透析患者用輸液剤
【課題】透析患者において、その栄養状態の改善による貧血状態を改善、その結果エリスロポエチンの使用量を削減し、更には、血清のリン濃度の調整をして血清リン濃度を所定の範囲内に調整こと、並びに蛋白異化状態を抑制すること。
【解決手段】少なくとも必須アミノ酸を含有することからなるアミノ酸輸液からなる剤であり、アミノ酸組成が少なくともL−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、グリシン及びL−システインからなり、必須アミノ酸:非必須アミノ酸の比が2.5以上であることを特徴とする透析患者に透析用輸液剤である。
【解決手段】少なくとも必須アミノ酸を含有することからなるアミノ酸輸液からなる剤であり、アミノ酸組成が少なくともL−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、グリシン及びL−システインからなり、必須アミノ酸:非必須アミノ酸の比が2.5以上であることを特徴とする透析患者に透析用輸液剤である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析患者用の輸液剤に係わり、特に、血液透析、血液透析濾過などの血液透析療法を受けている透析患者の貧血状態を改善する貧血治療剤、並びに当該貧血の治療に伴い慢性腎不全患者が投与する造血ホルモンであるエリスロポエチン(EPO)の使用量を削減し、貧血状態を改善する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性腎不全患者が受ける透析治療における血液浄化療法の一つとして、血液透析(Hemodialysis:HD)がある。透析患者は、血液透析(HD)の施術に伴い、老廃物の透析除去を受けるばかりでなく、生体にとって有用な成分、例えばアミノ酸も老廃物と一緒に漏出させてしまっている。また、近年の透析技術では、透析期間の長期化に伴い顕在化してきた合併症の一つである「透析アミロイドーシス」の原因物質であるβ2−ミクログロブリン(分子量11800)という中分子タンパク質の除去を目的としたハイパフォーマンス膜も利用されているため、分子量が数万程度のアルブミンも一緒に漏出してしまい、その結果、医原性に低栄養状態を引き起こすこととなる。
【0003】
このようなアルブミンやアミノ酸の漏出は、透析開始と共に進行する。したがって、これに伴い筋タンパク質の崩壊、いわゆる蛋白異化の状態となる。このような状態は血液透析(HD)よりも、積極的な溶質除去を目的とした血液濾過透析(Hemodiafiltration:HDF)でより顕著に現れている。
この低栄養状態は、患者の生命予後を脅かす深刻な状態であり、透析患者の栄養状態の改善は極めて重要な課題である。
【0004】
ところで、腎不全になると、ごく一部の例外を除いて貧血を合併し、この腎不全が原因の貧血を腎性貧血と呼んでいる。ひどい貧血では、僅かな歩行でもすぐ息切れを引き起こし、ADL(Activities of daily living:日常生活活動)の低下を招く一方、心不全の誘因になるなど、二次的な合併症を引き起こす可能性もある。したがって、この腎性貧血は、透析患者にとっても切実な問題であった。
【0005】
透析患者における貧血の最大の原因は、造血ホルモンであるエリスロポエチン(EPO)の産生障害である。したがって、現在透析を受けている患者の殆どは、EPO製剤が投与されており、これにより貧血の改善が認められているが、一般的に栄養状態が不良の透析患者ではEPOの反応性が悪く、通常のEPO投与量では充分な貧血改善が認められず、栄養状態の不良は大量のEPOの投与を必要とする一因となっている。
【0006】
最近、透析患者に対するEPOの投与による貧血治療に関連して、貧血状態の改善に伴い、栄養状態も改善されることが報告されており(例えば、非特許文献1〜6)、EPO投与による貧血改善と栄養状態の改善は、相互に関連性があることが示唆されている。
【0007】
上記したように透析療法施行時には、血液中から急激にアルブミンやアミノ酸が除去される。このような劇的な変化は、通常起こるものではなく、透析患者は、透析治療中に厳しい低栄養状態に晒されることとなる。また、腎不全患者が呈する代謝性アシドーシスや腎性貧血、炎症等はアミノ酸・蛋白代謝の異化要因となり、栄養不良につながり得る。
【0008】
このような血液中の大きな変化を防ぐために、透析療法施行中にアミノ酸を持続注入すること、或いは透析により著しく欠乏したアミノ酸を速やかに補充することの重要性が改めて考えられている。すなわち、透析治療を受けている患者においては、透析に伴い、非透析患者が経験することのないアミノ酸欠乏に晒されており、このアミノ酸欠乏を補正することは極めて重要なことである。このアミノ酸欠乏の補正により、透析施行中の低栄養状態、蛋白異化状態を防止し、或いは軽減することができる。
【0009】
その点からみれば、透析患者のアミノ酸欠乏、特に必須アミノ酸を補正することによる栄養状態を改善させることは、取りも直さず透析患者の貧血状態を改善することとなる。そのうえ、かかる貧血状態の改善は、透析患者が受けるEPOの投与量の削減につながるものと考えられる。
【0010】
これまでに腎不全患者に対するアミノ酸含有製剤が種々登場してきているが、これらアミノ酸製剤が、上記した透析患者における栄養状態の低下に伴う貧血を改善し、その結果、EPOの投与量の削減をし得ることについては、一切言及されているものではない。
【0011】
また、一般的に血清リン濃度が5.0mg/dL以上となる場合を高リン血症というが、その原因としては、(i)細胞からのリン遊出の増加、(ii)体外から摂取したリン負荷の増加、さらには(iii)腎からのリン排泄の減少に分けられている。また、腎不全などの腎機能に障害がある場合、例えばGFR(Glomerular Filtration Rate;糸球体濾過量)が正常の30%以下になると、血清リン濃度が増加してくる。
したがって、腎不全状態では血液中のリン濃度が高値となり、リンを含有する食材、例えば、肉類や牛乳などの接種も制限されるため、アルブミンやアミノ酸の低下がより一層生じ、さらに蛋白異化状態が顕著となる。
【0012】
リンの上昇は、血液中でリンとカルシウムの結合に伴う異所性石灰化を引き起こし、これが動脈硬化をもたらす重要な一因となっている。
現在、リンの上昇を抑制するためには、食事制限に加え、リン吸着剤(例えば、塩酸セベラマーや沈降炭酸カルシウム(非特許文献7)など)の使用が行われている。しかしながら、筋肉崩壊や骨形成不全の状態においては、本来利用されるべきリンが適正に利用されていない状態に陥っているものであり、血液中のリンを下げるのは対症療法的なやむを得ない治療法であると位置づけられ、リン値を下げるということが目的ではなく、適切に利用できる状態に改善すること、すなわち血清リン濃度を、常時適正値に調整することが本来望まれている治療といえる。
【0013】
透析中の腎不全患者における高リン血症治療のためのリン吸着剤は、血清リン濃度として6.0mg/dL未満になるよう投与するのが目標であり、血清リン濃度の高低により適宜投与量が増減される。しかしながら、上記したように、リン吸着剤による血清リン濃度の調整は、あくまで対症療法的なやむを得ない治療法でしかない。
【0014】
ところで、上記した如く、透析療法施行時には、血液中から急激にアルブミンやアミノ酸が除去されることから、透析患者は、透析治療中に厳しい蛋白異化状態に晒されることとなり、この状態を防ぐために、透析施行中にアミノ酸を連続注入すること、或いは透析により著しく欠乏したアミノ酸を速やかに補充し、透析に伴うアミノ酸欠乏の補正が行われている。このアミノ酸補充は、一方で、透析施行中の低栄養状態、或いは蛋白異化状態を防止、軽減し、その結果、筋崩壊に伴うリンの血清への漏出が抑制されることが期待される。すなわち、血清のリン濃度を調整し得ることが期待される。
【0015】
これまで、腎不全患者に対するアミノ酸含有製剤が種々登場してきているが、これらアミノ酸製剤が、上記した透析患者における血清のリン濃度を適正範囲に調整し得ることについては、一切言及されているものではない。
【0016】
【非特許文献1】Gunnell J., et al.:Am. J. Kid. Dis., 33, 63-71 (1999)
【非特許文献2】Balaskaa E. V., et al.:Miner Electrolyte Metab., 25, 324-332 (1999)
【非特許文献3】Navarro J.F., et al.:Am. J. Clin. Nutr., 71, 765-773 (2000)
【非特許文献4】Serna-Thome M.G., et al.:Curr. Opinion Clin. Nutr. Metab. Care 5, 293-296 (2002)
【非特許文献5】Pupim L.B., et al.:J. Clin. Invest., 110, 483-492 (2002)
【非特許文献6】Pupim L.B., et al.:J. Am. Soc. Nephrol., 15, 1920-1926 (2004)
【非特許文献7】第14改正日本薬局方「沈降炭酸カルシウム」の項
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記現状を鑑み、血液透析療法を受けている慢性腎不全患者(透析患者)において、その栄養状態を改善する貧血治療剤を提供することを課題とする。
また本発明は、透析患者の貧血状態を改善すること、並びにその結果透析療法で受けるエリスロポエチンの使用量を削減する方法を提供することを課題とする。
【0018】
さらに本発明は、血液透析療法を受けている慢性腎不全患者において、その栄養状態を改善することにより、血清中のリン濃度の調整をして、血清リン濃度を所定の範囲内に調整する、血清リン濃度調整剤を提供することを課題とする。
【0019】
また本発明は、血液透析療法を受けている慢性腎不全患者(透析患者)において、蛋白異化状態の抑制剤を提供することを課題とする。
特に、透析患者における筋崩壊、すなわち蛋白異化を、血漿中のタウリン濃度を指標にして行う透析患者の蛋白異化を抑制する方法を提供することを課題とする。
【0020】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を行った結果、血液透析療法施行中に、漏出するアミノ酸を体内に補充するように調製、配合されているアミノ酸補充液を持続的に投与することで、貧血状態が改善され、その結果、エリスロポエチンの使用量を効果的に削減し得ることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0021】
また本発明者は、血液透析療法施行中に、漏出するアミノ酸を体内に補充するように調製、配合されているアミノ酸補充液を持続的に投与することで、透析患者の栄養状態が改善され、その結果、透析患者の血清リン濃度を所定の範囲内に調整し得ることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0022】
更に本発明者は、タウリンの濃度に着目した結果、筋肉中のタウリン濃度は極めて高い一方、血中濃度は低いことから、筋肉/血漿の濃度比は300以上にもなっているが、筋崩壊、すなわち蛋白異化が進行し、血液中にタウリンが漏出してくると血漿中濃度が高くなることを確認し、このタウリンの濃度を指標に、漏出するアミノ酸を体内に補充するように調製、配合されているアミノ酸補充液を持続的に投与することで、透析患者の蛋白異化状態が改善されることを確認し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0023】
すなわち、本発明の第一の態様は、透析患者における貧血改善剤であり、基本的には、請求項1に記載の発明は、少なくとも必須アミノ酸を含有するアミノ酸輸液からなる透析患者における貧血改善剤である。
【0024】
より具体的な請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のアミノ酸輸液において、アミノ酸組成が少なくともL−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、グリシン及びL−システインからなり、必須アミノ酸:非必須アミノ酸の比が2.5以上である請求項1に記載の透析患者における貧血改善剤である。
【0025】
最も具体的な請求項3に記載の本発明は、請求項1に記載のアミノ酸輸液が下記の組成のアミノ酸を含有するアミノ酸輸液である、透析患者における貧血改善剤である。
L−イソロイシン 5.0〜10.0g/L
L−ロイシン 8.0〜12.0g/L
L−リジン(酢酸塩として) 4.5〜10.5g/L
L−メチオニン 3.5〜 6.5g/L
L−フェニルアラニン 3.5〜 6.5g/L
L−トレオニン 1.8〜 3.3g/L
L−トリプトファン 1.8〜 3.3g/L
L−バリン 5.0〜10.0g/L
L−アラニン 1.5〜 4.5g/L
L−アルギニン 1.5〜 4.5g/L
L−アスパラギン酸 0.2〜 0.4g/L
L−グルタミン酸 0.2〜 0.4g/L
L−ヒスチジン 1.8〜 3.3g/L
L−プロリン 1.0〜 3.0g/L
L−セリン 0.5〜 1.5g/L
L−チロシン 0.3〜 0.7g/L
グリシン 1.2〜 1.7g/L
L−システイン 0.2〜 0.4g/L
【0026】
また本発明は、かかる第一の態様において、好ましくは、透析回路の静脈側より、ポンプを用いて持続的に投与するものである透析患者における貧血改善剤である。
【0027】
また、本発明は、第二の態様として、透析患者におけるエリスロポエチン使用量低減剤であり、その基本的な請求項5に記載の発明は、少なくとも必須アミノ酸を含有するアミノ酸輸液からなることを特徴とする透析患者におけるエリスロポエチン使用量低減剤である。
【0028】
第二の態様における、より具体的な請求項6に記載の本発明は、請求項5に記載のアミノ酸輸液において、アミノ酸組成が少なくとも請求項2に記載のものであることを特徴とする透析患者におけるエリスロポエチン使用量低減剤である。
【0029】
更に、第二の態様における、最も具体的な請求項6に記載の本発明は、請求項5に記載のアミノ酸輸液が請求項3に記載の組成のアミノ酸を含有するアミノ酸輸液である透析患者におけるエリスロポエチン使用量低減剤である。
【0030】
また、本発明は、第三の態様として、透析患者における血清リン濃度調整剤であり、その基本的な請求項9に記載の発明は、少なくとも必須アミノ酸を含有するアミノ酸輸液からなることを特徴とする透析患者における血清リン濃度調整剤である。
【0031】
第三の態様における、より具体的な請求項10に記載の本発明は、請求項9に記載のアミノ酸輸液において、アミノ酸組成が少なくとも請求項2に記載のものであることを特徴とする透析患者における血清リン濃度調整剤である。
【0032】
更に、第三の態様における、最も具体的な請求項11に記載の本発明は、請求項9に記載のアミノ酸輸液が請求項3に記載の組成のアミノ酸を含有するアミノ酸輸液である透析患者における血清リン濃度調整剤である。
【0033】
また本発明は、透析患者における血清リン濃度の調整が、血清リン濃度として3.5〜6.0mg/dLの範囲内に調整されるものである上記の血清リン濃度調整剤である。
【0034】
さらに本発明は、上記した血清リン濃度調整剤を腎不全患者に投与することからなる、血清リン濃度として3.5〜6.0mg/dLの範囲内に調整する方法でもある。
【0035】
更にまた、本発明は、第四の態様として、透析患者における蛋白異化抑制剤であり、その基本的な請求項13に記載の発明は、少なくとも必須アミノ酸輸液からなることを特徴とする透析患者における蛋白異化抑制剤である。
【0036】
この第四の態様における、最も具体的な請求項14に記載の発明は、請求項13に記載のアミノ酸輸液において、アミノ酸組成が少なくとも請求項2に記載のものであることを特徴とする透析患者における蛋白異化抑制剤である。
【0037】
更に、第四の態様における、最も具体的な請求項15に記載の本発明は、請求項13に記載のアミノ酸輸液が請求項3に記載の組成のアミノ酸を含有するアミノ酸輸液である透析患者における蛋白異化抑制剤である。
【0038】
さらに本発明は、別の態様として、請求項17に記載の発明は、血漿中のタウリン濃度を指標とする透析患者における蛋白異化状態を抑制する方法であり、また、請求項18に記載の発明は、蛋白異化状態の測定方法である。
【0039】
また本発明は、更に別の態様としてアミノ酸輸液の特異的な投与方法に関するものであり、具体的な請求項19に記載の発明は、透析時における透析患者へのアミノ酸輸液の投与方法において、透析開始時から終了時の間にかけて、透析回路の静脈側より加圧して投与するこことを特徴とするアミノ酸輸液の投与方法である。
【0040】
したがって、本発明はまた、本発明の特異的なアミノ酸輸液を、透析開始時から終了時の間にかけて、透析回路の静脈側より加圧して持続投与することによる、透析患者の貧血を改善し、またエリスロポエチンの使用量低減し、更には蛋白異化を抑制する方法でもあり、より具体的には、少なくとも3ヶ月間にわたり、透析開始時から終了時の間にかけて、透析回路の静脈側より、加圧して持続投与することを特徴とする当該方法である。
【発明の効果】
【0041】
第一の態様、更には第二の態様の本発明により、血液透析療法を受ける慢性腎不全患者における不足アミノ酸が補充、是正され、且つ、体蛋白の分解、すなわち蛋白異化が抑制され、栄養状態を維持・改善し、その結果、貧血状態が改善されることなる。
事実、本発明により透析患者の血中ヘモグロビン(Hb)濃度は10〜11g/dL、ヘマトクリット(Ht)を30〜33%程度に維持することができた。
透析患者が受けるエリスロポエチンの投与目安が、血中ヘモグロビン(Hb)濃度は10g/dL以下、ヘマトクリット(Ht)を30%未満の貧血状態とされている点を考慮すると、効果的に貧血状態を改善しているものといえる。
【0042】
この貧血状態の改善は、透析療法で受けるエリスロポエチンの投与量を削減することとなる。このことは、血液透析療法を受ける慢性腎不全患者が負担する薬剤費の低減につながり、特に、本邦における保険制度では、薬剤費を含めた包括化した透析技術料が導入されていることから、より良い透析施術を受けることができる利点となる。
【0043】
また、エリスロポエチンの投与量が削減されることは、副作用発現の頻度を低減させることとなり、患者にとってより好ましい透析治療を受けることができることとなる。
【0044】
また、第三の態様の本発明により、血液透析療法を受ける慢性腎不全患者における不足アミノ酸を是正し、且つ、体蛋白の分解を抑制し、栄養状態を維持・改善し、その結果、血清のリン濃度の調整をして血清リン濃度を所定の範囲内に調整することができるものであり、特に高値の血清リン濃度を有する慢性腎不全患者の血清リン濃度を所定の範囲内に低下させると共に、すでに所定値の範囲内にある血清リン濃度を有する慢性腎不全患者の血清リン濃度はそのまま維持されるという利点を有している。
【0045】
その結果、血液透析療法を受けている慢性腎不全患者について、合併症の発生リスクを回避し、その結果、患者のQOL(Quality of Life)の向上、生命予後の改善が可能となる。
【0046】
また、既存の高リン血症治療薬にあっては、例えば、沈降炭酸カルシウムでは高カルシウム血症の副作用が、また塩酸セベラマーでは便秘や腹部膨満などの消化器症状やクロル性アシドーシスの副作用があり、十分な投与量を用いることができず、血清リン濃度を目標レベルまでに下げることができない。特に、血清リン濃度が著しく高い患者では、それだけ高リン血症治療薬の投与量が多くなり、副作用発症のリスクが高くなる。その結果、服用量が不十分になる虞がある。
このような血清リン濃度が特に高い患者は、肉類など、リン含有量の高い食品摂取量が多いために生じる場合もあるが、蛋白異化、骨形成不全の場合もあると考えられ、本発明の血清リン濃度調整剤は、このような患者に対し、既存高リン血症治療薬と併用して使用することで、既存の高リン血症治療薬の不十分な効果を補う利点を有している。
【0047】
更に、第四の態様の本発明により、血液透析自体によって引き起こされる異化が、週3回、慢性的に繰り返されることにより、筋力低下、心機能低下、QOL低下が起きるが、蛋白異化を抑制することにより、長期にわたる血液透析療法を受けても、これらの低下を抑制、改善することができる。
蛋白異化、筋崩壊の指標としては、しばしば、3−メチル−ヒスチジン(3-m-His)が用いられる。3-m-Hisは筋肉中で産生するために、異化亢進状態で血液中に漏出し、最終的に気尿中に排泄される。しかし、腎機能低下により尿中排泄が障害されると、血漿中濃度が著しく上昇するため、血液透析患者において3-m-Hisを異化の指標とすることには異論がある。タウリンもまた、尿中に排泄されるアミノ酸の一つであるが、筋肉中濃度が極めて高く、血漿中濃度の400倍にも及ぶため、筋崩壊が起こると、他のアミノ酸に比して血液中に漏出してくる量が多く、結果、血漿中タウリン濃度が著明に上昇すると考えられる。
したがって、血漿中タウリン濃度、あるいは透析廃液中のタウリン量の上昇は、異化亢進を反映し、また、その低下は異化抑制に指標となると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
本発明が提供する上記の治療剤であるアミノ酸輸液においては、少なくとも必須アミノ酸であるL−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリンの8種の必須アミノ酸、及び腎不全患者においては必須となるL−ヒスチジンを含有するが、それに加えて他のアミノ酸を含有する。そのようなアミノ酸は、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、グリシン及びL−システインである。
【0049】
これらのアミノ酸は必ずしも遊離アミノ酸として用いられる必要はなく、医薬品又は飲食品で許容される塩の形態でもよく、例えば無機酸塩、有機酸塩、生体内で加水分解可能なエステル体、N−アシル誘導体などの形態で使用してもよい。また、同種あるいは異種のアミノ酸をペプチド結合させたペプチド類の形態で使用してもよい。
【0050】
本発明のアミノ酸輸液にあっては、特に必須アミノ酸と非必須アミノ酸の量の比率が2.5以上である、いわゆる必須アミノ酸リッチな状態にあることが好ましく、より好ましくは3.0以上、最も好ましくは、3.2以上である。
【0051】
含有するアミノ酸の量は、血液透析療法施行中に漏出するアミノ酸量、及び栄養補充としてそれに見合う量が好ましく、本発明の方法に使用するアミノ酸輸液にあっては、例えば、輸液として200mL用量の場合には、そこに総アミノ酸量として11g〜13g程度のアミノ酸を含有させ、そのうちの7割程度以上を必須アミノ酸として含有し、且つ、アミノ酸濃度として5.5〜6.5w/v%程度であるのが好ましい。
【0052】
なお、本発明のアミノ酸輸液には、さらに電解質成分を加えることもできる。そのような電解質成分としては、具体的には、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩素イオン、重炭酸イオン、グルコン酸イオン等である。また、乳酸、クエン酸、リンゴ酸等も含有させることができる。酢酸にあっては、近年の酢酸不耐症等の症状を鑑み、酢酸イオンフリーとすることもできる。
【0053】
本発明のアミノ酸輸液の投与法としては、血液透析療法施行時に末梢静脈内へ投与するか、或いは、高カロリー輸液法により中心静脈へ持続点滴注入する方法があるが、なかでも透析補充液と共に、透析開始時から終了時までの間、持続投与される方法が特に好ましい。
すなわち、通常の腎不全用アミノ酸輸液の投与は、透析終了の90〜60分前から終了時までの投与であるが、本発明においては、アルブミンやアミノ酸の漏出が透析の開始と共に進行する点を考慮し、透析開始時の直後から終了時の前後まで、実質的に透析施術中の全時間(通常4時間程度)に亘って、持続的に投与するのが好ましい。
【0054】
なかでも、体内に透析後の血液を戻す透析回路に、ポンプを用いて加圧的に持続的に投与することが好ましく、より具体的には、少なくとも3ヶ月間にわたり、透析治療開始時から終了時の間にかけて、特に、透析実施中の全時間に亘って、透析回路の静脈側より、輸液ポンプを用いて加圧して持続投与することが好ましい。
したがって、本発明はまた別の態様として、透析患者におけるアミノ酸輸液の特異的な投与方法を提供するものでもある。
【0055】
特に好ましい本発明の透析患者における各種治療剤であるアミノ酸輸液としては、総窒素量が8.1mg/mLであり、総遊離アミノ酸濃度が5.90w/v%であり、必須アミノ酸:非必須アミノ酸比が3.21である注射用の製剤である。
【0056】
したがって、本発明で好ましく用いられるアミノ酸輸液としては、200mL中のアミノ酸の組成としては、下記のものが好ましい。
L−イソロイシン 1.5g
L−ロイシン 2.0g
L−リジン(酢酸リジンとして) 1.4g
L−メチオニン 1.0g
L−フェニルアラニン 1.0g
L−トレオニン 0.5g
L−トリプトファン 0.5g
L−バリン 1.5g
L−アラニン 0.6g
L−アルギニン 0.6g
L−アスパラギン酸 0.05g
L−グルタミン酸 0.05g
L−ヒスチジン 0.5g
L−プロリン 0.4g
L−セリン 0.2g
L−チロシン 0.1g
グリシン 0.3g
L−システイン 0.05g
【0057】
なお、L−リジンに関しては、酢酸塩を使用しているが、酢酸フリーの観点から、塩酸塩を使用することも可能である。
【0058】
本発明のアミノ酸輸液には、上記それぞれのアミノ酸と合わせてL−カルニチンを添加することができる。添加するアミノ酸は、必ずしも遊離体として用いられる必要はなく、無機酸塩、有機酸塩などの形態で使用してもよい。L−カルニチンの濃度は0.1〜10g/Lが好ましく、更に好ましくは1〜5g/Lが良い。
【0059】
また、本発明のアミノ酸輸液には、患者の状態に応じて糖を添加しても良い。使用できる糖としては通常輸液に用いられる糖で有れば特に制限はないが、例えば還元糖として、ブドウ糖、フルクトース、マルトースが、非還元糖としてはトレハロース、キシリトール、ソルビトール、グリセリンが挙げられる。前記の各種糖のうち、栄養効果の点からはブドウ糖を配合することが好ましい。
【0060】
透析中に低血糖を起こす可能性がある、例えばインスリン製剤を使用している糖尿病性腎症を原疾患とする透析患者に対しては、人工腎臓透析用液若しくは透析用補充液の糖濃度として通常用いられる0.05〜0.2w/v%のブドウ糖を添加して使用するのが好ましい。また、補充されるアミノ酸が蛋白合成に有効に利用されるようにとの観点から、本発明のアミノ酸輸液には濃度が0.75〜3.5w/v%のブドウ糖を含んでも良い。更に、該ブドウ糖濃度が0.05〜0.2w/v%の場合、同様に補充されるアミノ酸が蛋白合成に有効に利用されるようにとの観点から、血液透析療法施行中に総窒素量1.6g当たり500Kcal以上の非蛋白熱量を摂取することが好ましい。
【0061】
また、本発明のアミノ酸輸液には、ビタミン類を添加することができる。ビタミン類としては、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンH、葉酸、パントテン酸類、ニコチン酸類等を挙げることができる。これらのビタミン類を用いることによって、栄養状態の維持・改善を早期に実現させることが可能である。
【0062】
さらに本発明のアミノ酸輸液には、微量元素も添加することができる。本発明における微量元素とは、微量ではあるが生体にとって必要不可欠とされる金属元素である。その内、特に、慢性腎不全維持透析患者において欠乏する亜鉛、銅及びセレンの無機塩及び有機塩を挙げることができる。該微量元素の補給は欠乏症の防止だけでなく蛋白合成の促進、栄養状態の維持・改善に大きく貢献することが期待される。各微量元素は、一日必要量を考慮して配合すればよい。
【0063】
本発明のアミノ酸輸液のpHは、6.6〜7.6で、その浸透圧比が約2に調整されていることが好ましい。pHを調整するには、水酸化ナトリウム、塩酸等の無機酸、酢酸、クエン酸等の有機酸、二酸化炭素等の気体を使用できる。
【0064】
本発明の透析患者における各種治療剤であるアミノ酸輸液は、容器に充填されることが好ましく、必要に応じて各成分を連通可能な隔離手段で区画された複数の室に分離充填しても良い。高pH時に不安定であるアミノ酸、例えばシステインやトリプトファンは炭酸水素ナトリウムと隔離収容される方が好ましい。また、アミノ酸を配合したことによりpHが低下し、炭酸水素ナトリウムの濃度が低下するような場合も、アミノ酸と炭酸水素ナトリウムは隔離収容される方が好ましい。
【0065】
本発明が提供する透析患者における各種改善する貧血治療剤であるアミノ酸輸液の容器の本体を構成する材料としては、可撓性、透明性に優れ、且低温保存後に落下しても破袋し難い軟質の樹脂材料が好ましい。特に、通常医療用容器に用いられているポリオレフィン類からなるものを好適に挙げることができる。ポリオレフィン類は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン等の重合応体を挙げることができる。容器本体は、前記樹脂をブロー成形、インフレーションあるいはデフレーション成形したものいずれでも使用できる。また、2枚の樹脂シートの周縁部を溶着して形成したものでも良い。
【実施例】
【0066】
次に、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
実施例1:貧血改善剤(アミノ酸輸液)の調製
下記表1に記載の配合量に従い、各成分を注射用水に溶解した。この液を無菌ろ過した後、ガラス容器に充填し、密封した後、高圧蒸気滅菌を行い、貧血改善剤(アミノ酸輸液)を調製した。
このもののpHは、6.6〜7.6の範囲内にあり、浸透圧比は約2であった。
【0068】
【表1】
【0069】
なお、本実施例1の配合処方からなるアミノ酸輸液は、本発明の第二の態様であるエリスロポエチン使用量低減剤であり、第三の態様の血清リン濃度調整剤でもあり、また第四の態様における蛋白異化抑制剤でもある。
【0070】
実施例2:貧血の改善効果/エリスロポエチン投与量の低減効果の確認
血液透析(HD)又は血液透析濾過(HDF)を施行している慢性腎不全患者18例(HD:9例、HDF:9例)を対象に、本発明の貧血改善剤を投与し、その貧血の改善の程度、およびそれに伴うエリスロポエチン投与量の低減効果を検討した。
【0071】
[方法]
実施例1の配合処方例により調製されているアミノ酸輸液「ネオアミユー(登録商標)」(200mL製剤;味の素ファルマ社製)を使用した。
投与する前の週における最初の透析日(月曜日又は火曜日)に診断及び検査、調査を実施した。その1週間後から12週間+1日(第37回の透析)にわたり「ネオアミユー」(200mL製剤)を1本、毎透析時に透析開始から終了するまでの間、体外循環路の静脈側より持続投与した。
エリスロポエチン(EPO)は、週3回行う毎透析終了時に静脈内投与し、ヘモグロビン(Hb)濃度を10〜11g/dL、ヘマトクリット(Ht)を30〜33%に維持する投与量を目標に適宜増減して投与した。
【0072】
[結果]
そのEPOの投与量の推移を図1に、ヘモグロビン(Hb)濃度及びヘマトクリット(Ht)の推移を図2及び3に示した。
図に示した結果からも判明するように、EPOの投与量(1週間当たりの投与量)は、「ネオアミユー」(200mL製剤)投与前(0W)においては6,125±3,163.7unit/週であったのに対して、本発明の製剤の投与後6週(6W)では、4,875±3,111.0unit/週と減少傾向を示し、13週(13W)では、3,375±3,557.6unit/週と有意(p<0.01:Wilcoxonの符号付き順位和検定)に減少していた。
この間、ヘモグロビン及びヘマトクリットは安定に推移した。
【0073】
以上より、本発明のアミノ酸輸液の投与は、効果的に透析患者の貧血状態を改善しており、その結果、透析患者が受けるEPOの投与量を削減していることが理解される。
【0074】
実施例3:血清リン濃度の調整効果の確認
血液透析(HD)を施行している慢性腎不全患者8例を対象に、本発明の血清リン濃度調整剤を投与し、血清リン濃度の推移を検討した。
【0075】
[方法]
実施例1の配合処方例により調製されているアミノ酸輸液「ネオアミユー」(200mL製剤;味の素ファルマ社製)を使用した。
投与する前の週における最初の透析日(月曜日又は火曜日)に診断及び検査、調査を実施した。その1週間後から12週間+1日(第37回の透析)にわたり「ネオアミユー」(200mL製剤)を1本、毎透析時に透析開始から終了するまでの間、体外循環路の静脈側より持続投与し、投与前(0W)、および13週(13W)における血清リン濃度を測定した。
【0076】
[結果]
その結果を、図4に示した。
図中の結果から判明するように、血清リン濃度は、本発明の血清リン濃度調整剤の投与前(0W)では6.48±1.752mg/dLであったが、13週(13W)では5.41±1.253mg/dLと有意(p<0.01 vs. 0W、対応のあるt検定)に低下した。
血清リン濃度の目標レンジは、3.5〜6.0mg/dLであるが、患者別にみると、目標範囲にある患者の血清リン濃度はレンジ内で推移したが、一方、6.0mg/dLより高い患者の血清リン濃度が低下する傾向が認められた。
【0077】
また、血清リン濃度と血清カルシウム濃度の積(Ca×P)は55以下が目標とされているが、投与前(0W)では56.7±13.88(mg/dL)2であったが、13週(13W)では48.5±13.89(mg/dL)2と有意(p<0.01 vs. 0W、対応のあるt検定)に低下していた。
【0078】
以上より、本発明の血清リン濃度調整剤は、効果的に透析患者の血清リン濃度を調整していることが理解される。
【0079】
実施例4:血漿中3-m-His/タウリン濃度、及び廃液中3-m-His/タウリン量の推移
血液透析(HD)を施行している慢性腎不全患者9例を対象に、本発明の異化抑制剤を投与し、血漿中3-m-His濃度、廃液中3-m-His量、血漿中タウリン濃度、廃液中タウリン量の推移を検討した。
【0080】
[方法]
実施例1の配合処方例により調整されているアミノ酸輸液「ネオアミユー」(200mL製剤;味の素ファルマ社製)を使用した。
投与する前の週における最初の透析日(月曜日又は火曜日)に診断及び検査、調査を実施した。その1週間後から12週間+1日(第37回の透析)にわたり「ネオアミユー」(200mL製剤)を1本、毎透析時に透析開始から終了するまでの間、体外循環路の静脈側より持続投与し、投与前(0W)、6週(6W)及び13週(13W)における血漿中3-m-His濃度、廃液中3-m-His量、血漿中タウリン濃度、廃液中タウリン量を測定した。
【0081】
[結果]
その結果、血漿中3-m-His濃度、廃液中3-m-His量を図5及び図6に、また、血漿中タウリン濃度、廃液中タウリン量を図7及び図8に示した。
図中の結果から判明するように、一般に筋崩壊の指標とされている血漿中3-m-His濃度は、本発明の異化抑制剤の投与前(0W)では28.04±6.255μmol/Lであったが、6週(6W)では27.32±6.254μmol/Lとなり、13週(13W)では26.56±5.27μmol/Lと有意(p<0.05 vs. 0W、対応のあるt検定)に低下した。
廃液中3-m-His量もまた、0Wでは0.29±0.19μmol、6Wでは0.29±0.20μmol、13Wで0.24±0.18μmolとなり、血漿中濃度が有意に低下した13Wで減少する傾向が認められ、異化抑制剤投与13Wにおいて、筋崩壊を反映する変化を示した。
【0082】
一方、血漿中タウリン濃度は、本発明の異化抑制剤の投与前(0W)では156.08±72.74μmol/Lであったが、6週(6W)では127.80±50.90μmol/Lとなり、13週(13W)では107.44±42.30μmol/Lと有意(p<0.05 vs. 0W、対応のあるt検定)に低下した。
【0083】
廃液中タウリン量もまた、0Wでは1.92±1.13μmol、6Wでは1.45±0.78μmol、13Wで1.20±0.65μmolとなり、血漿中濃度が有意に低下した13Wで有意(p<0.05 vs. 0W、対応のあるt検定)に減少した。
このように、3-m-Hisに比して、タウリンはより顕著な変化を示し、透析患者において3-m-Hisより高感度な異化の指標とみなされた。
【0084】
実施例5:透析患者の血中アミノ酸濃度の測定
次に、上記投与試験例における透析患者の血中アミノ酸濃度を測定し、検証した。
血液透析(HD)を施行している慢性腎不全患者9例を対象に、アミノ酸輸液「ネオアミユー」(味の素ファルマ社製)において本発明の投与方法を実施し、血中アミノ酸濃度、廃液中のアミノ酸量を測定し、検証した。
すなわち、投与する前の週における最初の透析日(月曜日又は火曜日)に診断及び検査、調査を実施した。その1週間後から12週間+1日(第37回の透析)にわたり「ネオアミユー」(200mL製剤)を1本、毎透析時に透析開始から終了するまでの間、体外循環路の静脈側より、持続投与した。
【0085】
その結果、投与前(コントロール)の血漿中総アミノ酸濃度は、透析前:約4000μmol/Lから、終了時:約2000μmol/Lに半減した。「ネオアミユー」投与により、終了時のアミノ酸濃度は、総アミノ酸(TAA)濃度はわずかに上昇するが、必須アミノ酸(EAA)と、非必須アミノ酸(NEAA)に分けて考えると、終了時の必須アミノ酸濃度は開始前と同様であり、「ネオアミユー」(200mL製剤)の持続注入により、必須アミノ酸濃度の低下を防止するものであった。
一方、非必須アミノ酸濃度はほとんど変化せず、必須アミノ酸優位[必須アミノ酸:非必須アミノ酸(E/N)3.21]の特徴を反映した結果となった。
【0086】
また、廃液中のアミノ酸量は、「ネオアミユー」投与前(コントロール)が6gであるが、「ネオアミユー」投与により、6週(6W)では約3g増加し、13週(13W)では投与前と同程度となることが確認できた。
一般的に、アミノ酸を透析中に投与すると、投与したアミノ酸は透析により除去されてしまうと考えられるが、本実施例におけるアミノ酸輸液である「ネオアミユー」のアミノ酸量は11.8gであることからみれば、本発明の透析中におけるアミノ酸輸液の持続注入によって、アミノ酸、特に必須アミノ酸が除去されることなく、留まっていることを示しているものである。
【0087】
したがって、本発明の特異的なアミノ酸輸液の投与方法によって、透析患者の状態を向上させているものであり、これにより、本発明が目的とする透析患者の貧血改善、蛋白異化の抑制がなされているものと判断される。
これらの結果をまとめて図9〜図12に示した。
また、その血漿中必須アミノ酸及び非必須アミノ酸濃度の結果を下記表2〜表4に示した。
【0088】
表2は、アミノ酸輸液の投与前(0W)における必須アミノ酸の血漿中濃度の値を示した表である。
【0089】
【表2】
【0090】
表3は、アミノ酸輸液の投与後(13W)における必須アミノ酸の血漿中濃度の値を示した表である。
【0091】
【表3】
【0092】
この表2及び3の対比からみれば、本発明のアミノ酸輸液の持続的な投与により、必須アミノ酸の濃度低下が防止されていることが理解される。
表4は、アミノ酸輸液の投与前(0W)における非必須アミノ酸の血漿中濃度の値を示した表である。
【0093】
【表4】
【0094】
また表5は、アミノ酸輸液の投与後(13W)における非必須アミノ酸の血漿中濃度の値を示した表である。
【0095】
【表5】
【0096】
この表4及び5を対比してみると、非必須アミノ酸濃度は投与前、及び投与後において大きな変動はなく、必須アミノ酸優位[必須アミノ酸:非必須アミノ酸(E/N)3.21]の特徴を反映した結果となっているのが理解される。
これらの血漿中アミノ酸濃度に基づいて、それぞれの血漿アミノグラムを図13〜図16に示した。
その結果からも判明するように、本発明のアミノ酸輸液は、透析患者におけるアミノ酸を、投与前後を問わずにバランス良く維持していることが良く理解される。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上記載のように、本発明の透析患者における貧血を改善する貧血治療剤であるアミノ酸輸液を、血液透析療法を受けている慢性腎不全患者に持続的に投与することにより、体蛋白の分解を抑制し、栄養状態を維持・改善し、その結果、貧血状態を改善し、その結果、透析療法で受けるエリスロポエチンの投与量を削減することが可能となる。
【0098】
また、本発明の血清リン濃度調整剤により、血液透析療法を受けている慢性腎不全患者において、体蛋白の分解を抑制し、栄養状態を維持・改善し、その結果、血清のリン濃度の調整をして血清リン濃度を所定の範囲内に調整することができるものであり、特に高値の血清リン濃度を有する慢性腎不全患者の血清リン濃度を所定の範囲内に低下させると共に、すでに所定値の範囲内にある血清リン濃度を有する慢性腎不全患者の血清リン濃度はそのまま維持されるという利点を有している。
【0099】
更に、本発明の異化抑制剤であるアミノ酸輸液を、血液透析療法を受けている慢性腎不全患者に持続的に投与することにより、血液透析自体によって引き起こされる異化がもたらす筋力低下、心機能低下、QOL低下を抑制することができ、長期にわたる血液透析療法を受けても、これらの低下を抑制、改善することができる。
【0100】
したがって、血液透析療法を受けている慢性腎不全患者について、合併症の発生リスクを回避し、その結果、患者のQOL(Quality of Life)の向上、生命予後の改善が可能となる点で、医療上の効果は多大なものである。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】実施例2の、EPOの投与量の推移を示した図である。
【図2】実施例2の、ヘモグロビン(Hb)の推移を示した図である。
【図3】実施例2の、ヘマトクリット(Ht)の推移を示した図である。
【図4】実施例3の、血清リン濃度(患者別推移)を示した図である。
【図5】実施例4の、血漿中3-m-His濃度の推移を示した図である。
【図6】実施例4の、廃液中3-m-His濃度の推移を示した図である。
【図7】実施例4の、血漿中タウリン濃度の推移を示した図である。
【図8】実施例4の、廃液中タウリン濃度の推移を示した図である。
【図9】実施例5の、血漿中全アミノ酸濃度の比較を示した図である。
【図10】実施例5の、血漿中必須アミノ酸濃度の比較を示した図である。
【図11】実施例5の、血漿中非必須アミノ酸濃度の比較を示した図である。
【図12】実施例5の、廃液中の全アミノ酸、必須アミノ酸、非必須アミノ酸量の比較を示した図である。
【図13】実施例5の、投与前(0W)における必須アミノ酸のアミノグラムである。
【図14】実施例5の、投与後37週(37W)における必須アミノ酸のアミノグラムである。
【図15】実施例5の、投与前(0W)における非必須アミノ酸のアミノグラムである。
【図16】実施例5の、投与後37週(37W)における非必須アミノ酸のアミノグラムである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析患者用の輸液剤に係わり、特に、血液透析、血液透析濾過などの血液透析療法を受けている透析患者の貧血状態を改善する貧血治療剤、並びに当該貧血の治療に伴い慢性腎不全患者が投与する造血ホルモンであるエリスロポエチン(EPO)の使用量を削減し、貧血状態を改善する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性腎不全患者が受ける透析治療における血液浄化療法の一つとして、血液透析(Hemodialysis:HD)がある。透析患者は、血液透析(HD)の施術に伴い、老廃物の透析除去を受けるばかりでなく、生体にとって有用な成分、例えばアミノ酸も老廃物と一緒に漏出させてしまっている。また、近年の透析技術では、透析期間の長期化に伴い顕在化してきた合併症の一つである「透析アミロイドーシス」の原因物質であるβ2−ミクログロブリン(分子量11800)という中分子タンパク質の除去を目的としたハイパフォーマンス膜も利用されているため、分子量が数万程度のアルブミンも一緒に漏出してしまい、その結果、医原性に低栄養状態を引き起こすこととなる。
【0003】
このようなアルブミンやアミノ酸の漏出は、透析開始と共に進行する。したがって、これに伴い筋タンパク質の崩壊、いわゆる蛋白異化の状態となる。このような状態は血液透析(HD)よりも、積極的な溶質除去を目的とした血液濾過透析(Hemodiafiltration:HDF)でより顕著に現れている。
この低栄養状態は、患者の生命予後を脅かす深刻な状態であり、透析患者の栄養状態の改善は極めて重要な課題である。
【0004】
ところで、腎不全になると、ごく一部の例外を除いて貧血を合併し、この腎不全が原因の貧血を腎性貧血と呼んでいる。ひどい貧血では、僅かな歩行でもすぐ息切れを引き起こし、ADL(Activities of daily living:日常生活活動)の低下を招く一方、心不全の誘因になるなど、二次的な合併症を引き起こす可能性もある。したがって、この腎性貧血は、透析患者にとっても切実な問題であった。
【0005】
透析患者における貧血の最大の原因は、造血ホルモンであるエリスロポエチン(EPO)の産生障害である。したがって、現在透析を受けている患者の殆どは、EPO製剤が投与されており、これにより貧血の改善が認められているが、一般的に栄養状態が不良の透析患者ではEPOの反応性が悪く、通常のEPO投与量では充分な貧血改善が認められず、栄養状態の不良は大量のEPOの投与を必要とする一因となっている。
【0006】
最近、透析患者に対するEPOの投与による貧血治療に関連して、貧血状態の改善に伴い、栄養状態も改善されることが報告されており(例えば、非特許文献1〜6)、EPO投与による貧血改善と栄養状態の改善は、相互に関連性があることが示唆されている。
【0007】
上記したように透析療法施行時には、血液中から急激にアルブミンやアミノ酸が除去される。このような劇的な変化は、通常起こるものではなく、透析患者は、透析治療中に厳しい低栄養状態に晒されることとなる。また、腎不全患者が呈する代謝性アシドーシスや腎性貧血、炎症等はアミノ酸・蛋白代謝の異化要因となり、栄養不良につながり得る。
【0008】
このような血液中の大きな変化を防ぐために、透析療法施行中にアミノ酸を持続注入すること、或いは透析により著しく欠乏したアミノ酸を速やかに補充することの重要性が改めて考えられている。すなわち、透析治療を受けている患者においては、透析に伴い、非透析患者が経験することのないアミノ酸欠乏に晒されており、このアミノ酸欠乏を補正することは極めて重要なことである。このアミノ酸欠乏の補正により、透析施行中の低栄養状態、蛋白異化状態を防止し、或いは軽減することができる。
【0009】
その点からみれば、透析患者のアミノ酸欠乏、特に必須アミノ酸を補正することによる栄養状態を改善させることは、取りも直さず透析患者の貧血状態を改善することとなる。そのうえ、かかる貧血状態の改善は、透析患者が受けるEPOの投与量の削減につながるものと考えられる。
【0010】
これまでに腎不全患者に対するアミノ酸含有製剤が種々登場してきているが、これらアミノ酸製剤が、上記した透析患者における栄養状態の低下に伴う貧血を改善し、その結果、EPOの投与量の削減をし得ることについては、一切言及されているものではない。
【0011】
また、一般的に血清リン濃度が5.0mg/dL以上となる場合を高リン血症というが、その原因としては、(i)細胞からのリン遊出の増加、(ii)体外から摂取したリン負荷の増加、さらには(iii)腎からのリン排泄の減少に分けられている。また、腎不全などの腎機能に障害がある場合、例えばGFR(Glomerular Filtration Rate;糸球体濾過量)が正常の30%以下になると、血清リン濃度が増加してくる。
したがって、腎不全状態では血液中のリン濃度が高値となり、リンを含有する食材、例えば、肉類や牛乳などの接種も制限されるため、アルブミンやアミノ酸の低下がより一層生じ、さらに蛋白異化状態が顕著となる。
【0012】
リンの上昇は、血液中でリンとカルシウムの結合に伴う異所性石灰化を引き起こし、これが動脈硬化をもたらす重要な一因となっている。
現在、リンの上昇を抑制するためには、食事制限に加え、リン吸着剤(例えば、塩酸セベラマーや沈降炭酸カルシウム(非特許文献7)など)の使用が行われている。しかしながら、筋肉崩壊や骨形成不全の状態においては、本来利用されるべきリンが適正に利用されていない状態に陥っているものであり、血液中のリンを下げるのは対症療法的なやむを得ない治療法であると位置づけられ、リン値を下げるということが目的ではなく、適切に利用できる状態に改善すること、すなわち血清リン濃度を、常時適正値に調整することが本来望まれている治療といえる。
【0013】
透析中の腎不全患者における高リン血症治療のためのリン吸着剤は、血清リン濃度として6.0mg/dL未満になるよう投与するのが目標であり、血清リン濃度の高低により適宜投与量が増減される。しかしながら、上記したように、リン吸着剤による血清リン濃度の調整は、あくまで対症療法的なやむを得ない治療法でしかない。
【0014】
ところで、上記した如く、透析療法施行時には、血液中から急激にアルブミンやアミノ酸が除去されることから、透析患者は、透析治療中に厳しい蛋白異化状態に晒されることとなり、この状態を防ぐために、透析施行中にアミノ酸を連続注入すること、或いは透析により著しく欠乏したアミノ酸を速やかに補充し、透析に伴うアミノ酸欠乏の補正が行われている。このアミノ酸補充は、一方で、透析施行中の低栄養状態、或いは蛋白異化状態を防止、軽減し、その結果、筋崩壊に伴うリンの血清への漏出が抑制されることが期待される。すなわち、血清のリン濃度を調整し得ることが期待される。
【0015】
これまで、腎不全患者に対するアミノ酸含有製剤が種々登場してきているが、これらアミノ酸製剤が、上記した透析患者における血清のリン濃度を適正範囲に調整し得ることについては、一切言及されているものではない。
【0016】
【非特許文献1】Gunnell J., et al.:Am. J. Kid. Dis., 33, 63-71 (1999)
【非特許文献2】Balaskaa E. V., et al.:Miner Electrolyte Metab., 25, 324-332 (1999)
【非特許文献3】Navarro J.F., et al.:Am. J. Clin. Nutr., 71, 765-773 (2000)
【非特許文献4】Serna-Thome M.G., et al.:Curr. Opinion Clin. Nutr. Metab. Care 5, 293-296 (2002)
【非特許文献5】Pupim L.B., et al.:J. Clin. Invest., 110, 483-492 (2002)
【非特許文献6】Pupim L.B., et al.:J. Am. Soc. Nephrol., 15, 1920-1926 (2004)
【非特許文献7】第14改正日本薬局方「沈降炭酸カルシウム」の項
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記現状を鑑み、血液透析療法を受けている慢性腎不全患者(透析患者)において、その栄養状態を改善する貧血治療剤を提供することを課題とする。
また本発明は、透析患者の貧血状態を改善すること、並びにその結果透析療法で受けるエリスロポエチンの使用量を削減する方法を提供することを課題とする。
【0018】
さらに本発明は、血液透析療法を受けている慢性腎不全患者において、その栄養状態を改善することにより、血清中のリン濃度の調整をして、血清リン濃度を所定の範囲内に調整する、血清リン濃度調整剤を提供することを課題とする。
【0019】
また本発明は、血液透析療法を受けている慢性腎不全患者(透析患者)において、蛋白異化状態の抑制剤を提供することを課題とする。
特に、透析患者における筋崩壊、すなわち蛋白異化を、血漿中のタウリン濃度を指標にして行う透析患者の蛋白異化を抑制する方法を提供することを課題とする。
【0020】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を行った結果、血液透析療法施行中に、漏出するアミノ酸を体内に補充するように調製、配合されているアミノ酸補充液を持続的に投与することで、貧血状態が改善され、その結果、エリスロポエチンの使用量を効果的に削減し得ることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0021】
また本発明者は、血液透析療法施行中に、漏出するアミノ酸を体内に補充するように調製、配合されているアミノ酸補充液を持続的に投与することで、透析患者の栄養状態が改善され、その結果、透析患者の血清リン濃度を所定の範囲内に調整し得ることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0022】
更に本発明者は、タウリンの濃度に着目した結果、筋肉中のタウリン濃度は極めて高い一方、血中濃度は低いことから、筋肉/血漿の濃度比は300以上にもなっているが、筋崩壊、すなわち蛋白異化が進行し、血液中にタウリンが漏出してくると血漿中濃度が高くなることを確認し、このタウリンの濃度を指標に、漏出するアミノ酸を体内に補充するように調製、配合されているアミノ酸補充液を持続的に投与することで、透析患者の蛋白異化状態が改善されることを確認し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0023】
すなわち、本発明の第一の態様は、透析患者における貧血改善剤であり、基本的には、請求項1に記載の発明は、少なくとも必須アミノ酸を含有するアミノ酸輸液からなる透析患者における貧血改善剤である。
【0024】
より具体的な請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のアミノ酸輸液において、アミノ酸組成が少なくともL−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、グリシン及びL−システインからなり、必須アミノ酸:非必須アミノ酸の比が2.5以上である請求項1に記載の透析患者における貧血改善剤である。
【0025】
最も具体的な請求項3に記載の本発明は、請求項1に記載のアミノ酸輸液が下記の組成のアミノ酸を含有するアミノ酸輸液である、透析患者における貧血改善剤である。
L−イソロイシン 5.0〜10.0g/L
L−ロイシン 8.0〜12.0g/L
L−リジン(酢酸塩として) 4.5〜10.5g/L
L−メチオニン 3.5〜 6.5g/L
L−フェニルアラニン 3.5〜 6.5g/L
L−トレオニン 1.8〜 3.3g/L
L−トリプトファン 1.8〜 3.3g/L
L−バリン 5.0〜10.0g/L
L−アラニン 1.5〜 4.5g/L
L−アルギニン 1.5〜 4.5g/L
L−アスパラギン酸 0.2〜 0.4g/L
L−グルタミン酸 0.2〜 0.4g/L
L−ヒスチジン 1.8〜 3.3g/L
L−プロリン 1.0〜 3.0g/L
L−セリン 0.5〜 1.5g/L
L−チロシン 0.3〜 0.7g/L
グリシン 1.2〜 1.7g/L
L−システイン 0.2〜 0.4g/L
【0026】
また本発明は、かかる第一の態様において、好ましくは、透析回路の静脈側より、ポンプを用いて持続的に投与するものである透析患者における貧血改善剤である。
【0027】
また、本発明は、第二の態様として、透析患者におけるエリスロポエチン使用量低減剤であり、その基本的な請求項5に記載の発明は、少なくとも必須アミノ酸を含有するアミノ酸輸液からなることを特徴とする透析患者におけるエリスロポエチン使用量低減剤である。
【0028】
第二の態様における、より具体的な請求項6に記載の本発明は、請求項5に記載のアミノ酸輸液において、アミノ酸組成が少なくとも請求項2に記載のものであることを特徴とする透析患者におけるエリスロポエチン使用量低減剤である。
【0029】
更に、第二の態様における、最も具体的な請求項6に記載の本発明は、請求項5に記載のアミノ酸輸液が請求項3に記載の組成のアミノ酸を含有するアミノ酸輸液である透析患者におけるエリスロポエチン使用量低減剤である。
【0030】
また、本発明は、第三の態様として、透析患者における血清リン濃度調整剤であり、その基本的な請求項9に記載の発明は、少なくとも必須アミノ酸を含有するアミノ酸輸液からなることを特徴とする透析患者における血清リン濃度調整剤である。
【0031】
第三の態様における、より具体的な請求項10に記載の本発明は、請求項9に記載のアミノ酸輸液において、アミノ酸組成が少なくとも請求項2に記載のものであることを特徴とする透析患者における血清リン濃度調整剤である。
【0032】
更に、第三の態様における、最も具体的な請求項11に記載の本発明は、請求項9に記載のアミノ酸輸液が請求項3に記載の組成のアミノ酸を含有するアミノ酸輸液である透析患者における血清リン濃度調整剤である。
【0033】
また本発明は、透析患者における血清リン濃度の調整が、血清リン濃度として3.5〜6.0mg/dLの範囲内に調整されるものである上記の血清リン濃度調整剤である。
【0034】
さらに本発明は、上記した血清リン濃度調整剤を腎不全患者に投与することからなる、血清リン濃度として3.5〜6.0mg/dLの範囲内に調整する方法でもある。
【0035】
更にまた、本発明は、第四の態様として、透析患者における蛋白異化抑制剤であり、その基本的な請求項13に記載の発明は、少なくとも必須アミノ酸輸液からなることを特徴とする透析患者における蛋白異化抑制剤である。
【0036】
この第四の態様における、最も具体的な請求項14に記載の発明は、請求項13に記載のアミノ酸輸液において、アミノ酸組成が少なくとも請求項2に記載のものであることを特徴とする透析患者における蛋白異化抑制剤である。
【0037】
更に、第四の態様における、最も具体的な請求項15に記載の本発明は、請求項13に記載のアミノ酸輸液が請求項3に記載の組成のアミノ酸を含有するアミノ酸輸液である透析患者における蛋白異化抑制剤である。
【0038】
さらに本発明は、別の態様として、請求項17に記載の発明は、血漿中のタウリン濃度を指標とする透析患者における蛋白異化状態を抑制する方法であり、また、請求項18に記載の発明は、蛋白異化状態の測定方法である。
【0039】
また本発明は、更に別の態様としてアミノ酸輸液の特異的な投与方法に関するものであり、具体的な請求項19に記載の発明は、透析時における透析患者へのアミノ酸輸液の投与方法において、透析開始時から終了時の間にかけて、透析回路の静脈側より加圧して投与するこことを特徴とするアミノ酸輸液の投与方法である。
【0040】
したがって、本発明はまた、本発明の特異的なアミノ酸輸液を、透析開始時から終了時の間にかけて、透析回路の静脈側より加圧して持続投与することによる、透析患者の貧血を改善し、またエリスロポエチンの使用量低減し、更には蛋白異化を抑制する方法でもあり、より具体的には、少なくとも3ヶ月間にわたり、透析開始時から終了時の間にかけて、透析回路の静脈側より、加圧して持続投与することを特徴とする当該方法である。
【発明の効果】
【0041】
第一の態様、更には第二の態様の本発明により、血液透析療法を受ける慢性腎不全患者における不足アミノ酸が補充、是正され、且つ、体蛋白の分解、すなわち蛋白異化が抑制され、栄養状態を維持・改善し、その結果、貧血状態が改善されることなる。
事実、本発明により透析患者の血中ヘモグロビン(Hb)濃度は10〜11g/dL、ヘマトクリット(Ht)を30〜33%程度に維持することができた。
透析患者が受けるエリスロポエチンの投与目安が、血中ヘモグロビン(Hb)濃度は10g/dL以下、ヘマトクリット(Ht)を30%未満の貧血状態とされている点を考慮すると、効果的に貧血状態を改善しているものといえる。
【0042】
この貧血状態の改善は、透析療法で受けるエリスロポエチンの投与量を削減することとなる。このことは、血液透析療法を受ける慢性腎不全患者が負担する薬剤費の低減につながり、特に、本邦における保険制度では、薬剤費を含めた包括化した透析技術料が導入されていることから、より良い透析施術を受けることができる利点となる。
【0043】
また、エリスロポエチンの投与量が削減されることは、副作用発現の頻度を低減させることとなり、患者にとってより好ましい透析治療を受けることができることとなる。
【0044】
また、第三の態様の本発明により、血液透析療法を受ける慢性腎不全患者における不足アミノ酸を是正し、且つ、体蛋白の分解を抑制し、栄養状態を維持・改善し、その結果、血清のリン濃度の調整をして血清リン濃度を所定の範囲内に調整することができるものであり、特に高値の血清リン濃度を有する慢性腎不全患者の血清リン濃度を所定の範囲内に低下させると共に、すでに所定値の範囲内にある血清リン濃度を有する慢性腎不全患者の血清リン濃度はそのまま維持されるという利点を有している。
【0045】
その結果、血液透析療法を受けている慢性腎不全患者について、合併症の発生リスクを回避し、その結果、患者のQOL(Quality of Life)の向上、生命予後の改善が可能となる。
【0046】
また、既存の高リン血症治療薬にあっては、例えば、沈降炭酸カルシウムでは高カルシウム血症の副作用が、また塩酸セベラマーでは便秘や腹部膨満などの消化器症状やクロル性アシドーシスの副作用があり、十分な投与量を用いることができず、血清リン濃度を目標レベルまでに下げることができない。特に、血清リン濃度が著しく高い患者では、それだけ高リン血症治療薬の投与量が多くなり、副作用発症のリスクが高くなる。その結果、服用量が不十分になる虞がある。
このような血清リン濃度が特に高い患者は、肉類など、リン含有量の高い食品摂取量が多いために生じる場合もあるが、蛋白異化、骨形成不全の場合もあると考えられ、本発明の血清リン濃度調整剤は、このような患者に対し、既存高リン血症治療薬と併用して使用することで、既存の高リン血症治療薬の不十分な効果を補う利点を有している。
【0047】
更に、第四の態様の本発明により、血液透析自体によって引き起こされる異化が、週3回、慢性的に繰り返されることにより、筋力低下、心機能低下、QOL低下が起きるが、蛋白異化を抑制することにより、長期にわたる血液透析療法を受けても、これらの低下を抑制、改善することができる。
蛋白異化、筋崩壊の指標としては、しばしば、3−メチル−ヒスチジン(3-m-His)が用いられる。3-m-Hisは筋肉中で産生するために、異化亢進状態で血液中に漏出し、最終的に気尿中に排泄される。しかし、腎機能低下により尿中排泄が障害されると、血漿中濃度が著しく上昇するため、血液透析患者において3-m-Hisを異化の指標とすることには異論がある。タウリンもまた、尿中に排泄されるアミノ酸の一つであるが、筋肉中濃度が極めて高く、血漿中濃度の400倍にも及ぶため、筋崩壊が起こると、他のアミノ酸に比して血液中に漏出してくる量が多く、結果、血漿中タウリン濃度が著明に上昇すると考えられる。
したがって、血漿中タウリン濃度、あるいは透析廃液中のタウリン量の上昇は、異化亢進を反映し、また、その低下は異化抑制に指標となると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
本発明が提供する上記の治療剤であるアミノ酸輸液においては、少なくとも必須アミノ酸であるL−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリンの8種の必須アミノ酸、及び腎不全患者においては必須となるL−ヒスチジンを含有するが、それに加えて他のアミノ酸を含有する。そのようなアミノ酸は、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、グリシン及びL−システインである。
【0049】
これらのアミノ酸は必ずしも遊離アミノ酸として用いられる必要はなく、医薬品又は飲食品で許容される塩の形態でもよく、例えば無機酸塩、有機酸塩、生体内で加水分解可能なエステル体、N−アシル誘導体などの形態で使用してもよい。また、同種あるいは異種のアミノ酸をペプチド結合させたペプチド類の形態で使用してもよい。
【0050】
本発明のアミノ酸輸液にあっては、特に必須アミノ酸と非必須アミノ酸の量の比率が2.5以上である、いわゆる必須アミノ酸リッチな状態にあることが好ましく、より好ましくは3.0以上、最も好ましくは、3.2以上である。
【0051】
含有するアミノ酸の量は、血液透析療法施行中に漏出するアミノ酸量、及び栄養補充としてそれに見合う量が好ましく、本発明の方法に使用するアミノ酸輸液にあっては、例えば、輸液として200mL用量の場合には、そこに総アミノ酸量として11g〜13g程度のアミノ酸を含有させ、そのうちの7割程度以上を必須アミノ酸として含有し、且つ、アミノ酸濃度として5.5〜6.5w/v%程度であるのが好ましい。
【0052】
なお、本発明のアミノ酸輸液には、さらに電解質成分を加えることもできる。そのような電解質成分としては、具体的には、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩素イオン、重炭酸イオン、グルコン酸イオン等である。また、乳酸、クエン酸、リンゴ酸等も含有させることができる。酢酸にあっては、近年の酢酸不耐症等の症状を鑑み、酢酸イオンフリーとすることもできる。
【0053】
本発明のアミノ酸輸液の投与法としては、血液透析療法施行時に末梢静脈内へ投与するか、或いは、高カロリー輸液法により中心静脈へ持続点滴注入する方法があるが、なかでも透析補充液と共に、透析開始時から終了時までの間、持続投与される方法が特に好ましい。
すなわち、通常の腎不全用アミノ酸輸液の投与は、透析終了の90〜60分前から終了時までの投与であるが、本発明においては、アルブミンやアミノ酸の漏出が透析の開始と共に進行する点を考慮し、透析開始時の直後から終了時の前後まで、実質的に透析施術中の全時間(通常4時間程度)に亘って、持続的に投与するのが好ましい。
【0054】
なかでも、体内に透析後の血液を戻す透析回路に、ポンプを用いて加圧的に持続的に投与することが好ましく、より具体的には、少なくとも3ヶ月間にわたり、透析治療開始時から終了時の間にかけて、特に、透析実施中の全時間に亘って、透析回路の静脈側より、輸液ポンプを用いて加圧して持続投与することが好ましい。
したがって、本発明はまた別の態様として、透析患者におけるアミノ酸輸液の特異的な投与方法を提供するものでもある。
【0055】
特に好ましい本発明の透析患者における各種治療剤であるアミノ酸輸液としては、総窒素量が8.1mg/mLであり、総遊離アミノ酸濃度が5.90w/v%であり、必須アミノ酸:非必須アミノ酸比が3.21である注射用の製剤である。
【0056】
したがって、本発明で好ましく用いられるアミノ酸輸液としては、200mL中のアミノ酸の組成としては、下記のものが好ましい。
L−イソロイシン 1.5g
L−ロイシン 2.0g
L−リジン(酢酸リジンとして) 1.4g
L−メチオニン 1.0g
L−フェニルアラニン 1.0g
L−トレオニン 0.5g
L−トリプトファン 0.5g
L−バリン 1.5g
L−アラニン 0.6g
L−アルギニン 0.6g
L−アスパラギン酸 0.05g
L−グルタミン酸 0.05g
L−ヒスチジン 0.5g
L−プロリン 0.4g
L−セリン 0.2g
L−チロシン 0.1g
グリシン 0.3g
L−システイン 0.05g
【0057】
なお、L−リジンに関しては、酢酸塩を使用しているが、酢酸フリーの観点から、塩酸塩を使用することも可能である。
【0058】
本発明のアミノ酸輸液には、上記それぞれのアミノ酸と合わせてL−カルニチンを添加することができる。添加するアミノ酸は、必ずしも遊離体として用いられる必要はなく、無機酸塩、有機酸塩などの形態で使用してもよい。L−カルニチンの濃度は0.1〜10g/Lが好ましく、更に好ましくは1〜5g/Lが良い。
【0059】
また、本発明のアミノ酸輸液には、患者の状態に応じて糖を添加しても良い。使用できる糖としては通常輸液に用いられる糖で有れば特に制限はないが、例えば還元糖として、ブドウ糖、フルクトース、マルトースが、非還元糖としてはトレハロース、キシリトール、ソルビトール、グリセリンが挙げられる。前記の各種糖のうち、栄養効果の点からはブドウ糖を配合することが好ましい。
【0060】
透析中に低血糖を起こす可能性がある、例えばインスリン製剤を使用している糖尿病性腎症を原疾患とする透析患者に対しては、人工腎臓透析用液若しくは透析用補充液の糖濃度として通常用いられる0.05〜0.2w/v%のブドウ糖を添加して使用するのが好ましい。また、補充されるアミノ酸が蛋白合成に有効に利用されるようにとの観点から、本発明のアミノ酸輸液には濃度が0.75〜3.5w/v%のブドウ糖を含んでも良い。更に、該ブドウ糖濃度が0.05〜0.2w/v%の場合、同様に補充されるアミノ酸が蛋白合成に有効に利用されるようにとの観点から、血液透析療法施行中に総窒素量1.6g当たり500Kcal以上の非蛋白熱量を摂取することが好ましい。
【0061】
また、本発明のアミノ酸輸液には、ビタミン類を添加することができる。ビタミン類としては、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンH、葉酸、パントテン酸類、ニコチン酸類等を挙げることができる。これらのビタミン類を用いることによって、栄養状態の維持・改善を早期に実現させることが可能である。
【0062】
さらに本発明のアミノ酸輸液には、微量元素も添加することができる。本発明における微量元素とは、微量ではあるが生体にとって必要不可欠とされる金属元素である。その内、特に、慢性腎不全維持透析患者において欠乏する亜鉛、銅及びセレンの無機塩及び有機塩を挙げることができる。該微量元素の補給は欠乏症の防止だけでなく蛋白合成の促進、栄養状態の維持・改善に大きく貢献することが期待される。各微量元素は、一日必要量を考慮して配合すればよい。
【0063】
本発明のアミノ酸輸液のpHは、6.6〜7.6で、その浸透圧比が約2に調整されていることが好ましい。pHを調整するには、水酸化ナトリウム、塩酸等の無機酸、酢酸、クエン酸等の有機酸、二酸化炭素等の気体を使用できる。
【0064】
本発明の透析患者における各種治療剤であるアミノ酸輸液は、容器に充填されることが好ましく、必要に応じて各成分を連通可能な隔離手段で区画された複数の室に分離充填しても良い。高pH時に不安定であるアミノ酸、例えばシステインやトリプトファンは炭酸水素ナトリウムと隔離収容される方が好ましい。また、アミノ酸を配合したことによりpHが低下し、炭酸水素ナトリウムの濃度が低下するような場合も、アミノ酸と炭酸水素ナトリウムは隔離収容される方が好ましい。
【0065】
本発明が提供する透析患者における各種改善する貧血治療剤であるアミノ酸輸液の容器の本体を構成する材料としては、可撓性、透明性に優れ、且低温保存後に落下しても破袋し難い軟質の樹脂材料が好ましい。特に、通常医療用容器に用いられているポリオレフィン類からなるものを好適に挙げることができる。ポリオレフィン類は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン等の重合応体を挙げることができる。容器本体は、前記樹脂をブロー成形、インフレーションあるいはデフレーション成形したものいずれでも使用できる。また、2枚の樹脂シートの周縁部を溶着して形成したものでも良い。
【実施例】
【0066】
次に、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
実施例1:貧血改善剤(アミノ酸輸液)の調製
下記表1に記載の配合量に従い、各成分を注射用水に溶解した。この液を無菌ろ過した後、ガラス容器に充填し、密封した後、高圧蒸気滅菌を行い、貧血改善剤(アミノ酸輸液)を調製した。
このもののpHは、6.6〜7.6の範囲内にあり、浸透圧比は約2であった。
【0068】
【表1】
【0069】
なお、本実施例1の配合処方からなるアミノ酸輸液は、本発明の第二の態様であるエリスロポエチン使用量低減剤であり、第三の態様の血清リン濃度調整剤でもあり、また第四の態様における蛋白異化抑制剤でもある。
【0070】
実施例2:貧血の改善効果/エリスロポエチン投与量の低減効果の確認
血液透析(HD)又は血液透析濾過(HDF)を施行している慢性腎不全患者18例(HD:9例、HDF:9例)を対象に、本発明の貧血改善剤を投与し、その貧血の改善の程度、およびそれに伴うエリスロポエチン投与量の低減効果を検討した。
【0071】
[方法]
実施例1の配合処方例により調製されているアミノ酸輸液「ネオアミユー(登録商標)」(200mL製剤;味の素ファルマ社製)を使用した。
投与する前の週における最初の透析日(月曜日又は火曜日)に診断及び検査、調査を実施した。その1週間後から12週間+1日(第37回の透析)にわたり「ネオアミユー」(200mL製剤)を1本、毎透析時に透析開始から終了するまでの間、体外循環路の静脈側より持続投与した。
エリスロポエチン(EPO)は、週3回行う毎透析終了時に静脈内投与し、ヘモグロビン(Hb)濃度を10〜11g/dL、ヘマトクリット(Ht)を30〜33%に維持する投与量を目標に適宜増減して投与した。
【0072】
[結果]
そのEPOの投与量の推移を図1に、ヘモグロビン(Hb)濃度及びヘマトクリット(Ht)の推移を図2及び3に示した。
図に示した結果からも判明するように、EPOの投与量(1週間当たりの投与量)は、「ネオアミユー」(200mL製剤)投与前(0W)においては6,125±3,163.7unit/週であったのに対して、本発明の製剤の投与後6週(6W)では、4,875±3,111.0unit/週と減少傾向を示し、13週(13W)では、3,375±3,557.6unit/週と有意(p<0.01:Wilcoxonの符号付き順位和検定)に減少していた。
この間、ヘモグロビン及びヘマトクリットは安定に推移した。
【0073】
以上より、本発明のアミノ酸輸液の投与は、効果的に透析患者の貧血状態を改善しており、その結果、透析患者が受けるEPOの投与量を削減していることが理解される。
【0074】
実施例3:血清リン濃度の調整効果の確認
血液透析(HD)を施行している慢性腎不全患者8例を対象に、本発明の血清リン濃度調整剤を投与し、血清リン濃度の推移を検討した。
【0075】
[方法]
実施例1の配合処方例により調製されているアミノ酸輸液「ネオアミユー」(200mL製剤;味の素ファルマ社製)を使用した。
投与する前の週における最初の透析日(月曜日又は火曜日)に診断及び検査、調査を実施した。その1週間後から12週間+1日(第37回の透析)にわたり「ネオアミユー」(200mL製剤)を1本、毎透析時に透析開始から終了するまでの間、体外循環路の静脈側より持続投与し、投与前(0W)、および13週(13W)における血清リン濃度を測定した。
【0076】
[結果]
その結果を、図4に示した。
図中の結果から判明するように、血清リン濃度は、本発明の血清リン濃度調整剤の投与前(0W)では6.48±1.752mg/dLであったが、13週(13W)では5.41±1.253mg/dLと有意(p<0.01 vs. 0W、対応のあるt検定)に低下した。
血清リン濃度の目標レンジは、3.5〜6.0mg/dLであるが、患者別にみると、目標範囲にある患者の血清リン濃度はレンジ内で推移したが、一方、6.0mg/dLより高い患者の血清リン濃度が低下する傾向が認められた。
【0077】
また、血清リン濃度と血清カルシウム濃度の積(Ca×P)は55以下が目標とされているが、投与前(0W)では56.7±13.88(mg/dL)2であったが、13週(13W)では48.5±13.89(mg/dL)2と有意(p<0.01 vs. 0W、対応のあるt検定)に低下していた。
【0078】
以上より、本発明の血清リン濃度調整剤は、効果的に透析患者の血清リン濃度を調整していることが理解される。
【0079】
実施例4:血漿中3-m-His/タウリン濃度、及び廃液中3-m-His/タウリン量の推移
血液透析(HD)を施行している慢性腎不全患者9例を対象に、本発明の異化抑制剤を投与し、血漿中3-m-His濃度、廃液中3-m-His量、血漿中タウリン濃度、廃液中タウリン量の推移を検討した。
【0080】
[方法]
実施例1の配合処方例により調整されているアミノ酸輸液「ネオアミユー」(200mL製剤;味の素ファルマ社製)を使用した。
投与する前の週における最初の透析日(月曜日又は火曜日)に診断及び検査、調査を実施した。その1週間後から12週間+1日(第37回の透析)にわたり「ネオアミユー」(200mL製剤)を1本、毎透析時に透析開始から終了するまでの間、体外循環路の静脈側より持続投与し、投与前(0W)、6週(6W)及び13週(13W)における血漿中3-m-His濃度、廃液中3-m-His量、血漿中タウリン濃度、廃液中タウリン量を測定した。
【0081】
[結果]
その結果、血漿中3-m-His濃度、廃液中3-m-His量を図5及び図6に、また、血漿中タウリン濃度、廃液中タウリン量を図7及び図8に示した。
図中の結果から判明するように、一般に筋崩壊の指標とされている血漿中3-m-His濃度は、本発明の異化抑制剤の投与前(0W)では28.04±6.255μmol/Lであったが、6週(6W)では27.32±6.254μmol/Lとなり、13週(13W)では26.56±5.27μmol/Lと有意(p<0.05 vs. 0W、対応のあるt検定)に低下した。
廃液中3-m-His量もまた、0Wでは0.29±0.19μmol、6Wでは0.29±0.20μmol、13Wで0.24±0.18μmolとなり、血漿中濃度が有意に低下した13Wで減少する傾向が認められ、異化抑制剤投与13Wにおいて、筋崩壊を反映する変化を示した。
【0082】
一方、血漿中タウリン濃度は、本発明の異化抑制剤の投与前(0W)では156.08±72.74μmol/Lであったが、6週(6W)では127.80±50.90μmol/Lとなり、13週(13W)では107.44±42.30μmol/Lと有意(p<0.05 vs. 0W、対応のあるt検定)に低下した。
【0083】
廃液中タウリン量もまた、0Wでは1.92±1.13μmol、6Wでは1.45±0.78μmol、13Wで1.20±0.65μmolとなり、血漿中濃度が有意に低下した13Wで有意(p<0.05 vs. 0W、対応のあるt検定)に減少した。
このように、3-m-Hisに比して、タウリンはより顕著な変化を示し、透析患者において3-m-Hisより高感度な異化の指標とみなされた。
【0084】
実施例5:透析患者の血中アミノ酸濃度の測定
次に、上記投与試験例における透析患者の血中アミノ酸濃度を測定し、検証した。
血液透析(HD)を施行している慢性腎不全患者9例を対象に、アミノ酸輸液「ネオアミユー」(味の素ファルマ社製)において本発明の投与方法を実施し、血中アミノ酸濃度、廃液中のアミノ酸量を測定し、検証した。
すなわち、投与する前の週における最初の透析日(月曜日又は火曜日)に診断及び検査、調査を実施した。その1週間後から12週間+1日(第37回の透析)にわたり「ネオアミユー」(200mL製剤)を1本、毎透析時に透析開始から終了するまでの間、体外循環路の静脈側より、持続投与した。
【0085】
その結果、投与前(コントロール)の血漿中総アミノ酸濃度は、透析前:約4000μmol/Lから、終了時:約2000μmol/Lに半減した。「ネオアミユー」投与により、終了時のアミノ酸濃度は、総アミノ酸(TAA)濃度はわずかに上昇するが、必須アミノ酸(EAA)と、非必須アミノ酸(NEAA)に分けて考えると、終了時の必須アミノ酸濃度は開始前と同様であり、「ネオアミユー」(200mL製剤)の持続注入により、必須アミノ酸濃度の低下を防止するものであった。
一方、非必須アミノ酸濃度はほとんど変化せず、必須アミノ酸優位[必須アミノ酸:非必須アミノ酸(E/N)3.21]の特徴を反映した結果となった。
【0086】
また、廃液中のアミノ酸量は、「ネオアミユー」投与前(コントロール)が6gであるが、「ネオアミユー」投与により、6週(6W)では約3g増加し、13週(13W)では投与前と同程度となることが確認できた。
一般的に、アミノ酸を透析中に投与すると、投与したアミノ酸は透析により除去されてしまうと考えられるが、本実施例におけるアミノ酸輸液である「ネオアミユー」のアミノ酸量は11.8gであることからみれば、本発明の透析中におけるアミノ酸輸液の持続注入によって、アミノ酸、特に必須アミノ酸が除去されることなく、留まっていることを示しているものである。
【0087】
したがって、本発明の特異的なアミノ酸輸液の投与方法によって、透析患者の状態を向上させているものであり、これにより、本発明が目的とする透析患者の貧血改善、蛋白異化の抑制がなされているものと判断される。
これらの結果をまとめて図9〜図12に示した。
また、その血漿中必須アミノ酸及び非必須アミノ酸濃度の結果を下記表2〜表4に示した。
【0088】
表2は、アミノ酸輸液の投与前(0W)における必須アミノ酸の血漿中濃度の値を示した表である。
【0089】
【表2】
【0090】
表3は、アミノ酸輸液の投与後(13W)における必須アミノ酸の血漿中濃度の値を示した表である。
【0091】
【表3】
【0092】
この表2及び3の対比からみれば、本発明のアミノ酸輸液の持続的な投与により、必須アミノ酸の濃度低下が防止されていることが理解される。
表4は、アミノ酸輸液の投与前(0W)における非必須アミノ酸の血漿中濃度の値を示した表である。
【0093】
【表4】
【0094】
また表5は、アミノ酸輸液の投与後(13W)における非必須アミノ酸の血漿中濃度の値を示した表である。
【0095】
【表5】
【0096】
この表4及び5を対比してみると、非必須アミノ酸濃度は投与前、及び投与後において大きな変動はなく、必須アミノ酸優位[必須アミノ酸:非必須アミノ酸(E/N)3.21]の特徴を反映した結果となっているのが理解される。
これらの血漿中アミノ酸濃度に基づいて、それぞれの血漿アミノグラムを図13〜図16に示した。
その結果からも判明するように、本発明のアミノ酸輸液は、透析患者におけるアミノ酸を、投与前後を問わずにバランス良く維持していることが良く理解される。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上記載のように、本発明の透析患者における貧血を改善する貧血治療剤であるアミノ酸輸液を、血液透析療法を受けている慢性腎不全患者に持続的に投与することにより、体蛋白の分解を抑制し、栄養状態を維持・改善し、その結果、貧血状態を改善し、その結果、透析療法で受けるエリスロポエチンの投与量を削減することが可能となる。
【0098】
また、本発明の血清リン濃度調整剤により、血液透析療法を受けている慢性腎不全患者において、体蛋白の分解を抑制し、栄養状態を維持・改善し、その結果、血清のリン濃度の調整をして血清リン濃度を所定の範囲内に調整することができるものであり、特に高値の血清リン濃度を有する慢性腎不全患者の血清リン濃度を所定の範囲内に低下させると共に、すでに所定値の範囲内にある血清リン濃度を有する慢性腎不全患者の血清リン濃度はそのまま維持されるという利点を有している。
【0099】
更に、本発明の異化抑制剤であるアミノ酸輸液を、血液透析療法を受けている慢性腎不全患者に持続的に投与することにより、血液透析自体によって引き起こされる異化がもたらす筋力低下、心機能低下、QOL低下を抑制することができ、長期にわたる血液透析療法を受けても、これらの低下を抑制、改善することができる。
【0100】
したがって、血液透析療法を受けている慢性腎不全患者について、合併症の発生リスクを回避し、その結果、患者のQOL(Quality of Life)の向上、生命予後の改善が可能となる点で、医療上の効果は多大なものである。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】実施例2の、EPOの投与量の推移を示した図である。
【図2】実施例2の、ヘモグロビン(Hb)の推移を示した図である。
【図3】実施例2の、ヘマトクリット(Ht)の推移を示した図である。
【図4】実施例3の、血清リン濃度(患者別推移)を示した図である。
【図5】実施例4の、血漿中3-m-His濃度の推移を示した図である。
【図6】実施例4の、廃液中3-m-His濃度の推移を示した図である。
【図7】実施例4の、血漿中タウリン濃度の推移を示した図である。
【図8】実施例4の、廃液中タウリン濃度の推移を示した図である。
【図9】実施例5の、血漿中全アミノ酸濃度の比較を示した図である。
【図10】実施例5の、血漿中必須アミノ酸濃度の比較を示した図である。
【図11】実施例5の、血漿中非必須アミノ酸濃度の比較を示した図である。
【図12】実施例5の、廃液中の全アミノ酸、必須アミノ酸、非必須アミノ酸量の比較を示した図である。
【図13】実施例5の、投与前(0W)における必須アミノ酸のアミノグラムである。
【図14】実施例5の、投与後37週(37W)における必須アミノ酸のアミノグラムである。
【図15】実施例5の、投与前(0W)における非必須アミノ酸のアミノグラムである。
【図16】実施例5の、投与後37週(37W)における非必須アミノ酸のアミノグラムである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも必須アミノ酸を含有するアミノ酸輸液からなることを特徴とする透析患者における貧血改善剤。
【請求項2】
アミノ酸組成が少なくともL−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、グリシン及びL−システインからなり、必須アミノ酸:非必須アミノ酸の比が2.5以上であることを特徴とする請求項1に記載の透析患者における貧血改善剤。
【請求項3】
下記の組成のアミノ酸を含有することを特徴とするアミノ酸輸液である請求項1又は2に記載の透析患者における貧血改善剤。
L−イソロイシン 5.0〜10.0g/L
L−ロイシン 8.0〜12.0g/L
L−リジン(酢酸塩として) 4.5〜10.5g/L
L−メチオニン 3.5〜 6.5g/L
L−フェニルアラニン 3.5〜 6.5g/L
L−トレオニン 1.8〜 3.3g/L
L−トリプトファン 1.8〜 3.3g/L
L−バリン 5.0〜10.0g/L
L−アラニン 1.5〜 4.5g/L
L−アルギニン 1.5〜 4.5g/L
L−アスパラギン酸 0.2〜 0.4g/L
L−グルタミン酸 0.2〜 0.4g/L
L−ヒスチジン 1.8〜 3.3g/L
L−プロリン 1.0〜 3.0g/L
L−セリン 0.5〜 1.5g/L
L−チロシン 0.3〜 0.7g/L
グリシン 1.2〜 1.7g/L
L−システイン 0.2〜 0.4g/L
【請求項4】
透析回路の静脈側より、ポンプを用いて持続的に投与するものである請求項1、2又は3に記載の透析患者における貧血改善剤。
【請求項5】
少なくとも必須アミノ酸を含有するアミノ酸輸液からなることを特徴とする透析患者におけるエリスロポエチン使用量低減剤。
【請求項6】
アミノ酸組成が少なくともL−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、グリシン及びL−システインからなり、必須アミノ酸:非必須アミノ酸の比が2.5以上であることを特徴とする請求項5に記載の透析患者におけるエリスロポエチン使用量低減剤。
【請求項7】
下記の組成のアミノ酸を含有することを特徴とするアミノ酸輸液である請求項5又は6に記載の透析患者におけるエリスロポエチン使用量低減剤。
L−イソロイシン 5.0〜10.0g/L
L−ロイシン 8.0〜12.0g/L
L−リジン(酢酸塩として) 4.5〜10.5g/L
L−メチオニン 3.5〜 6.5g/L
L−フェニルアラニン 3.5〜 6.5g/L
L−トレオニン 1.8〜 3.3g/L
L−トリプトファン 1.8〜 3.3g/L
L−バリン 5.0〜10.0g/L
L−アラニン 1.5〜 4.5g/L
L−アルギニン 1.5〜 4.5g/L
L−アスパラギン酸 0.2〜 0.4g/L
L−グルタミン酸 0.2〜 0.4g/L
L−ヒスチジン 1.8〜 3.3g/L
L−プロリン 1.0〜 3.0g/L
L−セリン 0.5〜 1.5g/L
L−チロシン 0.3〜 0.7g/L
グリシン 1.2〜 1.7g/L
L−システイン 0.2〜 0.4g/L
【請求項8】
透析回路の静脈側より、ポンプを用いて持続的に投与するものである請求項5、6又は7に記載の透析患者におけるエリスロポエチン使用量低減剤。
【請求項9】
少なくとも必須アミノ酸を含有するアミノ酸輸液からなることを特徴とする透析患者における血清リン濃度調整剤。
【請求項10】
アミノ酸組成が少なくともL−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、グリシン及びL−システインからなり、必須アミノ酸:非必須アミノ酸の比が2.5以上であることを特徴とする請求項9に記載の透析患者における血清リン濃度調整剤。
【請求項11】
下記の組成のアミノ酸を含有することを特徴とするアミノ酸輸液である請求項9又は10に記載の透析患者における血清リン濃度調整剤。
L−イソロイシン 5.0〜10.0g/L
L−ロイシン 8.0〜12.0g/L
L−リジン(酢酸塩として) 4.5〜10.5g/L
L−メチオニン 3.5〜 6.5g/L
L−フェニルアラニン 3.5〜 6.5g/L
L−トレオニン 1.8〜 3.3g/L
L−トリプトファン 1.8〜 3.3g/L
L−バリン 5.0〜10.0g/L
L−アラニン 1.5〜 4.5g/L
L−アルギニン 1.5〜 4.5g/L
L−アスパラギン酸 0.2〜 0.4g/L
L−グルタミン酸 0.2〜 0.4g/L
L−ヒスチジン 1.8〜 3.3g/L
L−プロリン 1.0〜 3.0g/L
L−セリン 0.5〜 1.5g/L
L−チロシン 0.3〜 0.7g/L
グリシン 1.2〜 1.7g/L
L−システイン 0.2〜 0.4g/L
【請求項12】
透析回路の静脈側より、ポンプを用いて持続的に投与するものである請求項9、10又は11に記載の透析患者における血清リン濃度調整剤。
【請求項13】
少なくとも必須アミノ酸を含有するアミノ酸輸液からなることを特徴とする透析患者における蛋白異化抑制剤。
【請求項14】
アミノ酸組成が少なくともL−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、グリシン及びL−システインからなり、必須アミノ酸:非必須アミノ酸の比が2.5以上であることを特徴とする請求項13に記載の透析患者における蛋白異化抑制剤。
【請求項15】
下記の組成のアミノ酸を含有することを特徴とするアミノ酸輸液である請求項13又は14に記載の透析患者における蛋白異化抑制剤。
L−イソロイシン 5.0〜10.0g/L
L−ロイシン 8.0〜12.0g/L
L−リジン(酢酸塩として) 4.5〜10.5g/L
L−メチオニン 3.5〜 6.5g/L
L−フェニルアラニン 3.5〜 6.5g/L
L−トレオニン 1.8〜 3.3g/L
L−トリプトファン 1.8〜 3.3g/L
L−バリン 5.0〜10.0g/L
L−アラニン 1.5〜 4.5g/L
L−アルギニン 1.5〜 4.5g/L
L−アスパラギン酸 0.2〜 0.4g/L
L−グルタミン酸 0.2〜 0.4g/L
L−ヒスチジン 1.8〜 3.3g/L
L−プロリン 1.0〜 3.0g/L
L−セリン 0.5〜 1.5g/L
L−チロシン 0.3〜 0.7g/L
グリシン 1.2〜 1.7g/L
L−システイン 0.2〜 0.4g/L
【請求項16】
透析回路の静脈側より、ポンプを用いて持続的に投与するものである請求項13、14又は15に記載の透析患者における蛋白異化抑制剤。
【請求項17】
血漿中のタウリン濃度を指標とする透析患者における蛋白異化状態を抑制する方法。
【請求項18】
血漿中のタウリン濃度を指標とする透析患者における蛋白異化状態の測定方法。
【請求項19】
透析時における透析患者へのアミノ酸輸液の投与方法において、透析開始時から終了時の間にかけて、透析回路の静脈側より加圧して投与することを特徴とするアミノ酸輸液の投与方法。
【請求項20】
透析開始時から終了時の間にかけて、透析回路の静脈側より加圧して投与することを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載のアミノ酸輸液。
【請求項21】
請求項1〜4のいずれかに記載の貧血改善剤を投与することからなる透析患者における貧血を改善する方法。
【請求項22】
透析開始時から終了時の間にかけて、透析回路の静脈側より加圧して持続投与することを特徴とする請求項21に記載の透析患者における貧血を改善する方法。
【請求項23】
少なくとも3ヶ月間にわたり、透析開始時から終了時の間にかけて、透析回路の静脈側より、加圧して持続投与することを特徴とする請求項21又は22に記載の透析患者における貧血を改善する方法。
【請求項24】
請求項5〜8のいずれかに記載のエリスロポエチン使用量低減剤を投与することからなる透析患者におけるエリスロポエチンの使用量を低減する方法。
【請求項25】
透析開始時から終了時の間にかけて、透析回路の静脈側より加圧して持続投与することを特徴とする請求項24に記載の透析患者におけるエリスロポエチンの使用量を低減する方法。
【請求項26】
少なくとも3ヶ月間にわたり、透析開始時から終了時の間にかけて、透析回路の静脈側より、加圧して持続投与することを特徴とする請求項24又は25に記載の透析患者におけるエリスロポエチンの使用量を低減する方法。
【請求項27】
請求項9〜12のいずれかに記載の血清リン濃度調整剤を投与することからなる透析患者における血清リン濃度を調整する方法。
【請求項28】
透析開始時から終了時の間にかけて、透析回路の静脈側より加圧して持続投与することを特徴とする請求項27に記載の透析患者における血清リン濃度を調整する方法。
【請求項29】
少なくとも3ヶ月間にわたり、透析開始時から終了時の間にかけて、透析回路の静脈側より、加圧して持続投与することを特徴とする請求項27又は28に記載の透析患者における血清リン濃度を調整する方法。
【請求項30】
請求項13〜16のいずれかに記載の蛋白異化抑制剤を投与することからなる透析患者における蛋白異化を抑制する方法。
【請求項31】
透析開始時から終了時の間にかけて、透析回路の静脈側より加圧して持続投与することを特徴とする請求項30に記載の透析患者における蛋白異化を抑制する方法。
【請求項32】
少なくとも3ヶ月間にわたり、透析開始時から終了時の間にかけて、透析回路の静脈側より、輸液ポンプを用いて加圧して持続投与することを特徴とする請求項30又は31に記載の透析患者における蛋白異化を抑制する方法。
【請求項1】
少なくとも必須アミノ酸を含有するアミノ酸輸液からなることを特徴とする透析患者における貧血改善剤。
【請求項2】
アミノ酸組成が少なくともL−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、グリシン及びL−システインからなり、必須アミノ酸:非必須アミノ酸の比が2.5以上であることを特徴とする請求項1に記載の透析患者における貧血改善剤。
【請求項3】
下記の組成のアミノ酸を含有することを特徴とするアミノ酸輸液である請求項1又は2に記載の透析患者における貧血改善剤。
L−イソロイシン 5.0〜10.0g/L
L−ロイシン 8.0〜12.0g/L
L−リジン(酢酸塩として) 4.5〜10.5g/L
L−メチオニン 3.5〜 6.5g/L
L−フェニルアラニン 3.5〜 6.5g/L
L−トレオニン 1.8〜 3.3g/L
L−トリプトファン 1.8〜 3.3g/L
L−バリン 5.0〜10.0g/L
L−アラニン 1.5〜 4.5g/L
L−アルギニン 1.5〜 4.5g/L
L−アスパラギン酸 0.2〜 0.4g/L
L−グルタミン酸 0.2〜 0.4g/L
L−ヒスチジン 1.8〜 3.3g/L
L−プロリン 1.0〜 3.0g/L
L−セリン 0.5〜 1.5g/L
L−チロシン 0.3〜 0.7g/L
グリシン 1.2〜 1.7g/L
L−システイン 0.2〜 0.4g/L
【請求項4】
透析回路の静脈側より、ポンプを用いて持続的に投与するものである請求項1、2又は3に記載の透析患者における貧血改善剤。
【請求項5】
少なくとも必須アミノ酸を含有するアミノ酸輸液からなることを特徴とする透析患者におけるエリスロポエチン使用量低減剤。
【請求項6】
アミノ酸組成が少なくともL−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、グリシン及びL−システインからなり、必須アミノ酸:非必須アミノ酸の比が2.5以上であることを特徴とする請求項5に記載の透析患者におけるエリスロポエチン使用量低減剤。
【請求項7】
下記の組成のアミノ酸を含有することを特徴とするアミノ酸輸液である請求項5又は6に記載の透析患者におけるエリスロポエチン使用量低減剤。
L−イソロイシン 5.0〜10.0g/L
L−ロイシン 8.0〜12.0g/L
L−リジン(酢酸塩として) 4.5〜10.5g/L
L−メチオニン 3.5〜 6.5g/L
L−フェニルアラニン 3.5〜 6.5g/L
L−トレオニン 1.8〜 3.3g/L
L−トリプトファン 1.8〜 3.3g/L
L−バリン 5.0〜10.0g/L
L−アラニン 1.5〜 4.5g/L
L−アルギニン 1.5〜 4.5g/L
L−アスパラギン酸 0.2〜 0.4g/L
L−グルタミン酸 0.2〜 0.4g/L
L−ヒスチジン 1.8〜 3.3g/L
L−プロリン 1.0〜 3.0g/L
L−セリン 0.5〜 1.5g/L
L−チロシン 0.3〜 0.7g/L
グリシン 1.2〜 1.7g/L
L−システイン 0.2〜 0.4g/L
【請求項8】
透析回路の静脈側より、ポンプを用いて持続的に投与するものである請求項5、6又は7に記載の透析患者におけるエリスロポエチン使用量低減剤。
【請求項9】
少なくとも必須アミノ酸を含有するアミノ酸輸液からなることを特徴とする透析患者における血清リン濃度調整剤。
【請求項10】
アミノ酸組成が少なくともL−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、グリシン及びL−システインからなり、必須アミノ酸:非必須アミノ酸の比が2.5以上であることを特徴とする請求項9に記載の透析患者における血清リン濃度調整剤。
【請求項11】
下記の組成のアミノ酸を含有することを特徴とするアミノ酸輸液である請求項9又は10に記載の透析患者における血清リン濃度調整剤。
L−イソロイシン 5.0〜10.0g/L
L−ロイシン 8.0〜12.0g/L
L−リジン(酢酸塩として) 4.5〜10.5g/L
L−メチオニン 3.5〜 6.5g/L
L−フェニルアラニン 3.5〜 6.5g/L
L−トレオニン 1.8〜 3.3g/L
L−トリプトファン 1.8〜 3.3g/L
L−バリン 5.0〜10.0g/L
L−アラニン 1.5〜 4.5g/L
L−アルギニン 1.5〜 4.5g/L
L−アスパラギン酸 0.2〜 0.4g/L
L−グルタミン酸 0.2〜 0.4g/L
L−ヒスチジン 1.8〜 3.3g/L
L−プロリン 1.0〜 3.0g/L
L−セリン 0.5〜 1.5g/L
L−チロシン 0.3〜 0.7g/L
グリシン 1.2〜 1.7g/L
L−システイン 0.2〜 0.4g/L
【請求項12】
透析回路の静脈側より、ポンプを用いて持続的に投与するものである請求項9、10又は11に記載の透析患者における血清リン濃度調整剤。
【請求項13】
少なくとも必須アミノ酸を含有するアミノ酸輸液からなることを特徴とする透析患者における蛋白異化抑制剤。
【請求項14】
アミノ酸組成が少なくともL−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、グリシン及びL−システインからなり、必須アミノ酸:非必須アミノ酸の比が2.5以上であることを特徴とする請求項13に記載の透析患者における蛋白異化抑制剤。
【請求項15】
下記の組成のアミノ酸を含有することを特徴とするアミノ酸輸液である請求項13又は14に記載の透析患者における蛋白異化抑制剤。
L−イソロイシン 5.0〜10.0g/L
L−ロイシン 8.0〜12.0g/L
L−リジン(酢酸塩として) 4.5〜10.5g/L
L−メチオニン 3.5〜 6.5g/L
L−フェニルアラニン 3.5〜 6.5g/L
L−トレオニン 1.8〜 3.3g/L
L−トリプトファン 1.8〜 3.3g/L
L−バリン 5.0〜10.0g/L
L−アラニン 1.5〜 4.5g/L
L−アルギニン 1.5〜 4.5g/L
L−アスパラギン酸 0.2〜 0.4g/L
L−グルタミン酸 0.2〜 0.4g/L
L−ヒスチジン 1.8〜 3.3g/L
L−プロリン 1.0〜 3.0g/L
L−セリン 0.5〜 1.5g/L
L−チロシン 0.3〜 0.7g/L
グリシン 1.2〜 1.7g/L
L−システイン 0.2〜 0.4g/L
【請求項16】
透析回路の静脈側より、ポンプを用いて持続的に投与するものである請求項13、14又は15に記載の透析患者における蛋白異化抑制剤。
【請求項17】
血漿中のタウリン濃度を指標とする透析患者における蛋白異化状態を抑制する方法。
【請求項18】
血漿中のタウリン濃度を指標とする透析患者における蛋白異化状態の測定方法。
【請求項19】
透析時における透析患者へのアミノ酸輸液の投与方法において、透析開始時から終了時の間にかけて、透析回路の静脈側より加圧して投与することを特徴とするアミノ酸輸液の投与方法。
【請求項20】
透析開始時から終了時の間にかけて、透析回路の静脈側より加圧して投与することを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載のアミノ酸輸液。
【請求項21】
請求項1〜4のいずれかに記載の貧血改善剤を投与することからなる透析患者における貧血を改善する方法。
【請求項22】
透析開始時から終了時の間にかけて、透析回路の静脈側より加圧して持続投与することを特徴とする請求項21に記載の透析患者における貧血を改善する方法。
【請求項23】
少なくとも3ヶ月間にわたり、透析開始時から終了時の間にかけて、透析回路の静脈側より、加圧して持続投与することを特徴とする請求項21又は22に記載の透析患者における貧血を改善する方法。
【請求項24】
請求項5〜8のいずれかに記載のエリスロポエチン使用量低減剤を投与することからなる透析患者におけるエリスロポエチンの使用量を低減する方法。
【請求項25】
透析開始時から終了時の間にかけて、透析回路の静脈側より加圧して持続投与することを特徴とする請求項24に記載の透析患者におけるエリスロポエチンの使用量を低減する方法。
【請求項26】
少なくとも3ヶ月間にわたり、透析開始時から終了時の間にかけて、透析回路の静脈側より、加圧して持続投与することを特徴とする請求項24又は25に記載の透析患者におけるエリスロポエチンの使用量を低減する方法。
【請求項27】
請求項9〜12のいずれかに記載の血清リン濃度調整剤を投与することからなる透析患者における血清リン濃度を調整する方法。
【請求項28】
透析開始時から終了時の間にかけて、透析回路の静脈側より加圧して持続投与することを特徴とする請求項27に記載の透析患者における血清リン濃度を調整する方法。
【請求項29】
少なくとも3ヶ月間にわたり、透析開始時から終了時の間にかけて、透析回路の静脈側より、加圧して持続投与することを特徴とする請求項27又は28に記載の透析患者における血清リン濃度を調整する方法。
【請求項30】
請求項13〜16のいずれかに記載の蛋白異化抑制剤を投与することからなる透析患者における蛋白異化を抑制する方法。
【請求項31】
透析開始時から終了時の間にかけて、透析回路の静脈側より加圧して持続投与することを特徴とする請求項30に記載の透析患者における蛋白異化を抑制する方法。
【請求項32】
少なくとも3ヶ月間にわたり、透析開始時から終了時の間にかけて、透析回路の静脈側より、輸液ポンプを用いて加圧して持続投与することを特徴とする請求項30又は31に記載の透析患者における蛋白異化を抑制する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
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【図6】
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【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−314497(P2007−314497A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171886(P2006−171886)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】
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