説明

透明電極及びそれを用いた有機電子素子

【課題】透明性及び導電性に優れた透明電極、及び該透明電極を用いた、大面積化にも対応可能で、高効率、長寿命な有機電子素子を提供する。
【解決手段】透明基板上に、導電性ポリマーを含有するポリマー導電層が形成された透明電極において、ポリマー導電層がアクリル酸エステル重合体、アクリル酸アミド重合体等の側鎖末端にOHを有するポリマー又は、側鎖末端にOHを有するポリマー及び、側鎖末端に水素原子、アルキル基等を有するポリマーの混合物を含有し、該ポリマー導電層上に金属導電層がパターン状に積層され、さらに該金属導電層が、リーク防止層で被覆されている事を特徴とする透明電極。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明電極、及びそれを用いた有機EL(エレクトロルミネッセンス)、太陽電池等の有機電子デバイスに用いられる有機電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子や有機太陽電池といった有機電子デバイスが注目されており、このようなデバイスにおいて、透明電極は必須の構成技術となっている。
【0003】
有機電子デバイスにおいては、大面積化への要望が益々高くなってきている。従来から用いられているインジウムチンオキシド(ITO)や導電性ポリマーのような透明電極の場合、特に低い表面抵抗が必要とされる大面積用途においては、成膜コストが飛躍的に高くなるばかりか、実用上十分低い表面抵抗を得ることは非常に困難である。
【0004】
電流の面均一性と導電性を両立するため、ITOや導電性ポリマー等の透明導電膜と、パターン状に形成された金属導電層を組み合わせた透明電極が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
透明導電膜と金属導電層を組み合わせた透明電極の透明性を高めるには、金属導電層パターンの微細化が必須となる。微細化された金属導電パターンを形成する場合には、例えばフォトリソグラフィ法を用いたエッチングによるパターニング方法が用いられる。しかし、フォトリソグラフィ法によるパターニングにはコストがかかり、またレジストパターンの形成工程や露光・現像工程、さらにエッチングガスを用いたエッチング工程などを要し、工程が複雑となる問題がある。
【0006】
そこで、単純な方法であって、低コストで導電パターンを形成する方法として、近年、印刷法により微細化された金属導電パターンをダイレクトに形成する方法が着目されている。印刷法による導電パターンの形成は、フォトリソグラフィ法とエッチング法を用いた場合に比べて、工程が単純となり、低コストで実施することが可能な特長を有している。
【0007】
印刷法による導電パターンの形成においては、導電パターンを形成する基板などの基材上に、金属ナノインクなどの導電体を含むインクにより、導電パターンを形成する方法が採用される。
【0008】
しかし、金属ナノインクなどの金属粒子を含むインクを基材に印刷する場合、例えば、金属ナノインクなどは、基材表面に印刷された後で当該基材表面上に広がるため、微細化するにあたって問題となっている。
【0009】
そこで、印刷法により微細化された導電パターンを形成するために、例えば、以下のように様々な方法が提案されている。
【0010】
例えば、インクジェット法により導電パターンを形成する場合に、基板上に親液性領域と撥液性領域を設け、その表面エネルギーの差を利用して親液性領域にのみ金属ナノインク等による導電パターンを形成することが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0011】
また、金属ナノインクの基板上での広がりを防止する方法として、基板表面の撥液性を調整する方法が提案されている(例えば特許文献3参照)。
【0012】
しかし、前記特許文献2に係る方法では、基材上に、親液性を有する領域、または撥液性を有する領域をパターニングして形成する必要がある。そのため、親液性の処理や、または撥液性の処理の工程が複雑となり、これらのパターニングにコストと時間を要する問題がある。
【0013】
また、前記特許文献3に係る方法では、基材上の撥液性を調整して金属ナノインクの広がりを抑制し、導電パターンの微細化を図っているが、例えば親水性の金属ナノインクとPEDOT−PSSのような親水性の導電性ポリマーの様に同じ親液性の塗布液を用いる場合、撥液化処理の後に親液化処理を行わなければならず、同じくコストと時間を要する問題がある。
【0014】
一方、有機EL素子を有するような有機電子デバイスに対しては、透明電極に高い平滑性が要求される。金属粒子を含有する金属導電層は、その構成成分である金属粒子のため、導電パターンの表面の平滑性が悪く、また金属粒子がインク中または焼成後に粗大化し、更に平滑性が劣化する場合もある。透明電極上に突起があると、特に導電性の高い突起の場合、電極間リークや短絡、その部分での電界集中により素子寿命低下の要因となる。導電性ポリマーの積層は、このような突起を埋めることで、表面平滑性及び局所的な電界集中の改善にもなるが、突起の大きさによっては、埋め込みに必要な導電性ポリマー層が厚くなり、導電性ポリマー層の着色により透明性が損なわれるため、デバイスの透明性の点から、これらを両立させることは難しい。
【0015】
導電性と透明性を両立し、導電性ポリマー層を厚くする手段として、導電性ポリマーにポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)等のヒドロキシアルキル基含有アクリル系ポリマーを用いる方法が開示されている(たとえば特許文献4)が、前述した金属導電層の微細化については記載されていない。
【0016】
前記の電極構造とは異なり、基板上に、透明導電層、パターン状の金属導電層の順に積層し、さらに該金属導電層表面を絶縁層で完全に被覆した後、発光層等の有機機能層を積層する方法がある(例えば、特許文献5参照)。この方法においては、金属導電層の突起を埋めるために導電性ポリマー層を厚くする必要がないので、それによる透明性低下は生じないが、同じく金属導電層の微細化については一切触れられておらず、そのため透明性においては、未だ不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2005−302508号公報
【特許文献2】特開2004−170463号公報
【特許文献3】特開2004−119479号公報
【特許文献4】特開2010−244747号公報
【特許文献5】国際公開第2010/038181号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであり、透明性及び導電性に優れた透明電極、及び該透明電極を用いた、大面積化にも対応可能で、高効率、長寿命な有機電子素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成することができる。
【0020】
1.透明基板上に、導電性ポリマーを含有するポリマー導電層が形成された透明電極において、
該ポリマー導電層が、下記構造単位(I)を有するポリマー(A)または下記構造単位(I)と構造単位(II)を有するポリマー(B)を含有し、該ポリマー導電層上に金属導電層がパターン状に積層され、
さらに該金属導電層が、リーク防止層で被覆されていることを特徴とする透明電極。
【0021】
【化1】

【0022】
〔式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Qは−C(=O)O−または−C(=O)−NRa−を表す。Raは水素原子、アルキル基またはNと共にモルホリンを形成するための原子団を表し、Aは置換或いは無置換アルキレン基または−(CHCHRbO)−CHCHRj−を表し、RbおよびRjは水素原子またはアルキル基を表す。xは平均繰り返しユニット数で1〜100の数である。yは0、1を表す。Zは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、モルホリノ基、−O−C(=O)−Rc、−O−SO−Rdまたは−OSiReを表す。Rc、RdまたはReはアルキル基、パーフルオロアルキル基またはアリール基を表す。但し、Qがモルホリノ基を有する場合、yは0であり、且つZは存在しない。〕
2.前記金属導電層が、金属ナノ粒子を含有していることを特徴とする前記1に記載の透明電極。
【0023】
3.前記金属ナノ粒子が、銀であることを特徴とする前記2に記載の透明電極。
【0024】
4.前記リーク防止層が、絶縁層であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の透明電極。
【0025】
5.前記1〜4のいずれか1項に記載の透明電極を用いたことを特徴とする有機電子素子。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、透明性及び導電性に優れた透明電極、及び該透明電極を用いた、大面積化にも対応可能で、高効率、長寿命な有機電子素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の透明電極の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0029】
図1に本発明の透明電極の構成について断面図で示した。
【0030】
本発明の透明電極10は、透明基板1上に、導電性ポリマーを含有するポリマー導電層2が形成され、該ポリマー導電層上に、金属導電層3がパターン状に形成され(図では断面を示している)、該金属導電層3をさらにリーク防止層4が被覆してなり、金属導電層12の表面をリーク防止層が被覆することで、平滑な、突起部がない透明電極10を構成している。
【0031】
本発明は、透明基板上に、導電性ポリマーを含有するポリマー導電層が形成された透明電極において、該ポリマー導電層が、下記構造単位(I)を有するポリマー(A)または下記構造単位(I)と下記構造単位(II)を有するポリマー(B)を含有し、該ポリマー導電層上に金属導電層がパターン状に積層され、さらに該金属導電層が、リーク防止層で被覆されていることを特徴とする。
【0032】
【化2】

【0033】
上記式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Qは−C(=O)O−または−C(=O)−NRa−を表す。Raは水素原子、アルキル基またはNと共にモルホリンを形成するための原子団を表し、Aは置換或いは無置換アルキレン基または−(CHCHRbO)−CHCHRj−を表し、RbおよびRjは水素原子またはアルキル基を表す。xは平均繰り返しユニット数で1〜100の数である。yは0、1を表す。Zは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、モルホリノ基、−O−C(=O)−Rc、−O−SO−Rdまたは−OSiReを表す。Rc、RdまたはReはアルキル基、パーフルオロアルキル基またはアリール基を表す。但し、Qがモルホリノ基を有する場合、yは0であり、且つZは存在しない。
【0034】
本発明者による鋭意検討により、本発明のポリマー導電層が、導電性ポリマーおよび構造単位(I)を有するポリマー(A)を含むポリマー導電層、または、導電性ポリマーおよび該構造単位(I)と構造単位(II)を有するポリマー(B)を含むことにより、ポリマー導電層の導電性を向上することができ、導電性ポリマーの必要量を低減することができることを見出した。その結果、本発明により高い導電性と透明性を両立することができる。
【0035】
また、該ポリマー(A)または該ポリマー(B)を含むことで、ポリマー導電層の膜強度が向上すると共に、ポリマー導電層表面に撥液性が付与され、金属ナノインク等による導電パターンを形成する際に、金属ナノインクの基板上での広がりを防止することができ、導電パターンの微細化ができることも見出した。
【0036】
さらに、本発明の金属導電層がリーク防止層で被覆されている事により、表面平滑性及び局所的な電界集中が改善され、本発明の透明電極を有機電子素子に用いた際の電極間リークを防止できることも見出した。またポリマー導電層表面の撥液性により、リーク防止層の基板上での広がりについても防止することができる。
【0037】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様等について詳細に説明をする。
【0038】
〔透明基板〕
本発明の透明電極に用いられる透明基板としては、高い光透明性を有していれば、特に制限はない。例えば、樹脂基板、樹脂フィルム、ガラス等が好適に挙げられるが、生産性の観点や軽量性と柔軟性といった性能の観点から透明樹脂フィルム、薄膜ガラスを用いることが好ましい。
【0039】
好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限はなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム、等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜780nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0040】
本発明に用いられる透明基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。
【0041】
また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0042】
また、透明基板の表面または裏面には、無機物、有機物の被膜またはその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m・24h)以下のバリア性フィルムであることが好ましく、さらには、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10−3ml/m・24h・atm以下(1atmは、1.01325×10Paである)、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m・24h)以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
【0043】
高バリア性フィルムとするためにフィルム基板の表面または裏面に形成されるバリア膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。さらに該膜の脆弱性を改良するためにこれら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
【0044】
本発明に用いることのできるガラス基板には特に限定は無い。中では無アルカリガラスが好ましく用いられる。その他、ロールトゥロールでの生産適性、有機エレクトロルミネッセンス素子用の透明電極に供した際の素子のフレキシビリティ等の観点からは、厚さが10〜200μmの薄膜ガラスを用いることが好ましい。更に厚さが50〜120μmが破損のしにくさ、ロール搬送の容易さの観点から望ましい。具体的には特開2010−132532号にガラスフィルムとして記載あるような薄膜ガラスを用いることができる。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0045】
〔金属導電層〕
本発明の金属導電層は、本発明のポリマー導電層の上に、金属材料からなる金属粒子をパターン状に積層されることを特徴とする。これにより金属粒子を有する光不透過の導電部と透光性を有する導電性窓部を併せ持つ透明基板となり、透明性、導電性に優れた透明電極を作製できる。金属材料は、導電性に優れていれば特に制限はなく、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム等の金属の他に合金でもよい。特に、後述のようにパターンの形成のしやすさの観点から金属粒子の形状は、金属ナノ粒子であることが好ましく、金属粒子は導電性及び安定性の観点から銀であることが好ましい。
【0046】
ここで、金属ナノ粒子の平均粒径は1nm以上100nm以下であることが好ましく、1nm以上50nm以下であることがより好ましく、1nm以上30nm以下であることがより好ましい。
【0047】
本発明における金属ナノ粒子の平均粒径は、金属ナノ粒子の電子顕微鏡観察から、円形、楕円形又は実質的に円形若しくは楕円形として観察できる金属ナノ粒子をランダムに200個以上観察し、各金属ナノ粒子の粒径を求め、その数平均値を求めることにより得られる。ここで、本発明に係る平均粒径とは、円形、楕円形又は実質的に円形若しくは楕円形として観察できる金属ナノ粒子の外縁を2本の平行線で挟んだ距離の内最小の距離を指す。なお、平均粒径を測定する際、明らかに金属ナノ粒子の側面などを表しているものは測定しない。
【0048】
金属導電層のパターン形状には特に制限はなく、例えば、パターン形状がストライプ状、あるいはメッシュ状であってもよいが、開口率は透明性の観点から80%以上であることが好ましい。開口率とは、透光性を有する導電部が全体に占める割合である。例えば、光不透過の金属導電層がストライプ状あるいはメッシュ状であるとき、線幅100μm、線間隔1mmのストライプ状パターンの開口率は、およそ90%である。パターンの線幅は、10〜200μmが好ましい。細線の線幅が10μm以上だと、所望の導電性が得られ、また200μm以下だと、透明電極として十分な透明性が得られる。細線の高さは、0.1〜5μmが好ましい。細線の高さが0.1μm以上だと所望の導電性が得られ、また5μm以下では、有機電子素子の形成において、その凹凸差が機能層の膜厚分布に影響を与えない範囲である。
【0049】
導電部がストライプ状またはメッシュ状の電極を形成する方法としては、金属微粒子を含有するインクを所望の形状に印刷する方法が好ましい。印刷方法としては特に制限はなく、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷法により所望の形状に印刷し形成できる。また、金属導電層は透明基板にダメージを与えない範囲で加熱処理を施すことが好ましい。これにより、金属微粒子同士の融着が進み、金属導電層が高導電化する。
【0050】
これらの、金属ナノ粒子を含有するインクに対し、ポリマー導電層表面が撥液性を有するため、金属ナノインクによる導電パターン形成の際、基板上での広がりが起こりにくく、導電パターンの微細化ができる。
【0051】
〔ポリマー導電層〕
本発明では、ポリマー導電層は導電性ポリマーと、ポリマー(A)またはポリマー(B)を含有する。
【0052】
本発明に係る導電性ポリマーは、π共役系導電性高分子とポリ陰イオンとを有してなる導電性ポリマーである。こうした導電性ポリマーは、後述するπ共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを、適切な酸化剤と酸化触媒と後述のポリ陰イオンの存在下で化学酸化重合することによって容易に製造できる。
【0053】
(π共役系導電性高分子)
本発明に用いるπ共役系導電性高分子としては、特に限定されず、ポリチオフェン(基本のポリチオフェンを含む、以下同様)類、ポリピロール類、ポリインドール類、ポリカルバゾール類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリフラン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリアズレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンサルファイド類、ポリイソチアナフテン類、ポリチアジル類、の鎖状導電性ポリマーを利用することができる。中でも、導電性、透明性、安定性等の観点からポリチオフェン類やポリアニリン類が好ましい。ポリエチレンジオキシチオフェンであることが最も好ましい。
【0054】
(π共役系導電性高分子前駆体モノマー)
π共役系導電性高分子の形成に用いられる前駆体モノマーは、分子内にπ共役系を有し、適切な酸化剤の作用によって高分子化した際にもその主鎖にπ共役系が形成されるものである。例えば、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等が挙げられる。
【0055】
前駆体モノマーの具体例としては、ピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
【0056】
(ポリ陰イオン)
本発明に用いられるポリ陰イオンは、置換もしくは未置換のポリアルキレン、置換もしくは未置換のポリアルケニレン、置換もしくは未置換のポリイミド、置換もしくは未置換のポリアミド、置換もしくは未置換のポリエステル及びこれらの共重合体であって、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるものである。
【0057】
このポリ陰イオンは、π共役系導電性高分子を溶媒に可溶化させる可溶化高分子である。また、ポリ陰イオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性と耐熱性を向上させる。
【0058】
ポリ陰イオンのアニオン基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシ基がより好ましい。
【0059】
ポリ陰イオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
【0060】
また、化合物内にさらにF(フッ素原子)を有するポリ陰イオンであっても良い。具体的には、パーフルオロスルホン酸基を含有するナフィオン(Dupont社製)、カルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルからなるフレミオン(旭硝子社製)等を挙げることができる。
【0061】
ポリ陰イオンがスルホン酸を有する化合物である場合、後述するヒドロキシ基含有ポリマーの縮合による架橋反応を促進するため、好ましい。
【0062】
さらに、これらの中でも、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。これらのポリ陰イオンは、ヒドロキシ基含有ポリマーとの相溶性が高く、また、得られる導電性ポリマーの導電性をより高くできる。
【0063】
ポリ陰イオンの重合度は、モノマー単位が10〜100000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10000個の範囲がより好ましい。
【0064】
ポリ陰イオンの製造方法としては、例えば、酸を用いてアニオン基を有さないポリマーにアニオン基を直接導入する方法、アニオン基を有さないポリマーをスルホ化剤によりスルホン酸化する方法、アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法が挙げられる。
【0065】
アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法は、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/または重合触媒の存在下で、酸化重合またはラジカル重合によって製造する方法が挙げられる。具体的には、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保ち、それに予め溶媒に所定量の酸化剤及び/または重合触媒を溶解した溶液を添加し、所定時間で反応させる。その反応により得られたポリマーは溶媒によって一定の濃度に調整される。この製造方法において、アニオン基含有重合性モノマーにアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合させてもよい。
【0066】
アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤及び酸化触媒、溶媒は、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。
【0067】
得られたポリマーがポリ陰イオン塩である場合には、ポリ陰イオン酸に変質させることが好ましい。アニオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法等が挙げられ、これらの中でも、作業が容易な点から限外ろ過法が好ましい。
【0068】
導電性ポリマーに含まれるπ共役系導電性高分子とポリ陰イオンの比率は、「π共役系導電性高分子」:「ポリ陰イオン」の質量比で1:1〜1:20が好ましい。導電性、分散性の観点からより好ましくは1:2〜1:10の範囲である。
【0069】
π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーをポリ陰イオンの存在下で化学酸化重合して、本発明に係る導電性ポリマーを得る際に使用される酸化剤は、例えばJ.Am.Soc.,85、454(1963)に記載されるピロールの酸化重合に適する、いずれかの酸化剤である。実際的な理由のために、安価でかつ取扱い易い酸化剤例えば鉄(III)塩、例えばFeCl、Fe(ClO、有機酸及び有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩、または過酸化水素、重クロム酸カリウム、過硫酸アルカリ(例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム)またはアンモニウム、過ホウ酸アルカリ、過マンガン酸カリウム及び銅塩例えば四フッ化ホウ酸銅を用いることが好ましい。加えて、酸化剤として随時触媒量の金属イオン例えば鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン及びバナジウムイオンの存在下における空気及び酸素も使用することができる。過硫酸塩並びに有機酸及び有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩の使用が腐食性でないために大きな応用上の利点を有する。
【0070】
有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩の例としては炭素数1〜20のアルカノールの硫酸半エステルの鉄(III)塩、例えばラウリル硫酸;炭素数1〜20のアルキルスルホン酸、例えばメタンまたはドデカンスルホン酸;脂肪族炭素数1〜20のカルボン酸、例えば2−エチルヘキシルカルボン酸;脂肪族パーフルオロカルボン酸、例えばトリフルオロ酢酸及びパーフルオロオクタノン酸;脂肪族ジカルボン酸、例えばシュウ酸並びに殊に芳香族の、随時炭素数1〜20のアルキル置換されたスルホン酸、例えばベンゼセンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及びドデシルベンゼンスルホン酸のFe(III)塩が挙げられる。
【0071】
こうした導電性ポリマーは、市販の材料も好ましく利用できる。例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸からなる導電性ポリマー(PEDOT−PSSと略す)が、H.C.Starck社からCleviosシリーズとして、Aldrich社からPEDOT−PSSの483095、560596として、Nagase Chemtex社からDenatronシリーズとして市販されている。また、ポリアニリンが、日産化学社からORMECONシリーズとして市販されている。本発明において、こうした剤も好ましく用いることができる。
【0072】
第2ドーパントとして水溶性有機化合物を含有してもよい。本発明で用いることができる水溶性有機化合物には特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、酸素含有化合物が好適に挙げられる。前記酸素含有化合物としては、酸素を含有する限り特に制限はなく、例えば、ヒドロキシ基含有化合物、カルボニル基含有化合物、エーテル基含有化合物、スルホキシド基含有化合物等が挙げられる。前記ヒドロキシ基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等が挙げられ、これらの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。前記カルボニル基含有化合物としては、例えば、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。前記エーテル基含有化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、等が挙げられる。前記スルホキシド基含有化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0073】
(ポリマー(A)/ポリマー(B))
ポリマー導電層は、導電性ポリマーとポリマー(A)またはポリマー(B)を含有し、これらを含有する分散液を、透明基板上に塗布、乾燥して形成される。
【0074】
前記構造単位(I)、(II)において、Rは水素原子またはメチル基を表し、Qは−C(=O)O−または−C(=O)NRa−を表す。Raは水素原子、アルキル基またはNと共にモルホリンを形成するための原子団を表し、Aは置換或いは無置換アルキレン基または−(CHCHRbO)−CHCHRj−を表し、RbおよびRjは水素原子またはアルキル基を表す。xは平均繰り返しユニット数で1〜100の数である。yは0、1を表す。Zは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、モルホリノ基、−O−C(=O)−Rc、−O−SO−Rdまたは−O−SiReを表す。Rc、RdまたはReはアルキル基、パーフルオロアルキル基またはアリール基を表す。但し、Qがモルホリノ基を有する場合、yは0であり、且つZは存在しない。
【0075】
Ra、Rb、Z、Rc、Rd、Re、Rjで表されるアルキル基は、例えば炭素原子数1〜5の直鎖、あるいは分岐アルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。また、これらのアルキル基は置換基で置換されていてもよい。これら置換基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、ウレイド基、アラルキル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、アシルオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基等で置換されてもよい。これらのうち好ましくは、ヒドロキシ基、アルキルオキシ基である。
【0076】
上記アルキル基は分岐を有していてもよく、炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜8であることがさらに好ましい。アルキル基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等が含まれる。
【0077】
上記シクロアルキル基の炭素原子数は、3〜20であることが好ましく、3〜12であることがより好ましく、3〜8であることがさらに好ましい。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が含まれる。上記アルコキシ基は、分岐を有していてもよく、炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−メトキシ−2−エトキシエトキシ基、ブチルオキシ基、ヘキシルオキシ基及びオクチルオキシ基が含まれ、好ましくはエトキシ基である。上記アルキルチオ基の炭素数は、分岐を有していてもよく、炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルキルチオ基の例としては、メチルチオ基、エチルチオ基等が含まれる。上記アリールチオ基の炭素数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリールチオ基の例にはフェニルチオ基及びナフチルチオ基等が含まれる。上記シクロアルコキシ基の炭素原子数は、3〜12であることが好ましく、より好ましくは3〜8である。シクロアルコキシ基の例には、シクロプロポキシ基、シクロブチロキシ基、シクロペンチロキシ基及びシクロヘキシロキシ基が含まれる。上記アリール基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリール基の例にはフェニル基及びナフチル基が含まれる。上記アリールオキシ基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリールオキシ基の例にはフェノキシ基及びナフトキシ基が含まれる。上記ヘテロシクロアルキル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましく、3〜5であることがさらに好ましい。ヘテロシクロアルキル基の例にはピペリジノ基、ジオキサニル基及び2−モルホリニル基が含まれる。上記ヘテロアリール基の炭素原子数は、3〜20であることが好ましく、3〜10であることがさらに好ましい。ヘテロアリール基の例にはチエニル基、ピリジル基が含まれる。上記アシル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アシル基の例にはホルミル基、アセチル基及びベンゾイル基が含まれる。上記アルキルカルボンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アルキルカルボンアミド基の例にはアセトアミド基等が含まれる。上記アリールカルボンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アリールカルボンアミド基の例にはベンズアミド基等が含まれる。上記アルキルスルホンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アルキルスルホンアミド基の例にはメタンスルホンアミド基等が含まれる。上記アリールスルホンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アリールスルホンアミド基の例には、ベンゼンスルホンアミド基及びp−トルエンスルホンアミドが基含まれる。上記アラルキル基の炭素原子数は7〜20であることが好ましく、7〜12であることがさらに好ましい。アラルキル基の例にはベンジル基、フェネチル基及びナフチルメチル基が含まれる。上記アルコキシカルボニル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルコキシカルボニル基の例にはメトキシカルボニル基が含まれる。上記アリールオキシカルボニル基の炭素原子数は7〜20であることが好ましく、7〜12であることがさらに好ましい。アリールオキシカルボニル基の例にはフェノキシカルボニル基が含まれる。上記アラルキルオキシカルボニル基の炭素原子数は8〜20であることが好ましく、8〜12であることがさらに好ましい。アラルキルオキシカルボニル基の例にはベンジルオキシカルボニル基が含まれる。上記アシルオキシ基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アシルオキシ基の例にはアセトキシ基及びベンゾイルオキシ基が含まれる。上記アルケニル基の炭素原子数は2〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルケニル基の例に、ビニル基、アリル基及びイソプロペニル基が含まれる。上記アルキニル基の炭素原子数は2〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルキニル基の例にはエチニル基が含まれる。上記アルキルスルホニル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アルキルスルホニル基の例に、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基が含まれる。上記アリールスルホニル基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリールスルホニル基の例に、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基が含まれる。上記アルキルオキシスルホニル基の炭素原子数は1〜20あることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アルキルオキシスルホニル基の例に、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基が含まれる。上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリールオキシスルホニル基の例に、フェノキシスルホニル基、ナフトキシスルホニル基が含まれる。上記アルキルスルホニルオキシ基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アルキルスルホニルオキシ基の例に、メチルスルホニルオキシ基、エチルスルホニルオキシ基が含まれる。
【0078】
上記アリールスルホニルオキシ基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリールスルホニルオキシ基の例に、フェニルスルホニルオキシ基、ナフチルスルホニルオキシ基が含まれる。置換基は同一でも異なっていても良く、これら置換基がさらに置換されてもよい。
【0079】
構造単位(I)において、Aは置換あるいは無置換アルキレン基、−(CHCHRbO)−CHCHRj−を表すが、アルキレン基は、例えば炭素原子数1〜5が好ましく、より好ましくはエチレン基またはプロピレン基である。これらのアルキレン基は前述した置換基で置換されていてもよい。また、RbおよびRjは水素原子またはアルキル基を表す。また、これらのアルキル基は前述の置換基で置換されていてもよい。さらに、xは平均繰り返しユニット数を表し、1〜100が好ましく、より好ましくは1〜10である。繰り返しユニット数は分布を有しており、表記は平均値を示し、小数点以下1桁で表記してもよい。
【0080】
構造単位(II)において、Zは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、モルホリノ基、−O−C(=O)−Rc、−O−SO−Rdまたは−O−SiReを表す。アルコキシ基は、例えば炭素原子数1〜12が好ましく、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基で、更に好ましくはメトキシ基である。これらのアルコキシ基は前述した置換基で置換されてもよい。Rc、RdまたはReはアルキル基、パーフルオロアルキル基またはアリール基を表す。これらのアルキル基は前述した置換基で置換されてもよい。パーフルオロアルキル基は、例えば炭素原子数1〜8が好ましく、より好ましくはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基で、さらに好ましくはトリフルオロメチル基である。アリール基は、例えばフェニル基、トルイル基が好ましく、より好ましくはトルイル基である。さらに、これらのアルキル基、パーフルオロアルキル基、アリール基は前述した置換基で置換されてもよい。
【0081】
また、構造単位(I)、(II)において、Rは水素原子またはメチル基を表し、Qは−C(=O)O−または−C(=O)NRa−を表す。Raは水素原子、アルキル基またはNと共にモルホリンを形成するための原子団を表す。但し、Qがモルホリノ基を有する場合、yは0であり、且つZは存在しない。
【0082】
以下に、構造単位(I)、(II)で表される構造単位の代表的具体例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0083】
【化3】

【0084】
【化4】

【0085】
【化5】

【0086】
本発明に係るポリマー(A)とポリマー(B)は、構造単位(I)、(II)で表される構造単位以外に構造単位を含有していてもよい。
【0087】
本発明に係るポリマー(A)とポリマー(B)は、汎用的な重合触媒を用いたラジカル重合により得ることができる。重合様式としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等が挙げられ、好ましくは溶液重合である。重合温度は、使用する開始剤によって異なるが、一般に−10〜250℃、好ましくは0〜200℃、より好ましくは10〜100℃で実施される。
【0088】
本発明に係るポリマー(A)とポリマー(B)の数平均分子量は3,000〜2,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは4,000〜500,000、さらに好ましくは5000〜100000の範囲内である。
【0089】
本発明に係るポリマー(A)とポリマー(B)の数平均分子量、分子量分布の測定は、一般的に知られているゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により行うことができる。使用する溶媒は、バインダー樹脂が溶解すれば特に限りはなく、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、CHClが好ましく、より好ましくはTHF、DMFであり、更に好ましくはDMFである。また、測定温度も特に制限はないが40℃が好ましい。
【0090】
ポリマー導電層の塗布は、前述のグラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等の印刷方法に加えて、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、インクジェット法等の塗布法を用いることができる。
【0091】
ポリマー導電層は、前述のポリマー(A)またはポリマー(B)を含むことで、導電性ポリマーの導電性が増強され、高い導電性を得ることができる。また、ポリマー導電層は、ポリマー(A)またはポリマー(B)の高い透明性により、導電性ポリマー単独では得られない、高い透明性が得られる。さらに、ポリマー(A)またはポリマー(B)間で、脱水縮合により架橋するため、耐水性、耐溶媒性など膜強度が向上する。また、ポリマー(A)またはポリマー(B)を含むことで、ポリマー導電層の膜強度が向上すると共に、ポリマー導電層の表面に撥液性が付与され、この上に金属ナノインク等による導電パターンを形成する際に、金属ナノインクの基板上での広がりを防止することができ、それにより金属導電パターンの微細化ができるため透明電極の透明性が向上する。また、リーク防止層の基板上での広がりについても防止することができる。
【0092】
ポリマー導電層の導電性ポリマーと、ポリマー(A)またはポリマー(B)との比率は、導電性ポリマーを100質量部とした時、ポリマー(A)またはポリマー(B)が30質量部から900質量部であることが好ましく、電流リーク防止、ポリマー(A)またはポリマー(B)の導電性増強効果、透明性の観点から、ポリマー(A)またはポリマー(B)が100質量部以上であることがより好ましい。ポリマー導電層の乾燥膜厚は30〜2000nmであることが好ましい。導電性の点から、100nm以上であることがより好ましく、透明性の点から、1000nm以下であることがより好ましい。
【0093】
ポリマー導電層を塗布した後、適宜乾燥処理を施すことができる。乾燥処理の条件として特に制限はないが、基材や導電層が損傷しない範囲の温度で高温乾燥処理することが好ましい。例えば、80℃以上の温度をかけることができ、上限は導電層が損傷を与えない温度として300℃程度までは可能な領域と考えられる。時間は10秒から10分程度の範囲が好ましい。さらに、熱処理は、150℃以上300℃以下の温度で行う事が好ましい。当該範囲の温度で反応を行うと、反応促進効果を高めることができるためである。熱処理時間は、1分以上行うことが好ましい。処理時間の上限は特にないが、生産性の観点から24時間以下であることが好ましい。ただし熱処理温度が200℃を超える範囲では、30分以内に抑えることが好ましい。熱処理は、ポリマー導電層を塗布、乾燥した後、オンラインで行ってもよく、オフラインで行ってもよい。オフラインで行う場合、さらに減圧下で行うことが、水分の乾燥促進にもつながり、好ましい。
【0094】
本発明において、酸触媒を用いてポリマー(A)またはポリマー(B)の架橋反応を促進、完了させることができる。酸触媒としては、塩酸、硫酸や硫酸アンモニウムを用いることができる。また導電性ポリマーにドーパントとして用いるポリアニオンにおいて、スルホ基含有ポリアニオンを使用することで、ドーパントと触媒を兼用することができる。
【0095】
本発明の導電性ポリマー及びポリマー(A)またはポリマー(B)を含む分散液は、ポリマー導電層の導電性、透明性、平滑性を同時に満たす範囲において、さらに他の透明なポリマーや添加剤や架橋剤を含有してもよい。
【0096】
透明なポリマーとしては、天然高分子樹脂または合成高分子樹脂から広く選択して使用することができ、水溶性高分子または水性高分子エマルジョンが特に好ましい。水溶性高分子としては、天然高分子のデンプン、ゼラチン、寒天等、半合成高分子のヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、合成高分子のポリビニルアルコール、ポリアクリル酸系高分子、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン等が、水性高分子エマルジョンとしては、アクリル系樹脂(アクリルシリコン変性樹脂、フッ素変性アクリル樹脂、ウレタン変性アクリル樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂等)、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等が、使用することができる。
【0097】
また、合成高分子樹脂としては、透明な熱可塑性樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、フッ化ビニリデン)や、熱・光・電子線・放射線で硬化する透明硬化性樹脂(例えば、メラミンアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル変性シリケート等のシリコン樹脂)を使用することができる。
【0098】
添加剤としては、可塑剤、酸化防止剤や硫化防止剤等の安定剤、界面活性剤、溶解促進剤、重合禁止剤、染料や顔料等の着色剤等が挙げられる。さらに、塗布性等の作業性を高める観点から、溶媒(例えば、水や、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、炭化水素類等の有機溶媒)を含んでいてもよい。
【0099】
ポリマー(A)またはポリマー(B)の架橋剤としては、例えばオキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、阻止イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、ホルムアルデヒド系架橋剤等を単独あるいは複数併用して用いることができる。
【0100】
〔リーク防止層〕
本発明における透明電極は、金属導電層が、リーク防止層で被覆されていることを特徴とする。ここで、本発明におけるリーク防止層とは、電極間リークや短絡を防止するための層であり、金属導電層を被覆している。
【0101】
また、本発明における被覆とは、ポリマー導電層上に金属導電層をパターン状に積層した際に、金属導電層がむき出しになっている部分(以下、金属導電層表面ともいう)をリーク防止層で覆うことを指し、金属導電層表面の90%以上をリーク防止層で覆っている状態が好ましく、最も好ましくは、リーク防止層で完全に覆われていることである。
【0102】
リーク防止層による金属導電層表面の被覆率(金属導電層表面の被覆されている割合)は、被覆前後での導電部面積比から算出することができる。例えば、導電性AFM(SII社製)にて金属導電層表面の導電部面積を抽出することにより被覆率を算出することができる。
【0103】
また、リーク防止層は、金属導電層表面が、本発明の透明電極を有機電子素子に用いた場合において、突起部が起因となる電極間リークや短絡を抑制できる程度に被覆されており、電極間方向の抵抗値がポリマー導電層と同等かそれ以上が好ましく、有機電子素子の有機機能層と同等かそれ以上がより好ましく、電気的に絶縁されているのがさらに好ましい。電気的に絶縁されていると、例えば本発明の透明電極を有機EL素子に用いた場合、金属導電層による光不透過部が有機EL素子の発光に寄与しないので、発光の外部取り出し量子効率が向上するため特に好ましく、さらに本発明のポリマー導電層の撥液性によりリーク防止層も細線化されるので、非発光領域も最小限にすることができる。
【0104】
本発明のリーク防止層に用いる材料としては特に限定されないが、例えば本発明のポリマー導電層として用いた材料を用いることができる。本発明のリーク防止層により金属導電層表面の突起を埋めることで、表面平滑性及び局所的な電界集中が改善される。
【0105】
また、本発明に係るリーク防止層としては、絶縁層を好ましく用いることができる。絶縁層は、10−6S/m以下の導電率である層をいう。
【0106】
絶縁層に用いる材料としては特に制限はなく、例えば、スルホ基含有ポリアニオンを用いて、本発明のポリマー(A)またはポリマー(B)と脱水縮合により架橋して絶縁層を形成することができる。絶縁層に用いる他の材料としては、硬化型樹脂が挙げられる。硬化型樹脂としては、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等が挙げられる。
【0107】
本発明のリーク防止層を形成する方法としては、金属導電層表面がリーク防止層で被覆されるように、金属導電層と同じパターン形状に、金属導電層表面の上にリーク防止層を印刷する方法が好ましい。印刷方法としては特に制限はなく、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷法により所望の形状に印刷し形成できる。
【0108】
リーク防止層の厚さは、0.1〜10μmが好ましい。厚さが0.1μm以上だと、有機電子素子の形成において、所望のリーク防止性が得られ、また10μm以下では、例えば有機EL素子に用いた場合に、外部取り出し量子効率に影響を与えない範囲である。
【0109】
電極間リークや短絡の有無は、例えば、透明電極を用いた有機電子素子の整流比を測定して評価することができる。整流比は、各有機電子素子に、正電圧/逆電圧を印加した時の電流値を測定し、下記の計算式により整流比を求め、下記基準で評価することができる。電極間リークがあると、整流比が低い値となる。10以上であることが実用的範囲である。
【0110】
整流比=正電圧印加時の電流値/逆電圧印加時の電流値
他の測定方法としては、コンダクティブ原子間力顕微鏡(C−AFM: Conductive Atomic Force Microscope)を用いて、導電性の探針を使用してコンタクトAFMで透明電極の表面形状を測定しながら、探針と試料間に一定のバイアス電圧を印加して、探針からの電流値を計測する方法で測定することもできる。
【0111】
〔透明電極〕
本発明における透明電極は、本発明のポリマー導電層の上に、金属導電層がパターン状に積層されていることを特徴とする。金属導電層が高い導電性を有し、ポリマー導電層が電流の面均一性及び電極表面の平滑性を向上させ、透明性及び導電性に優れた、有機電子素子に用いた場合においても、大面積化にも対応可能で長寿命の透明電極を得ることができる。
【0112】
本発明における透明電極の全光線透過率は、70%以上、好ましくは80%以上であることが望ましい。全光線透過率は、分光光度計等を用いた公知の方法に従って測定することができる。
【0113】
本発明における透明電極の導電部の電気抵抗値としては、大面積の有機電子素子に用いるためには、表面比抵抗は100Ω/□以下であることが好ましく、20Ω/□以下であることがより好ましい。表面比抵抗は、例えば、JIS K6911、ASTM D257、等に準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
【0114】
〔有機電子素子〕
本発明における有機電子素子は、本発明の方法で製造された透明電極と有機機能層とを有する。
【0115】
例えば、本発明の方法で形成された透明電極を第一電極として、この第一電極の上に有機機能層を形成し、さらにこの有機機能層の上に対向電極として第二電極を形成することによって、有機電子素子得ることができる。
【0116】
有機機能層としては、有機発光層、有機光電変換層、液晶ポリマー層など特に限定無く挙げることができるが、本発明は、有機機能層が薄膜でかつ電流駆動系のものである有機発光層、有機光電変換層である場合において、特に有効である。
【0117】
以下、本発明の有機電子素子が、有機EL素子および有機光電変換素子である場合のその構成要素について説明する。
【0118】
(有機EL素子)
〈有機機能層構成〉
〔有機発光層〕
本発明において、有機機能層としての有機発光層を有する有機EL素子は、有機発光層に加えて、ホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層、ホールブロック層、電子ブロック層などの有機発光層と併用して発光を制御する層を有しても良い。
【0119】
本発明の透明電極上の導電性ポリマー層は、ホール注入層として働くことも可能であるので、ホール注入層を兼ねることも可能だが、独立にホール注入層を設けても良い。
【0120】
構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0121】
(i)(第一電極部)/発光層/電子輸送層/(第二電極部)
(ii)(第一電極部)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/(第二電極部)
(iii)(第一電極部)/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/(第二電極部)
(iv)(第一電極部)/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/陰極バッファー層/(第二電極部)
(v)(第一電極部)/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/陰極バッファー層/(第二電極部)
ここで、発光層は、発光極大波長が各々430〜480nm、510〜550nm、600〜640nmの範囲にある単色発光層であってもよく、また、これらの少なくとも3層の発光層を積層して白色発光層としたものであってもよく、さらに発光層間には非発光性の中間層を有していてもよい。本発明の有機EL素子としては、白色発光層であることが好ましい。
【0122】
また、本発明において有機発光層に使用できる発光材料またはドーピング材料としては、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチルベンゼン誘導体、ジスチルアリーレン誘導体、および各種蛍光色素および希土類金属錯体、燐光発光材料等があるが、これらに限定されるものではない。またこれらの化合物のうちから選択される発光材料を90〜99.5質量部、ドーピング材料を0.5〜10質量部含むようにすることも好ましい。
【0123】
有機発光層は上記の材料等を用いて公知の方法によって作製されるものであり、蒸着、塗布、転写などの方法が挙げられる。
【0124】
〔電極〕
本発明の透明電極は、上記の第一、または第二電極部で使用される。第一電極部が陽極で第二電極部が陰極であることが好ましい態様である。
【0125】
第二電極部は導電材単独層であっても良いが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用してもよい。第二電極部の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。
【0126】
このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。
【0127】
これらの中で、電子注入性および酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
【0128】
第二電極部の導電材として金属材料を用いれば第二電極側に来た光は反射されて第一電極部側にもどる。第二電極部の導電材として金属材料を用いることで、この光が再利用可能となりより取り出しの効率が向上する。
【0129】
(有機光電変換素子)
有機光電変換素子は、第一電極部、バルクヘテロジャンクション構造(p型半導体層およびn型半導体層)を有する光電変換層(以下、バルクヘテロジャンクション層とも呼ぶ)、第二電極部が積層された構造を有する。
【0130】
光電変換層と第二電極部との間に電子輸送層などの中間層を有しても良い。
【0131】
〔光電変換層〕
光電変換層は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を構成している。p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプター)として機能する。
【0132】
ここで、電子供与体および電子受容体は、“光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体および電子受容体”であり、電極のように単に電子を供与あるいは受容するものではなく、光反応によって、電子を供与あるいは受容するものである。
【0133】
p型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族化合物や共役系化合物が挙げられる。
【0134】
縮合多環芳香族化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、およびこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
【0135】
共役系化合物としては、例えば、ポリチオフェンおよびそのオリゴマー、ポリピロールおよびそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレンおよびそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレンおよびそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレンおよびそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、テトラチアフルバレン化合物、キノン化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、フラーレンおよびこれらの誘導体あるいは混合物を挙げることができる。
【0136】
また、特にポリチオフェンおよびそのオリゴマーのうち、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
【0137】
その他、高分子p型半導体の例としては、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリパラフェニレンスルフィド、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリカルバゾール、ポリイソチアナフテン、ポリヘプタジイン、ポリキノリン、ポリアニリンなどが挙げられ、さらには特開2006−36755号公報などの置換−無置換交互共重合ポリチオフェン、特開2007−51289号公報、特開2005−76030号公報、J.Amer.Chem.Soc.,2007,p4112、J.Amer.Chem.Soc.,2007,p7246などの縮環チオフェン構造を有するポリマー、WO2008/000664、Adv.Mater.,2007,p4160、Macromolecules,2007,Vol.40,p1981などのチオフェン共重合体などを挙げることができる。
【0138】
さらに、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンジチオテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、BEDTTTF−ヨウ素錯体、TCNQ−ヨウ素錯体、等の有機分子錯体、C60、C70、C76、C78、C84等のフラーレン類、SWNT等のカーボンナノチューブ、メロシアニン色素類、ヘミシアニン色素類等の色素等、さらにポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマーや特開2000−260999号に記載の有機・無機混成材料も用いることができる。
【0139】
これらのπ共役系材料のうちでも、ペンタセン等の縮合多環芳香族化合物、フラーレン類、縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、金属フタロシアニン、金属ポルフィリンよりなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。また、ペンタセン類がより好ましい。
【0140】
ペンタセン類の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986等に記載の置換アセン類およびその誘導体等が挙げられる。
【0141】
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。そのような化合物としては、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物、および米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、特開2007−224019号公報等に記載のポルフィリンプレカーサー等のような、プレカーサータイプの化合物(前駆体)が挙げられる。
【0142】
これらの中でも、後者のプリカーサータイプの方が好ましく用いることができる。
【0143】
これは、プリカーサータイプの方が、変換後に不溶化するため、バルクヘテロジャンクション層の上に正孔輸送層・電子輸送層・正孔ブロック層・電子ブロック層等を溶液プロセスで形成する際に、バルクヘテロジャンクション層が溶解してしまうことがなくなるため、前記の層を構成する材料とバルクヘテロジャンクション層を形成する材料とが混合することがなくなり、一層の効率向上・寿命向上を達成することができるためである。
【0144】
p型半導体材料としては、p型半導体材料前駆体に熱・光・放射線・化学反応を引き起こす化合物の蒸気に晒す、等の方法によって化学構造変化を起こし、p型半導体材料に変換された化合物であることが好ましい。中でも熱によって科学構造変化を起こす化合物が好ましい。
【0145】
n型半導体材料の例としては、フラーレン、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む、高分子化合物が挙げられる。
【0146】
中でも、フラーレン含有高分子化合物が好ましい。フラーレン含有高分子化合物としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等を骨格に持つ高分子化合物が挙げられる。フラーレン含有高分子化合物では、フラーレンC60を骨格に持つ高分子化合物(誘導体)が好ましい。
【0147】
フラーレン含有ポリマーとしては、大別してフラーレンが高分子主鎖からペンダントされたポリマーと、フラーレンが高分子主鎖に含有されるポリマーとに大別されるが、フラーレンがポリマーの主鎖に含有されている化合物が好ましい。
【0148】
これは、フラーレンが主鎖に含有されているポリマーは、ポリマーが分岐構造を有さないため、固体化した際に高密度なパッキングができ、結果として高い移動度を得ることができるためではないかと推定される。
【0149】
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。
【0150】
本発明の光電変換素子を、太陽電池などの光電変換デバイスとして用いる形態としては、光電変換素子を単層で利用してもよいし、積層(タンデム型)して利用してもよい。
【0151】
また、光電変換デバイスは、環境中の酸素、水分等で劣化しないために、公知の手法によって封止することが好ましい。
【実施例】
【0152】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
【0153】
《透明電極の作製》
〔透明電極TCF−1の作製(比較例)〕
厚さ100μm、180mm×180mmのガラス基板上に、150mm×150mmの面積に、ITOを平均膜厚150nmで蒸着し、透明電極TCF−1を作製した。
【0154】
〔透明電極TCF−2の作製(比較例)〕
厚さ100μm、180mm×180mmのガラス基板上に、銀ナノ粒子インキ1(TEC−PA−010;InkTec社製)を用いて、50μm幅、1mmピッチ、正方形格子状のスクリーン版パターンにて、小型厚膜半自動印刷機STF−150IP(東海商事社製)を用い、スクリーン印刷方式で金属導電層の印刷を行った。パターンを印刷するエリアの面積は150mm×150mmとした。印刷後のガラス基板を、ホットプレートを用いて250℃で5分間の焼成を行い、ガラス基板上に金属導電層を形成した。
【0155】
金属導電層のパターンを、高輝度非接触3次元表面形状粗さ計WYKO NT9100(日本ビーコ社製)で測定したところ、パターンの幅は80μm、平均高さ500nmであった。
【0156】
上記で得られた金属導電層を形成したガラス基板上に、金属導電層の印刷面積に合わせて、ITOを平均膜厚150nmで蒸着し、透明電極TCF−2を作製した。
【0157】
〔透明電極TCF−3の作製(比較例)〕
TCF−1のITO蒸着面上に、ITO蒸着面積に合わせて、TCF−2と同様にして金属導電層の印刷を行い、ホットプレートを用いて250℃で5分間の焼成を行い、ITO基板上に金属導電層を形成した。
【0158】
金属導電層のパターンを測定したところ、パターンの幅は75μm、平均高さ530nmであった。
【0159】
次いで、WO2010/038181を参考にして、UV硬化樹脂(レイキュアーOP4300 HG O.C.C、十条ケミカル社製)を、形成した金属導電層パターン上に合わせて、50μm幅、1mmピッチ、正方形格子状のスクリーン版パターンにてスクリーン印刷方式で印刷したのち、UV処理することによりリーク防止層を形成して透明電極TCF−3を作製した。
【0160】
リーク防止層のパターンを測定したところ、パターンの幅は95μm、平均厚さ0.6μmであった。なお、リーク防止層の厚さは、金属導電層のパターン高さとの差から求めた。
【0161】
〔透明電極TCF−4の作製(本発明)〕
TCF−3において、ITOの代わりに、ポリマー導電層として、下記の方法で調製した導電性ポリマー液CP−1を、塗布幅150mmのアプリケーターを用いて、乾燥膜厚が500nmとなるようガラス基板上に塗布し、150mm×150mmの面積になるよう不要な部分を拭き取ったのち、250℃で10分熱処理を施した後、金属導電層の印刷を行う以外はTCF−3と同様にして、透明電極TCF−4を作製した。
【0162】
金属導電層のパターンを測定したところ、パターンの幅は50μm、平均高さ800nmであった。リーク防止層のパターンを測定したところ、パターンの幅は60μm、平均厚さ1μmであった。
【0163】
(導電性ポリマー液CP−1の調製)
(ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)の合成)
50ml三口フラスコに2−ブロモイソブチリルブロミド(7.3g、35mmol)とトリエチルアミン(2.48g、35mmol)およびTHF(20ml)を加え、アイスバスにより内温を0℃に保持した。
【0164】
この溶液内にオリゴエチレングリコール(10g、23mmol、エチレングリコールユニット7〜8、Laporte Specialties社製)の33%THF溶液30mlを滴下した。30分攪拌後、溶液を室温にし、さらに4時間攪拌した。
【0165】
THFをロータリーエバポレーターにより減圧除去後、残渣をジエチルエーテルに溶解し、分液ロートに移した。水を加えエーテル層を3回洗浄後、エーテル層をMgSOにより乾燥させた。エーテルをロータリーエバポレーターにより減圧留去し、開始剤1を8.2g(収率73%)得た。
【0166】
開始剤1(500mg、1.02mmol)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(4.64g、40mmol、東京化成社製)、50:50 v/v% メタノール/水混合溶媒5mlをシュレンク管に投入し、減圧下液体窒素に10分間シュレンク管を浸した。
【0167】
シュレンク管を液体窒素から出し、5分後に窒素置換を行った。この操作を3回行った後、窒素下で、ビピリジン(400mg、2.56mmol)、CuBr(147mg、1.02mmol)を加え、20℃で攪拌した。30分後、ろ紙とシリカを敷いた4cm桐山ロート上に反応溶液を滴下し、減圧で反応溶液を回収した。
【0168】
ロータリーエバポレーターにより溶媒を減圧留去後、50℃で3時間減圧乾燥した。その結果、数平均分子量13100、分子量分布1.17、数平均分子量<1000の含量0%、の水溶性バインダー樹脂1(ポリマー(A))を2.60g(収率84%)得た。
【0169】
構造、分子量は各々H−NMR(400MHz、日本電子社製)、GPC(Waters2695、Waters社製)で測定した。
【0170】
〈GPC測定条件〉
装置:Wagers2695(Separations Module)
検出器:Waters 2414 (Refractive Index Detector)
カラム:Shodex Asahipak GF−7M HQ
溶離液:ジメチルホルムアミド(20mM LiBr)
流速:1.0ml/min
温度:40℃
得られた水溶性バインダー樹脂1を純水に溶解し、固形分20%の水溶性バインダー樹脂1水溶液を調製した。
【0171】
次いで、下記のようにして導電性ポリマー液CP−1を調製した。
【0172】
(導電性ポリマー液CP−1)
水溶性バインダー樹脂1水溶液(固形分20%水溶液) 0.40g
PEDOT−PSS CLEVIOS PH750(固形分1.03%)
(Heraeus社製) 1.90g
ジメチルスルホキシド 0.10g
〔透明電極TCF−5の作製(本発明)〕
TCF−4において、リーク防止層を、導電性ポリマー液CP−1に変更して、50μm幅、1mmピッチ、正方形格子状のグラビア版パターンにて、形成した金属導電層パターン上に合わせてグラビア印刷を行い、250℃で10分熱処理を施しリーク防止層を形成する以外はTCF−4と同様にして、透明電極TCF−5を作製した。
【0173】
金属導電層のパターンを測定したところ、パターンの幅は50μm、平均高さ800nmであった。リーク防止層のパターンを測定したところ、パターンの幅は51μm、平均厚さ500nmであった。
【0174】
〔透明電極TCF−6の作製(本発明)〕
TCF−5において、リーク防止層を、下記のように調製したポリマー液P−1に変更して、50μm幅、1mmピッチ、正方形格子状のグラビア版パターンにて、形成した金属導電層パターン上に合わせてポリマー液P−1の印刷を行った。印刷機はRK Print Coat Instruments Ltd製グラビア印刷試験機K303MULTICOATERを用いた。その後250℃で10分熱処理を施しリーク防止層を形成する以外はTCF−5と同様にして、透明電極TCF−6を作製した。
【0175】
金属導電層のパターンを測定したところ、パターンの幅は50μm、平均高さ800nmであった。リーク防止層のパターンを測定したところ、パターンの幅は51μm、平均厚さ500nmであった。
【0176】
(ポリマー液P−1)
水溶性バインダー樹脂1水溶液(固形分20%水溶液) 0.40g
PSS(固形分20%水溶液)(ALDRICH社製) 0.10g
水 1.50g
PSS:ポリスチレンスルホン酸
〔透明電極TCF−7の作製(本発明)〕
TCF−6において、ポリマー導電層を、下記のように調製したポリマー液CP−2に変更する以外はTCF−6と同様にして、透明電極TCF−7を作製した。
【0177】
金属導電層のパターンを測定したところ、パターンの幅は50μm、平均高さ800nmであった。リーク防止層のパターンを測定したところ、パターンの幅は51μm、平均厚さ500nmであった。
【0178】
(導電性ポリマー液CP−2)
ポリヒドロキシエチルアクリルアミド(数平均分子量2万、固形分50%水溶液)
0.15g
PEDOT−PSS CLEVIOS PH750(固形分1.03%)
(Heraeus社製) 1.90g
ジメチルスルホキシド 0.10g
〔透明電極TCF−8の作製(本発明)〕
TCF−6において、導電性ポリマー液CP−1の水溶性バインダー樹脂1を、本発明の例示化合物I−1(30mol%)およびII−3(70mol%)のコポリマーとした導電性ポリマー液CP−3とした以外はTCF−6と同様にして、透明電極TCF−8を作製した。
【0179】
金属導電層のパターンを測定したところ、パターンの幅は50μm、平均高さ800nmであった。リーク防止層のパターンを測定したところ、パターンの幅は51μm、平均厚さ500nmであった。
【0180】
〔透明電極TCF−9の作製(本発明)〕
TCF−6において、導電性ポリマー液CP−1の水溶性バインダー樹脂1を、本発明の例示化合物I−2(50mol%)およびII−23(50mol%)のコポリマーとした導電性ポリマー液CP−4とした以外はTCF−6と同様にして、透明電極TCF−9を作製した。
【0181】
金属導電層のパターンを測定したところ、パターンの幅は50μm、平均高さ800nmであった。リーク防止層のパターンを測定したところ、パターンの幅は51μm、平均厚さ500nmであった。
【0182】
〔透明電極TCF−10の作製(本発明)〕
TCF−6において、導電性ポリマー液CP−1の水溶性バインダー樹脂1を、本発明の例示化合物I−19(90mol%)およびII−13(10mol%)のコポリマーとした導電性ポリマー液CP−4とした以外はTCF−6と同様にして、透明電極TCF−10を作製した。
【0183】
金属導電層のパターンを測定したところ、パターンの幅は50μm、平均高さ800nmであった。リーク防止層のパターンを測定したところ、パターンの幅は51μm、平均厚さ500nmであった。
【0184】
〔透明電極TCF−11の作製(比較例)〕
TCF−6において、ポリマー導電層を、下記のように調製したポリマー液CP−5に変更する以外はTCF−6と同様にして、透明電極TCF−11を作製した。
【0185】
金属導電層のパターンを測定したところ、パターンの幅は50μm、平均高さ800nmであった。リーク防止層のパターンを測定したところ、パターンの幅は51μm、平均厚さ500nmであった。
【0186】
(導電性ポリマー液CP−5)
ポリビニルアルコールPVA−205(固形分5%水溶液)(クラレ社製) 1.60g
PEDOT−PSS CLEVIOS PH750(固形分1.03%)
(Heraeus社製) 1.90g
ジメチルスルホキシド 0.10g
〔透明電極TCF−12の作製(比較例)〕
TCF−4において、金属導電層を形成した後、リーク防止層を形成しない以外はTCF−4と同様にして、透明電極TCF−12を作製した。
【0187】
金属導電層のパターンを測定したところ、パターンの幅は50μm、平均高さ800nmであった。
【0188】
《透明電極の測定及び評価》
下記方法で、各透明電極の導電部の透過率、表面比抵抗および電流リークについて測定し、透明性と導電性、電流リークの有無を評価した。
【0189】
(透過率)
透過率は、東京電色社製AUTOMATICHAZEMETER(MODEL TC−HIIIDP)を用いて、透明電極の全光線透過率を測定した。
【0190】
(表面比抵抗)
表面比抵抗は、ダイアインスツルメンツ製抵抗率計ロレスタGPを用いて透明電極の表面比抵抗を四端子法で測定した。
【0191】
(電流リーク)
電流リークの測定には、市販のコンダクティブ原子間力顕微鏡(C−AFM:Conductive Atomic Force Microscope)を用い、以下の方法で測定した。
【0192】
C−AFMとして、セイコーインスツル社製SPI3800Nプローブステーション及びSPA400多機能型ユニットを使用し、約1cm角の大きさに切り取った試料を、ピエゾスキャナー上の水平な試料台上にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際の試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位で捉えた。ピエゾスキャナーは、XY150μm、Z5μmが走査可能なものを使用した。カンチレバーは、セイコーインスツル社製RhコートカンチレバーSI−DF3−Rで、共振周波数27kHz、バネ定数1.6N/mのものを用い、C−AFMモード(Conductive Atomic Force Mode)で、透明電極の金属導電層が存在する部分において、任意の10視野について、50×50μmの領域を、バイアス電圧+0.5V、走査周波数0.1Hzで測定した。電流値が測定された部分が存在すれば、その部分が電流リーク発生点である。測定10視野のうち、1点以上電流リークが認められた視野数をカウントして、電流リークの有無を評価した。
【0193】
《有機EL素子の作製》
各透明電極を第一電極(陽極)に用いて、以下の手順でそれぞれ有機EL素子OLED−1〜−12を作製した。
【0194】
電極の上に、PEDOT−PSS CLEVIOS P AI 4083(固形分1.5%)(Heraeus社製)を、塗布幅150mmのアプリケーターを用いて、乾燥膜厚が30nmとなるようガラス基板上に塗布し、150mm×150mmの面積になるよう不要な部分を拭き取ったのち、乾燥させた。
【0195】
次に、透明電極を市販の真空蒸着装置内にセットし、真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を各々素子作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製またはタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
【0196】
次いで、以下の手順で各発光層を設けた。
【0197】
まず、真空度1×10−4Paまで減圧した後、下記α−NPDの入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、30nmの正孔輸送層を設けた。
【0198】
下記Ir−1が13質量%、下記Ir−14が3.7質量%の濃度になるように、Ir−1、Ir−14および下記化合物1−7を蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、発光極大波長が622nm、厚さ10nmの緑赤色燐光発光層を形成した。
【0199】
次いで、下記E−66が10質量%になるように、E−66および化合物1−7を蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、発光極大波長が471nm、厚さ15nmの青色燐光発光層を形成した。
【0200】
その後、下記M−1を膜厚5nmに蒸着して正孔阻止層を形成し、さらにCsFを膜厚比で10%になるようにM−1と共蒸着し、厚さ45nmの電子輸送層を形成した。
【0201】
各層形成に用いた化合物を下記に示す。
【0202】
【化6】

【0203】
形成した電子輸送層の上に、第一電極用外部取り出し端子および150mm×150mmの第二電極(陰極)形成用材料としてAlを5×10−4Paの真空下にてマスク蒸着し、厚さ100nmの第二電極を形成した。
【0204】
さらに、第一電極および第二電極の外部取り出し端子が形成できるように、端部を除き第二電極の周囲に接着剤を塗り、ポリエチレンテレフタレートを基材としAlを厚さ300nmで蒸着した可撓性封止部材を貼合した後、熱処理で接着剤を硬化させ封止膜を形成し、発光エリア150mm×150mmの有機EL素子を作製した。
【0205】
《有機EL素子の測定および評価》
下記方法で、上記のように作製した各有機EL素子の整流比、発光ムラ、外部取り出し量子効率および寿命を測定し、有機EL素子の発光均一性、効率および耐久性を評価した。
【0206】
(整流比)
整流比は、各有機EL素子に、+3V/−3Vの電圧を印加した時の電流値を測定し、下記の計算式により整流比を求め、下記基準で評価した。電極間リークがあると、整流比が低い値となる。10以上であることが実用的範囲である。
【0207】
整流比=+3V印加時の電流値/−3V印加時の電流値
◎:整流比10以上
○:整流比10以上10未満
△:整流比10以上10未満
×:整流比10未満
(発光ムラ)
発光ムラは、KEITHLEY製ソースメジャーユニット2400型を用いて、各有機EL素子に直流電圧を印加して輝度が1000cd/mになるよう発光させ、発光状態を下記基準で目視評価した。
【0208】
◎:完全に均一発光しており、問題ない
○:殆ど均一発光しており、問題ない
△:部分的に若干発光ムラが見られるが、実用的に許容できる
×:全面に渡って発光ムラが見られ、許容できない
(外部取り出し量子効率)
外部取り出し量子効率(η)は以下の式を用いて求めた。
【0209】
外部取り出し量子効率(%)=100×有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数
なお、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタミノルタ社製)により測定した発光スペクトルを各波長の光子のエネルギーから380〜780nmの光子数を求め、さらにランバーシアン仮定に基づき発光面から発光した光子数を求めた。また、有機EL素子に流した電子数は電流量から求めた。OLED−1の外部取り出し量子効率を100とし、相対値で評価した。120以上が実用的に良好な範囲である。
【0210】
(寿命)
各有機EL素子について、初期の輝度が5000cd/mになるよう一定電圧で連続発光させ、輝度が半減するまでの時間を求めた。OLED−1の半減時間を100とし、相対値で評価した。120以上が実用的に良好な範囲である。
【0211】
測定および評価の結果を表1、2に示す。
【0212】
【表1】

【0213】
PHEA:ポリヒドロキシエチルアクリレート
PHEAA:ポリヒドロキシエチルアクリルアミド
PVA:ポリビニルアルコール
【0214】
【表2】

【0215】
表1、2から、本発明の方法により得られた透明電極は、高い透明性、導電性を維持し、それを用いた有機EL素子は、発光ムラが少なく発光均一性に優れ、効率、耐久性に優れることが分かる。
【0216】
表1、2の結果を見ると、金属導電層のない透明電極TCF−1やポリマー導電層がない透明電極TCF−2は、電流リーク発生率、透明性、導電性等が本発明に比べて劣っていることがわかる。また、ITO蒸着により形成された導電層上に金属導電層がパターン状に積層され、さらに金属導電層上にリーク防止層が被覆された透明電極TCF−3は、本発明に比べて(例えば、透明電極TCF−4)に比べて電流リーク発生率、透明性、導電性共に劣っていることがわかる。これは、本発明に係るポリマー導電層にポリマー(A)またはポリマー(B)を含むことで、ポリマー導電層の膜強度が向上すると共に、ポリマー導電層表面に撥液性が付与され、金属ナノインク等による導電パターンを形成する際に、金属ナノインクの基板上での広がりを防止することができることが起因していると考えている。さらには、本発明の金属導電層がリーク防止層で被覆されている事により、表面平滑性及び局所的な電界集中が改善され、本発明の透明電極を有機電子素子に用いた際の電極間リークを防止できることや、またポリマー導電層表面の撥液性により、リーク防止層の基板上での広がりについても防止することができたためであると考えている。これは、本発明に係るポリマー(A)またはポリマー(B)が含まれていないポリマー電極層を用いた透明電極TCF−11及びリーク防止層のない透明電極TCF−12の結果を比較しても明らかである。
【符号の説明】
【0217】
1 透明基板
2 ポリマー導電層
3 金属導電層
4 リーク防止層
10 透明電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に、導電性ポリマーを含有するポリマー導電層が形成された透明電極において、
該ポリマー導電層が、下記構造単位(I)を有するポリマー(A)または下記構造単位(I)と構造単位(II)を有するポリマー(B)を含有し、該ポリマー導電層上に金属導電層がパターン状に積層され、
さらに該金属導電層が、リーク防止層で被覆されていることを特徴とする透明電極。
【化1】

〔式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Qは−C(=O)O−または−C(=O)−NRa−を表す。Raは水素原子、アルキル基またはNと共にモルホリンを形成するための原子団を表し、Aは置換或いは無置換アルキレン基または−(CHCHRbO)−CHCHRj−を表し、RbおよびRjは水素原子またはアルキル基を表す。xは平均繰り返しユニット数で1〜100の数である。yは0、1を表す。Zは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、モルホリノ基、−O−C(=O)−Rc、−O−SO−Rdまたは−OSiReを表す。Rc、RdまたはReはアルキル基、パーフルオロアルキル基またはアリール基を表す。但し、Qがモルホリノ基を有する場合、yは0であり、且つZは存在しない。〕
【請求項2】
前記金属導電層が、金属ナノ粒子を含有していることを特徴とする請求項1に記載の透明電極。
【請求項3】
前記金属ナノ粒子が、銀であることを特徴とする請求項2に記載の透明電極。
【請求項4】
前記リーク防止層が、絶縁層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明電極。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明電極を用いたことを特徴とする有機電子素子。

【図1】
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【公開番号】特開2012−248383(P2012−248383A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118813(P2011−118813)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】