Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
透湿膜及びそれを用いた熱交換素子
説明

透湿膜及びそれを用いた熱交換素子

【課題】相対湿度が10〜60%RHの範囲で潜熱交換させる相互の湿り空気の相対湿度差が小さい場合であっても、潜熱交換効率を向上できる透湿膜の提供。
【解決手段】透湿膜1は、パルプ繊維、樹脂繊維、炭素繊維および無機繊維からなる群より選択される少なくとも一種の繊維2で構成された空気遮断性を有する膜中に、25℃の水蒸気吸着等温線での透湿膜1の表面A4近傍での湿り空気の相対湿度と表面B5近傍での湿り空気の相対湿度における吸着量の差が0.15g/g以上の吸着剤3を構成成分として含み、かつ湿り空気と透湿膜1の表面A4および表面B5との熱伝達促進手段が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の汚れた空気を排出し、新鮮な外気を供給する際、顕熱(温度)と潜熱(湿度)の両方の熱交換を行う熱交換素子に用いる透湿膜およびそれを含んで形成される熱交換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、空調効果(冷房、暖房、除湿、加湿)を損なわない換気装置として、換気の際に吸気と排気との間で熱交換を行う熱交換素子(熱交換器)が提案されている。
【0003】
この熱交換素子は、伝熱性と透湿性とを有する仕切板(膜)により間隔板を挟み込み、所定の間隔をおいて、複数層に重ね合わせた基本構造を採る熱交換素子が広く採用されている。
【0004】
そして、仕切板には、パルプ繊維を主成分とする空気遮断性を有する透湿膜や、フッ素樹脂(PTFE)を主成分とする空気遮断性を有する多孔質膜が用いられ、特に潜熱交換効率向上を目的としてパルプ繊維を主成分とする空気遮断性を有する透湿膜に、塩化カルシウムや塩化リチウムのような潮解性物質を含浸させた透湿膜や、ゼオライトやシリカゲルなどの吸湿性粉体を含有させた透湿膜が知られている。
【0005】
例えば、特許文献1では、パルプを主体とする紙基材に塩化カルシウムが10〜25質量%含まれ、吸湿率が15〜30%である全熱交換器エレメント用原紙(透湿膜)が開示されている。また、特許文献2では、製紙用繊維が15〜85重量部、吸放湿性粉体が10〜50重量部、熱融着性物質が5〜35重量部からなる全熱交換器用紙が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−119969号公報
【特許文献2】特開平10−212691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来技術であっても、潜熱交換効率はあまり向上せず、未だ改善の余地があった。
【0008】
例えば、特許文献1の技術では、含浸させる塩化カルシウムの量を抑制することで高温高湿雰囲気下での結露による液ダレを防止しているが、塩化カルシウムの量が少ないため、潜熱交換効率を高くできないという課題があった。
【0009】
例えば、特許文献2の技術では、塩化カルシウムなどの代わりにゼオライトやシリカゲルなどの吸放湿性粉体を含有させているが、ゼオライトやシリカゲルなどの吸放湿性粉体の吸放湿量は相対湿度における水の吸着量の差に依存し、相対湿度が10〜60%RHの範囲では一般的なゼオライトの水の吸着量変化は0.05g/gと小さく、またシリカゲルでは水の吸着量は相対湿度に比例するため、潜熱交換させる相互の空気の相対湿度差が小さい場合、潜熱交換効率の向上に寄与せず、場合によっては潜熱交換効率を減少させるという課題があり、未だ改善の余地があった。
【0010】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、高温高湿雰囲気下においても液ダレすることなく潜熱交換効率を向上でき、また相対湿度が10〜60%RHの範囲で潜熱交換させる相互の湿り空気の相対湿度差が小さい場合であっても、潜熱交換効率を向上できる透湿膜を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、上記本発明の透湿膜を備えており、高い潜熱交換効率の熱交換素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、繊維で構成された空気遮断性を有する膜に、潜熱交換させる相互の湿り空気の各相対湿度に対する水の吸着量の差が0.15g/g以上の吸着剤を含ませ、さらに各湿り空気と透湿膜の表面との熱伝達を促進させる手段を設けた透湿膜が、上記従来技術の有する課題を解決する上で極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
すなわち、本発明は、パルプ繊維、樹脂繊維、炭素繊維および無機繊維からなる群より選択される少なくとも一種の繊維で構成された空気遮断性を有する膜中に吸着剤を構成成分として含む透湿膜において、吸着剤は、横軸を相対湿度とし縦軸を吸着剤1gあたりの水の吸着量とした25℃の水蒸気吸着等温線での透湿膜の一方の表面近傍での湿り空気の相対湿度ともう一方の表面近傍での湿り空気の相対湿度における吸着量の差が0.15g/g以上であり、かつ湿り空気と透湿膜の表面との熱伝達促進手段を設けた透湿膜を提供する。
【0014】
本発明の透湿膜は、湿り空気と透湿膜の表面との熱伝達促進手段を設けているため、潜熱交換させる相互の湿り空気の相対湿度差が小さい場合であっても、相互の透湿膜表面近傍での相互の湿り空気の相対湿度差を大きくすることができ、これにより吸着剤への水の吸着量の差を0.15g/g以上と大きくすることができるため、これを駆動力とした水分子の移動の促進により潜熱交換効率を向上できる。
【0015】
また、本発明の透湿膜においては、特に、吸着剤は、骨格構造中に少なくともアルミニウムとリンとを含むアルミノフォスフェート類ゼオライトが好ましい。さらに、本発明の透湿膜においては、特に、アルミノフォスフェート類ゼオライトは、IZAが定める構造のコードでAFIで示されるアルミノフォスフェート類ゼオライトであることが好ましい。
【0016】
また、本発明の透湿膜においては、特に、AFIで示されるアルミノフォスフェート類ゼオライトは、AFI型鉄アルミノフォスフェート類ゼオライトであることが好ましい。さらに、本発明の透湿膜においては、特に、透湿膜は10〜100μmの厚さで、かつ吸着剤の平均粒子径は透湿膜の厚さの1/5〜1/10であることが好ましい。
【0017】
また、本発明の透湿膜においては、特に、吸着剤が、透湿膜質量に対して10〜30質量%含まれていることが好ましい。さらに、本発明の透湿膜においては、特に、熱伝達促進手段として透湿膜の表面に凹凸を設けることが好ましい。
【0018】
また、本発明の透湿膜においては、透湿膜に抗菌剤が含まれていることが好ましい。さらには、本発明の透湿膜においては、透湿膜に難燃剤が含まれていることが好ましい。
【0019】
また、本発明は、透湿膜を含んで形成されている熱交換素子を提供する。このように、前述した本発明の透湿膜を用いることにより、高い潜熱交換効率を有する熱交換素子を構成することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の透湿膜によれば、特に相対湿度が15〜60%RHの範囲で潜熱交換させる相互の湿り空気の相対湿度差が小さい場合であっても、潜熱交換効率を向上できる。
【0021】
また、本発明の熱交換素子は、本発明の透湿膜を含んで形成されているので、高い潜熱交換効率を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の透湿膜の第1実施形態の基本構成を示す模式断面図
【図2】各種吸着剤の25℃における水蒸気吸着等温線を示すグラフ
【図3】本発明の透湿膜の第1実施形態(透湿膜1)を用いて構成した本発明の熱交換素子の模式断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の透湿膜および熱交換素子の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0024】
(第1実施形態)
<透湿膜の第1実施形態>
以下、図1及び図2を用いて本発明の透湿膜の第1実施形態について説明する。
【0025】
図1は、本発明の透湿膜の第1実施形態の基本構成を示す模式断面図である。また、図2は、横軸を相対湿度とし縦軸を吸着剤1gあたりの水の吸着量とした各種吸着剤の25℃における水蒸気吸着等温線である。
【0026】
図1に示すように、第1実施形態の透湿膜1は、主として、絡み合った繊維2と、この絡み合った繊維2同士の間に配置される吸着剤3とから構成されている。なお、必要に応じて、繊維2同士あるいは繊維2と吸着剤3とを接着させる接着剤(図示せず)が添加されていてもよい。また、透湿膜1の空気遮断性を向上させるため、必要に応じて、ポリビニルアルコール、デンプン、スチレン−ブタジエンゴム系ラテックス類やアクリル系樹脂などの高分子樹脂(図示せず)が、塗工や含浸等の手段により添加されていてもよい。
【0027】
透湿膜1の表面A4および表面B5は、透湿膜1と透湿膜1の表面A4近傍の湿り空気との熱伝達および透湿膜1と透湿膜1の表面B5近傍の湿り空気との熱伝達を促進するため、ミクロ的あるいはマクロ的に凹凸や窪みが設けられたり、ミクロ的あるいはマクロ的に波状加工されたりして、透湿膜1の表面A4近傍の湿り空気および透湿膜1の表面B5近傍の湿り空気の流れを乱すような形状をしている。なお、ミクロ的な凹凸や窪みとは、透湿膜1の厚さの1/10〜1/5程度の大きさを指す。
【0028】
以下、第1実施形態の透湿膜1を構成する繊維2と吸着剤3について説明する。
【0029】
まず、繊維2について説明する。
【0030】
図1に示す繊維2は、短繊維あるいは長繊維が絡み合って、空気遮断性を有する透湿膜1を形成する。また、後述する吸着剤3を保持する保持体となる部材である。
【0031】
この繊維2は、パルプ繊維、樹脂繊維、炭素繊維および無機繊維からなる群より選択される少なくとも一種の繊維で、本発明の効果をより確実に得るという観点から、熱伝導率が大きい炭素繊維が好ましい。
【0032】
また、繊維2の径は、透湿膜1の厚さが50μm程度の場合、1〜10μmが好ましい。ここで、繊維2の径が1μm以下であると、繊維2が空気中へ飛散しやすくなるため、繊維2の膜への加工性が悪くなり、10μm以上であると、繊維2同士の隙間は繊維2の径と同等以上の大きさとなり空気遮断性が低くなるためである。なお、繊維2の長さについては特に限定はない。
【0033】
次に、吸着剤3について説明する。
【0034】
図1に示す吸着剤3は、透湿膜1の内部あるいは表面に存在し、透湿膜1の両面の相対湿度差により透湿膜1の片面の水分子をもう一方の片面へ移動させる(潜熱交換を行う)ことにより、透湿膜1の両面で水分子の吸放出を行うための部材である。
【0035】
この吸着剤3には、横軸を相対湿度とし縦軸を前記吸着剤1gあたりの水の吸着量とした25℃の水蒸気吸着等温線での透湿膜1の一方の表面近傍での湿り空気の相対湿度ともう一方の表面近傍での湿り空気の相対湿度における吸着量の差が0.15g/g以上の吸着剤が用いられる。
【0036】
すなわち、例えば図1において、透湿膜1の表面A4近傍の湿り空気の相対湿度が表面B5近傍の湿り空気の相対湿度より低い場合、表面B5近傍に存在する吸着剤3と比較して、表面A4近傍に存在する吸着剤3の方が水分子の吸着量が少ない、つまりより乾燥しているため、表面B5側の吸着剤3に吸着された水分子は、透湿膜1内部の吸着剤3を介し、より乾燥している表面A4近傍に存在する吸着剤3への移動が起こり、表面B5側から表面4A側へ水分子が移動することで潜熱交換が行われる。
【0037】
なお、吸着剤3を介さずに繊維2同士の隙間をとおり抜けていく、あるいは部分的に吸着剤3を介し移動する水分子も存在する。
【0038】
ここで、吸着剤3としては、本発明の効果をより確実に得るという観点から、骨格構造中に少なくともアルミニウムとリンとを含むアルミノフォスフェート類ゼオライトが好ましい。このアルミノフォスフェート類ゼオライト(以下、ALPOと記載)は、IZA(International Zeolite Association)の定める結晶性アルミノフォスフェートである。結晶性アルミノフォスフェートは、骨格構造を構成する原子が酸素、アルミニウム及びリンであり、その一部が他の原子で置換されていてもよい。
【0039】
また、ALPOとしてはIZAが定める構造のコードでAEI、AEL、AET、AFI、AFN、AFR、AFS、AFT、AFX、ATO、ATS、CHA、ERI、LEV、VFIが挙げられ、本発明の効果をより確実に得るという観点から、吸着特性、耐久性の点でAEI、AEL、AFI、CHA、LEVが好ましく、特に、AFIで示されるALPOが好ましい。 さらに、AFIで示されるALPOとしては、本発明の効果をより確実に得るという観点から、AFI型鉄アルミノフォスフェート類ゼオライト(以下、FAPOと記す)が好ましい。
【0040】
さらに、本発明の効果をより確実に得るという観点から、透湿膜1の厚さは10〜100μmとすることが好ましく、このときの吸着剤3の平均粒子径は透湿膜1の厚さの1/10〜1/5とすることが好ましい。透湿膜1の厚さが10μm以下であると透湿膜1の強度や空気遮断性が低下し、またピンホールが発生し易くなるためで、透湿膜1の厚さが100μm以上であると顕熱交換効率が極端に悪くなるためである。
【0041】
また、吸着剤3の平均粒子径が透湿膜1の厚さの1/10以下であると、後述する添加・叩解工程で吸着剤3が流出しやすくなり、成膜性が悪化するためで、吸着剤3の平均粒子径が透湿膜1の厚さの1/5以上であると、吸着剤3同士あるいは吸着剤3と繊維2との隙間が大きくなり、透湿膜1の強度や空気遮断性が低下するためである。なお、図1では吸着剤3を球状で記しているが、特に球状で限定されるものではない。
【0042】
また、本発明の効果をより確実に得るという観点から、吸着剤3は透湿膜1の質量に対して10〜30質量%含まれていることが好ましい。吸着剤3は透湿膜1の質量に対して10質量%以下であると、潜熱交換効率があまり向上せず、吸着剤3は透湿膜1の質量に対して30質量%以上であると、透湿膜1に対して吸着剤3の粒子数が多過ぎるため透湿膜1の強度や空気遮断性が低下し、またピンホールが発生しやすくなるためである。
【0043】
また、透湿膜1には抗菌剤(図示せず)を添加してもよい。これにより、透湿膜1は高い潜熱交換効率を有することに加えて、透湿膜1に対して優れた抗菌特性を付与することができる。
【0044】
この抗菌剤としては、透湿膜1に分散でき、抗菌効果を得ることができるものであれば特に限定されず、公知の抗菌剤を添加してよい。このような抗菌剤としては、例えば、ワサビなどの有機系の抗菌剤や、銀・亜鉛・銅などの無機系の抗菌剤などがあり、いずれを用いてもよい。
【0045】
例えば、無機系の抗菌剤としては、東亞合成社製の銀系無機抗菌剤「商品名:ノバロン」やシナネンゼオミック社製の無機抗菌剤「商品名:ゼオミック」などが好ましく挙げられる。これらの抗菌剤には防カビ効果も期待できるので、より好ましい。
【0046】
ここで、透湿膜1に対する抗菌剤の添加量は0.1〜3質量%とすることが好ましい。透湿膜1に対する抗菌剤の添加量が0.1質量%以上であると抗菌性をより確実に得ることができ好ましい。透湿膜1に対する抗菌剤の添加量が3質量%以下であると透湿膜1の潜熱交換効率に悪影響を及ぼしにくいという点で好ましい。
【0047】
さらには、透湿膜1には難燃剤(図示せず)を添加してもよい。これにより、透湿膜1は高い潜熱交換効率を有することに加えて、透湿膜1に対して優れた難燃特性を付与することができる。この難燃剤としては、透湿膜1に分散でき、難燃効果を得ることができるものであれば特に限定されず、公知の難燃剤を添加してよい。このような難燃剤としては、例えば、有機系難燃剤として臭素化合物、リン化合物、塩素化合物などがあり、無機系難燃剤としてアンチモン化合物、金属水酸化物などが挙げられ、いずれを用いてもよい。臭素化合物系の難燃剤としては、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカン等が好ましく挙げられ、リン化合物系難燃剤としては、トリフェニルホスフェート等の芳香族のリン酸エステル、赤リン等が好ましく挙げられ、塩素化合物系難燃剤として塩素化パラフィンなどが好ましく挙げられる。また、アンチモン化合物系難燃剤としては、臭素化合物など、ハロゲン化合物の難燃性を高める助剤として、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンが好ましく挙げられ、金属水酸化物系難燃剤として水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が好ましく挙げられる。
【0048】
本実施形態の透湿膜1は、以上説明したように、透湿膜1中に、透湿膜1の表面A4近傍の湿り空気の相対湿度における吸着量と透湿膜1の表面B5近傍の湿り空気の相対湿度における吸着量の差が0.15g/g以上の吸着剤3を含み、かつ透湿膜1と透湿膜1の表面A4近傍の湿り空気との熱伝達および透湿膜1と透湿膜1の表面B5近傍の湿り空気との熱伝達促進手段を設けているため、潜熱交換させる相互の湿り空気の相対湿度差が小さい場合であっても、潜熱交換効率を向上できる。
【0049】
更に、図2を用いて上述の作用効果について詳しく説明する。
【0050】
図2にY型ゼオライト、A型シリカゲルおよびFAPOの25℃における水蒸気吸着等温線を示す。Y型ゼオライトおよびA型シリカゲルは一般的に広く販売されており容易に入手可能で、FAPOは、例えば特開2007−246386等の公報に記載の公知の合成方法を利用して、製造することができる。また、25℃における水蒸気吸着等温線の測定は、例えば、日本ベル社製の自動ガス/蒸気吸着量測定装置(BELSORP−18)を用いて測定を行うことができる。
【0051】
透湿膜1の表面A4側の湿り空気が乾球温度5℃、湿球温度0℃(相対湿度:約32.9%RH)の条件で、透湿膜1の表面B5側の湿り空気が乾球温度20℃、湿球温度12℃(相対湿度:約37.7%RH)の条件とすると、透湿膜1と透湿膜1の表面A4近傍の湿り空気との熱伝達および透湿膜1の表面B5近傍の湿り空気との熱伝達が非常に鈍い場合、双方の相対湿度における各種吸着剤の水の吸着量の差は、図2よりY型ゼオライトで0.01g/g未満で、A型シリカゲルで0.025g/g、FAPOで、約0.01g/g未満と、水の吸着量の差が非常に小さいため、潜熱交換はほとんど進まない。
【0052】
実際の現象としては、透湿膜1の熱伝導により、透湿膜1の表面B5側の湿り空気から透湿膜1の表面A4側の湿り空気へ熱の移動が行われる(顕熱交換される)ため、透湿膜1と透湿膜1の表面B5近傍の湿り空気との熱伝達および透湿膜1と透湿膜1の表面A4近傍の湿り空気との熱伝達も同時に行われ、透湿膜1の表面A4近傍の湿り空気および透湿膜1の表面B5近傍の湿り空気は、5℃〜20℃の範囲のいずれかの値を示す。なお、理想的には、いずれの湿り空気も5〜20℃の中央値である12.5℃近傍の値を示すと考えられる。
【0053】
上述した条件において、例えば、透湿膜1が平面状をしており、透湿膜1と透湿膜1の表面A4近傍の湿り空気との熱伝達および透湿膜1と透湿膜1の表面B5近傍の湿り空気との熱伝達が悪い場合、例えば、透湿膜1の表面A4近傍の湿り空気は7℃程度、透湿膜1の表面B5近傍の湿り空気は18℃程度となり、相対湿度はそれぞれ28.7%RH、42.7%RHである。双方の相対湿度における各種吸着剤の水の吸着量の差は、図2より、Y型ゼオライトで0.01g/gで、A型シリカゲルで0.06g/g、FAPOで、0.025g/gと、水の吸着量の差が小さいため、潜熱交換はあまり進まない。
【0054】
透湿膜1にミクロ的あるいはマクロ的に凹凸や窪みが設けられたり、ミクロ的あるいはマクロ的に波状加工されたりして、透湿膜1の表面A4近傍の湿り空気および透湿膜1の表面B5近傍の湿り空気の流れを乱すような形状をしている場合、例えば、透湿膜1の表面A4近傍の湿り空気は10℃程度、透湿膜1の表面B5近傍の湿り空気は15℃程度となり、相対湿度はそれぞれ23.4%RH、51.7%RHである。双方の相対湿度における各種吸着剤の水の吸着量の差は、図2より、Y型ゼオライトで0.02g/gで、A型シリカゲルで0.1g/g、FAPOで、0.15g/gと、Y型ゼオライトでは水の吸着量の差が小さいため潜熱交換はあまり進まず、A型シリカゲルでは潜熱交換がやや促進され、FAPOでは潜熱交換が非常に促進されることとなる。
【0055】
なお、本実施形態での湿り空気条件では、吸着剤3に25℃における水蒸気吸着等温線で相対湿度が約20%RHから水の吸着量が増え始めるFAPOを用いたが、FAPOに限定されるものではなく、想定する相互の湿り空気条件において水の吸着量の差が0.15g/g以上となる吸着剤を用いればよい。
【0056】
次に、本実施形態の透湿膜1の製造方法の一例について説明する。
【0057】
透湿膜1の製造方法は特に限定されず、公知の抄紙機および抄紙方法を用いて製造することができ、例えば、特開平10−212691等の公報に記載の公知の抄紙方法を利用して製造することができる。
【0058】
まず、市販の適切なパルプ繊維を選択し、適量の水を加えた後、攪拌を行い、パルプスラリーを得る(原料調整工程)。この原料調整工程は特に限定されず、公知の方法を用いて行うことができる。
【0059】
次に、得られたパルプスラリーの攪拌を継続しながら、FAPOを所定量添加した後、叩解を行い、目の細かい網の上に流し込む(添加・叩解工程)。この添加・叩解工程も特に限定されず、公知の方法を用いて行うことができる。また、添加・叩解工程では、投入したパルプ量とFAPO量の合計質量に対して、FAPO量が10〜30質量%となるように調整することが好ましい。FAPO量が10質量%以上であると、透湿膜1の潜熱交換効率の向上を確実に得られるため好ましい。FAPO量が30質量%以下であると、透湿膜1の強度や空気遮断性が確実に得られ、またピンホールを防ぎ易いという点で好ましい。なお、抗菌剤や難燃剤の添加を行う場合、添加・叩解工程で添加しておけば良い。
【0060】
次に、網の上に流し込んだFAPOを含有するパルプスラリーを、例えばローラーで圧して脱水し、乾燥装置を用いて乾燥を行い、FAPOが含有した混抄紙を得る(抄紙工程)。なお、抄紙工程は、公知の抄紙機を用いて連続的に行うことができる。また、抄紙工程では、混抄紙の厚さを10〜100μmで調整することが好ましい。混抄紙の厚さが10μm以上であると透湿膜1の強度や空気遮断性が確実に得られ、またピンホールを防ぎ易いという点で好ましい。混抄紙の厚さが100μm以下であると顕熱交換効率に悪影響を及ぼしにくいという点で好ましい。
【0061】
次に、必要に応じて、混抄紙の表面に凹凸加工やディンプル加工、あるいは波状加工を行う(表面加工工程)。この工程も公知の方法により行うことができ、例えばプレス機を用いたり、コルゲートマシーンを用いたりして行うことができる。なお、抄紙工程中に混抄紙の表面にミクロ的な凹凸や窪みを付けることができ、その場合は、本工程を行う必要はない。
【0062】
<熱交換素子の第1実施形態>
次に、本発明の熱交換素子の第1実施形態(本発明の透湿膜の第1実施形態を用いて構成した熱交換素子)について説明する。
【0063】
図3は、本発明の熱交換素子の模式断面図である。
【0064】
以下、図3に示す熱交換素子11について説明する。なお、上述の図1に示した透湿膜に関して説明した要素と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0065】
熱交換素子11は、異なった温湿度条件を有する二つの湿り空気の顕熱および潜熱を連続的に交換することを目的としたデバイスであるため、本発明に係る透湿膜1で構成することは非常に好ましい。
【0066】
熱交換素子11は、図1に示した透湿膜1(本発明の透湿膜の第1実施形態)を方形状に加工した透湿膜12同士の間に間隔膜13を挟み込み、略一定の間隔をおいて複数層に重ね合わせられた構成をしている。間隔膜13は、投影平面において透湿膜12に一致する鋸波状あるいは正弦波状の波形を形成した膜となっている。
【0067】
間隔膜13は、透湿膜12同士の間隔を保持する役割をする部材であり、その波形の成形方向を交互に90度あるいはそれに近い角度を持たせて透湿膜12の間に挟着され、第一空気流路14と第二空気流路15との独立した二系統の空気流路を作り出している。第一空気流路14と第二空気流路15は、透湿膜12と間隔膜13とから構成される各層間に、一層おきに交互に90度あるいはそれに近い角度で構成されている。なお、第一空気流路14と第二空気流路15との角度は90度に限定されるものではなく、第一空気流路14と第二空気流路15との独立性が保たれる角度であればよい。
【0068】
間隔膜13の材質について特に限定はないが、耐湿性を有し、酸化劣化しにくく、吸湿性や熱容量が小さいもので、透湿膜12同士の間隔を保持できる強度があればよい。また、間隔膜13の厚さについても、透湿膜12同士の間隔を保持できる最低限の強度を有する厚さが好ましい。例えば、セラミック繊維から作製したセラミックペーパーであれば、0.05〜0.3μm程度が好ましい。
【0069】
なお、このような熱交換素子11は、公知のハニカム構造体の製造方法を用いて製造することができる。また、透湿膜12に抗菌剤を含有させることにより、高い潜熱交換効率と優れた抗菌性とをあわせ持つ熱交換素子11を実現することも容易にできる。これは、熱交換素子11の透湿膜12が結露するような雰囲気下で使用する場合、特に効果的である。さらには、透湿膜12に難燃剤を含有させることにより、高い潜熱交換効率と優れた難燃性とをあわせ持つ熱交換素子11を実現することも容易にできる。
【0070】
次に、熱交換素子11の作用効果について説明する。それぞれの温湿度条件の湿り空気を、それぞれ例えば送風ファンを用いて熱交換素子11の第一空気流路14および第二空気流路15に流通させると、熱交換素子11内部で第一空気流路14と第二空気流路15とを流通する湿り空気が、透湿膜12を介して顕熱および潜熱を交換する。すなわち、温度が高い湿り空気から温度の低い湿り空気へ熱が移動し、透湿膜12表面近傍で相対湿度の高い湿り空気から湿度の低い湿り空気へ水分子の移動が行われる。このとき、第一空気流路14と第二空気流路15とを流れる互いの湿り空気の流速は、略同じであることが好ましい。
【0071】
具体的には、例えば本発明の熱交換素子11を用いて、屋内と屋外の湿り空気の顕熱および潜熱交換を行うことを想定し、室外の湿り空気が乾球温度5℃、湿球温度0℃(相対湿度:約32.9%RH)の条件で、第一空気流路14をとおり室内に入り、室内の湿り空気が乾球温度20℃、湿球温度12℃(相対湿度:約37.7%RH)の条件で、第二空気流路15をとおり室外に排気される場合、熱交換素子11の透湿膜12には、本発明の透湿膜の第1実施形態で示した透湿膜1を使用しているため、透湿膜1の表面A4近傍の吸着剤3と透湿膜1の表面B5近傍の吸着剤3との水の吸着量差が0.15g/gと非常に大きな値で、これが水分子の移動の駆動力となり、非常に高い効率で潜熱交換を行うため、屋内の空調に使用するエネルギーを低減させることができる。
【0072】
特に、熱交換素子11の大きさ、形状や第一空気流路14、第二空気流路15を流通する湿り空気の流速から適切な空間速度を設定することで、顕熱交換効率や潜熱交換効率を最適化することができる。
【0073】
なお、この第1実施形態の透湿膜1および第1実施形態の熱交換素子11について説明したが、本発明の透湿膜および本発明の熱交換素子はこれらに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように、本発明の透湿膜は、特に相対湿度が15〜60%RHの範囲で潜熱交換させる相互の湿り空気の相対湿度差が小さい場合であっても、潜熱交換効率を向上でき、高い潜熱交換効率を有する熱交換素子の透湿膜に利用することができる。
【0075】
また、本発明の透湿膜は、熱交換素子以外にも、高い潜熱交換効率を必要とする製品に利用することができ、レインコート、手袋、靴などの潜熱交換が必要な部材に利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 透湿膜
2 繊維
3 吸着剤
4 表面A
5 表面B
11 熱交換素子
12 透湿膜
13 間隔膜
14 第一空気流路
15 第二空気流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ繊維、樹脂繊維、炭素繊維および無機繊維からなる群より選択される少なくとも一種の繊維で構成された空気遮断性を有する膜中に吸着剤を構成成分として含む透湿膜において、
前記吸着剤は、横軸を相対湿度とし縦軸を前記吸着剤1gあたりの水の吸着量とした25℃の水蒸気吸着等温線での前記透湿膜の一方の表面近傍での湿り空気の相対湿度ともう一方の表面近傍での湿り空気の相対湿度における吸着量の差が0.15g/g以上であり、かつ前記湿り空気と前記透湿膜の表面との熱伝達促進手段を設けた透湿膜。
【請求項2】
前記吸着剤は、骨格構造中に少なくともアルミニウムとリンとを含むアルミノフォスフェート類ゼオライトである請求項1に記載の透湿膜。
【請求項3】
前記アルミノフォスフェート類ゼオライトは、IZAが定める構造のコードでAFIで示されるアルミノフォスフェート類ゼオライトである請求項2記載の透湿膜。
【請求項4】
前記AFIで示されるアルミノフォスフェート類ゼオライトは、AFI型鉄アルミノフォスフェート類ゼオライトである請求項3に記載の透湿膜。
【請求項5】
前記透湿膜は10〜100μmの厚さで、かつ前記吸着剤の平均粒子径は前記透湿膜の厚さの1/10〜1/5である請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の透湿膜。
【請求項6】
前記吸着剤が、前記透湿膜質量に対して10〜30質量%含まれている請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の透湿膜。
【請求項7】
前記熱伝達促進手段は前記透湿膜の表面に凹凸を設けることである請求項1〜6いずれか1項に記載の透湿膜。
【請求項8】
前記透湿膜に抗菌剤がさらに含まれている請求項1〜7のうちいずれか1項に記載の透湿膜。
【請求項9】
前記透湿膜に難燃剤がさらに含まれている請求項1〜8のうちいずれか1項に記載の透湿膜。
【請求項10】
請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載の透湿膜を含んで形成されている熱交換素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−16645(P2012−16645A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154582(P2010−154582)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】