説明

透水性付与剤、透水性繊維および不織布の製造方法

【課題】 本発明の目的は、瞬時透水性、耐久透水性、カード通過性、および熱接着性(不織布強力)のいずれについても高い性能レベルを有した透水性付与剤、それが付着した透水性繊維および不織布の製造方法を提供することである。
【解決手段】 本発明は、A成分、B成分およびC成分を必須成分として所定量含む透水性付与剤であって、前記A成分が、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルとジカルボン酸(またはジカルボン酸誘導体)との縮合物等であり、前記B成分が、1価アルコール、多価アルコールおよびこれらのアルキレンオキシド付加物から選ばれる少なくとも1種と脂肪族カルボン酸および/またはチオジカルボン酸とから得られるエステルおよび/または鉱物油であり、前記C成分が、アルキル基の炭素数が6〜22であるアルキルホスフェート塩および/またはポリオキシアルキレン基含有アルキルホスフェート塩である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透水性付与剤、それが処理された透水性繊維および不織布の製造方法に関する。詳細には、不織布製造用疎水性合成繊維に対して、本発明の透水性付与剤を付与することにより、不織布製造時のカード工程で優れた通過性が得られ、得られた不織布が瞬時透水性、耐久透水性、不織布強力にも優れる透水性付与剤、透水性繊維および不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、紙おむつや合成ナプキンを代表とする生理用品等の吸収性物品は、疎水性合成繊維(ポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維等)を主材とする各種不織布に親水性を付与したトップシートと、吸収材及び撥水性を付与したバックシートの間に綿状パルプや高分子吸収体等からなる材料を配置した3層から形成される構造になっている。尿や体液等の液体はトップシートを通過して吸収体に吸収されるが、透水性のよいこと、すなわち液体がトップシート上から内部の吸収体に完全に吸収される迄の時間が極めて短い瞬時透水性が必要である。さらに、僅か1回から2回の液体の吸収によってトップシート上の処理剤が流出して透水性が急激に低下するのは、吸収性物品の取り替え回数が増すことになって好ましくないので、トップシートには繰り返しの液体吸収に耐える耐久透水性が要求される。また、不織布の製造面からはカード工程の高速化に伴いシリンダーへの巻付きやスカム、ウェブ上のネップが発生するようになると表面品位の優れた不織布が得られなくなるので、良好なカード通過性が要求される。親水性に極めて劣る疎水性合成繊維について、上記のような要求に応える透水性付与剤およびそれが付着した透水性繊維が要求されている。
【0003】
これらの特性を透水性付与剤によって改善する技術が提案されている。疎水性合成繊維の表面に対して、瞬時透水性がよく、かつ繰り返しの液体透水に対しても透水性を維持するという要求特性を透水性付与剤に同時に求められ、アルキルホスフェート塩とカチオン性界面活性剤および両性界面活性剤等の配合割合の調整等で補っていた。しかし、瞬時透水性が得られる場合でも耐久透水性が不足したり、耐久透水性がある程度得られる場合でも瞬時透水性が不足したりして、現在の衛生材料用途に要求される瞬時透水性・耐久透水性の両者を満足するものが得られていなかった。また、不織布の製造工程であるカード工程においても、カード機にスカムが発生したり、ウェブにネップが発生したりする問題があった。加えて、透水性付与剤に含まれる親水性成分が熱融着時の繊維同士の接着を阻害することがあり、不織布強力を低下させる問題があった。
【0004】
たとえば、特許文献1ではアルキル燐酸エステル塩にポリエーテル変性シリコーンを併用する方法が開示されているが、耐久透水性、カード通過性や不織布強力が不足する。特許文献2ではアルキル燐酸エステル塩に2種類の両性界面活性剤を併用する方法が開示されているが、耐久透水性が不足する。特許文献3ではポリオキシアルキレン脂肪酸アミドのアシル化ポリアミンカチオン化物やアルキルホスフェート塩、両性界面活性剤、ポリオキシアルキレン変性シリコーンを併用する方法が提案されているが、カード通過性や不織布強力が不足する。特許文献4ではベタイン型両性活性剤とオキシ脂肪酸エステルのポリオキシアルキレン付加物のジカルボン酸エステルおよびアニオン性界面活性剤を配合した処理剤が開示されているが、カード通過性や瞬時透水性および耐久透水性が不足する。特許文献5ではアルキルホスフェート塩に両性界面活性剤、アルコキシル化リシノレイン型化合物、ポリオキシアルキレン変性シリコーンを併用して繊維を処理する方法が提案されているが、カード通過性や不織布強力が不足する。特許文献6ではアルキルホスフェート塩、ポリオキシアルキレン基とアシル基とを有した(ポリ)アミンのカチオン化物、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルとジカルボン酸との縮合物の少なくとも1つ以上の水酸基を脂肪酸で封鎖したエステル、ジアルキルスルホサクシネート塩、トリアルキルグリシン誘導体、ポリオキシアルキレン変性シリコーンを併用して繊維を処理する方法が提案されているが、カード通過性や不織布強力が不足する。
【0005】
このように、これらの処理剤では、現在の衛生材料用途に要求される瞬時透水性、耐久透水性には不十分なレベルにあるだけでなく、不織布の製造工程であるカード工程においてカード機にスカムが発生したり、ウェブにネップが発生したりする問題が、また、カード工程の高速化に伴いその問題の頻度が多くなってきている。更に、最終製品の形態が高機能化する中、処理剤付与によって繊維間の熱接着が阻害されて不織布強力が低下する問題が無視できない状況となってきている。
以上のように、これらの処理剤では全ての性能レベルを満足することができない。従って、衛生材料用途において、前述の性能を高いレベルで満足できる処理剤が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−82961号公報
【特許文献2】特開2000−170076号公報
【特許文献3】特開2002−161474号公報
【特許文献4】特開2000−34672号公報
【特許文献5】特開2002−161477号公報
【特許文献6】特開2007−247128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、従来の問題点を解決して、瞬時透水性、耐久透水性、カード通過性、および熱接着性(不織布強力)のいずれについても高い性能レベルを有した透水性付与剤、それが付着した透水性繊維および不織布の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、A成分、B成分およびC成分を必須成分として含む透水性付与剤であれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、A成分、B成分およびC成分を必須成分として含む透水性付与剤であって、前記A成分が、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルとジカルボン酸(またはジカルボン酸誘導体)との縮合物および/またはその縮合物の少なくとも1つ以上の水酸基を脂肪酸で封鎖したエステルであり、前記B成分が、1価アルコール、多価アルコールおよびこれらのアルキレンオキシド付加物から選ばれる少なくとも1種と脂肪族カルボン酸および/またはチオジカルボン酸とから得られるエステルおよび/または鉱物油であり、前記C成分が、アルキル基の炭素数が6〜22であるアルキルホスフェート塩および/またはポリオキシアルキレン基含有アルキルホスフェート塩であり、前記透水性付与剤の不揮発分全体に占めるA成分の重量割合が10〜45重量%、B成分の重量割合が5〜40重量%、C成分の重量割合が10〜50重量%であり、かつA成分、B成分およびC成分の合計の重量割合が50重量%以上である、透水性付与剤である。
【0010】
前記A成分のポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルは、炭素数6〜22のヒドロキシ脂肪酸と多価アルコールとのエステルのアルキレンオキシド付加物であり、ジカルボン酸の炭素数が2〜10であることが好ましく、脂肪酸の炭素数は10〜50であることが好ましい。
【0011】
前記B成分のエステルは、1価アルコールおよび/または多価アルコールと脂肪族カルボン酸および/またはチオジカルボン酸とから得られるエステルであることが好ましい。また前記B成分の鉱物油は、マシン油、スピンドル油および流動パラフィンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
前記C成分は下記一般式(1)で示される化合物であることが好ましい。
【化1】

(式中、Rは炭素数6〜22のアルキル基であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、mは0〜15の整数であり、nは1〜2の整数であり、Yは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオンおよび第1級〜第3級アンモニウムイオンらなる群から選択されるイオン性残基である。)
【0013】
また、本発明にかかる透水性付与剤は、下記のD1成分、D2成分およびD3成分から選ばれる少なくとも1種のD成分をさらに含み、前記透水性付与剤の不揮発分全体に占める前記D成分の重量割合が5〜50重量%であることが好ましい。
D1成分:炭素数4〜24の一価脂肪族アルコールのプロピレンオキシド(以下POと略す)/エチレンオキシド(以下EOと略す)付加物および/またはポリオキシアルキレン変性シリコーン
D2成分:カルボン酸塩、スルホン酸塩、スルホコハク酸塩および硫酸エステル塩から選ばれる少なくとも1種
D3成分:第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤、イミダゾリニウム型カチオン界面活性剤、アルキルベタイン界面活性剤、アルキルイミダゾール型ベタイン界面活性剤、アミド基含有ベタイン界面活性剤および高級脂肪酸アルカノールアミド型界面活性剤から選ばれる少なくとも1種
【0014】
また、本発明にかかる透水性付与剤は、不織布製造用疎水性合成繊維に用いられることが好ましい。
【0015】
本発明にかかる透水性繊維は、不織布製造用疎水性合成繊維に対して、上記の透水性付与剤が処理されたものである。
本発明にかかる不織布の製造方法は、上記の透水性繊維を集積させて繊維ウェブを作製し、得られた繊維ウェブを熱接着させる工程を含むものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる透水性付与剤、この透水性付与剤が処理された透水性繊維および不織布は、瞬時透水性、耐久透水性、カード通過性および熱接着性のいずれについても高い性能レベルを有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、A成分、B成分およびC成分を必須成分として所定の量含む透水性付与剤である。以下、詳細に説明する。
【0018】
〔A成分〕
A成分は、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステル(以下、ポリヒドロキシエステルということがある)とジカルボン酸(またはジカルボン酸誘導体)との縮合物および/またはその縮合物の少なくとも1つの水酸基を脂肪酸で封鎖したエステルである。A成分は本発明の透水性付与剤に必須に含まれる成分であり、疎水性繊維の原料となるポリマーへの吸着性が強いので、繊維に付着した付与剤は水と接触しても繊維から脱落し難くなる。その結果、繰り返し透水性を維持できる成分である。
ここで、ジカルボン酸誘導体とは、エステル化反応やエステル置換反応等により水酸基含有化合物とカルボン酸エステルを形成できる誘導体である。つまり、ジカルボン酸のアルキルエステル、酸無水物、アミド等が挙げられる。
【0019】
ポリヒドロキシエステルは、構造上、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸と多価アルコールとのエステルであり、多価アルコールの水酸基のうち、2個以上(好ましくは全部)の水酸基がエステル化されている。したがって、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルは、複数の水酸基を有するエステルである。
【0020】
ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸は、脂肪酸の炭化水素基に酸素原子を介してポリオキシアルキレン基が結合した構造を有し、ポリオキシアルキレン基の脂肪酸の炭化水素基と結合していない片末端が水酸基となっている。
ポリヒドロキシエステルとしては、たとえば、炭素数6〜22(好ましくは12〜22)のヒドロキシ脂肪酸と多価アルコールとのエステル化物のアルキレンオキシド付加物を挙げることができる。ヒドロキシ脂肪酸の炭素数が6未満であると、親水性が強くなり、一方、22を超えると疎水性が強くなる。いずれの場合も他の成分との相溶性が悪くなるため、十分な耐久透水性を得られないことがある。
【0021】
炭素数6〜22のヒドロキシ脂肪酸としては、たとえば、ヒドロキシカプリル酸、ヒドロキシカプリン酸、ヒドロキシウンデカン酸、ヒドロキシラウリン酸、ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸等が挙げられ、ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸が好ましい。
多価アルコールとしては、たとえば、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ソルビトール、ペンタエリスリトール等が挙げられ、グリセリンが好ましい。アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素数2〜4のアルキレンオキシドが挙げられる。
【0022】
アルキレンオキシドの付加モル数は、上記ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルの水酸基1モル当量当り、好ましくは80以下、さらに好ましくは5〜30である。付加モル数が80を超えると液戻り量が増加することがあるので好ましくない。高い耐久透水性を得るためには、親水基と疎水基のバランスを調整することが重要である。アルキレンオキシドに占めるエチレンオキシドの割合は、好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは75重量%以上である。エチレンオキシドの割合が40重量%未満では、疎水性が強くなるために十分な耐久透水性が得られないことがある。
2種類以上のアルキレンオキシドを付加する場合、それらの付加順序は特に限定されるものでなく、付加形態はブロック状、ランダム状のいずれでもよい。アルキレンオキシドの付加は公知の方法により行うことができるが、塩基性触媒の存在下にて行うことが一般的である。
【0023】
ポリヒドロキシエステルは、たとえば、多価アルコールとヒドロキシ脂肪酸(ヒドロキシモノカルボン酸)を通常の条件でエステル化してエステル化物を得て、次いでこのエステル化物にアルキレンオキシドを付加反応させることによって製造できる。ポリヒドロキシエステルは、ひまし油などの天然から得られる油脂やこれに水素を添加した硬化ひまし油を用い、さらにアルキレンオキシドを付加反応させることによっても、好適に製造できる。
ポリヒドロキシエステルを製造する場合、多価アルコールの水酸基1モル当量あたりのヒドロキシ脂肪酸のカルボキシル基当量は、0.5〜1の範囲であることが好ましい。
【0024】
ポリヒドロキシエステルとジカルボン酸(またはジカルボン酸誘導体)との縮合物を製造する場合、ポリヒドロキシエステルの水酸基1モル当量あたりのジカルボン酸のカルボキシル基当量は、0.2〜1の範囲であることが好ましく、0.4〜0.8がさらに好ましい。前述の縮合物を得る為には、通常のエステル化反応やエステル置換反応等のエステル化物が得られるような一般的な反応条件で良く、特に限定はない。
ジカルボン酸(またはジカルボン酸誘導体)のジカルボン酸部分の炭素数については、2〜10が好ましく、2〜8がさらに好ましい。ジカルボン酸の炭素数が10を超えると十分な親水性を付与できないことがある。
【0025】
このような縮合物を与える原料のジカルボン酸としては、たとえば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。
また、前述の縮合物の原料となるジカルボン酸の他にジカルボン酸誘導体として、無水マロン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水ピメリン酸、無水スベリン酸、無水アゼライン酸、無水セバシン酸、無水マレイン酸等の酸無水物、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アジピン酸ジメチル等のジカルボン酸エステルも挙げられるが、特にこれらに限定するわけではない。
ジカルボン酸(またはジカルボン酸誘導体)と共に、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、安息香酸等のカルボン酸を20%以下(好ましくは10%以下)含有してもよい。
【0026】
本発明のA成分は、上述のポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルとジカルボン酸との縮合物(以下、縮合物ということがある)において、少なくとも1つの水酸基を脂肪酸で封鎖してもよい。封鎖する脂肪酸の炭素数は10〜50が好ましく、12〜36がさらに好ましい。また、脂肪酸の炭素数が10未満であると親水性が強くなり、一方、50を超えると疎水性が強くなる。このように、配合する他の成分や付与する対象となる繊維に合わせて縮合物の親水性と疎水性とを調整することができ、十分な耐久透水性を得るようにすることができる。
このような脂肪酸としては、たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イコサン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラノリン脂肪酸(ウールグリースを精製したラノリン誘導体である炭素数12〜36の脂肪酸)等が挙げられるが、ステアリン酸、ベヘン酸、ラノリン脂肪酸が好ましい。縮合物と脂肪酸とのエステルを製造する場合、縮合物の水酸基1モル当量あたりの脂肪酸のカルボキシル基当量は0〜1の範囲であることが好ましい。エステル化の反応条件については特に限定はない。
【0027】
透水性付与剤の不揮発分に占めるA成分の重量割合は10〜45重量%であり、15〜45重量%がより好ましく、15〜40重量%がさらに好ましく、15〜35重量%が特に好ましい。A成分の重量割合が10重量%未満では、瞬時透水性は向上するが耐久透水性が低下する。一方、A成分の重量割合が45重量%超であると、耐久透水性は向上するがカード通過性が低下する。A成分は1種または2種以上を使用してもよい。
【0028】
なお、本発明における透水性付与剤の不揮発分とは、水分などを除くための熱乾燥工程後においても繊維表面に残存する透水性付与剤中の成分を意味し、透水性付与剤を105℃で熱処理して水分などを除去し、恒量に達したときの揮発せずに残存した成分を意味する。
【0029】
〔B成分〕
B成分は、1価アルコール、多価アルコールおよびこれらのアルキレンオキシド付加物から選ばれる少なくとも1種と脂肪族カルボン酸および/またはチオジカルボン酸とから得られるエステル(b1)および/または鉱物油(b2)である。本発明の透水性付与剤は、A成分、C成分に加え、B成分を所定の量含むことにより、優れた瞬時透水性、耐久透水性、カード通過性を有した上、さらに繊維間の熱接着性を阻害することがなくなり、不織布強力を高めることができる。
【0030】
エステル(b1)を構成する原料の1価アルコールとしては、特に限定はないが、1価の脂肪族アルコール等が挙げられる。1価の脂肪族アルコールの炭素数は分布があってもよい。また、飽和であっても不飽和あってもよく、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよい。脂肪族アルコールの炭素数は、1〜22が好ましく、1〜18がより好ましく、4〜18がさらに好ましく、8〜18が特に好ましい。
1価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。
1価アルコールのアルキレンオキシド付加物について、アルキレンオキシドの炭素数は2〜4が好ましい。2種類以上のアルキレンオキシドを付加する場合、それらの付加順序は特に限定されるものでなく、付加形態はブロック状、ランダム状のいずれでもよい。また、アルキレンオキシドの付加モル数は、0〜150が好ましく、0〜50がさらに好ましく、0〜20が特に好ましく、0が最も好ましい。
【0031】
エステル(b1)を構成する原料の多価アルコールとしては、特に限定はないが、2〜8価のアルコール等が挙げられ、2〜6価のアルコールが好ましく、2〜4価のアルコールが好ましい。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールなどのジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ショ糖などのポリオール類が挙げられる。さらに、グリセリンの縮合物であるジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ヘキサグリセリン等のポリグリセリンも含まれる。
多価アルコールのアルキレンオキシドのアルキレンオキシド付加物について、アルキレンオキシドの炭素数は2〜4が好ましい。2種類以上のアルキレンオキシドを付加する場合、それらの付加順序は特に限定されるものでなく、付加形態はブロック状、ランダム状のいずれでもよい。また、アルキレンオキシドの付加モル数は、0〜150が好ましく、0〜50がさらに好ましく、0〜20が特に好ましく、0が最も好ましい。
【0032】
エステル(b1)を構成する原料の脂肪族カルボン酸は、分子内にヒドロキシル基を有さない脂肪族カルボン酸(ヒドロキシカルボン酸でないこと)が好ましい。脂肪族カルボン酸としては、特に限定はなく、脂肪酸や脂肪族ポリカルボン酸であってもよい。脂肪酸としては、飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。これらの中でも、飽和脂肪酸が好ましく、脂肪酸の炭素数は、4〜30が好ましく、4〜22がさらに好ましく、4〜18が特に好ましい。
【0033】
飽和脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられる。
不飽和脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
【0034】
脂肪族ポリカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、トリカルバリル酸、クエン酸等が挙げられる。
また、これらの脂肪族ポリカルボン酸無水物も使用することができ、例えば、無水マロン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水ピメリン酸、無水スベリン酸、無水アゼライン酸、無水セバシン酸、無水マレイン酸、無水クエン酸等が挙げられる。
【0035】
エステル(b1)を構成する原料のチオジカルボン酸とは、2個のカルボン酸がスルフィド(二価の硫黄原子)で結合された有機化合物であり、チオジ酢酸、チオジプロピオン酸、チオジ酪酸、チオジコハク酸等が挙げられるが、チオジプロピオン酸が好ましい。
【0036】
エステル(b1)は、前述の1価アルコール、多価アルコールおよびこれらのアルキレンオキシド付加物から選ばれる少なくとも1種と、脂肪族カルボン酸および/またはチオジカルボン酸とを適宜選択して公知の合成法により得ることができる。
【0037】
多価アルコールと脂肪酸とから得られるエステルとしては、椰子油、パーム油や大豆油、牛脂などの天然から得られる油脂類、パーム油や大豆油や牛脂に水素を添加した硬化パーム油や硬化大豆油、硬化牛脂等を用いてもよい。
【0038】
多価アルコールのアルキレンオキシド付加物と脂肪族カルボン酸から得られるエステルとしては、多価アルコールと脂肪族カルボン酸とからエステルを得てから、炭素数2〜4のアルキレンオキシドを付加した物質を使用してもよい。
【0039】
1価アルコールおよび/または1価アルコールのアルキレンオキシド付加物と脂肪族カルボン酸とから得られるエステルとしては、2−エチルヘキシルオレエート、イソオクチルオレエート、ラウリルオレエート、ステアリルオレエート、オレイルオレエート、トリデシルオレエート、ブチルステアレート、イソオクチルステアレート、オレイルイソステアレート、オレイルステアレート、イソトリデシルステアレート、イソプロピルパルミテート、イソオクチルパルミテート、オレイルパルミテート、トリデシルパルミテート、トリデシルラウレート、オレイルラウレートポリオキシエチレン(10モル)ステアリルエーテルのオレイン酸エステル、ジオクチルアジペート、ジラウリルアジペート、ジイソトリデシルアジペート、ジイソステアリルアジペート、ジオレイルアジペート、ジオクチルフマレート、ジオクチルフタレート等が挙げられる。
【0040】
多価アルコールおよび/または多価アルコールのアルキレンオキシド付加物と脂肪族カルボン酸とから得られるエステルとしては、エチレングリコールジオレエート、グリセリンモノオレエート、グリセリンモノステアレート、グリセリントリオレエート、ヘキサグリセリンモノステアレート、トリメチロールプロパントリラウレート、トリメチロールプロパントリオレエート、トリメチロールプロパンモノパルミテート、ペンタエリスリトールテトラオレエート、ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(20モル)グリセリンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタントリオレエート、コハク酸ジ(3−ヒドロキシプロピル)、コハク酸メチル(3−ヒドロキシプロピル)等が挙げられる。
【0041】
1価アルコール、多価アルコールおよびこれらのアルキレンオキシド付加物から選ばれる少なくとも1種とチオジカルボン酸とから得られるエステルとしては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジオレイルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、チオジプロピオン酸の混成エステル(ラウリル、ステアリル及びオレイル)、等が挙げられる。
【0042】
エステル(b1)は、性状的にも熱接着性を阻害しないという観点から、40℃において流動性を有する成分が好ましく、40℃における粘度は3〜400mm/sがより好ましく、3〜300mm/sがさらに好ましく、3〜200mm/sが特に好ましい。400mm/sを越えると、粘度が高すぎてカード通過性を阻害する場合がある。
【0043】
B成分の鉱物油(b2)としては、マシン油、スピンドル油および流動パラフィンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。40℃における鉱物油の粘度はレッドウッド粘度計で40〜200秒(4〜50mm/s)の範囲とすることが好ましく、40〜160秒がより好ましく、60〜160秒がさらに好ましく、60〜120秒が特に好ましい。40秒未満では給油後の繊維を放置したとき放置時間と共に鉱物油が揮発する。200秒を越えると粘度が高すぎてカード通過性を阻害する場合がある。
【0044】
B成分の中でも、性状的にも熱接着性を阻害しないという観点から、40℃で流動性を有する成分が好ましく、熱接着性と相関する不織布強力が高いという点でエステル(b1)がさらに好ましく、1価アルコールおよび/または多価アルコールと脂肪族カルボン酸および/またはチオジカルボン酸とから得られるエステルが特に好ましい。
これらB成分の特に好ましい例としては、イソオクチルパルミテート、イソオクチルステアレート、イソトリデシルステアレート、ジオレイルアジペート、ジオクチルフマレート、エチレングリコールジオレエート、トリメチロールプロパントリラウレート、グリセリントリオレエート、ペンタエリスリトールテトラオレエート、ジオレイルチオジプロピオネートが挙げられる。
【0045】
透水性付与剤の不揮発分全体に占めるB成分の重量割合は、5〜40重量%が好ましく、5〜35重量%がさらに好ましく、10〜35重量%が特に好ましい。B成分の重量割合が5重量%未満では、熱接着性の向上が発現せず、不織布強力を高めることができない。一方、重量割合が40重量%超になると、透水性付与剤の水溶性が不足し溶液安定性の低下、耐久透水性やカード工程での制電性が低下する。B成分は1種または2種以上を使用してもよい。
【0046】
〔C成分〕
本発明の透水性付与剤は、A成分及びB成分に加え、アルキル基の炭素数が6〜22であるアルキルホスフェート塩および/またはポリオキシアルキレン基含有アルキルホスフェート塩であるC成分を必須成分として含む。C成分は、特にカード通過性能、耐久透水性を保持する性能に優れた成分である。
C成分としては、前述の一般式(1)で示されるアルキルホスフェート塩であることが好ましい。
【0047】
一般式(1)中、Rは炭素数6〜22のアルキル基であり、炭素数は6〜20が好ましく、8〜20がより好ましく、8〜18がさらに好ましい。アルキル基の炭素数が6未満では、カード工程通過性が低下すると共に製品の臭気が強くなることがあり、アルキル基の炭素数が22超であると、化合物の水溶性、カード通過性、瞬時透水性が低下することがある。アルキル基の炭素数は分布があってもよく、アルキル基は直鎖状であっても分岐を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。
AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。オキシアルキレン単位の繰り返し数であるmは0〜15の整数であり、0〜10が好ましく、0〜3がさらに好ましく、mが0でポリオキシアルキレン基を含有しない場合が特に好ましい。(AO)は、オキシアルキレン単位としてオキシエチレン単位を50モル%以上有するポリオキシアルキレン基が好ましい。nは1〜2の整数である。
【0048】
は、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオンおよび第1級〜第3級アンモニウムイオンからなる群から選択されるイオン性残基である。これらは混合物であってもよく、また、1種または2種以上を用いてもよい。
アルカリ金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等が挙げられる。
第1級〜第3級アンモニウムイオンとしては、第1級、第2級、第3級のいずれのアンモニウムイオンであってもよく、またアルキルアンモニウムイオンやアルカノールアンモニウムイオンであってもよい。第1級〜第3級アンモニウムイオンとしては、モノエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン、ジブチルエタノールアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0049】
これらの中でもカード通過性や耐久透水性を保持する性能の向上という理由から、C成分は、オクチルホスフェートカリウム塩、デシルホスフェートカリウム塩、ラウリルホスフェートカリウム塩、トリデシルホスフェートカリウム塩、ミリスチルホスフェートカリウム塩、セチルホスフェートカリウム塩、ステアリルホスフェートカリウム塩、オレイルホスフェートカリウム塩、ポリオキシエチレン3モル付加セチルホスフェートカリウム塩、ポリオキシエチレン3モル付加ラウリルホスフェートナトリウム塩、ポリオキシエチレン3モル付加ラウリルホスフェートジエタノールアンモニウム塩、ポリオキシエチレン3モル付加ラウリルホスフェートトリエタノールアンモニウム塩が好ましく、オクチルホスフェートカリウム塩、ラウリルホスフェートカリウム塩、ステアリルホスフェートカリウム塩がさらに好ましい。
【0050】
透水性付与剤の不揮発分全体に占めるC成分の重量割合は、10〜50重量%が好ましく、10〜45重量%がより好ましく、10〜40重量%がさらに好ましく、10〜35重量%が特に好ましい。C成分の重量割合が10重量%未満では、カード通過性が低下する。一方、重量割合が50重量%超になると、耐久透水性が低下する。C成分は1種または2種以上を使用してもよい。
【0051】
〔D成分〕
本発明の透水性付与剤は、前記のD1成分、D2成分およびD3成分から選ばれる少なくとも1種のD成分をさらに含んでもよい。透水性付与剤の不揮発分全体に占めるD成分の重量割合は、カード通過性や不織布強力を向上できる点から、5〜50重量%が好ましく、10〜45重量%がより好ましく、15〜40重量%がさらに好ましく、20〜35重量%が特に好ましい。
【0052】
D1成分は、炭素数4〜24の一価脂肪族アルコールのプロピレンオキシド(以下POと略す)/エチレンオキシド(以下EOと略す)付加物(D1a成分)および/またはポリオキシアルキレン変性シリコーン(D1b成分)である。
D1a成分としては、特に限定はないが、例えば、D1a成分を構成する炭素数4〜24の一価脂肪族アルコールとしては、天然高級脂肪酸の還元により得られる高級アルコールであっても、合成アルコールであってもよい。一価脂肪族アルコールの炭素数は分布があってもよい。また、飽和であっても不飽和あってもよく、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよい。一価脂肪族アルコールの炭素数は6〜22が好ましく、8〜22がさらに好ましく、8〜18が特に好ましい。
炭素数4〜24の一価脂肪族アルコールとしては、例えば、2−エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。
エチレンオキシド(EO)とプロピレンオキシド(PO)の付加モル数も特に限定されないが、EOの付加モル数は、1〜150が好ましく、1〜50がさらに好ましい。また、POの付加モル数は、0〜150が好ましく、0〜50がさらに好ましい。また、水希釈時の良好な分散性を得るためにはエチレンオキシドの付加量がエチレンオキシドとプロピレンオキシドの合計量のうち20〜100重量%となれば好ましく、30〜100重量%となればより好ましい。エチレンオキシドとプロピレンオキシドの付加順序は特に限定されるものでなく、付加形態はブロック状、ランダム状のいずれでもよい。エチレンオキシドとプロピレンオキシドの付加は公知の方法により行うことができるが、高級アルコールに塩基性触媒の存在下にて行うことが一般的である。なお、D1a成分は1種または2種以上を使用してもよい。
【0053】
ポリオキシアルキレン変性シリコーン(D1b成分)としては、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、メチル(ポリオキシエチレン)ポリシロキサン共重合体、メチル(ポリオキシプロピレン)ポリシロキサン共重合体、メチル(ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン)ポリシロキサン共重合体、メチル(ポリオキシエチレン/ポリオキシブチレン)ポリシロキサン共重合体等が挙げられる。
【0054】
ポリオキシアルキレン変性シリコーン中のSi元素含有率(化合物中にSi元素が占める重量%)は20〜70%である。Si元素含有率が70%超であると、本発明の透水付与剤を付着させて得られる透水性繊維の安定性が低下し、製造コストが高くなる。一方、Si元素含有率が20%未満であると、耐久透水性が得られないことがある。
ポリオキシアルキレン変性シリコーン中のポリオキシアルキレン基としては、たとえば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、これらの基を構成する単量体から2種以上を選び重合して得られる基等を挙げることができる。オキシアルキレン基を2種類以上選んだ場合、それらの付加順序は特に限定されるものでなく、付加形態はブロック状、ランダム状のいずれでもよい。ポリオキシアルキレン基全体のうちオキシエチレン基が占める割合が20重量%以上であることが好ましく、20重量%未満では透水性が低下することがある。
【0055】
ポリオキシアルキレン変性シリコーンの重量平均分子量については特に限定はないが、1,000〜100,000であると好ましく、2,000〜80,000であるとさらに好ましい。重量平均分子量がこの範囲を外れると透水性が低下し、特に1,000未満の場合にこの傾向が著しい。
本発明においては、これらポリオキシアルキレン変性シリコーンは、それぞれ単独で用いることができるし、また2種以上混合して用いることができる。
【0056】
前記のD2成分は、カルボン酸塩(D2a成分)、硫酸エステル塩(D2b成分)、スルホン酸塩(D2c成分)、およびスルホコハク酸塩(D2d成分)から選ばれる少なくとも1種である。
【0057】
前記のカルボン酸塩(D2a成分)は、高級脂肪酸のアルカリ金属塩である。原料となる脂肪酸は、アルキル基の炭素数に分布があってもよく、アルキル基は直鎖状であっても分岐を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。アルキル基の炭素数は4〜24が好ましく、6〜22がより好ましく、8〜20がさらに好ましく、8〜18が特に好ましい。アルキル基の炭素数が4未満ではカード通過性が低下することがある。一方、アルキル基の炭素数が24超であると、瞬時透水性が低下することがある。具体的には、オレイン酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、椰子脂肪酸カリウム等の石鹸類が利用できる。なお、D2a成分は1種または2種以上を使用してもよい。
【0058】
前記の硫酸エステル塩(D2b成分)は、オクチル硫酸エステル塩、デシル硫酸エステル塩、ラウリル硫酸エステル塩、ミリスチル硫酸エステル塩、セチル硫酸エステル塩、ステアリル硫酸エステル塩、オレイル硫酸エステル塩、イコサニル硫酸エステル塩等の炭素数8〜24のアルキルおよび/またはアルケニル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンデシルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンミリスチルフェニルエーテル硫酸エステル塩等の炭素数8〜14のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンオクチルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンデシルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンセチルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸エステル塩等の炭素数8〜18のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられるが、なかでも炭素数8〜18のアルキルおよび/またはアルケニル硫酸エステル塩、オキシエチレン単位の数が1〜10個である(ポリ)オキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好ましい。なお、D2b成分は1種または2種以上を使用してもよい。
【0059】
前記のスルホン酸塩(D2c成分)は、オクチルスルホン酸塩、デシルスルホン酸塩、ラウリルスルホン酸塩、ミリスチルスルホン酸塩、セチルスルホン酸塩、ステアリルスルホン酸塩等の炭素数8〜18のアルキルスルホン酸エステル塩、オクチルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩等の炭素数8〜12のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸エステル塩、が挙げられるが、なかでも炭素数12〜18のアルキルスルホン酸エステル塩、炭素数8〜12のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸エステル塩が好ましい。なお、D2c成分は1種または2種以上を使用してもよい。
【0060】
前記のジアルキルスルホサクシネート塩(D2d成分)は、α位にスルホン酸塩の基を有するコハク酸のジアルキルエステルである。ジアルキルエステルを構成するアルキル基の炭素数は分布があってもよく、アルキル基は直鎖状であっても分岐を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。アルキル基の炭素数は6〜22が好ましく、6〜18がより好ましく、8〜18がさらに好ましく、8〜14が特に好ましい。アルキル基の炭素数が6未満ではカード通過性が低下することがある。一方、アルキル基の炭素数が22超であると、瞬時透水性が低下することがある。
【0061】
D2d成分としては、たとえば、ジヘキシルスルホサクシネート塩、ジ−2−エチルヘキシルスルホサクシネート塩、ジラウリルスルホサクシネート塩、ジ椰子アルキルスルホサクシネート塩、ジトリデシルスルホサクシネート塩、ジミリスチルスルホサクシネート塩、ジステアリルスルホサクシネート塩等が挙げられる。これらのジアルキルスルホサクシネート塩は、1種または2種以上を使用してもよい。
【0062】
以上説明したD成分において、それを構成する塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられるが、なかでもアルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩がより好ましい。ナトリウム塩および/またはカリウム塩であると、透水性付与剤が付着した繊維に液体が速やかに浸透するので好ましい。
【0063】
D3成分は、第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤(D3a成分)、イミダゾリニウム型カチオン界面活性剤(D3b成分)、アルキルベタイン界面活性剤(D3c成分)、アルキルイミダゾール型ベタイン界面活性剤(D3d成分)、アミド基含有ベタイン界面活性剤(D3e成分)、および高級脂肪酸アルカノールアミド型界面活性剤(D3f成分)から選ばれる少なくとも1種である。
【0064】
第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤(D3a成分)としては、特に限定はないが、例えば、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド塩、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド塩、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド塩、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド塩、ジ椰子アルキルジメチルアンモニウムクロライド塩、ジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウムクロライド塩、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド塩、ジラウリルジメチルアンモニウムメトサルフェート塩、ジラウリルメチルエチルアンモニウムエトサルフェート塩、ジステアリルジメチルアンモニウムメトサルフェート塩、ジ(オレイロキシエチル)ヒドロキシエチルメチルアンモニウムメトサルフェート塩、ジ(ステアリン酸アミドエチル)ヒドロキシエチルメチルアンモニウムメトサルフェート塩等が挙げられる。これらのなかでも、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド塩やジステアリルジメチルアンモニウムクロライド塩、ジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウムクロライド塩が好ましい。なお、D3a成分は1種または2種以上を使用してもよい。
【0065】
イミダゾリニウム型カチオン界面活性剤(D3b成分)としては特に限定はないが、イミダゾリニウム環の2位の置換基が炭素数11〜21の脂肪族炭化水素基であって、アニオン基がメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオンおよびジメチル燐酸イオンからなる群から選択されるイオン性残基である場合のものが好ましい。かかるイミダゾリニウム型カチオン界面活性剤としては、例えば1−ヒドロキシエチル−1−エチル−2−ラウリルイミダゾリニウムエチルサルフェート塩、1−ヒドロキシエチル−1−エチル−2−オレイルイミダゾリニウムエチルサルフェート塩、1−ヒドロキシエチル−1−エチル−2−ステアリルイミダゾリニウムエチルサルフェート塩、1−ヒドロキシエチル−1−メチル−2−テトラデシルイミダゾリニウムメチルサルフェート塩、1−ヒドロキシエチル−1−メチル−2−ラウリルイミダゾリニウムメチルサルフェート塩、1−ヒドロキシエチル−1−メチル−2−オレイルイミダゾリニウムメチルサルフェート塩、1−ヒドロキシエチル−1−メチル−2−ステアリルイミダゾリニウムメチルサルフェート塩、1−ヒドロキシエチル−1−メチル−2−オレイルイミダゾリニウムジメチルホスフェート塩等が挙げられる。これらのなかでも、1−ヒドロキシエチル−1−エチル−2−オレイルイミダゾリニウムエチルサルフェート塩が好ましい。なお、D3b成分は1種または2種以上を使用してもよい。
【0066】
アルキルベタイン界面活性剤(D3c成分)としては特に限定はないが、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノスルホプロピルベタイン、ラウリルジメチルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられる。これらの中でも、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタインが好ましい。なお、D3c成分は1種または2種以上を使用してもよい。
【0067】
アルキルイミダゾール型ベタイン界面活性剤(D3d成分)としては特に限定はないが、例えば、2−ラウリル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−オレイル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。これらのなかでも、2−ラウリル−N−カルボキシメチル―N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインが好ましい。なお、D3d成分は1種または2種以上を使用してもよい。
【0068】
アミド基含有ベタイン界面活性剤(D3e成分)としては特に限定はないが、例えば、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、オレイン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられ、これらの中でも、ステアリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインが好ましい。なお、D3e成分は1種または2種以上を使用してもよい。
【0069】
高級脂肪酸アルカノールアミド型界面活性剤(D3f成分)としては特に限定はないが、例えば、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、ベヘン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド等が挙げられる。さらに、高級脂肪酸アルカノールアミド型界面活性剤には、炭素数2〜4のアルキレンオキシド付加物も含んでもよい。これらの中でも、ステアリン酸ジエタノールアミドやベヘン酸ジエタノールアミドが好ましい。なお、D3f成分は1種または2種以上を使用してもよい。
【0070】
〔透水性付与剤〕
本発明の透水性付与剤のおける各必須成分の重量割合は、前述した通り、透水性付与剤の不揮発分全体に占めるA成分の重量割合が10〜45重量%、B成分の重量割合が5〜40重量%、C成分の重量割合が10〜50重量%であるが、本件の課題を解決するためには、A成分、B成分およびC成分の合計の重量割合が50〜95重量%である必要があり、55〜90重量%が好ましく、60〜85重量%がさらに好ましく、65〜80重量%が特に好ましい。A成分、B成分およびC成分の合計の重量割合が50重量%未満であると、耐久透水性、カード通過性および熱接着性が低下する。
【0071】
本発明の透水性付与剤は、必要に応じて水および/または溶剤を含有していてもよく、水を必須に含有することが好ましい。本発明に使用する水としては、純水、蒸留水、精製水、軟水、イオン交換水、水道水等のいずれであってもよい。透水性付与剤を製造する際の透水性付与剤全体に占める不揮発分の重量割合は、10〜50重量%が好ましく、20〜40重量%が特に好ましい。
また、本発明の透水性付与剤には、必要に応じて、前述された成分以外の界面活性剤、抗菌剤、酸化防止剤、防腐剤、艶消し剤、顔料、防錆剤、芳香剤、消泡剤等がさらに含まれていてもよい。
【0072】
本発明の透水性付与剤は、後述する不織布製造用合成繊維に好適に用いられる。
【0073】
本発明の透水性付与剤の製造方法としては、公知の方法を採用できる。例えば、A成分とB成分を配合し約70℃の温度で撹伴する。次に、C成分の水溶液を配合して約70℃の温度で均一に攪拌する。次に、必要に応じてD成分を配合して約70℃の温度で均一に攪拌する。次いで、攪拌しながら所定量の水を注入し希釈すると10〜50重量%の透水性付与剤が得ることができる。
【0074】
〔透水性繊維〕
本発明の透水性繊維は、不織布製造用合成繊維(繊維本体)とこれに付着した上記透水性付与剤とから構成される透水性繊維であり、一般的には所定の長さに切断した短繊維である。透水性付与剤の不揮発分の付着率は、前記透水性繊維に対して0.1〜2重量%であり、好ましくは0.3〜1重量%である。透水性繊維に対する透水性付与剤の不揮発分の付着率が0.1重量%未満では、瞬時透水性、耐久透水性が低下することがある。一方、透水性付与剤の不揮発分の付着率が2重量%を超えると、繊維をカード処理する時に巻付きが多くなって生産性が大幅に低下し、乾式法等の方法により得られた不織布等の繊維製品が透水後にベトツキが大きくなることがある。
【0075】
不織布製造用合成繊維としては、たとえば、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、2種類以上の熱可塑性樹脂からなる複合繊維等であり、複合繊維の組み合わせとしては、ポリオレフィン系樹脂/ポリオレフィン系樹脂の場合、例えば、高密度ポリエチレン/ポリプロピレン、直鎖状高密度ポリエチレン/ポリプロピレン、低密度ポリエチレン/ポリプロピレン、プロピレンと他のα−オレフィンとの二元共重合体または三元共重合体/ポリプロピレン、直鎖状高密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン等が挙げられる。また、ポリオレフィン系樹脂/ポリエステル系樹脂の場合、例えば、ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、直鎖状高密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、低密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。また、ポリエステル系樹脂/ポリエステル系樹脂の場合、例えば、共重合ポリエステル/ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。さらにポリアミド系樹脂/ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂/ポリアミド系樹脂等からなる繊維も例示することができる。これら繊維本体のなかでも、付着した透水性付与剤が尿や体液等の液体によって脱落がし難いという理由から、不織布製造用ポリオレフィン系繊維に本発明の透水性付与剤は好適である。
【0076】
繊維の断面構造は鞘芯型、並列型、偏心鞘芯型、多層型、放射型あるいは海島型が例示できるが、繊維製造工程での生産性や、不織布加工の容易さから、偏心を含む鞘芯型または並列型が好ましい。また、断面形状は円形または異形形状とすることができる。異形形状の場合、例えば扁平型、三角形〜八角形等の多角型、T字型、中空型、多葉型等の任意の形状とすることができる。
【0077】
本発明の透水性付与剤は、そのまま希釈等せずに繊維本体に付着させてもよく、水等で不揮発分全体の重量割合が0.5〜15重量%となる濃度に希釈してエマルジョンとして繊維本体に付着させてもよい。透水性付与剤を繊維本体へ付着させる工程は、繊維本体の紡糸工程、延伸工程、捲縮工程等のいずれであってもよい。本発明の透水性付与剤を繊維本体に付着させる手段については、特に限定はなく、ローラー給油、ノズルスプレー給油、ディップ給油等の手段を使用してもよい。繊維の製造工程やその特性に合わせ、より均一に効率よく目的の付着率が得られる方法を採用すればよい。また、乾燥の方法としては、熱風および赤外線により乾燥させる方法、熱源に接触させて乾燥させる方法等を用いてよい。
【0078】
本発明の透水性繊維は、耐久透水性に優れている。透水性繊維の耐久透水性評価は、繰り返しの評価が3回目において生理食塩水の消失時間を20箇所で測定し、消失時間5秒未満となる箇所の個数は、通常10個以上、好ましくは12個以上、さらに好ましくは14個以上、より好ましくは16個以上、特に好ましくは18個以上である。
【0079】
〔不織布の製造方法〕
不織布の製造方法としては、特に限定はなく、公知の方法を採用できる。原料繊維としては短繊維や長繊維を用いることができる。原料繊維が短繊維のウェブ形成方式としては、カード方式やエアレイド方式等の乾式法や抄紙方式等の湿式法が挙げられる。また原料繊維が長繊維のウェブ形成方式としては、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法等が挙げられる。また、繊維間結合方式としては、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法、スティッチボンド法等が挙げられる。
【0080】
本発明の不織布の製造方法は、本発明の透水性繊維(例えば短繊維)をカード機等に通し繊維ウェブを作製し、得られた繊維ウェブを熱接着させる工程を含むものが好ましい。すなわち、本発明の透水性付与剤は、不織布の製造において繊維ウェブを熱接着させる工程を有する場合に、特に好適に使用されるものである。
繊維ウェブを熱接着させる方法としては、加熱ロールまたは超音波によるによる熱圧着、加熱空気による熱融着、熱圧着点(ポイントボンディング)法等の熱融着法が挙げられる。繊維ウェブを熱接着させる一例としては、芯に高融点の樹脂を使用し鞘に低融点の樹脂を使用する鞘芯型の複合繊維の場合、低融点の樹脂の融点付近で熱処理することで、繊維交点の熱接着を容易に行なうことができる。
【0081】
熱接着させる工程を含む不織布の製造方法としては、透水性付与剤が付与された短繊維をカード機等に通しウェブとしたものを上述のように熱接着させて一体化する方法、エアレイド法でパルプ等を積層する際に本発明の透水性繊維(短繊維)と混綿して、上述のように熱接着させる方法等も挙げられる。その他、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法等により得られた繊維成形体に対して、本発明の透水性付与剤を付着させたものを加熱ロールまたは加熱空気等で熱接着させて、または加熱ロールまたは加熱空気等で熱処理したものに本発明の透水性付与剤を付着させて、不織布を製造する方法も挙げられる。
【0082】
スパンボンド法の一例としては、複合繊維樹脂を紡糸し、次に、紡出された複合長繊維フィラメントを冷却流体により冷却し、延伸空気によってフィラメントに張力を加えて所期の繊度とする。その後、紡糸されたフィラメントを捕集ベルト上に捕集し、接合処理を行ってスパンボンド不織布を得る。接合手段としては、加熱ロールまたは超音波によるによる熱圧着、加熱空気による熱融着、熱圧着点(ポイントボンディング)法等がある。
得られたスパンボンド不織布に本発明の透水性付与剤を付与する方法としては、グラビア法、フレキソ法、ゲートロール法等のロールコーティング法、スプレーコーティング法等で行うことができるが、不織布への塗布量を片面ずつ調節できるものであれば特に限定されるものではない。また、乾燥の方法としては、熱風および赤外線により乾燥させる方法、熱源に接触させて乾燥させる方法等を用いてよい。
【実施例】
【0083】
以下に本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、各実施例および比較例における評価項目と評価方法は以下の通りである。
【0084】
(実施例1〜18および比較例1〜10)
表1〜3中の数値は、実施例1〜18、比較例1〜10の不揮発分に占める各成分の重量比率である。
まず、表1〜3に示す各成分および水を混合して、透水性付与剤全体に占める不揮発分の重量割合が25重量%の実施例1〜18、比較例1〜10の透水性付与剤をそれぞれ調製した。得られた透水性付与剤をそれぞれ約60℃の温水で不揮発分の重量割合が0.8重量%の濃度になるよう希釈して希釈液を得た。
次に、繊維本体3000gに対し、それぞれの透水性付与剤の希釈液1500gをスプレーで付着させ、透水性繊維に付着する透水性付与剤の不揮発分の付着率を0.4重量%にした。繊維本体は、透水性付与剤等の繊維処理剤が付着していない、ポリエチレンテレフタレート(芯)−ポリエチレン(鞘)系複合繊維であり、単繊維繊度が1.6Dtex、繊維長が51mmのものであった。それぞれの透水性付与剤の希釈液を付着させた繊維を、60℃の温風乾燥機の中に2時間入れた後、室温で8時間以上放置して乾燥させて、透水性繊維を得た。
【0085】
次に、得られた透水性繊維をそれぞれ混打綿工程およびカード試験機を用いたカード工程に通し、目付30g/mのウェブを作製した。その際、それぞれの透水性繊維について、下記に示す評価方法でカード工程における物性(カード通過性:シリンダー巻付き、スカム発生の有無、およびネップ数)を評価した。得られたウェブをエアースルー型熱風循環乾燥機中130℃で熱処理してウェブを固定し、不織布を得た。得られた不織布について、下記に示す評価方法で物性(瞬時透水性、耐久透水性、および不織布強力)をそれぞれ評価した。その結果を表4〜6に示す。
【0086】
〔評価方法〕
(1)
シリンダー巻付き
カード試験機を用いて30℃×80%RHの条件で試料短繊維40gをカーディングした後にシリンダーを観察し、以下の基準で評価した。なお、5が最も良い評価である。
5…巻付きなし、4…シリンダー面の1/10に巻付きあり、3…シリンダー面の1/5に巻付きあり、2…シリンダー面の1/3に巻付きあり、1…全面に巻付きあり
【0087】
(2)スカム発生の有無
カード試験機を用いて30℃×80%RHの条件で試料短繊維2000gをカーディングした後にローラーに付着したスカムを観察し、スカム発生の有無を評価した。
【0088】
(3)ネップ数
カード試験機を用いて25℃×65%RHの条件で試料短繊維40gをカーディングした後にウェブを観察し、発生したネップ数を数えた。なお、ネップ数0が最も優れる。
【0089】
(4)不織布の瞬時透水性
不織布を濾紙(東洋濾紙、No.5)の上に重ね、不織布表面から10mmの高さに設置したビューレットより1滴(約0.05ml)の生理食塩水を滴下して、不織布表面から水滴が消失するまでの時間を測定する。不織布表面の20箇所でこの測定を行って5秒未満の個数を表示する。
【0090】
(5)不織布の耐久透水性
不織布(10cm×10cm)を市販の紙おむつに重ね、その上に内径60mmの円筒を置き、生理食塩水80mlを円筒内に注入して不織布を通して紙おむつに吸収させた。注水後3分間放置した後に、不織布を2枚の濾紙(東洋濾紙、No.5)の間に挟み、その上に板(10cm×10cm)と重り(合計3.5kg)を乗せて3分間放置して脱水し、その後さらに5分間風乾した。風乾後の試料不織布に上記円筒内で生理食塩水が通過した箇所について、不織布の瞬時透水性の試験方法によって、生理食塩水の消失時間を20箇所で測定し、消失時間5秒未満の個数を表示した。
試験に供した不織布について、同様の作業を繰り返して行う。この繰り返し試験では回数を重ねても生理食塩水の消失個数(消失時間5秒未満となる箇所の個数)が多い方がよい。
【0091】
(6)不織布強力
不織布(幅2.5cm、長さ11.5cm)のウェブの長さ方向20%伸長時に掛かる応力を引張圧縮試験機(TG−2kN、ミネベア(株)製)により、つかみ間隔7.5cmで測定し、不織布1cmあたりに掛かる応力[cN/cm]を算出した。この値が45cN/cm以上であればよい。但し、短繊維が引き揃えられている方向に対して平行方向をウェブの長さ方向、垂直方向を幅方向とする。
【0092】
(7)透水性繊維に付着する透水性付与剤の付着率
透水性繊維に付着する透水性付与剤の不揮発分の付着率は、25℃×40%RHの温湿度で24時間調湿した透水性繊維(W1)を、メタノールを用いて、迅速残脂抽出装置R−11型(東海計器(株)製)で抽出し、透水性付与剤の不揮発分の付着率(W2)を求めた。そして下記の式より、透水性付与剤の不揮発分の付着率C%を求めた。
C=W2/W1×100(%)
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
成分A1:ポリオキシエチレン(20モル)硬化ひまし油のマレイン酸縮合物(水酸基未封鎖)
成分A2:ポリオキシエチレン(20モル)硬化ひまし油のマレイン酸縮合物の水酸基1モル当量あたりステアリン酸0.5モル当量で封鎖したエステル
成分A3:ポリオキシエチレン(20モル)硬化ひまし油のマレイン酸縮合物の水酸基1モル当量あたりベヘン酸1モル当量で封鎖したエステル

成分B1:イソオクチルパルミテート
成分B2:イソトリデシルステアレート
成分B3:ジオレイルアジペート
成分B4:鉱物油(60秒、レッドウッド粘度計、40℃)
成分B5:ジオレイルチオジプロピオネート

成分C1:オクチルホスフェートカリウム塩
成分C2:ラウリルホスフェートカリウム塩
成分C3:ポリオキシエチレン(3モル)セチルホスフェートカリウム塩

成分D1a1:ポリオキシエチレン(9モル)セカンダリートリデシルエーテル
成分D1b1:ポリオキシエチレン変性シリコーン(Si元素含有率:65%、分子量:10000)。

成分D2a1:ラウリン酸カリウム塩
成分D2c1:セチルスルホネートナトリウム塩
成分D2d1:ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩

成分D3a1:ジ(硬化牛脂アルキル)ジメチルアンモニウムクロライド塩
成分D3c1:ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン
成分D3f1:ステアリン酸ジエタノールアミド
【0096】
【表3】

【0097】
成分B6:ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタントリオレエート
成分C4:ステアリルホスフェートカリウム塩
成分D1a2:ポリオキシエチレン(100モル)ステアリルエーテル
成分D2b1:ポリオキシエチレン(3モル)ラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム塩
【0098】
【表4】

【0099】
【表5】

【0100】
【表6】

【0101】
表4および5から明らかなように、実施例1〜18の本発明の透水性付与剤を給油した透水性繊維は、カード通過性、透水性不織布の瞬時透水性、耐久透水性、および熱接着性が良好であった。この透水性付与剤を付与すれば、繊維に瞬時透水性、耐久透水性を付与し、本発明の効果が確認された。一方、表6から明らかなように、これらの成分組成範囲から外れる比較例1〜10は、総ての必要特性を満足することはできなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A成分、B成分およびC成分を必須成分として含む透水性付与剤であって、
前記A成分が、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルとジカルボン酸(またはジカルボン酸誘導体)との縮合物および/またはその縮合物の少なくとも1つ以上の水酸基を脂肪酸で封鎖したエステルであり、
前記B成分が、1価アルコール、多価アルコールおよびこれらのアルキレンオキシド付加物から選ばれる少なくとも1種と脂肪族カルボン酸および/またはチオジカルボン酸とから得られるエステルおよび/または鉱物油であり、
前記C成分が、アルキル基の炭素数が6〜22であるアルキルホスフェート塩および/またはポリオキシアルキレン基含有アルキルホスフェート塩であり、
前記透水性付与剤の不揮発分全体に占めるA成分の重量割合が10〜45重量%、B成分の重量割合が5〜40重量%、C成分の重量割合が10〜50重量%であり、かつA成分、B成分およびC成分の合計の重量割合が50重量%以上である、透水性付与剤。
【請求項2】
前記A成分のポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルが炭素数6〜22のヒドロキシ脂肪酸と多価アルコールとのエステルのアルキレンオキシド付加物であり、ジカルボン酸の炭素数が2〜10であり、脂肪酸の炭素数が10〜50である、請求項1に記載の透水性付与剤。
【請求項3】
前記B成分のエステルが、1価アルコールおよび/または多価アルコールと脂肪族カルボン酸および/またはチオジカルボン酸とから得られるエステルであり、
前記B成分の鉱物油が、マシン油、スピンドル油および流動パラフィンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の透水性付与剤。
【請求項4】
前記C成分が下記一般式(1)で示される化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の透水性付与剤。
【化1】

(式中、Rは炭素数6〜22のアルキル基であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、mは0〜15の整数であり、nは1〜2の整数であり、Yは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオンおよび第1級〜第3級アンモニウムイオンからなる群から選択されるイオン性残基である。)
【請求項5】
下記のD1成分、D2成分およびD3成分から選ばれる少なくとも1種のD成分をさらに含み、前記透水性付与剤の不揮発分全体に占める前記D成分の重量割合が5〜50重量%である、請求項1〜4のいずれかに記載の透水性付与剤。
D1成分:炭素数4〜24の一価脂肪族アルコールのプロピレンオキシド(以下POと略す)/エチレンオキシド(以下EOと略す)付加物および/またはポリオキシアルキレン変性シリコーン
D2成分:カルボン酸塩、スルホン酸塩、スルホコハク酸塩および硫酸エステル塩から選ばれる少なくとも1種
D3成分:第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤、イミダゾリニウム型カチオン界面活性剤、アルキルベタイン界面活性剤、アルキルイミダゾール型ベタイン界面活性剤、アミド基含有ベタイン界面活性剤および高級脂肪酸アルカノールアミド型界面活性剤から選ばれる少なくとも1種
【請求項6】
不織布製造用疎水性合成繊維に用いられる、請求項1〜5のいずれかに記載の透水性付与剤。
【請求項7】
不織布製造用疎水性合成繊維に対して、請求項1〜6のいずれかに記載の透水性付与剤が処理された、透水性繊維。
【請求項8】
請求項7に記載の透水性繊維を集積させて繊維ウェブを作製し、得られた繊維ウェブを熱接着させる工程を含む、不織布の製造方法。

【公開番号】特開2011−74500(P2011−74500A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223870(P2009−223870)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000188951)松本油脂製薬株式会社 (137)
【Fターム(参考)】