説明

透過型スクリーン、および背面投射型表示装置

【課題】広視野角と高コントラストとを両立した画像表示を実現する透過型スクリーン、および背面投射型表示装置を提供する。
【解決手段】透過型スクリーン10は、励起光UVによって励起されて発光する蛍光体2R,2G,2Bを含む蛍光体層2と、蛍光体層2に対して励起光UVの入射側とは反対側に設けられ、励起光UVを反射させるとともに、蛍光体層2が発する可視光R,G,Bを透過させる第1の選択反射層3と、蛍光体層2と第1の選択反射層3との間に設けられ、励起光UVと蛍光体層2が発する可視光R,G,Bとのいずれか一方の照射により、可視光を吸収する状態から可視光を透過させる状態へ遷移するフォトクロミック化合物を含む感光層5と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過型スクリーン、および背面投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背面投射型表示装置(リアプロジェクタ)は、観察者から見て透過型スクリーンの裏側に配置された映像投射部から、映像信号に応じて変調された画像光をスクリーンに投射して、観察者に画像を表示させる表示装置である。
【0003】
高コントラストの画像表示が求められるリアプロジェクタでは、特定波長の光の照射により色が変化するフォトクロミック化合物を利用して、コントラストを向上させる提案がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、不可視光が投射されることにより可視光の反射率、透過率および吸収率の少なくとも1つが変化する材料(フォトクロミック化合物)を有する、リアプロジェクションテレビ用の透過型画像投射スクリーンが開示されている。このスクリーンに、不可視光である紫外光が照射されると、その照射領域では、透明材料であるフォトクロミック化合物の可視光に対する反射率が低下して吸収率が増加する。すなわち、紫外光が照射された領域では、フォトクロミック化合物が黒く発色する。したがって、画像の暗部に対応する箇所に紫外光を照射することで、スクリーンを黒く発色させ、コントラストを向上させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/108387号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の透過型画像投射スクリーンでは、画像光として、可視光である光の三原色(RGB)が用いられ、RGBの光がスクリーンの背面側に投写されて透過拡散されることで、画像が形成されている。そのため、スクリーンに対する観察者の位置によっては、画像が暗く見えたり、色相が変化したりするといった問題が生じる場合がある。すなわち、上述のスクリーンでは、フォトクロミック化合物を用いることによりコントラストを向上させることができたとしても、視野角依存性の問題が依然として存在することになる。
【0007】
そこで本発明は、広視野角と高コントラストとを両立した画像表示を実現する透過型スクリーン、および背面投射型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明の透過型スクリーンは、励起光によって励起されて発光する蛍光体を含む蛍光体層と、蛍光体層に対して励起光の入射側とは反対側に設けられ、励起光を反射または吸収するとともに、蛍光体層が発する可視光を透過させる第1の選択反射層と、蛍光体層と第1の選択反射層との間に設けられ、励起光と蛍光体層が発する可視光とのいずれか一方の照射により、可視光を吸収する状態から可視光を透過させる状態へ遷移するフォトクロミック化合物を含む感光層と、有している。
【0009】
また、本発明の背面投射型表示装置は、上記に記載の透過型スクリーンと、画像信号に応じて変調した励起光を透過型スクリーンに投射する映像投射部と、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
以上、本発明によれば、広視野角と高コントラストとを両立した画像表示を実現する透過型スクリーン、および背面投射型表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態における透過型スクリーンの概略断面図である。
【図2】図1に示す透過型スクリーンの蛍光体層の概略平面図である。
【図3】本発明の透過型スクリーンを備えた背面投射型表示装置の構成を示す概略図である。
【図4】本発明の第2の実施形態における透過型スクリーンの概略断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態における透過型スクリーンの概略断面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態における透過型スクリーンの概略断面図である。
【図7】本発明の第5の実施形態における透過型スクリーンの概略断面図である。
【図8】本発明の第6の実施形態における透過型スクリーンの概略断面図である。
【図9】本発明の第7の実施形態における透過型スクリーンの概略断面図である。
【図10】本発明の第8の実施形態における透過型スクリーンの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
本発明の透過型スクリーンは、背面投射型表示装置(リアプロジェクタ)の一部を構成し、観察者から見てスクリーンの裏側から画像光(励起光)を投射することで画像を表示するスクリーンである。以下、本明細書では、励起光が入射する側の面を「背面」とし、画像が表示される側の面を「前面」として、本発明の透過型スクリーンを説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における透過型スクリーンの構成を示す概略断面図である。
【0015】
本実施形態の透過型スクリーン10は、蛍光体層2を有している。蛍光体層2は、映像投射部100から投射される励起光によって励起されて発光する蛍光体を含んでおり、赤色光Rを発する赤色蛍光体2Rと、緑色光Gを発する緑色蛍光体2Gと、青色光Bを発する青色蛍光体2Bとから構成されている。本実施形態では、各蛍光体2R,2G,2Bを励起するための励起光として、紫外領域のレーザ光(紫外光)が用いられる。
【0016】
図2は、本実施形態の透過型スクリーン10に用いる蛍光体層2の概略平面図である。図2からもわかるように、各蛍光体2R,2G,2Bは、ストライプ状に交互に配置され、それらの間には、カーボンブラックなどからなるブラックストライプ2Kが設けられている。ブラックストライプ2Kは、コントラストを向上させるとともに、隣接する蛍光体からの可視光を吸収して色純度を向上させる機能を有している。
【0017】
蛍光体層2は、赤色蛍光体、緑色蛍光体、および青色蛍光体がマトリクス状に配置され、それらの間にブラックマトリクスが設けられるように構成されていてもよい。
【0018】
再び図1を参照すると、蛍光体層2を挟んだ前面側および背面側には、それぞれ第1および第2の選択反射層3,4が設けられている。第1の選択反射層3が、蛍光体層2の前面側、すなわち蛍光体層2に対して励起光である紫外光UVの入射側とは反対側に設けられ、第2の選択反射層4が、蛍光体層2の背面側、すなわち蛍光体層2に対して紫外光UVの入射側に設けられている。
【0019】
蛍光体層2の前面側の第1の選択反射層3は、誘電体多層膜ミラーからなり、映像投射部100から投射される紫外光(励起光)UVを反射させるとともに、蛍光体層2が発した光を透過させるように構成されている。これにより、蛍光体層2を励起した紫外光が蛍光体層2を透過したとしても、そのような紫外光がスクリーン10前面側の観察者まで達するのを防止することができる。また、外光に含まれる紫外光を反射させることで、そのような紫外光により各蛍光体2R,2G,2Bが励起されて発光することも防止することができる。
【0020】
蛍光体層2の背面側の第2の選択反射層4は、第1の選択反射層3と同様に、誘電体多層膜ミラーからなるが、第1の選択反射層3とは異なり、紫外光UVを透過させるとともに、蛍光体層2が発した光を反射させるように構成されている。これにより、蛍光体層2からの等方的な発光のうち、スクリーン10の背面側に放射される光を前面側に取り出すことができ、光の利用効率を向上させることができる。
【0021】
第1の選択反射層3は、誘電体多層膜ミラーからなる代わりに、カラーフィルタから構成されていてもよい。その場合、カラーフィルタは、可視光(赤色光、緑色光、および青色光)を透過させ、紫外光(励起光)を吸収するように構成されている必要がある。
【0022】
さらに、蛍光体層2と第1の選択反射層3との間には、特定波長の光の照射により光の透過率が変化するフォトクロミック化合物を含む感光層5が設けられている。本実施形態で用いるフォトクロミック化合物は、通常は黒色または褐色であり可視光を吸収するが、特定波長の可視光の照射により、その特定波長の可視光を透過させるようになっている。すなわち、通常は黒色または褐色である感光層5では、特定波長の可視光が照射されると、その照射領域だけが、その可視光の色に発色して見えるようになる。これにより、蛍光体層2から発せられる三原色(RGB)の光は、感光層5を透過することで、コントラストを向上させることが可能となる。また、フォトクロミック化合物は、加熱や、励起光である紫外光以外および蛍光体が発する可視光以外の光、例えば赤外光IRの照射により、元の黒色または褐色に着色されるようになっている。これに伴い、蛍光体層2は、感光層5に作用する赤外光IRを透過させることができる。
【0023】
フォトクロミック化合物としては、上述の機能を発揮できるものを適宜選択することができ、例えば、銀ナノ粒子−酸化チタン複合膜を使用することができる。
【0024】
上述した各層2−5は、ガラスなどからなるベース部材6によって支持されている。また、第1の選択反射層3の前面側には、蛍光体層2の各蛍光体2R,2G,2Bや感光層5のフォトクロミック化合物などの劣化および破損を防止するために、ガラス、ポリエチレンテレフタラート(PET)などからなる保護層7が設けられている。
【0025】
ここで、本実施形態の透過型スクリーン10の画像表示動作について説明する。
【0026】
映像投射部100から射出された紫外光UVは、背面側から透過型スクリーン10に入射し、ベース基材6および第2の選択反射層4を透過する。第2の選択反射層4を透過した紫外光UVは、蛍光体層2に入射し、各蛍光体2R,2G,2Bを励起する。紫外光UVによって励起された各蛍光体2R,2G,2Bから発せられたRGBの光は、背面側で第2の選択反射層4によって反射された分と合わせて、前面側に位置する感光層5に入射する。
【0027】
感光層5のフォトクロミック化合物は、蛍光体層2から入射したRGBの光を選択的に透過させる。すなわち、感光層5は、赤色光Rが照射されると赤色光Rを透過させ、緑色光Gが照射されると緑色光Gを透過させ、青色光Bが照射されると青色光Bを透過させる。感光層5を透過したRGBの光は、第1の選択反射層3および保護層7を透過して、カラー画像としてスクリーン10上に表示される。
【0028】
以上のように、本実施形態の透過型スクリーンでは、蛍光体層の前面側に、フォトクロミック化合物を含む感光層が設けられている。このフォトクロミック化合物は、通常は黒色または褐色であり可視光を吸収するが、特定波長の可視光が照射されると、その可視光を透過させるように、すなわち特定波長の可視光が照射された領域がその色に発色して見えるようになっている。これにより、スクリーンに表示されるRGB画像のコントラストを向上させることが可能となる。その結果、本実施形態の透過型スクリーンでは、等方的に発光する蛍光体が発光体として用いられていることにより、広視野角の画像表示が可能となるだけでなく、高コントラストな画像表示も可能となる。
【0029】
蛍光体層と感光層とは、本実施形態では別の層として設けられているが、一体的に形成したり、本実施形態のフォトクロミック化合物を含むように蛍光体層を形成したりするなど、それぞれの層の機能を備えた1つの層として設けられていてもよい。
【0030】
次に、本実施形態の透過型スクリーンを備えた背面投射型表示装置であるリアプロジェクタの構成および動作について説明する。以下では、本実施形態の透過型スクリーンを備えたリアプロジェクタとして、走査型プロジェクタを例に挙げるが、これに限定されるものではない。
【0031】
図3に、本実施形態のリアプロジェクタの一構成例を示す。図3を参照すると、リアプロジェクタ1は、透過型スクリーン10と、スクリーン10に対して映像信号に基づいた励起光(本実施形態では紫外領域のレーザ光)を投射する映像投射部100とを有している。映像投射部100は、レーザ光源駆動部251、走査素子駆動部252、レーザ光源253、光学系254、水平走査素子255、および垂直走査素子256を有している。
【0032】
レーザ光源253は、スクリーン10に含まれる蛍光体層2の各色の蛍光体2R,2G,2B(図2参照)を励起するための紫外領域のレーザ光(励起光)を出力する。
【0033】
光学系254は、レーザ光源253から出力されたレーザ光の進行方向に設けられており、入射したレーザ光を水平走査素子255に向けて反射する。水平走査素子255は、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーなどに代表される共振型走査ミラーよりなり、光学系254からのレーザ光を水平方向に往復走査する。
【0034】
垂直走査素子256は、水平走査素子255からのレーザ光の進行方向に設けられており、水平走査素子255からのレーザ光を垂直方向に往復走査する。垂直走査素子256は、ポリゴンミラーやガルバノミラーなどの走査手段により構成されていてよい。
【0035】
レーザ光源駆動部251は、外部から供給された映像信号に基づく画像の各画素の輝度値に従ってレーザ光源253を駆動する。走査素子駆動部252は、外部から供給された映像信号の同期信号(水平同期信号や垂直同期信号)に従って水平走査素子255および垂直走査素子256を駆動する。
【0036】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態における透過型スクリーンの概略断面図である。本実施形態を含め、以下に示す各実施形態では、第1の実施形態と同じ部材については図面に同じ符号を付し、説明は省略する。
【0037】
本実施形態は、第1の実施形態に対して、感光層の構成を変更した変形例である。すなわち、感光層15には、蛍光体層2に設けられたブラックストライプ2Kに対応して、同様のブラックストライプ15Kが設けられている。これにより、感光層5から放射される光のスペクトルの空間的な広がりを小さくすることができ、コントラストだけでなく、色純度のさらなる向上も可能となる。これ以外の構成は、第1の実施形態と同様であり、得られる作用効果も、第1の実施形態と同様である。
【0038】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態における透過型スクリーンの概略断面図である。
【0039】
本実施形態は、第1の実施形態に対して、感光層および第1の選択反射層の構成を変更した変形例である。
【0040】
本実施形態の感光層25で用いるフォトクロミック化合物は、通常は黒色または褐色であり可視光を吸収するが、蛍光体層2の励起光である紫外光UVの照射により、可視領域全域の光を透過させるようになっている。すなわち、通常は黒色または褐色である感光層25は、紫外光UVが照射されることで透明になる。また、フォトクロミック化合物は、第1の実施形態と同様に、加熱や、励起光である紫外光以外および蛍光体が発する可視光以外の光、例えば赤外光IRの照射により、元の黒色または褐色に着色されるようになっている。このような感光層25の構成の変更に伴い、本実施形態の蛍光体層2は、感光層25に作用する光、すなわち、紫外光UVと赤外光IRとを透過させることができる。感光層25には、第2の実施形態と同様のブラックストライプ25Kも設けられている。
【0041】
これに加えて、第1の選択反射層13が、紫外光UVを反射させるとともに、蛍光体層2から発せられ、紫外光UVの照射により透明になった感光層15を透過したRGBの光を選択的に透過させるように構成されている。すなわち、第1の選択反射層13は、赤色光Rのみを透過させる赤色透過層13Rと、緑色光Gのみを透過させる緑色透過層13Gと、青色光Bのみを透過させる青色透過層13Bとを有している。赤色透過層13R、緑色透過層13G、および青色透過層13Bは、それぞれ蛍光体層2の各蛍光体2R,2G,2Bに対応するように設けられており、本実施形態ではストライプ状に交互に配置されている。
【0042】
このような感光層15と第1の選択反射層13の構成により、本実施形態においても、コントラストと色純度とをさらに向上させることができる。
【0043】
(第4の実施形態)
図6は、本発明の第4の実施形態における透過型スクリーンの概略断面図である。
【0044】
本実施形態は、第1の実施形態に対して、感光層の構成を変更した変形例である。
【0045】
本実施形態の感光層35は、蛍光体層2の励起光である紫外光UVの照射により、蛍光体層2から発せられたRGBの光を選択的に透過させるように構成されている。具体的には、感光層35は、第2の実施形態と同様のブラックストライプ35Kの間に配置された、赤色感光層35R、緑色感光層35G、および青色感光層35Bを有している。赤色感光層35R、緑色感光層35G、および青色感光層35Bは、背面側にある蛍光体層2の各蛍光体2R,2G,2Bに対応するように設けられ、本実施形態ではストライプ状に交互に配置されている。
【0046】
赤色感光層35R、緑色感光層35G、および青色感光層35Bにそれぞれ含まれるフォトクロミック化合物は、通常は黒色または褐色であり可視光を吸収するが、紫外光UVの照射により、それぞれ赤色光R、緑色光G、および青色光Bを透過させるようになっている。したがって、例えば、通常は黒色または褐色である赤色感光層35Rは、赤色蛍光体2Rを励起した紫外光UVが照射されると、赤色蛍光体2Rから発せられた光の色(赤色)に発色して見えるようになる。このようにして、本実施形態の感光層35は、第3の実施形態の感光層および第1の選択反射層の機能を併せ持つことができる。
【0047】
本実施形態において、感光層35の各フォトクロミック化合物を元の黒色または褐色に着色するのは、第1の実施形態と同様に、加熱や、励起光である紫外光以外および蛍光体が発する可視光以外の光、例えば赤外光IRの照射である。したがって、蛍光体層2は、第3の実施形態と同様に、感光層35に作用する光、すなわち、紫外光UVと赤外光IRとを透過させることができる。
【0048】
(第5の実施形態)
図7は、本発明の第5の実施形態における透過型スクリーンの概略断面図である。
【0049】
本実施形態は、第1の実施形態に対して、蛍光体層の構成と、それに伴う感光層の構成を変更した変形例である。さらに、この変更に応じて、映像投射部から投射される励起光も、第1の実施形態と異なっている。
【0050】
本実施形態の蛍光体層12は、赤色光Rを発する赤色蛍光体12Rと、緑色光Gを発する緑色蛍光体12Gと、青色光Bを拡散する拡散材12Bとから構成されている。本実施形態では、赤色蛍光体12Rおよび緑色蛍光体12Gを励起するための励起光として、青色波長領域のレーザ光(青色光)Bが用いられる。したがって、蛍光体層12から発せられる光は、第1の実施形態と同様に、RGBの光である。
【0051】
赤色蛍光体12R、緑色蛍光体12G、および拡散材12Bは、ストライプ状に交互に配置され、それぞれの間には、第1の実施形態と同様に、可視光を吸収するブラックストライプ12Kが設けられている。赤色蛍光体12R、緑色蛍光体12G、および拡散材12Bがマトリクス状に配置され、それらの間にブラックマトリクスが設けられていてもよい。
【0052】
本実施形態の感光層45で用いるフォトクロミック化合物は、特定波長の可視光の照射により、その特定波長の可視光を透過させるようになっている点で、第1の実施形態と同様である。すなわち、本実施形態の感光層45は、通常は黒色または褐色であるが、特定波長の可視光が照射された領域だけが、その可視光の色に発色して見えるようになる。また、発色したフォトクロミック化合物が、加熱によって、元の黒色または褐色に着色される点も、第1の実施形態と同様である。しかしながら、本実施形態のフォトクロミック化合物は、第1の実施形態と異なり、励起光である青色光以外および蛍光体が発する可視光以外の光、例えば紫外光UVの照射により、元の黒色または褐色に着色されるようになっている。これに伴い、蛍光体層12は、感光層45に作用する紫外光UVを透過させることができる。
【0053】
これ以外の構成は、第1の実施形態と同様であり、得られる作用効果も、第1の実施形態と同様である。
【0054】
(第6の実施形態)
図8は、本発明の第6の実施形態における透過型スクリーンの概略断面図である。
【0055】
本実施形態は、第5の実施形態に対して、感光層の構成を変更した変形例である。すなわち、本実施形態の感光層55には、蛍光体層12に設けられたブラックストライプ12Kに対応して、同様のブラックストライプ55Kが設けられている。このような構成は、第2の実施形態と同様である。これにより、感光層55から放射される光の空間的な広がりを小さくすることができ、コントラストだけでなく、色純度のさらなる向上も可能となる。これ以外の構成は、第5の実施形態と同様であり、得られる作用効果も、第5の実施形態と同様である。
【0056】
(第7の実施形態)
図9は、本発明の第7の実施形態における透過型スクリーンの概略断面図である。
【0057】
本実施形態は、第5の実施形態に対して、感光層および第1の選択反射層の構成を変更した変形例である。第1の選択反射層としては、第3の実施形態の第1の選択反射層13が用いられている。
【0058】
本実施形態の感光層65で用いるフォトクロミック化合物は、通常は黒色または褐色であり可視光を吸収するが、蛍光体層12の励起光である青色光Bの照射により、可視領域全域の光を透過させるように、したがって透明になるように構成されている。このような構成は、第3の実施形態と同様である。一方、フォトクロミック化合物は、第5の実施形態と同様に、加熱や、励起光である青色光以外および蛍光体が発する可視光以外の光、例えば赤外光IRの照射により、元の黒色または褐色に着色されるように構成されている。このような構成に応じて、蛍光体層12は、感光層65に作用する光、すなわち、青色光Bと紫外光UVとを透過させることができる。感光層65には、いくつかの実施形態と同様に、ブラックストライプ65Kも設けられている。
【0059】
このような感光層65と、第3の実施形態と同様の第1の選択反射層13との構成により、本実施形態においても、コントラストと色純度とをさらに向上させることができる。
【0060】
(第8の実施形態)
図10は、本発明の第2の実施形態における透過型スクリーンの概略断面図である。
【0061】
本実施形態は、第5の実施形態に対して、感光層の構成を変更した変形例である。
【0062】
本実施形態の感光層75は、蛍光体層12の励起光である青色光Bの照射により、蛍光体層12から発せられたRGBの光を選択的に透過させるように構成されている。具体的には、感光層75は、第6の実施形態と同様のブラックストライプ75Kの間に配置された、赤色感光層75R、緑色感光層75G、および青色感光層75Bを有している。赤色感光層75R、緑色感光層75G、および青色感光層75Bは、背面側にある蛍光体層12の赤色蛍光体12Rおよび緑色蛍光体12Gと拡散材12Bとに対応するように設けられ、本実施形態ではストライプ状に交互に配置されている。
【0063】
赤色感光層75R、緑色感光層75G、および青色感光層75Bにそれぞれ含まれるフォトクロミック化合物は、通常は黒色または褐色であり可視光を吸収するが、青色光Bの照射により、それぞれ赤色光R、緑色光G、および青色光Bを透過させるようになっている。したがって、例えば、通常は黒色または褐色である赤色感光層75Rは、赤色蛍光体12Rを励起した青色光が照射されると、赤色蛍光体12Rから発せられた光の色(赤色)に発色して見えるようになる。このようにして、本実施形態の感光層75は、第7の実施形態の感光層および第1の選択反射層の機能を併せ持つことができる。このような感光層75の構成は、第4の実施形態の感光層35と同様である。
【0064】
本実施形態において、感光層75の各フォトクロミック化合物を元の黒色または褐色に着色するのは、第5の実施形態と同様に、加熱や、励起光である青色光以外および蛍光体が発する可視光以外の光、例えば紫外光UVの照射である。したがって、蛍光体層12は、第7の実施形態と同様に、感光層75に作用する光、すなわち、青色光Bと紫外光UVとを透過させることができる。
【0065】
上述の第5から第8の実施形態では、蛍光体層の励起光として青色光が用いられているが、これに限定されるものではなく、励起光は、赤色光、緑色光、および青色光のいずれか1つの色光であればよい。その場合、蛍光体層は、励起光である1つの色光を拡散する拡散材と、励起光以外の2つの色光をそれぞれ発する2つの蛍光体とから構成されている。
【符号の説明】
【0066】
1 リアプロジェクタ
10 透過型スクリーン
2,12 蛍光体層
3,13 第1の選択反射層
4 第2の選択反射層
5,15,25,35,45,55,65,75 感光層
6 ベース部材
7 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光によって励起されて発光する蛍光体を含む蛍光体層と、
前記蛍光体層に対して前記励起光の入射側とは反対側に設けられ、前記励起光を反射または吸収するとともに、前記蛍光体層が発する可視光を透過させる第1の選択反射層と、
前記蛍光体層と前記第1の選択反射層との間に設けられ、前記励起光と前記蛍光体層が発する可視光とのいずれか一方の照射により、可視光を吸収する状態から可視光を透過させる状態へ遷移するフォトクロミック化合物を含む感光層と、
を有する透過型スクリーン。
【請求項2】
前記フォトクロミック化合物が、前記励起光以外および前記蛍光体層が発する可視光以外の光の照射により、前記可視光を透過させる状態から前記可視光を吸収する状態へ遷移するようになっている、請求項1に記載の透過型スクリーン。
【請求項3】
前記フォトクロミック化合物が、前記蛍光体層が発する特定波長の可視光の照射により、前記可視光を透過させる状態において、前記特定波長の可視光を透過させるようになっている、請求項2に記載の透過型スクリーン。
【請求項4】
前記フォトクロミック化合物が、前記励起光の照射により、前記可視光を透過させる状態において、可視領域全域の光を透過させるようになっている、請求項2に記載の透過型スクリーン。
【請求項5】
前記第1の選択反射層が、前記蛍光体層から発せられ、前記感光層を透過した異なる波長の可視光を選択的に透過させるようになっている、請求項4に記載の透過型スクリーン。
【請求項6】
前記感光層が、複数の前記フォトクロミック化合物を含み、それぞれの前記フォトクロミック化合物が、前記励起光の照射により、前記可視光を透過させる状態において、前記蛍光体層から発せられた互いに異なる波長の可視光を透過させるようになっている、請求項2に記載の透過型スクリーン。
【請求項7】
前記励起光が紫外光であり、前記蛍光体層が、赤色光を発する赤色蛍光体と、緑色光を発する緑色蛍光体と、青色光を発する青色蛍光体とを有する、請求項3から6のいずれか1項に記載の透過型スクリーン。
【請求項8】
前記赤色蛍光体と前記緑色蛍光体と前記青色蛍光体とが、ストライプ状に交互に配置されている、請求項7に記載の透過型スクリーン。
【請求項9】
前記赤色蛍光体と前記緑色蛍光体と前記青色蛍光体とが、マトリクス状に配置されている、請求項7に記載の透過型スクリーン。
【請求項10】
前記蛍光体層が、前記赤色蛍光体と前記緑色蛍光体と前記青色蛍光体との間に設けられ、可視光を吸収するブラックストライプを有する、請求項7から9のいずれか1項に記載の透過型スクリーン。
【請求項11】
前記感光層が、前記蛍光体層の前記ブラックストライプに対応するように設けられ、該ブラックストライプと同様のブラックストライプを有する、請求項10に記載の透過型スクリーン。
【請求項12】
前記励起光以外および前記蛍光体層が発する可視光以外の光が、赤外光である、請求項7から11のいずれか1項に記載の透過型スクリーン。
【請求項13】
前記励起光が、赤色光、緑色光、および青色光のいずれか1つの色光であり、前記蛍光体層が、前記いずれか1つの色光を拡散する拡散材と、残りの2つの色光をそれぞれ発する2つの蛍光体とを有する、請求項3から6のいずれか1項に記載の透過型スクリーン。
【請求項14】
前記2つの蛍光体と前記拡散材とが、ストライプ状に交互に配置されている、請求項13に記載の透過型スクリーン。
【請求項15】
前記2つの蛍光体と前記拡散材とが、マトリクス状に配置されている、請求項13に記載の透過型スクリーン。
【請求項16】
前記蛍光体層が、前記2つの蛍光体と前記拡散材との間に設けられ、可視光を吸収するブラックストライプを有する、請求項13から15のいずれか1項に記載の透過型スクリーン。
【請求項17】
前記感光層が、前記蛍光体層の前記ブラックストライプに対応するように設けられ、該ブラックストライプと同様のブラックストライプを有する、請求項16に記載の透過型スクリーン。
【請求項18】
前記励起光以外および前記蛍光体層が発する可視光以外の光が、紫外光である、請求項13から17のいずれか1項に記載の透過型スクリーン。
【請求項19】
前記励起光が青色光であり、前記蛍光体層が、前記青色光を拡散する拡散材と、前記赤色光を発する赤色蛍光体と、前記緑色光を発する緑色蛍光体とを有する、請求項13から18のいずれか1項に記載の透過型スクリーン。
【請求項20】
前記第1の選択反射層が、前記励起光を反射させる誘電体多層膜ミラーからなる、請求項1から19のいずれか1項に記載の透過型スクリーン。
【請求項21】
前記第1の選択反射層が、前記励起光を吸収するカラーフィルタからなる、請求項1から20のいずれか1項に記載の透過型スクリーン。
【請求項22】
前記蛍光体層に対して前記励起光の入射側に設けられ、前記励起光を透過させるとともに、前記蛍光体層が発する可視光を反射させる第2の選択反射層を有する、請求項1から21のいずれか1項に記載の透過型スクリーン。
【請求項23】
前記第2の選択反射層が誘電体多層膜ミラーからなる、請求項22に記載の透過型スクリーン。
【請求項24】
前記蛍光体層と前記感光層とが一体的に形成されている、請求項1から23のいずれか1項に記載の透過型スクリーン。
【請求項25】
前記フォトクロミック化合物が、加熱により、前記可視光を透過させる状態から前記可視光を吸収する状態へ遷移するようになっている、請求項1から24のいずれか1項に記載の透過型スクリーン。
【請求項26】
請求項1から25のいずれか1項に記載の透過型スクリーンと、画像信号に応じて変調した前記励起光を前記透過型スクリーンに投射する映像投射部と、を備えた背面投射型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−220668(P2012−220668A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85365(P2011−85365)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】