFの位置情報を補正したりすることのほか、透明電極Pやマークの位置を元に樹脂シートFを基準位置に位置合わせすることなどが含まれる。
【0041】
上述した本発明の実施の形態1である透明電極の観察装置を用いた透明電極の観察方法では、まず、透明電極Pの光透過率が50%以下となる波長帯域の紫外線光を含む光を樹脂シートFの透明電極Pが形成された側から照射する。樹脂シートFの表面に形成された透明電極Pの光透過率が50%以下となる波長帯域の紫外線光を含む光を照射するのは、樹脂シートFを励起し、蛍光発光させる一方、透明電極Pに光を遮断させるためであり、紫外線光が照射され、励起されると、樹脂シートFは蛍光発光して明るくなる一方、紫外線光が遮断され、紫外線光がほとんど到達しないと樹脂シートFは暗くなる。したがって、紫外線光が照射され、励起された部位(樹脂シートF)は蛍光発光することにより明るくなり、紫外線光が遮断され、紫外線光が到達しなかった部位(樹脂シートF)は暗くなる。これにより、可視光では視認することが困難な透明電極Pの形状を特定できる。なお、透明電極Pについてより鮮明な像が求められる場合には、透明電極Pの光透過率が1%以下となる波長帯域の紫外線光を照射する光源を用いる。
【0042】
図2に示すように、ITOの光透過率が50%以下となるのは、332nm以下の波長帯域であり、透明電極PにITOの薄膜を用いる場合には、332nm以下の波長帯域の紫外線光を含む光を照射する。本実施の形態では、200〜300nmの波長帯域の紫外線光、たとえば、254nmの波長の紫外線光を照射する。
【0043】
そして、照射された紫外線光によって励起され、蛍光発光した樹脂シートFを観察する。具体的には、蛍光発光した樹脂シートFの光の強度を測定し、測定した光の強度に基づいて、透明電極Pの形状を計測する。
【0044】
蛍光発光した樹脂シートFの光の強度を測定するのは、所定値(たとえば、0.1)以上の光の強度を有する光学フィルタ(光学フィルタ手段)2であり、光学フィルタ2を透過した光は所定値(たとえば、0.1)以上の強度を有することになる。また、光学フィルタ2により、光源1から照射される可視光成分や外乱光などのノイズ成分が除去される。
【0045】
図3に示すように、波長254nmの紫外線光を照射した場合のPETシートの蛍光スペクトルにおいて、強度が0.1以上となるのは、365nm以上の波長帯域であり、樹脂シートFにPETシートを用いる場合には、365nm以上の波長帯域の光を透過する光学フィルタを用いる。本実施の形態では、400〜500nmの波長帯域の可視光を透過する光学フィルタ2を用いる。
【0046】
透明電極Pの形状を計測するのは、光学フィルタ(光学フィルタ手段)2を透過した可視域の波長に感度を有するカメラ(撮像手段)3であり、カメラ3が撮影した画像は、図6に示すように、透明電極Pが形成された部位は暗くなり、それ以外の部位は明るく表される。また、ピンホール、短絡などの形状欠点も明るく表される。
【0047】
つぎに、上述したカメラ(撮像手段)3が撮影した画像に基づいて、透明電極Pを検査する。具体的には、図7に示すように、カメラ3が撮影した画像を二値化し、予め設定したマスタ画像と比較し、透明電極Pに含まれる欠点を明示する。
【0048】
まず、樹脂シートFの表面に設けた透明電極Pや、樹脂シートFの表面に透明電極Pを設ける際に透明電極Pと同じ材料で設けたマークを用いて、樹脂シートFのズレ量を計測する。透明電極Pと同じ材料で設けたマークは、下流のプロセスでの樹脂シートFに対する追加工や組立加工のために設けたマーク(アライメントマーク)や、ユーザーにより位置合わせに最適な形状として指定された透明電極領域内のマークなどである。樹脂シートFのズレ量は、マスタ画像上の透明電極Pやマークの位置と撮像画像上の透明電極Pやマークの位置を正規化相関法などのズレ計測手法により計測する。
【0049】
つぎに、このように計測した一または複数箇所のズレ量に基づいてズレ量を補正する。ズレ量の補正項目は、回転角度(ロール角、ピッチ角、ヨー角)、縦方向および横方向へのシフト量、縦方向および横方向へのせん断角度、縦方向および横方向の撮像倍率、などが含まれる。また、撮像手段に使用するレンズの結像ゆがみに起因する歪曲収差を補正項目に含めることもできる。
【0050】
その後に、図8に示すように、二値化したマスタ画像と二値化した撮影画像との排他的論理和を求める。このように、排他的論理和を求めれば、マスタ画像と異なる部位のみを抽出することができる。そして、このように求めた異なる部位(欠点候補)の面積等を計測することにより、欠点か否かを判定する。たとえば、図8に示す例では、欠け、突起、短絡、ピンホール、断線などの欠点が明示される。なお、判定には、透明電極Pの良否だけではなく、予め定めた場所からのズレ量を計測することも含まれる。
【0051】
また、透明電極Pを位置合わせする場合には、樹脂シートFの表面に設けた透明電極Pや、樹脂シートFの表面に透明電極Pを設ける際に透明電極Pと同じ材料で設けたマークを用いて、樹脂シートFのズレ量を計測する。樹脂シートFのズレ量は、マスタ画像上の透明電極Pやマークの位置と撮像画像上の透明電極Pやマークの位置を正規化相関法などのズレ計測手法により計測する。
【0052】
つぎに、このように計測した一または複数箇所のズレ量に基づいてズレ量を補正する。ズレ量の補正項目は、回転角度(ロール角、ピッチ角、ヨー角)、縦方向および横方向へのシフト量、縦方向および横方向へのせん断角度、縦方向および横方向の撮像倍率、などが含まれる。また、撮像手段に使用するレンズの結像ゆがみに起因する歪曲収差を補正項目に含めることもできる。
【0053】
上述した本発明の実施の形態1である透明電極の観察装置は、樹脂シートFの表面に形成された透明電極Pの光透過率が50%以下となる200〜300nmの波長帯域の紫外線光を照射し、蛍光発光した樹脂シートを観察するので、透明電極Pが形成された部位は暗くなり、それ以外の部位は明るくなる。これにより、可視光では視認が困難な透明電極Pの形状を特定でき、透明電極Pの検査に必要な測定精度を得ることができる。
【0054】
たとえば、電気的な導通チェックでは、短絡、断線などの欠点を検査できても、透明電極Pの幅(細りや太り)、短絡や断線した位置を検査できない。これに対して、上述した本発明の実施の形態1である透明電極の観察装置は、短絡、断線などの欠点のほかに、透明電極Pの幅(細りや太り)、短絡や断線した位置を検査できる。また、透明電極Pがどの位置に形成されているかを容易に判断できるので、下流のプロセスでの追加加工や組立加工などを、透明電極Pに対して適切な位置で実施することができる。
【0055】
また、石英ガラスなどのガラスの表面に形成された透明電極に紫外線光を照射し、紫外線光の透過率により透明電極を検査する場合には、紫外線光を受光する撮像手段(レンズ、カメラ)を必要とし、紫外線光を透過する石英ガラスや蛍石などの高価な光学部品や、紫外線光に感度を有するように特別に設計されたCCDやCMOSなどの撮像素子を有するカメラを必要とするが、本発明の実施の形態1である透明電極の観察装置は、400〜500nmの波長帯域の可視光を受光すればよいので、紫外線光を受光する撮像手段(レンズ、カメラ)を必要としない。これにより、本発明の実施の形態1である透明電極の観察装置は、安価なものとなる。
【0056】
さらに、蛍光発光する樹脂シートFと、紫外線光を遮断する透明電極Pとが光学的に略同一面とみなすことができるので、透明電極Pが形成された部位とそれ以外の部位とが明確に区別でき、透明電極Pを高精度に検査することができる。
【0057】
また、上述した本発明の実施の形態1である透明電極の観察装置を用いた透明電極の観察方法は、樹脂シートFの表面に形成された透明電極Pの光透過率が50%以下となる200〜300nm波長帯域の紫外線光を照射し、蛍光発光した樹脂シートFを観察するので、透明電極Pが形成された部位は暗くなり、それ以外の部位は明るくなる。これにより、可視光では視認が困難な透明電極Pの形状を特定でき、透明電極Pの検査に必要な測定精度を得ることができる。
【0058】
なお、上述した実施の形態1である透明電極の観察装置において、検査手段は、メモリに記憶されたマスタ画像と比較して検査するものとしたが、マスタ画像は、欠点のない透明電極パネルを撮影した画像でもよいし、CADなどの設計データから得た画像データでもよい。さらに、透明電極Pとそれ以外の部位との境界部分を予め定めた閾値に応じて太り処理あるいは細り処理を施してもよい。
【0059】
また、検査手段は、マスタ画像(良品)と比較するものに限られず、透明電極の線幅を定長毎に測定してゆき、前後数計測点からその幅を計測し、基準幅に対しての良否を判断するものであってもよい。また、検査手段は、マスタ画像と透明電極Pとの比較により、電極の撮像位置がマスタに対してどの程度ずれているかを計測するものであってもよい。
【0060】
また、石英ガラスなどのガラスの表面に形成された透明電極に紫外線光を照射し、紫外線光の透過率により透明電極を検査する場合には、ガラスを境にして一方側から紫外線光を照射する光源を配置し、ガラスを境にして他方側に紫外線光の強度を計測する計測器を設ける必要があるが、本発明は、全周方向に蛍光発光する可視光を受光できれば撮像手段(カメラ3)の配置は制限されない。以下に、樹脂シートFを境にして光照射手段(光源1)と同一側に撮像手段(カメラ3)を設けた例を説明する。
【0061】
[実施の形態2]
図9は、本発明の実施の形態2である透明電極の観察装置を示す概念図である。図9に示すように、本発明の実施の形態2である透明電極装置は、樹脂シートFを境にして光照射手段(光源11)と同一側に、撮像手段(光学フィルタ12、カメラ13)を備えている。すなわち、光源11とカメラ13とは、樹脂シートFを境にして透明電極Pが形成された側に配置される。
【0062】
そして、樹脂シートFの表面に形成された透明電極Pの光透過率が50%以下となる波長帯域(たとえば、200〜300nm)の紫外線光を照射すれば、樹脂シートFは励起され、全周方向に蛍光発光するので、透明電極Pが形成された部位は暗くなり、それ以外の部位は明るくなる。これにより、可視光では視認が困難な透明電極Pの形状を特定でき、透明電極Pの検査に必要な測定精度を得ることができる。
【0063】
なお、実施の形態2である透明電極の観察装置は、撮像手段(カメラ13)が樹脂シートFと正対するように配置したが、これは、透明電極Pとそれ以外の部位との境界部分を明確にするためであり、これに限られるものではない。
【0064】
上述した実施の形態2である透明電極の観察装置は、樹脂シートFを境にして光照射手段(光源11)と撮像手段(光学フィルタ12、カメラ13)を同一側に配置するので、樹脂シートFの一方側と他方側とにそれぞれ光照射手段と撮像手段とを配置すれば、樹脂シートFの表と裏の両方に形成された透明電極を同時に観察できることになる。
【0065】
なお、前述する実施の形態1もしくは2の透明電極の観察装置は、図1および、図6〜9で示すような透明電極Pがパターンニングされた樹脂シートFのみに限らず、樹脂シートFの紫外線光が照射される側の面の全面に透明電極Pが施されているような場合でも、透明電極Pのピンホールや傷などの欠点を検査できる。
【符号の説明】
【0066】
1,11 光源
2,12 光学フィルタ
3,13 カメラ
F 樹脂シート
P 透明電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートの表面に形成された透明電極の光透過率が50%以下となる波長帯域の紫外線光を少なくとも含む光を照射する光照射手段と、
前記光照射手段から照射された紫外線光によって励起され、蛍光発光した前記樹脂シートを観察する観察手段と
を備えたことを特徴とする透明電極の観察装置。
【請求項2】
前記透明電極には、透明電極と同一の材料で形成されたマークが含まれることを特徴とする請求項1に記載の透明電極の観察装置。
【請求項3】
前記観察手段は、
前記蛍光発光した前記樹脂シートの光の強度を測定する測定手段と、
前記測定手段が測定した光の強度に基づいて、前記透明電極の形状を計測する計測手段と
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の透明電極の観察装置。
【請求項4】
前記観察手段は、
365nm以上の波長帯域の光のみを透過する光学フィルタ手段と、
前記光学フィルタ手段を透過した可視域の波長に感度を有する画像を撮影する撮像手段と
を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の透明電極の観察装置。
【請求項5】
前記撮像手段が撮影した画像に基づいて、前記透明電極の形状欠点を検査する検査手段を備えたことを特徴とする請求項4に記載の透明電極の観察装置。
【請求項6】
前記光照射手段は、
予め定めた波長帯域の紫外線光のみを透過する光学フィルタを備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の透明電極の観察装置。
【請求項7】
前記透明電極の透過率が50%以下となる波長帯域の紫外線光が波長332nm以下の紫外線光であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の透明電極の観察装置。
【請求項8】
前記撮像手段が撮像した画像に基づいて、透明電極を位置合わせするアライメント手段を備えたことを特徴とする請求項4〜7のいずれか一つに記載の透明電極の観察装置。
【請求項9】
樹脂シートの表面に形成された透明電極の光透過率が50%以下となる波長帯域の紫外線光を含む光を前記樹脂シートの透明電極が形成された側から照射し、
照射した紫外線光によって励起され、蛍光発光した前記樹脂シートを観察する
ことを特徴とする透明電極の観察方法。
【請求項10】
前記透明電極には、透明電極と同一の材料で形成されたマークが含まれることを特徴とする請求項9に記載の透明電極の観察方法。
【請求項11】
蛍光発光した前記樹脂シートの光の強度を測定し、
測定した光の強度に基づいて、前記透明電極の形状を計測する
ことを特徴とする請求項9または10に記載の透明電極の観察方法。
【請求項12】
蛍光発光した前記樹脂シートの光のうち、365nm以上の波長帯域の光のみを透過させ、
透過した可視域の波長に感度を有する画像を撮影することを特徴とする請求項9〜11のいずれか一つに記載の透明電極の観察方法。
【請求項13】
紫外線光を予め定めた波長帯域の紫外線光のみを透過させる光学フィルタを透過させることにより、前記透明電極の光透過率が50%以下となる波長帯域の紫外線光とすることを特徴とする請求項9〜12のいずれか一つに記載の透明電極の観察方法。
【請求項14】
前記透明電極が酸化インジウムスズの薄膜であることを特徴とする請求項9〜13のいずれか一つに記載の透明電極の観察方法。
【請求項15】
前記透明電極の透過率が50%以下となる波長帯域の紫外線光が波長332nm以下の紫外線光であることを特徴とする請求項9〜14のいずれか一つに記載の透明電極の観察方法。
【請求項16】
前記樹脂シートが透明なプラスチックシートであることを特徴とする請求項9〜15のいずれか一つに記載の透明電極の観察方法。
【請求項17】
前記透明なプラスチックシートがポリエチレンテレフタレートを主成分とすることを特徴とする請求項16に記載の透明電極の観察方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−68605(P2013−68605A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−174419(P2012−174419)
【出願日】平成24年8月6日(2012.8.6)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】