説明

透水性隔壁及び集水トンネルの構築方法

【課題】透水性の確保が容易で、目詰まりが発生し難い構造の透水性隔壁を提供する。
【解決手段】外側面12a側からの地下水の取り込みが可能な多孔質の透水部12とその周囲に形成される構造壁部13とを備えた透水セグメント11である。
そして、透水部12の小孔に、透水部12の外内側面12a,12b間の水の流れを遮断するように脂肪酸系目詰材が充填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外側面側から地下水を取り込むことができる集水トンネルや遮水壁として使用した後に地下水の流れを回復させることが可能な地中連続壁用の透水性隔壁、及びそれを使用した集水トンネルの構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地中に滞留した海水や地下水を取水して利用するために構築される集水トンネルが知られている(特許文献1,2等参照)。
【0003】
この集水トンネルは、円弧状の透水セグメント1を複数組み合わせて円筒形に形成されたトンネルであって、透水セグメント1にはその外殻を形成する鉄筋コンクリート部3と、外側面側から地下水を取り込むための透水部2と、この透水部2とトンネル内部を連通させる導水管4,4とが設けられている(図7参照)。
【0004】
この透水部2は、多孔質のポーラスコンクリートで構成されており、トンネル外側面側の地下水が透水部2に浸み込んで導水管4,4を通って集水トンネルの内部に取り込まれる。
【0005】
一方、このような集水トンネルでは、設置と同時に地下水が透水部2に浸透して導水管4,4を通ってトンネル内部に流れ込むことを防ぐため、図7に示すように導水管4,4の端部に蓋部5,5を取り付け、施工中はトンネル内部に水が流れ込まないように構成されている。
【0006】
さらに、この蓋部5,5は、いずれは撤去しなければならず、撤去と同時に水がトンネル内部に流れ込むのを防ぐために、図7に示すように生分解性シート6で透水部2の外側面を覆った技術が特許文献2に開示されている。
【0007】
以上においては集水トンネルについて述べたが、地下構造物を構築する際に土留め及び遮水の目的で構築される地中連続壁は、地下水の流れを分断して地下水の上昇又は低下を引き起こし、浸水、井戸枯れ、地盤沈下などを引き起こす原因となりうるので、使用後に透水性を回復させる機能を設けることが望まれている(特許文献3,4など参照)。
【特許文献1】特開平11−303155号公報
【特許文献2】特開2003−268814号公報
【特許文献3】特開平10−317370号公報
【特許文献4】特開平10−54030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記した透水セグメント1の透水部2を覆う生分解性シート6を分解するバクテリア等の微生物は、海水下や地下深い場所ではほとんど存在しておらず、シートが分解されなければ所望する透水性を確保できないという問題がある。
【0009】
また、図7に示すように、面状に広がる透水部2で集めた地下水を、点状の導水管4,4に集めて排出させる場合は、導水管4,4を流れる地下水の流速が早くなることで透水部2に土粒子を引き込んで目詰まりを起こす場合がある。
【0010】
そこで、本発明は、透水性の確保が容易で、目詰まりが発生し難い構造の透水性隔壁及びそれを使用した集水トンネルの構築方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、外側面側からの地下水の取り込みが可能な多孔質の透水部とその周囲に形成される構造壁部とを備えた透水性隔壁であって、前記透水部の小孔に、前記透水部の外内側面間の水の流れを遮断するように脂肪酸系目詰材が充填されている透水性隔壁であることを特徴とする。
【0012】
ここで、このような透水性隔壁は、加熱融解して液状にした前記脂肪酸系目詰材を前記透水部に浸透させた後に、冷却して製作することができる。
【0013】
また、地山を掘削した内部に上記の透水性隔壁を一部又は全周に用いたトンネルを形成し、前記トンネル内部に温水又は前記脂肪酸系目詰材を溶解可能な界面活性剤を注入し、前記透水部の内側面側から浸透した前記温水又は前記界面活性剤によって前記脂肪酸系目詰材を融解させる集水トンネルの構築方法であることを特徴とする。
【0014】
さらに、上記に代えて、温水を注入することによって膨張可能な袋状の加温部を前記トンネル内の前記透水性隔壁が設置された位置に配設し、内部に温水を注入して前記加温部を前記透水部の内側面に当接させることで前記脂肪酸系目詰材を融解させるようにすることもできる。
【0015】
また、本発明の透水性隔壁の透水部を、外側透水部と内側透水部が厚さ方向に隙間が開くように形成し、前記外側透水部にだけ前記脂肪酸系目詰材を充填して、前記隙間に前記脂肪酸系目詰材を溶解可能な界面活性剤が封入された水溶性袋部材を配設させることもできる。
【発明の効果】
【0016】
このように構成された本発明は、地下水を取り込む透水部の小孔に脂肪酸系目詰材が充填されて前記透水部の外内側面間の水の流れが遮断される。そして、この脂肪酸系目詰材は、加温又は脂肪酸系目詰材を溶解可能な界面活性剤を浸透させることで容易に融解させることができる。
【0017】
このため、透水性隔壁を構築する際は止水性が確保される一方、構築後には容易に水の流れの遮断を解除して透水部の透水性を確保することができる。また、構造壁部は透水部の周囲に形成されるだけで透水部を通過する水の流れの障害となることがないので、断面の変化による流速の変化がほとんど生じることがなく目詰まりが発生し難い。
【0018】
また、このような透水性隔壁は、加熱融解して液状にした脂肪酸系目詰材を透水部に浸透させて冷却するだけで容易に製作することができる。
【0019】
さらに、トンネル内部に温水又は界面活性剤を充填することで脂肪酸系目詰材を融解させることができるので、特別な装置を使用しなくとも容易かつ安全に集水トンネルを構築することができる。
【0020】
また、温水を注入することで膨張する加温部を使用する構成とすることで、少ないエネルギーで効率的に透水性を回復させることができる。
【0021】
さらに、透水部を外側透水部と内側透水部とに分けて形成し、その隙間に前記界面活性剤が封入された水溶性袋部材を配設した透水性隔壁とすれば、トンネルなどを構築した後にその内側に水を充填させるだけで、その水で水溶性袋部材を溶解させてその内部に封入された前記界面活性剤によって前記外側透水部の脂肪酸系目詰材を溶解させることができる。
【0022】
このため、前記界面活性剤の使用量を大幅に削減することができて経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0024】
図2は、本実施の形態による透水性隔壁としての透水セグメント11,・・・を円筒状に組み立てて構築された集水トンネル10の斜視図を示している。
【0025】
すなわち図2に示した集水トンネル10は、4個の透水セグメント11,・・・によって単位長さの円筒形が構成され、その円筒形が集水トンネル10の延伸方向に複数接続されたものである。ここで、各単位長さの円筒形の円周方向に現れる4箇所の継ぎ目は、集水トンネル10の延伸方向に連続しないように位置をずらして配置されている。
【0026】
さらに、この透水セグメント11は、ポーラスコンクリートなどの多孔質の材料で構成される透水部12と、その周囲に形成される構造壁部13とによって形成される。
【0027】
この透水部12のポーラスコンクリートには、例えば比重1.8〜2.0、空隙率15〜25%、透水係数1×10-1cm/sec、曲げ強度2.5N/mm2以上の特性を有するセメント系混合材料が使用される。
【0028】
また、この透水部12は、図1の断面図に示すように、外側面12aから内側面12bにかけて略一定の断面積に形成されているので、外側面12a側から取り込まれた地下水の流速が透水部12の内部で変化することがほとんどなく、周辺地山の砂分及び細粒分が透水部12に流入しにくい構造になっている。
【0029】
この透水部12は、例えば鉄筋コンクリートなどで成形された円弧状の構造壁部13の直方体状の開口部に、ポーラスコンクリートを設置又は組み込むことによって形成される。
【0030】
この透水部12の例えば外側面12a側から、加熱融解して液状にした脂肪酸系目詰材を浸透させ、その後冷却して固めることによって外側面12a付近の透水部12に遮水部120を形成する。
【0031】
この遮水部120は、透水部12の外内側面12a,12b間の水の流れを遮断するように、平面視の全域に隙間無く形成されるが、遮水部120の厚さは任意に設定することができる。
【0032】
この脂肪酸系目詰材には、例えば天然油脂系、ステアリン酸、ミリスチン酸など常温では固体であって、加熱することによって融解する材料を使用することができる。
【0033】
また、これらの材料は、界面活性剤と混合することによっても溶解させることができる。この界面活性剤には、例えばポリカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリアルミニウム系、ポリリン酸、ジオクチルスルホンコハク酸ソーダ、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、アルキルエーテルサルフェート等の材料が使用できる。
【0034】
次に、集水トンネル10の構築方法を説明するとともに、この実施の形態の作用について説明する。
【0035】
まず、立坑(図示せず)内部から地中に向けてシールド掘削機又は掘進機(図示せず)などを発進させて地中に掘削孔を形成し、その内部に透水セグメント11,・・・を組み立てて、図2,3に示すような集水トンネル10を構築する。
【0036】
この際、透水セグメント11の透水部12の外側面12a側には遮水部120が脂肪酸系目詰材を充填することによって形成されている。
【0037】
このように、透水部12に遮水部120が設けられていれば、地下水が内側面12b側に流れ込むことがなく止水性を確保することができる。
【0038】
そして、すべての透水セグメント11,・・・を設置し、集水トンネル10の先端部が遮蔽蓋14で閉塞されている状態で、温水を供給するための給湯管15を集水トンネル10の内部に挿入する。
【0039】
そして、立坑側から給湯管15に温水を流すと、給湯管15を通った温水は、集水トンネル10先端の遮蔽蓋14付近で排出され、図3に示すように集水トンネル10の内部が温水で満たされる。
【0040】
さらにこの温水は、各透水セグメント11,・・・の透水部12,・・・に浸透し、遮水部120,・・・の脂肪酸系目詰材が温められて融解し、透水部12の透水性が確保されることになる。
【0041】
このような構成にすることで、一度に多くの遮水部120,・・・の脂肪酸系目詰材を融解させて透水性を回復できるので、工期を短縮することができる。また、温水を使用するため比較的安価に実施することができる。
【0042】
また、この温水に代えて、前記界面活性剤を集水トンネル10の内部に充満させ、各透水セグメント11,・・・の透水部12,・・・に浸透させた前記界面活性剤によって遮水部120,・・・の脂肪酸系目詰材を溶解させることもできる。
【0043】
このように本実施の形態によれば、透水セグメント11,・・・によって集水トンネル10を構築する際は止水性が確保される一方、構築後には容易に水の流れの遮断を解除して透水部12の透水性を確保することができる。
【0044】
また、構造壁部13は透水部12の周囲に形成されるだけで透水部12を通過する水の流れの障害となることがないので、断面の変化による流速の変化がほとんど生じることがなく目詰まりが発生し難い。
【0045】
また、集水トンネル10の内部に人が入って潜水作業などをおこなわなくとも透水性を回復できるので安全である。
【実施例1】
【0046】
以下、実施例1について図4を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0047】
前記実施の形態では、集水トンネル10の内部に温水を充満させて脂肪酸系目詰材を融解させたが、この実施例1では、透水部12を部分的に温める加温部16を使用する。
【0048】
この加温部16は、袋状に形成された内部に温水を注入すると、図4に示すように集水トンネル10の内部を遮断可能な大きさになるまで膨張し、その周面は集水トンネル10の内側面に接触させることができる。
【0049】
この加温部16には、給湯管15と排水管17が接続され、給湯管15によって加温部16に供給された温水は、その内部を循環して排水管17の端部から取り込まれて排出される。
【0050】
このため、温水を供給し続けることが可能で、加温部16を所定の温度に維持することが容易かつ効率的にできる。
【0051】
この加温部16を移動させる際には、内部の温水の一部又は全部抜き出して縮め、集水トンネル10の内側面との摩擦によって加温部16が磨耗したり損傷したりすることがないようにする。
【0052】
図4は、遮蔽蓋14に隣接した透水セグメント11の透水部12の脂肪酸系目詰材を融解させた後に、一つ立坑側の透水セグメント11の透水部12に加温部16を密着させて加温している状態を示した断面図である。
【0053】
そして、この状態で透水部12を温め続けると、遮水部120の脂肪酸系目詰材が融解してこの部分の透水性が確保されることになる。
【0054】
このように実施例1の構成によれば、袋状の区切られた空間に温水を供給すればよいので、温水製造設備を大掛かりにしなくともよい。また、集水トンネル10の内部容積に比べて容積の小さい加温部16の温度を維持すればよいので、容易に加温部16を高温に維持することができる。
【0055】
また、排水管17で回収した温水は、再度加熱して給湯管15から再び供給できるので、加熱の際に必要なエネルギーや水の消費を少なくすることができ経済的である。
【0056】
また、この実施例1の変形例として、前記加温部16と同様の袋状部材を集水トンネル10の延伸方向に間隔をおいて2体配置し、それぞれを空気、水又は温水で膨張させて、トンネル延伸方向の一単位長さ以上の透水セグメント11が挟まれる空間を形成する。
【0057】
そして、この空間に上述したように温水を循環させると、透水セグメント11と二つの膨張した袋状部材に挟まれた空間に温水が充満し、その熱によって透水部12の脂肪酸系目詰材が融解される。
【0058】
この際、袋状部材に挟まれた空間に送り出す温水の圧力を、地下水圧よりも低くすることで、通水によって地下水が集水トンネル10内に流れ込むようにできるので、確実に通水機能を発揮させることができる。
【0059】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるので説明を省略する。
【実施例2】
【0060】
以下、実施例2について図5を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0061】
前記実施の形態又は実施例1では、厚さ方向に一体の透水部12を形成した場合について説明したが、この実施例2では別の形態の透水部22を有する透水性隔壁としての透水セグメント21について説明する。
【0062】
この実施例2の透水部22は、外側透水部221と内側透水部222が厚さ方向に隙間を開けて形成されており、その隙間に溶解部23が配設される。
【0063】
すなわち、外側透水部221の外側面22aと構造壁部13の外側面13aとが面一に形成され、内側透水部222の内側面22bと構造壁部13の内側面13bが面一に形成される。
【0064】
そして、外側透水部221の内部面22cと内側透水部222の内部面22cとの間に溶解部23を介在させるとともに、外側透水部221の小孔に脂肪酸系目詰材を充填して遮水部220を形成し、透水部22を止水構造とする。
【0065】
この溶解部23は、水に溶解する袋状の水溶性袋部材23aの内部に、脂肪酸系目詰材を溶解可能な前記界面活性剤23bが封入されている。
【0066】
そして、集水トンネル10を構築した後にその内部に水を充満させると、内側透水部222から浸透した水によって溶解部23の水溶性袋部材23aが溶けて中から界面活性剤23bが流出し、隣接する外側透水部221の脂肪酸系目詰材を溶解する。
【0067】
このように構成された実施例2の透水セグメント21であれば、遮水部220に充填された脂肪酸系目詰材を溶解させるだけの界面活性剤23bを溶解部23に封入しておけばよいので、界面活性剤23bの使用量を大幅に削減することができて経済的である。
【0068】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は実施例1と略同様であるので説明を省略する。
【実施例3】
【0069】
以下、実施例3について図6を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は他の実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0070】
この実施例3では、透水性隔壁として地中連続壁31に本発明を適用した場合について説明する。
【0071】
この地中連続壁31は、地下構造物を構築する際に土留め及び遮水の目的で構築されるが、地下水36の流れを分断して上流側では地下水36を上昇させ、下流側では地下水36を低下させる場合がある。
【0072】
そこで、掘削工事などに使用する場合は止水性を確保し、使用後に地下水36を透過させて地下水36の流れを回復させることが可能な地中連続壁31を本発明を適用して構築する。
【0073】
この地中連続壁31の構築に使用する鉄筋籠(図示せず)の所定の位置には、ポーラスコンクリートによって成形された透水部32を設けておくとともに、その外側面32a側と内側面32b側には加熱融解した脂肪酸系目詰材を浸透させて遮水部320,320を形成しておく。
【0074】
また、この透水部32を加温するための給湯管34は、透水部32の内部で折り返され、その両端が地上部に突出されるように鉄筋籠に取り付けておく。
【0075】
そして、地盤35に掘削した掘削溝に鉄筋籠を建て込んだ後に、コンクリートを掘削溝に流し込んで地中連続壁31を完成させる。
【0076】
このようにして構築された地中連続壁31は、透水部32の遮水部320,320と構造壁部33とによって地下水を遮断して所定の止水性が確保できる。
【0077】
なお、地中連続壁31を構築する過程で、掘削溝の崩壊を防止するために泥水が使用され、その泥水によって地中連続壁31の周囲には透水性の低い泥膜(図示せず)が形成される。
【0078】
この泥膜は、透水性を回復させた際の地下水36の流れを妨げる要因になるため、超音波や切削によって除去し、再び泥膜が形成されないように泥水を清水で置換しておく。
【0079】
そして、透水部32の透水性を回復させる場合は、給湯管34に温水を循環させて透水部32を温め、その温度によって遮水部320,320の脂肪酸系目詰材を融解させる。
【0080】
なお、給湯管34に代えて透水部32に発熱部が配設されるように電気発熱線を配線し、通電によって透水部32を加熱して脂肪酸系目詰材を融解させてもよい。
【0081】
このように構成された実施例3の地中連続壁31は、地下水36を取り込む透水部32の小孔に脂肪酸系目詰材が充填されて透水部32の外内側面32a,32b間の水の流れが遮断される。そして、この脂肪酸系目詰材は加温することで容易に融解させることができる。
【0082】
このため、地中連続壁31を遮水壁として使用する際は止水性が確保される一方、工事後に容易に地下水36の流れの遮断を解除して透水部32の透水性を確保することができる。
【0083】
また、その他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【0084】
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0085】
例えば、前記実施の形態及び実施例では、構造壁部13を鉄筋コンクリートで形成したが、これに限定されるものではなく、鋼板や形鋼などを組み合わせて鋼製の壁部を形成することもできる。また、構造壁部13の開口部の形状も直方体状に限定されるものではない。
【0086】
また、前記実施の形態又は実施例では、透水部12,22,32をポーラスコンクリートによって構成したが、これに限定されるものではなく、地下水が透過可能な小孔を備えた多孔質部材であれば例えば連続気泡部材などであってもよい。
【0087】
さらに、前記実施の形態及び実施例では、透水性隔壁として複数の透水セグメント11,12を組み合わせて集水トンネル10の外殻を形成したが、これに限定されるものではなく、管径が小さい場合などは円筒形の透水性推進管を透水性隔壁として使用して集水トンネルを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の最良の実施の形態の透水性隔壁の構成を説明する断面図である。
【図2】本発明の最良の実施の形態の集水トンネルの構成を説明する斜視図である。
【図3】本発明の最良の実施の形態の集水トンネルの構築方法を説明する断面図である。
【図4】実施例1の集水トンネルの構築方法を説明する断面図である。
【図5】実施例2の透水性隔壁の構成を説明する断面図である。
【図6】実施例3の地中連続壁の透水性の回復方法を説明する断面図である。
【図7】従来の生分解性シートを配置した集水トンネルの構成を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0089】
10 集水トンネル
11 透水セグメント(透水性隔壁)
12 透水部
120 遮水部
12a 外側面
12b 内側面
13 構造壁部
16 加温部
21 透水セグメント(透水性隔壁)
22 透水部
220 遮水部
22a 外側面
22b 内側面
221 外側透水部
222 内側透水部
23a 水溶性袋部材
23b 界面活性剤
31 地中連続壁(透水性隔壁)
32 透水部
320 遮水部
32a 外側面
32b 内側面
33 構造壁部
36 地下水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側面側からの地下水の取り込みが可能な多孔質の透水部とその周囲に形成される構造壁部とを備えた透水性隔壁であって、
前記透水部の小孔に、前記透水部の外内側面間の水の流れを遮断するように脂肪酸系目詰材が充填されていることを特徴とする透水性隔壁。
【請求項2】
加熱融解して液状にした前記脂肪酸系目詰材を前記透水部に浸透させた後に、冷却して製作されたことを特徴とする請求項1に記載の透水性隔壁。
【請求項3】
地山を掘削した内部に請求項1又は請求項2に記載の透水性隔壁を一部又は全周に用いたトンネルを形成し、
前記トンネル内部に温水又は前記脂肪酸系目詰材を溶解可能な界面活性剤を注入し、前記透水部の内側面側から浸透した前記温水又は前記界面活性剤によって前記脂肪酸系目詰材を融解させることを特徴とする集水トンネルの構築方法。
【請求項4】
地山を掘削した内部に請求項1又は請求項2に記載の透水性隔壁を一部又は全周に用いたトンネルを形成し、
温水を注入することによって膨張可能な袋状の加温部を前記トンネル内の前記透水性隔壁が設置された位置に配設し、
内部に温水を注入して前記加温部を前記透水部の内側面に当接させることで前記脂肪酸系目詰材を融解させることを特徴とする集水トンネルの構築方法。
【請求項5】
前記透水部は、外側透水部と内側透水部が厚さ方向に隙間を開けて形成されており、前記外側透水部にだけ前記脂肪酸系目詰材が充填され、前記隙間には前記脂肪酸系目詰材を溶解可能な界面活性剤が封入された水溶性袋部材が配設されていることを特徴とする請求項1に記載の透水性隔壁。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−146601(P2007−146601A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−346049(P2005−346049)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(303004716)マテラス青梅工業株式会社 (15)
【出願人】(598055079)有限会社ジオテック (4)
【Fターム(参考)】