説明

透過光反射光両用の画像シートおよび画像シート材

【課題】1回の印刷によって形成することが可能な耐候性に優れた透過光反射光両用の画像シートを提供すること。
【解決手段】透明または半透明なベース層11と、ベース層の表面に形成された第1の受像層12と、第1の受像層の表面に形成された乳白層13と、乳白層の表面に形成された第2の受像層14とを有する画像シート材に対し、画像データに基づく表示画像21,23を、第2の受像層14の側からインクジェットプリンタを用いて印刷することにより、インクが第2の受像層14にしみ込み、かつインクの一部が第2の受像層14および乳白層13を透過して第1の受像層12にしみ込み、これによって、第2の受像層14および第1の受像層12の両方に表示画像21,23が形成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過光または反射光のいずれによっても鮮明な画像を表示することのできる透過光反射光両用の画像シートおよび画像シート材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、駅の構内、ホテルやデパートの室内壁面、または建物の外壁などに、宣伝広告のための種々のサイズの画像パネルがしばしば取り付けられる。
【0003】
通常、このような画像パネルは、画像が形成された透過光反射光両用の画像シートを適当なパネル枠に取り付け、画像シートの背面から蛍光灯やEL(エレクトリックルミネッセンスライト)などによって照明を行う。観察者は、背面照明による透過光によって画像を鮮明に見ることができる。また、背面照明を行っていないときは、構内照明や太陽光などの環境による照度が適当であれば、それによる反射光によって画像をある程度鮮明に見ることができる。
【0004】
このような透過光反射光両用の画像シートとして、従来においては、半透明のフィルムからなる支持体の両面に感光乳剤を塗布してなる印画フィルムを用い、その両面の感光乳剤層に画像が互いに重なるように焼付け、それを現像して得られた陽画写真を画像シートとして用いる(特許文献1)。
【0005】
また、半透明のフィルム状体からなる支持体と、支持体の一方の表面に形成された第1の画像からなる第1の画像層と、第1の画像層の表面に形成された薄い膜状体と、膜状体の表面に第1の画像と重なるように形成された第2の画像からなる第2の画像層とを有する画像シートも提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】

【特許文献1】特開昭59−222835
【特許文献2】特開2005−132090
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上に述べた特許文献1の画像シートでは、画像を写真露光により感光乳剤に焼付けたものであるので、耐候性の問題を解決する必要がある。
【0008】
また、特許文献2の画像シートでは、第1の画像と第2の画像との2つの画像が必須であり、そのため必ず2回の印刷を行う必要があった。
【0009】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、1回の印刷によって形成することが可能な耐候性に優れた透過光反射光両用の画像シートおよび画像シート材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態の画像シートは、透明または半透明なベース層と、前記ベース層の表面に形成された第1の受像層と、前記第1の受像層の表面に形成された乳白層と、前記乳白層の表面に形成された第2の受像層とを有する画像シート材に対し、画像データに基づく表示画像を、前記第2の受像層の側からインクジェットプリンタを用いて印刷することにより、インクが前記第2の受像層にしみ込み、かつインクの一部が前記第2の受像層および前記乳白層を透過して前記第1の受像層にしみ込み、これによって、前記第2の受像層および前記第1の受像層の両方に前記表示画像が形成されてなる。
【0011】
また、画像シート材は、透明または半透明なフィルムからなるベース層と、前記ベース層の表面に形成された、インクに対する浸透性を有する第1の受像層と、前記第1の受像層の表面に形成された、インクに対する透過性を有する乳白層と、前記乳白層の表面に形成された、インクに対する浸透性を有する第2の受像層と、を有する。この場合に、第2の受像層の上からインクジェットプリンタによって印刷することにより、表示画像を形成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、1回の印刷によって形成することが可能な耐候性に優れた透過光反射光両用の画像シートおよび画像シート材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に画像シート材の一部を断面して示す図である。
【図2】本実施形態に画像シートの一部を断面して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1において、本実施形態の画像シート材3は、ベース層11、第1の受像層12、乳白層13、および第2の受像層14を有する。
【0015】
ベース層11は、透明または半透明なフィルムからなる支持体である。ベース層11は、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの合成樹脂を材料として形成される。ベース層11は、伸縮性の少ないもの、耐熱性を有するものなどが望ましい。特に、温度変化による伸縮性が小さい材料を用いた場合には、例えば画像シート1の一部に日光が当たったりすることによって温度が上昇した場合においても、画像シート1の全体に歪みが発生することが極力抑えられる。ポリエステルまたはPETを材料として用いることで、全体が適当な可撓性を持ち、全体の平面性が良好である。特に、PETは、軽量であり、伸縮性がなく、平面性が良く、したがって皺がよらず、低温でも硬化することなく適度な可撓性を維持することができる。
【0016】
第1の受像層12は、ベース層11の表面に形成されており、インクに対する浸透性を有する。第1の受像層12は、例えばコーティングなどによって設けられる。公知のインクジェットプリンタにより印刷することにより、インクが第1の受像層12にしみ込む。受像層それ自体の機能は公知である。
【0017】
乳白層13は、第1の受像層12の表面に形成されており、インクに対する透過性を有する。乳白層13は、透光性のある乳白色の層であり、例えばチタンホワイトが主材料として用いられ、またシリカなどの顔料が適当な量だけ含有されることがある。また、シリカが主材料として用いられ、これにチタンホワイトなどが適当な量だけ含有されることがある。
【0018】
乳白層13は、例えば第1の受像層12の表面にコーティングすることによって形成される。乳白層13によって、光の透過率は20〜80パーセント程度となる。乳白層13の光の透過率は、照明光の強さ、自然光の強さなどに応じて調整すればよい。
【0019】
第2の受像層14は、乳白層13の表面に形成されており、インクに対する浸透性を有する。第2の受像層14は、例えばコーティングなどによって設けられる。インクジェットプリンタにより印刷することにより、インクが第2の受像層14にしみ込み、さらにその下の乳白層13にしみ込み、かつ乳白層13を透過する。
【0020】
各層の厚さの例を挙げると、ベース層11は、数十〜数百ミクロン、例えば60〜300ミクロン程度である。第1の受像層12および第2の受像層14は、それぞれ5〜50ミクロン程度、例えば12〜13ミクロン程度である。乳白層13は、1〜20ミクロン程度である。乳白層13は、画像シート1を光が透過する程度の適当な厚さがあればよいので、好ましくは数ミクロン程度、例えば2ミクロン程度であってもよい。
【0021】
なお、画像シート材3に印刷を行った後で、表面に保護層15を形成する(図2参照)。つまり、保護層15は、第2の受像層14の表面に形成され、第2の受像層14を保護する。保護層15は、適当な樹脂コーティングによって形成してもよく、また、光触媒を塗布した透明または半透明なフィルムを貼り付けることにより形成してもよい。
【0022】
次に、画像シート材3を用いて作成された画像シート1について説明する。
【0023】
図2に示すように、画像シート材3に対し、画像データに基づく表示画像を、第2の受像層14の側からインクジェットプリンタを用いて印刷する。これにより、インクが第2の受像層14にしみ込み、かつインクの一部が第2の受像層14および乳白層13を透過して第1の受像層12にしみ込む。しみ込んだインクは、その量および各層の性質などに応じて拡散する。これによって、第2の受像層14および第1の受像層12の両方に、表示画像21,23が形成される。なお、乳白層13にも、一部、薄い表示画像22が形成される。
【0024】
このとき、インクジェットプリンタのインクは、通常の印刷よりも濃度を高くする。つまり、例えば、画像データの濃度を高くしておく。また、画像データの濃度を高くしておく代わりに、インクジェットプリンタによって同じ画像データを用いて、複数回、例えば2回の印刷を行ってもよい。
【0025】
表示画像21,23の劣化を抑えるためには、インクとして顔料インクを用いることが好ましい。表示画像21,23の内容としては、カラーまたはモノクロの、写真、イラスト、線画、文字などを用い、画像シート1の使用目的に応じた種々の内容のものを形成すればよい。
【0026】
印刷を行った後で、保護層15を形成しておく。なお、保護層15としてインクの透過性を有するものを用いた場合には、印刷の前の画像シート材3に保護層15を形成しておくことも可能である。
【0027】
このように構成された画像シート1では、例えば昼間において、保護層15の側から入射してくる自然光または照明のための光(矢印M1方向からの光)が、乳白層13の表面によって反射され、その入射光および反射光によって、第2の受像層14に形成された表示画像21が明るく鮮明に表示される。
【0028】
また、例えば夜間などにおいて背面照明を用いた場合には、ベース層11の側から入射してくる照明のための光(矢印M2方向からの光)が、ベース層11を透過し、かつ、第1の受像層12、乳白層13、第2の受像層14、および保護層15を透過する。
【0029】
そのとき、透過した照明光によって、第1の受像層12に形成された表示画像23、および第2の受像層14に形成された表示画像21が重なり、濃度の高い表示画像が明るく鮮明に表示される。
【0030】
つまり、インクジェットプリンタによるインクが乳白層13を透過して第1の受像層12にしみ込むことにより、乳白層13を境界として、反射光の場合は表示画像21が観察され、透過光の場合は表示画像21および23が観察される。これにより、反射光および透過光のいずれによっても、表示画像21、23が鮮明に表示される。
【0031】
インクの濃度(画像データの濃度)を適当に調整して第1の受像層12にインクがしみ込むように印刷することにより、1回の印刷で表示画像21,23を形成することが可能である。インクジェットプリンタで印刷されるインクは耐候性および耐久性に優れており、長期に渡って鮮明な画像を表示することができる。
【0032】
上の説明で分かるように、インクジェットプリンタによる印刷時のインクの濃度(画像の濃度)および印刷回数は、照明光の強さ、自然光の強さ、使用環境、使用目的などに応じて、表示画像21,23ができるだけ鮮明に見えるように調整すればよい。
【0033】
上に述べた実施形態において、ベース層11、第1の受像層12、乳白層13、第2の受像層14、画像シート材3、画像シート1の全体または各部の構造、形状、寸法、個数、材質、組成、および画像の内容などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 画像シート
3 画像シート材
11 ベース層
12 第1の受像層
13 乳白層
14 第2の受像層
15 保護層
21,23 表示画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明または半透明なベース層と、前記ベース層の表面に形成された第1の受像層と、前記第1の受像層の表面に形成された乳白層と、前記乳白層の表面に形成された第2の受像層とを有する画像シート材に対し、
画像データに基づく表示画像を、前記第2の受像層の側からインクジェットプリンタを用いて印刷することにより、インクが前記第2の受像層にしみ込み、かつインクの一部が前記第2の受像層および前記乳白層を透過して前記第1の受像層にしみ込み、これによって、前記第2の受像層および前記第1の受像層の両方に前記表示画像が形成されてなる、
ことを特徴とする透過光反射光両用の画像シート。
【請求項2】
前記インクジェットプリンタを用いて、前記表示画像の印刷が複数回行われている、
請求項1記載の透過光反射光両用の画像シート。
【請求項3】
前記第2の受像層の表面に形成された保護層を有する、
請求項1または2記載の透過光反射光両用の画像シート。
【請求項4】
透明または半透明なフィルムからなるベース層と、
前記ベース層の表面に形成された、インクに対する浸透性を有する第1の受像層と、
前記第1の受像層の表面に形成された、インクに対する透過性を有する乳白層と、
前記乳白層の表面に形成された、インクに対する浸透性を有する第2の受像層と、
を有することを特徴とする透過光反射光両用の画像シート材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−101976(P2011−101976A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257424(P2009−257424)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(591243893)株式会社フオトクラフト社 (26)
【Fターム(参考)】