説明

透析装置と透析装置のプライミング方法

【解決手段】 プライミングを行う際には、先ず透析器2を透析治療時とは上下逆となるように保持し、その後、血液ポンプ14を回転させることで生食バッグ17の生理食塩液を血液回路3と透析器2内に充満させる。その後、液面調整手段5により大気通路6’、静脈通路12のドリップチャンバ15’および動脈側通路12を介して第2ポート2Hを含めた血液室2C内の上部へ空気が導入される(図3(b))。これにより、透析器2の第2ポート2H内の小さな気泡は、ドリップチャンバ15を経由して導入された空気と一体となり、その後、該空気は血液室2Cに再度導入される生理食塩液により透析器2の外部へ排出される。
【効果】 プライミングの際に透析器2の血液室2C内の気泡を確実に除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透析装置と透析装置のプライミング方法に関し、より詳しくは、血液回路と透析器内を生理食塩液等で満たす、いわゆる「プライミング」の際に血液回路および透析器内の気泡を確実に除去できるようにした透析装置と透析装置のプライミング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透析装置を用いた透析治療においては、その前段階として血液回路と透析器内を生理食塩液等のプライミング液で満たすことで、透析器と血液回路内に空気が残留しないようにしており、この処理は「プライミング」と称されている。このプライミングは、透析治療の際に患者の体内に血液回路から気泡が入るのを防止するために行なわれている。
そして、従来一般的なプライミングの第1の方法としては生理食塩液を用いる方法が知られており、第2の方法としては、血液回路内の液圧よりも透析液回路内の液圧を陽圧にして透析液を血液室に導入する、いわゆる「逆ろ過」によって透析液を透析器および血液回路内に充満させる方法が知られている(特許文献1〜特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−33111号公報
【特許文献2】特開2001−245970号公報
【特許文献3】特開2007−167108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来のプライミング方法においても、プライミングの際に透析器内に小さな気泡が付着して残留する場合があり、その場合には医療従事者が透析器を叩いて衝撃を与えたり、あるいは、上記特許文献1にあるように、血液ポンプの脈動を用いてプライミング液を送液することで気泡を除去するようにしている。
しかしながら、従来の前者のやり方は医療従事者に負担を強いることになり、他方、後者のやり方では、透析器内に残留する小さな気泡を確実に除去できない恐れがあった。より詳細には、図6に示すように、従来一般的な透析器は、円筒状の外装ケースの内部に多数の中空糸膜を備えており、これら中空糸膜の内部空間および中空糸膜の両端部の隣接領域が血液室となっている。そして、血液室は、外装ケースの一端となる第1ポートを介して血液通路の動脈側通路に連通するとともに、外装ケースの他端となる第2ポートから血液通路の静脈側通路に連通している。そして、プライミングの際には、血液室とそれに連通する血液回路(動脈側通路、静脈側通路)内がプライミング液で満たされるが、その際、透析器の中空糸膜内の小さな気泡は、上方側となる中空糸の端部の隣接領域(第1ポート)内に溜まり易い(図6参照)。しかも、プライミング液としての生理食塩液は流動性が悪いので、上記外装ケース内の血液室の上部に残留した気泡を従来のプライミング方法によって確実に除去するのは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した事情に鑑み、第1の本発明は、内部に血液室と透析液室とを有する透析器と、一端が採血口となり、他端が上記透析器の血液室の一端に接続される動脈側通路および一端が返血口となり、他端が上記血液室の他端に接続される静脈側通路とを有する血液回路と、上記透析器における透析液室の入口に接続される透析液供給通路および上記透析室の出口に接続される透析液回収通路とを有する透析液回路と、上記透析器の血液室および上記血液回路にプライミング液を供給するプライミング液供給手段とを備える透析装置において、
上記動脈側通路又は静脈側通路に設けられた気体導入口から血液回路内に気体を導入する気体導入手段を設け、上記プライミング液で満たした上記透析器の血液室および上記血液回路に、上記気体導入口から気体を導入して、上記透析器における血液室の一方の端部とその隣接領域のプライミング液を気体で置換してから該血液室を再びプライミング液で満たすことにより、上記血液回路と上記透析器の血液室から気泡を除去するようにしたものである。
また、第2の本発明は、内部に血液室と透析液室とを有する透析器と、一端が採血口となり、他端が上記透析器の血液室の一端に接続される動脈側通路および一端が返血口となり、他端が上記血液室の他端に接続される静脈側通路とを有する血液回路と、上記透析器における透析液室の入口に接続される透析液供給通路および上記透析室の出口に接続される透析液回収通路とを有する透析液回路と、上記透析器の血液室および上記血液回路にプライミング液を供給するプライミング液供給手段とを備え、上記透析器の血液室および血液回路にプライミング液を充満させるようにした透析装置のプライミング方法において、
上記透析器の血液室および上記血液回路をプライミング液で満たす第1プライミング工程と、上記プライミング液で満たされた透析器の血液室の所定領域を気体で置換する気体導入工程と、上記気体導入工程において気体で置換された血液室の所定領域をプライミング液で再度満たす第2プライミング工程とを備えるものである。
【発明の効果】
【0006】
上述した構成によれば、プライミングの際に血液室内に気泡があったとしても、血液室内に導入される気体と気泡とが一体となり、該一体となった気体によってプライミング液が置換され、それからプライミング液とともに血液室内の気体は透析器および血液回路の外部へ排出される。従って、透析器の血液室および血液回路内の気体を確実に除去することができる。したがって、医療従事者に作業負担を強いることなく、透析器の血液室および血液回路から確実に気泡を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施例を示す透析装置の斜視図。
【図2】図1に示した透析装置の回路構成を示す図。
【図3】図1に示した透析装置により生理食塩液を用いてプライミングを行う際の工程図であり、図3(a)は第1段階、図3(b)は第2段階を示し、図3(c)は第3段階を示している。
【図4】図1に示した透析装置により逆ろ過によってプライミングを行う際の工程図であり、図4(a)は第1段階、図4(b)は第2段階を示し、図4(c)は第3段階を示している。
【図5】本発明の他の実施例の要部を示す回路図。
【図6】従来一般的な透析器の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示実施例について本発明を説明すると、図1ないし図2において、透析装置1は病院のコンセントCなどの電源から給電されて作動し、また、箱型の本体部1A内に設けられた制御手段1Bによって作動を制御されるようになっている。本実施例の透析装置1は、本体部1Aの側面に鉛直方向に保持される円柱状の透析器2と、この透析器2に接続された血液回路3と、透析器2に接続されるとともに本体部1A内に設けられた透析液回路4とを備えている。
上記制御手段1Bは画面表示式の操作パネル1Cを備え、その画面には操作に必要なボタンやアイコン、メッセージが表示され、装置の操作および各種パラメータの設定を行うことができるようになっている。
本実施例の透析装置1は、1人の患者を対象に血液透析療法(HD)を行う透析装置であって、透析装置1の使用開始前にプライミングを行うようになっている。
また、この透析装置1は、透析治療中において透析液回路4側を血液回路3側よりも陽圧にすることにより、透析器2と血液回路3を介して患者に透析液を補液できるようになっている。このように透析液回路4側を陽圧にして透析器2と血液回路3を介して患者に透析液を補液することは、従来一般的に『逆ろ過』と称されている。そして、本実施例においては、透析治療を実施する前段階において血液回路3と透析器2内を液体で満たすプライミングの際には、透析装置1によって『逆ろ過』を行うことにより、透析器2内と血液回路3内を透析液で満たすことでプライミングを行うことができるとともに、血液回路3と透析器2内に透析液を満たしてプライミングを行うことができるようになっている。つまり、本実施例の透析装置1は、上述した生理食塩液を用いる方法と「逆ろ過」による方法の2種類の方式によりプライミングを行うことができるようになっている。
【0009】
次に透析器2について説明するが、この透析器2の構成は図6に示した従来公知ものと同じである。すなわち、透析器2は、円筒状の樹脂からなる外装ケース2Aと、該外装ケース2Aの内部に束ねて設けられた多数の中空糸膜2Bとを備えている。そして、上記各中空糸膜2B内がろ過膜(半透膜)となっており、それらの内部および両端部の隣接領域が血液室2Cとなっている。上記ろ過膜としての中空糸膜2Bは、液体は通過させるが気体を通過させない性質を有している。中空糸膜2Bの長手方向の一端の隣接領域は外装ケース2Aの第1ポート2Gとなっており、長手方向の他端の隣接領域は外装ケース2Aの第2ポート2Hとなっている。両ポート2G、2Hの内部空間も上記血液室2Cを構成しており、各ポート2G,2Hのいずれか一方が血液室2Cの長手方向の一端となり、いずれか他方が血液室2Cの長手方向の他端となる。
図1に示すように、上記第1ポート2Gに動脈側通路11の一端が接続される一方、第2ポート2Hに静脈側通路12の一端が接続されている。この図1に示すように、患者に対する透析治療時には、第1ポート2Gが上方となり、第2ポート2Hが下方となるように、透析器2は本体部1Aに鉛直方向に保持されるようになっている。そして、透析治療時には、透析器2の血液室2Cが上記血液回路3と連通し、血液室2Cを血液が流通するようになっている。
【0010】
他方、円筒状の外装ケース2Aの内周面と血液室2C(各中空糸膜2B)との間の空間部は透析液が流通する透析液室2Dとなっている。外装ケース2Aの外周面の下部には、透析液室2Dに透析液を導入するための入口2Eが形成されるとともに、外装ケース2Aの外周面の上部には透析液を排出するための出口2Fが形成されている。透析液回路4の透析液供給通路23が入口2Eに接続されるとともに、透析液回路4の透析液回収通路24が出口2Fに接続されている。それにより透析液室2D内は上記透析液回路4と連通して、透析液が血液とは逆方向に流通するようになっている。
図1に示すように、透析器2は、透析治療時においては、上記入口2Eが下方となり、出口2Fが上方となるように、本体部1Aの側面に鉛直方向に保持されるようになっている。従来公知のように、血液回路3を患者に接続して透析器2の血液室2Cに血液を流通させるとともに透析液回路4からの透析液を透析器2の透析液室2Dに流通させることにより、患者に対して透析治療を行うようになっている。
【0011】
次に透析器2に接続された血液回路3について説明する。血液回路3は、患者の血管に接続されて上記透析器2の血液室2Cに血液を供給する動脈側通路11と、透析器2の血液室2Cから患者に血液を戻す静脈側通路12とを備えており、これらの通路は樹脂製のチューブで構成されている。動脈側通路11の一端は上記透析器2の第1ポート2Gに接続されており、動脈側通路11の他端には患者の血管に穿刺される穿刺針11aが設けられている。また、この動脈側通路11には、上記穿刺針11a側から順に、動脈側通路11を閉鎖するクランプ手段13と、血液を送液する血液ポンプ14と、ドリップチャンバ15とが配置されている。上記血液ポンプ14は、チューブをしごいて送液するローラポンプであるとともに、上記制御手段1Bによって作動を制御され、患者から透析器2の血液室2Cへ血液を送液することができるようになっている。
【0012】
上記動脈側通路11のドリップチャンバ15は、後に詳述する液面調整手段5によって内部の液面の高さを調整されるようになっている。このドリップチャンバ15には大気通路6の一端が接続されており、この大気通路6の途中に圧力計16が設けられている。
上記静脈側通路12の一端は上記透析器2の血液室2Cの第2ポート2Hに接続されており、静脈側通路12の他端には、患者の血管に穿刺される穿刺針12aが設けられている。静脈側通路12には、上記透析器2から順に、ドリップチャンバ15’および静脈側通路12を閉鎖する閉塞手段としてのクランプ手段13’が配置されている。
ドリップチャンバ15’も液面調整手段5によって液面の高さを調整されるようになっている。ドリップチャンバ15’には、大気通路6’の一端が接続されており、その大気通路6’に圧力計16’が設けられている。大気通路6’の他端6a’は上記大気通路6の上流部分に接続されており、上記大気通路6’の他端6a’よりも透析器2に近い位置に配置された連通路7によって大気通路6’と大気通路6とは相互に連通している。
連通路7よりも端部6a’側となる大気通路6’には、開閉弁V101が配置される一方、連通路7よりも端部6a’側となる大気通路6にはエアポンプ8が設けられている。また、連通路7よりも透析器2側となる大気通路6には開閉弁V102が配置されており、連通路7よりも透析器2側となる大気通路6’には開閉弁V103が設けられている。各開閉弁V101〜V103およびエアポンプ8は、制御手段1Bによって作動を制御されるようになっている。また、圧力 計16、16’によって計測された各ドリップチャンバ15、15’内の圧力は制御手段1Bに伝達されるようになっている。
なお、大気導入口となる大気通路6の他端には、大気を浄化する無菌フィルタ9が配置されており、この無菌フィルター9によって浄化された大気が各大気通路6、6’を介してドリップチャンバ15,15’に導入されるようになっている。本実施例においては、両大気通路6,6’、各開閉弁V101〜V103およびエアポンプ8によって液面調整手段5が構成されている。この液面調整手段5によって両ドリップチャンバ15、15’内の液面の高さが調整されるようになっている。
【0013】
図4(a)に示すように、動脈側のドリップチャンバ15は密閉された略円筒形状となっており、その底部15Aに透析器2との間の動脈側通路11の上流端が接続されている。他方、ドリップチャンバ15の天井15Bには、血液ポンプ14側となる動脈側通路11の下流端が接続されるとともに、上記液面調製機構5の大気通路6の一端が接続されている。
図3に示した静脈側のドリップチャンバ15’の構成は、上記図4に示したドリップチャンバ15の構成と同じである。そして、このドリップチャンバ15’の底部15A’に静脈側通路12のクランプ手段13’側の上流端が接続されており、天井15B’には透析器2側となる静脈側通路12の下流端が接続されるとともに、液面調整手段5の大気通路6’の端部が接続されている。
ドリップチャンバ15、15’内に生理食塩液等のプライミング液あるいは血液が貯溜されている状態において、ドリップチャンバ15、15’内の上部空間を占める気体の量を液面調整手段5によって増減させることで、ドリップチャンバ15内の液体の液面高さを所要の高さに調整できるようになっている(図3(a)、図4(a)参照)。
液面調整手段5は、透析治療前に上記血液回路3と透析器2の血液室2Cに透析液を充満させるプライミングの際にも使用されるようになっており、プライミングの際にドリップチャンバ15、15’の液面の高さを調整するようになっている。また、透析治療中においては、液面調整手段5によってドリップチャンバ15,15’内の血液の液面が所要の高さに維持されるようになっている。
【0014】
より詳細には、液面調製手段5による動脈側のドリップチャンバ15の液面高さの調整は次のようにして行われる。制御手段1Bは、両開閉弁V101、V103を閉鎖させた状態で開閉弁V102を開放し、かつエアポンプ8を正転または逆転させる。これにより、大気通路6内に大気が導入されてからエアポンプ8と開閉弁V102を経由してドリップチャンバ15内に空気が導入される。それにより、密閉状態のドリップチャンバ15における上部空間の容積が変更されることで、ドリップチャンバ15内の液体(血液、生理食塩液等)の液面高さが所要の高さに維持されるようになっている(図2、図4(a)参照)。
他方、液面調製手段5による静脈側のドリップチャンバ15’内の液面高さの調整は次のようにして行われる。制御手段1Bは、開閉弁V102とV101をともに閉鎖させた状態で開閉弁V103を開放させ、かつエアポンプ8を正転または逆転させる。それにより、エアポンプ8の前後の大気通路6、連通路7とそれに接続された大気通路6’を介して空気がドリップチャンバ15’内に導入される。それにより、密閉状態のドリップチャンバ15’における上部空間の容積が変更されることで、ドリップチャンバ15’内の液体(血液、生理食塩液等)の液面高さが所要の高さに維持されるようになっている(図2、図3(a)参照)。なお、大気通路6には無菌フィルタ9が設けられているので、両ドリップチャンバ15,15’内へは、無菌フィルタ9で浄化された清浄な大気が導入される。
本実施例においては液面調整手段5を気体導入手段として兼用しており、プライミングの際に透析器2内の上方側となるいずれかのポート2G,2H内に空気を導入し、該導入された空気と各ポート2G,2H内の小さな気泡を一体化させてから血液室2cの外部へ排出するようにしている。
【0015】
図2に示すように、生理食塩液を貯溜した生食バッグ17内の生理食塩液を用いてプライミングを行う場合には、血液ポンプ14よりも上流側の動脈側通路11に接続チューブ18を介して生食バッグ17を接続するようにしている。この場合、接続チューブ18の途中には、該接続チューブ18を閉塞するクランプ手段19が配置される。接続チューブ18を介して生食バッグ17を動脈側通路11に接続してからクランプ手段19を開放させると、生食バッグ17内の生理食塩液が流下して動脈側通路11、透析器2の血液室2C内、および静脈側通路12に導入されるようになっている。このように、生食バッグ17の生理食塩液を血液回路3と透析器2の血液室2C内に充満させることで、プライミングを行なうようになっている。本実施例の透析器2、血液回路3および液面調整手段5は以上のように構成されている。
【0016】
次に、透析液回路4について説明するが、この透析液回路4の基本構成と作動は例えば特開平10−43290号公報に開示された従来技術と実質的に同じである。すなわち、透析液回路4は、第1透析液チャンバ21または第2透析液チャンバ22から新鮮な透析液を透析器2の透析液室2Dに供給する透析液供給通路23と、透析器2の透析液室2Dを通過した使用済みの透析液を第1透析液チャンバ21または第2透析液チャンバ22に回収する透析液回収通路24とを備えており、これらの通路は樹脂製のチューブで構成されている。
上記第1、第2透析液チャンバ21、22には、図示しない透析液製造装置から供給される新鮮な透析液の流通する給液通路25と、使用済みの透析液を排出するための排液通路26とが接続されている。
第1透析液チャンバ21および第2透析液チャンバ22は同じ構成となっており、それらの内部は2枚のダイアフラムによって区画されている。つまり、新鮮な透析液を供給するための供給室21a,22aと、使用済みの透析液を回収するための回収室21b、22bと、これら供給室21a,22aと回収室21b、22bとの間に形成された中間室21c、22cとに区画されている。
【0017】
上記中間室21c、22cの内部にはそれぞれシリコーンオイルが充満されており、各中間室21c、22c内のシリコーンオイルはオイルポンプ27によって各中間室21cと中間室22cとの間を相互に送液されるようになっており、これにより中間室21c、22cの容積が増減されるようになっている。本実施例においてオイルポンプ27によって各チャンバ21,22の中間室21c、22cの容積を増減させることにより、透析治療中において逆ろ過を行って透析液を患者に補液できるようになっている。また、後述するが、本実施例においては透析治療開始前に逆ろ過によってプライミングを行うようになっている。
上記給液通路25には上記透析液を送液する給液ポンプ31が設けられるとともに、該給液ポンプ31の下流側において給液通路25は2方向に分岐して上記第1、第2透析液チャンバ21、22の上記供給室21a,22aに接続されている。そして、分岐した通路にはそれぞれ上記制御手段1Bによって開閉される給液弁V1,V2が設けられている。
【0018】
上記透析液供給通路23は、その上流部分が2方向に分岐してそれぞれ上記第1、第2透析液チャンバ21、22の供給室21a,22aに接続され、下流側の端部は上記透析器2の透析液室2D(入口2E)に接続されている。そして、上記分岐部分にはそれぞれ制御手段1Bによって開閉される供給弁V3,V4が設けられている。
また、透析液供給通路23における透析器2に近い箇所には、透析液の有害成分を除去する第1透析液フィルターF1および第2透析液フィルターF2が所定間隔を隔てて直列に配置されており、さらに、第2透析液フィルターF2と透析器2との間の箇所には制御手段1Bによって開閉される第1開閉弁V5が設けられている。上記両フィルターF1、F2の間の箇所となる透析液供給通路23には、所要時に透析液供給通路23を大気に開放する開放手段32が接続されている。
【0019】
上記第1透析液フィルターF1内は半透膜によって一次側(上流室)と二次側(下流室)とに区画されており、透析液が一次側(上流室)から半透膜を通過して二次側(下流室)へ透過する際に有害成分が除去されるようになっている。この第1透析液フィルターF1における一次側(上流室)には、上記透析液供給通路23と透析液回収通路24とを連通させる第1バイパス通路33が接続されており、この第1バイパス通路33には上記制御手段1Bによって開閉される第2開閉弁V6が設けられている。
上記第2透析液フィルターF2内も半透膜によって一次側(上流室)と二次側(下流室)とに区画されており、透析液が一次側(上流室)から半透膜を通過して二次側(下流室)へ透過する際に有害成分が除去される。第2透析液フィルターF2における一次側(上流室)には、透析液供給通路23と透析液回収通路24とを連通させる第2バイパス通路34が接続されており、この第2バイパス通路34には上記制御手段1Bによって開閉される第3開閉弁V7が設けられている。
患者への透析治療中においては、上記第1開閉弁V5は開放される一方、上記第2開閉弁V6と第3開閉弁V7は閉鎖されるようになっている。これに対して、例えば図示しない濃度センサによって透析液の濃度の不良が検出された場合には、制御手段1Bは上記第1開閉弁V5を閉鎖するとともに第2開閉弁V6を開放する。それにより、濃度不良の透析液を透析器2に流通させることなく第1バイパス通路33を介して透析液回収通路24へと送液できるようになっている。このように、本実施例においては、透析液供給通路23に両透析液フィルターF1、F2が直列に配置されるとともに、透析液供給通路23と透析液回収通路24とにわたって両バイパス通路33,34が並列に配置されている。
【0020】
そして、本実施例においては、上記両透析液フィルターF1、F2の漏れを検出するために、開放手段32が設けられている。開放手段32は、透析液供給通路23における両透析液フィルターF1、F2の間に接続された開放通路35と、この開放通路35に設けられて制御手段1Bによって開閉される第4開閉弁V8と、開放通路35に設けられて透析液の流出を阻止する逆止弁36と、流入する大気を清浄化する無菌フィルター37とを備えている。
上記開放手段32は、上記両透析液フィルターF1、F2の漏れの検査に使用されるものであり、透析治療前又は透析治療後の所要時に、この開放手段32を用いて漏れの検査が行われる。より詳細には、所要時に制御手段1Bが上記第1開閉弁V5を閉鎖して第2開閉弁V6、第3開閉弁V7、第4開閉弁V8を開放する。すると、上記開放通路35を介して透析液回路4への大気の流入が許容され、上記両透析液フィルターF1、F2における二次側(又は一次側)から一次側(又は二次側)への大気の流入の有無により、透析液フィルターF1、F2の漏れを検査できるようになっている。
【0021】
次に、透析液回収通路24について説明する。透析液回収通路24は、上流側の端部が上記透析器2の透析液室2C(出口2F)に接続されるとともに、下流部分が2方向に分岐してそれぞれ上記第1、第2透析液チャンバ21、22の回収室21b、22bに接続されており、上記分岐部分にはそれぞれ制御手段1Bによって開閉される回収弁V10,V11が設けられている。
また、透析液回収通路24には、上記透析器2側から順に、透析液回路4内の圧力を測定する圧力センサ41と、透析液を送液する透析液ポンプ42と、透析液内の気体を脱気する脱気槽43とが設けられている。そして、該脱気槽43と排液通路26との間には第3バイパス通路44が配設されている。この第3バイパス通路44には上記制御手段1Bによって開閉される第5開閉弁V12が設けられている。また、透析液回収通路24における第1バイパス通路33の接続部よりも透析器2に近い箇所には、制御手段1Bによって開閉される第6開閉弁V13が設けられている。
患者に対する透析治療中においては、上記第6開閉弁V13は開放される一方、上記第5開閉弁V12は閉鎖されるようになっている。これに対して、透析器2の漏れを検査する際には第5開閉弁V12が開放されて、上記第3バイパス通路44内に透析液を流通させるようになっている。
次に、上記排液通路26は、その上流部分が2方向に分岐してそれぞれ上記第1、第2透析液チャンバ21、22の回収室21b、22bに接続され、下流側の端部は医療機関に設備された図示しない排液管に接続されており、さらに、上記分岐部分にはそれぞれ制御手段1Bによって開閉される排液弁V14,V15が設けられている。
【0022】
以上の構成からなる透析装置1において、患者に対する透析治療を行う前に、血液回路3および透析器2の血液室2C内をプライミング液で満たすプライミングが行われ、このプライミングが完了してから透析治療が行われる。本実施例においては、プライミングの方式として生食バッグ17内の生理食塩液を用いる方式と、逆ろ過によって透析液を用いる方式との2種類のプライミングを行うことができる。そこで、先ず、第1実施例としての生食バッグ17内の生理食塩液を用いて方式とその後の透析治療について説明し、次に第2実施例としての逆ろ過によるプライミングについて説明する。
すなわち、生食バッグ17を用いるプライミングの場合には、先ず、透析器2を透析治療時の場合とは上下逆にして本体部1Aに保持させる。これにより、鉛直方向に保持された透析器2は、第2ポート2Hが上端となり、第1ポート2Gが下端となる(図3(a)参照)。なお、このように透析器2を透析治療の際とは上下逆に保持するのは、動脈側通路11には血液ポンプ14が配置されているので、液体内の気泡を除去する際に気泡が血液ポンプ14内に停止して外部へ抜けなくなるのを防止するためである。そのために、本実施例では、第1ポート2Gとそれに接続された動脈通路11の一端が下端となるように、透析器2を本体部1Aに保持させる。
そして、この後、図2に示すように、現場の医療従事者が生食バッグ17から続く接続チューブ18の端部を動脈側通路11に接続する。
【0023】
この後、接続チューブ18のクランプ手段19を制御手段1Bが開放させるとともに血液ポンプ14を正転させる。それにより、生食バッグ17内の生理食塩液が流下するとともに血液ポンプ14によって透析器2に向けて送液される。そのため、プライミング液としての生理食塩液は、動脈側通路11の接続チューブ18との接続箇所から透析室2Cの第1ポート2G、透析器2の血液室2Cを通って静脈側通路12に導入される。また、適宜のタイミングで制御手段1Bが血液ポンプ14を逆転させることにより、動脈側通路1における接続チューブ18との接続箇所から穿刺針11aまで生理食塩液が導入される。この時、両クランプ手段13,13’は開放されているので、動脈側通路11内に流下した生理食塩液は穿刺針11aから排出されるとともに、透析器2と静脈側通路12を通過した生理食塩液は穿刺針12aから排出される。このようにして、生食バッグ17の生理食塩液を血液回路3と透析器2の血液室2C内に充満させることで、プライミングが進行する。
【0024】
ここで、本実施例では、図3(a)に示すように、プライミング中に上方側に位置する透析器2の第2ポート2H内に小さな気泡が溜まることを考慮して、プライミングの最後の段階において透析器2の血液室2C内の気泡を除去するために、上記液面調整手段5から静脈側通路12のドリップチャンバ15’を介して空気を上記第2ポート2H内に送り込むようにしている。
すなわち、制御手段1Bは、プライミングの最後の段階で、液面調整手段5の開閉弁V101、V102を閉鎖した状態において、開閉弁V103を開放するとともにエアポンプ8を正転させる。また、これと同時に、制御手段1Bは血液ポンプ14を逆転させるとともに、クランプ手段13’により静脈側通路12を閉鎖する(図2、図3(a)、図3(b)参照)。これにより、大気通路6’を介してドリップチャンバ15’内の上部空間に空気が供給され、該上部空間の空気は静脈側通路12を介して透析器2の第2ポート2Hおよび中空糸膜2B内の上部まで供給される(図3(b)参照)。これにより、第2ポート2H内にあった小さな気泡は、ドリップチャンバ15’と静脈側通路12を経由して新たに導入された空気と一体となり、該一体となった空気によって血液室2Cの上端部となる領域(第2ポート2Hおよび中空糸膜2B)の生理食塩液が置換される(図3(b)参照)。本実施例においては、プライミング液(生理食塩液)を透析器2の血液室2C内に下方側から導入する一方、液面調整手段5による空気の導入は透析器2の血液室2C内へ上方から下方に向けて導入するようになっている。つまり、血液室2Cへのプライミング液の導入方向と空気の導入方向は逆方向になっている。
この後、制御手段1Bは、血液ポンプ14を正転させるとともに、エアポンプ8を逆転させるので、ドリップチャンバ15’の上部空間の空気が大気通路6’を介して排出される。それに伴って、第2ポート2Hを含めた血液室2Cの上部領域および静脈側通路12内の空気がぬきとられ、それに代わって生理食塩液が充満する(図3(c)参照)。これにより、第2ポート2Hにあった気泡は透析器2と静脈側通路12から確実に除去される。このようにして、本実施例においては、液面調整手段5によって透析器2に空気を導入する前と後とで、2度にわたってプライミングが行われることになる。
この後、制御手段1Bによって、血液ポンプ14およびエアポンプ8の作動は停止されるとともに、クランプ手段13’による静脈側通路12の閉鎖状態は開放される。このようにして、生食バッグ17の生理食塩液を用いたプライミングが完了する。
なお、液面調整手段5によるドリップチャンバ15’、血液回路3への空気の導入方式としては、次のような方式も採用することができる。すなわち、エアポンプ8を停止させ、かつ開閉弁V102を閉鎖した状態で、制御手段1Bは開閉弁V101、V103を開放するとともに血液ポンプ14を逆転させる。この場合、血液ポンプ14が逆転されることにより、開閉弁V101,V103を経由して大気通路6’からドリップチャンバ15’と血液回路3に大気が導入される。
【0025】
以上のようにして、血液回路3および透析器2内を生理食塩液で満たすプライミングが完了すると、現場の医療従事者によって透析器2が上記プライミングの時とは逆の保持状態に反転させられる。つまり、図1に示すように、第1ポート2Gが上方に位置してそこに動脈側通路11が接続されるとともに、第2ポート2Hが下方に位置してそこに静脈通路12が接続された状態となる。この後は従来と同様に患者に対する透析治療が行われる。すなわち、先ず、透析治療開始前に患者に対して両穿刺針11a、12aを刺して血液回路3を接続し、その後に血液ポンプ14を作動させて血液回路3に血液を流通させる。
この状態において、上記制御手段1Bは、給液弁V1と排液弁V14を開放するとともに供給弁V3と回収弁V10を閉鎖し、さらに、制御手段1Bは、給液ポンプ31を作動させるとともに第1開閉弁V5、第6開閉弁V13を開放させる。なお、その他の各開閉弁V6〜V9、V12は閉鎖されている。すると、第1透析液チャンバ21では、給液弁V1と排液弁V14とが開放されているため、供給室21aには上記給液通路25から透析液が流入し、回収室21bではダイアフラムが押圧されて先に充填されている使用済みの透析液が排液通路26を介して外部へ排出される。
一方、上記第2透析液チャンバ22では、制御手段1Bが供給弁V4と回収弁V11を開放するとともに給液弁V2と排液弁V15を閉鎖する。すると回収室22bには上記透析液ポンプ42によって送液された使用済みの透析液が流入し、これにより供給室22aから新鮮な透析液が透析液供給通路23を介して透析器2の透析液室2Dに供給されることとなる。
その後、上記制御手段1Bが上記給液弁V1,V2、供給弁V3,V4、回収弁V10,V11、排液弁V14,V15を交互に開閉することで、第1透析液チャンバ21と第2透析液チャンバ22を介して新鮮な透析液が透析液供給通路23を介して透析器2の透析液室2Dへと供給される一方、透析器2の透析液室2Dを通過した使用済みの透析液は第1透析液チャンバ21と第2透析液チャンバ22に交互に回収されて上記排液通路26を介して透析液回路4の外部へ排出される。
このように、透析液回路4から透析器2の透析液室2Dへ透析液が流通するとともに、血液回路3を介して透析器2の血液室2Cに血液が流通することで、患者に対して透析治療が施される。
【0026】
ところで、透析治療中において、患者に対して『逆ろ過』によって透析液を補充する必要が生じた場合には、次のような処理が行われる。つまり、処理済み透析液が回収されている第1透析液チャンバ21の中間室21cに、オイルポンプ27によってシリコーンオイルを所要量供給する。それにより、第1チャンバ21の供給室21aの容量よりも回収室21bの容量が小さくなる結果、それらの容量差に相当する透析液が透析器2の血液室2Cを介して血液回路3へ、すなわち患者の血液へと圧入されることになる。このようにして、透析治療中の所要時に逆ろ過による透析液の補液の処理が行われる。
【0027】
以上のようにして、生食バッグ17内の生理食塩液を用いたプライミングが行われ、その後に患者に対する透析治療が行われる。他方、第2の実施例である逆ろ過による第2の方式のプライミングは次のようにして行われる。
すなわち、この場合、図1および図4に示すように、透析治療時と同様に、第1ポート2Gが上方側となるように透析器2を鉛直方向に保持した状態でプライミングが行われる。つまり、上方側となる第1ポート2Gには動脈側通路11が接続され、下方側となる第2ポート2Hには静脈側通路12が接続される。また、上方側となる出口2Fには透析液回収通路24が接続され、下方側となる入口2Eには透析液供給通路23が接続される(図4(a)参照)。
この状態で前述した逆ろ過の処理が行われる。また、この逆ろ過と同時に、制御手段1Bは、逆ろ過による流量の約半分の流量となるように血液ポンプ14を逆転させる。そのため、透析液供給通路23から透析器2の透析液室2C内に透析液が供給され、さらにその透析液は血液室2C内に圧入される。そして、血液室2C内へ圧入された透析液は、上記血液ポンプ14の逆転によって両ポート2G、2Hを経由して両通路11,12内に振り分けられる。それにより、両通路11,12内が透析液で満たされるとともに、動脈側通路11を介してドリップチャンバ15内にも透析液が導入される。なお、この第2実施例においては、生理食塩液を貯溜した生食バッグ17は使用しないようになっている。
このようにしてプライミングが行われるが、プライミングの最終段階において、透析器2の上方側となる第1ポート2Gに気泡が残っている事を想定して(図4(a)参照)、液面調整手段5を用いて次のようにして気泡の除去処理が行なわれる。
すなわち、先ず、制御手段1Bは一旦、逆ろ過を停止し、その状態において血液ポンプ14を停止させるとともに、第2クランプ手段13’を開放させる。また、これと同時に制御手段1Bは、開閉弁V101,V103を閉鎖させた状態で開閉弁V102を開放させるとともに、エアポンプ8を正転させる。これにより、大気通路6を介してドリップチャンバ15内に空気が導入されるので、該空気によってドリップチャンバ15内の透析液は動脈側通路11を介して透析器2の血液室2C内に押し戻される。これに伴い、血液室2C内の透析液は静脈側通路12へ排出される。さらに、ドリップチャンバ15内に導入された空気は、動脈側通路11を経由して第1ポート2Gを含めた血液室2Cの上部内まで導入されるので、該新たに導入された空気と先に第1ポート2G内にあった気泡とが一体となる(図4(a)、図4(b)参照)。つまり、第1ポート2Gと血液室2Cの上方部内の透析液が空気と置換されたことになる。なお、この逆ろ過によるプライミングの場合においても、血液室2Cへのプライミング液の導入方向と空気の導入方向は逆方向になっている。
【0028】
この後、制御手段1Bは、第2クランプ手段13’を閉鎖してから再度透析液回路4により逆ろ過を行う(図4(c)参照)。つまり、再度、逆ろ過によるプライミングが行われる。これにより、透析液が血液室2Cに導入され、さらに第1ポート2Gから通路11内へ、さらにドリップチャンバ15内に透析液が導入される。これに伴い、上方側となる第1ポート2Gおよび血液室2Cの上部内の空気は、動脈側通路11を介してドリップチャンバ15の上部空間へと排出される。つまり、先に第1ポート2G内にあった気泡は、液面調整手段5により導入された空気と一体となってドリップチャンバ15へ確実に排出される。この後、制御手段1Bは、エアポンプ8を逆転させるので、ドリップチャンバ15内の空気が大気通路6を介して排出され、それに伴ってドリップチャンバ15内の透析液の液面が所要の高さまで上昇する(図4(c)参照)。
このようにして、逆ろ過によって透析器2の透析液室2D,血液室2C内および血液回路3がプライミング液としての透析液で満たされて、プライミングが完了する。この逆ろ過によるプライミングの場合においても、液面調整手段5により透析器2の血液室2Cに空気を導入する前と後とで、2度にわたってプライミングを実施するようにしている。
この逆ろ過によるプライミングの場合には、透析器2は透析治療時と同じ保持状態となっているので、この後、直ちに上述した透析治療に移行することができる。そして、この後、前述したようにして透析装置1による透析治療が実施される。
【0029】
以上に述べた第1実施例および第2実施例によれば、プライミングの際に透析器2の各ポート2H,2Gに小さな気泡が残留していたとしても、プライミングの最後段階において上方側に位置する各ポート2H,2Gを含めた血液室2C内に空気を敢えて導入することで、該導入された空気と各ポート2H、2G内の気泡とを一体となるようにしている。換言すると、上方側に位置する血液室2Cの上部内のプライミング液を敢えて所要量の空気に置換するようにしている。その状態において、各ポート2H,2Gおよび血液室2C内を再度プライミング液で満たして血液室2Cの外部へ空気を排出しているので、各ポート2H,2Gを含めた血液室2C内の気泡を確実に除去することができる。そのため、従来行っていたように現場の医療従事者が透析器2に衝撃を与えて内部の気泡を排出させる手間は必要ない。
したがって、本実施例によれば、透析治療が行われる医療現場の医療従事者に作業負担を強いることなく、透析器2および血液回路3内から確実に気泡を除去することができる。
【0030】
なお、上記第2の実施例では、第2のプライミング方式として逆ろ過によるプライミングを行っているが、異なる方式によって逆ろ過を行うようにしても良い。すなわち、例えば特開2003−180823号公報のように、透析液回収回路に設けた除水ポンプを逆回転させて逆ろ過する方式によりプライミングを行う場合にも本発明を適用することで気泡の除去を行うことできる。また、その他の方式によるプライミングであっても本発明による気泡の除去を行うことができる。
また、上述した実施例においては、気体導入手段として上記液面調整手段5を利用しているが、それに代えて次のような構成を採用しても良い。つまり、図5に示すように、動脈側となるドリップチャンバ15と透析器2との間となる動脈側通路11に一方の気体導入手段51を設けるとともに、静脈側となるドリップチャンバ15’と透析器2との間となる静脈側通路12に他方の気体導入手段52とを設ければよい。ここで、気体導入手段51は、大気開放通路53とそれに設けた開閉弁V105、エアポンプ55および無菌フィルタ56から構成される。また、他方の気体導入手段52も気体導入手段51と同様に構成されるので、気体導入手段51と対応する各構成部材には、それぞれ’を付して示している。
このような構成において、プライミングの最終段階において、前述した実施例のように、各気体導入手段51、52により、長手方向が鉛直方向となるように保持された透析器2の上方となっている各ポート2G又は、2Hを含めた血液室2C内に空気を導入してプライミング液を置換する。その後に、再度透析器2の各ポート2G又は、2Hを含めた血液室2C内をプライミング液で満たすことにより血液室2C内の気泡を確実に除去することができる。
【符号の説明】
【0031】
1‥透析装置 2‥透析器
2C‥血液室 2G‥第1ポート
2H‥第2ポート 3‥血液回路
4‥透析液回路
5‥液面調整手段(気体導入手段) 11‥動脈側通路
12‥静脈側通路
14‥血液ポンプ(プライミング液供給手段)
17‥生食バッグ(プライミング液供給手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に血液室と透析液室とを有する透析器と、一端が採血口となり、他端が上記透析器の血液室の一端に接続される動脈側通路および一端が返血口となり、他端が上記血液室の他端に接続される静脈側通路とを有する血液回路と、上記透析器における透析液室の入口に接続される透析液供給通路および上記透析室の出口に接続される透析液回収通路とを有する透析液回路と、上記透析器の血液室および上記血液回路にプライミング液を供給するプライミング液供給手段とを備える透析装置において、
上記動脈側通路又は静脈側通路に設けられた気体導入口から血液回路内に気体を導入する気体導入手段を設け、
上記プライミング液で満たした上記透析器の血液室および上記血液回路に、上記気体導入口から気体を導入して、上記透析器における血液室の一方の端部とその隣接領域のプライミング液を気体で置換してから該血液室を再びプライミング液で満たすことにより、上記血液回路と上記透析器の血液室から気泡を除去することを特徴とする透析装置。
【請求項2】
上記動脈通路および静脈通路には、それぞれ内部の液体の液面高さを調整可能なドリップチャンバが設けられており、上記気体導入口は、動脈側通路のドリップチャンバ又は静脈側通路のドリップチャンバに設けられることを特徴とする請求項1に記載の透析装置。
【請求項3】
上記透析器は長手方向が鉛直方向となるように保持されており、上記気体導入手段により、透析器の血液室の上方となる端部およびその隣接領域に気体を導入してプライミング液を気体に置換することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の透析装置。
【請求項4】
内部に血液室と透析液室とを有する透析器と、一端が採血口となり、他端が上記透析器の血液室の一端に接続される動脈側通路および一端が返血口となり、他端が上記血液室の他端に接続される静脈側通路とを有する血液回路と、上記透析器における透析液室の入口に接続される透析液供給通路および上記透析室の出口に接続される透析液回収通路とを有する透析液回路と、上記透析器の血液室および上記血液回路にプライミング液を供給するプライミング液供給手段とを備え、上記透析器の血液室および血液回路にプライミング液を充満させるようにした透析装置のプライミング方法において、
上記透析器の血液室および上記血液回路をプライミング液で満たす第1プライミング工程と、上記プライミング液で満たされた透析器の血液室の所定領域を気体で置換する気体導入工程と、上記気体導入工程において気体で置換された血液室の所定領域をプライミング液で再度満たす第2プライミング工程とを備えることを特徴とする透析装置のプライミング方法。
【請求項5】
上記動脈通路および静脈通路には、それぞれ内部の液体の液面高さを調整可能なドリップチャンバが設けられており、上記気体導入工程においては、上記いずれかのドリップチャンバに設けられた気体導入口から透析器に気体を導入することを特徴とする請求項4に記載の透析装置のプライミング方法。
【請求項6】
上記透析器は長手方向が鉛直方向となるように保持されており、上記気体導入工程においては、上記透析器における上方側となる血液室の端部およびその隣接領域に気体を導入してプライミング液と置換することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の透析装置のブライミング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−231985(P2012−231985A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102905(P2011−102905)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】