説明

透析液生成装置、血液透析装置及び透析液の生成方法

【課題】簡単な装置構成及び装置制御で、高精度の濃度の透析液を生成する。
【解決手段】透析液生成装置1は、内部を2つの混合室に隔てる変位可能な隔壁を有する混合槽10と、希釈液供給源から混合槽10の各混合室にそれぞれ通じる第1の液体ライン11と、各混合室から透析液の供給先に通じる第2の液体ライン12と、内部を2つの貯留室に隔てる変位可能な隔壁を有する透析原液貯留槽13と、透析原液供給源60から各貯留室に通じる第3の液体ライン14と、各貯留室から第1の液体ライン11に通じる第4の液体ライン15と、第1の液体ライン11と第4の液体ライン15との接続部のアスピレータ16と、第1の液体ラインの開閉バルブ31、32と、第2の液体ライン12の開閉バルブ40、41と、第3の液体ライン14の開閉バルブ61、62と、第4の液体ライン15の開閉バルブ70、71と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析液生成装置、血液透析装置及び透析液の生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液透析で用いられる透析液は、透析原液と希釈液とを混合させて生成される。この透析液の生成は、通常透析液生成装置で行われ、例えば定量ポンプを用いて透析原液と希釈液を所定の比率で混合槽に送ることにより、透析液を生成していた。
【0003】
ところで、透析液の成分濃度は、患者への透析に影響するため、安定した高い精度の濃度の透析液を生成する必要がある。そこで、例えば特許文献1には、濃厚透析液と希釈液を混合する混合容器と、当該混合容器に接続された希釈液供給ライン及び濃厚透析液供給ラインと、可動隔壁によって2室に仕切られた定容量容器と、希釈液供給ラインに接続された絞り弁、陰圧ポンプ等を有し、定容量容器の一方の室が、希釈液供給ラインの絞り弁の上流と下流に接続され、定容量容器の他方の室が、混合容器と濃厚透析液供給ラインの濃厚透析液容器に切り替え可能に接続されている、透析液調整装置が提案されている(特許文献1参照)。この透析液調整装置では、定容量容器の一方の室に一旦貯留された希釈液と、定容量容器の他方の室に一旦貯留された濃厚透析液が、混合容器に供給されるので、混合容器において透析液を正確な比率で調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3198495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の透析液調整装置では、定容量容器の一方の室に対する希釈液の出し入れにより、他方の室から混合容器への透析原液の供給の制御を行っている。つまり、希釈液の出し入れを制御して、透析原液の計量と送液が行われている。これを実現するために、希釈液供給ラインには、定容量容器に通じる専用の送液ラインや、陰圧ポンプ等が必要になる。また、希釈液供給ラインにおける希釈液の供給量や、定容量容器に対する希釈液の出し入れ等を制御するために圧力感知手段や絞り弁が必要となる。このように、上記透析液調整装置では、透析原液の計量や送液を、定容量容器に希釈液を出し入れする機構を用いて行うため、絞り弁や陰圧ポンプなど多数の部材や多数の送液ラインが必要になっている。この結果、装置構成が複雑になり、その制御も複雑なっている。装置構成や装置制御の複雑化は、システムの大型化や製造コストの増大といった問題を生じる。また、陰圧ポンプを使用は、透析液の溶存物質の析出という問題も生じる。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、簡単な装置構成や装置制御で、高精度に調整された濃度の透析液を生成できる透析液生成装置、血液透析装置及び透析液の生成方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究の結果、上述したような透析原液の供給のために定容量容器に希釈液を出し入れする機構を用いることなく、簡単な装置構成や装置制御で、濃度精度の高い透析液を生成できる装置及び方法を発明するに至った。
即ち、本発明は、内部を2つの混合室に隔てる変位可能な隔壁を有し、前記各混合室において透析原液と希釈液を混合可能な混合槽と、希釈液の供給源から前記混合槽の各混合室に通じる第1の液体ラインと、前記混合槽の各混合室から透析液の供給先に通じる第2の液体ラインと、内部を2つの貯留室に隔てる変位可能な隔壁を有し、前記各貯留室に透析原液を貯留可能な透析原液貯留槽と、透析原液の供給源から前記透析原液貯留槽の各貯留室に通じる第3の液体ラインと、前記透析原液貯留槽の各貯留室から前記第1の液体ラインに通じる第4の液体ラインと、前記第1の液体ラインと前記第4の液体ラインとの接続部に設けられたアスピレータと、前記第1の液体ラインにおいて、前記混合槽のいずれかの混合室に選択的に前記透析原液と前記希釈液を供給可能にする第1のライン切り替え手段と、前記第2の液体ラインにおいて、前記混合槽のいずれかの混合室の透析液を選択的に前記透析液の供給先に供給可能にする第2のライン切り替え手段と、前記第3の液体ラインにおいて、前記透析原液貯留槽のいずれかの貯留室に選択的に前記透析原液を供給可能にする第3のライン切り替え手段と、前記第4の液体ラインにおいて、前記透析原液貯留槽のいずれかの貯留室の透析原液を選択的に前記アスピレータに供給可能にする第4のライン切り替え手段と、を有する透析液生成装置である。
【0008】
本発明によれば、透析原液貯留槽の貯留室に貯留された一定量の透析原液と、希釈液供給源から供給される希釈液が、最大容積が一定の混合槽の混合室に供給されて混合されるので、高精度に調整された濃度の透析液を生成できる。また、透析原液貯留槽の透析原液をアスピレータにより混合槽に供給できるので、送液ライン上に陰圧ポンプ等を設ける必要がなく、構成が簡単で、複雑な制御も必要ない。したがって、簡単な装置構成及び装置制御で、所望の濃度の透析液を高精度に生成することができる。また、陰圧ポンプを用いないので、透析液の溶存物質の析出といった問題もない。
【0009】
上記透析液生成装置は、前記第1の液体ラインに対し透析原液を供給する、前記第3の液体ライン、前記透析原液貯留槽、前記第4の液体ライン及び前記アスピレータを有する系を複数有していてもよい。
【0010】
また、別の観点による本発明によれば、上記いずれかに記載の透析液生成装置を備えた血液透析装置が提供される。
【0011】
別の観点による本発明は、上記透析液生成装置を用いて行われる透析液の生成方法であって、希釈液の供給源から第1の液体ラインを通じて混合槽の一の混合室に希釈液を供給しつつ、アスピレータにより透析原液貯留槽の一の貯留室の透析原液を吸引し、当該透析原液を、第4の液体ライン及び第1の液体ラインを通じて前記混合槽の一の混合室に供給して、当該一の混合室において前記希釈液と前記透析原液を混合し、その際に、前記透析原液貯留槽では、前記一の貯留室からの前記透析原液の排出により前記透析原液貯留槽の隔壁が一の貯留室側に変位し、透析原液の供給源から他の貯留室に透析原液が供給され、前記混合槽では、前記一の混合室への前記希釈液と前記透析原液の供給により前記混合槽の隔壁が前記他の混合室側に変位し、当該他の混合室の透析液が第2の液体ラインを通じて透析液の供給先に供給される第1の工程と、希釈液の供給源から第1の液体ラインを通じて前記混合槽の他の混合室に希釈液を供給しつつ、アスピレータにより前記透析原液貯留槽の他の貯留室の透析原液を吸引し、当該透析原液を、第4の液体ライン及び第1の液体ラインを通じて前記混合槽の他の混合室に供給して、当該他の混合室において前記希釈液と前記透析原液を混合し、その際に、前記透析原液貯留槽では、前記他の貯留室からの前記透析原液の排出により前記透析原液貯留槽の隔壁が他の貯留室側に変位し、透析原液の供給源から一の貯留室に透析原液が供給され、前記混合槽では、前記他の混合室への前記希釈液と前記透析原液の供給により前記混合槽の隔壁が前記一の混合室側に変位し、当該一の混合室の透析液が第2の液体ラインを通じて透析液の供給先に供給される第2の工程と、を有し、前記第1の工程と前記第2の工程が交互に行われる。
【0012】
本発明によれば、第1の工程と第2の工程が交互に行われるので、高精度の濃度の透析液の生成が連続的に行われ、透析液の生成が効率的に行われる。
【0013】
別の観点による本発明は、上記の第3の液体ライン、透析原液貯留槽、第4の液体ライン及びアスピレータを有する系を複数有する透析液生成装置を用いて行われる透析液の生成方法であって、第3の液体ライン、透析原液貯留槽、第4の液体ライン及びアスピレータを有する複数の各系について、希釈液の供給源から第1の液体ラインを通じて混合槽の一の混合室に希釈液を供給しつつ、アスピレータにより透析原液貯留槽の一の貯留室の透析原液を吸引し、当該透析原液を、第4の液体ライン及び第1の液体ラインを通じて前記混合槽の一の混合室に供給して、当該一の混合室において前記希釈液と前記透析原液を混合し、その際に、前記透析原液貯留槽では、前記一の貯留室からの前記透析原液の排出により前記透析原液貯留槽の隔壁が一の貯留室側に変位し、透析原液の供給源から他の貯留室に透析原液が供給され、前記混合槽では、前記一の混合室への前記希釈液と前記透析原液の供給により前記混合槽の隔壁が前記他の混合室側に変位し、当該他の混合室の透析液が第2の液体ラインを通じて透析液の供給先に供給される第1の工程と、希釈液の供給源から第1の液体ラインを通じて前記混合槽の他の混合室に希釈液を供給しつつ、アスピレータにより前記透析原液貯留槽の他の貯留室の透析原液を吸引し、当該透析原液を、第4の液体ライン及び第1の液体ラインを通じて前記混合槽の他の混合室に供給して、当該他の混合室において前記希釈液と前記透析原液を混合し、その際に、前記透析原液貯留槽では、前記他の貯留室からの前記透析原液の排出により前記透析原液貯留槽の隔壁が他の貯留室側に変位し、透析原液の供給源から一の貯留室に透析原液が供給され、前記混合槽では、前記他の混合室への前記希釈液と前記透析原液の供給により前記混合槽の隔壁が前記一の混合室側に変位し、当該一の混合室の透析液が第2の液体ラインを通じて透析液の供給先に供給される第2の工程と、が交互に行われ、前記各系の前記第1の工程における前記透析原液貯留槽の一の貯留室から前記混合槽の一の混合室への透析原液の供給が順次行われて、前記一の混合室に各系の透析原液と希釈液からなる透析液が生成され、前記各系の前記第2の工程における前記透析貯留槽の他の貯留室から前記混合槽の他の混合室への透析原液の供給が順次行われて、前記他の混合室に各系の透析原液と希釈液からなる透析液が生成される。
【0014】
本発明によれば、各系について第1の工程と第2の工程が交互に行われるので、高精度の濃度の透析液の生成が連続的に行われ、透析液の生成が効率的に行われる。また、複数の系の第1の工程と第2の工程における透析原液貯留槽から前記混合槽への透析原液の供給が、一つの各ずつ順次行われるので、各系の透析原液が濃度の高い状態で互いに混ざることがなく、透析原液同士の反応を防止できる。したがって、より安定した透析液を生成できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単な装置構成及び装置制御で、高精度に調整された濃度の透析液を生成できるので、例えば透析液生成装置の小型化や製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】透析液生成装置の構成の概略を示す模式図である。
【図2】血液透析装置の構成の概略を示す模式図である。
【図3】初期状態の透析液生成装置を示す模式図である。
【図4】一の混合室に透析原液と希釈液を供給する際の透析液生成装置を示す模式図である。
【図5】一の混合室に透析液が満たされた状態の透析液生成装置を示す模式図である。
【図6】他の混合室に透析原液と希釈液を供給する際の透析液生成装置を示す模式図である。
【図7】他の混合室に透析液が満たされた状態の透析液生成装置を示す模式図である。
【図8】透析原液を供給する二つの系を有する透析液生成装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係る透析液生成装置1の構成の概略を示す説明図である。
【0018】
透析液生成装置1は、例えば混合槽10、第1の液体ライン11、第2の液体ライン12、透析原液貯留槽13、第3の液体ライン14、第4の液体ライン15、アスピレータ16等を有している。
【0019】
混合槽10は、一定容積の内部を2つの混合室10a、10bに隔てる変位可能な隔壁20を有しており、各混合室10a、10bにおいて、透析原液と希釈液を混合できる。隔壁20は、例えばダイアフラムなどにより構成されている。隔壁20は、混合槽10の内部の中央に設けられ、混合室10a、10bは、対称になる。混合室10aと混合室10bは、内圧により隔壁20が変位して容積が変動し、一方の容積が大きくなると他方の容積が小さくなる。
【0020】
第1の液体ライン11は、希釈液供給源30から、混合槽10の各混合室10a、10bに通じている。第1の液体ライン11は、途中の分岐部Aより下流側が2つのライン11a、11bに分岐しており、ライン11aが混合槽10の混合室10aに通じ、ライン11bが混合室10bに通じている。第1の液体ライン11のライン11a、11bには、第1のライン切り替え手段としての開閉弁31、32が設けられている。この開閉弁31、32により、混合槽10のいずれかの混合室10a、10bに選択的に透析原液と希釈液を供給することができる。
【0021】
第2の液体ライン12は、混合槽10の各混合室10a、10bから透析液の供給先である後述の血液透析装置100の透析器101に通じている。混合室10a、10bには、第2の液体ライン12のライン12a、12bが接続され、途中の合流部Bで合流し、透析器101のある下流に通じている。第2の液体ライン12のライン12a、12bには、第2のライン切り替え手段としての開閉弁40、41が設けられている。この開閉弁40、41により、混合槽10のいずれかの混合室10a、10bの透析液を選択的に透析器101側に供給できる。
【0022】
透析原液貯留槽13は、例えば一定容積の内部を2つの貯留室13a、13bに隔てる変位可能な隔壁50を有しており、各貯留室13a、13bに透析原液を貯留できる。隔壁50は、例えばダイアフラムなどにより構成されている。隔壁50は、透析原液貯留槽13の内部の中央に設けられ、貯留室13a、13bは、対称になる。貯留室13aと貯留室13bは、内圧により隔壁50が変位して容積が変動し、一方の容積が大きくなると他方の容積が小さくなる。
【0023】
第3の液体ライン14は、透析原液の供給源60から、透析原液貯留槽13の各貯留室13a、13bに通じている。第3の液体ライン14は、途中の分岐部Cより下流側が2つのライン14a、14bに分岐しており、ライン14aが透析原液貯留槽13の貯留室13aに通じ、ライン14bが貯留室13bに通じている。第3の液体ライン14のライン14a、14bには、第3のライン切り替え手段としての開閉弁61、62が設けられている。この開閉弁61、62により、透析原液貯留槽13のいずれかの貯留室13a、13bに選択的に透析原液を供給することができる。
【0024】
第4の液体ライン15は、透析原液貯留槽13の各貯留室13a、13bから第1の液体ライン11に通じている。貯留室13a、13bには、第4の液体ライン15のライン15a、15bが接続され、途中の合流部Dで合流し、第1の液体ライン11のアスピレータ16に通じている。第4の液体ライン15のライン15a、15bには、第4のライン切り替え手段としての開閉弁70、71が設けられている。この開閉弁70、71により、透析原液貯留槽13のいずれかの貯留室13a、13bの透析原液を選択的に第1の液体ライン11に供給できる。また、第4の液体ライン15の合流部Dより下流側には、透析原液貯留槽13側への逆流を防止する逆止弁72が設けられている。
【0025】
アスピレータ16は、第1の液体ライン11と第4の液体ライン15との接続部Eに設けられている。このアスピレータ16は、希釈液供給源30から混合槽10に第1の液体ライン11を通じて希釈液が供給された際に負圧を生じさせて、第4の液体ライン15を通じて透析原液貯留槽13の透析原液を吸引し、当該透析原液を、透析原液貯留槽13から第4の液体ライン15、アスピレータ16及び第1の液体ライン11を通じて混合槽10に供給できる。
【0026】
上記希釈液供給源30、透析原液供給源60、開閉弁31、32、40、41、61、62、70、71などの動作は、例えば制御装置90により制御されている。制御装置90は、例えばコンピュータであり、メモリに記憶された所定のプログラムを実行することによって、透析液生成装置1を制御できる。
【0027】
第2の液体ライン12は、例えば図2に示すように透析液の供給先である血液透析装置100の透析器101に連通している。透析器101は、例えば中空糸膜を内蔵した中空糸モジュールであり、内部の中空糸膜の一次側101aに患者の血液を通過させつつ、二次側101bに透析液を通過させ、一次側101aの血液の不要成分を膜を通じて二次側101bに透過させて血液を透析することができる。第2の液体ライン12は、例えば透析器101の二次側101bに通じている。また、透析器101の二次側101bには、透析廃液の排出ライン102が接続されている。また、透析器101の一次側101aには、患者の血液を透析器101に供給する第1の血液回路103と、透析された血液を患者に戻す第2の血液回路104が接続されている。
【0028】
次に、以上のように構成された透析液生成装置1を用いて行われる透析液の生成方法について説明する。
【0029】
例えば図3に示したように混合槽10の混合室10bに透析液が満たされ、透析原液貯留槽13の貯留室13aに透析原液が満たされ、総ての開閉弁31、32、40、41、61、62、70、71が閉じている状態を初期状態とする。
【0030】
先ず、第1の工程として、開閉弁31と開閉弁41が開放され、図4に示すように希釈液供給源30から第1の液体ライン11を通じて混合槽10の混合室10aに希釈液が供給される。これと同時に、開閉弁62、70が開放され、アスピレータ16の作用により透析原液貯留槽13の貯留室13aの透析原液が吸引され、貯留室13aの透析原液が、第4の液体ライン15、アスピレータ16及び第1の液体ライン11を通じて混合槽10の混合室10aに供給される。
【0031】
このとき、透析原液貯留槽13の隔壁50が貯留室13a側に変位し、貯留室13aの最大容積から定まる一定量の透析原液が混合槽10の混合室10aに供給される。図5に示すようにこの一定量の透析原液と、希釈液供給源30から供給された希釈液により、混合槽10の混合室10aが最大容積に拡張して、透析原液と希釈液で満たされ、透析原液と希釈液からなる所望の割合の透析液が生成される。また、隔壁50の貯留室13a側への変位により、透析原液貯留槽13の貯留室13bには、透析原液供給源60から透析原液が供給される。隔壁50は、例えば貯留室13b側の端から貯留室13a側の端まで移動するので、貯留室13bに供給される透析原液は、貯留室13aから排出された透析原液と同量になる。透析原液は、貯留室13aが空になると流れなくなるので、そのとき開閉弁70、62が閉じられる。また、混合室10aが満たされていくことにより、隔壁20が混合室10b側に変位し、混合室10bの透析液が第2の液体ライン12を通じて透析器101側に供給される。隔壁20は、例えば混合室10a側の端から混合室10b側の端まで移動するので、混合室10aで生成される透析液は、混合室10bから排出された透析液と同量になる。混合室10aが透析液で満たされ、混合室10bの透析液が排出されると、開閉弁31、41が閉じられる。
【0032】
次に、第2の工程として、開閉弁32と開閉弁40が開放され、図6に示すように希釈液供給源30から第1の液体ライン11を通じて混合槽10の混合室10bに希釈液が供給される。これと同時に、開閉弁61、71が開放され、アスピレータ16の作用により透析原液貯留槽13の貯留室13bの透析原液が吸引され、透析原液が、第4の液体ライン15、アスピレータ16及び第1の液体ライン11を通じて混合槽10の混合室10bに供給される。このとき、透析原液貯留槽13の隔壁50が貯留室13b側に変位し、貯留室13bの一定量の透析原液が混合槽10の混合室10bに供給される。また、隔壁50の貯留室13b側への変位により、透析原液貯留槽13の貯留室13aには、透析原液供給源60から透析原液が供給される。このとき、隔壁50は、例えば貯留室13a側の端から貯留室13b側の端まで移動するので、貯留室13aに供給される透析原液は、貯留室13bから排出された透析原液と同量になる。貯留室13bが空になると、開閉弁71、61が閉じられる。
【0033】
一定量の透析原液と、希釈液供給源30から供給された希釈液により、図7に示すように混合槽10の混合室10bが最大容積に拡張して、透析原液と希釈液で満たされ、透析原液と希釈液からなる所望の割合の透析液が生成される。また、混合室10bが満たされていくことにより、隔壁20が混合室10a側に移動し、混合室10aの透析液が第2の液体ライン12を通じて透析器101側に供給される。隔壁20は、例えば混合室10bの端から混合室10a側の端まで移動するので、混合室10bで生成される透析液は、混合室10aから排出された透析液と同量になる。混合室10bが透析液で満たされ、混合室10aの透析液が排出されると、開閉弁32、40が閉じられる。こうして、図4に示した初期状態と同じ状態に戻され、この第1の工程と第2の工程からなる一連のサイクルが繰り返される。この第1の工程と第2の工程の繰り返しは、例えば連続して行われる。
【0034】
以上の実施の形態によれば、透析原液貯留槽13の貯留室13a、13bに貯留された一定量の透析原液と、希釈液供給源30から供給される希釈液が、最大容積が一定の混合槽10の混合室10a、10bに供給されて混合されるので、高精度に調整された濃度の透析液を生成できる。また、透析原液貯留槽13の透析原液をアスピレータ16により混合槽10に供給できるので、構成が簡単で、制御も必要ない。したがって、簡単な装置構成及び装置制御で、高精度の濃度の透析液を生成できる。
【0035】
第2の液体ライン12は、透析液の供給先である血液透析装置100の透析器101に接続されているので、混合槽10の混合室10a、10bの透析液を交互に供給することによって、血液透析装置100の透析を、正確な濃度の透析液を用いて好適に行うことができる。
【0036】
また、以上の実施の形態では、混合室10aで透析液を生成する第1の工程と、混合室10bで透析液を生成する第2の工程が交互に行われるので、透析液の生成が連続的に行われ、透析液の生成が効率的に行われる。
【0037】
上記実施の形態で記載した透析液生成装置1は、第1の液体ライン11に対し透析原液を供給する、第3の液体ライン14、透析原液貯留槽13、第4の液体ライン15及びアスピレータ16を有する系を複数有していてもよい。かかる場合の一例を、図8を用いて説明する。この例は、系が2つの場合であり、その一の系120と他の系121では、異なる種類の透析原液を供給する。また、この例の透析液は、例えばバイカーボ透析液のように、当該2種類の透析原液と希釈液から生成される。
【0038】
先ず、上述の実施の形態と同様に、第1の工程として、開閉弁31と開閉弁41が開放され、希釈液が混合室10aに供給された状態で、一の系120の開閉弁62、70が開放され、一の系120の透析原液貯留槽13の貯留室13aの透析原液が混合槽10の混合室10aに供給される。このとき、貯留室13bには、透析原液が供給され、混合室10bの透析液は、透析器101側に供給される。そして、一の系120の貯留室13aの透析原液が空になると、一の系120の開閉弁62、70が閉鎖される。
【0039】
次に、引き続き開閉弁31と開閉弁41が開放され、希釈液が混合室10aに供給された状態で、他の系121の開閉弁62、70が開放され、他の系121の貯留室13aの透析原液が混合室10aに供給される。このとき、貯留室13bには、透析原液が供給され、混合室10bの透析液は、透析器101側に供給される。そして、他の系121の貯留室13aの透析原液が空になると、他の系121の開閉弁62、70が閉鎖される。そして、混合室10aが希釈液と2種類の透析原液で満たされると、開閉弁31、41が閉鎖される。このように、一の系120による透析原液の供給と、他の系121による透析原液の供給が順番に行われて、混合室10aに各系120、121の透析原液と希釈液からなる透析液が生成される。
【0040】
その後、混合室10bで透析液を生成する第2の工程も同様に、先ず、開閉弁32と開閉弁40が開放され、希釈液が混合室10bに供給された状態で、一の系120の開閉弁61、71が開放され、一の系120の貯留室13bの透析原液が混合槽10の混合室10bに供給される。その後、一の系120の貯留室13bの透析原液が空になって一の系120の開閉弁61と開閉弁71が閉鎖される。
【0041】
その後、引き続き開閉弁32と開閉弁40が開放され、希釈液が混合室10bに供給された状態で、他の系121の開閉弁61、71が開放され、他の系121の貯留室13bの透析原液が混合室10bに供給される。その後、他の系121の貯留室13bの透析原液が空になると、他の系121の開閉弁61、71が閉鎖される。そして、混合室10bが希釈液と2種類の透析原液で満たされると、開閉弁32、40が閉鎖される。このように、一の系120による透析原液の供給と、他の系121による透析原液の供給が順番に行われて、混合室10bに各系120、121の透析原液と希釈液からなる透析液が生成される。
【0042】
そして、これらの混合室10aで透析液を生成する第1の工程と、混合室10bで透析液を生成する第2の工程が交互に連続して行われる。
【0043】
かかる例によれば、各系120、121の第1の工程における透析原液貯留槽13の貯留室13aから混合槽10の混合室10aへの透析原液の供給が順次行われ、また各系120、121の第2の工程における透析原液貯留槽13の貯留室13bから混合槽10の混合室10bへの透析原液の供給が順次行われるので、各系120、121の透析原液が濃度の高い状態で互いに混ざることがなく、透析原液同士の反応を防止できる。したがって、より安定した透析液を生成できる。また、陰圧ポンプを用いないので、透析液の溶存物質が析出することもない。なお、系の数は、2つに限られず、3つ以上であってもよい。
【0044】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。例えばライン切り替え手段は、2つの開閉弁である必要はなく、三方弁など他の構成を有するものであってもよい。また、透析液の供給先は、直接透析器である必要はなく、複数の透析用監視装置を介してそれぞれに装着された透析器に供給されるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、簡単な装置構成や装置制御で、高精度の濃度の透析液を生成する際に有用である。
【符号の説明】
【0046】
1 透析液生成装置
10 混合槽
10a 混合室
10b 混合室
11 第1の液体ライン
12 第2の液体ライン
13 透析原液貯留槽
13a 貯留室
13b 貯留室
14 第3の液体ライン
15 第4の液体ライン
16 アスピレータ
20 隔壁
30 希釈液供給源
31 開閉弁
32 開閉弁
40 開閉弁
41 開閉弁
50 隔壁
60 透析原液供給源
70 開閉弁
71 開閉弁
72 逆止弁
90 制御装置
100 血液透析装置
101 透析器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を2つの混合室に隔てる変位可能な隔壁を有し、前記各混合室において透析原液と希釈液を混合可能な混合槽と、
希釈液の供給源から前記混合槽の各混合室に通じる第1の液体ラインと、
前記混合槽の各混合室から透析液の供給先に通じる第2の液体ラインと、
内部を2つの貯留室に隔てる変位可能な隔壁を有し、前記各貯留室に透析原液を貯留可能な透析原液貯留槽と、
透析原液の供給源から前記透析原液貯留槽の各貯留室に通じる第3の液体ラインと、
前記透析原液貯留槽の各貯留室から前記第1の液体ラインに通じる第4の液体ラインと、
前記第1の液体ラインと前記第4の液体ラインとの接続部に設けられたアスピレータと、
前記第1の液体ラインにおいて、前記混合槽のいずれかの混合室に選択的に前記透析原液と前記希釈液を供給可能にする第1のライン切り替え手段と、
前記第2の液体ラインにおいて、前記混合槽のいずれかの混合室の透析液を選択的に前記透析液の供給先に供給可能にする第2のライン切り替え手段と、
前記第3の液体ラインにおいて、前記透析原液貯留槽のいずれかの貯留室に選択的に前記透析原液を供給可能にする第3のライン切り替え手段と、
前記第4の液体ラインにおいて、前記透析原液貯留槽のいずれかの貯留室の透析原液を選択的に前記アスピレータに供給可能にする第4のライン切り替え手段と、を有する、透析液生成装置。
【請求項2】
前記第1の液体ラインに対し透析原液を供給する、前記第3の液体ライン、前記透析原液貯留槽、前記第4の液体ライン及び前記アスピレータを有する系を複数有している、請求項1又は2に記載の透析液生成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の透析液生成装置を備えた血液透析装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の透析液生成装置を用いて行われる透析液の生成方法であって、
希釈液の供給源から第1の液体ラインを通じて混合槽の一の混合室に希釈液を供給しつつ、アスピレータにより透析原液貯留槽の一の貯留室の透析原液を吸引し、当該透析原液を、第4の液体ライン及び第1の液体ラインを通じて前記混合槽の一の混合室に供給して、当該一の混合室において前記希釈液と前記透析原液を混合し、その際に、前記透析原液貯留槽では、前記一の貯留室からの前記透析原液の排出により前記透析原液貯留槽の隔壁が一の貯留室側に変位し、透析原液の供給源から他の貯留室に透析原液が供給され、前記混合槽では、前記一の混合室への前記希釈液と前記透析原液の供給により前記混合槽の隔壁が前記他の混合室側に変位し、当該他の混合室の透析液が第2の液体ラインを通じて透析液の供給先に供給される第1の工程と、
希釈液の供給源から第1の液体ラインを通じて前記混合槽の他の混合室に希釈液を供給しつつ、アスピレータにより前記透析原液貯留槽の他の貯留室の透析原液を吸引し、当該透析原液を、第4の液体ライン及び第1の液体ラインを通じて前記混合槽の他の混合室に供給して、当該他の混合室において前記希釈液と前記透析原液を混合し、その際に、前記透析原液貯留槽では、前記他の貯留室からの前記透析原液の排出により前記透析原液貯留槽の隔壁が他の貯留室側に変位し、透析原液の供給源から一の貯留室に透析原液が供給され、前記混合槽では、前記他の混合室への前記希釈液と前記透析原液の供給により前記混合槽の隔壁が前記一の混合室側に変位し、当該一の混合室の透析液が第2の液体ラインを通じて透析液の供給先に供給される第2の工程と、を有し、
前記第1の工程と前記第2の工程が交互に行われる、透析液の生成方法。
【請求項5】
請求項3に記載の透析液生成装置を用いて行われる透析液の生成方法であって、
第3の液体ライン、透析原液貯留槽、第4の液体ライン及びアスピレータを有する複数の各系について、
希釈液の供給源から第1の液体ラインを通じて混合槽の一の混合室に希釈液を供給しつつ、アスピレータにより透析原液貯留槽の一の貯留室の透析原液を吸引し、当該透析原液を、第4の液体ライン及び第1の液体ラインを通じて前記混合槽の一の混合室に供給して、当該一の混合室において前記希釈液と前記透析原液を混合し、その際に、前記透析原液貯留槽では、前記一の貯留室からの前記透析原液の排出により前記透析原液貯留槽の隔壁が一の貯留室側に変位し、透析原液の供給源から他の貯留室に透析原液が供給され、前記混合槽では、前記一の混合室への前記希釈液と前記透析原液の供給により前記混合槽の隔壁が前記他の混合室側に変位し、当該他の混合室の透析液が第2の液体ラインを通じて透析液の供給先に供給される第1の工程と、
希釈液の供給源から第1の液体ラインを通じて前記混合槽の他の混合室に希釈液を供給しつつ、アスピレータにより前記透析原液貯留槽の他の貯留室の透析原液を吸引し、当該透析原液を、第4の液体ライン及び第1の液体ラインを通じて前記混合槽の他の混合室に供給して、当該他の混合室において前記希釈液と前記透析原液を混合し、その際に、前記透析原液貯留槽では、前記他の貯留室からの前記透析原液の排出により前記透析原液貯留槽の隔壁が他の貯留室側に変位し、透析原液の供給源から一の貯留室に透析原液が供給され、前記混合槽では、前記他の混合室への前記希釈液と前記透析原液の供給により前記混合槽の隔壁が前記一の混合室側に変位し、当該一の混合室の透析液が第2の液体ラインを通じて透析液の供給先に供給される第2の工程と、が交互に行われ、
前記各系の前記第1の工程における前記透析原液貯留槽の一の貯留室から前記混合槽の一の混合室への透析原液の供給が順次行われて、前記一の混合室に各系の透析原液と希釈液からなる透析液が生成され、
前記各系の前記第2の工程における前記透析貯留槽の他の貯留室から前記混合槽の他の混合室への透析原液の供給が順次行われて、前記他の混合室に各系の透析原液と希釈液からなる透析液が生成される、透析液の生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−147484(P2011−147484A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8919(P2010−8919)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000116806)旭化成クラレメディカル株式会社 (133)
【Fターム(参考)】