説明

透析のための緩衝組成物

酸濃縮物およびそれから調製された透析液組成物は、クエン酸と、酢酸塩および/または乳酸塩から選択される有効量の緩衝剤を含む。上記緩衝剤により、生理学的に許容可能な量のクエン酸塩が上記透析液の望ましいpH値を維持できるようになる。一実施形態において、本発明の前駆体組成物は、濃度約20〜約900mEq/Lのクエン酸塩と、緩衝液と、水と、濃度約1,000〜約7,000mEq/Lの塩化物と、少なくとも1つの生理学的に許容可能な陽イオンと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許出願第09/421,622号(1999年10月19日に出願され、現在係属中)の一部継続出願であり、その出願は、米国仮特許出願第60/105,049号(1998年10月20日出願)に基づく利益を主張し、これらの出願は、それらの全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の背景)
(技術分野)
本発明は、治療用組成物、特に透析液組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の説明)
正しく機能しているとき、腎臓は体が恒常性と呼ばれる正常な内部環境を維持するのを助ける。腎臓は、グルコースおよび電解質の的確な濃度を維持すると同時に、体から余分な体液および代謝廃棄物(毒素)を除去することにより、この正常なバランスの実現を助ける。腎不全はさまざまな要因で引き起こされ得る。しかしながら、ある人の腎臓が機能しなくなる理由にかかわらず、その機能障害は結果としてその人の体内に余分な体液および有毒廃棄物を蓄積するという結果をもたらす。廃棄物を人工的手段により取り除かなければ、この尿毒中毒は最終的に死を引き起こす。血液透析は、腎臓がもはや血液浄化作用を行わない人に対する最も一般的な治療手段である。他の一般的な種類の透析には、腹膜透析(PD)がある。
【0004】
透析液は透析に使用される液体であり、透析は腎不全患者の血液を「清浄」にする役目を果たす。血液透析中、患者の血液は透析装置(すなわち人工腎臓)内の膜の片側を循環し、一方、透析液は膜の反対側を流れる。血液と透析液は半透膜によって隔てられているため、血液と透析液の間で分子の移動が生じる。膜孔は十分小さいために血球および蛋白質を血液から分離することはできないが、廃棄物は上記孔により血液から透析液へ移動することができる。
【0005】
腹膜透析は患者の腹膜を透析膜として使用する。腹腔内に多量の腹膜透析液を注入し、浸透圧および拡散勾配により余分な体液および廃棄物を腹膜を通して血液から分離し、透析液を含む腹腔内に蓄積させる。十分な滞留時間の後、使用済みの透析液は蓄積した余分な体液および廃棄物とともに腹腔内より排出される。
【0006】
現在、血液透析に使用されるすべての透析液は事実上、治療現場(血液透析器内)にて(1)処理水、(2)酸濃縮物、および(3)塩濃縮物を混合することにより作られている。塩濃縮物は一般的に重炭酸ナトリウムを主要な塩基性物質として含むため、上述の成分を混合することによって作られる透析液は通例重炭酸塩透析液として知られている。重炭酸塩透析液は、処理水、「酸濃縮物」液および重炭酸液(塩基性)濃縮物が混合される「三流式(three−stream)」比例ポンプの使用により、ほぼ例外なく血液透析器内で作られる。一般的に、1人の患者は1回の血液透析治療につき120リットル以上の透析液を必要とする。慢性腎不全患者は週3回、年に52週治療を受ける。
【0007】
上記濃縮物は、「酸濃縮物」は概して液体として供給され、重炭酸は乾燥粉末として輸送されるというように、2つの形態で透析診療所へ供給される。酸濃縮物は一般的に塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、ブドウ糖およびpHバランスを保つために十分な酸(酢酸)を含む。特定の透析セッションで使用される酸濃縮物の的確な組成は、医師の処方により決定される。
【0008】
患者の治療セッション前に、水差し1杯の酸濃縮液を入手する。概して、この水差し1杯の濃縮物は大きな酸濃縮物のタンクまたはドラムから取り出す。透析診療所の職員は、多量の粉末重炭酸ナトリウムを一定量の処理水と混合することにより、水差し1杯の重炭酸ナトリウム濃縮物も調製する。酸性および塩基性の溶液を混合することにより炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムの沈殿が生じるため、「酸」および重炭酸塩の濃縮物を別々にする必要がある。適切な混合の後、最終透析液は医師により処方された濃度となる。
【0009】
上述したように、腎不全患者はその血液中に余分な体液および通常は排泄される物質を蓄積しており、もっとも顕著なのは、血中尿素窒素(BUN)およびクレアチニンである。事実、これら2つの物質の血中濃度低下は概して透析の効率および全体的な効果を測定するために使用される。多くの場合、透析の効率は、数々の要因から影響を受ける可能性があり、その要因の1つとして血餅による透析膜孔の閉塞がある。
【0010】
さらに、多くの腎不全患者が、腎臓により酸を取り除くことができないために慢性アシドーシスを患っている。従来より、血液透析治療のさまざまな目的の1つは、血液中の余分な酸を中和するため通常量よりも多い重炭酸塩を透析液内に備えることにより、アシドーシスを補正することである。しかしながら、血液透析中の「余分の」重炭酸塩注入にもかかわらず、正常血中重炭酸濃度は多くの患者において、次の血液透析治療までの間維持されない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、当技術分野には血液透析の効率を高めるよう改良された透析液製剤が必要である。本発明は、この必要性を満たすことを目的とし、ここに開示するような関連の利点をさらに提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、水で希釈され塩基と混合されることにより透析液組成物を形成する、透析液前駆体組成物と呼ばれる組成物を提供する。この透析液前駆体組成物は、それから調製される透析液組成物と同様に、クエン酸と、酢酸塩および/または乳酸塩から選択される有効量の緩衝剤を含む。上記緩衝剤は、上記透析液の望ましいpH値を維持するために生理学的に許容可能な量のクエン酸塩を必要とする。
【0013】
一実施形態において、本発明は透析液前駆体組成物を提供する。この組成物は、最低でも、水、濃度約1,000〜約7,000mEq/Lの塩化物、濃度約20〜約900mEq/Lのクエン酸塩、濃度約0.01〜約150mEq/Lの酢酸塩および/または乳酸塩から選択される少なくとも1つの緩衝陰イオン、および少なくとも1つの生理学的に許容可能な陽イオンを含む。関連する実施形態において、本発明は、水と混合することにより上記の濃度にある上記構成要素を有する水性組成物を生成する乾燥透析液前駆体組成物を提供する。一実施形態において、乾燥透析液前駆体組成物はペレットまたは錠剤であり、一方、他の実施形態において、乾燥透析液前駆体組成物は粉末である。
【0014】
他の実施形態において、本発明は透析液組成物を提供する。この透析液組成物は、最低でも、処理水、濃度約20〜200mEq/Lの塩化物、濃度約0.5〜30mEq/Lのクエン酸塩、濃度約0.01〜約4.5mEq/Lの酢酸塩および/または乳酸塩から選択される少なくとも1つの緩衝陰イオン、および少なくとも1つの生理学的に許容可能な陽イオンを含む。関連する実施形態において、本発明は、水と混合することにより上記の濃度にある上記構成要素を有する水性組成物を生成する乾燥透析液組成物を提供する。一実施形態において、乾燥透析液組成物はペレットまたは錠剤であり、一方、他の実施形態において、乾燥透析液組成物は粉末である。
【0015】
他の実施形態において、本発明は透析液前駆体組成物を形成する方法を提供する。この方法は、濃度約1,000〜約7,000mEq/Lの塩化物、濃度約20〜約90mEq/Lのクエン酸塩、濃度約0.01〜約150mEq/Lの酢酸塩および/または乳酸塩から選択される少なくとも1つの緩衝陰イオンを有する混合物を提供するために、処理水、塩化物、クエン酸塩、酢酸塩および乳酸塩から選択される少なくとも1つの緩衝陰イオン、および少なくとも1つの生理学的に許容可能な陽イオンを混合するステップを含む。関連する実施形態において、本発明は、上記構成要素濃縮物を有する水性組成物を提供するために、水を、上記構成要素を含有する乾燥透析液前駆体組成物と混合するステップを含む、透析液前駆体組成物を形成する方法を提供する。一実施形態において、乾燥透析液前駆体組成物はペレットまたは錠剤であり、一方、他の実施形態において、乾燥透析液前駆体組成物は粉末である。
【0016】
他の実施形態において、本発明は透析液組成物を形成する方法を提供する。この方法は、上記透析液前駆体組成物を重炭酸塩含有水溶液と混合するステップを含む。上記透析液前駆体組成物は、濃度約44〜約143mEq/Lの塩化物と、濃度約1.5〜約30mEq/Lのクエン酸塩と、濃度約0.01〜約3.6mEq/Lの酢酸塩および乳酸塩から選択される少なくとも1つの緩衝陰イオンを有する濃縮物を生成するために、最低でも、処理水、塩化物、クエン酸塩、酢酸塩および乳酸塩から選択される少なくとも1つの緩衝陰イオン、および少なくとも1つの生理学的に許容可能な陽イオンを混合するステップを含む。
【0017】
その他の実施形態において、本発明は前述の方法に従って調製された組成物を提供する。
【0018】
他の実施形態において、本発明は、水、濃度約1,000〜約7,000mEq/Lの塩化物、濃度約20〜約900mEq/Lのクエン酸塩、十分な量の生理学的に許容可能な陽イオンを含む水性酸濃縮組成物を提供する。上記水性酸濃縮組成物は、4より低いpH値を有し、酢酸塩、重炭酸塩、乳酸塩のいずれも含まない。
【0019】
関連する実施形態において、本発明は、水と混合することにより、上に列挙した組成物中に上に列挙した構成要素を有する水性酸濃縮組成物を生成する上記の構成要素(水以外)を含む乾燥酸濃縮物前駆体組成物を提供する。一実施形態において、乾燥酸濃縮物前駆体組成物はペレットまたは錠剤であり、一方、他の実施形態において、乾燥酸濃縮物前駆体組成物は粉末である。
【0020】
マグネシウム濃度は好ましくは2mEq/L以下であり、カルシウム濃度は好ましくは4.5mEq/L以下であり、重炭酸塩濃度は好ましくは25〜40mEq/Lの範囲内である。カルシウムおよびマグネシウム濃度は、クエン酸塩の血清カルシウムおよび/または血清マグネシウムへの結合を補うために組成物中のクエン酸量に応じてより高い数値に調整される必要がある。
【0021】
他の実施形態において、本発明は特に腹膜透析に適した無菌組成物を提供する。一実施形態によると、本発明は処理水、濃度約0.5〜30mEq/Lのクエン酸塩、濃度約20〜200のmEq/Lの塩化物、すべての炭酸塩含有種が重炭酸塩の形状にあると仮定すれば濃度約5〜100mEq/Lの重炭酸塩、濃度約10〜100g/Lのグルコース、および、すべてのクエン酸塩、塩化物、重炭酸塩および組成物中に存在し得るその他の陰イオン種を中和するのに十分な数の生理学的に許容可能な陽イオンを含む腹膜透析液組成物を提供する。他の実施形態において、本発明は上記のような腹膜透析のための組成物を提供するが、水は含まない。この実施形態はこのようにして乾燥組成物を提供し、ここに腹膜透析液を形成するために無菌水を追加してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
一局面において、本発明は、水、塩化物、クエン酸塩、酢酸塩および/または乳酸塩から選択される少なくとも1つの緩衝陰イオン、および少なくとも1つの生理学的に許容可能な陽イオンを含有する構成要素を含む、またはこれらから調製される透析液前駆体組成物と呼ばれる組成物を提供する。上記透析液前駆体組成物は、塩基および希釈剤と混合することにより、血液透析および腹膜透析の両方に使用され得る、生体適合性のある組成物を形成する。関連する局面において、本発明は、水と混合することにより上記構成要素を含む水性組成物を生成する乾燥透析液前駆体組成物を提供する。一実施形態において、乾燥透析液前駆体組成物はペレットまたは錠剤であり、一方、他の実施形態において乾燥透析液前駆体組成物は粉末である。
【0023】
以下で詳細を論ずるとおり、透析液前駆体組成物内の緩衝陰イオン、すなわち酢酸塩および/または乳酸塩より選択される陰イオンの存在は、標準的な三流式(three−stream)透析器において標準的な塩(すなわち重炭酸塩)濃縮物と共に透析液前駆体組成物を酸濃縮物として使用できるようにし、その結果、透析治療中における透析液のpH値変動に関連する問題を緩和することができる。緩衝陰イオンを取り除くと、透析液は医療専門家が考える許容可能範囲外のpH値および/または伝導性を持つ。本発明の組成物およびその特性についてさらに論ずる前に、この組成物の主成分について説明する。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「塩化物」とは陰イオン性塩化物のことをいう。従って、「塩化物」という用語は陰イオン性塩化物および塩化物陰イオンおよび生理学的に許容可能な陽イオンから生成され得るその塩形態を含む。「塩化物」という用語は、塩素原子が例えば有機分子内の炭素原子に共有結合した化合物を含むことを意図しない。典型的な、生理学的に許容可能な陽イオンは、水素イオン(すなわちプロトン)、金属陽イオン、アンモニウム陽イオンを含むがこれらに限定されない。概して金属陽イオンが好ましく、ここで適合する金属陽イオンは、陽イオン形態のナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムを含むがこれらに限定されない。上述のうちナトリウムおよびカリウムが好ましく、ナトリウムがより好ましい。組成物内に鉄または微量元素が望ましく含まれている場合、金属陽イオンは鉄陽イオン(すなわち第二鉄陽イオンまたは第一鉄陽イオン)または、例えばセレンまたは亜鉛陽イオンなどの微量元素の陽イオンであり得る。塩化物塩を含有する組成物は生理学的に許容可能な陽イオンの混合物を含んでもよい。
【0025】
一実施形態において、前駆体透析液組成物は濃度約1,000〜約7,000mEq/L、好ましくは約2,000〜約5,000mEq/Lに存在する。一般に、本前駆体透析液組成物の構成要素濃度は、患者の血液、血漿または血清のさまざまな構成要素を減少、増加もしくは正常化するため、医師により個別に処方される。そのため、前駆体透析液組成物およびそれから調製された透析液組成物内の塩化物の正確な濃度は、当技術分野において周知の原理に従い、医師により決定される。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「クエン酸塩」は、いかなる形態のものであっても、クエン酸(3つのプロトンと錯体を形成したクエン酸陰イオン)、クエン酸陰イオンを含む塩、およびクエン酸陰イオンの部分的エステルを含むクエン酸陰イオンのことをいう。クエン酸陰イオンは有機的な、下記の化学式で示される三カルボン酸である。
【0027】
【化1】

ケミカルアブストラクツ(Chemical Abstracts)登録番号77−92−2に指定されているクエン酸は、分子式HOC(COH)(CHCOH)および式量192.12g/molを有する。クエン酸塩(すなわち、クエン酸陰イオンを含む塩)は、1つ以上の生理学的に許容可能な陽イオンと関連する1つ以上の陰イオンからなる。典型的な生理学的に許容可能な陽イオンは、プロトン、アンモニウム陽イオンおよび金属陽イオンを含むがこれらに限定されない。適合する金属陽イオンは、ナトリウム、カリウムを含むがこれらに限定されるものではなく、ここでナトリウムおよびカリウムが好ましく、ナトリウムがより好ましい。クエン酸陰イオンを含有する組成物は生理学的に許容可能な陽イオンの混合物を含んでもよい。
【0028】
クエン酸陰イオンの部分的エステルは、エステル形態(すなわち、−COO−R、ここでRは有機基である)におけるクエン酸陰イオンのカルボン酸(すなわち−COO)基のうち、3つすべてではなく1つまたは2つを有するであろう。1つまたは2つのR基に加え、クエン酸陰イオンの部分的エステルは1つか2つの生理学的に許容可能な陽イオンを(R基と陽イオンの合計が3になるように)含むであろう。R基は有機基であり、好ましくは低アルキル基である。
【0029】
クエン酸塩は好ましくはプロトンおよび/または金属陽イオンと関連している。そのようなクエン酸化合物の典型的な例は、クエン酸、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸二水素カリウム、クエン酸水素二カリウム、クエン酸カルシウムおよびクエン酸マグネシウムであるがこれらに限定されない。一実施形態において、クエン酸塩は透析液前駆体組成物内に1つ以上のクエン酸、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸二水素カリウム、またはクエン酸水素二カリウムの形態で存在する。
【0030】
好適な実施形態において、クエン酸はクエン酸陰イオンの原料を提供する。この実施形態において、クエン酸は前駆体組成物の主要酸性化剤として機能する。クエン酸は周囲条件下において、乾燥化学粉末、結晶、ペレットまたは錠剤の形態をとる比較的安価な生理的酸である。生理的に耐容可能な形態のクエン酸はいずれも上記組成物にクエン酸陰イオンを導入するために使用することができる。例えば、クエン酸は一水和物を含む水素の形態をとってもよい。
【0031】
クエン酸塩は従来、カルシウムを結合することにより、血流中にて抗凝血剤として機能可能であると認識されてきた。従って、透析液前駆体組成物のクエン酸塩濃度は、その抗凝血性を考慮して選択されるべきである。その他の措置が取られない限り、クエン酸塩濃度は約900mEq/Lを超えてはならず、約200mEq/Lを超えないのが好ましい。200〜900mEq/Lのクエン酸塩濃度を用いる場合、透析液前駆体組成物のマグネシウムおよび/またはカルシウム濃度を高めなければならない。
【0032】
クエン酸塩濃度は、血液の凝固性に有害な作用を及ぼすため高すぎてはならないが、最終透析液組成物のpH値を生理学的に許容可能なpH値にし、それを維持させるため、クエン酸塩濃度は十分に高くなくてはならない。一般的に、抗凝血を実現するのに必要な量の4分の1以下のクエン酸塩濃度は、生理的に許容可能なpH値を持つ透析液組成物を提供する。そのため、本透析液前駆体組成物は、望ましい透析液のpH値を提供するために、約20mEq/Lという最低限のクエン酸塩濃度を有するべきである。一実施形態において、透析液前駆体組成物は、濃度約20〜約900mEq/Lのクエン酸塩を含み、好適な実施形態において、上記組成物は濃度約70〜約150mEq/Lのクエン酸塩を含む。関連する実施形態において、本発明は濃度約20〜約900mEq/Lのクエン酸塩を含む乾燥透析液前駆体組成物を提供し、好適な実施形態において、上記組成物は濃度約70〜約150mEq/Lのクエン酸塩を含む。
【0033】
クエン酸塩は透析液組成物のpH値を低下させる酸性化剤として機能するが、一局面において本発明は、最終透析液組成物のpH値を生理学的に許容可能な範囲内に維持するため、緩衝陰イオンを透析液前駆体組成物に導入する。本明細書中で使用される場合、「緩衝陰イオン」は組成物のpH値を調整し安定させる生理学的に許容可能な陰イオンをいう。適合する緩衝陰イオンは例えば、透析液組成物の水素イオン濃度の変化を最小化する化合物である酢酸塩、乳酸塩およびそれら(すなわち酢酸塩および/または乳酸塩)の混合物を含む。本明細書中で使用される場合、「酢酸塩および/または乳酸塩」は乳酸塩単独、酢酸塩単独、組成物内で使用され得るまたは存在し得る乳酸塩と酢酸塩の混合物のいずれも意味する。
【0034】
本明細書中で使用される場合、「酢酸塩」は、いかなる形態のものであっても、酢酸および酢酸の塩を含む酢酸陰イオンのことをいう。酢酸塩は有機的な、式HC−COOで示されるモノカルボン酸である。この酢酸塩は1つ以上の生理学的に許容可能な陽イオンと関連する1つ以上の陰イオンからなる。典型的な生理学的に許容可能な陽イオンは、プロトン、アンモニウム陽イオンおよび金属陽イオンを含むがこれらに限定されず、ここで金属陽イオンが好ましい。適合する金属陽イオンは、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムを含むがこれらに限定されず、ここでナトリウムおよびカリウムが好ましく、ナトリウムがより好ましい。
【0035】
本発明の酢酸塩化合物の典型例は、酢酸、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム三水和物、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸カルシウム一水和物、酢酸マグネシウムおよび酢酸マグネシウム三水和物を含むがこれらに限定されない。一実施形態において、透析液前駆体組成物の酢酸塩は酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウムの形態で存在し、好適な実施形態においてはナトリウムの形態で存在する。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「乳酸塩」は、いかなる形態のものであっても、乳酸および乳酸の塩を含む乳酸陰イオンのことをいう。乳酸塩は有機的な、式HC−CH(OH)−COOで示されるモノカルボン酸である。この乳酸塩は1つ以上の生理学的に許容可能な陽イオンと関連する1つ以上の陰イオンからなる。典型的な生理学的に許容可能な陽イオンは、プロトン、アンモニウム陽イオンおよび金属陽イオンを含むがこれらに限定されず、ここで金属陽イオンが好ましい。適合する金属陽イオンは、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムを含むがこれらに限定されず、ここでナトリウムおよびカリウムが好ましく、ナトリウムがより好ましい。組成物内に鉄または微量元素が望ましく含まれている場合、金属陽イオンは鉄陽イオン(すなわち第二鉄陽イオンまたは第一鉄陽イオン)または、例えばセレンまたは亜鉛陽イオンなどの微量元素の陽イオンであり得る。
【0037】
本発明の乳酸塩化合物の典型例は、乳酸、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウムおよび乳酸マグネシウム三水和物を含むがこれらに限定されない。一実施形態において、透析液前駆体組成物の乳酸塩は乳酸ナトリウムまたは乳酸カリウムの形態で存在し、最も好ましくはナトリウムの形態で存在する。組成物内に鉄または微量元素が望ましく含まれている場合、乳酸塩は鉄(すなわち乳酸第二鉄または乳酸第一鉄)と錯体を形成することができ、または、例えばセレンまたは亜鉛陽イオンなどの微量元素の陽イオンと錯体を形成することができる。
【0038】
一般に、透析液前駆体組成物は主として緩衝陰イオン同等物よりもクエン酸同等物を多く含むであろう。この前駆体組成物は、好ましくは酢酸塩、乳酸塩または酢酸塩+乳酸塩同等物よりもクエン酸同等物を多く含む。一実施形態において、透析液前駆体組成物は、濃度約0.01〜約150mEq/Lの酢酸塩および/または乳酸塩から選択される緩衝陰イオンと共に、濃度約20〜約900mEq/Lのクエン酸塩を含む。好適な実施例において、この組成物は濃度約70〜約150mEq/Lのクエン酸塩および濃度約0.3〜約125mEq/Lの酢酸塩および/または乳酸塩から選択される緩衝陰イオンを含む。関連する実施形態において、本発明は、水と混合されることにより上述の透析液前駆体組成物を生成する乾燥組成物(例えば、ペレット、錠剤、粉末)を提供する。
【0039】
透析液前駆体組成物内のクエン酸塩量が増加するに従い、この前駆体で作られた透析液のpH値は低下する傾向にある。透析液のpH値が低下している場合は、透析液のpH値を生理学的に許容不可能な濃度まで確実に上昇させないために前駆体を緩衝する必要はさほどない。そのため、原則として、透析液前駆体組成物内で使用されるクエン酸同等物が増加するに従い、必要とされる緩衝陰イオン同等物は減少する。一方、透析液前駆体組成物内で使用されるクエン酸同等物が減少するに従い、必要とされる緩衝陰イオン同等物は増加する。
【0040】
本明細書中で使用される場合、「生理学的に許容可能な陽イオン」という語句は哺乳類の血液、血漿または血清に一般的に含有されている陽イオン、または哺乳類に導入される際に耐容され得る陽イオンのことをいう。適合する陽イオンは、プロトン、アンモニウム陽イオンおよび金属陽イオンを含む。適合する陽イオンは、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムの陽イオン形態を含むがこれらに限定されず、ここでナトリウムおよびカリウムが好ましく、ナトリウムがより好ましい。アンモニウム陽イオン、すなわち式R、ここでRは水素または有機基である化合物は、それが生理学的に許容可能である限り使用され得る。好適な実施形態において、陽イオンは水素(すなわちプロトン)、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、およびそれらの組合せから選択される。
【0041】
透析治療を行う過程において透析液組成物のpH値が上昇を始めた場合(すなわち透析液がアルカリ性に傾いた場合)、緩衝陰イオンは効果的な量が存在していると、透析液組成物のpH値が生理学的に許容可能な範囲を超えて上昇するのを防止する。上述のクエン酸塩濃縮物を有する組成物のため、および望ましい緩衝効果を提供するために、前駆体組成物は約0.01〜約150mEq/Lの、好ましくは酢酸塩、乳酸塩およびそれらの混合物から選択される緩衝陰イオンを含むべきである。好適な実施形態において、前駆体組成物は約0.3〜約125mEq/Lの酢酸塩および/または乳酸塩を含む。一実施形態において、緩衝陰イオンは酢酸塩および乳酸塩の混合物である。他の実施形態において、緩衝陰イオンは酢酸塩であり、乳酸塩は組成物内に存在しない。他の実施形態において、緩衝陰イオンは乳酸塩であり、酢酸塩は組成物内に存在しない。
【0042】
腹膜透析液を使用し、血液と透析液の間の拡散を容易にするために、透析液に浸透圧物質を追加することによって両液体間の浸透勾配を維持することが望ましい。腹膜透析液中に浸透圧物質が存在することは、余分な体液および代謝副産物が血液から透析液へ流動するのを促進する。前駆体透析液組成物に適合する浸透圧物質は、糖である。糖は,好ましくはグルコース(例えばブドウ糖)、ポリ(グルコース)(すなわち、ブドウ糖の繰り返し単位から形成されるイコデキストリンなど、グルコース残基の繰り返しからなるポリマー)、または果糖から選択される。糖を使用せずに透析液前駆物を作ることは可能だが、糖が透析液組成物に追加される場合は、それは概してブドウ糖である。さらに、同等物として機能する、生体適合性のある糖でない浸透圧物質であれば、代替物として使用可能であることが理解される。糖は一般的に、約2,700g/Lより低い濃度で透析液前躯体組成物内に存在する。
【0043】
患者の血清は、例えば蛋白質、炭水化物、核酸、および各種イオンを含むさまざまな構成要素を含む。一般的に、医師により処方された透析液組成物は、血清中の特定構成要素の濃度を低下、上昇あるいは正常化させるために選択される。慣例によれば、前駆体透析液組成物の一部としてさまざまな陽イオンが含まれ得る。適合する陽イオンは例えばナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムを含んでよい。透析液前駆体組成物において、ナトリウムの好適な濃度範囲は約2,000〜5,000mEq/Lである。カリウムの好適な濃度範囲は約250mEq/L未満である。カルシウムの好適な濃度範囲は約250mEq/L未満である。マグネシウムの好適な濃度範囲は約100mEq/L未満である。本明細書中で使用される場合、上記の数値未満の濃度はゼロを含む。関連する実施形態において、本発明は水と混合することにより、上記したナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウム濃縮物を有する透析液前駆体組成物を生成する乾燥組成物(例えば錠剤、ペレット、粉末等)を提供する。
【0044】
本明細書中で使用される場合、「mEq/L」は存在する水量に対して存在する特定の透析液構成要素(溶質)の割合のことをいう。より具体的には、mEq/Lは水1リットル当たりの溶質ミリグラム当量の数をいう。1リットル当たりのミリグラム当量は、溶質の1リットル当たりのモル数に、溶質の分子当たりの荷電種(基)数を乗じ、これに因数1,000を乗じて計算される。例として、10gのクエン酸が1リットルの水に加えられた場合、そのクエン酸は10g/Lの濃度に存在する。無水クエン酸は192.12g/molの分子量を有するため、クエン酸の、つまりはクエン酸陰イオン1リットル当たりのモル数(クエン酸1モル当たり1モルのクエン酸陰イオンがあるため)は、10g/Lを192.12g/molで割った値、0.05mol/Lである。クエン酸陰イオンは3個の負に荷電した種をカルボン酸基の形態において有する。従って、mEq/Lで表すクエン酸塩濃度を提供するために0.05mol/Lのクエン酸塩濃度に3を乗じ、続いて1,000を乗じることとなり、本実施例においては156mEq/Lのクエン酸陰イオンである。
【0045】
本発明の好適な水は、原則的に発熱物質なしであり無菌であるように、また少なくとも医療器具開発協会(AAMI)により制定された透析液組成物のための水質基準を満たすように処理される。この水は、処理水またはAAMI品質水(AAMI−quarity water)と呼ばれることもある。透析液のための水処理を示し、水処理システムを監視したモノグラフおよび水処理システムの規定はAAMI(スタンダードコレクション、第3巻、透析、3.2章透析のための水処理、第3版(Standard Collection,Volume3,Dialysis,Section3.2 Water Quarity for Dialysis,3ed.)1998年、AAMI、3330 Washington Boulevard,Arlington,VA22201)またはインターネットを使用しhttp://www.aami.comにて入手可能である。さらに、本発明の前駆体透析液に含まれるその他の構成要素はすべて、少なくとも米国薬局方(USP)品質等級の純度であるのが好ましく、これは概して約95%の純度である。上記構成要素は好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%、さらに好ましくは少なくとも約99%である。
【0046】
本発明の透析液前躯体組成物は、透析液組成物を産出するための処理水および塩基による希釈前、一般的に約1〜約6.5、より一般的には約1〜約4、さらに一般的には約2〜約4の範囲のpH値および約15℃から約40℃の温度を有する。
【0047】
好適な実施形態において、透析液前躯体組成物は濃度約2,000〜約5,000mEq/Lの塩化物、濃度約70〜約150mEq/Lのクエン酸塩、総濃度約0.3〜約125mEq/Lの酢酸塩および/または乳酸塩、水素、濃度約2000〜約5000mEq/Lのナトリウム、約250mEq/Lより低濃度のカリウム、約250mEq/Lより低濃度のカルシウム、および約100mEq/Lより低濃度のマグネシウムから選択される少なくとも1つの生理学的に許容可能な陽イオン、および約2,700mEq/Lより低濃度のグルコース(好ましくはブドウ糖)を含む構成要素を含み、ここで上記組成物は透析液のために設定されたAAMI基準を満たすかまたは超える。一実施形態において、上記の成分は上記組成物内における最適な有効成分である。関連する実施形態において、本発明は、水と混合することにより上記した構成要素および構成要素濃縮物を有する透析液前駆体組成物を生成する乾燥組成物を提供する。
【0048】
本発明は、上述のような前駆体透析液組成物を形成する方法を提供する。この方法において、透析液前駆体組成物を生成するように成分が混合される。従って、クエン酸塩の原料および緩衝陰イオン(例えば、酢酸塩および/または乳酸塩)の原料は処理水と混合され、その中で最終的には、上記に示したようにそれぞれの望ましい濃縮物を生成する。前駆体透析液組成物の非水溶構成要素は、前もって混合されることがあり、かつ粉末、ペレット、錠剤の形態またはその他の乾燥形態であってもよく、その後前駆体透析液組成物を形成するため直ちに水と混合される。上述の成分に適合する原料は、当技術分野において周知である。確かに、本発明で使用される化合物の科学的特性、例えば分子量や溶解度は、当技術分野において当業者が本発明の組成物を調製する方法を知るために利用できる。例えば、シグマアルドリッチ社発行のシグマアルドリッチカタログ(the Sigma and Aldrich catalogs from Sigma−Aldrich)(Milwaukee,WI;http://sial.com)を参照のこと。
【0049】
例えば、塩化物原料は、塩酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化アンモニウム等のいずれかであってよい。クエン酸塩原料は、クエン酸、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸二水素カリウム、クエン酸二水素二カリウム、クエン酸マグネシウム等のいずれかであってよい。酢酸塩原料は、酢酸、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム三水和物、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸カルシウム一水和物、酢酸マグネシウム、酢酸マグネシウム四水和物等のいずれかであってよい。乳酸塩原料は、乳酸、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、乳酸マグネシウム三水和物等のいずれかであってよい。上述の化学物質のうちいずれかまたは全てが、必要に応じてUSP品質等級で、例えばウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチケミカルカンパニー(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee WI)を含む多くの薬品卸売業者より市販されている。処理水は、例えば蒸留および逆浸透を含む下記の標準的な浄化技術によって得ることができる。あるいは、処理水は市販で購入することができる。そのような処理水は全ての、またはほとんど全ての透析診療所にて使用されており、したがって当業者には周知である。
【0050】
一実施形態において、本発明は、濃度約1,000〜約7,000mEq/Lの塩化物、濃度約20〜約900mEq/Lのクエン酸塩、濃度約0.01〜約150mEq/Lの酢酸塩および/または乳酸塩から選択される少なくとも1つの緩衝陰イオンを有する混合物を生成するために、水、塩化物、クエン酸塩、酢酸塩および/または乳酸塩から選択される少なくとも1つの緩衝陰イオン、および少なくとも1つの生理学的に許容可能な陽イオンを合成するステップを含む、透析液前躯体組成物を形成する方法を提供する。透析液前躯体組成物の非水溶構成要素は、前期方法が水と、前もって混合された乾燥組成物との混合を引き起こすように、前もって混合されることがあり、かつ粉末、ペレット、錠剤の形態またはその他の乾燥形態であってもよい。
【0051】
好適な実施形態において、水、塩化物、クエン酸塩、酢酸塩および生理学的に許容可能な陽子イオンの原料は、水、濃度約2,000〜約5,000mEq/Lの塩化物、濃度約70〜約150mEq/Lのクエン酸塩、濃度約0.3〜約125mEq/Lの酢酸塩、水素、濃度約2000〜約5000mEq/Lのナトリウム、約250mEq/Lより低濃度のカリウム、約250mEq/Lより低濃度のカルシウム、および約100mEq/Lより低濃度のマグネシウムから選択される少なくとも1つの生理学的に許容可能な陽イオン、および約2,700mEq/Lより低濃度のグルコースを含む成分を生成するために混合され、ここで上記組成物は透析液のために設定されたAAMI基準を満たすかまたは超える。
【0052】
他の局面において、本発明は透析液組成物を提供する。透析液組成物は、例えば上述の透析液前駆体組成物から、その前駆体組成物に処理水または塩基、好ましくは重炭酸塩を加えることにより、調製されることができる。塩基および水を追加すると、透析液前駆体組成物は透析の実施に適合する組成物を生成する。代替方法として、前述したとおり、透析液組成物を調製するために、乾燥組成物を水および塩基と結合させてもよい。
【0053】
本発明に従って透析液組成物を生成するために、例えば、重炭酸塩濃縮物または希釈した重炭酸塩濃縮物を、透析液前駆体組成物または希釈した透析液前駆体組成物に加えてもよい。一般的に、体積1の透析液前駆体組成物は、透析液組成物を生成するために、体積比33〜45倍に希釈した塩濃縮物で希釈される。透析液前駆体はクエン酸塩(酸濃縮物の主要酸性成分として)、重炭酸塩(塩濃縮物の主要塩基性成分として)、および好ましくは酢酸塩および/または乳酸塩から選択される緩衝陰イオンを含むであろう。
【0054】
一実施形態において、透析液組成物は、最低でも、処理水、濃度約20〜200mEq/Lの塩化物、濃度約0.5〜30mEq/Lのクエン酸塩、濃度約0.01〜約4.5mEq/Lの酢酸塩および/または乳酸塩から選択される少なくとも1つの緩衝陰イオン、重炭酸塩、および少なくとも1つの生理学的に許容可能な陽イオンを含む。
【0055】
一実施形態において、透析液組成物は、濃度約45g/L未満の、グルコース(好ましくはブドウ糖)、ポリ(グルコース)(好ましくは、ポリ(ブドウ糖)、例えばイコデキストリン)、および果糖から選択される1つ以上の糖を含む。代わりに、もしくは糖に追加して、透析液組成物は1つ以上のアミノ酸を含んでもよい。好ましくは、透析液組成物は透析液のために設定されたAAMI基準を満たすかまたは超える水を含み、その他全ての構成要素は少なくともUSP品質等級の純度を有する。他の好適な実施形態において、透析液組成物は温度約25℃〜約40℃のとき約5〜8.5のpH値を有し、より一般的にはこの温度範囲において約6.4〜7.6のpH値を有し、好ましくは約7.2〜7.4のpH値を有する。
【0056】
その他の実施形態において、透析液組成物は、水、濃度約40〜約150(より好ましくは、約60〜120)mEq/Lの塩化物、濃度約1.5〜約4.5(より好ましくは、約2〜3)mEq/Lのクエン酸塩、総濃度約0.01〜約4.0(より好ましくは約0.2〜約0.5)mEq/Lの酢酸塩および/または乳酸塩、濃度約25〜約45mEq/Lの重炭酸塩、水素、濃度約60〜約190(より好ましくは、約70〜約150)mEq/Lのナトリウム、約5mEq/Lより低濃度のカリウム、約250mEq/Lより低濃度のカルシウム、および約2mEq/Lより低濃度のマグネシウムから選択される少なくとも1つの生理学的に許容可能な陽イオン、および約45(好ましくは8)mEq/Lより低濃度のグルコース(好ましくはブドウ糖)を含有する成分を含み、ここで結合された組成物は透析液のために設定されたAAMI基準を満たすかまたは超える。
【0057】
血液透析あるいは腹膜透析のための、それに前駆体を含む本発明の透析液組成物に関し、本発明の一実施形態において、この組成物は鉄を含む。透析を受ける患者は鉄欠乏症であることが多く、ここで鉄欠乏症は、貧血およびその他の望ましくない病状と関連がある。現在、鉄欠乏症は最も一般的には、鉄経口摂取プログラムまたは鉄の非経口投与によって対処されている。しかしながら、鉄経口摂取プログラムは胃腸への悪影響を及ぼすことがあり、患者が厳密にプログラムに従わないという問題もある。鉄の非経口投与は、鉄経口摂取プログラムに関するある程度の問題を克服しており、患者が腹膜透析を受けている場合の標準方法である。血液透析患者の場合には、治療中に透析装置の静脈血ラインに投入され、不便さと費用が増す。本発明の一形態は、鉄含有透析組成物を提供することにより、上述の問題に対処するものである。この文脈で使用される場合、「鉄」は鉄の錯体に加え、第一鉄形態および第二鉄形態の両方のことをいう。
【0058】
鉄は、患者の健康に適合性があれば、任意の使いやすい形態で組成物内に導入してよい(例えば、「慢性腎不全による貧血治療のためのNKF−DOQI標準的治療法ガイドライン(NKF−DOQI clinical practice guidelines for the treatment of anemia of chronic renal failure)」Am J.Kidney Dis.30:S192−S237,1997を参照のこと)。例えば、デキストラン鉄(水酸化第二鉄デキストラン錯塩、CAS登録番号9004−66−4)は現在、非経口投与により血液透析患者に投与されている(例えば、「エリスロポエチンを使用した腹膜透析患者の鉄デキストラン治療(Iron dextran treatment in peritoneal dialysis patients on erythropoietin)」Perit.Dial.Bull.8:464−466、1992およびGoldberg,L「非経口鉄調製の薬効薬理(Pharmacology of parenteral iron preparations)」臨床医学における鉄(Ironin Clinical Medicine)78:74−92,1958を参照のこと)。デキストランの代わり、またはそれに加えて、鉄は、例えば鉄サッカラートまたはグルコン酸錯体等、他の糖類または多糖類と錯体を形成してもよい。上述の鉄サッカリド錯体のいずれも、本発明の透析液組成物内に含有することができる。他の実施例のように、鉄はピロリン酸第二鉄を介し導入することができる(例えば、Gupta,A.他「透析液鉄療法:透析液経由による血液透析中の溶性ピロリン酸第二鉄注入(Dialysate iron therapy:Infusion of soluble ferric pyrophosphate via the dialysate during hemodialysis)キドニーインターナショナル(Kidney International)55:1891−1898,1999を参照のこと」。水溶性形態のピロリン酸第二鉄を作り出すために、ピロリン酸第二鉄をクエン酸および水酸化ナトリウムとの化学反応によって調製してもよい。最終実施例として、鉄はクエン酸酸化鉄(CAS登録番号3522−50−7)とクエン酸第一鉄のいずれかまたは両方を介し、透析液組成物に導入してもよい。本発明の一形態において、鉄はクエン酸塩の鉄塩を介し透析液に導入される。
【0059】
鉄が透析液に追加される形態に関わらず、追加される鉄量は治療効果のある量でなくてはならない。この量は患者の具体的症状および担当医の目的により多少変化するであろう。しかしながら、概して透析液中約0.1〜300マイクログラム/デシリットルの鉄濃度が適合する濃度であろう。この量は患者によって異なるため、市販のクエン酸塩含有製品は鉄を含まないよう調製される場合があり、その製品は病院または患者が透析治療を受けているその他の場所で、望ましい量の鉄が「混ぜられる」ことがある。
【0060】
血液透析あるいは腹膜透析のための、それに前駆体を含む本発明の透析液組成物に関し、本発明の一実施形態において、組成物は1つ以上の微量元素を含む。研究により、透析および特に透析の維持管理が透析を受ける患者から微量元素を欠乏させることがわかっている。本発明は、そのような微量元素の欠乏を補正するための組成物と方法を、本発明の組成物に微量元素を組み込むことにより提供する。
【0061】
1つ以上の微量元素が本発明の組成物に含まれることがある(例えば、Zima,t.他、血液浄化法(Blood Purif.)17(4):187−198,1999およびZima,t.他「微量血液浄化法(Trace BloodPurif.)16(5):253−260,1998を参照のこと」。例えば、セレンは本発明の組成物に含まれてよい(例えば、Krizek,M.他「血中セレン濃度に対する血液透析の影響(Influence of hemodialysis on selenium blood levels)」Sb Lek 101(3):241−248,2000およびNapolitano G.「血液透析治療における慢性尿毒症患者の甲状腺機能と血漿セレン(Thyroid function and plasma selenium in chronic uremic patients on hemodialysis treatment)」Biol.Trace Elem.Res.55(3):221−30、1996年12月を参照のこと)。本発明の組成物に含まれる可能性のある他の微量元素は亜鉛である。クロム、マンガンおよびモリブデンもまた透析液組成物に含まれ得る微量元素である。
【0062】
微量元素は任意の塩もしくは元素の混合物を介して組成物に追加され得る。例えば、微量元素の属性に関わらず、本発明の一局面において元素はそのクエン酸塩を介して本発明の組成物に追加される。しかしながら、その他の適合する形態、例えば亜鉛には硫酸亜鉛、セレンには硫化セレンが使用されることもある。本発明の組成物に含まれる微量元素の量は、患者の具体的症状および担当医の目的を考慮して選択されなければならない。しかしながら、概して微量元素の1日当たりの推奨摂取量(RDA)は、全米科学アカデミー食品栄養局/米国学術研究会議により説明されているように、従うに値する指針である(例えば1日当たりの推奨摂取量、全米科学アカデミー、第10版、1989年、また食事摂取基準(DRIs)、全米科学アカデミー、1997年を参照のこと)。この量は患者によって異なるため、市販のクエン酸塩含有製品は微量元素を含まないよう調製される場合があり、その製品は病院または患者が透析治療を受けているその他の場所で、望ましい量の微量元素が「混ぜられる」ことがある。
【0063】
他の局面において、本発明は透析液組成物を形成する方法を提供する。好適な実施形態において、上記方法は上記のように透析液前駆体を塩濃縮物、好ましくは重炭酸塩濃縮物、および、前述した透析液中の溶質濃度を提供するため、必要に応じて処理水と結合するステップを含む。塩濃縮物は水と重炭酸塩を含み、7を超えるpH値を有する。pH値が7を超えるのは、濃縮物中に1つ以上の「塩基」が存在するためである。塩濃縮物は、現在、透析診療所において最も使用されている。典型的な塩濃縮物中の塩基は、炭酸水素塩としても知られ、化学式HCOを持つ重炭酸塩である。重炭酸塩は正味負電荷を持っており、従ってプラスに帯電した種と結びつくであろう。適合するプラスに帯電した種は、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムの陽イオン形態のような、生理学的に許容可能な金属陽イオンを含む。
【0064】
透析診療所で調製される塩濃縮物の塩基はほとんど例外なく重炭酸塩ナトリウムであり、これは本発明の組成物および方法において好適な塩基である。透析液中の重炭酸塩濃度は好ましくは約25〜40mEq/Lである。酢酸塩は好適な塩基ではない。
【0065】
塩濃縮物中の重炭酸塩ナトリウムは、状況に応じて、一部を生理学的に許容可能な他の塩基に置換することが可能である。適合する重炭酸塩の代替の陰イオン部分は、例えば、炭酸塩、乳酸塩、クエン酸塩および酢酸塩であり得る。従って、塩濃縮物のための塩基は、重炭酸塩および、状況に応じて炭酸塩、乳酸塩、クエン酸塩および酢酸塩のいずれかの塩形態から選択できる。塩形態で存在するものには、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムから選択される1つ以上の生理学的に許容可能な陽イオンもある。上述の塩および酸は、電気的に中性であり、すなわち負と正の電荷が同数存在する。
【0066】
好ましくは、透析液前駆体組成物および塩濃縮物が水、濃度約40〜約150(より好ましくは、約60〜120)mEq/Lの塩化物、濃度約1.5〜15.0、好ましくは1.5〜約4.5(より好ましくは、約2〜3)mEq/Lのクエン酸塩、総濃度約0.01〜約4.0(より好ましくは約0.2〜約0.5)mEq/Lの酢酸塩および/または乳酸塩、濃度約25〜約45mEq/Lの重炭酸塩、濃度約60〜約190(より好ましくは、約70〜約150)mEq/Lのナトリウム、約5mEq/Lより低濃度のカリウム、約5mEq/Lより低濃度のカルシウム、および約2mEq/Lより低濃度のマグネシウムから選択される少なくとも1つの生理学的に許容可能な陽イオン、および約45(好ましくは8)mEq/Lより低濃度のグルコース(好ましくはブドウ糖)を含有する成分を含む透析液組成物に到達するように混合され、ここで結合された組成物は透析液のために設定されたAAMI基準を満たす、または超える。高濃度のクエン酸塩は一般的に、患者が同時に過度のカルシウムを注入されている場合に使用される可能性がある。
【0067】
本発明の透析液組成物において、クエン酸塩含有透析液前駆体組成物は、5〜8.5、好ましくは約7.2〜7.4という生理的な範囲のpH値を持つ最終透析液に到達するために塩濃縮物と結合される。
【0068】
他の局面において、本発明は、血液透析において有用な、最低でも水、塩化物、クエン酸塩、および中性な(すなわち正味荷電のない)組成物を生成するための陰イオンを含み、重炭酸塩、酢酸塩、乳酸塩のいずれも含まない水性酸濃縮組成物を提供する。水は本明細書中で定義されるとおり「処理水」またはさらに純度の高い水であり、塩化物およびクエン酸塩はそれぞれUSP品質等級以上(例えば、好ましくは少なくとも99%純度である試薬用)である。関連する局面において、水性酸濃縮組成物は、水および水と混合することにより上述の構成要素を有する水性酸濃縮組成物を生成する固形組成物より調製される。従って、本発明は、一局面において、この固形組成物も提供する。
【0069】
水性酸濃縮組成物は、濃度約1,000〜約7,000、好ましくは約2,000〜約5,000mEq/Lの塩化物、濃度約20〜約200、好ましくは約70〜150Eq/Lのクエン酸塩、中性な(すなわち、正味荷電なし)組成物の生成に十分な量の生理学的に許容可能な陽イオンを含み、ここでこの組成物は4より低い、好ましくは約2〜3の間の、より好ましくは約2.2〜2.8のpH値を持ち、重炭酸塩、酢酸塩、乳酸塩のいずれも含まない。本発明は水と混合することにより、上述の水性酸濃縮組成物を形成する無水形態でも同じ組成物を提供する。無水形態は例えば、ペレット、錠剤または粉末の形態であり得る。
【0070】
この水性酸濃縮組成物は重炭酸塩、酢酸塩、乳酸塩のいずれも含まず、それでもやはり透析液製造に有効に使用できる。例えば、塩基および/または塩をそこに追加し得る使いやすい原液を生成する。液体であるため、透析液を作るための三流式(three−stream)比例ポンプを使用する従来の透析装置において酸濃縮物として有効に使用できる。しかしながら、重炭酸塩のような塩基を水性酸濃縮組成物と結合する際には、最終透析液の望ましいpH値が得られるよう注意が必要である。
【0071】
関連する実施形態において、本発明は透析液を調製する方法を提供し、ここで水および少なくともpH値が7より高い重炭酸塩、炭酸塩、酢酸塩、乳酸塩およびクエン酸塩のうち1つを含む塩基性溶液は、上述の水性酸濃縮組成物、すなわち、pH値が4未満の酸性溶液、最低でも塩化物、クエン酸塩、陽イオンと混合され、上記陽イオンは電気的に中性な組成物を生成し、ここでこの酸性溶液は重炭酸塩、酢酸塩、乳酸塩のいずれも含まない。この方法に従い、結合される塩基性溶液および酸性溶液の相対量は、透析治療セッションの間、常に望ましい透析液のpH値に到達するように注意して調整されなければならない。一般的に、この望ましい透析液のpHは6.8〜7.8の範囲内である。
【0072】
クエン酸含有血液透析組成物は当技術分野にて周知であり、Ahmad等の米国特許5,252,213を参照すると、そのような組成物は、血液透析液組成物を生成するために水で溶解される乾燥ペレット(または類似の固形形態)として開示されている。それらの組成物は、血液透析組成物の全構成要素の使いやすい原料を生成し、血液透析治療に使用される前に水と結合され、その他の成分は原則的に結合されないように意図されている。従って、それぞれのペレットは、結果として生じる血液透析液のpH値を確保する血液透析組成物の酸性および塩基性の構成要素を両方含む。
【0073】
本発明は、血液透析液と腹膜透析液いずれの調製にも使用され得る水性酸濃縮組成物を製造する。クエン酸濃縮物は、現在透析診療所で実施されているとおり、透析液組成物を産出するように処理水および塩濃縮物と結合されるよう意図されている。診療所において、塩濃縮物のpH値は一般的に重炭酸塩ナトリウムを含み、広範囲にわたって変化し、結果として生じた透析液のpH値に影響を及ぼす。従って、本発明による方法でクエン酸含有酸濃縮物を使用する場合には、結果として生じる透析液のpH値を、透析治療の継続期間を通して所定の生理学的に許容可能な範囲内に維持するため、濃縮物は緩衝剤を含んでいなければならない。緩衝が必要なのは、透析液のpH値を低下させるためのクエン酸塩の増量が、血清カルシウム濃度を十分に低減させ得るからである。このクエン酸濃縮物を用いた緩衝の必要性は、当技術分野における実践から逸脱するものである。
【0074】
現在使用されているほとんどの透析液は、最終透析液のpH値を許容可能な生理的範囲内に維持するための酸性化剤として酢酸を使用している。上記したように、現在ほとんどの血液透析治療で使用される「酸濃縮物」は液体として輸送される。酢酸は液体酸であるため、濃縮物は液体形態である。この溶液は、実際に患者の血液を浄化するのに使用される最終透析液と比較しはるかに濃縮されている(45倍まで濃縮可能である)が、重量および体積の4分の3は水である。本発明は、酸濃縮物中の主要な酸性物質として、酢酸よりもクエン酸を利用する。
【0075】
クエン酸塩を含む酸濃縮物において、クエン酸塩は主としてクエン酸の形態をとる。透析液用の酸濃縮物中にクエン酸を使用することには、いくらかの悪影響がある。例えば、クエン酸は、血液中で遊離マグネシウムおよびカルシウムと結合するクエン酸塩の形態をとる。事実、カルシウムによるクエン酸塩との強い結合は、血液バンクにおいて献血された血液中で凝固するのを防止するために使用される。本発明の透析液中に使用されるクエン酸濃度は、測定可能な抗凝血に到達するための必要量に対しごく少量(4分の1未満)であるが、医学的に慎重を期して、血液中で結合する望ましくないカルシウムを最小限に抑えるために、少なくとも透析液中で可能な量のクエン酸を使用するよう指示されている。透析液が45X希釈の前駆体透析液から調製される場合、前駆体透析液は200〜900mEq/L範囲内のクエン酸塩濃縮物を有し、続いて前駆体はカルシウムおよび/またはマグネシウム濃度をクエン酸塩が血清カルシウムおよびマグネシウムと結合する程度まで補正するよう高められるのが好ましい。
【0076】
本発明の酸濃縮物中に存在するクエン酸塩量は少なくとも最終透析液のpH値が7.2〜7.4の範囲内に到達するための必要量でなくてはならない。酸濃縮物において1リットルの水につき約7gのクエン酸を使用すると(2.4mEq/L相当の濃縮物を生成)結合するカルシウムが最少となり、許容可能な透析液のpH値に到達することがわかった。
【0077】
しかしながら、酸濃縮物中のクエン酸塩使用は、透析液が臨床環境で使用される場合に断続的な問題を引き起こす。概して、一部の透析器は透析セッションの後半(通常は治療の最後の1時間)に、pH値が高くなると警報を鳴らす場合がある。この問題は、塩基性溶液が原因で起こるものである。
【0078】
重炭酸塩はほとんどの塩基性溶液中に存在する塩基性物質である。ほとんどの透析診療所において、重炭酸塩溶液は使用直前に診療所職員により作られる。この手順は所定量の重炭酸塩ナトリウム(一般的に一包)の水差しへの注入、測定された量の水の追加および手動による混合(通常、コンテナを振動させることによる)を伴うことがよくある。追加される水の量が指定より多いまたは少ない可能性がある、すべての重炭酸塩粉末を溶液中へ完全に混ぜるには混合が不十分な可能性がある、コンテナが使用前に一定時間放置されていた可能性がある、または患者が長期間透析治療を受けているといった要因のいずれか1つ、いくつかまたはすべてにより、重炭酸塩のpH値が目標水準から変化させられることがある。
【0079】
重炭酸塩を慎重に計測し十分に混合した場合、濃縮液のpH値は7.85(±0.05)であった。しかしながら、実際において、診療所職員により調製された重炭酸塩濃縮物の試料は、7.78〜8.13の範囲のpH値であった。さらに、血液透析治療に使用された直後の残留重炭酸塩濃縮物のpH値は、7.9〜8.24の範囲であることがわかった。「使用済みの」透析液において最も顕著に観測されるこのpHの変化は、以下の要因のいずれか1つ、または組み合わせにより起こるものと推測される。
【0080】
・塩基性濃縮物に加えられる水の量が不十分であり、望ましい重炭酸塩濃度より高くなった。
【0081】
・粉末と水の混合が不十分であったために粉末の一部が固まり、それによって重炭酸塩溶液の濃度が高まり、透析治療後半におけるpH値を高めた(その時点で粉末は完全に溶解している)。
【0082】
・重炭酸塩濃縮物が二酸化炭素を長時間にわたって放出し、その結果pH値がゆっくり上昇した。
【0083】
透析治療中、警報基準点までpH値が上昇しないように確保する1つの方法は、使用する酸の量を増加させることであり、それにより、さらに酸性度の高い透析液となる。しかしながら、クエン酸の増加は結合するカルシウム量も増加させることとなり、従ってこの手段は慎重に使用されなければならない。本発明に従って取られる代替手段は、酸濃縮物中の緩衝剤の含有により、重炭酸塩のpH値上昇によって起こる透析液のpH値上昇の影響を緩和することである。
【0084】
本発明における好適な緩衝剤として、酢酸塩および/または乳酸塩を選択した。上述の陰イオンはそれぞれ透析患者の血液中に一般的に含有されている。酢酸塩ナトリウムは、現在のほぼすべての透析液(塩化ナトリウムおよび酢酸より生成される)中に含まれるのと同じ成分、ナトリウムおよび酢酸塩を含んでいるため、好適な緩衝剤である。
【0085】
驚くべきことに、酸濃縮液中に存在する酢酸ナトリウム緩衝剤と最終透析液のpH値との間に直線的関係はない。この酸性緩衝剤を増量して酸濃縮物に追加することは、最終溶液のpH値における直線的減少を引き起こすと予測されるかもしれない。しかしながら、これは事実とは異なる。酢酸ナトリウムは透析液のpH値において、限られた範囲内で大幅な低下を引き起こす。しかしながら、この酢酸ナトリウムの緩衝作用は、重炭酸塩濃縮物のpH値が8.0を超える場合のみ観測され、酢酸塩の緩衝作用がより顕著である。
【0086】
この効果を図に示す。図のグラフは、pH値8.14の比較的高濃度な重炭酸塩を使用し、処理水と結合して得た、結果として生じる透析液のpH値および、2.4mEq/Lのクエン酸塩を使用し、1リットル当たりの酢酸ナトリウム濃度を0〜3.5gに上昇させた本発明の透析液前駆体を図示したものである。図に示すように、酢酸ナトリウム濃度を一定の点を超えて上昇させることにより、酢酸ナトリウムの緩衝作用は増進せず、緩衝作用を重炭酸塩のpH値が低いときに緩衝作用が現れることもない。理論的に結合は望ましくないが、本発明の酸濃縮物中における酢酸塩使用の驚くべき効果を説明するため、以下を提案する。
【0087】
クエン酸は、多プロトン酸である。これは、溶液の酸性度に関与し得る3つの不安定水素原子を含む。各水素イオンの遊離に関連する平衡は他にも存在する。
【0088】
【化2】

ここでAはクエン酸陰イオンを表す。7より高いpH値のとき、ほとんどすべてのクエン酸が分離し、主要な種類はHとA3−である。
【0089】
酢酸塩は一塩基の酸であり、すなわち溶液に不安定水素原子を1個だけ提供し、その平衡を表す平衡定数は1つだけ存在する。
【0090】
【化3】

ここでAcは酢酸塩陰イオンを表す。酢酸ナトリウム(NaAc)が水溶液に導入されると、ナトリウムイオン(Na)および酢酸イオン(Ac)に完全に分解する。ナトリウムは「傍観」イオンと考えられており、いずれの平衡にも関与しない。酢酸塩(Ac)陰イオンは加水分解される。
【0091】
【化4】

緩衝液は、その組成物がpH値における変化に耐えることを意図した溶液である。少量の酸または塩基を緩衝液に加えてもよく、そのpH値の変化は微小である。これらの記述は、緩衝溶液がH(通例、Hとも表記される)およびOHイオンの両方に反応可能であることを暗示している。2種類の代表的な緩衝溶液は、(1)弱酸の塩を加えた弱酸、および(2)弱塩基と弱塩基の塩である。あまり一般的でない種類のものは、弱酸(例えばクエン酸)および他の弱酸の塩(例えば酢酸塩から生じた酢酸ナトリウム)を含む。
【0092】
単純水溶液の場合、緩衝作用はたいてい有効データに基づいて計算されることができ、具体的には、酸濃度、塩濃度、温度、および適合する平衡定数、Kである。酸濃縮物および本発明の透析液の状況はさらに複雑である。カルシウム(Ca)およびマグネシウム(Mg)を透析液に追加することにより、さらに平衡が生じる。上述の金属イオンは、炭素塩、酢酸塩およびクエン酸塩イオンを持つ独自の平衡を有する。平衡定数Kは、一部の平衡には無効であるため、その透析液製剤のpH値への影響を確実に予測することは不可能である。透析液の製剤において、滴定法による溶液のpH値の直接測定が使用されることができる。溶液中の主要な平衡は次のものにより得られる(完全な表ではない)。
【0093】
【化5】

ここでAはクエン酸陰イオンを表す。
【0094】
【化6】

ここでAcは酢酸塩陰イオンを表す。
【0095】
【化7】

3−種はpH値7.0超の場合に有利であり、カルシウムおよびマグネシウムの低クエン酸イオン(HA2−およびH)との平衡は、考慮されない。
【0096】
【化8】

37℃のときのすべての定数および濃度が既知であれば、上記の等式をグラフに示すことができ、pH値および緩衝作用は計算によって得られるであろう。状況はpH値を生理的な範囲内に維持するための必要条件によってさらに抑制される(特に、重炭酸塩濃縮物のpH値が上昇傾向にある透析の終盤)。通常、これは(クエン)酸をさらに追加することで実現できるが、(クエン酸から発生した)クエン酸イオンの濃度をできるだけ低く維持する必要性によって妨げられる。下記で述べるように、これはカルシウムとマグネシウムがクエン酸イオンと結合する傾向があるため、従って血清カルシウム濃度および血清マグネシウム濃度が臨床的に許容不可能な濃度まで下がるために必要である。この問題に対する解決策は、出願者の緩衝液の選択に記載されている。
【0097】
クエン酸ナトリウムは、前述のクエン酸イオン総濃度を許容可能な低さに維持する必要性のため、緩衝液には使用されない。酢酸塩および乳酸塩は、(1)適合する緩衝作用、(2)費用、(3)酢酸イオン(好適である)が透析液製剤に既に使用されて(酢酸から生じたもの)おり、従って透析液の化学的性質似たいし新しく変化を与えずにすむ、という理由により使用してもよい。
【0098】
緩衝作用は、誤った混合または混合からの時間経過により重炭酸塩のpH値が高い場合、透析液のpH値を生理的な危険のないレベルまで低下させることにより明白に現れる。重炭酸塩のpH値が適切である場合、緩衝液は存在するが、それは透析液の作用に対し明白ではない。重炭酸塩濃縮液が8.0未満のpH値で使用される場合、緩衝作用は現れない。pH値が8.1より大きく8.3未満の重炭酸塩濃縮液が使用される場合、緩衝作用は明白である(図を参照のこと)。緩衝作用は、特に酸濃度1リットル当たり0.5〜3.0gの酢酸ナトリウム濃縮物に対しては明白であり、これは本発明の酸濃縮物に好適な範囲である。
【0099】
他の局面において、本発明は特に腹膜透析(PD)に適合するクエン酸含有組成物を提供する。上述の組成は固体もしくは液体形態をとることができ、すなわち腹膜透析液の前駆体である乾燥成分の混合でもよく、またはそのものが腹膜透析液であるさまざまな溶質の溶液でもよい。乾燥成分の混合物は、最低でも、中性な(正味荷電なしの)組成物を生成する1つ以上の陽イオン種と共に、塩化物、クエン酸塩、重炭酸塩およびブドウ糖を含む。PD組成物の溶液形態は、最低でも、上記した乾燥組成物に必要な最低限の成分に加えて水を含む。固体形態であっても液体形態であっても、腹膜透析に適合するクエン酸含有組成物は無菌である。
【0100】
本発明の腹膜透析液(すなわちPD溶液透析液)は以下の成分に加えて水を含み、望ましい量をPD溶液の1リットル当たりのmEqで表すと、クエン酸塩(0.5〜6、好ましくは1.5〜4.5、より好ましくは2〜3)、塩化物(20〜200、好ましくは40〜150、より好ましくは60〜120)、および重炭酸塩(5〜100、好ましくは10〜70、より好ましくは30〜40)である。また、PD組成物の溶液形態は、溶液形態の1リットル当たりg数で表すと、10〜100、好ましくは20〜80、より好ましくは40〜60の濃度のグルコースを含む。また、PD組成物の溶液形態は、クエン酸塩、塩化物、重炭酸塩、および組成物内に存在し得るほかの陰イオン種をすべて正常化させるのに十分な数の生理学的に許容可能な陽イオンを含む。全米食品医薬品局により腹膜透析に適応するすべての透析液に要求されるように、このPD溶液透析液は無菌である。
【0101】
好適な実施形態において、PD組成物の溶液形態は、酢酸塩および乳酸塩を含み、この2つの陰イオンは合計すると、PD溶液の1リットル当たりmEqで表すと0.01〜10、好ましくは0.1〜1、より好ましくは0.25〜0.75存在する。PD溶液中に存在する陽イオン種は原則的に、前に血液透析組成物中の陽イオン種(すなわち、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、およびカリウム)について説明したのと同じ濃度範囲内である。
【0102】
本発明は、無菌水と混合することにより上述のPD溶液透析液を生成する乾燥組成物を提供する。この乾燥組成物そのものが無菌である。1つの方法に従って、そのような乾燥組成物はクエン酸塩(1)グラム当たりの特定成分のグラム数で表すことができる。上述の用語を使用すると、乾燥組成物は、5〜50、好ましくは10〜40、より好ましくは20〜30の量の塩化物、1〜50、好ましくは5〜30、より好ましくは10〜20の量の重炭酸塩、100〜600、好ましくは150〜500、より好ましくは200〜350の量のグルコースを含み、ここでそれぞれの値はクエン酸塩1グラム当たりのグラム数である。上述の量の計算において、クエン酸塩、塩化物および重炭酸塩の式量は、それぞれ189.1g/mol、35.5g/mol、および61.0g/molであり、ここで塩化物と重炭酸塩はそれぞれ単一電荷を持ち、一方でクエン酸塩は3個の電荷を持つ。乾燥PD組成物は、中性な(正味電荷なしの)組成物を生成するのに十分な陽イオン種を含む。また、結果として生じる溶液のpH値は生理学的に耐容可能な範囲内となり、好ましくは6.4〜7.6の範囲内となる。
【0103】
他の方法に従って、乾燥PD組成物の含有量は、組成物内に存在するクエン酸塩(1)ミリグラム当量当たりの組成物内に存在する特定の電荷種のミリグラム当量数で表すことができる。上述の用語を使用すると、乾燥組成物は、1〜200、好ましくは10〜100、より好ましくは30〜50mEqの範囲の塩化物、および1〜50、好ましくは5〜30、より好ましくは10〜20mEqの範囲の重炭酸塩を含む。また、乾燥PD組成物は100〜600、好ましくは150〜400、より好ましくは200〜300の量のグルコースを含み、ここで上述の値はそれぞれクエン酸塩1グラム当たりのグラム数である。
【0104】
腹膜透析液、それに加え乾燥前駆体はいずれも腹膜透析液に有用であるためには無菌である必要がある。従って、それぞれの調製は必然的に無菌状態で行われ、さらに/または結果として生じる組成物は適切な殺菌消毒処置により無菌化される。一実施形態に従って、乾燥PD組成物は塩化ナトリウム(5.67g)、塩化カルシウム二水素(0.26g)、塩化マグネシウム六水和物(0.10g)、重炭酸ナトリウム(2.94g)、無水クエン酸(0.15g)、酢酸ナトリウム三水和物(0.041g)およびブドウ糖(42.5g)を合成することにより調製され、ここで上記の化学物質はそれぞれ無菌形態であり、合成手順は無菌環境にて行われる。この乾燥組成物は0.15gのクエン酸塩、3.6gの塩化物、2.1gの重炭酸塩および42.5gのグルコース、すなわちクエン酸塩1グラムで換算すると24gの塩化物、14gの重炭酸塩、および283gのブドウ糖を含み、さらにクエン酸1ミリグラム当量で換算すると、42mEq塩化物および14.5mEq重炭酸塩を含む。
【0105】
乾燥PD組成物、およびそれから調製された腹膜透析液は、陰イオン種という用語で説明できる。それぞれの陰イオン種は、生理学的に許容可能で、重要な陰イオン種を含む任意の乾燥形態で乾燥組成物内に導入されることができる。従って、例えば「クエン酸塩」はクエン酸塩を含む任意の乾燥形態で乾燥組成物内に導入できる。例を挙げると、クエン酸(無水)、クエン酸一水和物、クエン酸三ナトリウム、クエン酸二ナトリウム塩セスキ水和物、クエン酸モノナトリウム塩、クエン酸三カリウム塩一水和物等である。同様に、重炭酸塩および塩化物はナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムから選択される陽イオンと同時に導入してもよく、無水または水和物形態であってよい。従って、乾燥組成物は、ほかの特定の塩やそれらのプロトン化した形態を指定する代わりに「塩化物」「クエン酸塩」および「重炭酸塩」という用語で表される。
【0106】
塩化物は、塩の形態で乾燥組成物中に存在する。適合する塩化物塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムを含むがこれらに限定されない。好適な塩化物塩は塩化ナトリウムである。
【0107】
クエン酸塩は酸および/または塩の形態で乾燥組成物中に存在する。クエン酸はクエン酸塩の適合する酸形態である。クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウムおよびクエン酸カルシウム(すなわちクエン酸三カルシウム)はすべてクエン酸の適合する塩形態である。クエン酸塩は混合された酸/塩形態であってもよく、すなわち1つ以上のプロトンおよび1つ以上の金属陽イオンと同時に合成されてもよい。混合された酸/塩形態のクエン酸塩の典型例は、クエン酸二水素カリウム、クエン酸水素二カリウム、クエン酸水素二ナトリウムを含むがこれらに限定されない。好適なクエン酸塩は、クエン酸である。
【0108】
重炭酸塩は塩の形態で乾燥組成物中に存在する。適合する重炭酸塩は、重炭酸ナトリウムおよび重炭酸カリウムを含むがこれらに限定されない。好適な重炭酸塩は重炭酸ナトリウムである。
【0109】
グルコースは現在使用されている腹膜透析液の大部分を占める構成要素であり、グルコースが腹膜透析に利点を提供するように本発明の腹膜透析液(および前駆体)に組み込まれている。例えば、グルコースは前述したように主に浸透圧物質として有用であり、腹膜透析の望ましくない副作用のいくつかを緩和するとも認識されている。グルコースは、透析治療を受けている被治療者に多少の栄養補給剤も提供することができる。腹膜透析液に現在使用されている最も典型的なグルコース異性体は、ブドウ糖、すなわちα‐D‐グルコースである。これは一般的に知られている市販原料であり、水和物および無水形態いずれも入手可能である。いずれの形態も現在のPD組成物中に使用してよい。
【0110】
乾燥組成物は指触乾燥状態になるが、水を多少含んでもよい。例えば、乾燥PD組成物に適合する成分として上記で言及した複数の塩および酸は、一般に水和物形態で入手可能である。そのような水和物形態は、ここで提供される乾燥PD組成物の調節において適切に使用される。乾燥PD組成物の上述した成分はそれぞれ、民間卸売業者から入手可能である。シグマアルドリッチ(Sigma−Aldrich)(http:www.sial.com)を参照のこと。好ましくは、成分は米国薬局方(USP)品質等級の純度以上であり、それは概して少なくとも約95%の純度と認識されている。
【0111】
任意の成分が乾燥PD組成物中に存在する場合がある。適合する任意の成分はアミノ酸を含むが、これに限定されない。
【0112】
乾燥PD組成物は、単に測定された分量のさまざまな乾燥無菌成分と無菌状態で混合することにより容易に調製される。混合は成分の組合せを均一になるまでかき混ぜることにより容易に実現される。前もって測定された乾燥混合物は、輸送に便利な密閉包装してもよく、技術者は乾燥組成物の溶液形態をより容易に調製することができる。
【0113】
本発明の乾燥透析液粉末技術により腹膜透析液の調製が可能になる。本発明のこの側面により、好適な実施形態において、酸性化薬としてクエン酸を、塩基性陰イオンとして2.0%を超える濃度のブドウ糖および重炭酸塩を使用する独特の腹膜透析液を生成する。その他の成分は、塩化物、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムと共に水を含み、上述の成分はすべて血液透析液のために指定された濃度範囲に含まれ得る。腹膜透析は、1回の治療に使用される透析液の体積が、血液透析で使用される量に比べてはるかに少量のため、前駆体(乾燥粉末以外の)を必要としない。使用直前に腹膜透析液を作ること(すなわち、無菌水を無菌乾燥PD粉末に加えること)により、塩基性陰イオンとして重炭酸塩を使用することが可能になるであろう。通常、重炭酸塩はクエン酸を持つその溶液は、保存可能なほど十分な長期的安定性を持たないため、PDに使用することができない。この安定性の問題を克服するため、現在使用されているPD組成物は一般的に塩基性陰イオンとして(重炭酸塩よりも)乳酸塩を含む。しかしながら、一部の医療専門家は塩基性陰イオンとして重炭酸塩を好み、本発明はその必要性に対応するものである。
【0114】
正確な順序で無菌水と乾燥成分を混合することは重要ではない。1つの選択肢として、無菌水を上述した乾燥PD組成物に加えてもよい。他の選択肢として、望ましい体積の無菌水を生成し、これにPD溶液組成物のさまざまな他の(無菌)成分をそれぞれ加えてもよい。一般的に最終溶液は、均一の組成物を形成するために、例えば振動などによって、攪拌する、あるいはかき混ぜなければならない。「透析のハンドブック(Handbook of Dialysis)第2版、Daugirdas,J.T.およびIng T.S.編(Little,Brown,Boston,1994)は腹膜透析の(結膜透析と同様に)広範にわたる議論を提供する。
【0115】
(生理学的効果)
クエン酸は、安価な生理的酸であるため、透析液の酸性化剤になり得ると見なされている。また、広範囲に及ぶ血液バンクでの使用歴があり、血液透析において局所抗凝血のために使用することに成功してきた。これら従来の使用はいずれもクエン酸のカルシウム結合効果に基づいている。血液中の遊離カルシウム濃度が一定の臨界濃度を超える場合、血液は凝固するであろうことが経験的に認められる。クエン酸が血液に加えられると、クエン酸塩は遊離カルシウムと結合し、その濃度を低下させる。遊離カルシウム濃度がある程度まで低下した場合、血液はそれ以上凝固することはないであろう。
【0116】
本発明において、クエン酸は透析液のpH値を低下させるための酸性化剤として透析液に使用される。しかしながら、透析液中に約2.4mEq/Lを超えるクエン酸を使用することにより、血清カルシウム濃度の低下を引き起こすおそれがあり、このことは臨床的に望ましくない可能性がある。透析液中のクエン酸濃度が2.4mEq/Lのとき、血中クエン酸塩濃度の上昇は一般的に、血液の凝固反応において顕著な有害な影響を及ぼさない程度に小さい。事実、一般的に患者の凝固時間において、標準的な抗凝血薬であるヘパリンを用いて既に到達している以上に測定できる上昇はない。
【0117】
概して、腎不全患者は慢性アシドーシスを患っている。腎不全患者の腎臓は、正常な代謝により産出されるHイオンを体内から除去することができない。結果として、彼らの体は過度のHイオンを中和するために、過剰な量の重炭酸塩を使用する。酸を中和させるために重炭酸塩を常用することにより、上述の患者は透析治療に臨む際に重炭酸塩(二酸化炭素)濃度が標準より低くなる。従来より透析治療は、重炭酸塩の血清濃度が標準よりも高い透析液を使用することにより、アシドーシスの問題を補正することを追求している。従って、治療中、この過度の重炭酸塩の一部が血液中に拡散するため、血中重炭酸塩は上昇し、このことが全身の重炭酸塩を元の状態に戻すのに役立つ。しかしながら、重炭酸塩濃度約37mEq/Lの透析液を用いる従来の透析は、多くの場合、正常な血中重炭酸塩を次回の透析セッションまで維持するのに不十分である。結果として、患者が次の透析セッションに訪れる時までに、血中重炭酸塩は再び正常以下となる。本発明の中和されたクエン酸塩透析液は、体内の重炭酸塩濃度を補充し、その結果慢性アドーシスの治療を助けるのにいくらかの効果を示した。
【0118】
下記の実施例は、説明するために提供するものであり、これらに限定されない。
【実施例】
【0119】
(実施例1)
(酸濃縮物製剤)
前述したUSP品質等級の化学物質の量を以下のように慎重に検量した:262.0gの塩化ナトリウム(FW58.45)9.70gの塩化カルシウム(二水和物、FW147.02)、3.40gの塩化マグネシウム(六水和物、FW203.3)、90.0gのブドウ糖(FW180.16)、7.0gのクエン酸(無水、FW192.12)および1.75gの酢酸ナトリウム(三水和物、FW136.08)。化学物質を大きめの目盛り付きビーカーに入れ、AAMI品質の水を900ml目盛まで加えた。ビーカーを撹拌板上に設置し、撹拌子を使用して化学物質と水をかき混ぜた。約10分間の撹拌後、化学物質は完全に溶解し、溶液は「透明」になった。撹拌子を取り出し、溶液にAAMI品質水をビーカーの1リットル目盛まで追加した、撹拌子を再度挿入し、溶液をさらに3分間撹拌した。
【0120】
(実施例2)
(血液透析)
実施例1で調製したような溶液のビーカーを、テスト(バイパス)モードでの使用準備が整ったフレゼニウス血液透析器内に入れた。この配置で、装置は患者が透析治療を受けている時と同じ方法を用い、透析液を製造する。処理水供給ラインを装置に取り付け、コンテナの重炭酸塩濃縮物を慎重に調製した。次に全ての溶液を装置に取り付け、スイッチを入れた。
【0121】
装置を流速800ml/分で10分間作動させ、調製済みの溶液が装置内の適切な経路を完全に満たしたことを確認した。さらに、許容可能な範囲(1310〜1330ミリジーメンス)にある測定値を用いて、透析液流出ラインに取り付けられた追加の導電率モニターに加え、装置の導電率計も監視した。平均10分おきの間隔で排液チューブ流出をサンプリングすることによって、機械混合された透析液のpH値を監視した。pH値は7.4で、7.3〜7.5の目標範囲内であった。流出した試料をワシントン大学メディカルセンターの実験室にて分析し、最終透析液の濃度がすべて血液透析に許容可能な範囲内であることを確認した。
【0122】
最後に、適切な許可を受けた後、透析液前駆体およびそれから血液透析装置により生成される透析液を、新しい透析液の臨床試験のあいだ実際の患者治療において繰り返し検査した。試験の間中、5時間持続する透析セッションでさえも、pH値の警報が動作する例はなかった。
【0123】
(実施例3)
(透析液組成物)
重炭酸ナトリウムを除いた1リットルの透析液組成物は、mEq/Lで表すと、ナトリウム100.3、塩化物104.25、カルシウム2.5、カリウム1.0、マグネシウム0.75、酢酸塩0.3、クエン酸塩2.4、およびg/lで表すとブドウ糖2.0を含む。この透析液組成物の合計化学組成物(重炭酸ナトリウムを含まず)は括弧内にグラムで表すと、NaCl(5.822)、CaCl2HO(0.139)、KCl(0.074)、MgCl6HO(0.036)、NaC(0.039)、C(0.155)およびC12O(2)であった。
【0124】
本発明の具体的な実施形態を説明のためにここに示したが、以上から本発明の精神と範囲から逸脱せずにさまざまな修正がなされたことが十分理解されるであろう。従って、本発明は添付の特許請求の範囲を除いては、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】図1は、透析液pH値(y軸)対酢酸ナトリウム濃度(x軸)のグラフであり、重炭酸濃縮物溶液のpH初期値が8.14のとき、透析液へ酢酸ナトリウムを追加することによるpH値への影響を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝透析液の調製のための前駆体組成物であって、濃度約20〜約900mEq/Lのクエン酸塩と、緩衝液と、水と、濃度約1,000〜約7,000mEq/Lの塩化物と、少なくとも1つの生理学的に許容可能な陽イオンと、を含む前駆体組成物。
【請求項2】
前記緩衝液が酢酸塩および乳酸塩から選択される緩衝陰イオンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記緩衝液が濃度約0.01〜約150mEq/Lの酢酸塩および乳酸塩から選択される緩衝陰イオンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
緩衝透析液の調製のための前駆体組成物であって、水と、濃度約1,000〜約7,000mEq/Lの塩化物と、濃度約20〜約900mEq/Lのクエン酸塩と、濃度約0.01〜約150mEq/Lの酢酸塩および/または乳酸塩から選択される少なくとも1つの緩衝陰イオンと、少なくとも1つの生理学的に許容可能な陽イオンと、を含む前駆体組成物。
【請求項5】
濃度約70〜約150mEq/Lのクエン酸塩を含む、請求項1から4に記載の前駆体組成物。
【請求項6】
前記緩衝陰イオンが濃度約0.3〜約125mEq/Lの酢酸塩である、請求項2から5に記載の前駆体組成物。
【請求項7】
前記緩衝陰イオンが濃度約0.3〜約125mEq/Lの乳酸塩である、請求項2から5に記載の前駆体組成物。
【請求項8】
前記生理学的に許容可能な陽イオンが、水素と、ナトリウムと、カリウムと、カルシウムと、マグネシウムと、それらの組合せからなる群から選択される、請求項1から7に記載の前駆体組成物。
【請求項9】
濃度約2,700g/L未満のグルコース、ポリ(グルコース)、および果糖から選択される糖をさらに含む、請求項1から8に記載の前駆体組成物。
【請求項10】
前記クエン酸塩が、クエン酸と、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸二水素カリウム、クエン酸水素二カリウム、クエン酸カルシウム、およびクエン酸マグネシウムからなる群から選択されるその塩のうち、少なくとも1つの形態であり、前記緩衝陰イオン酢酸塩が、酢酸と、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム三水和物、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸カルシウム一水和物、酢酸マグネシウム、および酢酸マグネシウム四水和物からなる群から選択されるその塩のうち、少なくとも1つの形態であり、前記緩衝陰イオン乳酸塩が、乳酸と、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、および乳酸マグネシウム三水和物からなる群から選択されるその塩のうち、少なくとも1つの形態である、請求項1から9に記載の前駆体組成物。
【請求項11】
前記水が医療器具開発協会(AAMI)により制定された透析液のための水質基準を満たしているかまたは超えており、他のすべての構成要素は少なくとも米国薬局方(USP)品質等級の純度である、請求項1から10に記載の前駆体組成物。
【請求項12】
温度約15℃〜約40℃のとき、約1〜6.5の範囲のpH値を有する、請求項1から11に記載の前駆体組成物。
【請求項13】
濃度約2,000〜約5.000mEq/Lの塩化物と、濃度約70〜150mEq/Lのクエン酸塩と、濃度約0.3〜125mEq/Lの酢酸塩と、水素、濃度約2,000〜約5,000mEq/Lのナトリウム、濃度約250mEq/L未満のカリウム、濃度約250mEq/L未満のカルシウム、濃度約100mEq/L未満のマグネシウムから選択される少なくとも1つの生理学的に許容可能な陽イオンと、濃度約2,700g/L未満のグルコースとを含み、前記組成物は少なくとも透析液のために設定されたAAMI基準を満たす、請求項1から12に記載の前駆体組成物。
【請求項14】
鉄をさらに含む、請求項1から13に記載の前駆体組成物。
【請求項15】
1つ以上の微量元素をさらに含む、請求項1から13に記載の前駆体組成物。
【請求項16】
処理水と、濃度約20〜約200mEq/Lの塩化物と、濃度約0.5〜約30mEq/Lのクエン酸塩と、緩衝液と、重炭酸塩を含む塩基と、少なくとも1つの生理学的に許容可能な陽イオンと、を含む緩衝透析液組成物。
【請求項17】
前記緩衝液が、濃度約0.01〜約4.5mEq/Lの酢酸塩および乳酸塩から選択される緩衝陰イオンを含む、請求項16に記載の透析液組成物。
【請求項18】
前記塩基が、濃度約25〜約45mEq/Lの炭酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酢酸塩のうち少なくとも1つをさらに含む、請求項16から17に記載の透析液組成物。
【請求項19】
前記生理学的に許容可能な陽イオンが、水素と、ナトリウムと、カリウムと、カルシウムと、マグネシウムと、それらの組合せからなる群から選択される、請求項16から18に記載の透析液組成物。
【請求項20】
濃度約45g/L未満のグルコース、ポリ(グルコース)、果糖から選択される糖をさらに含む、請求項16から19に記載の透析液組成物。
【請求項21】
前記水がAAMIにより制定された透析液のための水質基準を満たすかまたは超えており、他のすべての構成要素は少なくともUSP品質等級の純度である、請求項16から20に記載の透析液組成物。
【請求項22】
前記pH値が、温度約25℃〜約40℃のとき、約5〜約8.5である、請求項16から21に記載の透析液組成物。
【請求項23】
鉄をさらに含む、請求項16から22に記載の透析液組成物。
【請求項24】
1つ以上の微量元素をさらに含む、請求項16から22に記載の透析液組成物。
【請求項25】
濃度約60〜約120mEq/Lの塩化物と、濃度約2〜3mEq/Lのクエン酸塩と、濃度約0.2〜0.5mEq/Lの酢酸塩と、濃度約25〜約45mEq/Lの重炭酸塩と、水素、濃度約70〜約150mEq/Lのナトリウム、濃度約5mEq/L未満のカリウム、濃度約5mEq/L未満のカルシウム、濃度約2mEq/L未満のマグネシウムから選択される少なくとも1つの生理学的に許容可能な陽イオンと、濃度約45g/L未満のグルコースとを含み、前記組成物は少なくとも透析液のために設定されたAAMI基準を満たす、請求項16から24に記載の透析液組成物。
【請求項26】
透析液前駆体組成物を形成する方法であって、濃度約1,000〜約7,000mEq/Lの塩化物、濃度約20〜約900mEq/Lのクエン酸塩、濃度約0.01〜約150mEq/Lの酢酸塩および乳酸塩から選択される少なくとも1つの緩衝陰イオンを有する組成物を提供するために、処理水、塩化物、クエン酸塩、酢酸塩および/または乳酸塩から選択される少なくとも1つの緩衝陰イオン、および少なくとも1つの生理学的に許容可能な陽イオンを混合する工程を包含する方法。
【請求項27】
濃度約70〜150mEq/Lのクエン酸塩を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記緩衝陰イオンが濃度約0.3〜約125mEq/Lの酢酸塩である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記緩衝陰イオンが濃度約0.3〜約125mEq/Lの乳酸塩である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記生理学的に許容可能な陽イオンが、水素と、ナトリウムと、カリウムと、カルシウムと、マグネシウムと、それらの組合せからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記透析液前駆体を、濃度約2,700g/L未満のグルコース、ポリ(グルコース)、および果糖から選択される糖と混合する工程を包含する、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記クエン酸塩が、クエン酸、または、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸二水素カリウム、クエン酸水素二カリウム、クエン酸カルシウム、およびクエン酸マグネシウムからなる群から選択されるその塩のうち、少なくとも1つの形態である、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記緩衝陰イオン酢酸塩が、酢酸、または、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム三水和物、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸カルシウム一水和物、酢酸マグネシウム、および酢酸マグネシウム四水和物からなる群から選択されるその塩のうち、少なくとも1つの形態である、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記緩衝陰イオン乳酸塩が、乳酸、または、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、および乳酸マグネシウム三水和物からなる群から選択されるその塩のうち、少なくとも1つの形態である、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
鉄を混合する工程をさらに包含する、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
1つ以上の微量金属を混合する工程をさらに包含する、請求項26に記載の方法。
【請求項37】
前記透析液前駆体組成物を処理水と混合する工程をさらに包含し、該処理水はAAMIにより制定された透析液のための水質基準を満たすかまたは超えており、他のすべての構成要素は少なくともUSP品質等級の純度である、請求項26に記載の方法。
【請求項38】
濃度約2,000〜約5,000mEq/Lの塩化物、濃度約70〜約150mEq/Lのクエン酸塩、濃度約0.3〜約125mEq/Lの酢酸塩、水素、濃度約2,000〜約5,000mEq/Lのナトリウム、濃度約250mEq/L未満のカリウム、濃度約250mEq/L未満のカルシウム、および濃度約100mEq/L未満のマグネシウムから選択される少なくとも1つの生理学的に許容可能な陽イオン、および濃度約2,700mEq/L未満のブドウ糖を含み、前記組成物は透析液のために設定されたAAMI基準を満たすかまたは超える、請求項26に記載の方法。
【請求項39】
緩衝透析液組成物を形成する方法であって、透析液前駆体組成物を重炭酸塩含有水溶液と混合する工程を包含し、該透析液前駆体組成物は、濃度約44〜約143mEq/Lの塩化物と、濃度約1.5〜約30mEq/Lのクエン酸塩と、濃度約0.01〜約3.6mEq/Lの酢酸塩および乳酸塩から選択される少なくとも1つの緩衝陰イオンを有する透析液組成物を生成するために、処理水、塩化物、クエン酸塩、酢酸塩および乳酸塩から選択される少なくとも1つの緩衝陰イオン、および少なくとも1つの生理学的に許容可能な陽イオンを含む、方法。
【請求項40】
前記重炭酸塩含有水溶液が、濃度約25〜45mEg/Lの炭酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酢酸塩からなる群から選択される塩基をさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記生理学的に許容可能な陽イオンが、水素と、ナトリウムと、カリウムと、カルシウムと、マグネシウムと、それらの組合せとからなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記組成物が、濃度約45g/L未満のブドウ糖、イコデキストリン、および果糖から選択される糖をさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記組成物が、さらに鉄を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記組成物が、1つ以上の微量金属をさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記透析液組成物が、濃度約44〜約143mEq/Lの塩化物と、濃度約1.5〜約4.5mEq/Lのクエン酸塩と、濃度約0.01〜約3.6mEq/Lの緩衝陰イオン酢酸塩と、濃度約25〜45mEq/Lの重炭酸塩と、水素、濃度約69〜約188mEq/Lのナトリウム、濃度約5mEq/L未満のカリウム、濃度約5mEq/L未満のカルシウム、濃度約2mEq/L未満のマグネシウムから選択される少なくとも1つの生理学的に許容可能な陽イオンと、濃度約45g/L未満のグルコースとを含み、該組成物は透析液のために設定されたAAMI基準を満たすかまたは超える、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
請求項26に記載の方法に従って調製される組成物。
【請求項47】
請求項39に記載の方法に従って調製される組成物。
【請求項48】
水と、濃度約1,000〜約7,000mEq/Lの塩化物と、濃度約20〜約900mEq/Lのクエン酸塩と、中性組成物を提供するのに十分な量の生理学的に許容可能な陽イオンを含む水性酸濃縮組成物であって、該組成物は、4より低いpH値を有し、酢酸塩、重炭酸塩、乳酸塩のいずれも含まない、水性酸濃縮組成物。
【請求項49】
鉄をさらに含む、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
少なくとも1つの微量元素をさらに含む、請求項48に記載の組成物。
【請求項51】
無菌水と、濃度約0.5〜6mEq/Lのクエン酸塩と、濃度約20〜200mEq/Lの塩化物と、すべての炭酸塩含有種が重炭酸塩の形状にあると仮定すれば濃度約5〜100mEq/Lの重炭酸塩と、濃度約10〜100g/Lのグルコースと、すべてのクエン酸塩、塩化物、重炭酸塩および組成物中に存在し得るその他の陰イオン種を中和するのに十分な数の生理学的に許容可能な陽イオンとを含む、腹膜透析液組成物。
【請求項52】
鉄をさらに含む、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
少なくとも1つの微量元素を含む、請求項51に記載の組成物。
【請求項54】
透析を行うための方法であって、透析液を形成するために第1の溶液を第2の溶液と混合する工程と、該透析液を用いて血液透析を行う工程とを包含し、該第1の溶液はクエン酸塩、緩衝液、および水を含み、該第2の溶液は重炭酸塩および水を含む、方法。
【請求項55】
前記第1の溶液が鉄を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記第1の溶液が少なくとも1つの微量元素を含む、請求項54に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−524629(P2007−524629A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517649(P2006−517649)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/020383
【国際公開番号】WO2005/002599
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(501161066)アドバンスド レナル テクノロジーズ (3)
【Fターム(参考)】