説明

透湿性発泡積層シート及びその製造方法

【課題】本発明の目的は、透湿性及び耐汚染性(特に通気孔部分での耐汚染性)を兼ね備える発泡積層シートを提供することである。
【解決手段】
基材上に、溶融成型により形成された発泡樹脂層と、表面保護層が順に積層された積層発泡シートにおいて、少なくとも該表面保護層と該発泡樹脂層を貫通する通気孔を設けることによって、透湿性を確保しつつ耐汚染性も備えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透湿性及び耐汚染性を兼ね備える発泡積層シートに関する。また、本発明は、当該発泡積層シートの製造に使用される積層シートに関する。更に、本発明は、当該発泡積層シート及び積層シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住生活環境の快適化に対する要望には枚挙にいとまがなく、建築内装分野でも、この要望に応えるべく、壁紙に使用される化粧シートとして、耐汚染性、耐傷性、耐久性、耐クラック性等が付与された様々な発泡積層シートが開発されている。例えば、特許文献1には、基材上に、発泡剤と水性エマルジョン樹脂とその他添加剤からなるコーティング層を設け、更に耐汚染性を有する樹脂フィルムを貼付して発泡させた壁紙が報告されている。特許文献1のように樹脂フィルム等からなる表面保護層と発泡樹脂層を設けた発泡積層シートは、表面強度、耐薬品性、耐溶剤性、耐汚染性等の特性を備えることができる反面、当該表面保護層によって透湿性が損なわれるという欠点がある。透湿性が低い壁紙では、室内湿度によっては結露を発生させるという問題がある。更に、透湿性が低い壁紙は、壁紙施工時に施工糊が乾き難いという問題もある。
【0003】
一方、従来、フィルムやシートに貫通孔(通気孔)を設けることにより、透湿性を確保できることが知られている。また、壁紙の分野でも、発泡積層シートに貫通孔を設けることにより、透湿性だけでなく、ピールアップ性を付与したり、エアーパンクを防止できることも知られている(例えば、特許文献2−4参照)。しかしながら、貫通孔を有する発泡積層シートは、貫通孔を介して汚染物質がシート内部に侵入し易くなり、却って耐汚染性が低下するという欠点がある。特に、表面保護層と発泡樹脂層を備える積層発泡シートに貫通孔を設けた場合、発泡樹脂層と表面保護層の界面に汚染物質が染み込み、それが広がって汚染性を悪化させたり、当該界面に汚染物質が一旦混入すると、これを除去することが困難になるという問題がある。
【0004】
近年、高い気密性を備える住宅が増えるに伴い、透湿性を確保しつつ耐汚染性も備える発泡積層シートが必要とされているものの、これらの両特性を兼ね備える発泡積層シートは開発されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−309903号公報
【特許文献2】特開平4−246537号公報
【特許文献3】特公昭60−25262号公報
【特許文献4】特公昭60−39544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、透湿性及び耐汚染性(特に、通気孔部分における耐汚染性)を兼ね備える発泡積層シート、該発泡積層シートの製造に使用される積層シート、及びこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、基材上に、溶融成型により形成された発泡樹脂層と、表面保護層が順に積層された積層発泡シートにおいて、少なくとも該表面保護層と該発泡樹脂層を貫通する通気孔を設けることによって、通気孔により透湿性を確保しつつ、通気孔部分における耐汚染性も備えることができることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発泡積層シート、積層シート、及びこれらの製造方法を提供する。
項1.基材上に、溶融成型により形成された発泡樹脂層と、表面保護層が順に積層されており、少なくとも該表面保護層と該発泡樹脂層を貫通する通気孔を有していることを特徴とする、発泡積層シート。
項2.前記表面保護層の表面における前記通気孔の平均孔径が50〜300μmである、項1に記載の発泡積層シート。
項3.前記表面保護層が熱可塑性樹脂を含む、項1又は2に記載の発泡積層シート。
項4.前記発泡樹脂層が架橋されてなる、項1〜3のいずれかに記載の発泡積層シート。
項5.前記基材と前記発泡樹脂層の間、及び/又は前記発泡樹脂層と前記表面保護層の間に、非発泡樹脂層を有する、項1〜4のいずれかに記載の発泡積層シート。
項6.基材上に、溶融成型により形成された発泡剤含有樹脂層と、表面保護層が順に積層されており、少なくとも該表面保護層と該発泡剤含有樹脂層を貫通する通気孔を有していることを特徴とする、積層シート。
項7.通気孔を有する発泡積層シートの製造方法であって、
基材上に、溶融成型により発泡剤含有樹脂層を形成する第1工程、
前記発泡剤含有樹脂層上に、表面保護層を形成する第2工程、及び
前記発泡剤含有樹脂層を発泡させて発泡樹脂層を形成する第3工程を含み、
且つ、前記第2工程又は第3工程の後に、少なくとも前記表面保護層と前記発泡樹脂層を貫通する通気孔を形成する穿設工程を含むことを特徴とする、発泡積層シートの製造方法。
項8.前記第1工程又は第2工程の後に、発泡剤含有樹脂層に対して架橋処理を行う、項7に記載の発泡積層シートの製造方法。
項9.通気孔を有する積層シートの製造方法であって、
基材上に、溶融成型により発泡剤含有樹脂層を形成する第1工程、
前記発泡剤含有樹脂層上に、表面保護層を形成する第2工程、及び
少なくとも前記表面保護層と前記発泡剤含有樹脂層を貫通する通気孔を形成する穿設工程を含むことを特徴とする、発泡積層シートの製造方法。
項10.前記第1工程又は第2工程の後に、発泡剤含有樹脂層に対して架橋処理を行う、項9に記載の発泡積層シートの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の発泡積層シートは、優れた透湿性を備えているので、室内湿度が高くなっても結露発生を抑制することができ、また壁紙施工時に施工糊を乾き易くすることも可能になっている。また、本発明の発泡積層シートは、壁紙施工時に糊付面同士を密着させた際の相剥ぎ性も良好であり、施工容易性の点でも良好である。更に、本発明の発泡積層シートは、通気孔を介して表面保護層と発泡樹脂層の界面に汚染物が混入するのを抑制することが可能になっており、優れた耐汚染性も備えている。
【0010】
また、本発明の積層シートは、含有する発泡剤含有樹脂層を発泡させるという簡便な手法により上記発泡積層シートを製造することが可能になっており、上記発泡積層シートの製造原料(原反)として利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「発泡積層シート」とは、発泡樹脂層を有する発泡シートを意味し、「積層シート」とは、発泡積層シートの発泡前の状態であり、所謂未発泡原反を意味する。
【0012】
1.発泡積層シート
本発明の発泡積層シートは、基材上に、溶融成型により形成された発泡樹脂層と、表面保護層が順に積層されており、少なくとも該表面保護層と該発泡樹脂層を貫通する通気孔を有していることを特徴とする。以下、本発明の発泡積層シートについて詳述する。
【0013】
発泡積層シートの積層構造
本発明の発泡積層シートは、基材上に、溶融成型により形成された発泡樹脂層と、表面保護層が順に積層された積層構造を有する。
【0014】
本発明の発泡積層シートにおいて、前記基材と前記発泡樹脂層の間には、基材と発泡樹脂層との接着力を向上させる目的で、必要に応じて非発泡樹脂層(非発泡樹脂層B)が形成されていてもよい。また、前記発泡樹脂層の上面(表面保護層が積層される面)には、絵柄模様層を形成する際の絵柄模様を鮮明にしたり発泡樹脂層の耐傷性を向上させたりする目的で、必要に応じて非発泡樹脂層(非発泡樹脂層A)が形成されていてもよい。
【0015】
また、発泡樹脂層(又は非発泡樹脂層A)の上面且つ表面保護層の下面には、発泡積層体シートに意匠性を付与する目的で、必要に応じて絵柄模様層が形成されていてもよい。
【0016】
即ち、本発明の発泡積層シートにおいて、非発泡樹脂層B、非発泡樹脂層A、及び絵柄模様層を設ける場合には、基材/非発泡樹脂層B/発泡樹脂層/非発泡樹脂層A/絵柄模様層/表面保護層が順に積層された積層構造になる。
【0017】
また、前記表面保護層には、本発明の発泡積層シートに意匠性を付与するために、エンボス加工による凹凸模様が施されていてもよい。
【0018】
以下、本発明の発泡積層シートを構成する各層の組成及び形成方法について説明する。
【0019】
[基材]
本発明に使用される基材については、特に制限されず、通常、壁紙用紙として用いられる繊維質基材等が使用できる。また、基材には、必要に応じて難燃剤、無機質剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、着色剤、サイズ剤、定着剤等が含まれていてもよい。基材として、具体的には、壁紙用一般紙(パルプ主体のシートをサイズ剤でサイズ処理したもの)、難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの);水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙;上質紙;薄用紙;繊維混抄紙(合成繊維をパルプと混抄したもの)等が挙げられる。
【0020】
基材の坪量については、特に制限されないが、例えば50〜300g/m程度、好ましくは50〜120g/m程度が挙げられる。
【0021】
[発泡樹脂層]
発泡樹脂層は、樹脂成分及び発泡剤を含有する樹脂組成物からなる発泡剤含有樹脂層を溶融成型により形成後、発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより形成される。このように、溶融成型により形成した発泡樹脂層を使用することにより、本発明の発泡積層シートに耐汚染性(特に、通気孔部分における耐汚染性)を備えさせることが可能になる。
【0022】
発泡樹脂層に使用される樹脂成分としては、特に制限されないが、例えば、1)ポリエチレン、及び2)エチレンとエチレン以外の成分とをモノマーとするエチレン共重合体(以下、「エチレン共重合体」と略記する)の少なくとも1種を含有するものが挙げられる。エチレン共重合体は、融点及びMFRの観点で、溶融成型による製膜に適した特性を有している。
【0023】
本発明で使用されるポリエチレンとしては、特に制限されないが、例えば、密度0.942g/cm以上の高密度ポリエチレン(HDPE)及び密度0.93g/cm以上0.942g/cm未満の中密度ポリエチレン(MDPE)、密度0.91g/cm以上0.93g/cm未満の低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。これらの中でも、低密度ポリエチレンが好ましい。
【0024】
本発明で使用されるエチレン共重体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。これらのエチレン共重合体は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
また、エチレン共重合体において、エチレンとエチレン以外のモノマーの比率については、特に制限されないが、例えば、エチレン以外のモノマーの含有量として、通常5〜25質量%、好ましくは5〜20質量%が挙げられる。このような共重合比率を採用することにより、溶融成型による製膜性をより高めることができる。具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニルの共重合比率(VA量)としては、例えば9〜25質量%、好ましくは9〜20質量%が挙げられる。エチレン−メチルメタクリレート共重合体におけるメチルメタクリレートの共重合比率(MMA量)としては、例えば5〜25質量%、好ましくは5〜15質量%が挙げられる。エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体における(メタ)アクリル酸の共重合比率(MAA量)としては、例えば2〜15質量%、好ましくは5〜11質量%が挙げられる。
【0026】
発泡樹脂層に使用される樹脂成分として、好ましくは、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、及びポリエチレンとエチレン−αオレフィン共重合体の混合物の少なくとも1種(以下、「好適樹脂成分」と略記する)が挙げられる。
【0027】
樹脂成分として、ポリエチレンとエチレン−αオレフィン共重合体の混合物を使用する場合、これらの比率については特に制限されないが、例えば、ポリエチレンとエチレン−αオレフィン共重合体の総量100質量部当たり、エチレン−αオレフィン共重合体が50質量部以上100質量部未満が挙げられる。
【0028】
また、樹脂成分として、前記好適樹脂成分と他の樹脂成分とを併用する場合、これらの比率については特に制限されないが、例えば、樹脂成分の総量100質量部当たり、好適樹脂成分が70質量部以上100質量部未満、好ましくは80質量部以上100質量部未満が挙げられる。
【0029】
発泡樹脂層に含まれる樹脂成分は、JIS K 6922に記載の190℃、荷重21.18Nの条件で測定したMFR(メルトフローレート)が10〜100g/10分であることが好ましい。MFRが上記範囲内の場合には、発泡剤含有樹脂層を溶融成型により形成する際に、温度上昇が少なく、非発泡状態で形成できるため、後に絵柄模様層を形成する場合には、平滑な面に印刷処理でき、柄抜け等を減少させることができる。
【0030】
発泡樹脂層に使用される発泡剤としては、特に制限されず、公知の発泡剤から選択することができる。例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等のアゾ系;オキシベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジド系等の有機系熱分解型発泡剤;マイクロカプセル型発泡剤;重曹等の無機系発泡剤等が挙げられる。
【0031】
発泡剤の含有量は、発泡剤の種類、発泡倍率等に応じて適宜設定できる。発泡倍率の観点からは、7倍以上、好ましくは7〜10倍程度であり、発泡剤は、例えば、樹脂成分100質量部に対して1〜20質量部程度とすればよい。
【0032】
発泡樹脂層には、発泡剤の発泡効果を向上させるために、必要に応じて発泡助剤が含まれていてもよい。発泡助剤としては、特に制限されないが、例えば、金属酸化物、脂肪酸金属塩等が挙げられる。より具体的には、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オクチル酸亜鉛、オクチル酸カルシウム、オクチル酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ラウリル酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、p−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、ナフトエ酸ヒドラジド、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド、ラウリル酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、p−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、ナフトエ酸ヒドラジド、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド等が挙げられる。これらの発泡助剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの発泡助剤の含有量は、発泡助剤の種類、発泡剤の種類や含有量等に応じて適宜設定されるが、例えば、樹脂成分100質量部に対して、0.3〜10質量部程度、好ましくは1〜7質量部程度が挙げられる。
【0033】
また、発泡樹脂層には、難燃性の付与、目透き抑制、表面特性向上等のために、必要に応じて無機充填剤が含まれていてもよい。無機充填剤としては、特に制限されないが、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物等が挙げられる。これらの無機充填剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの無機充填剤の含有量は、特に制限されないが、例えば、樹脂成分100質量部に対して0〜100質量部程度、好ましくは20〜70質量部程度が挙げられる。
【0034】
また、発泡樹脂層には、必要に応じて顔料が含まれていてもよい。顔料としては、特に制限されず、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等が挙げられる。有機顔料としては、例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等が挙げられる。これらの顔料は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの顔料の含有量は、特に制限されないが、例えば、樹脂成分100質量部に対して10〜50質量部程度、好ましくは15〜30質量部程度が挙げられる。
【0035】
更に、発泡樹脂層には、本発明の効果を妨げない限り、必要に応じて、酸化防止剤、架橋剤、表面処理剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0036】
発泡樹脂層は、必要に応じて架橋されていてもよい。発泡樹脂層を架橋させる方法については、特に制限されないが、例えば、発泡前の発泡剤含有樹脂層に対して電子線照射を行うことにより、発泡前の発泡剤含有樹脂層を予め架橋する方法が挙げられる。具体的には、発泡剤含有樹脂層に対して、加速電圧100〜150kV、好ましくは100〜140kVで、照射量を2〜200kGy、好ましくは2.5〜100kGyに設定して、電子線照射を行う方法が例示される。
【0037】
発泡樹脂層の厚みについては、特に制限されないが、例えば、300〜700μmが挙げられる。発泡樹脂層の発泡前の厚み(即ち、発泡剤含有樹脂層の厚み)としては、例えば、40〜100μmが挙げられる。
【0038】
発泡樹脂層は、基材上に溶融成型により形成される限り、その形成方法については特に制限されないが、例えば、Tダイ押出機で押出し形成する方法、カレンダー法により形成する方法が挙げられる。好ましくはTダイ押出機で押出し形成する方法である。
【0039】
発泡樹脂層は、樹脂成分、発泡剤、及び必要に応じて他の添加剤を含有する樹脂組成物からなる発泡剤含有樹脂層を溶融成型により形成後、当該発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより形成される。
【0040】
[非発泡樹脂層B(接着樹脂層)]
非発泡樹脂層Bは、基材と発泡樹脂層との接着力を向上させる目的で、必要に応じて、基材と発泡樹脂層との間に形成される接着樹脂層である。
【0041】
非発泡樹脂層Bの樹脂成分としては、特に限定されないが、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましい。EVAは公知又は市販のものを使用することができる。非発泡樹脂層Bに使用されるEVAにおいて、酢酸ビニル成分(VA成分)の比率については、特に制限されないが、例えば10〜46質量%、好ましくは15〜41質量%が挙げられる。
【0042】
非発泡樹脂層Bの厚さについては、特に制限されないが、例えば3〜50μm、好ましくは3〜20μm程度が挙げられる。
【0043】
非発泡樹脂層Bの形成方法については、特に制限されないが、好ましくは溶融成型により形成する方法、更に好ましくはTダイ押出機により押出し形成する方法が挙げられる。特に、溶融樹脂を同時に押出すことにより2層以上の同時形成が可能なマルチマニホールドタイプのTダイを用いて、発泡樹脂層と非発泡樹脂層Bを同時押出して形成することが望ましい。
【0044】
[非発泡樹脂層A]
非発泡樹脂層Aは、絵柄模様層を形成する際の絵柄模様を鮮明にしたり発泡樹脂層の耐傷性を向上させたりする目的で、必要に応じて、発泡樹脂層の上面に形成される層である。
【0045】
非発泡樹脂層Aの樹脂成分としては、特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、メタクリル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの樹脂成分の中でも、好ましくはポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0046】
ポリオレフィン系樹脂としては、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の樹脂単体、炭素数が4以上のαオレフィンの共重合体(線状低密度ポリエチレン)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、アイオノマー等が挙げられる。
【0047】
非発泡樹脂層Aの厚さについては、特に制限されないが、例えば3〜50μm、好ましくは3〜20μm程度が挙げられる。
【0048】
非発泡樹脂層Aの形成方法については、特に制限されないが、好ましくは溶融成型により形成する方法、更に好ましくはTダイ押出機により押出し形成する方法が挙げられる。特に、マルチマニホールドタイプのTダイを用いて、発泡樹脂層と非発泡樹脂層Bを同時押出して形成することが望ましい。また、非発泡樹脂層A、発泡樹脂層、及び非発泡樹脂層Bの3つの層を設ける場合には、3層の同時形成が可能なマルチマニホールドタイプのTダイを用いて、これらの3層を同時押出して形成することが望ましい。
【0049】
[絵柄模様層]
絵柄模様層は、発泡積層体シートに意匠性を付与する目的で、必要に応じて、発泡樹脂層(又は非発泡樹脂層A)の上面に形成される層である。
【0050】
絵柄模様としては、例えば木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。絵柄模様は、発泡積層シートの用途に応じて適宜選択できる。
【0051】
絵柄模様層は、例えば、絵柄模様を印刷することにより形成できる。印刷手法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。印刷インキとしては、着色剤、結着材樹脂、溶剤(又は分散媒)等を含む印刷インキが使用できる。これらのインキは公知又は市販のものを使用してもよい。
【0052】
着色剤としては、特に制限されないが、例えば、前記の発泡樹脂層で使用されるような顔料を適宜使用することができる。
【0053】
結着材樹脂としては、基材シートの種類に応じて適宜設定すればよく、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらの結着材樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
溶剤(又は分散媒)としては、特に制限されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水などが挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
絵柄模様層の厚みは、絵柄模様の種類等に応じて適宜設定されるが、例えば0.1〜10μm程度が挙げられる。
【0056】
[表面保護層]
発泡樹脂層(或いは非発泡樹脂層A又は絵柄模様層)の上面には、表面保護層が形成される。なお、表面保護層の密着性をより向上させるために、表面保護層を積層する発泡樹脂層(或いは非発泡樹脂層A又は絵柄模様層)の表面に易接着処理(プライマー処理)した後に表面保護層を設けることもできる。
【0057】
表面保護層の材質としては、特に制限されず、公知の樹脂が使用できる。例えば、表面保護層は、熱可塑性樹脂で形成された層(以下、熱可塑性樹脂層と略記する)であってもよく、また硬化性樹脂を硬化することにより形成された層(以下、硬化樹脂層と略記する)であってもよい。特に、塗工法等の溶融成型以外の手法で形成させた発泡樹脂層と熱可塑性樹脂層を積層させた発泡積層シートに通気孔を設けた場合、発泡樹脂層と熱可塑性樹脂層の界面に汚染物質が著しく混入し、発泡層内で汚染物質が広がるが、本発明の発泡積層シートでは、このような塗工法で設けた発泡樹脂層と熱可塑性樹脂層とを組み合わせて採用する際の特有の問題点を解決して優れた耐汚染性を備えることができる。かかる本発明の効果に鑑みれば、表面保護層の好適な例として、少なくとも熱可塑性樹脂層を有するものが挙げられる。
【0058】
表面保護層は、単層からなるものであってもよく、2以上の層が積層されているものであってもよい。例えば、最表面に硬化樹脂層が形成され、その下層に熱可塑性樹脂層が積層されている2層構造であってもよい。
【0059】
表面保護層の厚みとしては、特に制限されないが、例えば、熱可塑性樹脂層の場合には、通常5〜25μm、好ましくは10〜20μmが挙げられ、硬化樹脂層の場合には、通常1〜10μm、好ましくは2〜5μmが挙げられる。
【0060】
以下、熱可塑性樹脂層及び硬化樹脂層について説明する。
【0061】
(熱可塑性樹脂層)
熱可塑性樹脂層に使用される樹脂成分としては、特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。これらの樹脂成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの樹脂成分の中でも、好ましくはポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0062】
ポリオレフィン樹脂として、具体的には、ポリエチレン、エチレン共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等が挙げられる。これらのポリオレフィン樹脂の中でも、好ましくはポリエチレン及びエチレン共重合体、更に好ましくはポリエチレンが挙げられる。
【0063】
熱可塑性樹脂層に使用されるポリエチレンとしては、特に制限されないが、例えば、密度0.942g/cm以上の高密度ポリエチレン(HDPE)及び密度0.93g/cm以上0.942g/cm未満の中密度ポリエチレン(MDPE)、密度0.91g/cm以上0.93g/cm未満の低密度ポリエチレン(LDPE)等が挙げられる。また、密度が0.85〜0.91g/cm3の範囲である超低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いてもよい。これらポリエチレンの中でも、発泡積層シートのカールの発生を抑制することができるという点で、密度が低いポリエチレンを用いることが好ましい。
【0064】
熱可塑性樹脂層に使用されるエチレン共重合体としては、特に制限されないが、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸メチル共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂等のエチレン(メタ)アクリル酸系共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂ケン化物、アイオノマー等が挙げられる。これらポリエチレンの中でも、好ましくはエチレン(メタ)アクリル酸系共重合体樹脂、更に好ましくはエチレン−メタクリル酸共重合体樹脂が挙げられる。
【0065】
また、熱可塑性樹脂層が、ポリエチレンやエチレン系共重合体等の架橋可能な樹脂成分を含む場合には、必要に応じて、当該熱可塑性樹脂層に架橋処理を行ってもよい。このように熱可塑性樹脂層が架橋されていると、熱可塑性樹脂層の耐熱性を向上させることができ、当該熱可塑性樹脂層を薄膜状に形成した場合でも加熱発泡時の表面陥落を抑制し、耐汚染性の低下を有効に防止することができる。熱可塑性樹脂層を架橋する方法としては、特に制限されないが、例えば、熱可塑性樹脂層に対して電子線照射を行う方法が挙げられる。具体的には、熱可塑性樹脂層に対して、加速電圧70〜300kV程度、照射線量5〜250kGy程度に設定して、電子線照射を行う方法が例示される。
【0066】
また、熱可塑性樹脂層には、備えさせるべき所望の物性に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、架橋剤、帯電防止剤、抗菌剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0067】
熱可塑性樹脂層の形成は、予め作成された熱可塑性樹脂フィルムを発泡樹脂層(或いは非発泡樹脂層A又は絵柄模様層)の表面に貼付することにより行ってもよいが、製造簡便性の観点から、発泡樹脂層(或いは非発泡樹脂層A又は絵柄模様層)の表面に熱可塑性樹脂を押出し形成することが望ましい。
【0068】
(硬化樹脂層)
硬化樹脂層に使用される硬化性樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂(常温硬化型樹脂、2液反応硬化型樹脂を含む)等が挙げられる。これらの中でも、電離放射線硬化性樹脂は、硬化速度が速く作業性も良好であり、しかも柔軟性や硬度等の樹脂の物性の調節も容易であるので好ましい。
【0069】
電離放射線硬化性樹脂として、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマー、及び/又はモノマーを適宜混合したものが挙げられる。ここで、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合或いは架橋し得るエネルギー量子を有するものを指し、通常は、紫外線又は電子線が用いられる。電離放射線硬化型樹脂としては、電子線照射によってラジカル重合(硬化)するものが好ましい。
【0070】
硬化樹脂層は、耐汚染性等の表面物性を付与すると同時に、表面保護層の表面張力を制御する目的で、必要に応じて、シリコーン(メタ)アクリレートを含有してもよい。シリコーン(メタ)アクリレートとしては、有機基がメタクリル基又はアクリル基であることを限度として特に制限されず、例えば、該有機基を1〜6つ有する変性シリコーンオイルが挙げられる。また、変性シリコーンオイルの構造は、置換される有機基の結合位置によって、側鎖型、両末端型、片末端型、側鎖両末端型に大別されるが、有機基の結合位置は特に制限されない。また、シリコーン(メタ)アクリレートの官能基当量(分子量/官能基数)としては、特に制限されないが、例えば1000〜20000の条件を有するものが挙げられる。
【0071】
シリコーン(メタ)アクリレートの含有量は、特に制限されないが、例えば、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.5〜4質量部、好ましくは1.0〜2.5質量部が挙げられる。
【0072】
また、硬化樹脂層には、備えさせるべき所望の物性に応じて、耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0073】
硬化樹脂層の形成は、使用する硬化性樹脂の種類に応じた方法を採用すればよいが、例えば、電離放射線硬化性樹脂を使用する場合であれば、以下の方法で行うことができる:(1)電離放射線硬化性樹脂、必要に応じてシリコーン(メタ)アクリレート及び各種添加剤を混合した電離放射線硬化性樹脂組成物を調製する、(2)電離放射線硬化性樹脂組成物を、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の方法で発泡樹脂層(或いは非発泡樹脂層A又は絵柄模様層)に塗工する。(3)電離放射線を照射して電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させる。電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化の際に、電離放射線として電子線を用いる場合、電子線照射条件として、例えば、加速電圧70〜300kV程度で照射線量5〜250kGy程度が挙げられる。
【0074】
[凹凸模様]
発明の発泡積層シートに、意匠性を付与するために、必要に応じて、表面保護層にエンボス加工による凹凸模様が施されていてもよい。エンボス加工は、エンボス版の押圧等の公知の手段により行うことができる。る凹凸模様としては、特に制限されず、例えば、例えば木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等が挙げられる。
【0075】
発泡積層シートの通気孔の構造
本発明の発泡積層シートは、少なくとも表面保護層と発泡樹脂層を貫通する通気孔を有している。
【0076】
本発明の発泡積層シートに設けられる通気孔は、表面保護層の上面から発泡樹脂層を貫通していればよいが、優れた透湿性を備えさせるという観点から、当該通気孔は、表面保護層の上面から基材の下面(発砲樹脂層が積層されている面と反対の面)まで貫通していることが好ましい。
【0077】
本発明の発泡積層シートに設けられる通気孔の断面形状は、円形に限定されず、三角形、四角形等の多角形であってもよい。
【0078】
本発明の発泡積層シートに設けられる通気孔の平均孔径については、特に制限されないが、例えば、前記表面保護層の表面における通気孔の平均孔径が50〜300μm、好ましくは100〜250μmが挙げられる。当該平均孔径は、光学顕微鏡にて発泡積層シートに設けられた通気孔10個について孔径を測定し、その平均値を算出することにより算出される値である。
【0079】
また、本発明の発泡積層シートの単位面積当たりの通気孔の数については、特に制限されないが、例えば、発泡積層シート1cm当たり、0.75〜30個、好ましくは1〜25個が挙げられる。
【0080】
また、本発明の発泡積層シートにおける開孔面積については、単位面積当たりの通気孔の数、孔径等に応じて定まり、特に制限されるものではないが、透湿性をより一層向上させるという観点から、0.04〜1.5mm/cmが好ましく、0.05〜1.25mm/cmが更に好ましい。なお、開孔面積とは、発泡積層シートの単位表面積当たりの通気孔が占める表面積の割合である。
【0081】
本発明の発泡積層シートにおける上記通気孔の形成は、例えば、CO2レーザーを使用する方法、針ロールとバックロールからなる針エンボス装置を使用する方法等によって行うことができる。
2.積層シート
【0082】
本発明の積層シートは、基材上に、溶融成型により形成された発泡剤含有樹脂層と、表面保護層が順に積層されており、少なくとも該表面保護層と該発泡剤含有樹脂層を貫通する通気孔を有していることを特徴とする。
【0083】
本発明の積層シートは、前記発泡積層シートの発泡前の状態であり、前記発泡積層シートの発泡樹脂層が発泡前の状態(即ち樹脂成分及び発泡剤を含有する発泡剤含有樹脂層)であること以外は、前記発泡積層シートと同様である。
【0084】
本発明の積層シートは、上記発泡積層シートの製造原料(未発泡原反)として使用される。
【0085】
3.発泡積層シート及び積層シートの製造方法
本発明の発泡積層シート及び積層シートは、例えば以下の製造方法によって製造されるが、これによって制限されるものではない。なお、以下の製造方法の説明において、発泡積層シート及び積層シートを構成する各層の形成方法、通気孔の形成方法等について、既に上記「1.発泡積層シート」の欄で述べている内容については割愛する。
【0086】
まず、基材上に、溶融成型により発泡剤含有樹脂層を形成する(第1工程)。また、非発泡樹脂層A及び/又は非発泡樹脂層Bを設ける場合には、マルチマニホールドタイプのTダイを用いて、発泡剤含有樹脂層と共に、非発泡樹脂層A及び/又は非発泡樹脂層Bを同時押出し形成することが望ましい。
【0087】
発泡剤含有樹脂層をTダイ押出機で押出し形成する際のシリンダー温度及びダイス温度については、使用する樹脂成分の種類等に応じて適宜設定すればよいが、一般に100〜140℃程度である。
【0088】
本第1工程では、溶融成型により発泡剤含有樹脂層を基材上に直接押出して、熱溶融による接着性を利用して基材と発泡剤含有樹脂層(必要に応じて非発泡樹脂層A及び/又は非発泡樹脂層B)を接着させてもよく、また、発泡剤含有樹脂層(必要に応じて非発泡樹脂層A及び/又は非発泡樹脂層B)を予め調製し、これを加熱した基材と熱圧着させてもよい。
【0089】
次いで、発泡剤含有樹脂層(又は非発泡樹脂層A)の上に、必要に応じて絵柄模様層を形成した後に、表面保護層を形成させる(第2工程)。表面保護層が硬化樹脂層の場合には、架橋処理を行い、硬化性樹脂を硬化させる。また、表面保護層が、ポリエチレンやエチレン系共重合体等の架橋可能な熱可塑性樹脂層である場合にも、必要に応じて、当該熱可塑性樹脂層に架橋処理を行ってもよい。
【0090】
斯して、基材上に、発泡剤含有樹脂層及び表面保護層が順次積層された積層シート(通気孔未形成)が調製される。
【0091】
表面保護層の形成後に、発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより、発泡剤含有樹脂層を発泡樹脂層に変換する(第3工程)。発泡剤含有樹脂層を発泡させる条件は、発泡剤の種類に応じて適宜設定されるが、例えば、加熱温度210〜240℃程度、加熱時間20〜80秒程度で加熱処理する方法が挙げられる。
【0092】
前記第1工程又は第2工程の後に、発泡剤含有樹脂層の熔融張力を調整して所望の発泡倍率を得られ易くするために、必要に応じて、発泡剤含有樹脂層に対して架橋処理を行うことができる。前述するように、表面保護層にも架橋処理を行う場合には、第2工程後に、発泡剤含有樹脂層の架橋と表面保護層の架橋を同時に行ってもよい。
【0093】
本発明の発泡積層シートの製造において、通気孔を形成する穿設工程は、前記第2工程の後又は前記第3工程の後に行われる。即ち、前記第2工程の後に少なくとも前記表面保護層と前記発泡剤含有樹脂層を貫通する通気孔を形成する穿設工程を行って本発明の積層シートを得た後に、前記第3工程を行ってもよい。また、前記第3工程の後に少なくとも前記表面保護層と前記発泡樹脂層を貫通する通気孔を形成する穿設工程を行ってもよい。斯して、本発明の発泡積層シート及び積層シートが製造される。
【実施例】
【0094】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。
【0095】
実施例1
3種3層Tダイ押出し機を用いて、非発泡樹脂層A/発泡剤含有樹脂層/非発泡樹脂層Bの順に厚み8μm/60μm/8μmになるように繊維質シートの上に押出し製膜した。これにより、非発泡樹脂層A/発泡剤含有樹脂層/非発泡樹脂層B/繊維質シートからなる積層体を得た。繊維質シートとしては、壁紙用紙「WK-665、興人製」を用いた。
【0096】
押出し条件は、非発泡樹脂層Aを形成するための樹脂を収容したシリンダー温度は130℃とし、発泡剤含有樹脂層を形成するための樹脂組成物を収容したシリンダー温度は120℃とし、非発泡樹脂層Bを形成するための樹脂を収容したシリンダー温度は120℃とした。また、ダイス温度はいずれも120℃とした。
【0097】
各層は、それぞれ以下の成分を用いて形成した。
非発泡樹脂層Aは、EMAA(「ニュクレルN1560」、三井・デュポンポリケミカル製)により形成した。
【0098】
発泡剤含有樹脂層は、EMAA(「ニュクレルN1110H」、三井・デュポンポリケミカル製)100質量部、炭酸カルシウム(「ホワイトンH」、白石工業製)30質量部、着色剤(「タイピュアR350」、デュポン製)20質量部、発泡剤(「ビニホールAC♯3」、永和化成工業製)5質量部、発泡助剤(「ADHS」、大塚化学製)5質量部により形成した。
【0099】
非発泡樹脂層Bは、EVA(「ウルトラセン750」、東ソー製)により形成した。
【0100】
次いで、非発泡樹脂層Aをコロナ放電処理した後、グラビア印刷機により絵柄印刷として水性インキ(「ハイドリック」、大日精化工業製)を用いて織物絵柄を印刷し絵柄模様層を形成した。
【0101】
その後、押出し機を用いて、絵柄模様層の表面に、熱可塑性樹脂層(表面保護層)を厚みが10μmになるように押出し製膜し、絵柄模様層に積層した。押出し条件はシリンダー、ダイス共に300℃とした。表面保護層の原料としては、低密度ポリエチレン(LDPE)(「ノバテックLC600A」、日本ポリエチレン製)(MFR=7)を用いた。その後、熱可塑性樹脂層(表面保護層)の面に対して、電子線を加速電圧195kV、照射線量50kGyの条件で照射した。
【0102】
次いで、得られた積層シートをオーブンにて加熱(220℃、35秒)して、積層シートの全体厚みが580μmになるように発泡剤含有樹脂層を発泡させた後、布目調のエンボス処理を行い、発泡積層シート(孔未形成状態)を得た。COレーザーを用いて、発泡積層シート(孔未形成状態)に孔径250μm、2mmピッチにて格子状に穿孔し、発泡積層シートに通気孔(貫通孔)を形成させた。得られた発泡積層シートの開口面積は、1.23mm/cmであった。
【0103】
実施例2
孔径50μm、2mmピッチにて格子状に穿孔して貫通孔を形成させた以外は、実施例1と同様にして発泡積層シートを製造した。得られた発泡積層シートの開口面積は、0.05mm/cmであった。
【0104】
実施例3
孔径200μm、5mmピッチにて格子状に穿孔して貫通孔を形成させた以外は、実施例1と同様にして発泡積層シートを製造した。得られた発泡積層シートの開口面積は、0.12mm/cmであった。
【0105】
実施例4
実施例1と同条件で、熱可塑性樹脂層/絵柄模様層/非発泡樹脂層A/発泡剤含有樹脂層/非発泡樹脂層B/繊維質シートからなる積層体を得た。次いで、この積層体の熱可塑性樹脂層上に、電離放射線硬化性樹脂組成物を塗工量2.0g/mでグラビアダイレクトコータ法により塗工した。電離放射線硬化性樹脂組成物は、ウレタンアクリレート100質量部、シリカ10質量部、メチルチルケトン5質量部からなるものを用いた。その後、電離放射線硬化性樹脂組成物の層に対して、電子線を加速電圧200kV、照射線量50kGyの条件で照射することにより、熱可塑性樹脂層上に硬化樹脂層を形成させた。
【0106】
次いで、得られた積層シートを、実施例1と同条件で、発泡、エンボス処理、穿孔を行うことにより、通気孔(貫通孔)を有する発泡積層シートを製造した。得られた発泡積層シートの開口面積は、1.23mm/cmであった。
【0107】
実施例5
実施例1と同条件で、絵柄模様層/非発泡樹脂層A/発泡剤含有樹脂層/非発泡樹脂層B/繊維質シートからなる積層体を得た。次いで、この積層体に、実施例4と同条件で、電離放射線硬化性樹脂組成物の塗工及び電子線照射を行い、絵柄模様層上に硬化樹脂層を形成させた。
【0108】
次いで、得られた積層シートを、実施例1と同条件で、発泡、エンボス処理、穿孔を行うことにより、通気孔(貫通孔)を有する発泡積層シートを製造した。得られた発泡積層シートの開口面積は、1.23mm/cmであった。
【0109】
比較例1
エマルジョン樹脂組成物を繊維質シート上にコーティングし、厚み100μmの発泡剤含有樹脂層を積層させた。繊維質シートとしては、壁紙用紙「WK-665、興人製」を用いた。また、エマルジョン樹脂組成物としては、エチレン−酢酸ビニル樹脂55質量部、水酸化アルミニウム100質量部、酸化チタン3質量部、分散剤「ポイズ」、花王製)1質量部、発泡剤(「AZ−B 95」、大塚化学製)10質量部、発泡剤(「F−85」、松本油脂製薬製)0.5質量部、水110質量部からなるものを用いた。
【0110】
次いで、発泡剤含有樹脂層をコロナ放電処理した後、グラビア印刷機により絵柄印刷として水性インキ(「ハイドリック」、大日精化工業製)を用いて織物絵柄を印刷し絵柄模様層を形成した。
【0111】
その後、実施例1と同条件で、表面保護層面の形成、加熱発泡、エンボス処理、穿孔を行い、通気孔(貫通孔)を有する発泡積層シートを製造した。得られた発泡積層シートの開口面積は、1.23mm/cmであった。
【0112】
比較例2
65g/m2の壁紙用裏打紙〔(株)興人:WK−665(商品名)〕に塩化ビニルペーストゾルをコンマコート法で250g/m2塗布し、150℃で1分間乾燥して塩化ビニルペーストゾル層を形成した。また、塩化ビニルペーストゾルとしては、塩化ビニルレジン100重量部、炭酸カルシウム110重量部、発泡剤(アゾジカルボンアミド)4.5重量部、可塑剤(フタル酸ジイソノニル)50重量部、安定剤(エポキシ化ダイズ油)2重量部、安定剤(ADEKA製「FL−47」)5重量部、液状トナー(日弘ビックス製)「DE−24」23重量部、希釈剤(シェルジャパン「シェルゾールS」)20重量部とした。
【0113】
次いで、発泡剤含有樹脂層をコロナ放電処理した後、グラビア印刷機により絵柄印刷として水性インキ(「ハイドリック」、大日精化工業製)を用いて織物絵柄を印刷し絵柄模様層を形成した。
【0114】
その後、実施例1と同条件で、表面保護層面の形成、加熱発泡、エンボス処理、穿孔を行い、通気孔(貫通孔)を有する発泡積層シートを製造した。得られた発泡積層シートの開口面積は、1.23mm/cmであった。
【0115】
試験例1(透湿性、耐汚染性、相剥ぎ性の評価)
実施例1−5及び比較例1−2の各発泡積層シートについて、透湿性、耐汚染性、及び相剥ぎ性を以下の方法に従って評価した。
【0116】
透湿性の評価
各発泡積層シートについて、JIS Z 0208に規定の方法に準じて、水蒸気透過度を測定した。透湿性の測定は、40℃、相対湿度90%の条件で行った。
【0117】
また、各発泡積層シートの透湿性について、水蒸気透過度が200g/m・24hr以上の場合を○、水蒸気透過度が200g/m・24hr未満の場合を×として判定した。
【0118】
耐汚染性の評価
各発泡積層シート(縦30cm、横20cm)に、コーヒー50mLをこぼした状態で24時間放置した後に、コーヒーを拭き取り、各発泡積層シートを水で洗拭した後に、目視にて各発泡積層シートの汚れの程度を確認し、下記の判定基準に従って耐汚染性を評価した。
<耐汚染性の判定基準>
○:発泡積層シートの通気孔部分に、コーヒーの残存が全く認められない。
△:発泡積層シートの通気孔部分に、コーヒーの残存が若干認められたが、実用上問題ない。
×:発泡積層シートの通気孔部分に、コーヒーの残存が顕著に認められた。
【0119】
相剥ぎ性の評価
各発泡積層シートの裏面(繊維質シートの表面)に施工糊を130g/mで糊付けし、糊付け面同士を密着させた後、ポリエチレン製の袋に収容し、24時間放置した。その後、密着させた糊付け面同士を剥がして、その外観を評価した。
【0120】
透湿性及び耐汚染性の評価結果を表1に示す。表1から明らかなように、発泡樹脂層を溶融成型以外の手法で製膜した比較例1−2の発泡積層シートでは、通気口部分に汚染物質が残存し、耐汚染性が損なわれていたのに対して、発泡樹脂層を溶融成型で製膜した実施例1−5の発泡積層シートでは、通気口部分に汚染物質が残存せず、優れた耐汚染性を備えていた。とりわけ、実施例1〜4の熱可塑性樹脂層を有する発泡積層シートは、耐汚染性が格段に優れており、コーヒーよりも汚染が認められやすい黒マジックを塗布し、擦り合せて24時間放置しても、エタノールでの洗拭によりインクが除去され、汚染が殆ど認められなかった。また、実施例1−5の発泡積層シートは、いずれも、透湿性も良好であった。
【0121】
また、相剥ぎ性に関しては、比較例1の発泡積層シートでは、糊付け面同士が剥がれ難く、剥がした後の糊付け面の一部が剥がれ落ちていたが、実施例1−5の発泡積層シートでは、糊付け面同士が剥がれやすく、剥がした後の糊付け面も、施工糊が均一に塗布されたきれいな状態を保持していた。
【表1】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、溶融成型により形成された発泡樹脂層と、表面保護層が順に積層されており、少なくとも該表面保護層と該発泡樹脂層を貫通する通気孔を有していることを特徴とする、発泡積層シート。
【請求項2】
前記表面保護層の表面における前記通気孔の平均孔径が50〜300μmである、請求項1に記載の発泡積層シート。
【請求項3】
前記表面保護層が熱可塑性樹脂を含む、請求項1又は2に記載の発泡積層シート。
【請求項4】
前記発泡樹脂層が架橋されてなる、請求項1〜3のいずれかに記載の発泡積層シート。
【請求項5】
前記基材と前記発泡樹脂層の間、及び/又は前記発泡樹脂層と前記表面保護層の間に、非発泡樹脂層を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の発泡積層シート。
【請求項6】
基材上に、溶融成型により形成された発泡剤含有樹脂層と、表面保護層が順に積層されており、少なくとも該表面保護層と該発泡剤含有樹脂層を貫通する通気孔を有していることを特徴とする、積層シート。
【請求項7】
通気孔を有する発泡積層シートの製造方法であって、
基材上に、溶融成型により発泡剤含有樹脂層を形成する第1工程、
前記発泡剤含有樹脂層上に、表面保護層を形成する第2工程、及び
前記発泡剤含有樹脂層を発泡させて発泡樹脂層を形成する第3工程を含み、
且つ、前記第2工程又は第3工程の後に、少なくとも前記表面保護層と前記発泡樹脂層を貫通する通気孔を形成する穿設工程を含むことを特徴とする、発泡積層シートの製造方法。
【請求項8】
前記第1工程又は第2工程の後に、発泡剤含有樹脂層に対して架橋処理を行う、請求項7に記載の発泡積層シートの製造方法。


【公開番号】特開2013−71320(P2013−71320A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212211(P2011−212211)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】