説明

透明静電吸着シート

【課題】表示使用時には静電吸着力が高く、静電吸着力の持続性も充分で長期に亘り表示使用することができ、静電吸着力が湿度に影響され難く、且つ使用後は容易に剥がすことができ、表示使用前は印刷工程でロールへの貼り付きやシート同士のブロッキング等のトラブルが発生し難く、ハンドリング性が良好であり、且つ印刷、絵柄、情報等を透明な被着体を透して吸着面からも認識できる静電吸着シートを提供する。
【解決手段】片面に記録層5を備えた樹脂フィルム層4を含むラベル層2に帯電処理を施し、次いで支持体層3を樹脂フィルム層4と接触させて静電吸着させた積層体からなる静電吸着シート1であって、記録層5側の表面抵抗率が1×10-1Ω〜9×1012Ωであり、支持体層3側の表面抵抗率が1×10-1Ω〜9×1012Ωであり、且つラベル層2の不透明度が0%以上、50%未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の静電吸着シート(iii)を構成するラベル層(i)は、シール、ラベル、サイン、ポスター、広告等として、多様な被着体に貼着することができ、長期に亘り表示使用することができ、使用後には容易に剥がすことができる。
また、本発明は記録適性に優れた帯電式の静電吸着シート(iii)に関するものであって、特に印刷工程でハンドリング性が良く、インクの密着性が優れており、多様な印刷方式に対応できる静電吸着シート(iii)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁面、ガラス面、柱、掲示板、ロッカー、書棚などの硬質の被着体に、印刷により作成したポスター、広告などを貼り付ける為には、接着剤、粘着テープなどが利用されてきた。近年、こうしたポスター、広告なども資材のリサイクルの観点から、使用後も再利用可能な状態で容易に剥離できるものが望まれている。何故なら接着剤や両面テープを使用したものは、剥離が容易でなく破れて再利用可能な状態でなくなり、また接着剤や粘着剤が残って資源としてのリサイクルも困難となり、結局、一度使用した後は廃棄物となるという問題がある為である。又、ポスター、広告などを接着剤や粘着テープ、両面テープを使用して壁面や柱などの被着体に貼り付けをすると、これを剥がした後に被着体側にも糊が残ってしまったり、表面の塗装が剥れたりする問題が発生する。
【0003】
接着剤や粘着テープを使用せずにポスター、広告を掲示する方法として、静電気による貼り付けを可能とした吸着方式のフィルムの利用が提案されている。例えば、特許文献1、2には静電吸着力を付与したポリ塩化ビニルフィルム、特許文献3には静電吸着力を付与したポリプロピレン系フィルムが提案されている。
しかしながら、これらフィルムは、接着剤や粘着テープ等の代替とはなるが、それ自体は記録適性を有していないので、ポスター等の表示物として利用するためには所望の物品にこのようなフィルムを貼りあわせた上で使用しなければならない。またこれらのフィルムは、静電吸着力を維持するために特定の物質を配合しているが、持続力が不十分である等の欠点があった。
【0004】
特許文献4、5、6には静電吸着可能なポリマーからなる多孔質のフィルムが提案されている。これらはフィルムを多孔質にすることによりフィルムの有する表面積が大きくなり、帯電した電荷を保持できる性能は向上しているものの、この多孔質フィルムは、塗工により作成されており、使用できるポリマーは溶剤に可溶なポリマーに限定され、また透湿性の高いポリマーを使用していることと、形成された空孔が独立気泡でないことから、電荷の保持性能が湿度により変化してしまい、静電吸着力も湿度に影響されてしまう欠点があった。
【0005】
特許文献7には、平板状の気泡を含有するフィルムの内部に、大きな単一極性の電荷を与えたフィルムが提案されている。この方式で作成されたフィルムは、静電吸着力が高く、その持続性も高いという長所がある。しかしながら、その高い静電吸着力のために、後段の印刷の際に、印刷機のロールなどに貼り付いてしまい絵柄がズレてしまったり、印刷中にゴミなどを拾ってしまい汚れてしまうなどの欠点がある。また特許文献1〜3のフィルムと同様に記録適性を有していないためにインキの密着性が不十分であるという欠点もあった。
【0006】
そこで、本発明者らは特許文献8に開示する如く、記録層を有する樹脂フィルムに、接着剤を介して、帯電防止処理を施した支持体を積層して積層フィルムを形成し、次いでこの積層フィルムに電荷を与える、即ち帯電処理を施す、手法を開発した。しかしながら、同手法において与えた電荷は、樹脂フィルムと支持体の両者に分散してしまうために、樹脂フィルムの静電吸着力を充分に高められないという欠点があることが判明した。
更に、特許文献1〜8に開示されているフィルムは何れも不透明なものであることから、窓等のガラス面に貼り付けた際に、被着体を介して印刷等を明瞭に視認することはできず、またフィルムを貼り付けた箇所は見通しができなくなるという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭63−030940号公報
【特許文献2】特開昭58−098351号公報
【特許文献3】特開昭61−000251号公報
【特許文献4】特開平06−083266号公報
【特許文献5】特許第3770926号公報
【特許文献6】特開平07−244461号公報
【特許文献7】特表平10−504248号公報
【特許文献8】特開2010−023502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記先行技術の欠点を鑑み、印刷物をそのままポスター、広告等として被着体に貼り付け表示することが可能であり、表示使用時には静電吸着力が高く、静電吸着力の持続性も充分で長期に亘り表示使用することができ、静電吸着力が湿度に影響され難く、且つ使用後は容易に剥がすことができる静電吸着シートでありながら、表示使用前は外部に静電吸着力を発現しないために、特に印刷工程でロールへの貼り付きやシート同士のブロッキング等のトラブルが発生し難く、ハンドリング性が良好であり、且つインクの密着性が優れていることから、多様な印刷方式に対応できる静電吸着シートを提供することを目的とする。また、同静電吸着シートは透明または半透明なものであり、これに施した印刷、絵柄、情報等を透明な被着体を透して吸着面からも認識できる静電吸着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、これらの課題を解決する為に、鋭意検討を進めた結果、特定の工程を経て特定の構造を有する積層体を作成することによって、所期の特性を有する静電吸着シートを提供し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の通りのものである。
(1)片面に記録層(B)を備えた樹脂フィルム層(A)を含むラベル層(i)に帯電処理を施し、次いで支持体層(ii)とラベル層(i)の樹脂フィルム層(A)を静電吸着させた積層体からなる静電吸着シート(iii)であって、ラベル層(i)側の表面抵抗率が1×10-1Ω〜9×1012Ωであり、支持体層(ii)側の表面抵抗率が1×10-1Ω〜9×1012Ωであり、且つラベル層(i)の不透明度が0%以上、50%未満であることを特徴とする静電吸着シート(iii)に関する。
(2)支持体層(ii)に帯電処理を施し、次いで片面に記録層(B)を備えた樹脂フィルム層(A)を含むラベル層(i)の樹脂フィルム層(A)と支持体層(ii)を静電吸着させた積層体からなる静電吸着シート(iii)であって、ラベル層(i)側の表面抵抗率が1×10-1Ω〜9×1012Ωであり、支持体層(ii)側の表面抵抗率が1×10-1Ω〜9×1012Ωであり、且つラベル層(i)の不透明度が0%以上、50%未満であることを特徴とする静電吸着シート(iii)に関する。
【0010】
(3)ラベル層(i)の樹脂フィルム層(A)側の面の表面抵抗率は1×1013Ω〜9×1017Ωであり、且つ、支持体層(ii)の樹脂フィルム層(A)と接する側の面の表面抵抗率は1×1013Ω〜9×1017Ωであることが好ましく、
(4)帯電処理は直流式コロナ放電処理であるが好ましい。
(5)樹脂フィルム層(A)は熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、
(6)該熱可塑性樹脂はポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。
(7)樹脂フィルム層(A)は少なくとも1軸方向に延伸された延伸樹脂フィルムを含むことが好ましく、
(8)樹脂フィルム層(A)の空孔率は0〜10%であることが好ましい。
【0011】
(9)記録層(B)は帯電防止機能を有するポリマーを含有することが好ましく、
(10)該帯電防止機能を有するポリマーは第四級アンモニウム塩型共重合体およびアルカリ金属塩含有ポリマーの少なくとも一方を含むことが好ましく、
(11)記録層(B)はアルカリ金属イオンを0.01〜1重量%を含むことが好ましく、
(12)該アルカリ金属イオンはリチウムイオンを含むことが好ましい。
(13)ラベル層(i)のガーレ柔軟度は5〜1000mgfであることが好ましく、
(14)ラベル層(i)の水蒸気透過係数は0.01〜2.50g・mm/(m2・24hr)であることが好ましい。
【0012】
(15)支持体層(ii)は熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、
(16)支持体層(ii)の比誘電率は1.1〜5.0であることが好ましい。
(17)ラベル層(i)の厚みは20〜500μmであり、支持体層(ii)の厚みは20〜500μmであることが好ましい。
(18)また本発明は、上記(1)〜(17)のいずれかに記載の静電吸着シート(iii)の記録層(B)側表面に印刷を施してなる記録物、を含み、
(19)また本発明は、上記(18)に記載の記録物より支持体層(ii)を剥がしたラベル層(i)よりなる表示物、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、印刷物をそのままポスター、広告等として被着体に貼り付け表示することが可能であり、表示使用時には静電吸着力が高く、静電吸着力の持続性も充分で長期に亘り表示使用することができ、静電吸着力が湿度に影響され難く、且つ使用後は容易に剥がすことができる静電吸着シートでありながら、表示使用前は外部に静電吸着力を発現しないために、特に印刷工程でロールへの貼り付きやシート同士のブロッキング等のトラブルが発生し難く、ハンドリング性が良好であり、且つインクの密着性が優れていることから、多様な印刷方式に対応できる静電吸着シートを提供することができた。
また、同静電吸着シートは透明または半透明なものであり、これに施した印刷、絵柄、情報等を透明な被着体を透して吸着面からも認識できる静電吸着シートを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の積層フィルムの一態様の断面図である。
【図2】本発明の積層フィルムの別の一態様の断面図である。
【図3】本発明の積層フィルムの別の一態様の断面図である。
【図4】本発明の帯電処理に用い得るバッチ式コロナ放電処理装置の一例である。
【図5】本発明の帯電処理に用い得るバッチ式コロナ放電処理装置の一例である。
【図6】本発明の帯電処理に用い得る連続式コロナ放電処理装置の一例である。
【図7】本発明の帯電処理に用い得る連続式コロナ放電処理装置の一例である。
【図8】本発明の実施例に使用した静電吸着シート(iii)の製造装置の概略図である。
【図9】本発明の実施例に使用した吸着力測定装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の静電吸着シート(iii)は、片面に記録層(B)を備えた樹脂フィルム層(A)を含むラベル層(i)に帯電処理を施し、次いで支持体層(ii)をラベル層(i)樹脂フィルム層(A)と接触させて静電吸着させた積層体を含むものであり、また支持体層(ii)に帯電処理を施し、次いで片面に記録層(B)を備えた樹脂フィルム層(A)を含むラベル層(i)の樹脂フィルム層(A)と接触させて静電吸着させた積層体を含むものであり、その両面は静電気が帯びにくいものであるが、支持体層(ii)から剥離したラベル層(i)は静電気により被着体に吸着可能なものである。
【0016】
[ラベル層(i)]
本発明の静電吸着シート(iii)を構成するラベル層(i)は、シール、ラベル、サイン、ポスター、広告等の表示物として使用できる。ラベル層(i)は、種々の被着体に貼り付け表示することが可能であり、表示使用時には静電吸着力が高く、静電吸着力の持続性も充分で長期に亘り表示使用することができ、静電吸着力が湿度に影響され難く、且つ使用後は容易に剥がすことができるという特徴を有する。ラベル層(i)は、その片面に記録層(B)を備えた樹脂フィルム層(A)を含むものとして構成される。
ラベル層(i)の厚みは20〜500μmであることが好ましく、25〜400μmであることがより好ましく、30〜200μmであることがさらに好ましく、40〜150μmであることが特に好ましい。
ラベル層(i)の厚みが20μm未満ではラベル層(i)を被着体に貼り付ける際にシワが入り易く、上手く貼り付けできずに外観が劣る傾向がある。逆に500μmを越えてしまうとラベル層(i)の自重が大きくなり、静電吸着力では自重を保持できずに被着体から落下してしまう場合がある。
【0017】
[樹脂フィルム層(A)]
本発明における樹脂フィルム層(A)はラベル層(i)を構成するものであって、帯電処理を施すことによって内部に電荷を保持し、その静電吸着力によってラベル層(i)を表示物として被着体に貼り付けることを可能にするものである。
本発明の樹脂フィルム層(A)は熱可塑性樹脂を含む。特に絶縁性の優れた熱可塑性樹脂を使用することにより、内部に蓄積した電荷を保持しやすく好ましい。
【0018】
樹脂フィルム層(A)に用いる熱可塑性樹脂の種類は特に制限されない。例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、プロピレン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン等の官能基含有ポリオレフィン系樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリブチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン等を使用することができる。これらの熱可塑性樹脂の中では、絶縁性と加工性に優れるポリオレフィン系樹脂、官能基含有ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂のより具体的な例としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキセン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、メチル−1−ペンテンなどのオレフィン類の単独重合体、及び、これらオレフィン類2種類以上からなる共重合体が挙げられる。
【0019】
官能基含有ポリオレフィン系樹脂のより具体的な例としては、前記オレフィン類と共重合可能な官能基含有モノマーとの共重合体が挙げられる。かかる官能基含有モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン類、酢酸ビニル、ビニルアルコール、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ブチル安息香酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類、アクリル酸、メタクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メタロール(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリル酸エステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、フェニルビニルエーテルなどのビニルエーテル類が特に代表的である。これら官能基含有モノマーの中から、必要に応じ1種類もしくは2種類以上を適宜選択し、共重合したものを用いることができる。
更に、これらポリオレフィン系樹脂及び官能基含有ポリオレフィン系樹脂を必要によりグラフト変性し使用することも可能である。
【0020】
グラフト変性には公知の手法が用いることができ、具体的な例としては、不飽和カルボン酸またはその誘導体によるグラフト変性が挙げられる。該不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。また、上記不飽和カルボン酸の誘導体としては、酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩等も使用可能である。具体的には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ジエチルエステル、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸−N−モノエチルアミド、マレイン酸−N,N−ジエチルアミド、マレイン酸−N−モノブチルアミド、マレイン酸−N,N−ジブチルアミド、フマル酸モノアミド、フマル酸ジアミド、フマル酸−N−モノエチルアミド、フマル酸−N,N−ジエチルアミド、フマル酸−N−モノブチルアミド、フマル酸−N,N−ジブチルアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム等が挙げられる。グラフト変性物は、グラフトモノマーをポリオレフィン系樹脂及び官能基含有ポリオレフィン系樹脂に対して、一般に0.005〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%グラフト変性したものである。
【0021】
樹脂フィルム層(A)の熱可塑性樹脂としては、上記の熱可塑性樹脂の中から1種を選択して単独で使用してもよいし、2種以上を選択して組み合わせて使用してもよい。
更にこれらポリオレフィン系樹脂の中でも、プロピレン系樹脂が、絶縁性、加工性、耐薬品性、コストの面などから好ましい。プロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体であり、アイソタクティックないしはシンジオタクティック及び種々の程度の立体規則性を示すポリプロピレンや、プロピレンを主成分とし、これと、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとを共重合させた共重合体を主成分として使用することが望ましい。この共重合体は、2元系でも3元系以上でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体であってもよい。プロピレン系樹脂には、プロピレン単独重合体よりも融点が低い樹脂を2〜25重量%配合して使用することが好ましい。そのような融点が低い樹脂として、高密度ないしは低密度のポリエチレンを例示することができる。
【0022】
本発明の樹脂フィルム層(A)に使用する熱可塑性樹脂には、その透明性を阻害しない範囲で無機微細粉末および有機フィラーの少なくとも一方を添加したものであっても良い。無機微細粉末や有機フィラーの添加により、樹脂フィルム層(A)の誘電率を改善できる場合がある。
樹脂フィルム層(A)における熱可塑性樹脂の配合量は、総量として50〜100重量%であることが好ましく、60〜100重量%であることがより好ましい。配合量が50重量%以上であれば、樹脂フィルム層(A)を成形しやすく、得られる樹脂フィルム層(A)中の熱可塑性樹脂に電荷を保持しやすい。
無機微細粉末を添加する場合は、レーザー回折による粒度分布計で測定した平均粒径が、通常0.01〜15μm、好ましくは0.1〜5μmのものを使用する。具体的には、炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、けいそう土、白土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ、ゼオライト、マイカ、セリサイト、ベントナイト、セピオライト、バーミキュライト、ドロマイト、ワラストナイト、ガラスファイバーなどを使用することができる。
【0023】
有機フィラーを添加する場合は、樹脂フィルム層(A)の主成分である熱可塑性樹脂とは異なる種類の樹脂を選択することが好ましい。例えば、熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合には、有機フィラーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン−6、ナイロン−6,6、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリメタクリレート等の重合体であって、ポリオレフィン系樹脂の融点よりも高い融点(例えば170〜300℃)ないしはガラス転移温度(例えば170〜280℃)を有し、かつ非相溶のものを使用することができる。
【0024】
樹脂フィルム層(A)には、必要に応じて、熱安定剤(酸化防止剤)、光安定剤、分散剤、滑剤などを添加することができる。熱安定剤を添加する場合は、通常0.001〜1重量%の範囲内で添加する。具体的には、立体障害フェノール系、リン系、アミン系等の安定剤などを使用することができる。光安定剤を使用する場合は、通常0.001〜1重量%の範囲内で使用する。具体的には、立体障害アミン系やベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系の光安定剤などを使用することができる。分散剤や滑剤は、例えば無機微細粉末を分散させる目的で使用する。使用量は通常0.01〜4重量%の範囲内にする。具体的には、シランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸ないしはそれらの塩等を使用することができる。
【0025】
樹脂フィルム層(A)の肉厚は、20〜500μmであることが好ましく、より好ましくは30〜400μmの範囲であり、更に好ましくは40〜300μmである。20μm未満では、樹脂フィルム層(A)単体を取り扱う際に、帯電により手などに貼り付いてしまい作業性が悪いものとなる。又、被着体に貼り付けた際にシワになり易いため外観が劣るものとなる。500μmを越えてしまうと、樹脂フィルム層(A)の自重が大きくなり、静電気の力では自重を保持できず被着体から落下してしまう。
【0026】
[多層化]
樹脂フィルム層(A)は、2層構造、3層以上の多層構造のものであってもよく、この多層構造の延伸軸数が1軸/1軸、1軸/2軸、2軸/1軸、1軸/1軸/2軸、1軸/2軸/1軸、2軸/1軸/1軸、1軸/2軸/2軸、2軸/2軸/1軸、2軸/2軸/2軸であっても良い。樹脂フィルム層(A)の多層化により、耐電圧性能の向上や、筆記性、耐擦過性、2次加工適性等の様々な機能の付加が可能となる。
樹脂フィルム層(A)を多層構造にする場合は公知の種々の方法が使用できるが、具体例としては、フィードブロック、マルチマニホールドを使用した多層ダイス方式と、複数のダイスを使用する押出しラミネーション方式等が挙げられる。又、多層ダイスと押出しラミネーションを組み合わせて使用することも可能である。
【0027】
[延伸]
樹脂フィルム層(A)は、少なくとも1軸方向に延伸された延伸樹脂フィルム層を含むことが好ましい。樹脂フィルム層の延伸は、通常用いられる種々の方法のいずれかによって行うことができる。
延伸の温度は、樹脂フィルム層(A)に主に用いる熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上から結晶部の融点以下の熱可塑性樹脂に好適な公知の温度範囲内で行うことができる。具体的には、樹脂フィルム層(A)の熱可塑性樹脂がプロピレン単独重合体(融点155〜167℃)の場合は100〜166℃、高密度ポリエチレン(融点121〜136℃)の場合は70〜135℃であり、融点より1〜70℃低い温度である。また、延伸速度は20〜350m/分にするのが好ましい。
【0028】
延伸方法としては、ロール群の周速差を利用した縦延伸、テンターオーブンを使用した横延伸、縦延伸と横延伸を組み合わせた逐次2軸延伸、圧延、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時2軸延伸、テンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時2軸延伸などを挙げることができる。又、インフレーションフィルムの延伸方法としては、チューブラー法による同時2軸延伸を挙げることができる。
延伸倍率は、特に限定されず、樹脂フィルム層(A)に用いる熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定する。例えば、熱可塑性樹脂としてプロピレン単独重合体ないしはその共重合体を使用しこれを一方向に延伸する場合は、約1.2〜12倍、好ましくは2〜10倍であり、2軸延伸の場合には、面積倍率で1.5〜60倍、好ましくは4〜50倍である。その他の熱可塑性樹脂を使用しこれを一方向に延伸する場合は、1.2〜10倍、好ましくは2〜5倍であり、2軸延伸の場合には、面積倍率で1.5〜20倍、好ましくは4〜12倍である。
【0029】
このようにして得られる樹脂フィルム層(A)は、透明乃至半透明なものであり、微細な空孔をフィルム内部に有しないか少量有するものであり、次式(1)で算出された空孔率が、0〜10%であることが好ましく、0〜5%であることがより好ましく、0〜3%であることが特に好ましい。空孔率が10%を超えると、空孔による光拡散率の向上効果により、不透明度の高い樹脂フィルム層(A)となり、本発明の目的とする不透明度を有するラベル層(i)を得ることが困難となる傾向がある。
【数1】

【0030】
樹脂フィルム層(A)の記録層(B)を設けない面の表面抵抗率は、1×1013〜9×1017Ωの範囲であることが好ましい。該表面抵抗率は、5×1013〜9×1016Ωの範囲であることがより好ましく、1×1014〜9×1015Ωの範囲であることが更に好ましい。表面抵抗率が1×1013Ω未満になると、後述の帯電処理の際に電荷が表面を伝い逃げてしまうために、ラベル層(i)への電荷注入の効率が低下し帯電処理に過剰なエネルギーが必要となるか、或いは、帯電処理の効果が得られず静電吸着性能の低いものとなってしまう。一方、9×1017Ωを超える場合は、ラベル層(i)の機能としては問題ないが、現在公知の物資を使用してこの様な高絶縁性の表面を形成することは困難であり、実現できたとしても高コストの為、現実的でない。
樹脂フィルム層(A)の記録層(B)を設けない面の表面抵抗率を所望の範囲とすることは、熱可塑性樹脂として絶縁性に優れるポリオレフィン系樹脂を使用することや、これに配合する無機微細粉末の種類や量を調整することで達成できる。
【0031】
[記録層(B)]
本発明の静電吸着シート(iii)を構成するラベル層(i)は、前述の樹脂フィルム層(A)の片面に記録層(B)を備えたものである。
本発明における記録層(B)は、ラベル層(i)に帯電防止性能を付与することによって印刷工程でのトラブルを発生し難くしてハンドリング性を改善させるとともに、ラベル層(i)の印刷インキとの密着性を向上させて、その記録適性を向上させるものである。結果として本発明の静電吸着シート(iii)は多様な印刷方式に対応することができる。
【0032】
記録層(B)が帯電防止性能を有することにより、樹脂フィルム層(A)が内部に電荷を有している場合であっても、ラベル層(i)の記録層(B)面は静電吸着力が低いものとなり、更に静電吸着シート(iii)の状態では静電吸着性能を発揮しないものとなる。したがって、静電吸着シート(iii)は印刷工程でロールへの貼り付きやシート同士のブロッキング等のトラブルが発生し難いものとなる。
記録層(B)は、帯電防止剤0.1〜100重量%と高分子バインダー0〜99.9重量%と顔料粒子0〜70重量%を含むことが好ましく、帯電防止剤0.5〜70重量%と高分子バインダー30〜99.5重量%と顔料粒子0〜69.5重量%を含むことがより好ましく、帯電防止剤1〜50重量%と高分子バインダー50〜99重量%と顔料粒子0〜49重量%を含むことが更に好ましい。
記録層(B)は、これら成分を含む塗工層として、樹脂フィルム層(A)上に直接塗工により設けるか、或いは予め別のフィルム上に記録層(B)を形成して、これを樹脂フィルム層(A)にラミネートすることで形成することが好ましい。
【0033】
該帯電防止剤は、記録層(B)に帯電防止性能を付与するために添加するものであり、例えば、ステアリン酸モノグリセリド、アルキルジエタノールアミン、ソルビタンモノラウレート、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸塩などに代表される低分子量有機化合物系の帯電防止剤、ITO(インジウムドープド酸化錫)、ATO(アンチモンドープド酸化錫)、グラファイトウィスカなどに代表される導電性無機充填剤、ポリチオフェン、ポリピーロイル、ポリアニリンなどの分子鎖内のパイ電子により導電性を発揮するいわゆる電子導電性ポリマー、そしてポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンジアミン等の非イオン性ポリマー系の帯電防止剤、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート四級化物等の第四級アンモニウム塩型共重合体、アルキレンオキシド基および/または水酸基含有ポリマーへのアルカリ金属イオン添加物等のアルカリ金属塩含有ポリマーに代表される帯電防止機能を有するポリマーなどが挙げられる。
【0034】
これら帯電防止剤は、それぞれ特性があり、低分子量有機化合物系の帯電防止剤は、環境湿度に帯電防止性能が大きく影響されやすく、ブリードアウトによる印刷インキ転移性の低下やインキ密着性の低下が発生するなどの欠点がある。導電性無機充填剤は、少量の添加では充填剤同士が接触しないため帯電防止効果が充分に得られない欠点がある。又、導電性無機充填剤は、充填剤同士が接触しあう程度の量を添加するとバインダー量が著しく低くなる為、インキの密着性と帯電防止効果を両立することが難しいという欠点がある。電子導電性ポリマーは、共役系に由来する着色により一般的には黒色、緑色、或いは青灰色の着色が有り、これを用いれば優れた帯電防止効果は得られるものの、くすんだ色のラベルとなり印刷用原紙としては適さないなどの欠点がある。
帯電防止機能を有するポリマーは、インキの密着性、転移性への影響も小さく、着色も殆ど無いことから本発明の帯電防止機能を有するポリマーとして好ましい。
中でも、第四級アンモニウム塩型共重合体やアルカリ金属塩含有ポリマーは帯電防止性能が良好であり、環境湿度の帯電防止性能への影響が小さい為、より好ましい。
【0035】
[第四級アンモニウム塩型共重合体]
本発明で用い得る帯電防止機能を有するポリマーの一例として、第四級アンモニウム塩型共重合体よりなるマルチカチオン型水溶性ポリマーが挙げられる。該共重合体は、下記一般式(化1)で表される第四級アンモニウム塩型単量体構造単位(a)、下記一般式(化6)で表される疎水性単量体構造単位(b)、及びこれらと共重合可能な単量体からなる構造単位(c)を含有し、これら構造単位の重量割合を、(a):(b):(c)=30〜70:30〜70:0〜40(wt%)の範囲として、これらを共重合してなる第四級アンモニウム塩型共重合体である。
各構造単位(a)、(b)及び(c)の重量割合は、好ましくは35〜65:35〜65:0 〜20(wt%)、特に好ましくは40〜60:40〜60:0 〜10(wt%)である。
【0036】
(a)第四級アンモニウム塩型単量体単位
構造単位(a)を形成する第四級アンモニウム塩型単量体は、下記一般式(化1)で表されるアクリル酸乃至メタクリル酸のエステル乃至アミドである。該単位は構造内の2以上のカチオンにより該共重合体の帯電防止機能に寄与する成分である。該共重合体中の同成分が30重量%より少ないと、十分な帯電防止効果を与えることが出来ない。また70重量%を超えると過度に水溶性となり、高湿度条件下でべたつきの原因となる。
【化1】

【0037】
上記式中、Aはオキソ基(−O−)または第2級アミン基(−NH−)、R1は水素原子またはメチル基、R2は炭素数が2〜4のアルキレン基または下記一般式(化2)で表される2−ヒドロキシプロピレン基であり、R3,R4,R5及びR6は炭素数が1〜3のアルキル基、R7は炭素数が1〜10のアルキル基または炭素数が7〜10のアラルキル基、Xは塩素原子、臭素原子、または沃素原子、mは1〜3の整数を表わす。R3,R4,R5及びR6は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【化2】

【0038】
前記一般式(化1)で表される構造単位(a)を形成する第四級アンモニウム塩型単量体は、下記一般式(化3)で表されるジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミン含有単量体を、下記一般式(化5)で表される3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等の変性剤で、重合前に若しくは重合後に変性することによって得ることができる。
【化3】

【0039】
上記式中、Aはオキソ基(−O−)または第2級アミン基(−NH−)、R1は水素原子またはメチル基、R2は炭素数が2〜4のアルキレン基または下記一般式(化4)で表される2−ヒドロキシプロピレン基であり、R3,R4は炭素数が1〜3のアルキル基を表わす。R3とR4は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【化4】

【0040】
【化5】

上記式(化5)中、R5及びR6は炭素数が1〜3のアルキル基、R7は炭素数が1〜10のアルキル基または炭素数が7〜10のアラルキル基、Xは塩素原子、臭素原子、または沃素原子、mは1〜3の整数を表わす。R5とR6は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0041】
(b)疎水性単量体単位
構造単位(b)を形成する疎水性単量体は、下記一般式(化6)で表されるアクリル酸乃至メタクリル酸のエステルである。該単位は、該共重合体に親油性を付与するものであり、耐水性や印刷インキ転移性に寄与する成分である。印刷適性と帯電防止性の両立から、疎水性単量体との共重合が必要となる。ポリマー中の同成分が30重量%より少ないと、上記の効果が低下する。また70重量%を超えると相対的に帯電防止効果が低下する。
【化6】

【0042】
上記式中、R8は水素原子またはメチル基、R9は炭素数が1〜30のアルキル基、炭素数が7〜22のアラルキル基、または炭素数が5〜22のシクロアルキル基を表わす。
上記一般式(化6)で表される構造単位を形成する単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0043】
(c)共重合可能な他の単量体単位
また、必要に応じて共重合に使用される、上記単量体(a)成分及び単量体(b)成分と共重合可能な他の単量体単位としては、下記一般式(化7)〜(化11)で表されるスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル等の疎水性単量体や、ビニルピロリドン、(メタ)アクリルアミド等の親水性単量体を挙げることができる。これらの単量体は第四級アンモニウム塩型共重合体中に構造単位(c)として好適に組み込むことができる。該単位は該共重合体の共重合を容易とし、また塗工液調整時の溶媒への溶解性を調整するものである。
【0044】
【化7】

【0045】
【化8】

【0046】
【化9】

【0047】
【化10】

【0048】
【化11】

【0049】
[共重合]
上記共重合体を得るための共重合方法としては、ラジカル開始剤を用いた、塊状重合、溶液重合、乳化重合等の公知の重合方法を採用することができる。これらの中で好ましい重合方法は溶液重合法であり、該重合は、各単量体を溶媒に溶解し、これにラジカル重合開始剤を添加して、窒素気流下において加熱攪拌することにより実施される。溶媒は水、乃至はメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、セロソロブ等のアルコール類が好ましく、またこれらの溶媒を混合して使用してもよい。重合開始剤は、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリルなどのアゾ化合物が好適に用いられる。重合時の単量体固形分濃度は通常10〜60重量%であり、重合開始剤の濃度は単量体に対し通常0.1〜10重量%である。第四級アンモニウム塩型共重合体の分子量は、重合温度、重合時間、重合開始剤の種類及び量、溶剤使用量、連鎖移動剤等の重合条件により任意のレベルとすることができる。
本発明で用い得る第四級アンモニウム塩型共重合体の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量が1千〜100万の範囲内であることが一般的であるが、1千〜50万の範囲が好ましい。
【0050】
[アルカリ金属塩含有ポリマー]
本発明で用いうる帯電防止機能を有するポリマーの別の一例として、アルカリ金属塩含有ポリマーが挙げられる。該共重合体は下記一般式(化12)で表されるポリアルキレンオキシド化合物単量体構造単位(d)、上記一般式(化6)で表される疎水性単量体構造単位(b)、及びこれらと共重合可能な単量体からなる構造単位(c)を含有し、これら構造単位の重量割合を、(d):(b):(c)=1〜99:0〜99:0〜40(wt%)の範囲として、これらを共重合してなるアルカリ金属塩含有ポリマーである。
各構造単位(d)、(b)及び(c)の重量割合は、好ましくは20〜70:30〜80:0 〜20(wt%)、特に好ましくは30〜60:40〜70:0 〜10(wt%)である。
【0051】
(d)ポリアルキレンオキシド化合物単量体単位
構造単位(d)を形成するポリアルキレンオキシド化合物単量体は、下記一般式(化12)で表されるアクリル酸乃至メタクリル酸のエステルである。該単位は構造内のアニオン及びアルカリ金属イオンによりポリマー(C)の帯電防止機能に寄与する成分である。ポリマー中の同成分が1重量%より少ないと、十分な帯電防止効果を与えることが出来ない。また99重量%を超えると過度に水溶性となり、高湿度条件下でべたつきの原因となる。
【0052】
【化12】

【0053】
上記式中、R10は水素原子またはメチル基、R11は水素原子、塩素原子、またはメチル基、Aは下記の<1群>から選択される1種の連結基か、下記の<1群>から選択される1種以上の連結基と下記の<2群>から選択される1種以上の連結基とが交互に結合した連結基か、または単結合を表し、Mはアルカリ金属イオン、nは1〜100の整数を表す。
<1群>置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基、
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリーレン基、
<2群>−CONH−、−NHCO−、−OCONH−、−NHCOO−、
−NH−、−COO−、−OCO−、−O−、
【0054】
<1群>の炭素数1〜6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基が挙げられ、これらは直鎖状であっても分枝状であってもよいが好ましいのは直鎖状である。置換基としては、ヒドロキシル基、アリール基などが挙げられる。炭素数6〜20のアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基などが挙げられる。置換基としては、ヒドロキシル基、アルキル基などが挙げられる。アルキル基が置換したアリーレン基としては、トリレン基、キリリレン基などが挙げられる。
また、<2群>から選択される連結基としては、ウレタン基やエステル基を好ましく選択することができる。
【0055】
<1群>から選択される1種以上の連結基と<2群>から選択される1種以上の連結基とが交互に結合した連結基としては、「(1群から選択される連結基)−(2群から選択される連結基)」で表される連結基や、「(1群から選択される連結基)−(2群から選択される連結基)−(1群から選択される連結基)−(2群から選択される連結基)」で表される連結基などが挙げられる。後者の場合は、2種類の(1群から選択される連結基)は互いに同一であっても異なっていてもよく、また、2種類の(2群から選択される連結基)は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0056】
上記一般式(化12)において、nが2以上であるとき、n個のR11は同一であっても異なっていてもよいが、好ましいのは同一である場合である。nは1〜100の整数を表すが、2〜50が好ましく、3〜50がより好ましい。例えば、R11が水素原子の場合、nを10〜35、さらには15〜30、さらには20〜25の範囲内から選択したり、R11がメチル基の場合、nを1〜20、さらには3〜16、さらには5〜14の範囲内から選択したりしてもよい。
上記一般式(化12)において、Mはアルカリ金属であり、Li、Na、Kなどを挙げることができ、イオン半径の小さいLiを用いることが導電性の観点で好ましい。
【0057】
本発明において好適に用い得るポリアルキレンオキシド化合物単量体の例としては、例えば、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)クロロエチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレートなどの(ポリ)アルキレンオキシド(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、これらの具体例において、さらに上記一般式(化12)のAに相当する箇所に単結合以外の連結基を有するアルキレンオキシドモノマーも挙げられる。例えば、Aにウレタン結合を有する化合物として、特開平09−113704号公報に記載される化合物を使用することができる。
【0058】
Mに相当するアルカリ金属を導入する方法は特に制限されないが、通常はアルキレンオキシドモノマーにアルカリ金属塩を反応させて水酸基末端をイオン化することによりアルカリ金属イオンによるイオン導電性を持たせることができる。本発明において好適に用い得るアルカリ金属塩の例としては、リチウム、ナトリウムまたはカリウムの過塩素酸塩、またはこれらの塩化物、臭化物、ヨウ化物、チオシアン化物等の無機塩が挙げられる。これら無機塩を上記ポリアルキレンオキシド化合物単量体に添加してアルコキシド化することにより、アルカリ金属イオンによるイオン導電性を得ることができる。又、特開平09−113704公報には式1のAにウレタン結合を持ったアルキシド化合物が提案されている。
【0059】
本発明に用い得るアルカリ金属イオンとしては、前述のリチウム、ナトリウム、カリウム、を用いることが出来るが、中でもイオン半径の小さいリチウムが最適である。本発明の塗工層には、アルカリ金属イオン濃度として、好ましくは0.01〜1.00重量%、より好ましくは0.01〜0.70重量%、更に好ましく0.01〜0.50重量%となる様に帯電防止機能を有するポリマーを添加することが望ましく、アルカリ金属イオン濃度が0.01重量%未満では、十分な帯電防止効果が得られず、1.00重量%を超えると帯電防止効果は得られるものの金属イオンの増加から印刷インキとの密着性が低下してしまう。
【0060】
[共重合]
本発明で用い得るアルカリ金属塩含有ポリマーは、上記一般式(化12)で表されるポリアルキレンオキシド化合物単量体構造単位(d)と、上記一般式(化6)で表される疎水性単量体構造単位(b)と、これらと共重合可能な上記一般式(化7)〜(化11)等の単量体構造単位(c)とを共重合させることにより製造することができる。
このアルカリ金属塩含有ポリマーの製造方法は特に制限されず、公知の重合手法を単独乃至組み合わせて適宜用いることができるが、前出の第四級アンモニウム塩型共重合体と同様、ラジカル開始剤を用いた、塊状重合、溶液重合、乳化重合等の公知の重合方法を採用することが好ましい。
【0061】
これらの中でより好ましい重合方法は溶液重合法である。具体的には、窒素気流下において、原料として用いるポリアルキレンオキシド化合物単量体構造単位(d)、疎水性単量体構造単位(b)、共重合可能な単量体構造単位(c)等のモノマーを不活性有機溶媒、例えば、n−ヘキサン、n−ブタノール、2−プロパノール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノエチルエーテル等、に溶解し、これにラジカル重合開始剤を添加した後に、通常65〜150℃に加熱しながら攪拌することにより実施される。重合時間は通常1〜24時間に設定する。重合時の単量体固形分濃度は通常10〜60重量%であり、重合開始剤の濃度は単量体に対し通常0.1〜10重量%である。アルカリ金属塩含有ポリマーの分子量は、重合温度、重合時間、重合開始剤の種類及び量、溶剤使用量、連鎖移動剤等の重合条件により任意のレベルとすることができる。
【0062】
共重合に用いる重合開始剤は、脂溶性であることが好ましく、好適な重合開始剤として有機過酸化物、アゾニトリル等が挙げられる。有機過酸化物には、アルキルパーオキシド(ジアルキルパーオキシド)、アリールパーオキシド(ジアリールパーオキシド)、アシルパーオキシド(ジアシルパーオキシド)、アロイルパーオキシド(ジアロイルパーオキシド)、ケトンパーオキシド、パーオキシカーボネート(パーオキシジカーボネート)、パーオキシカーボレート、パーオキシカルボキシレート、ヒドロパーオキシド、パーオキシケタール、パーオキシエステル等が含まれる。アルキルパーオキシドとしては、ジイソプロピルパーオキシド、ジターシャリーブチルパーオキシド、ターシャリーブチルヒドロパーオキシド等が挙げられる。アリールパーオキシドとしては、ジクミルパーオキシド、クミルヒドロパーオキシド等が挙げられる。アシルパーオキシドとしては、ジラウロイルパーオキシド等が挙げられる。アロイルパーオキシドとしては、ジベンゾイルパーオキシド等が挙げられる。ケトンパーオキシドとしては、メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド等が挙げられる。アゾニトリルとしては、アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスイソプロピオニトリル等が挙げられる。
【0063】
本発明で用い得るアルカリ金属塩含有ポリマーの分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量が1万〜100万の範囲内であることが好ましい。分子量が1万以上であれば、形成した塗工層から同ポリマーが染み出し難くなるため、十分な耐水性が得られやすい傾向がある。分子量が100万以下であれば、バインダー成分と混和しやすいため塗工欠陥が生じにくくなり均一な帯電防止効果が得られやすい傾向がある。
【0064】
本発明の記録層(B)は、必要に応じて、高分子バインダーを含んでいても良い。該高分子バインダーは、記録層(B)を設ける樹脂フィルム層(A)、或いは別のフィルムとの密着性を有し、かつ印刷インキとの密着性を向上させる目的から、適宜使用する。
高分子バインダーの具体例としては、ポリエチレンイミン、炭素数1〜12のアルキル変性ポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン−尿素)、ポリ(エチレンイミン−尿素)のエチレンイミン付加物、ポリアミンポリアミド、ポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、およびポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物等のポリエチレンイミン系重合体、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、ポリアクリルアミドの誘導体、およびオキサゾリン基含有アクリル酸エステル系重合体等のアクリル酸エステル系重合体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等、加えて、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、尿素樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体樹脂、塩素化エチレン樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、ニトロセルロース樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体等が挙げられる。
【0065】
これらの高分子バインダーは、いずれか1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。これらの高分子バインダーは有機溶剤または水に希釈または分散した様態で用いることができる。これらの中でも、ポリエーテルウレタン、ポリエステルポリウレタン、アクリルウレタンなどのウレタン樹脂、若しくはアクリル酸エステル共重合体が、前述のイオン性ポリマー系の帯電防止機能を有するポリマーとの相性、即ち相溶性、がよく、混溶して塗料とした際に安定しており、塗工しやすく好ましい。
【0066】
本発明の記録層(B)は、必要に応じて顔料粒子を含んでいても良い。記録層(B)には0〜70重量%の範囲で顔料粒子を含むことが可能である。即ち70重量%以下の顔料粒子を含んでいても良く、含まなくても良い。
顔料粒子は、その吸油性による印刷インキの定着性向上、体質顔料として表面の風合いや光沢感向上、白色顔料として白色度向上、表面凹凸付与によるブロッキング防止性能向上、紫外線反射材として耐光性や耐候性向上、等の性能付与を考慮し適宜選択して使用できる。
【0067】
顔料粒子として、有機、無機の微細粉末が使用され、具体的な例としては、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、焼成クレイ、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、珪藻土、アクリル粒子、スチレン粒子、ポリエチレン粒子、ポリプロピレン粒子等を使用することができる。顔料粒子の粒子径は、好ましくは20μm以下のものであり、より好ましくは15μm以下のものである。顔料粒子の粒子径が20μmを超えると形成した塗工層から顔料粒子が脱落しやすくなり粉吹き現象が発生する。記録層(B)中の顔料粒子含有量は、好ましくは0〜70重量%、より好ましくは0〜60重量%、更に好ましくは0〜45重量%の範囲である。顔料粒子の含有量が70重量%を超えると相対してバインダー樹脂が不足し、記録層(B)の凝集力不足が発生して、印刷インキが剥離しやすい傾向にある。
【0068】
記録層(B)は、上記成分を含む塗工液を調製し、樹脂フィルム層(A)等の上に塗工し、これを乾燥、固化させて塗工層として設けることが可能である。塗工には、従来公知の手法や装置を利用することができる。
記録層(B)はラミネートにより樹脂フィルム層(A)に設けることも可能である。この場合は、あらかじめ記録層(B)を設けた別のフィルムを作成し、樹脂フィルム層(A)にこれをラミネート加工すればよい。ラミネート加工は、通常のドライラミネート、または溶融ラミネート等の手法により行うことができる。
【0069】
樹脂フィルム層(A)への記録層(B)の設置は、後述の帯電処理を実施する前に行うことが好ましい。記録層(B)の持つ帯電防止性能により、帯電処理後であってもラベル層(i)の記録層(B)面側の静電吸着力を抑止することが可能となる。
本発明の記録層(B)は帯電防止性能を有するものである。記録層(B)表面の表面抵抗率は、1×10-1〜9×1012Ω、好ましく1×103〜9×1011Ω、更に好ましくは1×106〜9×1010Ωの範囲内に調整されている。
【0070】
記録層(B)の表面抵抗率が9×1012Ωを超えてしまうと、ラベル層(i)が持つ静電吸着力を充分に抑止できずに、静電吸着シート(iii)が印刷工程でロールへの貼り付きやシート同士のブロッキング等のトラブルが発生し易いものとなる場合がある。一方、記録層(B)の表面抵抗率が1×10-1Ωを下回った場合は、ラベル層(i)の静電吸着力が損なわれる恐れがあり、またこの様な高導電性を有する記録層(B)を形成することは技術的に困難であるか、形成できたとしても、高コストとなってしまうことから、現実的ではない。
【0071】
記録層(B)の膜厚は、0.01〜50μmであることが好ましく、0.05〜30μmであることがより好ましく、0.1〜10μmであることが更に好ましく、0.3〜8μmであることが特に好ましい。膜厚が0.01μmに満たない場合は、記録層(B)の均一性を維持することが難しく、印刷インキの密着性が低下する可能性がある。一方50μmを超えてしまうと、記録層(B)が重くなり、樹脂フィルム層(A)の静電気による吸着力では、自重を支えることができず剥れ落ちやすくなってしまい、本発明の所期の性能を達成しづらい。
【0072】
[支持体層(ii)]
本発明の静電吸着シート(iii)を構成する支持体層(ii)は、ラベル層(i)に後述する帯電処理を施し、内部に電荷を蓄積したラベル層(i)の樹脂フィルム層(A)と接触させて静電吸着により積層するものである。
また本発明の静電吸着シート(iii)を構成する支持体層(ii)が、前述するラベル層(i)と同様の樹脂フィルムを含む場合には、これに帯電処理を施し、内部に電荷を蓄積した支持体層(ii)とした後に、ラベル層(i)の樹脂フィルム層(A)と接触させて静電吸着により積層して本発明の静電吸着シート(iii)とすることもできる。
支持体層(ii)は、ラベル層(i)と同様に、その片面に帯電防止性能を持つことにより、ラベル層(i)と組み合わせた静電吸着シート(iii)がその両面に帯電防止性能を持つようにするものである。その結果、積層体である静電吸着シート(iii)は外部に静電吸着力を発現せずに、静電吸着シート(iii)の運送、保管、印刷などの取扱時に周囲への貼り付きや、静電吸着シート(iii)同士のブロッキング等のトラブルが発生し難く、ハンドリング性が良好なものとなる。
従って支持体層(ii)は、ラベル層(i)及びこれに後述する印刷を施した表示物を表示使用する際には、感圧粘着ラベルにおける剥離紙と同様に取り除かれるものであるが、その前段階においてラベル層(i)の高い静電吸着力を保護しながら、静電吸着シート(iii)の印刷を容易とするために設けられる層である。
【0073】
支持体層(ii)は、ラベル層(i)との静電吸着や、帯電防止性能の付与を考慮して紙、合成紙、樹脂フィルム、織布、不織布などの公知の素材からなるものが、適宜選択される。
支持体層(ii)は、単層構成でもよく、2層以上からなる複層構成でも良い。前述の通り支持体層(ii)は、その片面がラベル層(i)と接触させて静電吸着可能であり、またその反対面が帯電防止性能を持つように構成することから、複層構造を有することが好ましい。
【0074】
支持体層(ii)を複層構造とする場合、組成の異なる紙、組成の異なる樹脂フィルム同士や、紙、合成紙、樹脂フィルムなど異なる2種類以上の素材を貼りあわせたものであっても良いが、ラベル層(i)と接する面はラベル層(i)からの電荷の移動を少なくする観点から絶縁性が優れている樹脂から構成されることが好ましい。絶縁性に優れる樹脂の例としては、前述のラベル層(i)で例示したポリオレフィン系樹脂、官能基含有ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0075】
また支持体層(ii)は、これらの材料から構成されることや、内部に空隙を形成する加工などにより、その比誘電率が1.1〜5.0の範囲にあることが好ましい。ラベル層(i)と支持体層(ii)とを積層した際に、支持体層(ii)の比誘電率がラベル層(i)の静電吸着力に何らかの影響を与えることが判明した。支持体層(ii)の比誘電率は、1.1〜5.0であることが好ましく、1.2〜4.0であることがより好ましく、1.5〜3.0であることが更に好ましい。支持体層(ii)の比誘電率が5.0を超えるとラベル層(i)が長期間電荷を保持できずに、静電吸着力が低下し易くなる場合がある。一方、比誘電率が1.1未満のものは性能上問題ない筈であるが、空気(真空)の比誘電率よりも低くなる為、このような素材は現在の技術上、形成が困難である。
【0076】
さらに支持体層(ii)は、電荷の移動を少なくする観点から絶縁性が優れている樹脂から構成し、支持体層(ii)のラベル層(i)と接する面の表面抵抗率が1×1013〜9×1017Ωの範囲であることが好ましい。該表面抵抗率は、5×1013〜9×1016Ωの範囲であることがより好ましく、1×1014〜9×1015Ωの範囲であることが更に好ましい。表面抵抗率が1×1013Ω未満のものは、ラベル層(i)の電荷が同表面を伝って外部(大気中など)に逃げてしまうために、ラベル層(i)が長期間電荷を保持できずに、静電吸着力が低下し易くなる場合がある。一方、9×1017Ωを超えるものは、性能上問題ない筈であるが、現在公知の物質を使用してこの様な高絶縁性の表面を形成することは困難であり、実現できたとしても高コストの為、現実的でない。
支持体層(ii)の厚みは20〜500μmであることが好ましく、25〜400μmであることがより好ましく、30〜200μmであることが更に好ましく、35〜150μmであることが特に好ましい。
支持体層(ii)の厚みが20μm未満では、ラベル層(i)と静電吸着する面から支持体層(ii)の厚みを介して電荷が流出して静電吸着シート(iii)内の電荷を封じこめられずに、ラベル層(i)の静電吸着力が弱いものとなる場合がある。逆に500μmを越えてしまうと得られる静電吸着シート(iii)も厚いものとなり、印刷工程や断裁工程での作業性が劣るものとなる場合がある。
【0077】
一方、支持体層(ii)はその片面に帯電防止性能を持たせるといった目的から、静電吸着シート(iii)の外層にくる面には帯電防止性能を付与することが望ましい。
支持体層(ii)への帯電防止性能の付与は、ラベル層(i)に用いた上記記録層(B)と同様のものを設ける方法や、導電性塗料を塗工して導電層を設ける方法や、直接蒸着、転写蒸着、蒸着フィルムのラミネート等により金属薄膜を設ける方法、支持体層(ii)を構成する樹脂へ帯電防止剤を練り込む方法などが挙げられる。
【0078】
上記方法により、支持体層(ii)の静電吸着シート(iii)の外層にくる面の表面抵抗率は1×10-1〜9×1012Ωの範囲内である。該表面抵抗率は1×100〜9×1011Ωの範囲であることが好ましい。
支持体層(ii)の静電吸着シート(iii)の外層にくる面の表面抵抗率が9×1012Ωを超えてしまうと、帯電防止性能が充分ではなく、静電吸着シート(iii)の周囲への貼り付きや、静電吸着シート(iii)同士のブロッキング等のトラブルが発生し易く、本発明の所期の性能が得られにくい。一方、表面抵抗率が1×10-1Ωを下回る場合は、静電吸着シート(iii)として性能上問題ない筈であるが、現在公知の物質を使用してこの様な高導電性の表面を形成することは困難であり、実現できたとしても高コストの為、現実的でない。
【0079】
[接着剤層]
本発明の静電吸着シート(iii)は、これを構成するラベル層(i)と支持体層(ii)との間にさらに接着剤層を設けたものでも良い。ここで接着剤層とは、ラベル層(i)と支持体層(ii)との積層において、ラベル層(i)の静電吸着力に加えて、両者をより強く接着させる目的から介在させるものである。
同接着剤層は、支持体層(ii)との接着性に優れる反面、ラベル層(i)との接着性は劣るように差異をつけることで、両者を剥離する際に接着剤は支持体層(ii)に追随し、ラベル層(i)側には残らないようにすることが好ましい。両者への接着性に差異をつける方法としては、支持体層(ii)側表面にはコロナ放電処理などの表面処理を行い、ラベル層(i)側表面には同様の表面処理を行わないことや、或いはラベル層(i)側表面にはシリコーン樹脂やフッ素樹脂のコーティングを行い、支持体層(ii)側表面には同様の表面処理を行わないこと等から、両者の表面ヌレ性に差異を付ける手法などが挙げられる。
【0080】
接着剤層を用いる場合は、静電吸着シート(iii)をラベル層(i)と支持体層(ii)とから形成する際、これらを貼合するために接着剤層を用い、これを介して積層貼合する。貼合は、支持体層(ii)上に水系接着剤、溶剤系接着剤あるいはホットメルト型接着剤等の接着剤を、塗工、散布、溶融押出ラミネート等の手法により接着剤層として設け、ラベル層(i)に帯電処理を施した後にドライラミネートするか、またはラベル層(i)に帯電処理を施した後に熱融着性フィルムや溶融押出フィルムを介して溶融ラミネートする等の通常の手法により行うことができる。
【0081】
ドライラミネートを行う場合の接着剤としては、例えば、エーテル樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂、ウリア樹脂、アクリル樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂等からなる樹脂成分を、従来公知の溶剤を用いてその相の中に溶解、分散、乳濁分散、希釈して、流動性があり塗工の可能な、溶液型やエマルジョン型の様態の液状の接着剤が代表的である。
エーテル樹脂の例としては、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ビスフェノールA等の低分子量ポリオールを開始剤として用いて、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を重合させることにより得られるポリエーテルポリオール、より具体的には、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0082】
エステル樹脂の例としては、多塩基酸と多価アルコールの脱水反応物が挙げられる。多塩基酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸ジメチルエステル、テレフタル酸ジメチルエステル、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸などが挙げられ、これらを単独あるいは2種以上使用し、多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4−トリメチルペンタン1,3−ジオール、ポリエチレングリコールなどが挙げられ、これらを単独あるいは2種以上使用して重合される。
【0083】
ウレタン樹脂の例としては、前述の多価アルコール、エーテル樹脂及びエステル樹脂の少なくとも一種と、イソシアネート化合物の縮合反応物が挙げられる。イソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネート−1−1−メチルシクロヘキサン、ジイソシアネートシクロブタン、テトラメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、m−もしくはp−フェニレンジイソシアネート、o−、m−もしくはp−キシリレンジイソシアネート、クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネートカーボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート等の芳香族イソシアネート;ジフェニルエーテルジイソシアネート等のイソシアネートモノマー類等が挙げられる。さらに、イソシアネート化合物は、ウレタン樹脂の分子量を上げると共に、接着力や安定性などの種々の性能を付与するために、多価アルコールで変性したポリイソシアネート化合物を使用することもできる。
【0084】
ウリア樹脂の例としては、前述のイソシアネート化合物と、アミン化合物の縮合反応物が挙げられる。アミン化合物としては、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族アミン;イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソプロピリデンビス−4−シクロヘキシルジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等の脂環式アミン;ピペラジン、メチルピペラジン、アミノエチルピペラジン等の複素環式アミン等が挙げられる。
【0085】
アクリル樹脂の例としては、有機過酸化物を重合開始剤として、アクリル化合物を重合したものが挙げられる。アクリル化合物としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリルニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられ、これらを単独あるいは2種以上使用して重合される。
アミド樹脂の例としては、前述の多塩基酸と前述のアミン化合物の縮合反応物が挙げられる。
【0086】
エポキシ樹脂の例としては、多価フェノール類と、エピハロヒドリン及び低分子量エポキシ化合物の少なくとも一方を反応して得られるポリグリシジルエーテルの単独縮合反応や前述のエーテル樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂、ウリア樹脂、アクリル樹脂、アミド樹脂との縮合反応によって得られる縮合反応物が挙げられる。多価フェノール類の具体的な例としては、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)、ビスフェノールB(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン)、ビスフェノールE(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン)、ビスフェノールS(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−フェニルエタン、ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等のビスフェノール類が挙げられる。
【0087】
これら接着剤層の塗工は、ダイコーター、バーコーター、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、ロッドコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、リバースコーター、エアーナイフコーター、スライドホッパー等により行われる。その後必要によりスムージングを行い、乾燥工程を経て、接着剤層が形成される。
接着剤層は、支持体層(ii)のラベル層(i)と接する面に前述の接着剤を前述の塗工方法で塗工し、乾燥して設けることが容易である。次いで、ラベル層(i)に後述する帯電処理を施した後に支持体層(ii)を積層し、圧着ロール(ニップロール)で加圧接着すれば静電吸着シート(iii)が得られる。
【0088】
接着剤層を塗工で設ける場合の同層厚みは、乾燥後に好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.2〜50μm、さらに好ましくは0.5〜25μmとなるように塗工される。接着剤層厚みが0.1μm未満では、部分的に接着剤が無い箇所が発性してしまい、接着剤層を設けた効果が得られない場合がある。一方100μmを超えてしまうと、接着剤層層内の乾燥状態と硬化状態が不均一となり、ラベル層(i)と支持体層(ii)とを剥離する際に接着剤層層内での破壊が発性しやすくなり、ラベル層(i)に接着剤が部分的に残ってしまい、ラベル層(i)の吸着力を阻害する場合がある。
【0089】
ホットメルト型接着剤としては、低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体の金属塩(いわゆるサーリン)、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリブチラール系樹脂、ウレタン系樹脂などを例示できる。
ホットメルト型接着剤を使用する場合は、前述の樹脂を支持体層(ii)の表面上にダイより溶融フィルム状に押し出してラミネートし、次いで、ラベル層(i)に後述する帯電処理を施した後に支持体層(ii)を積層し、圧着ロールで加圧接着すれば静電吸着シート(iii)が得られる。
接着剤層は接着力が弱いことが好ましい。本来、ラベル層(i)と支持体層(ii)はラベル層(i)の静電吸着力により接着剤層なしに接着が可能であり、接着剤層は両者間の接着力を調整する目的から設ける。
【0090】
本発明の静電吸着シート(iii)は、ラベル層(i)と支持体層(ii)とを剥がす際に、ラベル層(i)を掴み易くする為に、ラベル層(i)を部分的に切り取り支持体層(ii)のみを残しておくことも可能であるが、接着剤層の接着力が強いと、ラベル層(i)を除去した部分は接着剤層が露出しているために静電吸着シート(iii)同士がブロッキングしてしまい、本発明の初期の目的が達成しづらい。また接着剤層の接着力が強すぎると、ラベル層(i)と支持体層(ii)とを剥がす際に、非常に大きな力が必要となり、きれいに剥がすことができずに、剥がしたラベル層(i)にシワが入りやすいなど、ハンドリング性が悪化する傾向がある。
【0091】
接着剤層の接着力を弱くしてブロッキング等の不具合を防止する為に、接着剤には架橋剤を添加してその凝集力を高めて使用することが好ましい。接着剤層に使用する架橋剤としては、前述のイソシアネート系化合物、およびこれらの誘導体、又は前述の多価アルコールやエーテル樹脂、或いはエステル樹脂とイソシアネート系化合物を反応させ、イソシアネート基が末端となるように重縮合したウレタン樹脂系イソシアネート、ポリグリシジルエーテルおよびこれらの誘導体、さらにメラミン樹脂などが挙げられる。特にイソシアネート系化合物とウレタン樹脂系イソシアネートによる架橋は、室温でも反応可能であることから加熱処理が不要であり、加熱処理による静電吸着シート(iii)の変形のリスクが少ないことから特に好ましい。
接着剤層に使用する架橋剤の添加量は、ラベル層(i)との接着力や支持体(ii)との接着力により適宜決定することができる。イソシアネート系化合物やウレタン樹脂系イソシアネートは単独でも縮合する特性がある。架橋剤の添加量を増すと接着力は低下する傾向にある。
【0092】
接着剤層には、ラベル層(i)との剥離性を制御する為に、滑剤や、無機及び有機微細粉末の少なくとも一方を添加することも可能である。係る滑剤としては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコールなどのアルコール系滑剤、ステアリン酸、エルシン酸、ベヘン酸などの脂肪酸系滑剤、パルミチン酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリルなどの脂肪酸エステル系滑剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ヒドロキシステアリン酸リチウムなどの脂肪酸金属塩系滑剤、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの脂肪酸アミド系滑剤、パラフィンワックス、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、モンタンワックス、カルナバワックス、蜜ロウ、イボタロウなどのワックス系滑剤などが挙げられる。無機微細粉末としては、炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、けいそう土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナなどが挙げられる。有機微細粉末の例としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ジメチルポリシロキサン、ポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂の粒子が挙げられる。
【0093】
[帯電処理]
本発明の静電吸着シート(iii)は、ラベル層(i)に帯電処理を施し、次いで支持体層(ii)を樹脂フィルム層(A)と接触させて静電吸着させた積層体を含むもの、または支持体層(ii)に帯電処理を施し、次いでラベル層(i)の樹脂フィルム層(A)に接触させて静電吸着させた積層体を含むものである。
帯電処理の手法としては、特に制限されず、公知の種々の方法にしたがって行なうことができる。例えば、ラベル層(i)を成形した後、ラベル層(i)の表面にコロナ放電やパルス状高電圧を加える方法や、ラベル層(i)の両面を誘電体で保持し、両面に直流高電圧を加える方法(エレクトロエレクトレット化法)、ラベル層(i)にγ線や電子線等の電離放射線を照射してエレクトレット化する方法(ラジオエレクトレット化法)、などが挙げられる。
エレクトロエレクトレット化法のより具体的な例としては、直流高圧電源に繋がった印加電極とアース電極の間にラベル層(i)を固定する方法(バッチ式、図4、5参照)か、又は通過させる方法(連続式、図6、7参照)が望ましい。本手法を用いる場合の主電極は針状のものを等間隔で無数に配置するか金属ワイヤーを使用し、対電極には平な金属板か金属ロールを使用することが望ましい。
本発明において帯電処理は、直流式コロナ放電処理であることが好ましい。本発明において使用できる直流式コロナ放電処理とは、図4〜7に例示するように針状やワイヤー状の主電極(印加電極)と平板状やロール状の対電極(アース電極)を直流高圧電源に繋げた装置を用い、対電極上にラベル層(i)または支持体層(ii)を設置し、主電極と対電極の間に直流高電圧をかけることで発生するコロナ放電により、ラベル層(i)または支持体層(ii)に電荷を注入する処理である。
主電極と対電極の間隔は1〜50mmが好ましく、2〜30mmがより好ましく、5〜20mmが更に好ましい。電極間が1mm未満では電極間距離を均一に保つ事が難しく、幅方向に均一な帯電処理が得られない場合がある。一方、50mmを超えるとコロナ放電が発生し難くなり、ラベル層(i)または支持体層(ii)への帯電処理が不均一となる場合がある。
両極間に印加する電圧は、ラベル層(i)および支持体層(ii)の電気特性、主電極と対電極の形状や材質、主電極と対電極の間隔により決定されるものであるが、具体的には1〜100KVが好ましく、3〜70KVがより好ましく、5〜50KVが更に好ましく、10〜30KVが特に好ましい。主電極の極性はプラスでもマイナスでも良いが、主電極側をマイナス極性にした方が比較的安定したコロナ放電状態となるため好ましい。
主電極と対電極の材質は、導電性の物質から適宜選択されるが、鉄、ステンレス、銅、真鍮、タングステンなどの金属製またはカーボン製のものが好ましい。
これらの帯電処理によってラベル層(i)または支持体層(ii)に導入される電荷の量は、処理時に主電極と対電極間に流れた電流量に依存する。該電流量は両電極間の電圧が高いほど多くなることから、印加電圧はラベル層(i)または支持体層(ii)が絶縁破壊しない程度に高くに設定することが好ましい。
【0094】
ラベル層(i)への帯電処理は、好ましくは記録層(B)を設けていない側の表面に、上記コロナ放電や高電圧を加える手法により行うことが好ましい。記録層(B)は帯電防止性能を具備していることが好ましく、このような表面への帯電処理は、与えた電荷が記録層(B)を介して周囲に散逸してしまう可能性が高く効果的ではない。記録層(B)がアース側(金属板や金属ロール)に接している場合は、特にこのような問題は生じない。
本発明の静電吸着シート(iii)およびラベル層(i)は帯電処理後に除電処理を行うことも可能である。除電処理を行なうことにより、印刷工程、ラベル等への加工工程でのトラブルを回避することが可能である。係る除電処理には、電圧印加式除電器(イオナイザ)や自己放電式除電器など公知の手法を用いることができる。これら一般的な除電器は、表面の電荷の除去はできるが、樹脂フィルム層(A)内部に蓄積した電荷までは除去できない。したがって除電処理によりラベル層(i)の静電吸着力が大きく影響を受けることはない。
【0095】
本発明は、特許文献8に開示されている、記録層を有する樹脂フィルムに、接着剤を介して、帯電防止処理を施した支持体を積層して積層フィルムを形成し、次いでこの積層フィルムに電荷を与える発明と比べて、
ラベル層(i)のみに帯電処理を行うために、ラベル層(i)への帯電をより効果的に行え、静電吸着力が高く、静電吸着力の持続性も充分で長期に亘り表示使用することが可能なラベル層(i)を得ることができたこと、
ラベル層(i)と支持体層(ii)との積層は、ラベル層(i)の帯電処理後に行うため、該積層はラベル層(i)の静電吸着力のみで達成可能であり、必ずしも接着層が必要ではなくなったこと、
好ましくはラベル層(i)が帯電防止性能を有する記録層(B)を有することによって、静電吸着シート(iii)の様態では外部に静電吸着力を発現しないことから、特に印刷工程でのトラブルが発生し難く、ハンドリング性が良好な静電吸着シート(iii)が得られたこと、
といった効果の観点で、より優れたものとなる。
【0096】
[積層]
本発明の静電吸着シート(iii)は、これを構成するラベル層(i)と支持体層(ii)とを接触させて積層した積層体を含むものである。
両者の積層は、例えば図8に示すように、ラベル層(i)を長尺の巻き取り(41)とし、これを巻き出しながら電極(45)、(46)間を通過させて帯電処理を行い、別に支持体層(ii)を長尺の巻き取り(42)としたものを巻き出し、両者を圧着ロール(49)で加圧接着すれば静電吸着シート(iii)が得られる。
両者間にさらに接着剤層を設けるのであれば、例えば、図8中のロール(48)の箇所で支持体層(ii)上に接着剤を塗工することが容易である。
[記録物]
本発明の記録物は、本発明の静電吸着シート(iii)のラベル層(i)側の表面および支持体層(ii)側の表面の少なくとも一方に、印刷を施すことにより得ることができる。
【0097】
[印刷]
本発明の静電吸着シート(iii)は、ラベル層(i)の記録層(B)表面に印刷を施すことが可能である。係る印刷としては、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、レタープレス印刷、スクリーン印刷、インクジェット記録方式、感熱記録方式、熱転写記録方式、電子写真記録方式などの従来公知の手法を用いることが可能であるが、デザインやサイズの変更が容易であるオフセット印刷、インクジェット記録方式が好ましい。さらに印刷インキとしては、油性インキ、水性インキならびにUVインキが使用可能であるが、乾燥速度が速いUVインキが好ましい。
【0098】
[厚み]
本発明における厚みは、JIS−K−7130に準拠し、定圧厚さ測定器((株)テクロック製、商品名:PG−01J)を用いて測定した。
成形した樹脂フィルム層(A)が多層構造である場合に、各層の厚みは、測定対象試料を液体窒素にて−60℃以下の温度に冷却し、ガラス板上に置いた試料に対してカミソリ刃(シック・ジャパン(株)製、商品名:プロラインブレード)を直角に当て切断し断面観察用の試料を作成し、得られた試料を走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、商品名:JSM−6490)を使用して断面観察を行い、組成外観から熱可塑性樹脂組成物ごとの境界線を判別して、樹脂フィルム層(A)全体の厚みと観察される層厚み比率を乗算して求めた。
[表面抵抗率]
本発明の表面抵抗率は23℃、相対湿度50%の条件下で、表面抵抗率が1×107Ω以上の場合は、JIS−K−6911に準拠し、2重リング法の電極を用いて測定する。表面抵抗率が1×107Ω未満の場合は、JIS−K−7194に準拠し、4深針法で測定することによって求めた抵抗(R)に、補正係数Fを乗じてこれを表面抵抗率とした。
【0099】
[不透明度]
本発明の不透明度は、JIS−P−8138に準拠し、測定背面に、黒色および白色標準板を当て、光の反射率の比(黒色板/白色板)を百分率で示した値で表示する。
本発明のラベル層(i)の不透明度は、0%以上、50%未満であり、好ましく0.1%〜48%の範囲内である。不透明度が50%未満であれば、ガラスなどの透明な被着体に使用した際に、被着体を透して印刷層(B)に施した印刷絵柄が認識でき、優れた装飾性を持ったラベルを得ることができる。
【0100】
[水蒸気透過係数]
JIS−Z−0208に準拠して、カップ法により、40℃、90%RHの条件下にて測定した。得られた透湿度(g/(m2・24hr))とフィルムの厚み(mm)から、水蒸気透過係数(g・mm/m2・24hr)を求めた。
本発明の静電吸着シート(iii)に使用されるラベル層(i)の水蒸気透過係数は、好ましくは0.01〜2.50の範囲内であり、より好ましくは0.01〜2.00の範囲内である。水蒸気透過係数が2.50を超えると、高湿度下での帯電性の低下が激しく、ラベル層(i)の吸着性能の低下が大きく吸着ラベルとして本発明の所期の性能を発揮しない。一方、水蒸気透過率が0.01未満のラベル層(i)を用いてしまうと、電荷の維持性能は優れるものの内部の電荷が移動し難いために、吸着性能が低い傾向となり本発明の所期の性能を発揮できないものとなる。
【0101】
[ガーレ柔軟度]
本発明のガーレ柔軟度は、JAPAN TAPPI No.40:2000に準拠し、温度23℃湿度50%RHの環境下で、MD方向とTD方向のそれぞれを測定する。本発明のラベル層(i)のガーレ柔軟度は、好ましくは5〜1000mgf、より好ましくは5〜700mgf、更に好ましくは5〜400mgfであり、支持体層(ii)のガーレ柔軟度は好ましくは5〜10000mgf、より好ましくは5〜7000mgf、更に好ましくは5〜3000mgfである。ラベル層(i)のガーレ柔軟度が5mgf未満では、腰が弱いためラベルとしての取り扱いが困難となりシワになり易く外観を損ないやすい。1000mgfを超えてしまうと腰が強いため、小さなカールが発生しても静電吸着力が弱い場合は被着体に均一に貼りつかず、吸着力の持続性が劣るものとなってしまう。支持体層(ii)のガーレ柔軟度が5mgf未満では支持体層(ii)が掴みづらく、ラベル層(i)を剥がす際に切欠が作り難いものとなってしまう場合がある。10000mgfを超えると支持体層(ii)を変形させることが困難となり静電吸着シート(iii)の搬送性が劣り、取り扱いが難しいものとなる場合がある。
【0102】
[比誘電率]
比誘電率の測定は、測定周波数範囲により測定法が選定される。測定周波数が10Hz以下の場合には超低周波ブリッジを用い、10Hz〜3MHzの場合には変成器ブリッジを用い、1MHzを越える場合には、並列T型ブリッジ、高周波シェリングブリッジ、Qメーター、共振法、定在波法、空洞共振法を用いる。又、測定周波数の交流信号に対して、回路部品に対する電圧・電流ベクトルを測定し、この値から静電容量を算出するLCRメーター等でも測定できる。
【0103】
支持体層(ii)の比誘電率を測定する測定装置としては、平行に配設した平板状印可電極と平板状ガード電極との間に試料を一定圧力で挟み込み、5V程度の電圧が印加でき、測定周波数が任意に選定できる測定装置が好ましい。このような測定機によれば、周波数を変更することにより、試料の周波数依存性が把握でき、適性使用範囲の指標にできる。試料は、できるだけ厚みが均一で表面が平滑なものが好ましい。表面状態が悪いと、試料と電極との間に空隙(空気層)が形成され、測定値に大きな誤差を与える。この場合、試料と電極との電気的接触を完全にするために、銀導電性塗料を、塗工するか、真空蒸着することが好ましい。測定装置の具体例としては、Agilent Technologies社の「4192A LF IMPEDANCE ANALYZER」、横河電機(株)社の「LCRメーター4274A」、日置電機(株)社の「HIOKI 3522 LCRハイテスター」などが挙げられる。
【0104】
本発明の支持体層(ii)の比誘電率の測定には、Agilent Technologies社の「4192A LF IMPEDANCE ANALYZER」を使用し、温度23℃、相対湿度50%の環境条件下で、直径38mmの主電極と直径56mmの対電極との間に電極直径より大きい試料を表面抵抗率が高い面が主電極側になる様に挟み込み、5Vの電圧を印加し、10Hz〜1MHzの範囲の周波数で測定し、周波数100Hzの測定値を代表値とした。
【0105】
[記録物]
本発明の静電吸着シート(iii)の記録層(B)表面に印刷を施した記録物としては、POPカード(ポスター、ステッカー、ディスプレイ等)、店舗案内(パンフレット、会社案内、品書き、メニュー等)、下敷き(ランチマット、テーブルマット、文房具用品等)、マニュアル(職務、作業、操作等の各種マニュアル、工程表、時間割等)、チャート類(海図、天気図、図表、罫線表等)、カタログ、地図(海図、路線図、屋外用地図等)、店頭価格表、登山ガイド、名刺、迷子札、料理のレシピ、案内板(売り場案内、方向・行き先案内等)、スケジュール表、ロード・サイン(葬式・住宅展示場所等)、室名札、校内記録表、表示板(立ち入り禁止、林道作業等の)、区画杭、表札、カレンダー(画像入り)、簡易ホワイトボード、マウスパッド、包装資材(包装紙、箱、袋等)、コースター、等を例示することができ、何れも利用可能である。特に屋内使用を前提とした用途に好適に用いることができる。
[被着体]
上述の記録物より、支持体層(ii)を剥がしたラベル層(i)よりなる表示物を吸着させる被着体としては、掲示版、看板、サインボード、ホワイトボード、壁、天井、柱、ドア、パーティション、床、ロッカー、机、棚、窓(ガラス製、樹脂製)、冷蔵庫(金属面、ガラス面、プラスチック面)、各種機器(工作機、印刷機、成形機等)、および車内(自動車、バス、電車)、船舶内、航空機内の壁面等を例示することができ、何れも利用可能である。特に被着体はその表面の平滑性が高い場合に本発明の記録物との密着面積が大きくなり、得られる静電吸着力も高まることから好ましく適用することができる。
【実施例】
【0106】
以下に製造例、調製例、実施例、比較例および試験例を用いて、本発明を更に具体的に説明する。以下に示す材料、使用量、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。なお、以下に記載される%は、特記しない限り重量%である。
本発明の樹脂フィルム層(A)の製造例に使用する熱可塑性樹脂組成物を表1にまとめて示す。これらは予め表1に記載した使用原料を表1に記載した割合で混合した樹脂組成物(a)〜(d)を、210℃に設定した2軸混練機にて溶融混練し、次いで230℃に設定した押出機にてストランド状に押し出し、冷却後にストランドカッターにて切断して樹脂組成物(a)〜(d)のペレットを作成して、以降の製造例で使用した。
【0107】
【表1】

【0108】
[樹脂フィルム層(A)の製造例1]
熱可塑性樹脂組成物aを230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給し、シート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。
この無延伸シートを約145℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向(MD)に5倍延伸し、60℃まで冷却した。次いでこの1軸延伸フィルムを、テンターオーブンを用いて再び約155℃に加熱し、横方向(TD)に9倍延伸した後、更に160℃まで加熱して熱処理を行った。
次いで60℃まで冷却し、耳部をスリットした後、この2軸延伸フィルムの両面にコロナ放電による表面処理を施し、肉厚が40μm、空孔率が0%、単層構造の樹脂フィルム層(A)を得た。
【0109】
[樹脂フィルム層(A)の製造例2]
熱可塑性樹脂組成物aを230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給し、シート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。
この無延伸シートを約150℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸し、40℃まで冷却した。次いでこの1軸延伸フィルムを、テンターオーブンを用いて再び約150℃に加熱し、横方向に8倍延伸した後、更に160℃まで加熱して熱処理を行った。
次いで60℃まで冷却し、耳部をスリットした後、この2軸延伸フィルムの両面にコロナ放電による表面処理を施し、肉厚が20μm、空孔率が0%、単層構造の樹脂フィルム層(A)を得た。
【0110】
[樹脂フィルム層(A)の製造例3]
熱可塑性樹脂組成物aと熱可塑性樹脂組成物bを230℃に設定した3台の押出機にてそれぞれ溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給し、ダイ内で積層してシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。
この無延伸シートを約140℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に4.5倍延伸し、60℃まで冷却した。次いでこの1軸延伸フィルムを、テンターオーブンを用いて再び約150℃に加熱し、横方向に8倍延伸した後、更に160℃まで加熱して熱処理を行った。
次いで60℃まで冷却し、耳部をスリットした後、この2軸延伸フィルムの両面にコロナ放電による表面処理を施し、肉厚が70μm、空孔率が0.1%、3層構造〔各層樹脂組成(b/a/b)、各層厚み(3μm/64μm/3μm)、各層延伸軸数(2軸/2軸/2軸)〕の樹脂フィルム層(A)を得た。
【0111】
[樹脂フィルム層(A)の製造例4]
熱可塑性樹脂組成物aと熱可塑性樹脂組成物bを230℃に設定した3台の押出機にてそれぞれ溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給し、ダイ内で積層してシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。
この無延伸シートを約150℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に4倍延伸し、60℃まで冷却した。次いでこの1軸延伸フィルムを、テンターオーブンを用いて再び約155℃に加熱し、横方向に8倍延伸した後、更に160℃まで加熱して熱処理を行った。
次いで60℃まで冷却し、耳部をスリットした後、この2軸延伸フィルムの両面にコロナ放電による表面処理を施し、肉厚が60μm、空孔率が2.6%、3層構造〔各層樹脂組成(a/b/a)、各層厚み(10μm/40μm/10μm)、各層延伸軸数(2軸/2軸/2軸)〕の樹脂フィルム層(A)を得た。
【0112】
[樹脂フィルム層(A)の製造例5]
熱可塑性樹脂組成物bを230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給し、シート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。
この無延伸シートを約150℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸し、60℃まで冷却した。次いで熱可塑性樹脂組成物cを250℃に設定した2台の押出機にて溶融混練した後、押出ダイよりシート状に押し出して、上で調製した1軸延伸フィルムの両面にそれぞれに積層し、60℃まで冷却して3層構造の積層シートを得た。次いでこの積層シートを、テンターオーブンを用いて再び約155℃に加熱し、横方向に8倍延伸した後、更に160℃まで加熱して熱処理を行った。
次いで60℃まで冷却し、耳部をスリットした後、この積層シートの両面にコロナ放電による表面処理を施し、肉厚が80μm、空孔率が3.9%、3層構造〔各層樹脂組成(c/b/c)、各層厚み(20μm/40μm/20μm)、各層延伸軸数(1軸/2軸/1軸)〕の樹脂フィルム層(A)を得た。
【0113】
[樹脂フィルム層(A)の製造例6]
熱可塑性樹脂組成物bを230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給し、シート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。
この無延伸シートを約145℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に4倍延伸し、60℃まで冷却した。次いで熱可塑性樹脂組成物bを250℃に設定した2台の押出機にて溶融混練した後、押出ダイよりシート状に押し出して、上で調製した1軸延伸フィルムの両面にそれぞれに積層し、60℃まで冷却して3層構造の積層シートを得た。次いでこの積層シートを、テンターオーブンを用いて再び約150℃に加熱し、横方向に9倍延伸した後、更に160℃まで加熱して熱処理を行った。
次いで60℃まで冷却し、耳部をスリットした後、この積層シートの両面にコロナ放電による表面処理を施し、肉厚が130μm、空孔率が4.0%、3層構造〔各層樹脂組成(b/b/b)、各層厚み(40μm/50μm/40μm)、各層延伸軸数(1軸/2軸/1軸)〕の樹脂フィルム層(A)を得た。
【0114】
[樹脂フィルム層(A)の製造例7]
熱可塑性樹脂組成物cと熱可塑性樹脂組成物dを230℃に設定した3台の押出機にてそれぞれ溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給し、ダイ内で積層してシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。
この無延伸シートを135℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸し、60℃まで冷却した。次いでこの1軸延伸フィルムを、テンターオーブンを用いて再び約155℃に加熱し、横方向に8倍延伸した後、更に160℃まで加熱して熱処理を行った。
次いで60℃まで冷却し、耳部をスリットした後、この2軸延伸フィルムの両面にコロナ放電による表面処理を施し、肉厚が40μm、空孔率が18%、3層構造〔各層樹脂組成(d/c/d)、各層厚み(5μm/30μm/5μm)、各層延伸軸数(2軸/2軸/2軸)〕の樹脂フィルム層(A)を得た。
各製造例で得た樹脂フィルム層(A)の物性を表2にまとめて示す。
【0115】
【表2】

【0116】
[帯電防止機能を有するポリマーの調製例1]
ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製、商品名:ブレンマーPE−350)100重量部、過塩素酸リチウム(和光純薬工業(株)製、試薬)20重量部、ヒドロキノン(和光純薬工業(株)製、試薬)1重量部およびプロピレングリコールモノエチルエーテル(和光純薬工業(株)製、試薬)400重量部を、攪拌装置、還流冷却管(コンデンサー)、温度計、及び滴下ロートを装着した四つ口フラスコに導入し、系内を窒素置換し、60℃で40時間反応させた。これにステアリルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)5重量部、n−ブチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)5重量部、アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業(株)製、試薬)1重量部を添加し、80℃で3時間重合反応した後、プロピレングリコールモノエチルエーテルを添加して固形分を20重量%に調整し、重量平均分子量約30万、固形分中のリチウム濃度0.6重量%のアルカリ金属塩含有ポリマーよりなる帯電防止機能を有するポリマーの溶液を得た。
【0117】
[帯電防止機能を有するポリマーの調製例2]
N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(三菱ガス化学(株)製)35重量部、エチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)20重量部、シクロヘキシルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)20重量部、ステアリルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)25重量部、エチルアルコール150重量部と、アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業(株)製、試薬)1重量部を、攪拌装置、還流冷却管(コンデンサー)、温度計、及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに導入し、系内を窒素置換し、窒素気流下にて80℃の温度で6時間重合反応を行なった。次いで3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドの50重量%水溶液85重量部(和光純薬工業(株)製、試薬)を加え、更に80℃の温度で15時間反応させた後、水を滴下しながらエチルアルコールを留去し、最終固形分として20重量%の第四級アンモニウム塩型共重合体よりなる帯電防止機能を有するポリマーの溶液を得た。
【0118】
[高分子バインダーの調製例1]
2−ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)15重量部、メチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)50重量部、エチルアクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)35重量部およびトルエン(和光純薬工業(株)製、試薬)100重量部を、攪拌機、環流冷却管、温度計、及び滴下ロートを装着した四つ口フラスコに仕込み、窒素置換後、2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)(和光純薬工業(株)製、試薬)0.6重量部を開始剤として導入し80℃で4時間重合させた。得られた溶液は、水酸基価65の水酸基含有メタクリル酸エステル系重合体の50%トルエン溶液であった。次いで、この溶液100重量部に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(新第1塩ビ(株)製、商品名:ZEST C150ML)20%メチルエチルケトン溶液を30重量部加え、メチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製、試薬)を添加して固形分を20重量%に調整し、高分子バインダー溶液を得た。
【0119】
[高分子バインダーの調製例2]
N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(三菱ガス化学(株)製)62.9重量部、ブチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)71重量部、ラウリルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)25.4重量部およびイソプロピルアルコール(和光純薬工業(株)製、試薬)200重量部を攪拌機、還流冷却器、温度計、及び滴下ロートを装置した四つ口フラスコ内に仕込み、窒素ガス置換後、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(和光純薬工業(株)製、試薬)0.9重量部を重合開始剤として添加し、80℃にて4時間重合反応を行った。次いで、酢酸(和光純薬工業(株)製、試薬)24重量部で中和した後、イソプロピルアルコール(和光純薬工業(株)製、試薬)を溜去しながら、水を添加し、最終的に固形分35%の粘調な分散剤(a)の水溶液を得た。
同方向かみ合い型二軸押出機((株)池貝製、商品名:PCM45φ)に、エチレン−メタクリル酸共重合体(三井デュポンケミカル(株)製、商品名:ニュクレルN1035)を100部/時間の割合で連続的に供給した。また、同押出し機の第一の注入口より上記分散剤(a)の水溶液を、22.9部/時間(分散剤の固形分としては8部/時間)の割合で連続的に供給し、更に第二の注入口から水を70部/時間の割合で連続的に供給しながら加熱温度(シリンダー温度)130℃で連続的に混練して押出し、乳白色の樹脂水性分散液を得た。この樹脂水性分散液を250メッシュのステンレス製金網でろ過後、水を添加して固形分を45重量%に調整し、高分子バインダー溶液を得た。
【0120】
[高分子バインダーの調製例3]
攪拌機、環流冷却器、温度計および窒素ガス導入口を備えた四つ口フラスコに、ポリエチレンイミン(日本触媒(株)製、商品名:エポミン P−1000)25重量%水溶液100重量部、1−クロロブタン(和光純薬工業(株)製、試薬)10重量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業(株)製、試薬)10重量部を導入して窒素気流下で攪拌し、80℃の温度で20時間変性反応を行い、次いでこの溶液に水を添加して固形分を20重量%に調整し、高分子バインダー溶液を得た。
【0121】
[記録層(B)の調製例1、5]
メチルエチルケトンをカウレスミキサーにて静かに攪拌しながら、これに表3に記載の顔料粒子のそれぞれ計量したものを少しずつ加え、固形分濃度20重量%になるように調整した後、カウレスミキサーの回転数を上げて30分間攪拌し顔料分散液を作成した。
次いでカウレスミキサーの回転数を落とし、この顔料分散液に、上記調製例に記載の高分子バインダー溶液、帯電防止機能を有するポリマー溶液、および表3に記載の硬化剤の溶液(酢酸エチルにて固形分20重量%に希釈したもの)をこの順に、表3に記載した配合割合となるように添加し、そのまま20分間攪拌して混合し、その後100メッシュのフィルターを通し粗粒径物の除去を行い、メチルエチルケトンで表3に記載の固形分濃度となる様に希釈し、記録層(B)用の塗工溶液(調製例1、5)を得た。
【0122】
[記録層(B)の調製例2]
メチルエチルケトンをカウレスミキサーにて静かに攪拌しながら、これに上記調製例に記載の高分子バインダー溶液、帯電防止機能を有するポリマー溶液、および表3に記載の硬化剤の溶液(酢酸エチルにて固形分20重量%に希釈したもの)をこの順に、表3に記載した配合割合となるように添加し、20分間攪拌して混合し、その後メチルエチルケトンで表3に記載の固形分濃度となる様に希釈し、記録層(B)用の塗工溶液(調製例2)を得た。
[記録層(B)の調整例3、4]
攪拌機を備えた容器中に、表3に記載の高分子バインダー溶液、および帯電防止機能を有するポリマー溶液をこの順に、表3に記載した配合割合となるように添加し、次いで水で表3に記載の固形分濃度となる様に希釈し、そのまま20分間攪拌し混合して記録層(B)用の塗工溶液(調製例3、4)を得た。
【0123】
[記録層(B)の調製例6]
肉厚12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製、商品名:エスペットフイルム E5100)の片面に、記録層(B)の調製例1で作成した塗工溶液を乾燥後の固形分が2g/m2となるようにグラビアコーターで塗工し、70℃のオーブンで30秒乾燥後、更に40℃で8時間硬化させて、記録層(B)を有するフィルムを得た。
【0124】
【表3】

【0125】
[ラベル層(i)の製造例A〜E、K]
上記樹脂フィルム層(A)の製造例1及び3〜6で得た樹脂フィルム層(A)の片面に、記録層(B)の調製例1〜5で得た塗工溶液を、表4に示す組み合わせ及び厚みとなるようにバーコーターで塗工し、70℃のオーブンで30秒乾燥後、更に40℃で8時間硬化させて、ラベル層(i)を得た。
【0126】
[ラベル層(i)の製造例F]
上記樹脂フィルム層(A)の製造例1で得た樹脂フィルム層(A)の片面に、接着剤(東洋モートン(株)製、商品名:TM−329と商品名:CAT−18Bの等量混合液)を固形分量が3g/m2となるように塗工し、40℃で1分間乾燥した後に、記録層(B)の調製例6で得た記録層(B)を有するフィルムを、記録層(B)が外側となるように貼り合わせて、ラベル層(i)を得た。
【0127】
[ラベル層(i)の製造例G]
上記樹脂フィルム層(A)の製造例1で得た樹脂フィルム層(A)の両面に、記録層(B)の調整例3で得た塗工溶液を乾燥後の塗工量が0.05g/m2となる様にスクイズコーターで塗工し、70℃のオーブンで30秒乾燥後、更に40℃で8時間硬化させ、記録層(B)を設けた。次いでこの樹脂フィルム層(A)の片面の記録層(B)上に更に、接着剤(東洋モートン(株)製、商品名:TM−329と商品名:CAT−18Bの等量混合液)を固形分量が3g/m2となるように塗工し、40℃で1分間乾燥した後に、樹脂フィルム層(A)の製造例2で得た樹脂フィルム層(A)を貼り合わせて、ラベル層(i)を得た。
【0128】
[ラベル層(i)の製造例H]
上記樹脂フィルム層(A)の製造例4で得た樹脂フィルム層(A)の両面に、記録層(B)の調整例4で得た塗工溶液を乾燥後の塗工量が0.1g/m2となる様にスクイズコーターで塗工し、70℃のオーブンで30秒乾燥後、更に40℃で8時間硬化させ、記録層(B)を設けた。次いでこの樹脂フィルム層(A)の片面の記録層(B)上に更に、接着剤(東洋モートン(株)製、商品名:TM−329と商品名:CAT−18Bの等量混合液)を固形分量が3g/m2となるように塗工し、40℃で1分間乾燥した後に、樹脂フィルム層(A)の製造例2で得た樹脂フィルム層(A)を貼り合わせて、ラベル層(i)を得た。
【0129】
[ラベル層(i)の製造例J、L]
上記樹脂フィルム層(A)の製造例1、7で得た樹脂フィルム層(A)をそのままラベル層(i)とした。この樹脂フィルム層(A)は記録層(B)を有していないが、表面処理面を記録層側の面として、後述する比較例、試験例に用いた。
各製造例で得たラベル層(i)の物性を表4にまとめて示す。
【0130】
【表4】

【0131】
[支持体層(ii)の製造例I〜V]
表5に記載の製造例に従い、本発明の静電吸着シート(iii)の実施例、比較例に使用する支持体層(ii)を得た。
各製造例で得た支持体層(ii)の物性を表5にまとめて示す。
【0132】
【表5】

【0133】
[実施例1〜8、比較例1〜5]
図8に概略図を示す静電吸着シート(iii)製造装置を用い、表6に記載のラベル層(i)をロール(41)より巻きだし、該ラベル層(i)の樹脂フィルム層(A)側の面に、直流式のコロナ放電による電荷注入処理を実施した。電荷注入処理の条件として、図8中のワイヤー状電極(45)と対電極ロール(46)の距離を1cmに設定し、表6に記載の加工条件の放電電圧を用いた。
別に表6に記載の支持体層(ii)をロール(42)より巻きだし、上記で電荷注入処理を実施したラベル層(i)の樹脂フィルム層(A)面と、支持体層(ii)の内側面(非塗工面)が接するように積層し、両者を圧着ロール(49)で加圧接着して実施例1〜8および比較例1〜5の静電吸着シート(iii)を得た。
【0134】
[実施例9]
図8に概略図を示す静電吸着シート(iii)製造装置を用い、製造例IIで得た支持体層(ii)をロール(41)より巻きだし、該支持体層(ii)の内側面(非塗工面)に、直流式のコロナ放電による電荷注入処理を実施した。電荷注入処理の条件として、図8中のワイヤー状電極(45)と対電極ロール(46)の距離を1cmに設定し、15kVの放電電圧を用いた。
別に製造例Aで得たラベル層(i)をロール(42)より巻きだし、上記で電荷注入処理を実施した支持体層(ii)の内側面(非塗工面)と、ラベル層(i)の樹脂フィルム層(A)側の面が接するように積層し、両者を圧着ロール(49)で加圧接着して実施例9の静電吸着シート(iii)を得た。
本発明の実施例1〜9および比較例1〜5で用いたラベル層(i)と支持体層(ii)の組み合わせ、電荷注入処理の際の放電電圧、および下記試験例に基づく評価結果を表6にまとめて示す。
【0135】
【表6】

【0136】
[試験例]
(インキ密着性)
静電吸着シート(iii)を、温度23℃,相対湿度50%の雰囲気下で1日間保管した後、静電吸着シート(iii)の記録層(B)面に、印刷試験機((株)明製作所社製、商品名:RI−III型印刷適性試験機)を用いて、印刷インキ((株)T&K TOKA社製、商品名:ベストキュアー161墨)を1.5g/m2の厚さとなるよう均一に印刷し、メタルハライド灯(アイグラフィック(株)製、出力:80W/cm)下でUV照射強度が0.04W/cm2となるようにUV照射し、印刷インキを乾燥固化した。
【0137】
再びこの静電吸着シート(iii)を、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で1日間保管した後、印刷面にセロハンテープ(ニチバン(株)製、商品名:CT−18)を貼り付け、JAPAN TAPPI No.18−2(内部結合強さ試験方法)に準じてインターナルボンドテスター(熊谷理機工業(株)社製、商品名)を用い、インキの剥離強度を測定し、2回の測定結果の平均値を密着強度とした。同結果より以下の基準で合否評価した。
○ : 合格 密着強度が1.4kg・cm以上
× : 不合格 密着強度が1.4kg・cm未満
【0138】
(紙揃え性)
静電吸着シート(iii)を、打ち抜き刃を用いて長手89mm×幅57mmのサイズに打ち抜き、100枚のカードを作成した。作成したカードを1m×1mのガラス板上にランダムに広げて、手でかき集めて100枚の束を作成し、きれいな束にできるかを以下の基準で評価した。
○ : 良好 4辺がきれいにそろった束が作成可能
△ : やや良好 4辺は揃えられないが束は作成可能
× : 不良 カードがガラス板に張り付いてしまい束の作成が困難
【0139】
(吸着力)
静電吸着シート(iii)を、200mm×220mmのサイズに断裁し、相対湿度50%の雰囲気下で1日間保管した後、同雰囲気下で、静電吸着シート(iii)よりラベル層(i)を剥がして、図9に概略図を示す吸着力測定装置のガラス板上に、吸着面積が200mm×200mmとなりラベル層(i)の下端20mm幅分がはみ出す様に貼り付け、ラベル層(i)の下端分にクリップを取り付け、糸を取り付けた10gの分銅を1つずつクリップに追加して行き、ラベル層(i)が滑り落ちた時の分銅の重さから吸着力を平米当りに換算して求め、以下の基準で評価した。
○ : 良好 吸着力が5000g/m2以上
△ : やや良好 吸着力が1000g/m2以上、5000g/m2未満
× : 不良 吸着力が1000g/m2未満
【0140】
(被着体を介した視認性)
静電吸着シート(iii)を、200mm×220mmのサイズに断裁し、その記録層(B)面にサインペンで任意の文字を筆記し、相対湿度50%の雰囲気下で1日間保管した後、上記の吸着力の試験装置を用いて、ガラス板上にラベル層(i)を貼り付けた際に、同ガラス板の反対(非貼付面)側から同文字を読み取れるかどうかを確認した。結果として、比較例3のラベル層(i)を除いて、筆記した文字を読み取ることができた。
【0141】
以上の結果から明らかなように、本発明の静電吸着シート(iii)は、表裏の表面抵抗率が小さいことから、表示使用前は外部に静電吸着力を発現せず、シート同士のブロッキング等のトラブルが発生し難くハンドリング性が良好であり、インクの密着性が優れていることから多様な印刷方式に対応できる。
またラベル層(i)の表示使用時には静電吸着力が充分に高い。これはラベル層(i)中の樹脂フィルム内部に導入された電荷に由来するものであることから、同静電吸着力は湿度に影響され難く、持続性は充分で長期に亘り表示使用することができ、且つラベル層(i)は使用後、容易にこれを剥がすことができる。
従って本発明の静電吸着シート(iii)は、印刷物を被着体に貼り付け表示することが可能であり、ラベル層(i)は透明ないし半透明であることからガラス等の被着体に貼り付けた際にこれを介して印刷を鮮明に視認することが可能であり、シール、ラベル、サイン、ポスター、広告等として非常に有用である。
【符号の説明】
【0142】
1、11、21 静電吸着シート(iii)
2、12、22 ラベル層(i)
3、13、23 支持体層(ii)
a 帯電による接着面
4、14、24、25 樹脂フィルム層(A)
5、15、26 記録層(B)
16 記録層(B)作成用フィルム層
17、27 接着剤層
31 静電吸着シート(iii)
32 直流高圧電源(松定プレシジョン製)
33 針状印加電極
34 対電極
35 ワイヤー状電極
36 針状電極
37 対電極ロール
38 ワイヤー状電極
41 ラベル層(i)
42 支持体層(ii)
43 静電吸着シート(iii)
44 直流高圧電源(松定プレシジョン製)
45 ワイヤー状電極
46 対電極(ロール)
47 ガイドロール(グランド接続)
48 ニップロール
49 ニップロール(貼合ロール)
51 ラベル層(i)
52 ガラス板
53 支柱
54 クリップ
55 釣り糸
56 加重

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面に記録層(B)を備えた樹脂フィルム層(A)を含むラベル層(i)に帯電処理を施し、次いで支持体層(ii)とラベル層(i)の樹脂フィルム層(A)を静電吸着させた積層体からなる静電吸着シート(iii)であって、ラベル層(i)側の表面抵抗率が1×10-1Ω〜9×1012Ωであり、支持体層(ii)側の表面抵抗率が1×10-1Ω〜9×1012Ωであり、且つラベル層(i)の不透明度が0%以上、50%未満であることを特徴とする静電吸着シート(iii)。
【請求項2】
支持体層(ii)に帯電処理を施し、次いで片面に記録層(B)を備えた樹脂フィルム層(A)を含むラベル層(i)の樹脂フィルム層(A)と支持体層(ii)を静電吸着させた積層体からなる静電吸着シート(iii)であって、ラベル層(i)側の表面抵抗率が1×10-1Ω〜9×1012Ωであり、支持体層(ii)側の表面抵抗率が1×10-1Ω〜9×1012Ωであり、且つラベル層(i)の不透明度が0%以上、50%未満であることを特徴とする静電吸着シート(iii)。
【請求項3】
ラベル層(i)の樹脂フィルム層(A)側の面の表面抵抗率が1×1013Ω〜9×1017Ωであり、且つ、支持体層(ii)の樹脂フィルム層(A)と接する側の面の表面抵抗率が1×1013Ω〜9×1017Ωであることを特徴とする請求項1または2に記載の静電吸着シート(ii)。
【請求項4】
帯電処理が直流式コロナ放電処理であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項5】
樹脂フィルム層(A)が熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項6】
樹脂フィルム層(A)の熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂を含むことを特徴とする請求項5に記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項7】
樹脂フィルム層(A)が少なくとも1軸方向に延伸された延伸樹脂フィルム層を含むことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の積層フィルム(iii)。
【請求項8】
樹脂フィルム層(A)の空孔率が0〜10%であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項9】
記録層(B)が帯電防止機能を有するポリマーを含有することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項10】
記録層(B)の帯電防止機能を有するポリマーが第四級アンモニウム塩型共重合体およびアルカリ金属塩含有ポリマーの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項9に記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項11】
記録層(B)がアルカリ金属イオンを0.01〜1重量%を含むことを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項12】
記録層(B)のアルカリ金属イオンがリチウムイオンを含むことを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項13】
ラベル層(i)のガーレ柔軟度が5〜1000mgfであることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項14】
ラベル層(i)の水蒸気透過係数が0.01〜2.50g・mm/(m2・24hr)であることを特徴とする請求項1〜13の何れか1項に記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項15】
支持体層(ii)が熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜14の何れか1項に記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項16】
支持体層(ii)の比誘電率が1.1〜5.0であることを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項17】
ラベル層(i)の厚みが20〜500μmであり、支持体層(ii)の厚みが20〜500μmであることを特徴とする請求項1〜16の何れか1項に記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項18】
請求項1〜17の何れか1項に記載の静電吸着シート(iii)の記録層(B)側表面に印刷を施してなる記録物。
【請求項19】
請求項18に記載の記録物より支持体層(ii)を剥がしたラベル層(i)よりなる表示物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−145936(P2012−145936A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−281122(P2011−281122)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【出願人】(000122313)株式会社ユポ・コーポレーション (73)
【Fターム(参考)】