説明

透析カテーテル

【課題】第1直径の外壁を持つ第1部分と、第1直径よりも小さい第2直径の細長い遠位部分と、第1部分と遠位部分との間の移行領域とを含む透析カテーテルを提供する。
【解決手段】血液を送出するため、長さ方向に延びる第1静脈内腔が形成されている。患者から血液を取り出すため、第1及び第2の独立した長さ方向に延びる動脈内腔が形成されている。静脈内腔及び動脈内腔は、カテーテルの外壁から第1距離に各々位置決めされた第1及び第2の領域と、カテーテルの外壁から第1距離よりも短い第2距離に位置決めされた第3領域とを有し、これにより、厚さが第3領域から第1領域に向かって、及び第3領域から第2領域まで徐々に増大するアーチ状壁部分を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2010年6月7日に出願された米国仮特許出願第61/352,195号の優先権を主張するものである。
本願はカテーテルに関し、更に詳細には、血液透析を容易にする多内腔カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
血液透析は、血液を循環することによって腎(腎臓)機能を提供する周知の方法である。腎臓は、ネフロンと呼ばれる濾過ユニットで水分及び尿素、無機塩、毒素、及び他の老廃物を血液から取り出す機能を持つ器官である。集められた老廃物は、排泄するためにネフロンから膀胱に送られる。腎臓の一方又は両方が不全を起こしている患者は、血液透析法により救命されている。これは、腎臓の機能を代替する機械を提供するためである。
【0003】
血液透析法では、血液を患者の身体からカテーテル又はチューブを通して引き出し、透析機に輸送する。透析機は、一般的には、人工腎臓とも呼ばれる。カテーテルは、代表的には、頸静脈を通して挿入され、高い血流を提供するため、上大静脈を通して右心房内の所定の位置まで操作される。透析機では、毒素及び他の老廃物は、半透膜を通って、化学的組成が血液に非常に近い透析液中に拡散する。次いで、濾過済血液即ち老廃物を除去した血液を患者の身体に戻す。場合によっては、カテーテルを数年に亘って所定の場所に残してもよい。わかるように、この長期間に亘って患者の血液に適正にアクセスし、血液を透析機に及び透析機から輸送することが、血液透析にとって重要である。
【0004】
現在市販されている透析カテーテルの一例は、メドコンプアッシュスプリット(MedComp Ash Split) カテーテルである。このカテーテルは二つの内腔を有し、一方の内腔は動脈流用内腔であり、他方の内腔は静脈流内腔用である。これらの内腔はD字形状の断面を有する。カテーテルは、その遠位端が二叉になっており、内腔を分離する。ターゲット領域内への挿入前に選択的に分離するため、カテーテルを所望の長さに合わせて手作業で分ける。別の周知のカテーテルは、メドコンプカテーテルであり、静脈流内腔が動脈流内腔の近位側で終端する、即ち軸線方向で凹所をなしている。これらの内腔の各々もまたD字形状の断面形状を有する。
【0005】
カテーテルの挿入でティアアウェイ(tear away)シースを使用することは周知である。特定の場合に引き裂き除去シースを使用せずに挿入を容易に行うことができる透析カテーテルを提供できるのであれば有利である。このような挿入方法は、使用された場合、手順の複雑さを低減できる。
【0006】
透析カテーテル設計の別の領域は、内腔が虚脱しないようにしながら静脈流及び動脈流の流量を最大にすることである。即ち、内腔が比較的大きいと流量が大きくなり、動脈及び静脈の圧力が低下し、透析を急速に行うことにより、透析を改善するということが周知である。しかしながら、透析カテーテル(これは、代表的には、約15フレンチ乃至16フレンチである)内の空間が限られているため、内腔の大きさも限られる。大きさは、更に、内腔が大き過ぎるとカテーテルの壁厚が薄くなり過ぎ、これにより壁の強度が低下し、その結果、内腔の虚脱が生じるということによっても制限される。内腔の虚脱は、血流に悪影響を及ぼす。
【0007】
血管内で操縦して右心房等のターゲット箇所にアクセスする上で、カテーテルの輪郭を比較的小さくするのが望ましい。即ちカテーテル本体の外径を小さくするのが望ましい。この輪郭は、カテーテルが血管の壁と係合する可能性を減少し、血管壁との摩擦接触を小さくすることによって血管に傷がつくことを少なくするため、比較的小さい血管を通した挿入を容易にする。しかしながら、直径が比較的小さいカテーテルは、適正な血流を提供する上で十分な大きさの内腔を提供することに対する必要とバランスをとらなければならない。内腔が小さ過ぎると十分な血流を維持できず、血液が輸送中に損傷する場合がある。また、カテーテルの構造的一体性を維持するため、内腔の大きさとカテーテルの全体の直径との間で十分な関係を維持しなければならない。
【0008】
従来技術において、多内腔形状を最適化するための多くの試みがなされてきた。米国特許第4,568,329号及び米国特許第5,053,023号に開示されている方法等の幾つかの方法では、流入内腔及び流出内腔を側部と側部とを向き合わせてD字形状で形成する。米国特許第4,493,696号、米国特許第5,167,623号、及び米国特許第5,380,276号に開示された方法等の他の方法では、流入チューブ及び流出チューブが同心関係で配置されている。様々な内腔形状のこの他の例が、米国特許第5,221,256号、米国特許第5,364,344号、及び米国特許第5,451,206号に開示されている。一般に譲渡された米国特許第6,814,718号及び米国特許第7,011,645号には、他の内腔形状が開示されている。
【0009】
カテーテル内腔形状は、相反する二つの要因、即ち挿入を容易にするためにカテーテルをできるだけ小さくすることと、血流のため、内腔をできるだけ大きくすることを満たさなければならない。このバランスは、カテーテルの構造的一体性を維持しつつ達成されなければならない。従って、これらの相反する二つの要因の間で最適の妥協に達するカテーテルを提供するのが有利である。
【0010】
透析カテーテルの別の重要な特徴は、血液を引き出すための吸引開口部である。吸引開口部に血栓溶解物質がないようにし、血管壁から離しておくことが、透析機能にとって明らかに重要である。これは、適切な血液供給部を、透析が行われるべき患者から離しておかなければならないためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,568,329号
【特許文献2】米国特許第5,053,023号
【特許文献3】米国特許第4,493,696号
【特許文献4】米国特許第5,167,623号
【特許文献5】米国特許第5,380,276号
【特許文献6】米国特許第5,221,256号
【特許文献7】米国特許第5,364,344号
【特許文献8】米国特許第5,451,206号
【特許文献9】米国特許第6,814,718号
【特許文献10】米国特許第7,011,645号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、手術による透析手順を容易にし、挿入中及び使用中の望ましからぬキンクを低減し、カテーテルの全体としての大きさと内腔の大きさとの間で最適のバランスをとる、改良透析カテーテルに対する必要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、1つの態様において、外壁と、第1直径を持つ第1部分と、第1直径よりも小さい第2直径を持つ細長い遠位部分と、第1部分と遠位部分との間の移行領域とを含む透析カテーテルを提供する。血液を送出するように形成された長さ方向に延びる実質的に円形の第1静脈内腔が、カテーテルの長さ方向中央軸線の中心からずらして位置決めされており、カテーテルの最遠位端の遠位開口部で終端する。
【0014】
カテーテルは、血液を患者から引き出すように形成された第1及び第2の独立した長さ方向に延びる動脈内腔を含み、これらの動脈内腔の各々は、静脈内腔の遠位開口部の近位側に間隔が隔てられた移行領域の開口部で終端する。静脈内腔は静脈内腔領域内にあり、第1領域、第2領域、及び第1領域と第2領域との間の第3領域を有する。静脈内腔の第1及び第2の領域は、各々、カテーテルの外壁から第1距離に位置決めされており、静脈内腔の第3領域は、カテーテルの外壁から第2距離に位置決めされており、第2距離は第1距離よりも小さく、厚さが、第3領域から第1領域に向かって、及び第3領域から第2領域に向かって徐々に増大するアーチ状第1壁部分を形成する。
【0015】
第1動脈内腔は、第1動脈内腔領域にあり、第1領域、第2領域、及びこれらの第1領域と第2領域との間の第3領域を有する。第1動脈内腔の第1及び第2の領域は、各々、カテーテルの外壁から第3距離に位置決めされており、第1動脈内腔の第3領域は、カテーテルの外壁から第4距離に位置決めされており、第4距離は第3距離よりも小さく、厚さが、第1動脈内腔の第3領域から第1動脈内腔の第1領域に向かって、及び第1動脈内腔の第3領域から第1動脈内腔の第2領域に向かって徐々に増大するアーチ状第2壁部分を第1動脈内腔領域に形成する。
【0016】
幾つかの実施例では、移行領域は、遠位部分に向かってテーパしている。幾つかの実施例では、強化リブが移行領域から長さ方向に延び、カテーテルの最遠位端の近位側で終端する。
【0017】
幾つかの実施例では、第2動脈内腔は、第1領域、第2領域、及び第1領域と第2領域との間の第3領域を有する。第2動脈内腔の第1及び第2の領域は、各々、カテーテルの外壁から第5距離に位置決めされており、第2動脈内腔の第3領域は、カテーテルの外壁から第6距離に位置決めされており、第6距離は第5距離よりも小さく、厚さが、第2動脈内腔の第3領域から第2動脈内腔の第1領域に向かって、及び第2動脈内腔の第3領域から第2動脈内腔の第2領域に向かって徐々に増大するアーチ状第3壁部分を形成する。幾つかの実施例では、第3及び第5の距離及び/又は第4及び第6の距離は実質的に等しい。
【0018】
挿入を容易にするためにカテーテルの剛性を一時的に高めるため、カテーテル内に補剛部材が取り外し自在に位置決めされていてもよい。補剛部材は、静脈内腔に取り外し自在に受け入れられていてもよく、ガイドワイヤを通す形状の内腔が形成されていてもよい。補剛部材は、カテーテル本体に挿入された場合、補剛部材は、螺合によってカテーテルに固定されてもよい。
【0019】
別の態様では、本発明は、外壁と、第1直径を持つ第1部分と、第1直径よりも小さい第2直径を持つ細長い遠位部分と、第1部分と遠位部分との間の移行領域とを含む透析カテーテルを提供する。第1静脈内腔領域は、血液を送出するように形成された長さ方向に延びる実質的に円形の第1静脈内腔を有する。第1静脈内腔は、カテーテルの最遠位端の遠位開口部で終端する。血液を患者から引き出すため、第1及び第2の独立した長さ方向に延びる動脈内腔が形成されている。これらの動脈内腔は、各々、遠位開口部の近位側に間隔が隔てられた移行領域の開口部で終端する。第1動脈内腔は、第1領域、第2領域、及び第1領域と第2領域との間の第3領域を有する。第1領域及び第2領域は、各々、カテーテルの外壁から第3距離に位置決めされており、第3領域は、カテーテルの外壁から第4距離に位置決めされており、第4距離は第3距離よりも小さく、厚さが第3領域から第1領域に向かって、及び第3領域から第1動脈内腔の第2領域に向かって徐々に増大するアーチ状壁部分を第1動脈内腔領域に形成する。
【0020】
第2動脈内腔は、第1領域、第2領域、及び第1領域と第2領域との間の第3領域を有する。第2動脈内腔の第1領域及び第2領域は、各々、カテーテルの外壁から第5距離に位置決めされており、第2動脈内腔の第3領域はカテーテルの外壁から第6距離に位置決めされており、第5距離は第5距離よりも小さく、厚さが第2動脈内腔の第3領域から第2動脈内腔の第1領域に向かって、及び第2動脈内腔の第3領域から第2動脈内腔の第2領域に向かって徐々に増大するアーチ状壁部分を第2動脈内腔領域に形成する。
【0021】
静脈内腔は、カテーテルの長さ方向中央軸線の中心からずらして位置決めされていてもよい。
【0022】
挿入を容易にするためにカテーテルの剛性を一時的に高めるため、カテーテルの静脈内腔内に補剛部材を取り外し自在に位置決めできる。補剛部材は、ガイドワイヤを受け入れる寸法の内腔を備えていてもよい。
【0023】
別の態様では、本発明は、患者の身体への血液の送出及び患者の身体からの血液の取り出しを行うための透析カテーテルを提供する。この透析カテーテルは、中間部分の横断面に四つの象限を形成する、第1及び第2の動脈内腔及び実質的に円形断面の静脈内腔を持つカテーテル本体を含む。静脈内腔は、第3象限及び第4象限の一部に位置決めされており、第1領域が四つの象限の交差部と隣接しており、第2領域が第1領域とは反対側にある。静脈内腔の第2領域でのカテーテルの壁厚は第1寸法を有し、この厚さは、第3象限に向かう方向及び第4象限に向かう方向で増大し、アーチ状第1壁部分を形成し、これによって、アーチ状壁部分は、第1象限及び第4象限を第2象限及び第3象限から分ける直径と整合した部分に比較的肉薄の部分を有し、第3象限及び第4象限で徐々に比較的肉厚の部分になる。
【0024】
第1動脈内腔は第2象限及び第3象限の一部に位置決めされ、第2動脈内腔は第1象限及び第4象限の一部に位置決めされ、第1動脈内腔の主部及び第1動脈内腔の中心は第2象限に位置決めされ、第2動脈内腔の主部及び第2動脈内腔の中心は第1象限に位置決めされる。アーチ状第2壁部分を形成するカテーテル壁部分は、第1動脈内腔と隣接し、アーチ状第2壁部分は、第1頂点及び第1頂点から遠ざかるに従って厚さが増大する第1及び第2の部分を有する。第1頂点は、好ましくは、第2象限内にある。
【0025】
好ましくは、カテーテル壁部分は、第2動脈内腔と隣接したアーチ状第3壁部分を形成する。アーチ状第3壁部分は、第2頂点、及びこの第2頂点から遠ざかるに従って厚さが増大する第3及び第4の部分を有する。好ましくは、アーチ状第3壁部分の第2頂点は第1象限にある。
【0026】
挿入を容易にするためにカテーテルの剛性を一時的に高めるため、カテーテル内に取り外し自在に位置決めできる補剛部材が設けられていてもよい。
本開示の好ましい実施例を添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の多内腔カテーテルの遠位部分の斜視図である。
【図1A】図1Aは、図1のA−A線に沿ったカテーテルの横断面図である。
【図1B】図1Bは、図1のB−B線に沿ったカテーテルの横断面図である。
【図1C】図1Cは、図1のC−C線に沿ったカテーテルの横断面図である。
【図2】図2は、図1のカテーテルの正面図である。
【図3】図3は、カテーテルの近位部分の斜視図である。
【図4】図4は、図1の4−4線に沿った横断面図である。
【図4A】図4Aは、カテーテル壁部分の厚さを示す、図4と同様の拡大図であり、説明を容易にするため、円の象限が示してある。
【図5】図5は、右内頸静脈及び上大静脈を通って患者の身体の右心房内へのカテーテルの挿入を示す平面図である。
【図6】図6は、図1のカテーテルの挿入で使用するための拡張器の長さ方向断面図である。
【図6A】図6Aは、図6の拡張器の近位部分の斜視図である。
【図7】図7は、カテーテルの挿入を補助するため、図1のカテーテルに取り付けることができるトンネリングトロカールの斜視図である。
【図8】図8は、挿入を補助するため、図1のカテーテルで使用するための補剛体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、幾つかの図に亘り同様の構成要素に同じ参照番号を付した添付図面を詳細に参照すると、本発明のカテーテルの全体に参照番号10が付してある。カテーテル10は、透析を行うため、十分な量の血液を身体から送り出すことができるように、代表的には、血流の速度が高い領域に挿入される。図5は、右内頸静脈「a」を通して上大静脈「b」内に、及び右心房「c」内に挿入したカテーテル10を示す。カテーテル10は、例えば、左内頸静脈内に、上大静脈「b」内に、及び右心房「c」内に挿入してもよい。右側又は左側のいずれかから右心房に挿入することにより、透析機に必要な高い血流を提供する。カテーテル本体(カテーテルチューブ)11は、図示の解剖学的湾曲に合わせて曲がることができるのに十分な可撓性を備えているということに着目されたい。
【0029】
図1、図3、及び図5を参照すると、カテーテル10は、カテーテル本体即ちカテーテルチューブ11を有する。カテーテルチューブ11は、遠位部分31及び近位部分33を有する。遠位部分31は細長いノーズ部分32で終端する。近位端部分33はハブ12を含み、カテーテルチューブ11内に形成された内腔は、ここで、流入チューブ16及び流出チューブ18a、18bに連結され、即ち、移行する。これにより、透析を行うために血液を戻したり引き出したりできる。チューブクランプ17及び19は、流入チューブ16及び流出チューブ18a、18bを通る血流を所望の通りに遮断する。本明細書中で使用されているように、「流入」及び「流出」という用語は、カテーテルに関する血液又は流体の流れ方向に関し、「戻り」、「送出」、又は「静脈流」という用語は、透析機から身体に送出される流れに関し、「取り入れ」、「引き出し」、又は「動脈流」という用語は、身体から引き出され、透析機に運ばれる血液又は流体に関する。
【0030】
図5に示すように、カテーテルの特定の使用において、カテーテル10の中間部分35は、皮下組織トンネル「t」を通って延び、ターゲット箇所、例えば右心房に向かって下方に湾曲している。透析を数週間又は場合によっては数カ月の期間に亘って行うため、このトンネル「t」は、組織の内方成長を可能にする繊維質のカフによって、カテーテルを所定の場所に固定する。トンネル「t」の形成及びこのトンネルを通したカテーテル10の挿入を、カテーテル挿入方法の議論と関連して以下に論じる。
【0031】
カテーテルは、第2切開部位で組織トンネル「t」から出るように示してあるけれども、組織トンネルは、第2部位に出口開口部を持たなくてもよく、その代り、ニードル又は拡張器によって内頸静脈「a」内への最初のアクセスが行われるのと同じ切開部を通って出てもよいということは理解されるべきである。
【0032】
患者の身体から透析機に血液を輸送するため、カテーテルチューブ11には幾つかの内腔が形成されている。当該技術分野で周知のように、透析機は、本質的に、腎不全の患者の腎臓として機能する。患者から血液を取り出し、透析機に輸送し、ここで、半透膜を通して透析液に拡散することによって毒素を除去する。次いで、濾過済み血液をカテーテル本体の内腔を通して患者に戻す。
【0033】
更に詳細には、及び図1、図2、及び図4を参照し、カテーテル内腔の詳細を以下に説明する。長さ方向に延びる静脈内腔40がカテーテルチューブ11内に形成されている。静脈内腔はチューブの全長に亘って延び、濾過済血液を患者に輸送するように設計されている。内腔40は小径ノーズ部分32を通って延び、好ましくは実質的に円形の断面を有し、チューブ11の長さ方向中央軸線からずらされている。図4Aに示すように、第1領域(即ち図4Aの配向で見て頂部領域)は、カテーテルチューブの円形断面の四つの象限の交差部(即ち中心)にあり、反対側の第2領域は、第3象限と第4象限の交差部と隣接している。内腔40は、患者の身体と連通する遠位開口部49で終端する。従って、遠位開口部49を通して血液を送出できる。血液を送出するため、チューブ11の側壁に一つ又はそれ以上の側孔48が設けられていてもよい。内腔40は、好ましくは、直径が約2.083mm(約0.082インチ)であり、断面積が約3.407mm2(0.00528平方インチ)である。
【0034】
静脈内腔40は、更に、カテーテルを所望の位置に差し向けるため、ガイドワイヤ20を受け入れるように形成されている(図5参照)。ガイドワイヤ20は、内腔40を通して直接的に受け入れられ、又は補剛部材を使用した場合には、内腔40に補剛部材を挿入し、ガイドワイヤを補剛部材の内腔に挿入してもよい(これによって、内腔40を通って延びる)。
【0035】
静脈内腔40を形成するチューブの壁は、有利には、挿入中及び使用中にカテーテル10に安定性を追加し、キンクしないようにするブリッジ又はアーチを形成する。更に詳細には、静脈内腔領域は、比較的肉厚の領域13a及び13b(図4A参照)を持つ壁部分13を有する。これによって、領域13cに頂点を持つアーチを形成する。換言すると、比較的肉薄の部分13cが、第3象限と第4象限の交差部と隣接して、第1象限及び第4象限を第2象限及び第3象限から分ける直径と整合して形成される。かくして、アーチは、領域13cから両方向に第3象限及び第4象限(領域13a及び13bを夫々含む)内に延びるに従って厚さが増大する。
【0036】
チューブ(ノーズ部分32の近位側)の直径が約2.896mm(約0.114インチ)で静脈内腔の直径が約2.083mm(約0.082インチ)の例示の実施例では、内腔40の縁部41a、41bからチューブ外壁14までの距離d1、d2(接線L1及びL2参照)は約1.372mm(約0.054インチ)である。これは、チューブ外壁14から、内腔40のチューブ外壁14に最も近い縁部42までの約0.533mm(約0.021インチ)の距離d3(図4参照)と比較できる。かくして、壁厚(内腔の外壁からカテーテル外壁までの距離)は、d3の表示から両方向に徐々に増大する。
【0037】
ノーズ32には、上述のように、更に、外壁14を通して形成された、内腔40と流体連通した側静脈(送出)開口部48が設けられていてもよい。これらの側静脈開口部48もまた、血液を患者の身体に戻す機能を備えている。側開口部即ちポートは、血流方向での血液の送出を容易にし、機械的溶血を低減するため、所望であれば、外方に角度をなしていてもよい。これらの追加の開口部は、血液を多数の孔に分配することによって、所望の流れ容積を維持するのを補助する。好ましい実施例では、120°間隔の二つの開口部が設けられる(各開口部は、カテーテル10を図1の配向で見たとき、底壁から60°の間隔で設けられている)。更に、追加の孔、又はこれよりも少数の孔が設けられていてもよいと考えられる。開口部は、互いに関して軸線方向にずらしてあってもよい。開口部は、外壁14の周囲に亘って等間隔に間隔が隔てられていてもよいし、非対称に設けられていてもよい。更に、開口部の追加の組が、側開口部48の近位側又は遠位側に間隔が隔てられて設けられていてもよい。カテーテルの遠位部分のノーズ32は細長く、直径がカテーテル10の中間部分35よりも小さい。例として、一実施例では、遠位ノーズ部分32の外径は、約2.896mm(約0.114インチ)であってもよく、中間部分35の外径は約5.283mm(約0.208インチ)であってもよい。明らかに、この他の寸法が考えられる。
【0038】
移行部分47は遠位方向にテーパしており、中間部分35と遠位部分31との間に滑らかな移行部を形成する。移行部分47(図1参照)には、動脈内腔50、60の夫々の二つの大きな開放領域50a及び60aが形成されている。これらの開放領域50a及び60aは、長さ方向に延びる強化リブ47aによって分離されている。かくして、取り入れ(動脈)開口部は、移行部分47にある長さ方向で整合した開口部で終端する。図示のように、製造工程中に形成されたリブ47aは、移行領域47から長さ方向に縮径ノーズ区分42に沿って延び、カテーテルの剛性を高める。リブ47aは、カテーテル10の外壁14に向かって、及びこの外壁14内に角度をなしており、静脈内腔開口部49の近位側で終端する。リブ47aの遠位端47bには、長さ方向に延びるに従って、カテーテル壁14と合一する前に、丸味が付けてある。
【0039】
移行領域に沿った横断面図を示す図1A、図1B、及び図1Cを比較することによって、移行部分47でのカテーテル10の形状の変化がわかる。図示のように、壁の縁部14bは、これらの縁部が図1Cの円形の壁に移行するに従って図1Bの丸味のある形状に移行する。更に、リブ47aの高さは、遠位方向で減少する(高さH2を高さH1と比較されたい)。
【0040】
図1、図4、及び図4Aを参照すると、カテーテル10は、更に、カテーテル本体1の長さに沿って長さ方向に延びる一対の独立した動脈(引き出し)内腔50及び60を有する。これらの内腔は、これらの内腔の開口部が静脈内腔40の開口部49の近位側にあるように、各々、移行領域47の開放領域50a及び60aで終端する。図4及び図4Aに示すように、内腔50及び60の各々は、チューブ11の外側(壁)に最も近い側に沿って、湾曲した壁51、61を有する。動脈内腔50及び動脈内腔60を形成するチューブ11の壁は、有利には、挿入中及び使用中にカテーテル10に安定性を追加し、キンクしないようにするブリッジ又はアーチを形成する。
【0041】
更に詳細には、カテーテルの第1動脈内腔領域の壁部分17は、比較的肉厚の領域17a及び17bを有し、これによって、頂点17cを持つアーチを形成する。チューブの直径(ノーズ部分32の近位側)が約2.896mm(約0.114インチ)で静脈内腔の直径が約2.083mm(約0.082インチ)の例示の実施例では、内腔50の縁部からチューブ外壁までの距離d4及びd5(接線L8及びL5参照)は、約1.041mm乃至約1.067mm(約0.041インチ乃至約0.042インチ)である。これは、外壁14から、外壁14に最も近い内腔50の縁部までの約0.457mm(約0.018インチ)の距離d6と比較できる。かくして、壁厚は、d6の表示から両方向に徐々に増大する。
【0042】
内腔60は内腔50とほぼ同じ寸法であり、第2動脈内腔のカテーテル壁部分19は比較的肉厚の領域19a及び19bを有し、これによって頂点19cを持つアーチを形成する。チューブの直径(ノーズ部分32の近位側)が約2.896mm(約0.114インチ)で静脈内腔の直径が約2.083mm(約0.082インチ)の例示の実施例では、内腔60の縁部からチューブ外壁までの距離d6及びd7(接線L6及びL7参照)は、約1.041mm乃至約1.067mm(約0.041インチ乃至約0.042インチ)である。これは、外壁14から、チューブ外壁に最も近い内腔60の縁部までの約0.457mm(約0.018インチ)の距離d8と比較できる。かくして、壁厚は、d8の表示から両方向に徐々に増大する。
【0043】
好ましい実施例では、距離d4、d5、d6、及びd7はほぼ等しく、距離d6及びd8はほぼ等しい。
【0044】
二つの動脈内腔間の最短距離d9は、好ましくは、約0.559mm(約0.022インチ)である。側部が丸みをなしているため、距離は、d9から遠ざかる方向で両方向に約0.610mm(約0.024インチ)まで徐々に増大する。動脈内腔50、60の夫々と静脈内腔40との間の距離d10及びd11は、好ましくは、約0.406mm(約0.016インチ)である。動脈内腔50は、第2象限及び第3象限にあり、内腔50の中心及び内腔50の主部は第2象限にあるということに着目されたい。動脈内腔60は、第1象限及び第4象限にあり、内腔60の中心及び内腔60の主部は第1象限にあるということに着目されたい。かくして、動脈内腔50と隣接したアーチの頂点は第2象限にあり、動脈内腔60と隣接したアーチの頂点は第1象限にある。
【0045】
わかるように、本明細書中に記載した様々な寸法は例であって、最大の血流とカテーテルがキンクしないようにするための十分な壁厚とのバランスをとるアーチ支持体を形成するため、この他の寸法が考えられるということは理解されよう。即ち、内腔の形状は、透析等の手順を可能にすると同時にカテーテルがキンクしないようにするため、カテーテルを通る流量を最大にするように、独特の設計を備えている。これは、キンクが血流に悪影響を及ぼし、長期間使用するように設計されたカテーテルの長期に亘る有効性を低下するためである。内腔は、更に、尖った縁部で形成される凝血塊が形成されないように、滑らかな縁部を提供するように、独特の設計を備えている。カテーテルのアーチは、これを満たす。静脈内腔の形状及び動脈内腔の形状もまた、これを満たす。上文中に論じたように、静脈内腔は、好ましくは、ほぼ円形形状である。各動脈内腔は非対称に形成されている。
【0046】
更に詳細には、動脈内腔50は、カテーテル壁14に最も近い縁部と隣接した湾曲した外壁51を含む。湾曲壁51と向き合って、湾曲した又は凹状の内壁52が設けられている。これらの壁51及び52は、第3象限で、丸味のある壁54によって結合されている。第1象限及び第4象限を第2象限及び第3象限から分けるカテーテルの直径C1と平行な線(仮想線P参照)に関して僅かに丸味を帯びた壁58が、丸味のある壁56を介して内壁52に連結されている。丸味のある壁58は、半径が比較的大きい壁59に移行し、外壁51に繋がる。かくして、この非対称動脈内腔50は、その全ての側部に沿って、丸味のある壁を有する。更に、動脈内腔50は、幾分「肝臓形状」であると考えられる。
【0047】
内腔60は、内腔50と鏡像対称をなしており、従って逆方向に向いている。かくして、内腔60は、カテーテル壁14に最も近い縁部と隣接した湾曲した外壁61を含む。湾曲壁61と向き合って、湾曲した又は凹状の内壁62が設けられている。これらの壁61及び62は、第4象限で、丸味のある壁64によって接合されている。仮想線Pに関して僅かに丸味を帯びた壁68が、丸味のある壁66を介して内壁62に連結されている。丸味のある壁68は、半径が比較的大きい壁69に移行し、外壁61に繋がる。かくして、この非対称動脈内腔60は、その全ての側部に沿って、丸味のある壁を有する。更に、動脈内腔60は、幾分「肝臓形状」であると考えられる。
【0048】
例として、壁59及び69の曲率半径は約0.127mm乃至約0.762mm(約0.005インチ乃至約0.030インチ)であり、好ましくは約0.330mm(約0.013インチ)である。壁58及び68の曲率半径は約1.27mm乃至6.35mm(約0.050インチ乃至約0.250インチ)であり、好ましくは約3.81mm乃至3.658mm(約0.150インチ乃至約0.144インチ)である。外壁51及び61の曲率半径は約1.778mm乃至1.27mm(約0.070インチ乃至約0.050インチ)であり、好ましくは約1.524mm(約0.060インチ)である。壁56及び66の曲率半径は約0.127mm乃至約0.762mm(約0.005インチ乃至0.030インチ)であり、好ましくは約0.457mm(約0.018インチ)である。丸味のある内壁52及び62の曲率半径は約2.286mm乃至約3.302mm(0.090インチ乃至約0.130インチ)であり、好ましくは約2.896mm(約0.114インチ)である。壁54及び64の曲率半径は約0.127mm乃至約0.762mm(約0.005インチ乃至0.030インチ)であり、好ましくは約0.254mm(0.010インチ)である。わかるように、この他の寸法も考えられる。
【0049】
内腔50及び60は、カテーテルの長さに沿って隔離されているが、これらの内腔は、ハブ12を介してカテーテル10の別々の流入チューブに流入する共通の流れ源を有する。
【0050】
上述のように、例示の実施例では、静脈(戻し)内腔の大きさは、断面積が約3.226mm2乃至約3.871mm2(0.005平方インチ乃至約0.006平方インチ)の範囲内にあり、好ましくは、約3.406mm2(約0.00528平方インチ)である。動脈(取り入れ)内腔50、60の各々の断面積は、好ましくは、約2.581mm2乃至約3.097mm2(約0.0040平方インチ乃至約0.0048平方インチ)であり、更に好ましくは、約3.052mm2(約0.00473平方インチ)であり、取り入れ内腔の全断面積は、約5.161mm2乃至約6.194mm2(約0.008平方インチ乃至約0.0096平方インチ)となり、更に好ましくは、約6.103mm2(約0.00946平方インチ)となる。これは、戻し内腔の全断面積の取り入れ内腔に対する比が、好ましくは、約0.56乃至約1.0であるということを意味する。この他の寸法も考えられるということは理解されるべきである。
【0051】
挿入を容易にするため、カテーテル10は、図8に示す補剛部材80等の補剛部材を受け入れるように形成されている。補剛部材80は、ガイドワイヤ、例えばガイドワイヤ20を受け入れる貫通内腔81を有する。補剛部材(又はロッド)80をカテーテル10の円形の静脈内腔40に挿入し、可撓性カテーテルを補剛する。これは、オーバーザワイヤ(over the wire) 挿入を容易にし、小さな血管を通した操作を容易にするために行われる。即ち、補剛体80が取り付けられた、貫通静脈内腔40を持つカテーテル10にガイドワイヤ20を通す(ガイドワイヤ20は、補剛部材80の内腔81の遠位開口部を通して入れることができる)。補剛部材80は、近位部分のノブ84に内ねじを備えていてもよく、これにより流入(静脈)チューブ16のねじ山15に連結できる(図5参照)。これにより、挿入中、補剛ロッドをカテーテル10内に一時的に固定する。外ねじ85は、補剛体80を使用前に(内腔81を通して)流体でフラッシングするために注射器(図示せず)を螺着するように形成されている。使用可能な補剛ロッドの一例が、米国特許第7,077,829号に記載されている。出典を明示することにより、この特許に開示された全ての内容は本明細書の開示の一部とされる。
【0052】
カテーテル10を所望の部位に位置決めした後、補剛部材80を捩じって静脈(戻し)チューブ16の近位ねじ山15から外し、カテーテル10の静脈内腔40及び静脈(戻し)チューブ16から取り外す。
【0053】
補剛部材80は、別の態様では、バヨネットロックやスナップ嵌め等の他の手段によって、その近位端をチューブ16に一時的に(取り外し自在に)取り付けてもよいということは理解されるべきである。最初に補剛部材を手作業で捩じった後、捩じられた位置に保持するため、これらの様々な手段によって取り付ける。
【0054】
挿入方法中、図6に示す拡張器90を使用してもよい。拡張器90は、ガイドワイヤ、例えばガイドワイヤ20を受け入れる貫通内腔92を有する。即ち、拡張器90の遠位端91の遠位開口部93にガイドワイヤを通し、これを近位端97の近位開口部95を通して出す。拡張器90は、ガイドワイヤ上で血管内に前進するとき、組織を剥離する。テーパした遠位領域がこのような剥離を補助する。拡張器90の近位端97には、使用前に拡張器90の内腔92を流体でフラッシングするために注射器を螺着する外ねじ99が設けられている。近位端に設けられた、長さ方向に延びる盛り上がった表面98は、拡張器90を握り易くする。
【0055】
図7に示す組織トンネリングトロカールデバイス100は、近位部分102及び遠位部分104を有する。トロカール100は、中実の部材の形態であってもよい。近位端105は、カテーテルの開放した遠位端に、詳細には、静脈内腔40の開口部に摩擦嵌めする。突出部106、108がトロカール100の外壁の摩擦係合を高める。遠位部分104は、組織トンネルを通してカテーテルを挿入するときに組織を鈍に剥離するため、非外傷チップ109で終端する湾曲領域を有する。使用では、突出部106、108をカテーテルの静脈内腔40に挿入し、トンネリングトロカール100をカテーテル10に摩擦によって連結する。トロカール100が取り付けられた状態でカテーテル10を皮下組織トンネルに挿入し、チップ109が組織を鈍に剥離する。カテーテルが組織トンネルから出た後、トロカール100を取り外す。次いで、ガイドワイヤを上文中に説明したように受け入れるため、補剛体をカテーテルの静脈内腔40に上文中に説明したように挿入できる。
【0056】
静脈延長チューブ16及び二つの動脈延長チューブ18a、18bがハブ12を通って延び、図3及び図5に示すようにカテーテルチューブ11の内腔と連通する。チューブ18a、18bは、垂直に重なっている。静脈クランプ17が静脈延長チューブ16に配置した状態で示してあり、両チューブ18a、18bを通る血流を好ましくはほぼ同時に遮断するため、重ねられた二つの動脈チューブ18a、18bに動脈クランプ19が配置した状態で示してある。プライム容積又は他の情報を表示するための動脈タグ19a及び静脈タグ17aが動脈クランプ及び静脈クランプの夫々に取り付けられた状態で示してある。クランプ及びタグの追加の詳細、例えば、重ねた動脈延長チューブの横方向移動を制限するためのクランプポストは、米国特許公開第2008−0312578号に開示されている。出典を明示することにより、この出願に開示された全ての内容は本明細書の開示の一部とされる。
【0057】
カテーテルには、随意であるが、外部及び/又は内部に表面処理が施してあってもよいこうした表面処理には、例えば、潤滑性を高め、挿入を容易にするための親水性コーティング、ヘパリンやIIb抑制因子、IIIa抑制因子を含有する薬剤コーティング、ソリンス(Sorins) カーボンコーティング等の不活性コーティング物質、及び/又は銀イオンコーティング等の活性コーティングが含まれる。
【0058】
本発明のカテーテル挿入方法は、全体として、オーバーザワイヤシステムを提供する。これは、米国特許公開第2008−0312578号に開示されたトロカール等を設けることによって行われる。出典を明示することにより、この出願に開示された全ての内容は本明細書の開示の一部とされる。トロカールには、ガイドワイヤを受け入れる寸法の内腔が貫通して形成されている。トロカールの鈍遠位チップが組織を鈍に剥離し、皮下組織トンネルを形成する。次いで、カテーテルの固定を行う。
【0059】
使用にあたり、完全なオーバーザワイヤ挿入方法では、先ず最初にニードルを内頸静脈に挿入し、血管の位置を確かめ、ニードルを通してガイドワイヤを右内頸静脈「a」に挿入し、上大静脈「b」に挿入する。ガイドワイヤを更に右心房「c」内に前進し、好ましくは、下大静脈内に前進する。次いでニードルを引き出し、ガイドワイヤを所定の場所に残す。ガイドワイヤは、近位部分が患者の身体の外に延びている。図6の拡張器90等の拡張器をガイドワイヤに被せて挿入し、組織を拡げる。次に、患者の第1切開部を通してトロカールを挿入し、皮膚の下を鈍に剥離し、トンネルを形成し、第2切開部又は部位のところで組織から押し出し、組織の下に皮下トンネル「t」を形成する。これは、カテーテルを固定するための方法を提供する。次いで、ガイドワイヤをトロカール内腔に通す。先ず最初に近位部分をトロカールの遠位開口部を通して挿入し、その結果、近位開口部の外に出る。次いでトロカールを身体から引き出し、ガイドワイヤを所定の場所に残す。ガイドワイヤは、右心房及び上大静脈から右内頸静脈に出て、組織トンネル「t」を通過する。
【0060】
次いで、カテーテル10をガイドワイヤの近位部分に被せて通す。ガイドワイヤは、カテーテルの遠位チップ内腔を通して、例えば遠位開口部49を通して、静脈内腔40の長さを通して、及びハブ12を通して、流入チューブ16に挿入される。かくして、カテーテル10をワイヤに被せ、組織トンネル「t」に通す。組織トンネル「t」には、所定期間に亘って組織の内方成長を促すことによってカテーテルの固定を補助するため、カフが位置決めされている。カテーテルを、ガイドワイヤ上で、右内頸静脈内に、上大静脈内に、及び右心房「c」内に更に前進する。次いで、ガイドワイヤ20を引き出し、カテーテル10を使用するための所定の場所に残す。好ましくは、図8の補剛体80等の補剛部材を使用するということに着目されたい。即ち、補剛部材をカテーテル10の内腔40に挿入し、ガイドワイヤに被せて継手15、流入チューブ16、及びハブ12を通して挿入し、カテーテルを本明細書中に説明したように案内するのを補助する。かくして、ガイドワイヤは、カテーテルの静脈内腔40内に位置決めされた補剛部材の中央内腔を通って延びることによって、カテーテルの静脈内腔を通って延びる。
【0061】
わかるように、左頸静脈を通してカテーテルを同様の方法で挿入する。この方法では、トロカールによって皮下組織トンネルを左側に形成し、組織トンネル及び左頸静脈又は鎖骨下静脈に通したガイドワイヤに被せてカテーテルを上大静脈及び右心房内に挿入する。これは、右側での挿入について説明したのと同様に行われる。
【0062】
変形例の挿入方法では、ニードル及びガイドワイヤを通して内頸静脈に導入する切開部と隣接して第2切開部を形成する代わりに、トロカールをニードル/ガイドワイヤ挿入部から出す。この方法では、皮下組織トンネルを形成するため、第1切開部を通してトロカールを挿入する。しかしながら、上述の方法とは異なり、トロカールは第2切開部のところで出ていない。その代り、トロカールを皮下でニードル切開部まで前進し、そこから出すのである。かくして、トロカールの遠位端は、ガイドワイヤに沿って切開部を出る。次いで、トロカールの開口部を通してガイドワイヤを上文中に説明したように挿入し、次いで、ガイドワイヤがトンネルを通って延びるように、組織トンネル「t」を通してトロカールを第1切開部の外に引き出す。ガイドワイヤ21が、トンネル「t」を通って第1切開部の外に出た後、トロカールを除去し、ガイドワイヤ20を所定の位置に残す。ガイドワイヤは、カテーテルの挿入を容易にするガイドワイヤループを形成するように位置決めされる。
【0063】
次いで、カテーテル10を、ガイドワイヤ上で、組織トンネルを通して前進し、ガイドワイヤのループに従ってニードル切開部から内頸静脈「a」内に出す。次いで、内頸静脈、上大静脈を通して下方に右心房「c」内に前進する。次いでガイドワイヤを引き出し、カテーテルを下方に押し及び/又は引き戻し、ループを真っ直ぐにする。カテーテルに補剛部材が挿入されている場合には、ガイドワイヤは、補剛部材の内腔を通って延びる。これは、補剛部材がカテーテルの内腔内に位置決めされているためである。
【0064】
ガイドワイヤにループを形成すること、カテーテルが随意であること、手順をループなしで行うことができるということは理解されるべきである。
【0065】
別の方法では、全体としてオーバーザワイヤシステム用になっていないトロカールを提供する。しかしながら、トロカールは、部分的オーバーザワイヤシステムを提供する方法とともに使用される。この方法は、血管を通して透析カテーテルを右心房内に案内する上で多く使用されているティアアウェイ導入器シースに対する必要をなくす。ティアアウェイシースを使用しないようにするため、この別の方法のカテーテルは、上文中に説明した方法で配置できるガイドワイヤ上で前進できる。この方法では、返しが設けられた端部をこの端部と噛み合う継手に挿入することによって、又は他の方法によって、図7のトロカール100等のトロカールをカテーテルの遠位端に取り付け、トロカールを一時的に取り付ける。トロカールは鈍遠位チップを有し、第1組織切開部を通して第2組織切開部の外に前進し、組織を鈍に剥離し、ガイドワイヤがないことを除いて上文中に説明したのと同様の方法で、皮下組織トンネルを形成する。トロカールがカテーテルに取り付けられているため、トロカールは、カテーテルが第2切開部を通って出るようにカテーテルを組織トンネルを通して引っ張る。次いで、トロカールをカテーテルから外す。次いでカテーテルを必要なだけ曲げ、ガイドワイヤ上で頸静脈、上大静脈、及び右心房内に通す。
【0066】
別の方法では、湾曲したニードルを使用して部位へのアクセスを形成する。ニードルを通してワイヤを部位まで通した後、ニードルを取り外し、図6の拡張器90等の拡張器をワイヤ上に挿入する。組織の拡張後、拡張器を取り外し、カテーテル10及びこのカテーテル内に位置決めされた図8の補剛部材80等の補剛部材とともにガイドワイヤに被せて右心房に挿入する。
【0067】
本明細書中、カテーテルを血液透析用の透析カテーテルとして説明したが、本明細書中に開示したカテーテルは、薬剤の送出又は血液採取等の他の外科的用途を持っていてもよいということは理解されるべきである。
【0068】
上述の説明には、多くの特徴が含まれるが、これらの特徴は、本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、単にその好ましい実施例の例示であると解釈されるべきである。当業者は、本願に添付した特許請求の範囲によって定義された開示の範囲及び精神内の多くの他の可能な変更を思いつくであろう。
【符号の説明】
【0069】
10 カテーテル
11 カテーテルチューブ
12 ハブ
16 流入チューブ
17 チューブクランプ
18a、18b 流出チューブ
19 チューブクランプ
20 ガイドワイヤ
31 遠位部分
32 ノーズ部分
33 近位部分
35 中間部分
40 静脈内腔
49 遠位開口部
a 内頸静脈
b 上大静脈
c 右心房
t 皮下組織トンネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析カテーテルにおいて、
外壁と、
第1直径を持つ第1部分と、
前記第1直径よりも小さい第2直径を持つ細長い遠位部分と、
前記第1部分と前記遠位部分との間の移行領域と
血液を送出するように形成された長さ方向に延びる実質的に円形の第1静脈内腔であって、前記静脈内腔領域は前記カテーテルの長さ方向中央軸線の中心からずらして位置決めされた静脈内腔を有し、前記静脈内腔は、前記カテーテルの最遠位端の遠位開口部で終端する、第1静脈内腔と、
血液を患者から引き出すように形成された第1及び第2の独立した長さ方向に延びる動脈内腔とを含み、
前記動脈内腔の各々は、前記静脈内腔の前記遠位開口部の近位側に間隔が隔てられた前記移行領域の開口部で終端し、
前記静脈内腔は、第1領域、第2領域、及び前記第1領域と前記第2領域との間の第3領域を有し、
前記静脈内腔の前記第1及び第2の領域は、各々、前記カテーテルの前記外壁から第1距離に位置決めされており、
前記静脈内腔の前記第3領域は、前記カテーテルの前記外壁から第2距離に位置決めされており、
前記第2距離は前記第1距離よりも小さく、厚さが、前記静脈内腔の前記第3領域から前記静脈内腔の前記第1領域に向かって、及び前記静脈内腔の前記第3領域から前記静脈内腔の前記第2領域に向かって徐々に増大するアーチ状第1壁を静脈内腔領域部分に形成し、
前記第1動脈内腔は、第1動脈内腔領域にあり、第1領域、第2領域、及び前記動脈内腔の前記第1領域と前記第2領域との間の第3領域を有し、
前記第1動脈内腔の前記第1及び第2の領域は、各々、前記カテーテルの前記外壁から第3距離に位置決めされており、
前記第1動脈内腔の前記第3領域は、前記カテーテルの前記外壁から第4距離に位置決めされており、
前記第4距離は前記第3距離よりも小さく、厚さが、前記第1動脈内腔の前記第3領域から前記第1動脈内腔の前記第1領域に向かって、及び前記第1動脈内腔の前記第3領域から前記第1動脈内腔の前記第2領域に向かって徐々に増大するアーチ状第2壁部分を前記第1動脈内腔領域に形成する、カテーテル。
【請求項2】
請求項1に記載のカテーテルにおいて、
前記移行領域は、前記遠位部分に向かってテーパしている、カテーテル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のカテーテルにおいて、更に、
前記移行領域から長さ方向に延び、前記カテーテルの最遠位端の近位側で終端する強化リブを含む、カテーテル。
【請求項4】
請求項1、2、又は3に記載のカテーテルにおいて、
前記第2動脈内腔は第2動脈内腔領域にあり、第1領域、第2領域、及び前記第2動脈内腔の前記第1領域と前記第2領域との間の第3領域を有し、
前記第2動脈内腔の前記第1及び第2の領域は、各々、前記カテーテルの前記外壁から第5距離に位置決めされており、
前記第2動脈内腔の前記第3領域は、前記カテーテルの前記外壁から第6距離に位置決めされており、
前記第6距離は前記第5距離よりも小さく、厚さが、前記第2動脈内腔の前記第3領域から前記第2動脈内腔の前記第1領域に向かって、及び前記第2動脈内腔の前記第3領域から前記第2動脈内腔の前記第2領域に向かって徐々に増大するアーチ状第3壁部分を前記第2動脈内腔領域に形成する、カテーテル。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか一項に記載のカテーテルにおいて、更に、
挿入を容易にするために前記カテーテルの剛性を一時的に高めるため、前記カテーテル内に取り外し自在に位置決めできる補剛部材を含む、カテーテル。
【請求項6】
請求項5に記載のカテーテルにおいて、
前記補剛部材は、前記静脈内腔に取り外し自在に受け入れられ、ガイドワイヤを通して受け入れる形状の内腔が形成されている、カテーテル。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のカテーテルにおいて、
前記補剛部材は、前記カテーテルの最遠位端から遠位方向に延びている、カテーテル。
【請求項8】
患者の身体への血液の送出及び患者の身体からの血液の取り出しを行うための透析カテーテルにおいて、
中間部分の横断面に第1象限、第2象限、第3象限、及び第4象限を形成する、第1及び第2の動脈内腔及び静脈内腔を持つカテーテル本体を含み、
前記静脈内腔は、第3象限及び第4象限の一部に位置決めされ、第1領域が四つの象限の交差部と隣接しており、第2領域が前記第1領域とは反対側にあり、
前記静脈内腔の前記第2領域での前記カテーテルの壁厚は第1寸法を有し、厚さが、第3象限に向かう方向で増大し、第4象限に向かう方向で増大し、アーチ状第1壁部分を形成し、
これによって、前記アーチ状壁部分は、第1象限及び第4象限を第2象限及び第3象限から分ける直径と整合した部分に比較的肉薄の部分を有し、第3象限及び第4象限で徐々に比較的肉厚の部分になり、
前記第1動脈内腔は第2象限及び第3象限の一部に位置決めされ、前記第2動脈内腔は第1象限及び第4象限の一部に位置決めされ、前記第1動脈内腔の主部及び第1動脈内腔の中心は第2象限に位置決めされ、前記第2動脈内腔の主部及び第2動脈内腔の中心は第1象限に位置決めされ、
カテーテル壁部分は、前記第1動脈内腔と隣接したアーチ状第2壁部分を形成し、前記アーチ状第2壁部分は、第1頂点及び前記第1頂点から遠ざかるに従って厚さが増大する第1及び第2の部分を有する、カテーテル。
【請求項9】
請求項8に記載のカテーテルにおいて、
カテーテル壁部分は、前記第2動脈内腔と隣接したアーチ状第3壁部分を形成し、前記アーチ状第3壁部分は、第2頂点及び前記第2頂点から遠ざかるに従って厚さが増大する第3及び第4の部分を有する、カテーテル。
【請求項10】
請求項9に記載のカテーテルにおいて、
前記アーチ状第2壁部分の前記第1頂点は第2象限にあり、前記アーチ状第3壁部分の前記第2頂点は第1象限にある、カテーテル。
【請求項11】
請求項8、9、又は10に記載のカテーテルにおいて、
前記静脈内腔は、ほぼ円形断面を持ち、前記カテーテル本体の長さ方向軸線から中心をずらして位置決めされている、カテーテル。
【請求項12】
請求項8乃至11のうちのいずれか一項に記載のカテーテルにおいて、更に、
挿入を容易にするために前記カテーテルの剛性を一時的に高めるため、前記カテーテルの前記静脈内腔内に取り外し自在に位置決めできる補剛部材を含む、カテーテル。
【請求項13】
請求項1乃至12のうちのいずれか一項に記載のカテーテルにおいて、
前記第1及び第2の動脈内腔は、各々、曲率半径が変化する壁を含む、カテーテル。
【請求項14】
請求項12に記載のカテーテルにおいて、
前記補剛部材には、ガイドワイヤを受け入れる形状の内腔が形成されている、カテーテル。
【請求項15】
請求項8乃至14のうちのいずれか一項に記載のカテーテルにおいて、更に、
前記移行領域から長さ方向に延び、前記カテーテルの最遠位端の近位側で終端する強化リブを含む、カテーテル。

【図1】
image rotate

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−255179(P2011−255179A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126927(P2011−126927)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(505301837)レックス メディカル リミテッド パートナーシップ (22)
【Fターム(参考)】