説明

透水性・保水性セメント硬化体の製造方法

【課題】保水剤を多量に保持させることにより保水力を向上させ、地温の上昇を有効に抑制し得る保水性・透水性セメント硬化体の製造方法を提供する。
【解決手段】透水性セメント部材2を、透水性セメント部材2を構成するセメント22が凝結の始発に至る前に、吸水性ポリマー3を溶解させた保水剤溶液3L内に浸漬する浸漬工程Aを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路等を舗装する透水性舗装に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市部では、道路舗装率の増大等に伴って水環境や熱環境が著しく変化してきており、様々な問題が発生してきている。
【0003】
なかでも熱環境に関しては、舗装化の進展による地面の保水機能の低下が、地表からの水分蒸散による大気に対する冷却作用の低下を招き、特に都市部においてヒートアイランド現象をもたらす一因ともなっている。
【0004】
従来、このような問題を解消すべく、透水性コンクリートと呼ばれている多孔質体をなすセメントコンクリート、ポーラスコンクリートや開粒度アスファルトコンクリートを用いて道路を舗装することで舗装面を介して水を蒸発させることにより、当該水が気化熱として舗装面から熱を奪うことを利用して地温上昇を有効に回避しようとした試みが行われている。
【0005】
その一例として、骨材の粒径を調節することや、保水性を有する木質材料などを練り混ぜることにより、透水性と保水性とを併せて保持させることを目的とした技術が開示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。また、透水性コンクリートを構成する粗骨材の間隙に保水剤たる保水性ポリマーを充填するといった技術も開示されている(例えば、特許文献3参照)。そして一般に、粗骨材の間隙に保水剤を充填する方法として、保水剤を所定濃度に溶解させた保水剤溶液を透水性コンクリートへ噴霧するといった方法が行われている。
【特許文献1】特開2004−225283号公報
【特許文献2】特開2004−299965号公報
【特許文献3】特開2004−003158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたコンクリートブロックについて、同文献ではブロック絶乾状態で180L/m3の水を保持可能で6日間水を保持可能と開示されている。しかし、実際の施工を考えて面積1m2(厚み10cm)に敷設した場合、18Lしか水分を保持しないため、水の保持期間も1/10、すなわち18Lで0.6日間しか水を保持し得ないこととなり、十分な保水性能を有したものとはいえない。一方特許文献2について、同文献に開示された保水性ポーラスコンクリート成形体の透水係数は、透水性ブロックの規格値1×10-2cm/secを満たすものの、当該規格値よりも桁が異なるほどの透水係数ではないため、実際に施工した場合には砂塵等による若干の空隙詰まりによって当該規格値を容易に下回ってしまうこととなる。
【0007】
他方、特許文献3のように、透水性コンクリートを構成する粗骨材間の空隙に保水剤を噴霧するものの場合、保水剤を溶解させた保水剤溶液の濃度の範囲が著しく限定されるという欠点がある。特に、保水剤をなるべく多く透水性コンクリートの空隙部に保持させることを考えると噴霧する保水剤の濃度を高く設定することが要求される。しかし保水剤の濃度が高すぎると、噴霧に適さない保水剤溶液となってしまうか、或いは噴霧が出来たとしても透水性コンクリートの内部にまで浸透させるのに時間を要するため、施工効率が悪いものとなってしまう。また、十分な時間噴霧を行わないと透水性コンクリート内部の保水剤の配置にムラが出来てしまい、結果として十分量の保水剤を保持させることが出来ず、結果として十分な保水力を有さないものとなる。
【0008】
本発明は、このような不具合に着目したものであり、保水力を向上させることにより地温の上昇を有効に抑制し得る保水性・透水性セメント硬化体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。すなわち、本発明に係る透水性・保水性セメント硬化体の製造方法は、透水性セメント部材の空隙部に保水剤を配置してなる透水性・保水性セメント硬化体の製造方法であって、前記透水性セメント部材を、前記保水剤を溶解させた保水剤溶液内に浸漬する工程を含んでいることを特徴とする。
【0010】
また、本明細書において透水性セメント部材とは、例えば透水性を有するポーラスコンクリートや排水性コンクリートと呼ばれる、骨材とセメントとの混合物の他に、透水性を有する形状にモルタルを成形してなるものも含む概念である。
【0011】
このようなものであれば、保水剤を溶解させた保水剤溶液に透水性セメント部材に浸漬することによって、噴霧のムラを生じさせることなく透水性セメント部材の空隙部に均一に保水剤を配置することが可能となる。また、透水性セメント部材は保水剤溶液内に浸漬するのみで透水性セメント部材の空隙部に保水剤を配置することが出来るので、容易且つ効率的に製造することが可能となる。また、噴霧による保水剤濃度の制限を受けないため、保水剤濃度を広い範囲に設定できる。すなわち、噴霧し得ない程の濃度の保水剤溶液を用いることも可能となり、そうすることにより透水性セメント部材の内部に保水剤を多量に配置することができる。これらの結果として、本発明によれば、保水性の高い、すなわち温度上昇抑制効果の高い透水性・保水性コンクリートを製造することが可能となる。
【0012】
また、前記浸漬工程を、透水性セメント部材の製造工程においてセメントが凝結の始発に至る前に、透水性セメント部材を保水剤溶液内に浸漬する工程とすることが好ましい。ここで凝結の始発とはJIS R5201に定義された状態を指す。さらに、凝結の始発の時間は、例えば超速硬セメントを採用した場合や遅延剤を混合した場合など、セメントを硬化させる要因或いはその他の製造条件に合わせて前後させて設定することも可能である。斯かる浸漬工程を採用することにより、凝結の始発の後にセメント硬化体を浸漬する場合と比べて、さらに多量の保水剤を保持させることが可能である。
【0013】
また保水剤として水分散性を示す吸水性ポリマーを採用したものとすれば、降雨等による吸水性ポリマーの流失が起き難いものとなるため望ましい。
【0014】
なお、本発明において水分散性の吸水性ポリマーは特に制限されるものではないが、例えば、ポリアクリル酸(塩)架橋(供)重合体等を挙げることができるが、詳細には、アルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート架橋重合体、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸(塩)架橋共重合体等のポリオキシアルキレン基を有する架橋(共)重合体;(メタ)アクリルアミド/(メタ)アクリル酸(塩)架橋共重合体、N-ビニルアセトアミド架橋重合体、N-ビニルアセトアミド/(メタ)アクリル酸(塩)架橋共重合体等のアミド基を有する架橋(共)重合体;ポリアリルアミン架橋体、ポリエチレンイミン架橋体等のアミノ基を有する架橋(共)重合体;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート架橋重合体、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸(塩)架橋共重合体、ビニルアルコール/(メタ)アクリル酸(塩)架橋(共)重合体等のヒドロキシル基を有する架橋(共)重合体;2-アクリルアミド/2-メチルプロパンスルホン酸(塩)架橋重合体、2-アクリルアミド/2-メチルプロパンスルホン酸(塩)/(メタ)アクリル酸(塩)架橋共重合体、スルホアルキル(メタ)アクリレート(塩)架橋共重合体、スルホアルキル(メタ)アクリレート(塩)/(メタ)アクリル酸(塩)架橋共重合体、スルホン化ポリスチレン架橋体等のスルホン酸(塩)基を有する架橋(共)重合体;ポリビニルスルホン酸架橋体、モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート架橋(共)重合体等のリン酸(塩)基を有する架橋(共)重合体;架橋ポリエチレンオキシド、架橋ポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルピリジン、澱粉/ポリ(メタ)アクリロニトリルグラフト共重合体のけん化物、澱粉/ポリ(メタ)アクリル酸(塩)グラフト共重合架橋体、ポリビニルアルコールと無水マレイン酸(塩)との反応生成物、イソブチレン/マレイン酸(塩)架橋共重合体、ベタインモノマー(共)重合体、アニオン性モノマーとカチオン性モノマーとの架橋共重合体、等が例示される。これら吸水性ポリマーは、一種類のみを用いてもよいが、二種類以上を併用してもよい。
【0015】
そして水分散性がある保水性ポリマーとしてポリアクリル酸ソーダ架橋体を採用した場合、この保水剤を溶解させた保水剤溶液の溶解濃度を30〜60%に設定したものとすれば、保水性の高い透水性・保水性セメント硬化体を好適に製造することができる。ここで、保水剤の濃度が30%未満の場合、透水性セメント部材の内部に保持させる保水剤の量が十分ではない、すなわち保水量が不十分なものものとなってしまい、温度上昇抑制効果が十分に得られなくなってしまう。また、保水剤の濃度が60%を超えると、浸漬する工程において透水性セメント部材の内部に保水剤を浸透させ難く、透水性セメント部材の内部に均一に保水剤を配置することが出来ず、結果として保水剤の保持量が少ないもの、すなわち保水量が不十分なものとなってしまう。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、保水剤を溶解させた保水剤溶液に透水性セメント部材を浸漬する工程を採用するによって、噴霧による場合のような噴霧ムラを生じさせることを有効に回避し、透水性セメント部材の空隙部に均一に保水剤を配置することが可能となる。また、透水性セメント部材は保水剤溶液内に浸漬するのみで透水性セメント部材の空隙部に保水剤を配置することが出来るので、容易且つ効率的に製造することが可能となる。また、噴霧による保水剤濃度の制限を受けないため、保水剤濃度を広い範囲に設定できる。すなわち、噴霧し得ない程の濃度の保水剤溶液を用いることも可能となり、そうすることにより透水性セメント部材の内部に保水剤を多量に配置することができる。これらの結果として、本発明によれば、保水性の高い、すなわち温度上昇抑制効果の高い透水性・保水性コンクリートを製造することが可能となる。そしてこのような本発明に係る透水性・保水性セメント硬化体を道路の舗装等に適用すれば、ヒートアイランド現象の主因である路面の温度上昇を有効に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態に係る透水性・保水性セメント硬化体1を図1に示す。このものは、例えば空隙率20%の透水性セメント部材2の空隙部sに保水剤たる吸水性ポリマー3を配置した構造をなすものである。
【0019】
ここで、本実施形態に係る透水性・保水性セメント硬化体1は、透水性セメント部材2の製造過程における、セメント22が凝結の始発に至る前に、吸水性ポリマー3を溶解させた保水剤溶液3L内に浸漬する工程すなわち浸漬工程Aを採用することによって製造している。
【0020】
以下、透水性・保水性セメント硬化体1の構成について図1を用いて説明する。
【0021】
透水性セメント部材2は本実施形態において、例えば骨材21、セメント22の他にAE減水剤等を含んだものであって、内部に空隙部sを形成することによって、単体ではポーラスコンクリート或いは排水性コンクリートを構成し得るものである。また透水性セメント部材2は、空隙部sが占める空隙率を例えば20%に設定している。ここで、透水性セメント部材2を構成するものとしては他にも、透水性を有するように構成されたものであれば、例えばセメント22に硬化遅延剤や硬化促進剤を混合したものであってもよく、また、骨材21を用いずにモルタルを、透水性を有する所定形状に成形したものであってもよい。
【0022】
吸水性ポリマー3は、本実施形態では水分散性のものとして、ポリアクリル酸ソーダ架橋体を採用している。
【0023】
しかして、上述の通り透水性・保水性セメント硬化体1は、吸水性ポリマー3を溶解させた保水剤溶液3Lを満たした保水剤槽Tに透水性セメント部材2を浸漬する浸漬工程Aを経て製造されるものである。以下、この浸漬工程Aについて図2を用いて詳述する。
【0024】
ここで保水剤槽Tは、本実施形態において上述したポリアクリル酸ソーダ架橋体を、溶解濃度を例えば30%に調節して溶解させた保水剤溶液3Lを内部に満たしているものである。
【0025】
まず、上述した骨材21、セメント22と水とを混ぜ合わせたセメント混合物2pを、所定形状の枠型Fに打設する(同図(a))。そしてセメント22の水和反応すなわちセメント22が硬化する過程において、セメント混合物2pの可撓性がある程度喪失するまでの一定時間が経過した後に脱型し、透水性セメント部材2を取り出す。なお、本実施形態では、例えば透水性セメント部材2の厚みが例えば10cmとなるように打設している。
【0026】
ここで、脱型した透水性セメント部材2を、本実施形態では特に脱型後4時間以内の透水性セメント部材2を保水剤槽Tに浸漬する浸漬工程Aを行う(同図(b))。そして透水性セメント部材2から気泡が出なくなる時間を目安として透水性セメント部材を保水剤槽から引き上げる(同図(c))。なお本実施形態ではこの浸漬工程Aを30秒行ってから透水性セメント部材2を引き上げるように設定しているが、浸漬工程Aに要する時間は、勿論打設する透水性セメント部材2の厚み、空隙率、吸水性ポリマー3の溶解濃度によって適宜異なるものである。そして、引き上げた透水性セメント部材2は降雨などが無い場所に載置して、自然状態で乾燥させることにより、図1に示す透水性・保水性セメント硬化体1を完成させる。
【0027】
以上のように、本実施形態に係る透水性・保水性セメント硬化体1の製造方法によれば、保水剤たる吸水性ポリマー3を溶解させた保水剤溶液3L中に透水性セメント部材2を浸漬することによって、例えば保水剤の噴霧による噴霧のムラを生じさせることなく、透水性セメント部材2の空隙部sに均一に保水剤を配置することが可能となる。また、透水性セメント部材2は保水剤溶液3L内に浸漬するのみで透水性セメント部材2の空隙部sに吸水性ポリマー3を配置することが出来るので、容易且つ効率的に透水性・保水性セメント硬化体1を製造することが可能となる。また、保水剤溶液3Lは噴霧による溶解濃度の制限を受けないため、吸水性ポリマー3の溶解濃度を広い範囲に設定することができる。すなわち、噴霧し得ない程に高い濃度の保水剤溶液3Lを用いることも可能となるので、噴霧による方法に比べて透水性セメント部材2の内部に吸水性ポリマー3を多量に配置することができる。
【0028】
特に、透水性セメント部材2の製造過程におけるセメント22の凝結の始発(JIS R5201参照)に至る前、すなわち本実施形態では脱型後4時間以内に保水剤溶液3Lに浸漬することにより、例えば凝結の始発後や凝結の終結後のセメント硬化体を浸漬する場合と比べて、さらに多量の吸水性ポリマー3を保持させることができるものとなっている。これらの結果として、本発明に係る透水性・保水性セメント硬化体1の製造方法によれば、保水性の高い、すなわち温度上昇抑制効果の高い透水性・保水性コンクリートを製造することが可能となる。
【0029】
また保水剤として水分散性すなわち水に略不溶性を示す吸水性ポリマー3を採用しているので、水による吸水性ポリマー3の流失が起き難くなり、当該透水性・保水性セメント硬化体1の保水効果が長時間維持し得るものとなっている。さらに詳細には、保水剤たる吸水性ポリマー3をポリアクリル酸ソーダ架橋体とし、保水剤溶液3Lにおける溶解濃度を30%に設定して浸漬工程Aを行っているので、透水性セメント部材2の内部に吸水性ポリマー3を均一に十分量配置し得るものとすることができる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【実施例】
【0031】
以下、本発明に係る実施例について詳述するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
<1.使用材料>
使用材料として、以下に記すセメント、細骨材、混和剤及び保水剤を用いた。
セメント:普通ポルトランドセメント(密度:3.15g/cm3
細骨材 :砕砂(粗粒率:3.12、表乾密度:2.63g/cm3
混和剤 :高性能AE減水剤
保水剤 :ポリアクリル酸ソーダ架橋体
<2.配合>
上述した保水剤以外の使用材料を用いて表1に示した配合により、模擬試験体を作成した。当該模擬試験体の外形寸法は10×10×20cmとした。
【0032】
【表1】

【0033】
<3.試験概要>
<3.1残存保水剤量測定>
上述した保水剤を所定の溶媒に溶解濃度30%で溶解させた保水剤溶液に模擬試験体を浸漬させた後の残存保水剤量を測定した。
<3.2保水剤溶解濃度勾配保水剤量測定>
保水剤溶解濃度を10%ずつ(10〜80%)変化させた時の残存保水剤量及び保水(吸水)量を測定した。但し、浸漬時間は30秒とした。
<3.3凝結始発終結時間測定>
本配合によるセメント混合物の凝結時間、詳細には凝結の始発に至る時間並びに凝結の終結を迎える時間を、JIS R5201に批准して測定した。
<3.4脱型経過時間―保水剤保持量相関調査>
模擬試験体の保水剤保持量を脱型直後から経過時間ごとに測定した。但し、使用した保水剤は溶解濃度10%、30%、50%及び70%のものとした。
<3.5>
<3.5温度上昇抑制効果測定>
保水剤濃度30%及び50%中に浸漬した模擬試験体と保水剤に浸漬していない模擬試験体において、時間降雨量10mm/hに相当するように10L/m2の散水を1時間かけて行った後、表面温度を測定した。
<3.6透水係数調査>
上記3.5に用いた3種の模擬試験体の透水係数を測定した。
<4.試験結果>
<4.1残存保水剤量測定>
上記3.1残存保水剤量測定の結果を表2並びに図3に示す。
【0034】
【表2】

【0035】
保水剤濃度30%の溶液中に浸漬した時間を0〜40秒(10秒毎)とした場合、保水剤残存量は浸漬時間30秒で最高となり、40秒でも保水剤残存量の増加は認められなかった。よって、保水剤濃度を30%に設定した寸法10×10×20cmの模擬試験体の場合、好適な浸漬時間は30秒であることが認められた。
<4.2保水剤溶解濃度勾配保水剤量測定>
上記3.2保水剤溶解濃度勾配保水剤量測定の結果を表3並びに図4に示す。
【0036】
【表3】

【0037】
濃度勾配を持たせた各保水剤溶液(10〜80%)に浸漬した模擬試験体の保水剤残存量及び保水量を比較した結果、濃度30〜60%に浸漬した模擬試験体が保水剤残存量及び保水量共に多い結果が得られた。
<4.3凝結始発終結時間測定>
上記3.3凝結始発終結時間測定の結果を表4に示す。
【0038】
【表4】

【0039】
上記表1に示した配合にて作成した模擬試験体の凝結時間は始発4時間15分、終結6時間28分であることが判明した。
<4.4脱型経過時間―保水剤保持量相関調査>
上記3.4脱型経過時間―保水剤保持量相関調査の結果を表5並びに図5に示す。
【0040】
【表5】

【0041】
保水剤濃度別に模擬試験体脱型直後から時間毎に浸漬し保水剤残存量を測定した場合、保水剤濃度にかかわらず脱型4〜5時間経過後で残存量が減少する傾向を示した。
すなわち、上記4.3凝結始発終結時間測定と併せて考えると、模擬試験体が凝結の始発に至る前に保水剤溶液中に浸漬することにより、より効果的に保水剤を模擬試験体内に残存させることが出来るという結果を得たこととなる。
<4.5温度上昇抑制効果測定>
上記3.5温度上昇抑制効果測定の結果を表6並びに図6に示す。
【0042】
【表6】

【0043】
濃度30%及び50%の保水剤を含浸させた模擬試験体による舗装表面温度の最高温度は、保水剤を含浸していない模擬試験体による舗装表面温度の最高温度に対し、濃度30%で最大7.3℃、濃度50%で最大8.5℃低くなるという結果を示した。
<4.6透水係数調査>
上記3.6透水係数調査の結果を表7並びに図7に示す。
【0044】
【表7】

【0045】
濃度30%及び50%の保水剤溶液に浸した模擬試験体(図並びに表において「考案品」と表示)の透水係数は、ともに保水剤を含浸していない模擬試験体より透水係数は若干小さくなるものの、透水性ブロックの規格値1×10-2cm/secと比べて10-1オーダーの数値を示しており、実際に施工した場合の砂塵等による空隙詰まりを考慮しても、両考案品すなわち模擬試験体は十分な透水性を示しているといえる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一本実施形態に係る透水性・保水性セメント硬化体を示す模式的な説明図。
【図2】同実施形態に係る透水性・保水性セメント硬化体を製造する手順を示す図。
【図3】本発明の一実施例に係る浸漬時間を示す図。
【図4】同実施例に係る保水剤の残存量及び保水量を示す図。
【図5】同実施例に係る脱型後経過時間と保水剤残存量との関係を示す図。
【図6】同実施例に係る温度上昇抑制効果の差異を示す図。
【図7】同実施例に係る透水係数の差異を示す図。
【符号の説明】
【0047】
1…透水性・保水性セメント硬化体
2…透水性セメント部材
22…セメント
3…保水剤、吸水性ポリマー(吸水性ポリマー)
3L…保水剤溶液
A…浸漬工程
s…空隙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透水性セメント部材の空隙部に保水剤を配置してなる透水性・保水性セメント硬化体の製造方法であって、
前記透水性セメント部材を、前記保水剤を溶解させた保水剤溶液内に浸漬する浸漬工程を含んでいることを特徴とする透水性・保水性セメント硬化体の製造方法。
【請求項2】
前記浸漬工程を、前記透水性セメント部材を構成するセメントが凝結の始発に至る前に、前記透水性セメント部材を前記保水剤溶液内に浸漬する工程としている請求項1記載の透水性・保水性セメント硬化体の製造方法。
【請求項3】
前記保水剤を、水分散性の保水剤としている請求項1又は2記載の透水性・保水性セメント硬化体の製造方法。
【請求項4】
前記保水剤をポリアクリル酸ソーダ架橋体としたものであって、
当該保水剤の前記保水剤溶液における溶解濃度を30〜60%に設定している請求項1、2又は3記載の透水性・保水性セメント硬化体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−273652(P2006−273652A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−94509(P2005−94509)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】