透析患者の断片的生体インピーダンスを測定するデバイスおよび方法
【課題】透析患者の水和状態を決定し、斯かる患者のドライ体重を特定もしくは予測し、且つ、透析期間の間に除去されるべき流体の量を計算するための、精密で容易に使用され且つ操作者に依存しない方法、システムを提供する。
【解決手段】本発明は、透析を受ける患者のドライ体重を断片的生体インピーダンス分析により決定する方法を包含する。好適実施例においてドライ体重は、正常被検者の生体インピーダンス値と比較して、または、透析の間における生体インピーダンスの変化を監視することで決定される。本発明の一実施例は、透析の間においてドライ体重を決定するデバイスである。
【解決手段】本発明は、透析を受ける患者のドライ体重を断片的生体インピーダンス分析により決定する方法を包含する。好適実施例においてドライ体重は、正常被検者の生体インピーダンス値と比較して、または、透析の間における生体インピーダンスの変化を監視することで決定される。本発明の一実施例は、透析の間においてドライ体重を決定するデバイスである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断片的生体インピーダンス(segmental bioimpedance)を利用して透析患者の生理学的パラメータを監視かつ制御するデバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透析患者の臨床的管理においては、透析患者の水和状態(hydration status)の正確な評価およびドライ体重[dry body weight](DWもしくはドライ体重[dry weight])の予測が主な問題である。血液透析患者および腹膜透析患者のいずれにおいてもドライ体重は透析治療の終了時における目標体重であり、身体からの過剰水分の除去を最適に反映している。臨床的実務においてDWの評価は不正確な作業であると共に、患者の血圧、脈拍および体重の変化などの臨床的な症状(symptom)および徴侯(sign)に関し、治療を行う医師の医療経験および特定の患者の状態に対する熟知度に相当程度まで依存する。斯かる徴侯および症状の正しい解釈は種々の事実、即ち、治療前の体重は治療毎に変化し、過剰流体の量は一定でなく、且つ、任意の特定の透析治療の間において任意の特定の患者から除去され得るもしくは除去されるべき流体の量は脛骨前部水腫、呼吸困難、痙攣および/または血圧低下などの臨床的徴侯および症状により具現されることの多い個々人の心臓血管耐性により制限され得るという事実から、複雑である。あるは、除去されるべき流体の量を過剰評価すると、潜在的に回避可能な症状、不必要に長時間の透析治療、および多くの場合には透析施設における長期滞在に帰着し得る。故にDWの過剰評価もしくは過少評価は、透析治療の効率および患者の生活の質の両者に対して相当に影響する。
【0003】
ここ20年以上に亙り、被検者の身体水和量および水和状態(すなわち過剰、過少もしくは正常な水和)を測定する上で生体電気インピーダンス分析(BIA)は非侵襲的で簡素な技術として認識されてきた。ドライ体重の研究に対してBIAを用いる相当数の文献が在る。Kouw等はBIAにより、局所的導電性における変化を測定してから局所的な細胞外体積[extracellular volume](ECV)および細胞内体積[intracellular volume](ICV)を測定する方法を提案した。(非特許文献1参照。)しかしKouwの方法は間質液(interstitial fluid)のみを測定する様には使用され得ない、と言うのも該方法は、両方ともがECV区画(compartment)を構成する間質液およびプラズマ(plasma)を区別しないからである。またPiccoliは、リアクタンスに対する抵抗の比率を用いてドライ体重を特定するというBIAベクトル分析方法を発表した。この技術は被検者の身体水和量を比較すべく用いられ得るが、測定された値は相当に変動するので個々の患者のドライ体重を予測することはできない。(非特許文献2参照。)
【0004】
また最近では、血液容量(BV)[=blood volume]の測定を用いたドライ体重の研究数が増えている。(たとえば、非特許文献3および4参照。)血液容量測定は血液透析の間において血液中の水分濃度すなわち赤血球容積率を表すべく使用され得る非侵襲的技術であるがドライ体重を直接的に決定する様には使用され得ない、と言うのも血液容量の変化は主として、部分的には身体水和量に無関係な血管への補充(refilling)に依存するからである。(たとえば、非特許文献5参照。)一方、透析の間に赤血球容積率レベルが変化すると血液の導電性が変化し得ることから、習用的な生体電気インピーダンス分析もしくは血液容量分析のいずれによっても組織水和に関する情報を得ることは困難である。今日まで、血管内区画(intravascular compartment)および間質区画(interstitial compartment)における流体体積を評価すべく血液および組織の抵抗率を別個に測定する方法が主な問題であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「Assessment of post−dialysis dry weight: an application of the conductivity measurement method」M. Kouw等、Kidney Int.第41巻、第440−444頁、1992年
【非特許文献2】「Identification of operational clues to dry weight prescription in hemodialysis using bioimpedance vector analysis」Piccoli A、Kidney Int.第53巻、第1036−1043頁、1998年
【非特許文献3】「Non−invasive monitoring of blood volume during hemodialysis: Its relation with post−dialytic dry weight」J.P. de Vries等、Kidney Int.第44巻、第851−854頁、1993年
【非特許文献4】「Determination of circulating blood volume by continuously monitoring hematocrit during hemodialysis」J.K. Leypold等、J.Am.Soc.Nephrol.第6巻、第214−219頁、1995年
【非特許文献5】「Evaluating volume status in hemodialysis patients」J.K. Leypoldt等、Adv.Ren.Replace.Ther.第5巻、第64−74頁、1998年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
故に、透析患者の水和状態を決定し、斯かる患者のドライ体重を特定もしくは予測し、且つ、透析期間の間に除去されるべき流体の量を計算するための、精密で容易に使用され且つ操作者に依存しない方法に対する要望が在る。これに加え、患者の水和状態に応じて透析を制御する方法に対する要望が在る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、透析患者の身体断片の抵抗率を測定する段階と、測定された抵抗率を所定の正常なドライ体重値と相関させる段階と、前記患者の水和状態を導出する段階と、を備えて成る、透析患者の水和状態を決定する方法を包含する。選択的には、前記身体断片の間質液の抵抗率が測定されて患者の水和状態が導出される。一実施例において、前記身体断片の抵抗率は少なくとも略々収縮期血圧の圧力、選択的には約120mmHg乃至約240mmHgの圧力を付与し乍ら決定される。前記身体断片は、外肢断片、好適には大腿部断片とされ得る。
【0008】
血液透析の間に身体断片の抵抗率を周期的に測定する段階と、連続的な抵抗率測定値を比較する段階と、実質的に一定の抵抗率に到達したときに血液透析患者のドライ体重を特定する段階と、を備えて成る、血液透析患者のドライ体重を決定する方法が包含される。選択的に、血液透析の間において前記身体断片の抵抗率は約5分毎乃至約20分毎に、好適には約10分毎に測定される。一実施例において前記身体断片の抵抗率は少なくとも略々収縮期血圧の圧力、選択的には約120mmHg乃至約240mmHgの圧力で測定される。
【0009】
本発明は、患者の身体断片の抵抗率を測定する段階と、測定された抵抗率を所定の正常なドライ体重値と相関させる段階と、前記患者の水和量を導出する段階と、前記身体断片の抵抗率が前記所定の正常なドライ体重値と相関するまで血液透析を継続する段階と、好適には少なくとも略々収縮期血圧の圧力にて前記身体断片の抵抗率を測定する段階と、を備えて成る、患者を該患者のドライ体重まで透析する方法を包含する。
【0010】
血液透析の間において身体断片の抵抗率を周期的に測定する段階と、連続的な抵抗率測定値を比較する段階と、実質的に一定の抵抗率が反映されたときに血液透析を停止する段階と、を備えて成る、患者を該患者のドライ体重まで血液透析する方法も提供される。好適には、前記身体断片の抵抗率は少なくとも略々収縮期血圧の圧力にて測定される。この実施例において、前記身体断片の抵抗率は血液透析の間において約5分毎乃至約20分毎に測定される。
【0011】
本発明はまた、2つの連続的な生体インピーダンス波ピーク間の時間間隔を決定する段階と、前記時間間隔の逆数を60に乗算して心拍数を求める段階と、を備えて成る、血液透析患者の心拍数を監視する方法、および、上腕断片における心拍血液量を生体電気インピーダンス分析により測定する段階と、同一側の脚部断片における心拍血液量を生体電気インピーダンス分析により実質的に同時に測定する段階と、前記上腕断片における心拍血液量および前記脚部断片における心拍血液量を合計する段階と、前記合計を前記心拍数の2倍に乗算して心拍出量を求める段階と、を備えて成る、心拍出量を必要とする患者の心拍出量を算出する方法も提供する。好適には、前記上腕断片の心拍血液量は、前記上腕断片に対して外部最大圧力を付与し、前記最大圧力の時点と外部圧力が付与されない時点との間における前記上腕断片の血液容量の変化分を決定すると共に該変化分を前記2つの時点間における心拍の個数で除算することで算出され、且つ、前記脚部の心拍血液量は、前記脚部断片に対して外部最大圧力を付与し、前記最大圧力の時点と外部圧力が付与されない時点との間における前記脚部断片の血液容量の変化分を決定すると共に該変化分を前記2つの時点間における心拍の個数で除算することで算出される。
【0012】
血液透析機と電気通信する生体インピーダンス分析用測定ユニットと、前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に身体断片に取付可能な電気出力手段であって、前記身体断片に電流を印加し得る電気出力手段と、前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に身体断片に取付可能な電気入力手段であって、前記身体断片を通過して伝達された電流を受信して該電流を前記生体インピーダンス分析用測定ユニットに送信し得る電気入力手段とを備えた、血液透析機を制御するデバイスが包含される。前記生体インピーダンス分析用測定ユニットは前記身体断片を通して伝達された電流に基づき身体断片抵抗率を決定し、且つ、前記生体インピーダンス分析用測定ユニットは前記身体断片抵抗率に応じて前記血液透析機に対してフィードバックを提供する。一好適実施例において前記デバイスは、前記身体断片に圧力を付与すると共に前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信する手段を含む。選択的に、前記圧力付与手段は前記身体断片を囲繞し得る圧力カフを含む。好適には、前記電気出力手段は少なくとも2個の注入電極を含み、前記電気入力手段は少なくとも2個の測定電極を含む。前記注入電極および測定電極は前記圧力カフに固定される。選択的に、前記圧力カフは、両端部を備えた少なくとも一本の導電帯域と、該導電帯域の前記各端部の一方の近傍に位置された導電プレートとを含み、前記導電帯域は実質的に前記圧力カフの丈に沿い延在する。前記導電プレートは前記導電帯域の丈に沿う所定点にて該導電帯域に電気的に接触すべく配置され、前記導電プレートと前記導電帯域の前記接触点との間の距離は実質的に前記身体断片の円周に等しく、且つ、前記生体インピーダンス分析用測定ユニットは、前記プレートの近傍における前記帯域の端部と該帯域の丈に沿う前記プレートの接触点との間の距離に基づき身体断片円周を電気的に決定し得る。
【0013】
一実施例は、生体インピーダンス分析用測定ユニットと、選択的には少なくとも2個の注入電極を備え且つ前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に身体断片に取付可能な電気出力手段であって、前記身体断片に電流を印加し得る電気出力手段と、選択的には少なくとも2個の測定電極を備え且つ前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に身体断片に取付可能な電気入力手段であって、前記身体断片を通過して伝達された電流を受信して該電流を前記生体インピーダンス分析用測定ユニットに送信し得る電気入力手段とを備えて成る、血液透析患者における水和状態を監視するデバイスである。前記生体インピーダンス分析用測定ユニットは前記身体断片を通して伝達された電流に基づき身体断片抵抗率を決定する。選択的に、前記デバイスは血液透析機を含む。選択的に前記デバイスは前記身体断片に圧力を付与する、選択的には圧力カフである手段を含む。前記圧力付与手段は、前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信する。前記デバイスの一実施例は、両端部を備えた少なくとも一本の導電帯域と、該導電帯域の前記各端部の一方の近傍に位置された導電プレートとを備えた圧力カフを含む。前記導電帯域は実質的に前記圧力カフの丈に沿い延在し、前記導電プレートは前記導電帯域の丈に沿う所定点にて該導電帯域に電気的に接触すべく配置され、前記導電プレートと前記導電帯域の前記接触点との間の距離は実質的に前記身体断片の円周に等しく、且つ、前記生体インピーダンス測定ユニットは、前記プレートの近傍における前記帯域の端部と該帯域の丈に沿う前記プレートの接触点との間の距離に基づき身体断片円周を電気的に決定し得る。
【0014】
本発明は、生体インピーダンス測定ユニットと、前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に上腕断片に取付可能な第1電気出力手段であって、前記上腕断片に電流を印加し得る第1電気出力手段と、前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に脚部断片に取付可能な第2電気出力手段であって、前記脚部断片に電流を印加し得る第2電気出力手段と、前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に上腕断片に取付可能な第1電気入力手段であって、前記上腕断片を通過して伝達された電流を受信して該電流を前記生体インピーダンス分析用測定ユニットに送信し得る第1電気入力手段と、前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に脚部断片に取付可能な第2電気入力手段であって、前記脚部断片を通過して伝達された電流を受信して該電流を前記生体インピーダンス分析用測定ユニットに送信し得る第2電気入力手段と、前記上腕断片に最大圧力を付与すると共に前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信する第1圧力付与手段と、前記上腕断片に最大圧力を付与すると共に前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信する第2圧力付与手段と、前記生体インピーダンス分析用測定を、前記第1電気入力および出力手段と前記第2電気入力および出力手段とに対して選択的に且つ電気的に接続する手段と、を備え、前記生体インピーダンス分析用測定ユニットは生体電気インピーダンス分析により前記上腕断片および脚部断片における心拍血液量を選択的に測定し得る、生体インピーダンス測定により心拍出量を算出するデバイスを包含する。
【0015】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に関する以下の本発明の好適実施例の詳細な説明から容易に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】1Aおよび1Bは夫々、本発明の一実施例に従い抵抗率を測定する原理を示す身体断片の模式的立体図を表し、図1Aは前記断片に外部圧力が付与されずに血管が非圧縮とされた状況を示し、図1Bは前記断片に外部圧力が付与されて血管が圧縮された状況を示している。
【図2】本発明に係る測定システムのブロック図である。
【図3】血液透析の間における経時的な種々の身体断片の収縮期血圧、限外濾過率、抵抗率、相対血液容量の相対変化のグラフである。
【図4】10人の男性血液透析患者においてドライ体重に対して比較された透析後抵抗率のグラフである。
【図5】10人の男性血液透析患者において血液透析の終了時における外肢断片の血圧と抵抗率との間の関係を示すグラフである。
【図6】10人の男性の健康被検者の外肢断片における肥満指数対抵抗率のグラフである。
【図7】動脈性脈拍に基づく身体断片血液容量の変化に関する身体断片インピーダンスの変化を示すグラフである。
【図8】圧力カフの圧力に関する外肢断片のインピーダンスの変化を示すグラフである。
【図9】ドライ体重に対して補正し且つ補正しない一連の10人の男性血液透析患者の透析後における外肢断片抵抗率と一連の10人の男性の健康被検者の外肢断片抵抗率との相関を示す棒グラフである。
【図10】身体断片が圧縮されもしくは非圧縮とされたときの身体断片の円周を測定すると共に断片的生体インピーダンスを測定すべく用いられる圧力カフのカバーを部分的に破断した前面図であり、10Aは導電プレートの部分的後面図である。
【図11】心拍出量を決定する手段も提供する本発明に係るデバイスのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、血液透析患者および腹膜透析患者の水和状態、即ちより詳細にはドライ体重を決定することで適切な透析処方を促進する方法を提供する。本発明は、患者の身体もしくは身体断片の抵抗率を決定かつ監視することで、透析を受ける患者の正しいドライ体重もしくは所望の水和状態を決定かつ監視する手段を備える。本発明は更に、限定的なものとしてで無く心拍数(HR)および心拍出量(CO)などの、透析を受ける患者の種々の生理学的パラメータを決定かつ監視する方法を提供する。
【0018】
生理学的な観点からは、健康な人々における間質区画の流体の量は狭い範囲に収まる比較的に一定な値のはずである。故にこの値は、患者の身体水和の度合いを表す判定基準となるはずである。
【0019】
本発明者等は、上腕(上肢)もしくは脚部(下肢)などの末梢身体断片の補充体積は、透析患者の水和状態もしくはドライ体重の重要な指標であることを見出した。ひとつの見地において本発明は、患者の流体状態およびドライ体重を決定すべく断片的生体インピーダンス分析(SBIA)により間質区画および血管内区画における流体体積などの局所的身体水和の度合いを別個に測定する手段を提供する。
【0020】
本発明の一好適実施例は、身体断片の抵抗率を測定する手段を備える。前記身体断片は、全身、好適には外肢断片(limb segment)、更に好適には脚部もしくは上腕断片、最も好適には大腿部断片とされ得る。図1Aに示された如く身体断片の抵抗率は、各測定電極を距離Lだけ離間された箇所L1およびL2に夫々載置することで測定される。当業者であれば、距離Lは変更され得るが約10cmが好適であることを理解し得よう。L1およびL2間の抵抗率はRと表される。図1Aには、Tと表された間質区画およびBと表された血管を備えた身体断片の断面も示される。選択的に、前記身体断片を囲繞する圧力カフ(pressure cuff)3などの様に前記身体断片を圧縮する手段が配備される。たとえば圧力カフ3が非膨張であるときなどに前記身体断片が圧縮されない場合、血管は非圧縮とされて抵抗率Rは間質区画Tおよび血管内区画Bの両者の抵抗率を反映する。図1Bに示された如くたとえば前記圧力カフを膨張することで、収縮期血圧近傍より高い選択的には約240mmHgまでの圧力へと身体断片が圧縮されたとき、前記血管は圧縮されると共に、前記身体断片の血管内区画内に含まれた実質的に全ての血液容量が前記身体断片から押し出される。L1およびL2に載置された各電極間の抵抗率が斯かる状況で測定されたとき、抵抗率値ρ1は前記身体断片の間質区画の抵抗率を表す。
【0021】
断片的生体インピーダンスを測定する前記原理は、断片的抵抗率を測定する手段を提供すると共に、図1Aおよび図1Bに関して説明され得る。
【0022】
断片的抵抗率は、式:
ρmeasure=AρI/L(m・Ω)
を用いて計算される。
【0023】
式中、ρmeasureは測定された断片的抵抗率であり;Aは断片の断面積である(A=C2/4π、式中、Cは前記断片の円周である)。而して、前記身体断片に圧力が付与されないときの断面積A0は前記血管を含む前記身体断片の断面積を表し、少なくとも収縮期血圧が付与されたときに断面積Apは前記身体断片から前記血管の断面積を減じた差であり;ρは生体インピーダンス分析により測定された抵抗率であり;且つ、Lは各測定箇所間の距離(すなわち各測定電極間の距離)である。
【0024】
測定された身体断片の抵抗率は、注入された電流の周波数および肥満指数(BMI)などの所定個数の係数に依存する。好適には単一周波数が、選択的には複数周波数(多重周波数)が用いられる。約1KHz乃至約1000KHz、更に好適には約1KHz乃至50KHz、最も好適には約1KHz乃至約10KHzの周波数が利用される。BMIは、脂肪分を反映すると共に、kg単位の体重をメートル単位の身長の二乗で除算した商(体重/身長2)として定義され、典型的にはkg/m2単位で測定される。血管内流体と間質液とを区別すべく、好適に身体断片は選択的には圧力カフにより、好適には血圧カフ(BPカフ)により圧縮されることで、考察される断片から数秒に亙り血液容量を搾り出すに十分な圧力(P)を生成する。故に2つの抵抗率値が測定され得る:ρ0(非圧縮の身体断片、P=0mmHg)およびρp(身体断片は略々収縮期血圧からPmax=240mmHgまでの圧力へと圧縮される)。
【0025】
前記抵抗率測定に基づくと、ドライ体重および過剰身体流体は、式:
ドライ体重=事前体重−Vexcess
に従い計算される。
【0026】
式中、事前体重(pre−weight)とは透析の完了に先立つ時点、好適には透析の開始に先立つ時点における患者の体重であり、且つ、Vexcessはドライ体重を達成すべく患者の身体から除去されるべき流体の過剰量である。
【0027】
Vexcessを計算する式は:
Vexcess=(k1/k2)・ρcal・BMIp (式1)
である。
【0028】
式中、BMIpは透析患者の肥満指数(kg/m2)であり、
ρcalは以下の式から求められる抵抗率(m×Ω)である:
ρcal=λ・BMIp+200 (m×Ω); 式1.1
式中、λは健康被検者におけるBMIと抵抗率との間の関係に基づく線形の回帰方程式から導出された抵抗/密度(Ω/(kg/m3))の適合係数であり;且つ、
BMIpは患者のBMIである。
【0029】
特定の母集団に対しては特定の係数が導出されて結果が改善されると予見される。たとえば、限定を企図するのでは無く、図6に示された10人の健康な男性被検者からの実験データを利用すると、(以下の)実例1においてλ=13(Ω/(kg/m3))が示される。200(m・Ω)の値は、BMIが(ゼロより大きいはずの)最小値を有するときの抵抗率の基線である。
【0030】
k1/k2(m/オーム)は個々の患者の身体形状および組織抵抗率に依り測定値に依存する係数定数であり;且つ、
その場合にk1=C1×C2であり、
式中、C1は透析患者における身体断片の抵抗率と臨床的ドライ体重値との間の関係を相関させる適切な実験データから導出された線形回帰方程式により求められ、且つ、
C2=ρcal/(ρcal−ρmeasure)
であり、式中、ρmeasureは透析患者の身体断片が少なくとも略々収縮期圧力の圧力まで圧縮されたときにSBIAにより測定された身体断片の抵抗率である。
【0031】
再び、特定の母集団に対しては特定の係数が導出されて結果が改善されると予見されるが、限定を企図するのでは無くたとえば、図4に示されると共に実例1に記述された10人の男性血液透析患者から導出された実験データを利用すると、C1=2.2×10-1kg/(m・Ω)かつC2=3.5である。
【0032】
k2は、健康被検者の母集団におけるBMIに対する平均値である。実例1に記述される10人の健康な男性のサンプルにおいて、平均BMIすなわちk2は約26.8kg/m2であり、且つ、ρcalは計算された抵抗率(m・Ω)=(13×BMIp)+200(Ω・m3/kg)である。
【0033】
前記測定システムは、当業者に公知の好適にはXitron 4200s(カリフォルニア州、サンディエゴのXitron Technologies社)などの高速に低ノイズで処理を行う多重周波数式の生体インピーダンス測定ユニットから成る。前記システムは前記生体インピーダンス測定ユニットに接続された電気出力手段であって身体断片に取付可能な電気出力手段を含むが、該電気出力手段は好適には、身体断片に装着されて身体断片に電流を注入する少なくとも2個の注入電極を備える。前記システムは前記注入電極を介し、約1KHz乃至約1000KHz、更に好適には約1KHz乃至50KHz、最も好適には約1KHz乃至約10KHzの周波数に亙る単一周波数の電流または選択的には複数周波数の電気(多重周波数)を印加し得る。前記システムは更に、前記出力手段から送出されて身体断片を通過した電流を受信し得る電気入力手段であってその後に前記電流を生体インピーダンス分析用測定ユニットに送出する電気入力手段を更に備えて成る。前記入力手段は、選択された断片を通過して伝達された電流を前記BIA測定ユニットに送受すべく身体断片に装着された少なくとも2個の測定電極を備える。前記電極はAg/AgCl膜、導電ゴム、または、当業者に容易に明らかである他の適切な材料で作成され得る。前記注入電極および測定電極は、前記BIA測定ユニットに対して電気的に接続される。この電気的接続は当業者に容易に明らかである多数の手段により達成され得るが、好適には電気ケーブルである。
【0034】
本発明の一好適実施例において前記各電極は、身体断片を囲繞して圧縮するに適した圧力カフ内に組み込まれる。選択的には単一ケーブルが、前記注入電極および測定電極に対する電気ワイヤならびに前記圧力カフに接続される空気管材の両者を組み込み得る。斯かるケーブルは、前記圧力カフを前記測定ユニットおよび選択的空気ポンプに接続すべく用いられる。代替的に、別体的な電気ケーブルおよび別体的な空気ホースが採用され得る。選択的に前記圧力カフには、身体断片の円周を電気的に測定する手段が組み込まれる。図10には、如何なる点でも限定が企図されない好適な圧力カフの構成3の例が開示される。圧力カフ3は血圧カフ型デバイスであり、該デバイスは身体断片が該デバイスにより囲繞される如く身体断片を巻回するに適した実質的に長方形状から成る。前記圧力カフは、好適には容易に洗浄且つ/又は浄化され得る布もしくは他の可撓材料から成る。当業者であれば、適切な材料は容易に明らかである。前記圧力カフはまた当業者に容易に明らかである如く、Velcro(登録商標)システムもしくは他の固定手段26などの如く当該デバイスを身体断片に固定する手段を含む。圧力カフ3内には、身体断片を圧縮して少なくとも略々収縮期血圧の実質的に円周的な圧力を身体断片に付与する可撓空気袋25もしくは同様の手段が収納される。前記空気袋は空気ホースに接続され、該空気袋を膨張もしくは収縮させるべく該ホースを介して空気が移動され得る。前記圧力カフには好適には、少なくとも2個の注入電極9および少なくとも2個の測定電極10が組み込まれる。前記注入電極および測定電極は夫々好適には電気ワイヤ20および21により、圧力カフ3を生体インピーダンス測定ユニットに電気的に接続するケーブルコネクタ27または他の手段に対して電気的に接続される。実質的に前記圧力カフの丈に沿い、少なくとも当該導電帯域24が最も小寸の身体断片円周と等しい様に、少なくとも一本、好適には二本の導電帯域24が延在する。前記帯域は、安定した抵抗率の材料から成る。適切な材料としてはCu−Sc合金もしくは導電ゴムが挙げられる。当業者であれば、他の適切な材料は容易に明らかである。前記圧力カフはまた、固定手段26を有する端部とは逆側における圧力カフ端部に配置された少なくとも一個かつ好適には二個の導電プレート28も備える。各導電帯域24および各導電プレート28は相互から電気的に絶縁されると共に、各々がワイヤ22および23により、抵抗率を測定する手段に夫々接続される。圧力カフが身体断片の回りに巻回されたときにプレート28から帯域24上の接触箇所まで圧力カフの丈に沿い測定された距離が実質的に身体断片の円周と等しくなる様に前記ベルトの丈に沿った単一もしくは複数の箇所にて単一もしくは複数のプレート28が単一もしくは複数の帯域24に電気的に接続される如く、単一もしくは複数の帯域24および単一もしくは複数のプレート28は圧力カフ上に配置される。その場合に身体断片の円周は、式:
Lb1=R1×A1/ρ1
に従い電気的に決定され得る。
【0035】
式中、Lb1は、前記単一もしくは複数のプレートが配置される端部に最も近い圧力カフ3の端部と、プレート28が帯域24に接触する箇所との間における前記帯域の長さであり;
R1は、単一もしくは複数の前記プレートが配置される端部に最も近い端部と、プレート28が前記帯域に接触する箇所との間における前記帯域の抵抗率であり;
A1は、前記帯域の断面積であり;且つ、
ρ1は、この材料の抵抗率である。
【0036】
この様にして、実質的に身体断片の円周に等しい単一もしくは複数の帯域の長さの抵抗率を決定することで、身体断片の円周が電気的に決定され得る。この実施例においては更に正確に身体断片の円周を測定すべく、各測定に先立ち前記圧力カフを確実に装着することが好適である。
【0037】
別の実施例は、血液透析機を制御するデバイスを備える。該実施例および本明細書中に開示された他の実施例において、本発明においてもしくは本発明と共に用いるに適した血液透析機の例はPolascheggに対する米国特許第5,580,460号に開示される。図2には、如何なる点でも限定が企図されない例が示される。前記測定システムはBIA測定ユニット1の他にも、圧力カフ3を膨張させる圧力を生成する一台以上の空気ポンプ2と、前記ポンプを操作すべくマイクロプロセッサからの信号を転送する制御ユニット4と、少なくとも最小限のコンピュータであるマイクロプロセッサ・システム5であって、高速データ転送、高速アクセス、および、入力データの処理および分析を許容するに十分に大きなメモリ空間を備えたマイクロプロセッサ・システム5と、前記透析機に対して制御信号を送受信することで身体水和状態に従い限外濾過率および他の血液透析パラメータの制御を許容すべく前記透析機と通信する手段6と、オンライン測定の結果を示すディスプレイ7と、ドライ体重を監視して制御するための個々の患者のパラメータを入力する操作インタフェース8と、標準的パーソナルコンピュータ(PC)および他のデバイスと通信する選択的な手段とを備える。前記PC上で抵抗率、圧力値、心拍数および他のパラメータの波形が観察、記憶もしくは操作され得る如く、選択的に但し限定的なものとしてでなく、抵抗、抵抗率、カフ圧力および心拍数を含むデータがASCIIもしくは他のフォーマットでRS−232インタフェースもしくは他の標準的インタフェースにより前記PCに送信される。図2におけるブロック図は、選択的に圧力カフ3に組み込まれる注入電極9および測定電極10を示している。前記注入電極および測定電極は好適には電気配線11により、BIA測定ユニット1の出力ソケットIaおよびIbと入力(測定)ソケットVaおよびVbとに対して取付けられると共に、空気ポンプ2は空気ホース12により前記圧力カフに接続される。
【0038】
この実施例においては、種々の患者特有パラメータが操作インタフェース8によりマイクロプロセッサ・システム5に入力される。マイクロプロセッサ・システム5は、BIA測定ユニット1に対して信号を送信する手段であって注入電極9に対して電流を送ることを該BIA測定ユニットに信号通知する手段を介してBIA測定ユニット1に接続される。斯かる電流が前記注入電極を介して身体断片へと送られたとき、該電流は前記測定電極により検出されて前記BIA測定ユニットへと戻し送信されて処理され、導出されたデータは前記マイクロプロセッサ・システムへと送信される。前記マイクロプロセッサ・システムはまたポンプ制御ユニット4にも接続されるが、該ユニットは空気ポンプ2に対して信号を送ることで圧力カフ3を膨張かつ収縮させ、膨張且つ/又は収縮された圧力カフによる生体インピーダンス測定を許容し得る。前記マイクロプロセッサ・システムは通信手段6により血液透析機にも接続されることから、該血液透析機に対して信号が送信されることで、患者の水和状態が変更され得る如く血液透析処置が変更され得る。
【0039】
本発明の一実施例においては患者の適切なドライ体重もしくは他の所望の水和状態を達成すべく且つ血液透析の間における血圧降下を防止すべく、患者の断片的抵抗率のオンライン監視に応じて前記マイクロプロセッサにより限外濾過率が変更される。選択的に個々の限外濾過率は、透析の間における(以下に説明される)断片的抵抗率の変化の勾配に関する時間経過関数を用いて変更されることで、血液透析治療を最適化する。
【0040】
本発明は、血液透析患者および腹膜透析患者のドライ体重を決定することで適切な透析処方を促進する手段を提供する。本発明の一好適実施例において、断片的生体インピーダンスは血液透析の間に身体断片において連続的に測定される。前記身体断片は身体の任意の部分もしくは全身とされ得るが、好適には外肢断片、更に好適には脚部もしくは上腕の断片、最も好適には大腿部断片である。抵抗率の値における相対変化は、約20分〜約1分毎に、更に好適には約10分毎に、更に好適には約5分毎に、最も好適には略々毎分、算出される。而して身体断片、好適には大腿部断片もしくは選択的には上腕断片の円周は当該断片の断面積を導出すべく、好適には治療の開始時、選択的には終了時、および好適には透析の間に間欠的に、更に好適には約10分毎から約20分毎に測定される。好適には身体断片に対し、少なくとも2個の注入電極および少なくとも2個の測定電極が取付けられる。該電極は選択的には上述の様式(たとえば図10参照)で圧力カフ3に組み込まれて圧力カフと共に装着され、更に好適には圧力カフ/電極組み合わせデバイスの一部として装着される。
【0041】
身体断片に対しては前記注入電極を介して周期的に電流が注入されると共に、身体断片を通過した電流は前記測定電極により受信される。次に前記測定電極からの電流はBIA測定ユニットへと伝達され、該ユニットは身体断片の抵抗を決定すると共に選択的には算出された抵抗をマイクロプロセッサ・システムに送信し、該システムは本明細書中に開示された方法に従い抵抗率を算出する一方で血液透析機を制御し得る。経時的には複数の抵抗率データ点が求められ、その曲線が導出されると共に該曲線の勾配が決定される。ゼロに接近する前記曲線の勾配は、実質的に一定の抵抗率が達成されたことを表すことでドライ体重が実質的に達成されたことを反映する。前記抵抗率曲線勾配がゼロに接近するにつれ、患者の水和状態はドライ体重に接近する。選択的に、進行中の血液透析治療期間の間においてドライ体重が達成されるまで限外濾過は延長もしくは改変され、或いは、過剰流体を除去してドライ体重を達成すべく次の血液透析治療の間において血液透析が延長され得る。
【0042】
血液透析患者および腹膜透析患者の両者に対して適切な別実施例においては、健康被検者の身体断片抵抗率に対して透析患者の身体断片抵抗率、好適には透析後抵抗率の比較が用いられて、患者の水和状態および選択的には透析に対する適切な終了時点が決定される。身体断片の円周は、好適には治療の開始時および選択的に終了時に測定される。前記身体断片は、全身または、脚部、上腕もしくは他の肢部(extremity)などの外肢断片とされ得ると共に、好適には大腿部断片または上腕断片である。好適には、身体断片に対して少なくとも2個の注入電極9、少なくとも2個の測定電極10および選択的に圧力カフ3が取付けられる。好適には、前記各電極は前記圧力カフに組み込まれる。少なくとも一回、好適には透析治療が略々完了される時点において、身体断片の生体インピーダンスが測定される。選択的に生体インピーダンスは、透析治療の開始および終了時に、周期的に、または、透析治療の殆どもしくは全ての間に選択的には約10分毎から約20分毎に測定される。生体インピーダンスは、選択的には身体断片を非圧縮として、または好適には前記圧力カフを膨張して身体断片を圧縮して測定される。電流の注入および測定は、前記圧力カフが実質的に完全に膨張されまたは実質的に収縮された時点に対応すべく連携調整される。
【0043】
抵抗率を測定すべく、前記注入電極を通して身体断片に電流が注入されると共に、身体断片を通して伝達された電流は前記測定電極により受信されて身体断片の抵抗率の算出のために前記BIA測定ユニットに送信され、導出されたデータは選択的に前記マイクロプロセッサ・システムに送信されて該システムは本明細書中に開示された方法に従う。
【0044】
正常な抵抗率値の範囲を求めるべく健康被検者の生体インピーダンスが、全身、好適には外肢断片、更に好適には脚部もしくは上腕断片、最も好適には大腿部断片とされ得る特定身体断片にて約15分の期間に亙り反復的に測定される。これらの値から、ドライ体重と相関する一群の正常な抵抗率値が導出される。好適には多人数の健康被検者が考察されることで、特定母集団に対する一群の正常な抵抗率値が生成される。選択的に、抵抗率値を透析患者のドライ体重に対して更に精密に相関させるべく健康母集団の部分集合における抵抗率の決定が実施され得る。たとえば脂肪質量は、主として皮膚の導電性もしくは脂肪の無い質量の導電性と脂肪の量との間における関連の故に、生体電気インピーダンス分析による身体流体の体積の測定値に影響する重要な要因であることから、BMI、性別もしくは年齢に依る生体インピーダンス値の層化が選択的に行われ得る。
【0045】
患者の水和状態を決定すべく、透析患者の身体断片の抵抗率は任意の特定の時点において、健康被検者における同等の身体断片の抵抗率と比較される。透析患者の身体断片の抵抗率が正常被検者における抵抗率と実質的に等しい場合、透析患者は実質的にドライ体重であると決定されると共に、患者の体重が好適に測定される。引き続き、患者の実際の体重とドライ体重との間の差であるΔWを決定することで患者の水和状態を決定すべく、異なる時点で測定された患者の体重が、患者が略々ドライ体重である時点で測定された体重と比較され得る。ΔWを用い、ドライ体重が透析後に達成される如く患者の透析プロトコルが改変され得る。限定を企図するのでは無く、たとえば抵抗率値を健康被検者のそれと比較することで患者がXkgの質量にてドライ体重であると決定され、且つ、次の透析治療の時点においてその患者の質量がYkgであってY>Xならば、ΔW=Y−Xであり、これはドライ体重を達成すべく透析により除去されるべき過剰流体の量を反映している。好適には、生体インピーダンス分析によるドライ体重の反復的決定が周期的に実施されることで、特定患者のドライ体重を決定する上で更なる高精度が提供される。
【0046】
身体断片の生体インピーダンスは、心臓により圧送される血液が心拍毎に身体断片に出入りするときに変化することは公知である。頻繁もしくは連続的な電流注入および断片的生体インピーダンス測定によれば、脈拍を反映する波形が導出され得る。この情報に基づき本発明はBIAによる血液透析に先立ち、その間にもしくはその後に、次式に従い患者の心拍数を決定かつ監視する手段を提供する:
HR=60/(Ti+1−Ti)
式中、HRは毎分当たりの拍動で表された心拍数であり;且つ、図7に示された如くTi+1−Tiは連続的である任意の2個の心拍により誘起されたインピーダンス波のピークTiおよびTi+1間の時間間隔である。
【0047】
本発明の別実施例においてBIAは選択的に、透析に先立ち、その間にもしくはそれに引き続き、限定的なものとしてで無く健康被検者および透析患者を含む個々人における心拍出量を決定すべく用いられる。COの評価は、血管の分布においては身体の両側に関して高度の対称性が在るという仮定と、脈拍毎の全血液容量(心拍血液量)は生体インピーダンスを同時に用いる(好適には上腕および同一側脚部(すなわち身体の同一側)から心拍血液量を測定する)ことで上腕(SVarm)および脚部(SVleg)の断片において測定され得るという事実とに基づいている。
【0048】
心拍出量を算出すべく用いられるのは次式である:
CO=2×HR(k3×SVarm+k4×SVleg)(L/分)
式中、SVarmおよびSVlegは夫々、上腕および脚部の心拍血液量であり;SVarmおよびSVlegは次式を用いて算出される:
SVarm=ΔVA/NAおよびSVleg=ΔVL/NL
式中、ΔVAおよびΔVLは夫々、(図8において断片点Aとして示されると共に、この時間の間においては実質的に全ての血液容量が外肢断片から搾り出されるという)最大カフ圧力の時点と、(図8において点Bとして示されると共に、この時間の間においては心拍血液量の分だけ血液容量が補充されるという)圧力カフが収縮された時点との間における上腕の血液容量の変化および脚部における血液容量の変化である。NAおよびNLは夫々、ピーク点(A)から基線(B)に亙るインピーダンスの変化の間における脈拍の個数である。
【0049】
ΔVAおよびΔVLに対する値は以下の如く算出される:
ΔVA=−ρbL2ΔZA/ZA2、且つ、ΔVL=−ρbL2ΔZL/ZL2 式2
式中、ρbは血液の抵抗率であり、Lは各電極間における身体もしくは外肢断片の長さであり、且つ、ZAおよびZLは夫々インピーダンス値である。ΔVAおよびΔVLの計算は、1998年、ニューヨークのWileyによる“医療器具応用および設計(Medical Instrumentation Application and Design)”、第3版におけるJ.G.Webstarの方法に従い実施されるが、その全ては言及したことにより本明細書中に援用される。
【0050】
係数k3およびk4は夫々、個々人に対してΔVAおよびΔVLを較正する係数である。この較正は、抵抗率が測定されるべき上腕断片の遠位となる静脈内に約5ml乃至約150mlを注入する一方で上腕断片において抵抗率が連続的に測定されることで実施される。体積増分(ΔV)の波が前記断片を通過するとき、注入された体積に関する抵抗の変化(ΔR)が在る。ΔV/ΔR間の関係を用い、k3およびk4が較正される。
【0051】
前記較正プロセスは、オームに関する抵抗変化が既知の体積変化に如何に関連付けられるか(ΔV/ΔR)に関する情報を提供する。定義により、kc=ΔV/ΔRを較正係数と定義し、この場合にΔVは注入塩水の体積(ml)であり且つΔRは較正中の断片の抵抗の変化である。故にk3は以下の如き式により定義される:
k3=kc×ΔZA/(NA×VA)
式中、ΔZAは上腕のインピーダンスの変化であり、VAは設定により計算された体積であり、且つ、NAは脈拍数である。同様に、脚部の体積の変化を較正すべく式k4=kc×ΔZL/(NL×VL)が用いられる。
【0052】
図11には、図2に開示された如くであるが付加的に心拍出量を測定し得るシステムの一実施例が示される。好適には、(不図示の)脚部断片および(不図示の)同一側の上腕断片に取付けられ得る2つの圧力カフ3および3′に組み込まれた2組の電極9および10ならびに9′および10′が含まれるが、両方の組の電極は該電極の各組を迅速に切換え得るデジタル・スィッチに対して配線11および11′を介して接続されることから、実質的に同時に脚部断片もしくは上腕断片のいずれからも測定値が獲得され得る。デジタル・スィッチ30は好適には、少なくとも約200Hz、更に好適には1kHzより大きなサンプリング周波数を達成する機能を有する。選択的に、必要なときにサンプル周波数が変更され得る如くコンピュータ31から前記デジタル・スィッチに対して制御信号を送信する手段が在る。
【0053】
以下においては、本発明の一連の実例が列挙される。本明細書中に包含される各実例は本発明の有効範囲を例証することが企図されるが、本発明の有効範囲を制限することは企図されない。
【0054】
実例1
20人の健康被検者(表1)および13人の血液透析患者(表2)が考察され、後者は血液透析の最中である。表1および表2には、それらの平均の年齢、体重および肥満指数(BMI)が示される。データは、平均値±SDとして表される。
【表1】
【表2】
【0055】
実例2
全てが身体の左側とされた6個の電極を用いて血液透析の間において10分毎に連続的に断片的生体インピーダンスが測定された。電流を注入するために、一方は手の上かつもう一方は脚部上とされた2個の電極が用いられた。測定電極は、手首、肩、臀部および踝(くるぶし)に載置された。抵抗率は、手首−肩断片(Varm)、肩−臀部断片(Vtrunk)および踝−臀部断片(Vleg)で測定された。収縮期血圧(SBP)、相対血液容量すなわち赤血球容積率(RBV)および限外濾過率(UFR)も測定された。この様にして、脚部、上腕および体幹における血液容量および断片的細胞外体積(ECV)が算出された。結果は、図3に示される。X軸は分単位の時間であり、Y軸は血液透析の開始時における特定パラメータの値を100%に等しいものとした値の相対変化である。連続的な限外濾過の後、脚部のECVにおける変化は勾配が略々水平すなわちゼロに接近する如く小さくなり、このことは、限外濾過に利用可能な流体が殆ど無くてドライ体重が達成されたことを表す。ECVの体幹、脚部および上腕の曲線を比較すると、ドライ体重分析に対しては脚部が好適な身体断片であることが理解され得る。
【0056】
実例3
血液透析治療の開始時および完了時において圧力カフを膨張して且つ膨張せずに外肢断片の抵抗および抵抗率が測定されると共に、ΔWが算出された。表3は一連の患者において血液透析の終了時にΔWが≠0であったことを示すことで、これらの患者は血液透析の終了時に臨床的ドライ体重でなかったことを表している。
【表3】
【0057】
確認すると(図3)、HDの終了時においてρ0およびρpともに、健康被検者におけるよりも患者の方が低くまたは高い。これは、殆どの患者が過剰水和される一方で(すなわち過剰流体が除去されずに)一定人数の患者は前記治療により脱水されて通常の流体体積よりも少ない流体体積を有していたことを表す。本発明の目的は、治療後に全ての患者を実質的に健康被検者と同一範囲とすることに在る(抵抗率は間質体積に反比例することを銘記されたい)。図4はΔWとρpとの間の高い相関を示すが、このことは、ρpが患者の断片的水和の分析に用いられ得るが故に該技術によりドライ体重が予測され得ることを表している。
【0058】
実例4
図5は、10人の男性患者における血液透析の終了時における抵抗率および血圧の臨床的相関を示している。図4は、これらの患者における血液透析の終了時の抵抗率と身体水和量との間の臨床的相関を示している。抵抗率に対する正常範囲は実線として示される。これらの結果は、治療の終了時において当該技術により表される如く血液透析患者が正しいドライ体重に無かったことを例証している。殆どは過剰水和であったが、記号○で表される3人は水和不足であった。前記式1を用い、健康被検者のρ0およびρpならびにBMIに従い個々のドライ体重が算出された。図9には、健康被検者と比較した補正後における患者のドライ体重、および、未補正のドライ体重が示される。
【0059】
本出願を通し、種々の論文および特許が参照された。これらの公表物の全ての開示内容は言及したことにより全体的に本明細書中に援用される。本発明は本発明の精神もしくは本質的属性から逸脱せずに他の形態で具現され得ることから、本発明の有効範囲を表すものとしては前述の詳細では無く各請求項を参照されたい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、断片的生体インピーダンス(segmental bioimpedance)を利用して透析患者の生理学的パラメータを監視かつ制御するデバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透析患者の臨床的管理においては、透析患者の水和状態(hydration status)の正確な評価およびドライ体重[dry body weight](DWもしくはドライ体重[dry weight])の予測が主な問題である。血液透析患者および腹膜透析患者のいずれにおいてもドライ体重は透析治療の終了時における目標体重であり、身体からの過剰水分の除去を最適に反映している。臨床的実務においてDWの評価は不正確な作業であると共に、患者の血圧、脈拍および体重の変化などの臨床的な症状(symptom)および徴侯(sign)に関し、治療を行う医師の医療経験および特定の患者の状態に対する熟知度に相当程度まで依存する。斯かる徴侯および症状の正しい解釈は種々の事実、即ち、治療前の体重は治療毎に変化し、過剰流体の量は一定でなく、且つ、任意の特定の透析治療の間において任意の特定の患者から除去され得るもしくは除去されるべき流体の量は脛骨前部水腫、呼吸困難、痙攣および/または血圧低下などの臨床的徴侯および症状により具現されることの多い個々人の心臓血管耐性により制限され得るという事実から、複雑である。あるは、除去されるべき流体の量を過剰評価すると、潜在的に回避可能な症状、不必要に長時間の透析治療、および多くの場合には透析施設における長期滞在に帰着し得る。故にDWの過剰評価もしくは過少評価は、透析治療の効率および患者の生活の質の両者に対して相当に影響する。
【0003】
ここ20年以上に亙り、被検者の身体水和量および水和状態(すなわち過剰、過少もしくは正常な水和)を測定する上で生体電気インピーダンス分析(BIA)は非侵襲的で簡素な技術として認識されてきた。ドライ体重の研究に対してBIAを用いる相当数の文献が在る。Kouw等はBIAにより、局所的導電性における変化を測定してから局所的な細胞外体積[extracellular volume](ECV)および細胞内体積[intracellular volume](ICV)を測定する方法を提案した。(非特許文献1参照。)しかしKouwの方法は間質液(interstitial fluid)のみを測定する様には使用され得ない、と言うのも該方法は、両方ともがECV区画(compartment)を構成する間質液およびプラズマ(plasma)を区別しないからである。またPiccoliは、リアクタンスに対する抵抗の比率を用いてドライ体重を特定するというBIAベクトル分析方法を発表した。この技術は被検者の身体水和量を比較すべく用いられ得るが、測定された値は相当に変動するので個々の患者のドライ体重を予測することはできない。(非特許文献2参照。)
【0004】
また最近では、血液容量(BV)[=blood volume]の測定を用いたドライ体重の研究数が増えている。(たとえば、非特許文献3および4参照。)血液容量測定は血液透析の間において血液中の水分濃度すなわち赤血球容積率を表すべく使用され得る非侵襲的技術であるがドライ体重を直接的に決定する様には使用され得ない、と言うのも血液容量の変化は主として、部分的には身体水和量に無関係な血管への補充(refilling)に依存するからである。(たとえば、非特許文献5参照。)一方、透析の間に赤血球容積率レベルが変化すると血液の導電性が変化し得ることから、習用的な生体電気インピーダンス分析もしくは血液容量分析のいずれによっても組織水和に関する情報を得ることは困難である。今日まで、血管内区画(intravascular compartment)および間質区画(interstitial compartment)における流体体積を評価すべく血液および組織の抵抗率を別個に測定する方法が主な問題であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「Assessment of post−dialysis dry weight: an application of the conductivity measurement method」M. Kouw等、Kidney Int.第41巻、第440−444頁、1992年
【非特許文献2】「Identification of operational clues to dry weight prescription in hemodialysis using bioimpedance vector analysis」Piccoli A、Kidney Int.第53巻、第1036−1043頁、1998年
【非特許文献3】「Non−invasive monitoring of blood volume during hemodialysis: Its relation with post−dialytic dry weight」J.P. de Vries等、Kidney Int.第44巻、第851−854頁、1993年
【非特許文献4】「Determination of circulating blood volume by continuously monitoring hematocrit during hemodialysis」J.K. Leypold等、J.Am.Soc.Nephrol.第6巻、第214−219頁、1995年
【非特許文献5】「Evaluating volume status in hemodialysis patients」J.K. Leypoldt等、Adv.Ren.Replace.Ther.第5巻、第64−74頁、1998年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
故に、透析患者の水和状態を決定し、斯かる患者のドライ体重を特定もしくは予測し、且つ、透析期間の間に除去されるべき流体の量を計算するための、精密で容易に使用され且つ操作者に依存しない方法に対する要望が在る。これに加え、患者の水和状態に応じて透析を制御する方法に対する要望が在る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、透析患者の身体断片の抵抗率を測定する段階と、測定された抵抗率を所定の正常なドライ体重値と相関させる段階と、前記患者の水和状態を導出する段階と、を備えて成る、透析患者の水和状態を決定する方法を包含する。選択的には、前記身体断片の間質液の抵抗率が測定されて患者の水和状態が導出される。一実施例において、前記身体断片の抵抗率は少なくとも略々収縮期血圧の圧力、選択的には約120mmHg乃至約240mmHgの圧力を付与し乍ら決定される。前記身体断片は、外肢断片、好適には大腿部断片とされ得る。
【0008】
血液透析の間に身体断片の抵抗率を周期的に測定する段階と、連続的な抵抗率測定値を比較する段階と、実質的に一定の抵抗率に到達したときに血液透析患者のドライ体重を特定する段階と、を備えて成る、血液透析患者のドライ体重を決定する方法が包含される。選択的に、血液透析の間において前記身体断片の抵抗率は約5分毎乃至約20分毎に、好適には約10分毎に測定される。一実施例において前記身体断片の抵抗率は少なくとも略々収縮期血圧の圧力、選択的には約120mmHg乃至約240mmHgの圧力で測定される。
【0009】
本発明は、患者の身体断片の抵抗率を測定する段階と、測定された抵抗率を所定の正常なドライ体重値と相関させる段階と、前記患者の水和量を導出する段階と、前記身体断片の抵抗率が前記所定の正常なドライ体重値と相関するまで血液透析を継続する段階と、好適には少なくとも略々収縮期血圧の圧力にて前記身体断片の抵抗率を測定する段階と、を備えて成る、患者を該患者のドライ体重まで透析する方法を包含する。
【0010】
血液透析の間において身体断片の抵抗率を周期的に測定する段階と、連続的な抵抗率測定値を比較する段階と、実質的に一定の抵抗率が反映されたときに血液透析を停止する段階と、を備えて成る、患者を該患者のドライ体重まで血液透析する方法も提供される。好適には、前記身体断片の抵抗率は少なくとも略々収縮期血圧の圧力にて測定される。この実施例において、前記身体断片の抵抗率は血液透析の間において約5分毎乃至約20分毎に測定される。
【0011】
本発明はまた、2つの連続的な生体インピーダンス波ピーク間の時間間隔を決定する段階と、前記時間間隔の逆数を60に乗算して心拍数を求める段階と、を備えて成る、血液透析患者の心拍数を監視する方法、および、上腕断片における心拍血液量を生体電気インピーダンス分析により測定する段階と、同一側の脚部断片における心拍血液量を生体電気インピーダンス分析により実質的に同時に測定する段階と、前記上腕断片における心拍血液量および前記脚部断片における心拍血液量を合計する段階と、前記合計を前記心拍数の2倍に乗算して心拍出量を求める段階と、を備えて成る、心拍出量を必要とする患者の心拍出量を算出する方法も提供する。好適には、前記上腕断片の心拍血液量は、前記上腕断片に対して外部最大圧力を付与し、前記最大圧力の時点と外部圧力が付与されない時点との間における前記上腕断片の血液容量の変化分を決定すると共に該変化分を前記2つの時点間における心拍の個数で除算することで算出され、且つ、前記脚部の心拍血液量は、前記脚部断片に対して外部最大圧力を付与し、前記最大圧力の時点と外部圧力が付与されない時点との間における前記脚部断片の血液容量の変化分を決定すると共に該変化分を前記2つの時点間における心拍の個数で除算することで算出される。
【0012】
血液透析機と電気通信する生体インピーダンス分析用測定ユニットと、前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に身体断片に取付可能な電気出力手段であって、前記身体断片に電流を印加し得る電気出力手段と、前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に身体断片に取付可能な電気入力手段であって、前記身体断片を通過して伝達された電流を受信して該電流を前記生体インピーダンス分析用測定ユニットに送信し得る電気入力手段とを備えた、血液透析機を制御するデバイスが包含される。前記生体インピーダンス分析用測定ユニットは前記身体断片を通して伝達された電流に基づき身体断片抵抗率を決定し、且つ、前記生体インピーダンス分析用測定ユニットは前記身体断片抵抗率に応じて前記血液透析機に対してフィードバックを提供する。一好適実施例において前記デバイスは、前記身体断片に圧力を付与すると共に前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信する手段を含む。選択的に、前記圧力付与手段は前記身体断片を囲繞し得る圧力カフを含む。好適には、前記電気出力手段は少なくとも2個の注入電極を含み、前記電気入力手段は少なくとも2個の測定電極を含む。前記注入電極および測定電極は前記圧力カフに固定される。選択的に、前記圧力カフは、両端部を備えた少なくとも一本の導電帯域と、該導電帯域の前記各端部の一方の近傍に位置された導電プレートとを含み、前記導電帯域は実質的に前記圧力カフの丈に沿い延在する。前記導電プレートは前記導電帯域の丈に沿う所定点にて該導電帯域に電気的に接触すべく配置され、前記導電プレートと前記導電帯域の前記接触点との間の距離は実質的に前記身体断片の円周に等しく、且つ、前記生体インピーダンス分析用測定ユニットは、前記プレートの近傍における前記帯域の端部と該帯域の丈に沿う前記プレートの接触点との間の距離に基づき身体断片円周を電気的に決定し得る。
【0013】
一実施例は、生体インピーダンス分析用測定ユニットと、選択的には少なくとも2個の注入電極を備え且つ前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に身体断片に取付可能な電気出力手段であって、前記身体断片に電流を印加し得る電気出力手段と、選択的には少なくとも2個の測定電極を備え且つ前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に身体断片に取付可能な電気入力手段であって、前記身体断片を通過して伝達された電流を受信して該電流を前記生体インピーダンス分析用測定ユニットに送信し得る電気入力手段とを備えて成る、血液透析患者における水和状態を監視するデバイスである。前記生体インピーダンス分析用測定ユニットは前記身体断片を通して伝達された電流に基づき身体断片抵抗率を決定する。選択的に、前記デバイスは血液透析機を含む。選択的に前記デバイスは前記身体断片に圧力を付与する、選択的には圧力カフである手段を含む。前記圧力付与手段は、前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信する。前記デバイスの一実施例は、両端部を備えた少なくとも一本の導電帯域と、該導電帯域の前記各端部の一方の近傍に位置された導電プレートとを備えた圧力カフを含む。前記導電帯域は実質的に前記圧力カフの丈に沿い延在し、前記導電プレートは前記導電帯域の丈に沿う所定点にて該導電帯域に電気的に接触すべく配置され、前記導電プレートと前記導電帯域の前記接触点との間の距離は実質的に前記身体断片の円周に等しく、且つ、前記生体インピーダンス測定ユニットは、前記プレートの近傍における前記帯域の端部と該帯域の丈に沿う前記プレートの接触点との間の距離に基づき身体断片円周を電気的に決定し得る。
【0014】
本発明は、生体インピーダンス測定ユニットと、前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に上腕断片に取付可能な第1電気出力手段であって、前記上腕断片に電流を印加し得る第1電気出力手段と、前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に脚部断片に取付可能な第2電気出力手段であって、前記脚部断片に電流を印加し得る第2電気出力手段と、前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に上腕断片に取付可能な第1電気入力手段であって、前記上腕断片を通過して伝達された電流を受信して該電流を前記生体インピーダンス分析用測定ユニットに送信し得る第1電気入力手段と、前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に脚部断片に取付可能な第2電気入力手段であって、前記脚部断片を通過して伝達された電流を受信して該電流を前記生体インピーダンス分析用測定ユニットに送信し得る第2電気入力手段と、前記上腕断片に最大圧力を付与すると共に前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信する第1圧力付与手段と、前記上腕断片に最大圧力を付与すると共に前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信する第2圧力付与手段と、前記生体インピーダンス分析用測定を、前記第1電気入力および出力手段と前記第2電気入力および出力手段とに対して選択的に且つ電気的に接続する手段と、を備え、前記生体インピーダンス分析用測定ユニットは生体電気インピーダンス分析により前記上腕断片および脚部断片における心拍血液量を選択的に測定し得る、生体インピーダンス測定により心拍出量を算出するデバイスを包含する。
【0015】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に関する以下の本発明の好適実施例の詳細な説明から容易に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】1Aおよび1Bは夫々、本発明の一実施例に従い抵抗率を測定する原理を示す身体断片の模式的立体図を表し、図1Aは前記断片に外部圧力が付与されずに血管が非圧縮とされた状況を示し、図1Bは前記断片に外部圧力が付与されて血管が圧縮された状況を示している。
【図2】本発明に係る測定システムのブロック図である。
【図3】血液透析の間における経時的な種々の身体断片の収縮期血圧、限外濾過率、抵抗率、相対血液容量の相対変化のグラフである。
【図4】10人の男性血液透析患者においてドライ体重に対して比較された透析後抵抗率のグラフである。
【図5】10人の男性血液透析患者において血液透析の終了時における外肢断片の血圧と抵抗率との間の関係を示すグラフである。
【図6】10人の男性の健康被検者の外肢断片における肥満指数対抵抗率のグラフである。
【図7】動脈性脈拍に基づく身体断片血液容量の変化に関する身体断片インピーダンスの変化を示すグラフである。
【図8】圧力カフの圧力に関する外肢断片のインピーダンスの変化を示すグラフである。
【図9】ドライ体重に対して補正し且つ補正しない一連の10人の男性血液透析患者の透析後における外肢断片抵抗率と一連の10人の男性の健康被検者の外肢断片抵抗率との相関を示す棒グラフである。
【図10】身体断片が圧縮されもしくは非圧縮とされたときの身体断片の円周を測定すると共に断片的生体インピーダンスを測定すべく用いられる圧力カフのカバーを部分的に破断した前面図であり、10Aは導電プレートの部分的後面図である。
【図11】心拍出量を決定する手段も提供する本発明に係るデバイスのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、血液透析患者および腹膜透析患者の水和状態、即ちより詳細にはドライ体重を決定することで適切な透析処方を促進する方法を提供する。本発明は、患者の身体もしくは身体断片の抵抗率を決定かつ監視することで、透析を受ける患者の正しいドライ体重もしくは所望の水和状態を決定かつ監視する手段を備える。本発明は更に、限定的なものとしてで無く心拍数(HR)および心拍出量(CO)などの、透析を受ける患者の種々の生理学的パラメータを決定かつ監視する方法を提供する。
【0018】
生理学的な観点からは、健康な人々における間質区画の流体の量は狭い範囲に収まる比較的に一定な値のはずである。故にこの値は、患者の身体水和の度合いを表す判定基準となるはずである。
【0019】
本発明者等は、上腕(上肢)もしくは脚部(下肢)などの末梢身体断片の補充体積は、透析患者の水和状態もしくはドライ体重の重要な指標であることを見出した。ひとつの見地において本発明は、患者の流体状態およびドライ体重を決定すべく断片的生体インピーダンス分析(SBIA)により間質区画および血管内区画における流体体積などの局所的身体水和の度合いを別個に測定する手段を提供する。
【0020】
本発明の一好適実施例は、身体断片の抵抗率を測定する手段を備える。前記身体断片は、全身、好適には外肢断片(limb segment)、更に好適には脚部もしくは上腕断片、最も好適には大腿部断片とされ得る。図1Aに示された如く身体断片の抵抗率は、各測定電極を距離Lだけ離間された箇所L1およびL2に夫々載置することで測定される。当業者であれば、距離Lは変更され得るが約10cmが好適であることを理解し得よう。L1およびL2間の抵抗率はRと表される。図1Aには、Tと表された間質区画およびBと表された血管を備えた身体断片の断面も示される。選択的に、前記身体断片を囲繞する圧力カフ(pressure cuff)3などの様に前記身体断片を圧縮する手段が配備される。たとえば圧力カフ3が非膨張であるときなどに前記身体断片が圧縮されない場合、血管は非圧縮とされて抵抗率Rは間質区画Tおよび血管内区画Bの両者の抵抗率を反映する。図1Bに示された如くたとえば前記圧力カフを膨張することで、収縮期血圧近傍より高い選択的には約240mmHgまでの圧力へと身体断片が圧縮されたとき、前記血管は圧縮されると共に、前記身体断片の血管内区画内に含まれた実質的に全ての血液容量が前記身体断片から押し出される。L1およびL2に載置された各電極間の抵抗率が斯かる状況で測定されたとき、抵抗率値ρ1は前記身体断片の間質区画の抵抗率を表す。
【0021】
断片的生体インピーダンスを測定する前記原理は、断片的抵抗率を測定する手段を提供すると共に、図1Aおよび図1Bに関して説明され得る。
【0022】
断片的抵抗率は、式:
ρmeasure=AρI/L(m・Ω)
を用いて計算される。
【0023】
式中、ρmeasureは測定された断片的抵抗率であり;Aは断片の断面積である(A=C2/4π、式中、Cは前記断片の円周である)。而して、前記身体断片に圧力が付与されないときの断面積A0は前記血管を含む前記身体断片の断面積を表し、少なくとも収縮期血圧が付与されたときに断面積Apは前記身体断片から前記血管の断面積を減じた差であり;ρは生体インピーダンス分析により測定された抵抗率であり;且つ、Lは各測定箇所間の距離(すなわち各測定電極間の距離)である。
【0024】
測定された身体断片の抵抗率は、注入された電流の周波数および肥満指数(BMI)などの所定個数の係数に依存する。好適には単一周波数が、選択的には複数周波数(多重周波数)が用いられる。約1KHz乃至約1000KHz、更に好適には約1KHz乃至50KHz、最も好適には約1KHz乃至約10KHzの周波数が利用される。BMIは、脂肪分を反映すると共に、kg単位の体重をメートル単位の身長の二乗で除算した商(体重/身長2)として定義され、典型的にはkg/m2単位で測定される。血管内流体と間質液とを区別すべく、好適に身体断片は選択的には圧力カフにより、好適には血圧カフ(BPカフ)により圧縮されることで、考察される断片から数秒に亙り血液容量を搾り出すに十分な圧力(P)を生成する。故に2つの抵抗率値が測定され得る:ρ0(非圧縮の身体断片、P=0mmHg)およびρp(身体断片は略々収縮期血圧からPmax=240mmHgまでの圧力へと圧縮される)。
【0025】
前記抵抗率測定に基づくと、ドライ体重および過剰身体流体は、式:
ドライ体重=事前体重−Vexcess
に従い計算される。
【0026】
式中、事前体重(pre−weight)とは透析の完了に先立つ時点、好適には透析の開始に先立つ時点における患者の体重であり、且つ、Vexcessはドライ体重を達成すべく患者の身体から除去されるべき流体の過剰量である。
【0027】
Vexcessを計算する式は:
Vexcess=(k1/k2)・ρcal・BMIp (式1)
である。
【0028】
式中、BMIpは透析患者の肥満指数(kg/m2)であり、
ρcalは以下の式から求められる抵抗率(m×Ω)である:
ρcal=λ・BMIp+200 (m×Ω); 式1.1
式中、λは健康被検者におけるBMIと抵抗率との間の関係に基づく線形の回帰方程式から導出された抵抗/密度(Ω/(kg/m3))の適合係数であり;且つ、
BMIpは患者のBMIである。
【0029】
特定の母集団に対しては特定の係数が導出されて結果が改善されると予見される。たとえば、限定を企図するのでは無く、図6に示された10人の健康な男性被検者からの実験データを利用すると、(以下の)実例1においてλ=13(Ω/(kg/m3))が示される。200(m・Ω)の値は、BMIが(ゼロより大きいはずの)最小値を有するときの抵抗率の基線である。
【0030】
k1/k2(m/オーム)は個々の患者の身体形状および組織抵抗率に依り測定値に依存する係数定数であり;且つ、
その場合にk1=C1×C2であり、
式中、C1は透析患者における身体断片の抵抗率と臨床的ドライ体重値との間の関係を相関させる適切な実験データから導出された線形回帰方程式により求められ、且つ、
C2=ρcal/(ρcal−ρmeasure)
であり、式中、ρmeasureは透析患者の身体断片が少なくとも略々収縮期圧力の圧力まで圧縮されたときにSBIAにより測定された身体断片の抵抗率である。
【0031】
再び、特定の母集団に対しては特定の係数が導出されて結果が改善されると予見されるが、限定を企図するのでは無くたとえば、図4に示されると共に実例1に記述された10人の男性血液透析患者から導出された実験データを利用すると、C1=2.2×10-1kg/(m・Ω)かつC2=3.5である。
【0032】
k2は、健康被検者の母集団におけるBMIに対する平均値である。実例1に記述される10人の健康な男性のサンプルにおいて、平均BMIすなわちk2は約26.8kg/m2であり、且つ、ρcalは計算された抵抗率(m・Ω)=(13×BMIp)+200(Ω・m3/kg)である。
【0033】
前記測定システムは、当業者に公知の好適にはXitron 4200s(カリフォルニア州、サンディエゴのXitron Technologies社)などの高速に低ノイズで処理を行う多重周波数式の生体インピーダンス測定ユニットから成る。前記システムは前記生体インピーダンス測定ユニットに接続された電気出力手段であって身体断片に取付可能な電気出力手段を含むが、該電気出力手段は好適には、身体断片に装着されて身体断片に電流を注入する少なくとも2個の注入電極を備える。前記システムは前記注入電極を介し、約1KHz乃至約1000KHz、更に好適には約1KHz乃至50KHz、最も好適には約1KHz乃至約10KHzの周波数に亙る単一周波数の電流または選択的には複数周波数の電気(多重周波数)を印加し得る。前記システムは更に、前記出力手段から送出されて身体断片を通過した電流を受信し得る電気入力手段であってその後に前記電流を生体インピーダンス分析用測定ユニットに送出する電気入力手段を更に備えて成る。前記入力手段は、選択された断片を通過して伝達された電流を前記BIA測定ユニットに送受すべく身体断片に装着された少なくとも2個の測定電極を備える。前記電極はAg/AgCl膜、導電ゴム、または、当業者に容易に明らかである他の適切な材料で作成され得る。前記注入電極および測定電極は、前記BIA測定ユニットに対して電気的に接続される。この電気的接続は当業者に容易に明らかである多数の手段により達成され得るが、好適には電気ケーブルである。
【0034】
本発明の一好適実施例において前記各電極は、身体断片を囲繞して圧縮するに適した圧力カフ内に組み込まれる。選択的には単一ケーブルが、前記注入電極および測定電極に対する電気ワイヤならびに前記圧力カフに接続される空気管材の両者を組み込み得る。斯かるケーブルは、前記圧力カフを前記測定ユニットおよび選択的空気ポンプに接続すべく用いられる。代替的に、別体的な電気ケーブルおよび別体的な空気ホースが採用され得る。選択的に前記圧力カフには、身体断片の円周を電気的に測定する手段が組み込まれる。図10には、如何なる点でも限定が企図されない好適な圧力カフの構成3の例が開示される。圧力カフ3は血圧カフ型デバイスであり、該デバイスは身体断片が該デバイスにより囲繞される如く身体断片を巻回するに適した実質的に長方形状から成る。前記圧力カフは、好適には容易に洗浄且つ/又は浄化され得る布もしくは他の可撓材料から成る。当業者であれば、適切な材料は容易に明らかである。前記圧力カフはまた当業者に容易に明らかである如く、Velcro(登録商標)システムもしくは他の固定手段26などの如く当該デバイスを身体断片に固定する手段を含む。圧力カフ3内には、身体断片を圧縮して少なくとも略々収縮期血圧の実質的に円周的な圧力を身体断片に付与する可撓空気袋25もしくは同様の手段が収納される。前記空気袋は空気ホースに接続され、該空気袋を膨張もしくは収縮させるべく該ホースを介して空気が移動され得る。前記圧力カフには好適には、少なくとも2個の注入電極9および少なくとも2個の測定電極10が組み込まれる。前記注入電極および測定電極は夫々好適には電気ワイヤ20および21により、圧力カフ3を生体インピーダンス測定ユニットに電気的に接続するケーブルコネクタ27または他の手段に対して電気的に接続される。実質的に前記圧力カフの丈に沿い、少なくとも当該導電帯域24が最も小寸の身体断片円周と等しい様に、少なくとも一本、好適には二本の導電帯域24が延在する。前記帯域は、安定した抵抗率の材料から成る。適切な材料としてはCu−Sc合金もしくは導電ゴムが挙げられる。当業者であれば、他の適切な材料は容易に明らかである。前記圧力カフはまた、固定手段26を有する端部とは逆側における圧力カフ端部に配置された少なくとも一個かつ好適には二個の導電プレート28も備える。各導電帯域24および各導電プレート28は相互から電気的に絶縁されると共に、各々がワイヤ22および23により、抵抗率を測定する手段に夫々接続される。圧力カフが身体断片の回りに巻回されたときにプレート28から帯域24上の接触箇所まで圧力カフの丈に沿い測定された距離が実質的に身体断片の円周と等しくなる様に前記ベルトの丈に沿った単一もしくは複数の箇所にて単一もしくは複数のプレート28が単一もしくは複数の帯域24に電気的に接続される如く、単一もしくは複数の帯域24および単一もしくは複数のプレート28は圧力カフ上に配置される。その場合に身体断片の円周は、式:
Lb1=R1×A1/ρ1
に従い電気的に決定され得る。
【0035】
式中、Lb1は、前記単一もしくは複数のプレートが配置される端部に最も近い圧力カフ3の端部と、プレート28が帯域24に接触する箇所との間における前記帯域の長さであり;
R1は、単一もしくは複数の前記プレートが配置される端部に最も近い端部と、プレート28が前記帯域に接触する箇所との間における前記帯域の抵抗率であり;
A1は、前記帯域の断面積であり;且つ、
ρ1は、この材料の抵抗率である。
【0036】
この様にして、実質的に身体断片の円周に等しい単一もしくは複数の帯域の長さの抵抗率を決定することで、身体断片の円周が電気的に決定され得る。この実施例においては更に正確に身体断片の円周を測定すべく、各測定に先立ち前記圧力カフを確実に装着することが好適である。
【0037】
別の実施例は、血液透析機を制御するデバイスを備える。該実施例および本明細書中に開示された他の実施例において、本発明においてもしくは本発明と共に用いるに適した血液透析機の例はPolascheggに対する米国特許第5,580,460号に開示される。図2には、如何なる点でも限定が企図されない例が示される。前記測定システムはBIA測定ユニット1の他にも、圧力カフ3を膨張させる圧力を生成する一台以上の空気ポンプ2と、前記ポンプを操作すべくマイクロプロセッサからの信号を転送する制御ユニット4と、少なくとも最小限のコンピュータであるマイクロプロセッサ・システム5であって、高速データ転送、高速アクセス、および、入力データの処理および分析を許容するに十分に大きなメモリ空間を備えたマイクロプロセッサ・システム5と、前記透析機に対して制御信号を送受信することで身体水和状態に従い限外濾過率および他の血液透析パラメータの制御を許容すべく前記透析機と通信する手段6と、オンライン測定の結果を示すディスプレイ7と、ドライ体重を監視して制御するための個々の患者のパラメータを入力する操作インタフェース8と、標準的パーソナルコンピュータ(PC)および他のデバイスと通信する選択的な手段とを備える。前記PC上で抵抗率、圧力値、心拍数および他のパラメータの波形が観察、記憶もしくは操作され得る如く、選択的に但し限定的なものとしてでなく、抵抗、抵抗率、カフ圧力および心拍数を含むデータがASCIIもしくは他のフォーマットでRS−232インタフェースもしくは他の標準的インタフェースにより前記PCに送信される。図2におけるブロック図は、選択的に圧力カフ3に組み込まれる注入電極9および測定電極10を示している。前記注入電極および測定電極は好適には電気配線11により、BIA測定ユニット1の出力ソケットIaおよびIbと入力(測定)ソケットVaおよびVbとに対して取付けられると共に、空気ポンプ2は空気ホース12により前記圧力カフに接続される。
【0038】
この実施例においては、種々の患者特有パラメータが操作インタフェース8によりマイクロプロセッサ・システム5に入力される。マイクロプロセッサ・システム5は、BIA測定ユニット1に対して信号を送信する手段であって注入電極9に対して電流を送ることを該BIA測定ユニットに信号通知する手段を介してBIA測定ユニット1に接続される。斯かる電流が前記注入電極を介して身体断片へと送られたとき、該電流は前記測定電極により検出されて前記BIA測定ユニットへと戻し送信されて処理され、導出されたデータは前記マイクロプロセッサ・システムへと送信される。前記マイクロプロセッサ・システムはまたポンプ制御ユニット4にも接続されるが、該ユニットは空気ポンプ2に対して信号を送ることで圧力カフ3を膨張かつ収縮させ、膨張且つ/又は収縮された圧力カフによる生体インピーダンス測定を許容し得る。前記マイクロプロセッサ・システムは通信手段6により血液透析機にも接続されることから、該血液透析機に対して信号が送信されることで、患者の水和状態が変更され得る如く血液透析処置が変更され得る。
【0039】
本発明の一実施例においては患者の適切なドライ体重もしくは他の所望の水和状態を達成すべく且つ血液透析の間における血圧降下を防止すべく、患者の断片的抵抗率のオンライン監視に応じて前記マイクロプロセッサにより限外濾過率が変更される。選択的に個々の限外濾過率は、透析の間における(以下に説明される)断片的抵抗率の変化の勾配に関する時間経過関数を用いて変更されることで、血液透析治療を最適化する。
【0040】
本発明は、血液透析患者および腹膜透析患者のドライ体重を決定することで適切な透析処方を促進する手段を提供する。本発明の一好適実施例において、断片的生体インピーダンスは血液透析の間に身体断片において連続的に測定される。前記身体断片は身体の任意の部分もしくは全身とされ得るが、好適には外肢断片、更に好適には脚部もしくは上腕の断片、最も好適には大腿部断片である。抵抗率の値における相対変化は、約20分〜約1分毎に、更に好適には約10分毎に、更に好適には約5分毎に、最も好適には略々毎分、算出される。而して身体断片、好適には大腿部断片もしくは選択的には上腕断片の円周は当該断片の断面積を導出すべく、好適には治療の開始時、選択的には終了時、および好適には透析の間に間欠的に、更に好適には約10分毎から約20分毎に測定される。好適には身体断片に対し、少なくとも2個の注入電極および少なくとも2個の測定電極が取付けられる。該電極は選択的には上述の様式(たとえば図10参照)で圧力カフ3に組み込まれて圧力カフと共に装着され、更に好適には圧力カフ/電極組み合わせデバイスの一部として装着される。
【0041】
身体断片に対しては前記注入電極を介して周期的に電流が注入されると共に、身体断片を通過した電流は前記測定電極により受信される。次に前記測定電極からの電流はBIA測定ユニットへと伝達され、該ユニットは身体断片の抵抗を決定すると共に選択的には算出された抵抗をマイクロプロセッサ・システムに送信し、該システムは本明細書中に開示された方法に従い抵抗率を算出する一方で血液透析機を制御し得る。経時的には複数の抵抗率データ点が求められ、その曲線が導出されると共に該曲線の勾配が決定される。ゼロに接近する前記曲線の勾配は、実質的に一定の抵抗率が達成されたことを表すことでドライ体重が実質的に達成されたことを反映する。前記抵抗率曲線勾配がゼロに接近するにつれ、患者の水和状態はドライ体重に接近する。選択的に、進行中の血液透析治療期間の間においてドライ体重が達成されるまで限外濾過は延長もしくは改変され、或いは、過剰流体を除去してドライ体重を達成すべく次の血液透析治療の間において血液透析が延長され得る。
【0042】
血液透析患者および腹膜透析患者の両者に対して適切な別実施例においては、健康被検者の身体断片抵抗率に対して透析患者の身体断片抵抗率、好適には透析後抵抗率の比較が用いられて、患者の水和状態および選択的には透析に対する適切な終了時点が決定される。身体断片の円周は、好適には治療の開始時および選択的に終了時に測定される。前記身体断片は、全身または、脚部、上腕もしくは他の肢部(extremity)などの外肢断片とされ得ると共に、好適には大腿部断片または上腕断片である。好適には、身体断片に対して少なくとも2個の注入電極9、少なくとも2個の測定電極10および選択的に圧力カフ3が取付けられる。好適には、前記各電極は前記圧力カフに組み込まれる。少なくとも一回、好適には透析治療が略々完了される時点において、身体断片の生体インピーダンスが測定される。選択的に生体インピーダンスは、透析治療の開始および終了時に、周期的に、または、透析治療の殆どもしくは全ての間に選択的には約10分毎から約20分毎に測定される。生体インピーダンスは、選択的には身体断片を非圧縮として、または好適には前記圧力カフを膨張して身体断片を圧縮して測定される。電流の注入および測定は、前記圧力カフが実質的に完全に膨張されまたは実質的に収縮された時点に対応すべく連携調整される。
【0043】
抵抗率を測定すべく、前記注入電極を通して身体断片に電流が注入されると共に、身体断片を通して伝達された電流は前記測定電極により受信されて身体断片の抵抗率の算出のために前記BIA測定ユニットに送信され、導出されたデータは選択的に前記マイクロプロセッサ・システムに送信されて該システムは本明細書中に開示された方法に従う。
【0044】
正常な抵抗率値の範囲を求めるべく健康被検者の生体インピーダンスが、全身、好適には外肢断片、更に好適には脚部もしくは上腕断片、最も好適には大腿部断片とされ得る特定身体断片にて約15分の期間に亙り反復的に測定される。これらの値から、ドライ体重と相関する一群の正常な抵抗率値が導出される。好適には多人数の健康被検者が考察されることで、特定母集団に対する一群の正常な抵抗率値が生成される。選択的に、抵抗率値を透析患者のドライ体重に対して更に精密に相関させるべく健康母集団の部分集合における抵抗率の決定が実施され得る。たとえば脂肪質量は、主として皮膚の導電性もしくは脂肪の無い質量の導電性と脂肪の量との間における関連の故に、生体電気インピーダンス分析による身体流体の体積の測定値に影響する重要な要因であることから、BMI、性別もしくは年齢に依る生体インピーダンス値の層化が選択的に行われ得る。
【0045】
患者の水和状態を決定すべく、透析患者の身体断片の抵抗率は任意の特定の時点において、健康被検者における同等の身体断片の抵抗率と比較される。透析患者の身体断片の抵抗率が正常被検者における抵抗率と実質的に等しい場合、透析患者は実質的にドライ体重であると決定されると共に、患者の体重が好適に測定される。引き続き、患者の実際の体重とドライ体重との間の差であるΔWを決定することで患者の水和状態を決定すべく、異なる時点で測定された患者の体重が、患者が略々ドライ体重である時点で測定された体重と比較され得る。ΔWを用い、ドライ体重が透析後に達成される如く患者の透析プロトコルが改変され得る。限定を企図するのでは無く、たとえば抵抗率値を健康被検者のそれと比較することで患者がXkgの質量にてドライ体重であると決定され、且つ、次の透析治療の時点においてその患者の質量がYkgであってY>Xならば、ΔW=Y−Xであり、これはドライ体重を達成すべく透析により除去されるべき過剰流体の量を反映している。好適には、生体インピーダンス分析によるドライ体重の反復的決定が周期的に実施されることで、特定患者のドライ体重を決定する上で更なる高精度が提供される。
【0046】
身体断片の生体インピーダンスは、心臓により圧送される血液が心拍毎に身体断片に出入りするときに変化することは公知である。頻繁もしくは連続的な電流注入および断片的生体インピーダンス測定によれば、脈拍を反映する波形が導出され得る。この情報に基づき本発明はBIAによる血液透析に先立ち、その間にもしくはその後に、次式に従い患者の心拍数を決定かつ監視する手段を提供する:
HR=60/(Ti+1−Ti)
式中、HRは毎分当たりの拍動で表された心拍数であり;且つ、図7に示された如くTi+1−Tiは連続的である任意の2個の心拍により誘起されたインピーダンス波のピークTiおよびTi+1間の時間間隔である。
【0047】
本発明の別実施例においてBIAは選択的に、透析に先立ち、その間にもしくはそれに引き続き、限定的なものとしてで無く健康被検者および透析患者を含む個々人における心拍出量を決定すべく用いられる。COの評価は、血管の分布においては身体の両側に関して高度の対称性が在るという仮定と、脈拍毎の全血液容量(心拍血液量)は生体インピーダンスを同時に用いる(好適には上腕および同一側脚部(すなわち身体の同一側)から心拍血液量を測定する)ことで上腕(SVarm)および脚部(SVleg)の断片において測定され得るという事実とに基づいている。
【0048】
心拍出量を算出すべく用いられるのは次式である:
CO=2×HR(k3×SVarm+k4×SVleg)(L/分)
式中、SVarmおよびSVlegは夫々、上腕および脚部の心拍血液量であり;SVarmおよびSVlegは次式を用いて算出される:
SVarm=ΔVA/NAおよびSVleg=ΔVL/NL
式中、ΔVAおよびΔVLは夫々、(図8において断片点Aとして示されると共に、この時間の間においては実質的に全ての血液容量が外肢断片から搾り出されるという)最大カフ圧力の時点と、(図8において点Bとして示されると共に、この時間の間においては心拍血液量の分だけ血液容量が補充されるという)圧力カフが収縮された時点との間における上腕の血液容量の変化および脚部における血液容量の変化である。NAおよびNLは夫々、ピーク点(A)から基線(B)に亙るインピーダンスの変化の間における脈拍の個数である。
【0049】
ΔVAおよびΔVLに対する値は以下の如く算出される:
ΔVA=−ρbL2ΔZA/ZA2、且つ、ΔVL=−ρbL2ΔZL/ZL2 式2
式中、ρbは血液の抵抗率であり、Lは各電極間における身体もしくは外肢断片の長さであり、且つ、ZAおよびZLは夫々インピーダンス値である。ΔVAおよびΔVLの計算は、1998年、ニューヨークのWileyによる“医療器具応用および設計(Medical Instrumentation Application and Design)”、第3版におけるJ.G.Webstarの方法に従い実施されるが、その全ては言及したことにより本明細書中に援用される。
【0050】
係数k3およびk4は夫々、個々人に対してΔVAおよびΔVLを較正する係数である。この較正は、抵抗率が測定されるべき上腕断片の遠位となる静脈内に約5ml乃至約150mlを注入する一方で上腕断片において抵抗率が連続的に測定されることで実施される。体積増分(ΔV)の波が前記断片を通過するとき、注入された体積に関する抵抗の変化(ΔR)が在る。ΔV/ΔR間の関係を用い、k3およびk4が較正される。
【0051】
前記較正プロセスは、オームに関する抵抗変化が既知の体積変化に如何に関連付けられるか(ΔV/ΔR)に関する情報を提供する。定義により、kc=ΔV/ΔRを較正係数と定義し、この場合にΔVは注入塩水の体積(ml)であり且つΔRは較正中の断片の抵抗の変化である。故にk3は以下の如き式により定義される:
k3=kc×ΔZA/(NA×VA)
式中、ΔZAは上腕のインピーダンスの変化であり、VAは設定により計算された体積であり、且つ、NAは脈拍数である。同様に、脚部の体積の変化を較正すべく式k4=kc×ΔZL/(NL×VL)が用いられる。
【0052】
図11には、図2に開示された如くであるが付加的に心拍出量を測定し得るシステムの一実施例が示される。好適には、(不図示の)脚部断片および(不図示の)同一側の上腕断片に取付けられ得る2つの圧力カフ3および3′に組み込まれた2組の電極9および10ならびに9′および10′が含まれるが、両方の組の電極は該電極の各組を迅速に切換え得るデジタル・スィッチに対して配線11および11′を介して接続されることから、実質的に同時に脚部断片もしくは上腕断片のいずれからも測定値が獲得され得る。デジタル・スィッチ30は好適には、少なくとも約200Hz、更に好適には1kHzより大きなサンプリング周波数を達成する機能を有する。選択的に、必要なときにサンプル周波数が変更され得る如くコンピュータ31から前記デジタル・スィッチに対して制御信号を送信する手段が在る。
【0053】
以下においては、本発明の一連の実例が列挙される。本明細書中に包含される各実例は本発明の有効範囲を例証することが企図されるが、本発明の有効範囲を制限することは企図されない。
【0054】
実例1
20人の健康被検者(表1)および13人の血液透析患者(表2)が考察され、後者は血液透析の最中である。表1および表2には、それらの平均の年齢、体重および肥満指数(BMI)が示される。データは、平均値±SDとして表される。
【表1】
【表2】
【0055】
実例2
全てが身体の左側とされた6個の電極を用いて血液透析の間において10分毎に連続的に断片的生体インピーダンスが測定された。電流を注入するために、一方は手の上かつもう一方は脚部上とされた2個の電極が用いられた。測定電極は、手首、肩、臀部および踝(くるぶし)に載置された。抵抗率は、手首−肩断片(Varm)、肩−臀部断片(Vtrunk)および踝−臀部断片(Vleg)で測定された。収縮期血圧(SBP)、相対血液容量すなわち赤血球容積率(RBV)および限外濾過率(UFR)も測定された。この様にして、脚部、上腕および体幹における血液容量および断片的細胞外体積(ECV)が算出された。結果は、図3に示される。X軸は分単位の時間であり、Y軸は血液透析の開始時における特定パラメータの値を100%に等しいものとした値の相対変化である。連続的な限外濾過の後、脚部のECVにおける変化は勾配が略々水平すなわちゼロに接近する如く小さくなり、このことは、限外濾過に利用可能な流体が殆ど無くてドライ体重が達成されたことを表す。ECVの体幹、脚部および上腕の曲線を比較すると、ドライ体重分析に対しては脚部が好適な身体断片であることが理解され得る。
【0056】
実例3
血液透析治療の開始時および完了時において圧力カフを膨張して且つ膨張せずに外肢断片の抵抗および抵抗率が測定されると共に、ΔWが算出された。表3は一連の患者において血液透析の終了時にΔWが≠0であったことを示すことで、これらの患者は血液透析の終了時に臨床的ドライ体重でなかったことを表している。
【表3】
【0057】
確認すると(図3)、HDの終了時においてρ0およびρpともに、健康被検者におけるよりも患者の方が低くまたは高い。これは、殆どの患者が過剰水和される一方で(すなわち過剰流体が除去されずに)一定人数の患者は前記治療により脱水されて通常の流体体積よりも少ない流体体積を有していたことを表す。本発明の目的は、治療後に全ての患者を実質的に健康被検者と同一範囲とすることに在る(抵抗率は間質体積に反比例することを銘記されたい)。図4はΔWとρpとの間の高い相関を示すが、このことは、ρpが患者の断片的水和の分析に用いられ得るが故に該技術によりドライ体重が予測され得ることを表している。
【0058】
実例4
図5は、10人の男性患者における血液透析の終了時における抵抗率および血圧の臨床的相関を示している。図4は、これらの患者における血液透析の終了時の抵抗率と身体水和量との間の臨床的相関を示している。抵抗率に対する正常範囲は実線として示される。これらの結果は、治療の終了時において当該技術により表される如く血液透析患者が正しいドライ体重に無かったことを例証している。殆どは過剰水和であったが、記号○で表される3人は水和不足であった。前記式1を用い、健康被検者のρ0およびρpならびにBMIに従い個々のドライ体重が算出された。図9には、健康被検者と比較した補正後における患者のドライ体重、および、未補正のドライ体重が示される。
【0059】
本出願を通し、種々の論文および特許が参照された。これらの公表物の全ての開示内容は言及したことにより全体的に本明細書中に援用される。本発明は本発明の精神もしくは本質的属性から逸脱せずに他の形態で具現され得ることから、本発明の有効範囲を表すものとしては前述の詳細では無く各請求項を参照されたい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの連続する生体インピーダンス波ピーク間の時間間隔を決定する段階と、
前記時間間隔の逆数に60を乗算して心拍数を求める段階と、
を備えて成る、血液透析患者の心拍数を監視する方法。
【請求項2】
上腕断片における心拍血液量を生体電気インピーダンス分析により測定する段階と、
同一側の脚部断片における心拍血液量を生体電気インピーダンス分析により実質的に同時に測定する段階と、
前記上腕断片における心拍血液量および前記脚部断片における心拍血液量を合計する段階と、
前記合計を心拍数の2倍に乗算して心拍出量を求める段階と、
を備えて成る、心拍出量を必要とする患者の心拍出量を算出する方法。
【請求項3】
前記上腕断片の心拍血液量は、前記上腕断片に対して外部最大圧力を付与し、前記最大圧力の時点と外部圧力が付与されない時点との間における前記上腕断片の血液容量の変化分を決定すると共に該変化分を前記2つの時点間における心拍の個数で除算することで算出され、且つ、
前記脚部の心拍血液量は、前記脚部断片に対して外部最大圧力を付与し、前記最大圧力の時点と外部圧力が付与されない時点との間における前記脚部断片の血液容量の変化分を決定すると共に該変化分を前記2つの時点間における心拍の個数で除算することで算出される、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
血液透析機と電気通信する生体インピーダンス分析用測定ユニットと、
前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に身体断片に取付可能な電気出力手段であって、前記身体断片に電流を印加し得る電気出力手段と、
前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に身体断片に取付可能な電気入力手段であって、前記身体断片を通過して伝達された電流を受信して該電流を前記生体インピーダンス分析用測定ユニットに送信し得る電気入力手段と、を備え、
前記生体インピーダンス分析用測定ユニットは前記身体断片を通して伝達された電流に基づき身体断片抵抗率を決定し、且つ、
前記生体インピーダンス分析用測定ユニットは前記身体断片抵抗率に応じて前記血液透析機に対してフィードバックを提供する、
血液透析機を制御するデバイス。
【請求項5】
前記身体断片に圧力を付与すると共に前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信する手段を更に含む、請求項4記載のデバイス。
【請求項6】
前記圧力付与手段は前記身体断片を囲繞し得る圧力カフを含む、請求項5記載のデバイス。
【請求項7】
前記電気出力手段は少なくとも2個の注入電極を含み、前記電気入力手段は少なくとも2個の測定電極を含み、且つ、
前記注入電極および測定電極は前記圧力カフに固定される、
請求項6記載のデバイス。
【請求項8】
前記圧力カフは、両端部を備えた少なくとも一本の導電帯域と、該導電帯域の前記各端部の一方の近傍に位置された少なくとも一枚の導電プレートとを更に含み、
前記導電帯域は実質的に前記圧力カフの丈に沿い延在し、
前記導電プレートは前記導電帯域の丈に沿う所定点にて該導電帯域に電気的に接触すべく配置され、
前記導電プレートと前記導電帯域の前記接触点との間の距離は実質的に、前記身体断片の円周に等しく、且つ、
前記生体インピーダンス測定ユニットは、前記プレートの近傍における前記帯域の端部と該帯域の丈に沿う前記プレートの接触点との間の距離に基づき身体断片円周を電気的に決定し得る、
請求項7記載のデバイス。
【請求項9】
生体インピーダンス測定ユニットと、
前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に上腕断片に取付可能な第1電気出力手段であって、前記上腕断片に電流を印加し得る第1電気出力手段と、
前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に脚部断片に取付可能な第2電気出力手段であって、前記脚部断片に電流を印加し得る第2電気出力手段と、
前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に上腕断片に取付可能な第1電気入力手段であって、前記上腕断片を通過して伝達された電流を受信して該電流を前記生体インピーダンス分析用測定ユニットに送信し得る第1電気入力手段と、
前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に脚部断片に取付可能な第2電気入力手段であって、前記脚部断片を通過して伝達された電流を受信して該電流を前記生体インピーダンス分析用測定ユニットに送信し得る第2電気入力手段と、
前記上腕断片に最大圧力を、身体断片に圧力を付与すると共に前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信する第1圧力付与手段と、
前記上腕断片に最大圧力を付与すると共に前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信する第2圧力付与手段と、
前記生体インピーダンス分析用測定を、前記第1電気入力および出力手段と前記第2電気入力および出力手段とに対して選択的に且つ電気的に接続する手段と、を備え、
前記生体インピーダンス分析用測定ユニットは生体電気インピーダンス分析により前記上腕断片および脚部断片における心拍血液量を選択的に測定し得る、
生体インピーダンス測定により心拍出量を算出するデバイス。
【請求項1】
2つの連続する生体インピーダンス波ピーク間の時間間隔を決定する段階と、
前記時間間隔の逆数に60を乗算して心拍数を求める段階と、
を備えて成る、血液透析患者の心拍数を監視する方法。
【請求項2】
上腕断片における心拍血液量を生体電気インピーダンス分析により測定する段階と、
同一側の脚部断片における心拍血液量を生体電気インピーダンス分析により実質的に同時に測定する段階と、
前記上腕断片における心拍血液量および前記脚部断片における心拍血液量を合計する段階と、
前記合計を心拍数の2倍に乗算して心拍出量を求める段階と、
を備えて成る、心拍出量を必要とする患者の心拍出量を算出する方法。
【請求項3】
前記上腕断片の心拍血液量は、前記上腕断片に対して外部最大圧力を付与し、前記最大圧力の時点と外部圧力が付与されない時点との間における前記上腕断片の血液容量の変化分を決定すると共に該変化分を前記2つの時点間における心拍の個数で除算することで算出され、且つ、
前記脚部の心拍血液量は、前記脚部断片に対して外部最大圧力を付与し、前記最大圧力の時点と外部圧力が付与されない時点との間における前記脚部断片の血液容量の変化分を決定すると共に該変化分を前記2つの時点間における心拍の個数で除算することで算出される、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
血液透析機と電気通信する生体インピーダンス分析用測定ユニットと、
前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に身体断片に取付可能な電気出力手段であって、前記身体断片に電流を印加し得る電気出力手段と、
前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に身体断片に取付可能な電気入力手段であって、前記身体断片を通過して伝達された電流を受信して該電流を前記生体インピーダンス分析用測定ユニットに送信し得る電気入力手段と、を備え、
前記生体インピーダンス分析用測定ユニットは前記身体断片を通して伝達された電流に基づき身体断片抵抗率を決定し、且つ、
前記生体インピーダンス分析用測定ユニットは前記身体断片抵抗率に応じて前記血液透析機に対してフィードバックを提供する、
血液透析機を制御するデバイス。
【請求項5】
前記身体断片に圧力を付与すると共に前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信する手段を更に含む、請求項4記載のデバイス。
【請求項6】
前記圧力付与手段は前記身体断片を囲繞し得る圧力カフを含む、請求項5記載のデバイス。
【請求項7】
前記電気出力手段は少なくとも2個の注入電極を含み、前記電気入力手段は少なくとも2個の測定電極を含み、且つ、
前記注入電極および測定電極は前記圧力カフに固定される、
請求項6記載のデバイス。
【請求項8】
前記圧力カフは、両端部を備えた少なくとも一本の導電帯域と、該導電帯域の前記各端部の一方の近傍に位置された少なくとも一枚の導電プレートとを更に含み、
前記導電帯域は実質的に前記圧力カフの丈に沿い延在し、
前記導電プレートは前記導電帯域の丈に沿う所定点にて該導電帯域に電気的に接触すべく配置され、
前記導電プレートと前記導電帯域の前記接触点との間の距離は実質的に、前記身体断片の円周に等しく、且つ、
前記生体インピーダンス測定ユニットは、前記プレートの近傍における前記帯域の端部と該帯域の丈に沿う前記プレートの接触点との間の距離に基づき身体断片円周を電気的に決定し得る、
請求項7記載のデバイス。
【請求項9】
生体インピーダンス測定ユニットと、
前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に上腕断片に取付可能な第1電気出力手段であって、前記上腕断片に電流を印加し得る第1電気出力手段と、
前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に脚部断片に取付可能な第2電気出力手段であって、前記脚部断片に電流を印加し得る第2電気出力手段と、
前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に上腕断片に取付可能な第1電気入力手段であって、前記上腕断片を通過して伝達された電流を受信して該電流を前記生体インピーダンス分析用測定ユニットに送信し得る第1電気入力手段と、
前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信すると共に脚部断片に取付可能な第2電気入力手段であって、前記脚部断片を通過して伝達された電流を受信して該電流を前記生体インピーダンス分析用測定ユニットに送信し得る第2電気入力手段と、
前記上腕断片に最大圧力を、身体断片に圧力を付与すると共に前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信する第1圧力付与手段と、
前記上腕断片に最大圧力を付与すると共に前記生体インピーダンス分析用測定ユニットと電気通信する第2圧力付与手段と、
前記生体インピーダンス分析用測定を、前記第1電気入力および出力手段と前記第2電気入力および出力手段とに対して選択的に且つ電気的に接続する手段と、を備え、
前記生体インピーダンス分析用測定ユニットは生体電気インピーダンス分析により前記上腕断片および脚部断片における心拍血液量を選択的に測定し得る、
生体インピーダンス測定により心拍出量を算出するデバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−96048(P2012−96048A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−278406(P2011−278406)
【出願日】平成23年12月20日(2011.12.20)
【分割の表示】特願2002−518843(P2002−518843)の分割
【原出願日】平成13年8月13日(2001.8.13)
【出願人】(505324858)フレゼニウス メディカル ケア ホールディングス インコーポレーテッド (30)
【氏名又は名称原語表記】Fresenius Medical Care Holdings,Inc.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月20日(2011.12.20)
【分割の表示】特願2002−518843(P2002−518843)の分割
【原出願日】平成13年8月13日(2001.8.13)
【出願人】(505324858)フレゼニウス メディカル ケア ホールディングス インコーポレーテッド (30)
【氏名又は名称原語表記】Fresenius Medical Care Holdings,Inc.
【Fターム(参考)】
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