説明

透過型スクリーン

【課題】 使用時における対角方向において、他の方向よりも大きい視野角を有する透過型スクリーンの提供
【解決手段】 複数の単レンズ10を備えるフライアイレンズ100において、フライアイレンズ100のレンズ境界は、フライアイレンズ100の外形と相似な長方形をなし、フライアイレンズ100の長方形の短辺を鉛直に向けた使用状態で、単レンズ10のレンズ面から単レンズ10の光軸方向に平行な映像光を入射させる場合に、単レンズ10から出射される映像光の拡散角度は、フライアイレンズ100の外形がなす長方形の対角方向に於いて、水平方向及び垂直方向よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過型スクリーンに関する。特に本発明は、複数の単レンズを平面的に配列して備える透過型スクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の単レンズを備える透過型スクリーンに於いて、単レンズを縦方向及び横方向に一定のピッチで配列したレンズアレイが知られている(例えば、特許文献1参照。)。上記文献には、縦方向のピッチと横方向のピッチが互いに異なることが記載されている。また、光軸と直交する方向に関する単レンズの境界形状をひし形にすることにより、水平及び垂直方向の視野角を拡大したレンズアレイが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開昭62−259631号公報、第3図
【特許文献2】特開2000−131506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、観察者から見たディスプレイ全体の輝度を一定のレベル以上に保つためには、スクリーンの各部から出射される映像光を拡散する必要がある。特に、ディスプレイが大型化されるにつれて、ディスプレイの周辺部分における観察者からの観察角度(スクリーンに対する観察者の視線がスクリーンの法線となす角度)が大きくなるので、スクリーンに十分な拡散性能を付与することが要求されている。しかしながら、スクリーンの拡散性をむやみに上げることは、スクリーンの正面輝度の低下を招く。従って、観察者によるスクリーンの観察条件を適切に反映した拡散性能をスクリーンに付与する必要があるという課題があった。
【0004】
そこで本発明は、上記の課題を解決する透過型スクリーンを提供することを目的とする。この目的は特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決することを目的として、本発明の第1の形態によれば、複数の単レンズを平面的に配列して備える、外形が長方形の透過型スクリーンであって、以下の特徴を備える透過型スクリーンが提供される。すなわち、単レンズ同士が隣接するレンズ境界は、透過型スクリーンの外形と相似な長方形をなし、さらに、透過型スクリーンの長方形の短辺を鉛直に向けた使用状態で、単レンズのレンズ面から単レンズの光軸方向に平行な映像光を入射させる場合に、単レンズから出射される映像光の拡散角度は、透過型スクリーンがなす長方形の対角方向に於いて、水平方向及び垂直方向よりも大きい。これにより、観察者に対して透過型スクリーンのコーナーが暗くなることのない映像を提供できる。
【0006】
上記の透過型スクリーンにおいて、単レンズの曲率は、光軸を中心とする回転方向に一定であってもよい。この場合、単レンズのレンズ設計及び生産が容易である。
【0007】
上記の透過型スクリーンにおいて、透過型スクリーンの長方形の短辺を鉛直に向けた使用状態で、単レンズのレンズ面から単レンズの光軸方向に平行な映像光を入射させる場合に、単レンズから出射される映像光の拡散角度は、水平方向において垂直方向よりも大きくてもよい。これにより、水平方向の視野角が垂直方向の視野角よりも大きくなり、透過型スクリーンとして良好な視野角特性が得られる。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係るリアプロジェクションディスプレイ800の構成を示す。リアプロジェクションディスプレイ800は、光学エンジン700と、鏡600と、スクリーン500とを備える。光学エンジン700から出力された光学像は鏡600で反射され、スクリーン500に入射する。スクリーン500は、入射した光学像を拡散させて観察者側に出射することにより、適切な観察領域を実現する。
【0011】
図2は、図1のスクリーン500におけるA部の詳細な構成を示す。スクリーン500は、フレネルレンズ200、フライアイレンズ100、及び前面板300を有する。フレネルレンズ200は、光学エンジン700から出射された光の進行方向をフライアイレンズ100の光軸方向にそろえる。フライアイレンズ100は、複数の単レンズ10を備え、入射した光を単レンズ10で拡散して出射する。前面板300は、フライアイレンズ100を保護すると共に、表面に施されたARコートなどのアンチグレア処理により外光の反射を低減する。フライアイレンズ100は、本発明の透過型スクリーンの一例である。
【0012】
図3は、フライアイレンズ100の外形と単レンズ10の境界形状を示す平面図である。単レンズ10の境界形状は、フライアイレンズ100の外形と相似な長方形をなし、かつフライアイレンズ100の外形と同一の向きで形成されている。例えば、フライアイレンズ100の縦方向、すなわち使用時の垂直方向の長さをV、横方向、すなわち、使用時の水平方向の長さをH、単レンズ10の境界形状における垂直方向の長さをV、単レンズ10の境界形状における水平方向の長さをHとする。また、フライアイレンズ100の対角線の距離をD、単レンズの対角線の距離をD2とする。この場合、以下の関係が成立する。
:H:D=V:H:D
>H、D>V、D>H、D>V
さらに、単レンズ10の対角の方向はフライアイレンズ100の対角の方向と一致する。従って、フライアイレンズ100の対角の方向において、単レンズ10の稜線の長さが最大となる。
【0013】
図4は、単レンズ10の外形を示す斜視図である。図中、Axは単レンズ10の光軸を示し、Tは、単レンズ10のレンズ頂点を示す。また、Bは、フライアイレンズ100の使用時における垂直方向に伸びる単レンズ10の境界線を示し、Bは、水平方向に伸びる単レンズ10の境界線を示す。B及びBはいずれもアーチ状をなし、図3に示した対角部分で一致する。本実施例の単レンズ10の曲率は、光軸Axを中心とした回転方向に関して一定である。
【0014】
単レンズ10の光軸Axの方向に関するレンズ頂点Tからレンズ境界B、Bまでの距離は、図3に示した長方形の対角方向において最大となる。すなわち、光軸Axの方向に関して、光軸Axを通る対角方向のレンズ断面におけるレンズ頂点Tからレンズ境界までの距離は、光軸Axを通る水平方向のレンズ断面におけるレンズ頂点Tからレンズ境界Bvまでの距離よりも大きい。同様に、光軸Axの方向に関して、光軸Axを通る対角方向のレンズ断面におけるレンズ頂点Tからレンズ境界までの距離は、光軸Aを通る垂直方向のレンズ断面におけるレンズ頂点Tからレンズ境界Bまでの距離よりも大きい。
【0015】
単レンズ10の光軸Ax方向に関するレンズ頂点Tからレンズ境界B、Bまでの距離は、単レンズ10の水平方向において、単レンズ10の垂直方向よりも大きい。すなわち、光軸Ax方向に関するレンズ頂点Tからレンズ境界Bvまでの距離は、光軸Ax方向に関するレンズ頂点Tからレンズ境界Bまでの距離よりも大きい。従って、フライアイレンズ100の長方形の短辺を鉛直に向けた使用状態で、単レンズ10のレンズ面から単レンズ10の光軸方向に平行な映像光を入射させる場合に、単レンズ10から出射される映像光の拡散角度は、フライアイレンズ100がなす長方形の対角方向に於いて、水平方向及び垂直方向よりも大きい。これにより、観察者に対してスクリーン500のコーナーが暗くなることのない映像を提供できる。
【0016】
単レンズ10の材料は、少なくとも可視光を透過する材料のうちで、屈折率がほぼ1.4からほぼ1.65までの材料を用いる。屈折率が1.4よりも小さい材料を用いた場合、単レンズ10は十分なレンズパワーを有さず、入射光を適切な角度で拡散することができない。逆に、屈折率が1.65よりも大きい材料を用いた場合、レンズ形状によっては、単レンズ10に入射した光が内部反射し、スクリーンとしての透過効率が下がってしまう。プラスチック及びガラスには、屈折率が1.4から1.65までの材料が多く存在するので、製造方法や材料コストに応じて単レンズ10の材料を選択すればよい。なお、屈折率が1.4又は1.65の材料を選択した場合、材料物性のばらつきにより屈折率が1.4を下回る場合、あるいは1.65を上回る場合がある。このようなばらつきは本実施形態の許容の範囲内である。材料物性のばらつきの大きさは材料の種類や材料メーカによっても異なるが、例えば1.4±0.05及び1.65±0.05程度である。
【0017】
図5は、単レンズ10の垂直方向、水平方向、及び対角方向のそれぞれにおける映像光の経路を示す。図中、Vは、単レンズ10の垂直方向の長さを示し、Hは、単レンズ10の水平方向の長さを示し、Dは、単レンズ10の対角方向の長さを示す。単レンズ10は、樹脂製の基材20に固定されている。基材20は、単レンズ10の焦点近傍に達する厚みを有する。基材20の単レンズ10と反対側の面には遮光層30が設けられている。遮光層30は、光を吸収する。遮光層30は、単レンズ10の光軸を中心に、映像光を透過させる最低限の大きさの開口部32が形成されている。単レンズ10のレンズ面から単レンズ10の光軸に対して略平行に入射した映像光は、入射面のレンズ形状に応じた角度で屈折し、単レンズ10の光軸上の焦点に集光した後、開口部32から拡散して出射される。すなわち、遮光層30は、映像光を選択的に出射すると共に、外光の反射を防止する。これにより、スクリーン500は、コントラストの高い映像を観察者側に映し出すことができる。
【0018】
単レンズ10の対角方向においてDの範囲に入射する映像光は、開口部32からθの拡散角度で出射する。単レンズ10の水平方向においてHの範囲に入射する映像光は、開口部32からθの拡散角度で出射する。同様に、単レンズ10の垂直方向において、Vの範囲に入射する映像光は、開口部32からθの拡散角度で出射する。上述のように、単レンズ10の対角方向の距離Dは、水平方向の距離H及び垂直方向の距離Vのいずれよりも大きい。従って、本図から明らかなように、対角方向への拡散角度θは、水平方向への拡散角度θ及び垂直方向への拡散角度θのいずれよりも大きい。これにより、フライアイレンズ100から出射される映像光の視野角は、単レンズ10の対角方向において水平方向及び垂直方向よりも大きい。
【0019】
図6から図8は、フライアイレンズ100から出射する光の観察角度に対する輝度の分布を示すグラフである。横軸は、光軸方向に対する観察角度の傾きである。縦軸は観察角度0°、すなわち単レンズ10の出射側を光軸方向から観察したときの輝度を1とした場合における、フライアイレンズ100の輝度を示す輝度比である。フライアイレンズ100の輝度は、観察角度が大きくなるにつれて単調に減少する。図7及び図8は、フライアイレンズ100の水平方向及び垂直方向にそれぞれ観察方向を傾けた場合における、輝度の変化を示す。観察方向を水平方向及び垂直方向にそれぞれ傾ける場合、図5で説明した拡散角度θ及びθにそれぞれ達する時点で輝度が急激に低下する。一方、図6は、フライアイレンズ100の対角方向に観察方向を傾けた場合における輝度の変化を示す。観察方向を対角方向に傾ける場合、拡散角度θ及びθのいずれよりも大きい拡散角度θに達するまで輝度が急激に低下することはない。
【0020】
他の実施例において、単レンズ10のレンズ形状は、光軸Axを中心とした回転方向に関して変化してもよい。すなわち単レンズ10は、非回転軸対称レンズであってもよい。この場合、使用時の水平方向における単レンズ10のレンズパワーは、使用時の垂直方向におけるレンズパワーよりも大きいことが望ましい。これにより、水平方向の視野角が垂直方向よりも大きくなり、スクリーン500として良好な視野角特性が得られる。なお、レンズパワーとは、光を屈折する強度を示し、レンズ形状とレンズ材料の屈折率に依存する。
【0021】
図9は、本実施例のスクリーン500に対する観察者900の位置と観察角度の関係の一例を示す。観察者900が、スクリーン500の正面におけるいずれかの位置からスクリーン500を観察すると仮定すると、観察者900がスクリーン500のコーナー部の正面に位置している状態で、対角のコーナー部を観察する場合に、観察角度が最大になる。例えば、スクリーン500の左下のコーナー部Aの正面に位置している状態で、対角のコーナー部Dを観察する場合に観察角度が最大になる。この場合、対角のコーナー部Dを観察する場合の観察角度は、コーナー部Aの上側に位置するコーナー部B、及びコーナー部Aの右側に位置するコーナー部Cを観察する場合の観察角度よりも大きい。このような観察条件に対しても、本実施形態のフライアイレンズ100は、光軸方向から見たレンズ境界がスクリーンの外形と相似でない従来のフライアイレンズよりも、スクリーン500の対角方向に関する視野角が大きい。したがって、観察者900に対してスクリーン500のコーナーが暗くなることのない映像を提供できる
【0022】
上記の説明で明らかなように、本実施形態のフライアイレンズ100は、使用時におけるスクリーン500の対角方向において、他の方向よりも大きい視野角を有する。特に50インチ以上の大型スクリーンにおいて観察角度が大きくなりやすい対角方向の視野角を拡大することができる。
【0023】
なお、フライアイレンズ100において単レンズ10のレンズ有効部分を最大化するためには、隣接する単レンズ10との境界部まで、レンズ形状が外側に凸であることが望ましい。しかしながら、この場合単レンズ10の境界部が鋭いエッジになるので、製造時や組み立て時にエッジから亀裂を生じやすい。従って、レンズ境界部の強度を確保することを目的として、単レンズ10のレンズ境界を角Rでつないでもよい。この場合、レンズ境界部分の角Rの大きさは単レンズ10のレンズピッチの10分の1以下が適当である。
【0024】
以下、フライアイレンズ100の製造方法について説明する。レンズの材料は少なくとも可視光を透過させ、屈折率がほぼ1.4からほぼ1.65の範囲内に属する材料であればよい。例えば公知の熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、ガラスなどが挙げられる。すなわち、前述のレンズ形状が刻印された雌金型に樹脂を充填して成形する方法、あるいは雌金型に充填した材料をさらに基材上に転写する方法が挙げられる。また、紫外線硬化樹脂などの光硬化性樹脂を基材上に均一に塗布し、レンズを形成する部位に光線を照射して硬化させた後、不要部分を除去する方法、基材表面を機械的に切削してレンズ形状を作成する方法、およびこれらを組み合わせた方法などが挙げられる。
【0025】
このうち雌金型と基材の間にレンズ材料を充填して成型する方法が最も効率よく、かつ精度よく単レンズ10を製造できる点で好ましい。すなわち、図4に示したように、レンズ面と反対側に於いて、単レンズ10と遮光層30の間に透明なプラスチックフィルムである基材20が挟まれる。
【0026】
なお、雌型の製造方法は、切削機械加工、部分的にマスク処理を施したガラスのエッチング、フォトリソグラフィー技術、MEMS(マイクロマシン)法などが公知であり、いかなる手段を用いても良い。この場合、雌金型は平板状のものであってもよいが、基材20が可撓性を持つプラスチックフィルム等の場合には、ロール状の雌金型を用いることが特に好ましい。ロール上の雌金型の場合、可撓性をもつ基材20を用いて単レンズ10を広い面積にわたって連続的に製造できる。これにより、フライアイレンズ100を効率的に製造することができる。
【0027】
また、紫外線硬化樹脂などの硬化エネルギー線硬化性樹脂を積層した後に、紫外線などの硬化エネルギー線を選択的に照射することによって所望部分を硬化させ、その後、未硬化部分を除去する方法を用いてもよい。
【0028】
レンズ材料としては、生産効率や形状精度、設備の簡便さなどの点から光硬化性樹脂が最も好ましい。特に、基材20が薄いプラスチックフィルムである場合には、硬化性、可撓性、屈曲性などの点から、光線により硬化する光硬化性樹脂、特に紫外線硬化性樹脂をレンズ材料として使用することが好ましい。光硬化性樹脂の特性は、例えばモノマー、プレポリマー、ポリマー、光重合開始剤などの光硬化性樹脂成分を変更することにより調整される。
【0029】
光硬化型樹脂を構成する成分の一つとして好ましく使用されるモノマー、プレポリマーは、基本的に少なくとも1個以上の官能基を含有する。反応する硬化エネルギー線が紫外線である場合には、該主成分の他に硬化エネルギー線を照射することによりイオンまたはラジカルを発生する物質、いわゆる光重合開始剤を添加する必要がある。
【0030】
ここで官能基とは、ビニル基、カルボキシル基、水酸基などの反応性の原因となる原子団または結合様式をいう。本実施形態は硬化エネルギー線を照射して樹脂組成物を硬化せしめるという点から、アクリロイル基などのビニル基を有するものが硬化性などの点から好ましく使用される。
【0031】
このようなアクリロイル基を有するモノマーは、公知のものから適宜選んで使用でき、特に限定されるものではない。代表例を挙げるなら2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフリールおよびその誘導体のアクリレートなどの単官能のもの、ジシクロペンテニルアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレートなどの2官能のもの、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、ジペンタエリストールヘキサアクリレートなどの3官能以上のものがある。上記モノマーの中でも3官能以下のものが、硬化後の膜硬度がHB以下となり可撓性に優れている点、架橋密度が小さく低体積収縮率のものが多い点、耐カール性に優れている点などから好ましく使用される。
【0032】
本実施形態では上記モノマーの他に、プレポリマーを前記モノマーと併用して使用する場合が多い。本実施形態で使用されるプレポリマーもモノマー同様特に限定されるものではない。ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートなどで代表されるものであり、低体積収縮、可撓性などの理由から3官能以下、好ましくは2官能または3官能のものが使用される。
【0033】
光重合開始剤は特に限定されるものではないが、代表的には、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、ミヒラーケトン系、ベンジル系、ベンゾイン系、ベンゾインエーテル系、ベンジルジメチルケタール系、ベンゾインベンゾエート系、α−アシロキシムエステル系等のカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類等の硫黄化合物、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド等の燐化合物等が挙げられ、これらを単独あるいは2種以上混合して使用する。
【0034】
上記光重合開始剤の添加量は、モノマーおよび/またはプレポリマー成分100重量部に対して、0.1〜20重量部、さらには0.5〜15重量部であることが好ましい。光重合開始剤が前記範囲未満では硬化性が低くなり、また前記範囲を超えると硬化後ブリードアウトするという問題が起こるため好ましくない。
【0035】
また本実施形態においては樹脂組成物の硬化前、硬化中、さらには硬化後の樹脂の特性及び物性、又は硬化膜の特性及び物性を制御する為に、各種添加剤を使用してもよい。ここで硬化前の特性及び物性を制御する物質としては、塗料安定化剤(ゲル化防止、硬化防止)、増粘剤(塗工性向上)などがある。また硬化中の特性を制御する物質としては、光重合促進剤、吸光剤(両者とも硬化挙動の調整)などがある。さらに硬化後の膜特性を制御する物質として、可塑剤(可撓性の向上)、紫外線吸収剤(耐光性付与)などがある。
【0036】
本実施形態で使用される光硬化性樹脂には、強度、可撓性、耐カール性などの点からポリマーを添加してもよい。ここでポリマーの種類は特に限定されるものではなく、公知のポリマー、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。耐久性及び接着性等を考慮した場合には、塩素化ポリマーを使用することができる。塩素化ポリマーは、塩素を含有するモノマーの重合体と、各種ポリマーを塩素化処理するいわゆる後塩素化物の2種類に分類される。塩素を含有するモノマーの重合体の例は、ポリ塩化ビニルおよびその共重合体、ポリ塩化ビニリデンおよびその共重合体、並びにクロロプレンゴム等である。後塩素化物の例は、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリエステル、塩化ゴム、及び塩素化ポリイソプレン等である。本実施形態では後塩素化物の方が好ましく使用される。
【0037】
ポリマーの塩素化の方法は特に限定されるものではないが、ゴムまたはポリマーを四塩化炭素、クロロホルム等の塩素系の溶剤に溶解させ、40〜90度で塩素化し、蒸留、洗浄、乾燥等の工程を経て製造する方法が最も簡単である。上記塩素化ポリマーの含有量は、前述したモノマーおよびプレポリマー成分100重量部に対し10〜100重量部、好ましくは20〜60重量部である。含有量が前記範囲未満では添加の効果が低く、また前記範囲を超える場合は光硬化型樹脂の光感度が低下するため好ましくない。
【0038】
本実施形態において、単レンズ10及び遮光層30の間に設けられる基材20は、プラスチックシートまたはプラスチックフィルムが好ましく用いられる。基材20の材質は、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、及びポリエーテル等が挙げられる。あるいは、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、マレイミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、及びノルボルネン樹脂などであってもよい。さらにこれらの共重合体やブレンド物やさらに架橋したものを用いることもできるが、透明性などの光学特性と機械強度のバランスの点から、ポリエステルフィルム中でも2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0039】
前述のフライアイレンズ100の製造方法は、単レンズ10のピッチが200μm以下であって、かつ集光点距離が200μm以下であるような、配列ピッチに対する集光点距離が比較的小さいフライアイレンズに適している。特に、単レンズ10のピッチが100μm以下で、集光点距離が配列ピッチより小さいフライアイレンズシートを精度よく、安定して製造するのに適している。
【0040】
遮光層30における開口部32の形成方法は、公知のセルフアライメント法を用いる。単レンズ10に照射するエネルギー線の平行度およびフライアイレンズ面内の均斉度は、求めるフライアイレンズシートの特性によって種々選択することができる。単レンズの配列パターンに対応したエネルギー線の強度分布を得るには、半値全幅で示して6度以下の平行度を持ったエネルギー線を用いる。また均斉度は、照射面内の任意の9点における照射強度の最大値に対する最小値が80%以上であることが好ましい。
【0041】
上記のセルフアライメント法では、照射する紫外線などのエネルギー線の光路と、実際の使用時における可視光の光路とが、単レンズ10および基材20の屈折率波長依存性によってずれる。このずれを補正する手段として、露光に用いる紫外線等を予め一定の角度に拡散させてもよいし、露光光の光軸を単レンズ10の光軸から±10度の範囲で揺動させながら露光してもよいし、これらを同時に実行してもよい。具体的には、単レンズ10のレンズ面と反対側において、溶媒に対する溶解度がエネルギー線により上昇する感光性樹脂組成物(以下、ポジ型感光性樹脂ということがある)を塗布し、レンズ面から露光し、感光部分を選択的に溶解除去することにより、開口部32のパターンが形成された遮光層30を形成する。この場合、単レンズ10のレンズ面と反対側に遮光性を有するポジ型樹脂組成物を塗布し、レンズ面から単レンズ10の光軸と平行なエネルギー線を照射してレンズの集光作用を利用して、目的以外の部分を溶解除去する方法が好ましく用いられる。
【0042】
遮光層30の配列パターンを精度よく形成するには、露光強度分布のコントラストを大きくすることが好ましい。従って、単レンズ10のレンズ形状によって定まる焦点位置に遮光層30が位置する必要がある。本実施形態は、単レンズ10と遮光層30の間に設けられた基材20の厚みを調節することによって、容易にしかも精度よく、単レンズ10と遮光層30の距離を制御することができる。したがって、開口部32の配列パターンを容易に精度よく形成できる。
【0043】
なお、遮光層30は、金属およびその酸化物、顔料や染料を添加した上記の樹脂組成物等の公知の材料によって構成する。これらのうち顔料や染料を添加した樹脂組成物が、ノイズの原因となる外光を吸収する点で好ましい。また前記遮光層30の色調としては可視光に黒色であることが好ましい。例えば、カーボンブラック、チタンブラック等の顔料、あるいは黒色の染料等を樹脂組成物に分散あるいは溶解させたものを用いることが好ましい。また、染料を用いる場合には耐光性などの点から日光堅牢度が5以上の黒色染料を使用することが好ましく、分散性、樹脂との相溶性、汎用性などの点からアゾ系の黒色染料を使用するのが最も好ましい。また、上記顔料及び染料を分散あるいは溶解するのに用いる樹脂成分は、公知の樹脂例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル、ノボラック樹脂、ポリイミド、エポキシ樹脂などを用いる。
【0044】
以上、本実施形態を実施の形態を用いて説明したが、本実施形態の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本実施形態の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施形態の一実施形態に係るリアプロジェクションディスプレイ800の構成を示す図である。
【図2】スクリーン500の構成を示す断面図である。
【図3】フライアイレンズ100の外形と単レンズ10の境界形状を示す平面図である。
【図4】単レンズ10の外形を示す斜視図である。
【図5】単レンズ10の垂直方向、水平方向、及び対角方向のそれぞれにおける映像光の経路を示す。
【図6】フライアイレンズ100の対角方向に関する観察角度に対する輝度の分布を示すグラフである。
【図7】フライアイレンズ100の水平方向に関する観察角度に対する輝度の分布を示すグラフである。
【図8】フライアイレンズ100の垂直方向に関する観察角度に対する輝度の分布を示すグラフである。
【図9】スクリーン500に対する観察者900の位置と観察角度の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
10 単レンズ
20 基材
30 遮光層
32 開口部
100 フライアイレンズ
200 フレネルレンズ
300 前面板
500 スクリーン
600 鏡
700 光学エンジン
800 リアプロジェクションディスプレイ
900 観察者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単レンズを平面的に配列して備える、外形が長方形の透過型スクリーンであって、
前記単レンズ同士が隣接するレンズ境界は、前記透過型スクリーンの外形と相似な長方形をなし、
前記透過型スクリーンの前記長方形の短辺を鉛直に向けた使用状態で、前記単レンズのレンズ面から前記単レンズの光軸方向に平行な映像光を入射させる場合に、前記単レンズから出射される前記映像光の拡散角度は、前記透過型スクリーンがなす前記長方形の対角方向に於いて、水平方向及び垂直方向よりも大きい透過型スクリーン。
【請求項2】
前記単レンズの曲率は、光軸を中心とする回転方向に一定である、請求項1に記載の透過型スクリーン。
【請求項3】
前記透過型スクリーンの前記長方形の短辺を鉛直に向けた使用状態で、前記単レンズのレンズ面から前記単レンズの光軸方向に平行な映像光を入射させる場合に、前記単レンズから出射される前記映像光の拡散角度は、水平方向において垂直方向よりも大きい、請求項1に記載の透過型スクリーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−139142(P2006−139142A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−329620(P2004−329620)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000155698)株式会社有沢製作所 (117)
【Fターム(参考)】