説明

透湿・吸水性を有する壁紙およびその製造方法

【課題】 意匠性に優れ、室内の湿気を室外に透過させたり、また吸湿し、放湿することで室内の湿度の変動を調整する作用を有し、吸水性に優れ、結露することが少なく、使用時は勿論のこと、製造から施工に至る過程においても表面にキズ等が付きにくく、柔軟性に富み、耐磨擦性のある壁紙とその製造方法を提供する。
【解決手段】 壁紙基材層、無機粒子層および繊維布帛層を有する壁紙であって、壁紙基材層の片面に、無機粒子と合成樹脂を含む樹脂溶液を塗布して無機粒子層を形成する工程と、塗布した無機粒子と合成樹脂を含む樹脂溶液が固まる前にこの無機粒子層に繊維布帛を積層して繊維布帛層を形成する工程を有する方法により得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透湿・吸水性を有する壁紙およびその製造方法に関する。本発明は、特に、優れた意匠性を有するとともに、室内の湿気を透過させる透湿性および湿気を吸ったり吐いたりする吸放湿性を有することで室内の湿度の変動を調整する作用を有し、吸水性に優れ、結露することが少ない壁紙に関するものである。また、使用時は勿論のこと、製造から施工に至る過程においても表面にキズ等が付きにくく、柔軟性に富み、耐磨擦性のある壁紙と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の内装材として使用される壁紙としては、主として天然の建築用材料である漆喰、土、木材、紙で構成されたものと、石油を原料とする、たとえば、低廉なコストで製造でき、かつ、意匠の表現も多様な塩化ビニル樹脂系のビニル壁紙と称されるものが上市されている。
【0003】
多雨多湿環境下における建築物の建築材料としては、室内の湿気を吸放湿することや冬期の結露防止の観点からも天然の建築用材料が見直されてきている。最近は水分や湿気の吸放湿性があるとされる粉末状多孔質無機鉱物である珪藻土(二酸化珪素を主体とする)を用いた環境に優しい壁紙も見受けられる。
【0004】
ところで、湿気の吸放湿を行い、結露防止もできる壁紙として、EVA系樹脂と天然珪藻土と熱膨張型発泡剤を使用した吸放湿性壁紙が開示されている(特許文献1)。
しかし、この文献には、上記の壁紙は吸放湿性を有するとしているものの、次元の異なる透湿性や吸水性の観点からの記載は一切なく、柔軟性、耐磨擦性についての記載も存在しない。
【0005】
また、湿気の吸放湿を行う調湿性と、結露防止やカビ発生防止ができる壁紙として、珪藻土による吸放湿層と壁紙基材の間に、ポリエチレン樹脂等の遮蔽層を設けたものが開示されている(特許文献2)。
しかし、この文献では、上記の壁紙は調湿性や結露防止を有するとしているものの、具体的に検証されていないし、吸水性の観点からの記載は一切なく、また柔軟性、耐磨擦性についての記載もない。
【0006】
さらに、通気性とカビ発生防止ができ、難燃性のある壁紙として、壁紙基材に珪藻土を添加して通気性を図り、さらに壁紙基材や裏打ち紙に難燃性の材料を使用したものが開示されている(特許文献3)。
しかし、この文献では、上記の壁紙は通気性を有するとしているものの、具体的に検証されていないし、吸水性の観点の記載は一切なく、また柔軟性、耐磨擦性についての記載もない。
さらに、上記の特許文献1〜3に記載された壁紙は、いずれも、意匠性に関しても満足できるものではなく、改良が望まれるものであった。
【0007】
【特許文献1】特開2001−336094号公報
【特許文献2】特開2002−154178号公報
【特許文献3】特開2003−055899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の如き従来技術の問題点に鑑み、意匠性に優れ、かつ、室内の湿気を室外に透過させたり、また吸湿し、放湿することで室内の湿度の変動を調整する作用を有し、吸水性に優れ、結露することが少ない壁紙を提供することを課題とする。また、使用時は勿論のこと、製造から施工に至る過程においても表面にキズ等が付きにくく、柔軟性に富み、耐磨擦性のある壁紙とその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は、(1)請求項1に規定する、壁紙基材層、無機粒子層および繊維布帛層を有する壁紙を提供する。
本発明は、さらに、(2)無機粒子層が無機粒子を含み、無機粒子が珪藻土を含む、請求項1に記載の壁紙、(3)無機粒子層が、粒子径の70%以上が1〜100μmである無機粒子と、合成樹脂とを含む、請求項1または2に記載の壁紙を提供する。
【0010】
本発明は、また、(4)無機粒子の含有量が50〜1000g/mである、請求項1〜3のいずれかに記載の壁紙、(5)壁紙基材層の片面に無機粒子層が設けられ、無機粒子層の上に繊維布帛層が設けられている、請求項1〜4のいずれかに記載の壁紙、(6)繊維布帛層に用いられる繊維布帛がセルロース系繊維を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の壁紙、(7)繊維布帛が目付け10〜100g/mの不織布である、請求項1〜6のいずれかに記載の壁紙、(8)さらに、防炎剤含有層を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の壁紙を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、(9)壁紙基材層の片面に、無機粒子と合成樹脂を含む樹脂溶液を塗布して無機粒子層を形成する工程と、塗布した無機粒子と合成樹脂を含む樹脂溶液が固まる前にこの無機粒子層に繊維布帛を積層して繊維布帛層を形成する工程を有する壁紙の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、壁紙表面の粒子感や自然な色の濃淡を有する意匠性に優れる壁紙を得ることができる。また、砂壁感がありながら砂落ちなどの問題がほとんどない壁紙を得ることができる。さらに、室内の湿気を透過させる透湿性および湿気を吸ったり、吐いたりすることのできる吸放湿性を有していることにより室内の湿度の変動を調整する作用を有し、吸水性に優れ、結露することが少ない壁紙を提供することができる。したがって、本発明の壁紙は、多雨多湿環境下における建築物の建築材料として好適であり、さらに冬期の結露防止の観点からも好ましい。
【0013】
さらに、本発明の壁紙は柔軟性、耐磨擦性があるので、使用時は勿論のこと、製造から施工に至る過程においても熟練した技術も不要で、取り扱いが簡便であり、キズや削り取り、ひび割れなどが生じることが少ないという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の好ましい実施の一形態について詳しく説明する。
この実施形態の壁紙は、壁紙基材層の片面に無機粒子層が設けられ、この無機粒子層の上に繊維布帛層が設けられたものである。
【0015】
(壁紙基材層)
ここで、壁紙基材層とは、壁紙基材により形成される層をいう。壁紙基材としては、壁紙に一般的に使用されている坪量(平方mあたり)50〜300gの合成紙、和紙、エマルジョン紙、不燃紙、難燃紙、およびそれらから選択される複数種からなる複合紙、生分解性紙などが挙げられる。また、その他の基材として、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のシート状のものが挙げられるが、無機粒子を含有する無機粒子層を形成することができるものであれば、特に限定はされない。
【0016】
さらに、壁紙基材の厚さは、5〜1000μmであることが好ましい。厚さが5μm未満であると、加工の際基材がカールしたり、管理することが困難になることがある。また、1000μmを超えると、柔軟性が低下して巻き取りなどの加工に支障をきたすことがあり、軽量化ということから望ましくない場合もある。
【0017】
(無機粒子層)
壁紙基材の片面に設ける無機粒子層は、無機粒子を含むのが好ましく、無機粒子が珪藻土を含むのがさらに好ましい。無機粒子層は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂から選ばれる少なくともひとつの合成樹脂をバインダーとして含むことが好ましい。
【0018】
かかる無機粒子としては、たとえば、ゼオライト系、珪藻土系、シリカ系のものが使用できる。より具体的には、珪藻土や水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、多孔質シリカ、化石サンゴ、トルマリン等が挙げられ、多孔質、無孔質を問わないが、好ましくは、透湿性や吸水性の観点から多孔質であるものがよい。特に焼入れした珪藻土、金や銀などを担持させたゼオライト、多孔質シリカなどの多孔体が好ましく用いられる。また、意匠性の観点からは珪藻土や砂なども好ましく用いられ、マイナスイオン発生の観点からは、化石サンゴ、トルマリンやセシウムなどの希有元素を含む鉱物の粒子が好ましく用いられ、さらに抗菌性の観点からは銀、銅、銀を担持させたゼオライトなどが好ましく用いられる。これらの無機粒子は、複数のものを混合して使用してもよい。
珪藻土は、たとえば、酒の製造工程で濾過材として用いられている珪藻土を焼入れすることなどして得られる多孔質な珪藻土であってもよい。
【0019】
また、本発明では、無機粒子として、粒子径の70%以上が1〜100μmのものが好ましく用いられる。1μm未満のものが多いと比表面積が増え、バインダーとしての合成樹脂の量を増やす必要が生ずる。合成樹脂量を増やすと多孔質の無機粒子を用いた場合、その孔が埋まってしまい、多孔質の無機粒子としての効果を失ってしまうことがある。また、粒子が溶媒を大量に吸収し、乾燥時間が長くなり、製造工程上問題となる。さらに、無機粒子層を製造するための樹脂溶液製造時に粉立ちも発生し、取り扱いが困難となる場合がある。
また、100μmを超えるものが多いと、無機粒子層を製造するための樹脂溶液製造時に無機粒子の沈降が生じたり、コーティング手法を用いて無機粒子層を設ける際にスジ状の欠点が発生する場合がある。
【0020】
無機粒子層としては、無機粒子が50〜1000g/mの量で含有されているのが好ましく、150〜800g/mの量であるのがさらに好ましい。50g/m未満であると、吸水性が不十分となる場合があり、また意匠性も低下し、本発明の特徴を活かせないことがある。また、1000g/mを超えると、コスト的に不利であるし、柔軟性が損なわれる結果、無機粒子を含有する層がひび割れを生じる場合もある。 また、無機粒子層の厚さは、100〜1000μmが好ましい。
【0021】
また、無機粒子と合成樹脂との配合比は、無機粒子100質量部に対し合成樹脂固形分で5〜100質量部であるのが好ましい。合成樹脂の配合比が5質量部を下まわると無機粒子の壁紙基材への接着が弱まり、壁紙としての取扱い時に無機粒子の脱落が発生することがある。合成樹脂の配合比が100質量部を上まると、透湿性、吸放湿性、吸水性が低下することがある。
また、無機粒子層には、上記のような無機粒子やバインダーとしての合成樹脂以外に、有機物質、無機物質に限らず、任意の色を壁紙に付与して意匠性を高めるための着色用顔料また機能性を付与するための消臭剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、架橋剤、発泡剤、増粘剤、防炎剤などの種々の添加物を添加してもよい。透湿性、吸水性、意匠性の観点からは発泡剤の添加も好ましい。
【0022】
(繊維布帛層)
繊維布帛層は、少なくとも繊維布帛を含む。繊維布帛としては、ポリエステル、ナイロンなどの合成繊維、レーヨン、リヨセルなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、綿、絹、毛などの天然繊維が挙げられる。また、その形態としては、織物、編物、不織布等のいずれの形態であってもよい。また、紙を用いることも可能である。
吸水性、吸放湿性の観点からは綿、レーヨン、リヨセルなどのセルロース系繊維を用いることが好ましく、意匠性の観点からはセルロース系繊維を用いた不織布を用いるのが好ましい。また、これらの繊維布帛は、防炎性を有するものや染料や顔料で着色されているものであってもよい。
【0023】
繊維布帛は、吸水性、吸放湿性、耐磨擦性の向上、ひび割れ防止などの機能を奏するものであるが、さらに意匠性の面からの効果も大きい。
また、無機粒子層に含まれる合成樹脂や無機粒子の一部は、無機粒子層上に設けられた繊維布帛に含浸され、さらには繊維布帛の表面にまで透過して、全面にまたは部分的に表面層を形成して、繊維布帛層を構成する成分の一部となっていてもよい。
【0024】
上記セルロース系繊維を用いた不織布は、目付け5〜1000g/m、厚み5μm〜5000μmの不織布であるのが好ましい。より好ましくは、目付け10〜100g/mであるのがよい。目付けおよび厚みが上記の範囲であれば、透湿性、柔軟性を確保しながら、保護層として耐磨擦性にも優れ、また優れた意匠性をも備えることができるので、好ましい。
【0025】
なお、上記した壁紙は、一実施形態にすぎず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において適宜設計を変更することができる。
例えば、それぞれ複数の壁紙基材層や無機粒子層、繊維布帛層を設けることも可能である。また、壁紙基材層の無機粒子層を設けた反対面に、接着剤層を設けることもできる。接着剤層を設けておけば、壁紙を貼るための糊を施工現場で塗る必要がなく、施工の簡素化が可能となる。
【0026】
また、さらに防炎剤含有層を付与することもできる。防炎性は、防炎性能を有する壁紙基材を用いたり、無機粒子層に防炎剤を添加したり、防炎性能を有する繊維布帛を用いることによっても付与することができるが、防炎剤含有層を付与するのが防炎性能の観点からはより好ましい。防炎剤含有層は、壁紙基材層と無機粒子層の間や壁紙基材層の無機粒子層を設けた反対面に設けることもできる。
【0027】
この防炎剤含有層は、ヘキサブロムシクロドデカンなどの臭素などを含むハロゲン系防炎剤やリン系、窒素系、金属塩系、水和金属塩系、シリコン系などのノンハロゲン系防炎剤を含むアクリル樹脂やウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などからなる樹脂層などが挙げられる。防炎剤の樹脂への添加量としては、樹脂固形分100質量部に対し、好ましくは防炎剤固形分20〜600質量部、さらに好ましくは100〜200質量部がよい。
防炎剤含有層には前述した如き無機粒子をはじめとする各種添加剤を添加してもよい。
【0028】
(壁紙の製造方法)
以下に、好ましい本発明の壁紙の製造方法の一例について説明する。
まず、無機粒子層を形成する工程として、壁紙基材層を形成する壁紙基材の片面に、無機粒子層を形成するための樹脂溶液を付与する。無機粒子層を形成するには、無機粒子とバインダーとしての合成樹脂を含む樹脂溶液を壁紙基材上に塗布する。この場合の塗布方法としては、ナイフコーター、パイプコーター、コンマコーター、グラビアコーターなどを用いたコーテイング手法、スプレーなどを用いた噴霧、またはTダイなどによる押出手法を用いることができる。
無機粒子層の制御の観点からは、ナイフコーター、パイプコーター、コンマコーターなどを用いたコーテイング手法により塗布するのが好ましくい。
【0029】
無機粒子とバインダーとしての合成樹脂を含む樹脂溶液としては、無機粒子と合成樹脂と溶媒の配合比が、無機粒子100質量部に対して合成樹脂固形分5〜100質量部であり、溶媒5〜1000質量部であるのが好ましい。溶媒の配合比が5質量部を下まわると樹脂溶液の流動性が悪く、また1000質量部を上まると添加されている粒子の沈降や乾燥に時間がかかるなどの問題が発生することがある。
用いられる合成樹脂としては、エマルジョンタイプやディスパージョンタイプなどの水系タイプや溶剤タイプなどの種々のタイプのものを用いることができ、したがってこのとき用いられる溶媒としては、水、炭素数1〜3の脂肪族低級アルコール、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、トルエンなどを挙げることができ、これらの溶媒を、単独もしくは配合して用いることができる。建築材料としての観点からは、揮発性有機溶剤を極力用いず、水を溶媒として用いることが好ましい。
【0030】
なお、合成樹脂としてホットメルトタイプの樹脂を用いる場合には、溶媒を配合しなくてもよい。さらに、上述の範囲内であれば、無機粒子の配合量または溶媒の配合量が異なる樹脂液を用い、無機粒子を含有する無機粒子層を2層以上に積層するために、コーティング手法等により樹脂溶液の付与を数度繰り返してもよい。
【0031】
次に、繊維布帛層の形成工程として、無機粒子層を形成するための樹脂溶液が固まる前に、この樹脂溶液の上に繊維布帛を積層する。この際、積層された繊維布帛の繊維間隙に無機粒子層を形成するための樹脂溶液の一部が浸透して含浸され、無機粒子の質感とともに繊維布帛への含浸ムラにより色の自然な濃淡が現れ、さらに新規な意匠が発現される。さらに、この無機粒子と合成樹脂の一部が繊維布帛表面の全面または一部にまで透過し、表面層を形成すると、さらにイメージの異なる意匠性を有する壁紙を得ることができる。
特にセルロース系不織布を用いると、意匠性、吸水性、吸放湿性、触った時の触感などの機能性がすぐれたものが得られるので好ましい。
また、繊維布帛には無機粒子層に含まれる合成樹脂も含浸されるため、磨擦強度が向上し、さらに壁紙として取り扱われる際に繊維布帛の剥離強力も向上する。
【0032】
繊維布帛を積層した後、樹脂のタイプによっても異なるが、水系の樹脂を用いた場合には140℃程度の温度での乾燥や、ホットメルト樹脂の場合には融点以下に冷却することなどにより、無機粒子層を形成するための樹脂液を固化させ、無機粒子層および繊維布帛層を形成する。
【0033】
また、防炎剤層を形成する場合において、防炎剤を含む樹脂溶液を用いて防炎層を形成する場合には、上記の無機粒子層の形成と同じようにコーテイング手法等を用いて行うことができ、壁紙基材層の上に、防炎剤を含む樹脂溶液を塗布した後、直ちに乾燥し、防炎剤層を形成させればよい。この際の乾燥は140℃程度の温度で行うことができる。
また、防炎剤を含む樹脂溶液は、樹脂溶液中での防炎剤の沈降等を防止するため、樹脂溶液粘度を好ましくは3000〜50000cps、さらに好ましくは5000〜30000cpsに調整するのがよい。増粘させる方法としては、溶媒の配合割合の調整や公知の増粘剤による粘度調整によることができる。
【0034】
本発明の壁紙は、無機粒子層の上に繊維布帛層を有することにより壁紙の表面もしくは表面近辺に繊維布帛があり、意匠性に優れ、柔軟性、耐磨擦性を有するので、使用時は勿論のこと、製造から施工に至る過程においても熟練した技術も不要で、取り扱いが簡便であり、キズや削り取り、ひび割れなどを生じることも少ないものである。さらに、壁紙基材において、壁紙基材層の無機粒子層を設けた反対面に粘着剤層を設けることによって、壁紙としての施行性や加工性に富むものとなるので、好ましい形態を得ることができることはいうまでもない。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を用いて本発明をさらに説明する。これらの実施例において用いる性能評価は、次に記載する方法に拠った。
【0036】
透湿性の評価:JIS L‐1099 A−1法(塩化カルシウム法)より求めた。
吸水性の評価:JIS L‐1907(滴下法)より求めた。
厚さ:試料断面の電子顕微鏡写真よりもとめた。
耐磨擦性評価:施工刷毛による表面傷つきにより評価した。
JIS A6921 ドライ25回、湿5回
【0037】
結露性の評価
40℃の温水を500ml入れた500mlのビーカーを、壁紙の部屋側がビーカー側になるようにして、ビーカーの上側から壁紙で覆い、輪ゴムで固定する。このビーカーを10℃、60%RHの条件下の恒温恒湿機中に1時間放置する。1時間後における壁紙に付着した水滴量を測定して結露量を求め、単位をg/m/hrに換算した。
結露量の求め方
W1:壁紙でビーカーを覆った状態(10℃、60%RH)にて1時間放置した後、ビーカーから結露水が落ちないようにして試料を取外し、測定した質量(g)
W2:W1を測定した後、濾紙を用いて結露水を吸い取った後の壁紙の質量(g)
S:ビーカー口の面積(m
結露量(g/m/hr)=(W1−W2)÷S
【0038】
吸放湿性の評価
20℃、65%RHおよび30℃、90%RHの雰囲気下に、恒温恒湿器中に24時間放置後、質量を測定し、それぞれの吸湿率を次式で求めた。なお、乾燥を105℃で1時間行った。
吸湿率(%)=[(吸湿後の重量−乾燥後の重量)/乾燥後の重量]×100
その後、上記で測定した20℃、65%RHおよび30℃、90%RHの条件での吸湿率(それぞれMR1およびMR2とする)から、
吸放湿量差(%)=MR2−MR1
を求めた。吸放湿量差が大きいほど吸放湿性に優れることがわかる。
【0039】
実施例1
壁紙基材として、坪量(平立方m当り)110g、厚さ200μmの壁紙用エマルジョン紙の片面に、無機粒子層を形成するため、コンマコーターを用いて、水系アクリル樹脂(固形分10%)80部と、水40部、粒子径の70%以上が3〜80μmである無機粒子(スワン株式会社製:珪藻ストーン)100部を含む樹脂溶液をコートした(塗布)。
【0040】
次に、コーテイングにより付与した樹脂溶液が固まる前に、繊維布帛として、綿の不織布(目付け30g/m、厚み100μm)を壁紙基材上に塗布した樹脂溶液上に積層し、130℃で60秒間予備乾燥した後、150℃で5分間乾燥して、壁紙基材層、無機粒子層、繊維布帛層を有する壁紙を得た。得られた壁紙は、繊維布帛の表面にはほとんど無機粒子が存在していないものの、不織布越しの外観として砂壁感を有し、また全体的に自然な濃淡が感じられ、意匠性に優れるものであった。その評価を表1に記載する。
【0041】
実施例2
実施例1で用いた微粒子に代えて粒子径の70%以上が100μmを超える無機粒子を用いた以外は、実施例1と同じ処方、同じ工程により壁紙を得た。その評価を表1に記載する。
得られた壁紙は繊維布帛の表面にはほとんど無機粒子が存在しないものの、繊維布帛越しに独特の意匠感を有し、また全体的に自然な濃淡が感じられた。
【0042】
実施例3
実施例1で用いた微粒子に代えて粒子径の70%以上が3〜80μmである無機粒子を20部含む樹脂溶液を用いた以外は、同じ処方、同じ工程により壁紙を得た。その評価を表1に記載する。
【0043】
比較例1
実施例1において綿の不織布を積層しなかった以外は実施例1と同じ工程および処方により壁紙を得た。その評価を表1に記載する。
得られた壁紙は繊維布帛の表面に無機粒子が存在しているものの、従来からの珪藻土等を直接壁に塗ったものと同じく何ら意匠性に変化もなく、また全体的に自然な濃淡もなかった。また、施工時に無機粒子層の脱落やひび割れも生じた。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例4
壁紙基材として、厚さ20μm、坪量120g/mの不撚紙を用いた。この壁紙基材の片面に無機粒子層を形成するため下記樹脂溶液を準備した。
無機粒子層用樹脂溶液
焼き入れした珪藻土(無機粒子) 50質量部
銀担持ゼオライト(無機粒子) 5質量部
化石サンゴ(無機粒子) 35質量部
オレンジ顔料(無機粒子)(固形分50%) 10質量部
(上記無機粒子の粒子径の70%以上が1〜100μm)
ポリウレタン樹脂(固形分50%) 80質量部
水 150質量部
【0046】
この無機粒子層用の樹脂溶液を、ナイフコーターを用いて壁紙基材上に塗布した。
次に、樹脂溶液が固まる前に、リヨセル製不織布(目付け30g/m、厚さ100μm)を塗布した樹脂溶液上に積層し、140℃で3分間乾燥した後、150℃で1分間熱処理を行い、壁紙基材層、無機粒子層、繊維布帛層を有する壁紙を得た。得られた壁紙は、繊維布帛の表面にはほとんど無機粒子が存在しないものの、不織布越しに砂壁感があり、また全体的に自然な濃淡が感じられ、意匠性に優れるものであった。その評価を表2に記載する。
【0047】
比較例2
珪藻土を用いた市販の壁紙(LY−6418 販売元:リリカラ)に対して、その評価を表2に記載する。
意匠性に関しては、珪藻土のみの質感であり、本発明のような意匠性はなく、また全体的に自然な濃淡も感じられなかった。
【0048】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、従来にない意匠性を有するとともに、室内の湿気を透湿し、吸放湿することで、室内の湿度の変動を調整する作用を有し、吸水性に優れ、結露することが少ない壁紙を提供することができ、これは透湿性、吸放湿性を有するとともに、吸水性にも優れるので、多雨多湿環境下における建築物の建築材料として好適であり、さらに冬場の結露防止の観点からも好ましく、また柔軟性、耐磨擦性を有するので、使用時は勿論のこと、製造から施工に至る過程においても熟練した技術も不要で、取り扱いが簡便であり、キズや削り取り、ひび割れなどを生じることが少ないという利点を有し、したがって本発明は産業上極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁紙基材層、無機粒子層および繊維布帛層を有する壁紙。
【請求項2】
無機粒子層が無機粒子を含み、無機粒子が珪藻土を含む、請求項1に記載の壁紙。
【請求項3】
無機粒子層が、粒子径の70%以上が1〜100μmである無機粒子と、合成樹脂とを含む、請求項1または2に記載の壁紙。
【請求項4】
無機粒子の含有量が50〜1000g/mである、請求項1〜3のいずれかに記載の壁紙。
【請求項5】
壁紙基材層の片面に無機粒子層が設けられ、無機粒子層の上に繊維布帛層が設けられている、請求項1〜4のいずれかに記載の壁紙。
【請求項6】
繊維布帛層に用いられる繊維布帛がセルロース系繊維を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の壁紙。
【請求項7】
繊維布帛が目付け10〜100g/mの不織布である、請求項1〜6のいずれかに記載の壁紙。
【請求項8】
さらに、防炎剤含有層を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の壁紙。
【請求項9】
壁紙基材層の片面に、無機粒子と合成樹脂を含む樹脂溶液を塗布して無機粒子層を形成する工程と、塗布した無機粒子と合成樹脂を含む樹脂溶液が固まる前にこの無機粒子層に繊維布帛を積層して繊維布帛層を形成する工程を有する壁紙の製造方法。

【公開番号】特開2006−9231(P2006−9231A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−282061(P2004−282061)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000184687)小松精練株式会社 (110)
【Fターム(参考)】