説明

透過式ステレオレンジファインダ

【課題】 本発明の課題は、三角測量の原理を理解させ、その原理に基づく手法で物体までの距離と2つの物体間の距離を計測するための新しい簡便な器具を提供することにある。
【解決手段】 本発明の透過式ステレオファインダは、平行に固定した2枚の透明板であって、第1の透明板には所定距離離れた2点に位置を示すマークが施され、第2の透明板には前記第1の透明板の一方のマークから板面に対し垂直方向に延びる線が交叉する位置に点位置を示すマークと、前記所定距離離れた2点を結ぶ線と平行した方向に一次元の目盛と、第2の透明板には第1の透明板の一方のマークから板面に対し垂直方向に延びる線が交叉する位置に付された点位置を中心とした同心円状の目盛を付すようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三角測量の原理に基づき、物体までの距離や物体間の距離を測るための簡単な器具に関し、特に中学、高校生用に三角測量の原理を理解させる実習用の教材として好適な器具に関する。
【背景技術】
【0002】
距離計測は最も基本的な工学技術であり、有益な方法が数多く提案され、現在も新しい方法が研究開発されている。地形の測量・観測や産業用ロボットのセンシング等の多くの分野で必須の技術として利用されている。測距の方式として、電波やレーザを用いる能動的な方式、レンズ光学やカメラ画像を利用する受動的な方式がある。能動的な方式には、発信・受信装置等の特殊な電子装置が必要であるが、計測精度がよく小型化等の実用化が進んでいる。また、受動的な方式は、電波/レーザが利用できない環境でも利用できる場合が多く、相補的な位置付けであるが研究開発が盛んである。
最も基本的な距離計測は三角測量であり、歴史的にも古い技術でありながら、今日でも広く用いられている。空間中に仮想的な三角形を形成することで、物体までの距離を演算推定する手法である。この三角測量を用いた測距技術の応用は進んでいるが、ほとんどの測距機器は、電子的に構成されていたり、レンズ系の精密な機構等を伴うものとなっていてその構造が複雑且つ高級であり、専門家以外なかなか手に触れる機会はない。学校では三角関数を使って三角測量の原理を幾何学として生徒に教えるにとどまっており、実際のフィールドで測量を体験させ、分かりやすく理解させる実習はほとんどなされていない。それは三角測量の原理を分かりやすく理解させるために開発された器具がほとんどないためである。
【0003】
この種の教材として興味あるもの(非特許文献1)を発掘した。出展は、NHK教育テレビで昭和40年4月〜昭和55年まで放送されていた。中学生を主なターゲットとする科学番組である「みんなの科学」の「たのしい実験室」(木曜日放送)で、昭和53年7月13日に紹介された光学式距離計という器具である。図8はその光学式距離計を説明した図である。
図に示すように、1m近いパイプ2本と、それを止めるための冶具から構成されたもので、1本のパイプは冶具に固定されており、もう1本のパイプは冶具に回動自在に装着されている。固定されているパイプを覗き込み、目標物体が見えるように器具を固定し、それから、可動パイプを覗きながら動かして目標物体を捉えるようにする。そのときの可動パイプの回動位置から距離がわかるというものである。すなわち、回動側パイプの回動位置と固定側パイプとの距離aと2本のパイプのなす角度θから目標物体までの距離bをa/b=tanθの関係から割り出すものである。この器具は目標物体を狙いやすいようにパイプを用いたこと、パイプを冶具に釘若しくは木ねじで固定しているため、これが目標を定める照準線の役を兼ねることができる等なかなかの優れものである。しかし、パイプを動かす必用があり、維持しなければならない設定姿勢がぶれやすい欠点があることと、視点から物体までの距離だけしか測れないという点で機能的に物足りない。
【非特許文献1】http://www.geocities.co.jp/Technopolis/4764 昭和53年7月13日放送の「光学式距離計 吉野晴久」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、三角測量の原理を理解させ、その原理に基づく手法で物体までの距離と2つの物体間の距離を計測するための新しい簡便な器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の透過式ステレオファインダは、平行に固定した2枚の透明板であって、第1の透明板には所定距離離れた2点に位置を示すマークが施され、第2の透明板には前記第1の透明板の一方のマークから板面に対し垂直方向に延びる線が交叉する位置に点位置を示すマークと、前記所定距離離れた2点を結ぶ線と平行した方向に一次元の目盛を付すようにした。
また本発明の透過式ステレオファインダは、上記構成に加え第2の透明板には第1の透明板の一方のマークから板面に対し垂直方向に延びる線が交叉する位置に付された点位置を中心とした同心円状の目盛を付すようにした。
また本発明の透過式ステレオファインダは、前記装置に加え第1の透明板の一方のマークの前面には1軸回転機構を備えたレーザポインタを、他方のマークの前面には2軸回転機構を備えたレーザポインタを配置するようにした。
【0006】
本発明の視点と物体間の距離を計測する方法は、上記の透過式ステレオファインダを用い、第1の透明板の位置マークと第2の透明板の位置マークとが重なる垂直線の延長視線上に目標物体を捉えるステップと、その姿勢で該器具を固定するステップと、第1の透明板の他方の位置マークから前記目標物体を視線上に狙うステップと、その際の目標物体に重なる第2の透明板の一次元の目盛を読みとるステップとからなり、該目盛から測定値を得るようにした。
また、本発明の2物体間の距離を計測する方法は、上記の視点と物体間の距離を計測する方法で得た2つの物体と視点との距離情報と、第1の透明板の位置マークと第2の透明板の位置マークとが重なる垂直線の延長視線上に一方の目標物体を捉えた器具の姿勢を保ちつつ同じ視点から他方の物体を捉えたとき、第2の透明板の同心円状の目盛から読みとった角度情報とを用い余弦定理に基づいて測定値を得るようにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明の透過式ステレオファインダは、平行に固定した2枚の透明板であって、第1の透明板には所定距離離れた2点に位置を示すマークが施され、第2の透明板には前記第1の透明板の一方のマークから板面に対し垂直方向に延びる線が交叉する位置に点位置を示すマークと、前記所定距離離れた2点を結ぶ線と平行した方向に一次元の目盛を付すようにした非常に簡単な構造の器具を用いて、直感的に三角測量の原理を理解させることができる。すなわち、「視点から物体までの距離」を計測する三角測量を行なうためには、三角形の二角挟辺の情報が必要であるが、本発明の器具は、この二角挟辺の情報のうち、器具により、直角となる1角と挟辺の大きさはマーク間距離として決まっており、残る1角の大きさを目で読取ることで距離が測れる。
また本発明の透過式ステレオファインダは、上記構成に加え第2の透明板には第1の透明板の一方のマークから板面に対し垂直方向に延びる線が交叉する位置に付された点位置を中心とした同心円状の目盛を付すようにしたので、この簡単な構造の器具を用いて、直感的に、「2つの物体間の距離」測定の原理を理解させることができる。すなわち「2つの物体間の距離」は、二辺挟角の情報が必要であるところ、2辺については先の手法で、2つの物体について「視点から物体までの距離」を計測し、続いてこの同心円状の目盛を用いて2つの物体間の挟角を計測できる。この情報に基づいて、余弦定理を用いることで、「2つの物体間の距離」を算出できる。
更に、本発明の透過式ステレオファインダは、前記装置に加え第1の透明板の一方のマークの前面には1軸回転機構を備えたレーザポインタを、他方のマークの前面には2軸回転機構を備えたレーザポインタを配置するようにしたので、人の目で目標物を捉えるのではなく、レーザビームとそのスポットを利用するものであるから、使用者の目の負担を軽減できると共に、空間にできる三角形を視覚的に捉えることができ、しかも複数の人で測定状況を共有観察することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明が提示する透過式ステレオレンジファインダの実施形態を図1を参照しながら説明する。基本構成部材としては平行に配置された2枚の透明板とそれらを連結する支持部材であるが、この器具は使用の過程で位置姿勢を固定することが必要であるため、精度よく測距するには3脚等に固定することが望ましく、固定するための構造上の部分もあった方がよい。ここに示すものは2枚の長尺形状の透明板a,bと2本の支持棒cとで構成されている。透明板a,bは共にアクリル樹脂またはガラス材で、第1の透明板aには所定距離Lだけ離れた2点に位置を示す例えば十字線のようなマーク1,3が施され、第2の透明板bには前記第1の透明板aの一方のマーク1から板面に対し垂直方向に延びる線が交叉する位置に点位置を示す例えば十字線のようなマーク2と、前記マーク1とマーク3を結ぶ線と平行した方向に一次元の目盛4を付すようにした。また第2の透明板bに付された点位置マーク2を中心とした同心円状の目盛5を付すようにしたが、この同心円状の目盛5はマーク1とマーク2を結ぶ線の方向を基準としたマーク1からの角度に対応したものとなる。これらのマークと目盛の物理的意義についてはその使用法と共に詳しく後述する。
【0009】
上記の透過式ステレオレンジファインダを用いて視点(マーク1)から物体までの距離を計測する方法について説明する。提案器具では、「視点から物体Aまでの距離計測」を行なうことができる。これは、器具を用いることで、空間に仮想的な三角形を構成して、三角測量を行なうものであって、この器具により、空間中の仮想三角形の二角挟辺がわかる。初めに「器具の位置決め」を行う。この操作は、距離を測りたい物体Aが、マーク1と2が重なるように器具や(観測者の)目の位置調整を行なう。すなわち、目をマーク1の近傍に持っていきマーク1とマーク2の延長線上に物体Aを捉えるように器具の姿勢を決めるのである。これにより、器具が張る三角形が乗る平面と、1辺(マーク1とマーク3を結んだ長さLの直線)が固定される。この「器具の位置決め」を行なった後、器具の位置・姿勢を変えてはならない。(図2A参照)
続いて、この「器具の位置決め」状態の下で「距離の読取り」を行なう。まず、目の位置をマーク3の近傍に移し、その目の位置から改めて物体Aを捉える。視角が決まったら、そのとき、マーク3と物体Aが重なる目盛4の値を読取る。目盛4は基本的には二辺の狭角に対応するが、三角形の1辺の長さがL、そして1角が直角と決まったこの器具においてこの角度はマーク1と物体Aとの距離と一義的に対応するものである。そこで本発明の望ましい態様では、予め、この目盛4は目標である物体Aをマーク1から望む視角とマーク3から望む視角との狭角とマーク1とマーク3の距離(L)から計算した、視点(マーク1)から物体Aまでの距離値が振られている。この構成を採用したことにより読みとった目盛4の値で直接距離を知ることができるようになっている。
【0010】
次に本発明に係る透過式ステレオレンジファインダを用いて、物体AとBの間の距離を計測する方法について説明する。単に遠隔物体までの距離を測定できるだけでなく、2つの遠隔物体間の距離を測定できるという点が先に非特許文献1として紹介した光学式距離計と基本的に異なるところである。これは、物体Aと物体Bそして視点を頂点とする空間中の仮想三角形の二辺挟角を用いるものである。すなわち、本発明に係る器具を用いて前述の方法によって求まる視点と物体Aまでの測定と、同じく視点から物体Bまでの距離を求めると共に、視点から物体Aを望む視角と同じ視点から物体Bを望む視角のなす角度である二辺挟角の値から、余弦定理を利用して割り出すものである。
【0011】
具体的に手順に沿って説明すると、第1のステップで前述の「視点から物体Aまでの距離計測」を行い、その距離を求める。ステップ2では、この器具の位置・姿勢を保った状態で、「角度の読取り」の操作を行なう。この操作は、まず、マーク1と物体Aとを重ねていた目の位置からマーク1と物体Bが重なるように目の位置を移動させる。目の位置が決まったら、物体Bと重なる目盛5の角度(目盛の値)を読取る。前述したようにこの目盛5はマーク1とマーク2を結ぶ線を基準としてマーク1の点からの角度が同心円状に付されているので、この読みとった目盛の値はマーク1と物体Aとを結ぶ辺とマーク1と物体Bとを結ぶ辺とのなす狭角となる。(図2B参照) ステップ3では、マーク1の位置を変えないようにしながら、マーク1とマーク2の延長線上に物体Bを捉えるように器具の向きを調整する。ステップ4では先の「視点から物体Aまでの距離計測」の要領で、物体Bまでの距離を計測する。(図3A参照) マーク1から物体Aまでの辺の距離、マーク1から物体Bまでの辺の距離、そしてマーク1と物体Aとを結ぶ辺とマーク1と物体Bとを結ぶ辺とのなす狭角を得たところで本発明に係る透過式ステレオレンジファインダを用いた計測を終了する。ステップ5では余弦定理を用いて、物体ABの距離を(紙上で)計算する。図3Bにおいて、マーク1から物体Aまでの辺の距離はX、マーク1から物体Bまでの辺の距離はY、そしてマーク1と物体Aとを結ぶ辺とマーク1と物体Bとを結ぶ辺とのなす狭角はθで示される。物体Aと物体Bとの距離Zは余弦定理から、
Z=(X+Y−2XYcosθ)1/2 ‥‥‥‥‥‥‥(1)
の計算式で求めることができる。
【0012】
本発明に係る透過式ステレオレンジファインダを用い、このようにして遠隔した2点間の距離を求めるのであるが、この手順のステップ3において本来的には、マーク1の空間位置を変えてはならない。物体Aからの距離Xと物体Bからの距離Yは同じ視点からの距離として決めているのであるからマーク1がステップ3の動作において位置ずれを生じるとその分が誤差となるからである。しかし、本発明に係る器具をマーク1の位置を動かさずに姿勢を変える作業は容易ではないが、物体Bまでの距離Yに比べて、マーク1の移動量は十分小さいと見なせるので、実際にはその影響は微小である。三角測量では、辺の計測誤差の影響は小さいが、角度の計測誤差の影響は非常に大きくなる。本発明に係る透過式ステレオレンジファインダは、これを用いた「物体AとBの間の距離計測」の原理上許容される辺の計測誤差を認めるが、影響の大きい角度の計測誤差が起こり難い構造に作られている。
【0013】
次に目盛4の値の計算法について説明する。図4Aにおいて、本発明に係る透過式ステレオレンジファインダと物体Aとで作る仮想三角形は物体Aとマーク1そしてマーク3とが各頂点となるものである。一方の透明板aと他方の透明板bとは距離hの平行配置の関係で作られているから、今一方の透明板aのマーク3から板面に対し垂直線を引き出し他方の透明板bと交叉する点を4として目盛4の原点とすると、三角形A13と三角形344はそれぞれ相似の関係となる。従って、原点4から目盛4までの距離をdで表すと、X:L=h:dの関係にあり、目盛4の値はXを示すものとしたいので、
X=hL/d ‥‥‥‥‥‥‥(2)
この場合dの位置の目盛には、上記(2)式に基づきXすなわちhL/dの値を書き込む。このようにして他方の透明板b上には適当間隔のX値を、4点を原点として該当するdの位置に目盛り線と共に書き込むようにする。
【0014】
続いて、目盛5の値の計算法について説明する。本発明において目盛5の値はマーク1と物体Aとを結ぶ辺とマーク1と物体Bとを結ぶ辺とのなす狭角θを測定するものである。角度を表示するものであるから目標物体までの距離情報は必要とされない。図4Bにおいて、マーク1とマーク2との結ぶ線を基準とした角度情報が目盛として付される。すなわち、一方の透明板aと他方の透明板bとの距離hとマーク2からの距離rで決まる値となる。関係式は
θ=arctan(h/r) ‥‥‥‥‥‥‥(3)
となり、適当間隔のθ角値をマーク2を原点として該当するrの位置に目盛り線と共に書き込むようにする。ただし、マーク1とマーク2の延長線上に物体Aを捉えた器具の位置・姿勢において物体Bがどの方向に存在するかは様々なのでこの目盛5はマーク2を中心とした同心円状に付すようにしてある。
【0015】
[試作品を用いた実験結果] 試作品を用いた実験結果を紹介する。この試作品は図5Aに示したもので、2枚の透明アクリル定規板(36[cm])を3本の寸切ボルト(長ねじ)で、31[cm]間隔で固定したものである。マーク1と3の間隔(基線長)は、28[cm]としてある。目盛4は、定規の目盛をそのまま用い視差dを読み取るようにした。また、目盛5は本来的に同心円角度目盛であるが、この試作品では定義の目盛をそのまま使用して代用するものとした。目標物体を捉えたならば、器具の位置・姿勢を保持する必要から、本試作品は中央のボルトに支持部材を固着し、図5Bに示すようにカメラ用の三脚に取り付けた。読み取った目盛4の視差dを式(2)に代入してX=(28×31)/dなる計算を実施して、物体までの距離X[cm]が計算できる。因みに目盛4の値と距離Xの関係は表1に示すようになる。
【表1】

次に目盛5の値と角度θの関係は上記の式(3)に基づき各r値に対応する計算したものを表2に示す。
【表2】

【0016】
実際にこの試作品を用いて測距を行い、視差4.3cmの値を読みとった。表1から換算値X=201.86cmという結果がでた。このときの測量地点から目標物体までの位置を実測したところ、その値は205.7cmであった。したがって、この測定誤差は3.84cmということになる。精度は、器具の大きさに関係するところであるが目盛の読みとりに起因する計測誤差の影響を考えると、1mm程度の読取り誤差を見込むと、その度差は表1にΔX[cm]で示したような誤差範囲となる。この器具は精度の良い計測装置として提示するものではなく、三角測量の原理を理解させる教材として提案するものであるが、それでも許容誤差は10cm以内とするのが適当であろう。とすれば、表1でd=3.0cm、X値289.33cmのところで、誤差幅が9.98となっていることから、この試作品では3m程度まではほぼ正しく計測できる器具として使用可能といえよう。
この試作品はL値36cmの2枚の透明アクリル定規板をh値31cm間隔で固定したものであるが、これをL値48cmと一回り大きくした第2の試作品で目盛4の値と距離Xの関係は表3に示すようになる。
【表3】

同じく、1mmの目盛読取り誤差を見込んだときの誤差範囲はΔXで示されている。許容誤差を10cm以内とすると、表3でd=3.9cm、X値381.54cmのところで、誤差幅が10.04となっていることから、この試作品では3.8m程度まではほぼ正しく計測できる器具として使用可能となる。このマーク1とマーク3との間隔であるL値及び/または2枚の透明板の距離h値を大きく採ることで測定精度が良くなるが、持ち運びや保管等の便との兼合いがある。
【0017】
本発明に係る器具は、物体の位置決め、目盛の読取りを人間の目を用いて行なうものであり、非常にシンプルな機構の器具で済むが、反面、1mm幅程度の小さな目盛を読み取るために近くを見ること、目標物体を見るために遠くを見ることが必要であり、近距離から遠距離まで、目でピントを合わせる必要があり、肉体的に多少のストレスが掛かる。特に視力の弱い方にはこの作業は負担が大きいと思われれる。ここでは、より使いやすくするための補助的なアイデアを提案する。
その補助的手法は人間の眼を用いる代わりにレーザポインタを用いるものである。レーザ光の直進性を生かして目標物を狙って捉える。2つのレーザポインタを提案器具に取付けて用いる。レーザポインタは、図6A及びBに示した回転機構を付加したものを用いる。図6Aのものは1軸回転機構6を備えたものであり、図6Bのものは2軸回転機構7を備えたものである。図7に外観を示すようにマーク1には図6Bに示した2軸回転機構7を備えたものを取り付け、マーク3には図6Aに示した1軸回転機構6を備えたものを取り付ける。前者は2つの物体間の距離を計測する場合にそれらの狭角を図るステップで2軸の駆動が必要となるためである。1軸の駆動は透明板aの平面に垂直な面での回転であり、双方のレーザポインタとも2軸の駆動は透明板aの平面での回転である。マーク1に取り付けられた後者のレーザポインタの1軸の駆動は後者と同じ透明板aの平面に垂直な面での回転である。このレーザポインタを用いることで、透明板bにはレーザスポットが当たるので目盛4の読取りは明視距離で読みとることができ、距離の読取りが行いやすくなる。また、レーザビームの光路は空気中の微粒物質に散乱されるチンダル現象によって、可視形態となるので実習生に空間中の三角形のイメージを連想しやすくする効果もある。また、この測定状況は器具の使用者だけでなく周りのものにも見て取れるため、教材としての付加価値があがる。なお、2つのレーザポインタにそれぞれレーザ光源を備えなくとも1つのレーザ光源をプリズムで分光することも可である。
【0018】
「器具の位置決め」は、左側のレーザポインタのスポットが物体Aに照射するように器具を調節することで行なえる。また、「距離の読取り」は、右側のレーザポインタのスポットを左側のレーザポインタのスポットが照射されている物体Aに重なるように角度調整する。そして、レーザビームと交差している目盛4の値を読取る。
また、物体へBのなす「角度の読取り」は、左側のレーザポインタのスポットが物体Aに照射するように器具を調節した状態で左側のレーザポインタのスポットを物体Bに合わせ、その際にレーザビームと交差している目盛5の値を読取ればよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明が提示する透過式ステレオレンジファインダの実施形態を示す図である。
【図2】Aは視点から物体までの距離の計測方法を説明する図で、Bは2つの物体を望む狭角の計測方法を説明する図である。
【図3】Aは第2の物体までの距離の計測方法を説明する図で、Bは2つの物体間の計測方法を説明する図である。
【図4】Aは目盛4の値の計算法を説明する図であり、Bは目盛5の値の計算法を説明する図である。
【図5】本発明に係る透過式ステレオレンジファインダの試作品を示した図である。
【図6】Aは1軸回転機構を備えたレーザポインタを示す図で、Bは2軸回転機構を備えたレーザポインタを示す図である。
【図7】レーザポインタを備えた本発明に係る透過式ステレオレンジファインダの形態を示す図である。
【図8】公知の光学式距離計を説明する図である。
【符号の説明】
【0020】
1,3 第1の透明板に付された点位置マーク
2 第2の透明板に付された点位置マーク
4 第2の透明板に付された一次元目盛
5 第2の透明板に付された点位置マークを中心とした同心円状の角度目盛
6 1軸回転機構付レーザポインタ 7 2軸回転機構付レーザポインタ
A,B 目標物体 a 第1の透明板
b 第2の透明板 c 支持棒
d 目盛4の距離値 r 目盛5の角度値
h 透明板間の距離 L 点1,3間の距離値
X,Y 物体までの距離 Z 2つの物体間の距離
θ 2物体を望む狭角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に固定された2枚の透明板であって、第1の透明板には所定距離離れた2点に位置を示すマークが施され、第2の透明板には前記第1の透明板の一方のマークから板面に対し垂直方向に延びる線が交叉する位置に点位置を示すマークと、前記所定距離離れた2点を結ぶ線と平行した方向に一次元の目盛が付されたものである透過式ステレオファインダ。
【請求項2】
第2の透明板には第1の透明板の一方のマークから板面に対し垂直方向に延びる線が交叉する位置に付された点位置を中心とした同心円状の目盛が付された請求項1に記載の透過式ステレオファインダ。
【請求項3】
第1の透明板の一方のマークの前面には1軸回転機構を備えたレーザポインタを、他方のマークの前面には2軸回転機構を備えたレーザポインタを配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の透過式ステレオファインダ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の透過式ステレオファインダを用い、第1の透明板の位置マークと第2の透明板の位置マークとが重なる垂直線の延長視線上に目標物体を捉えるステップと、その姿勢で該器具を固定するステップと、該1の透明板の他方の位置マークから前記目標物体を視線上に狙うステップと、その際の目標物体に重なる第2の透明板の一次元の目盛を読みとるステップとを踏み、該読みとった目盛から測定値を得る視点と物体間の距離を計測する方法。
【請求項5】
請求項4に記載の視点と物体間の距離を計測する方法で得た2つの物体と視点との距離情報と、第1の透明板の位置マークと第2の透明板の位置マークとが重なる垂直線の延長視線上に一方の目標物体を捉えた器具の姿勢を保ちつつ同じ視点から他方の物体を捉えたとき、該物体に重なる第2の透明板の同心円状の目盛から読みとった角度情報とを用い、余弦定理に基づいて2物体間の距離を計測する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−65481(P2007−65481A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253681(P2005−253681)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【Fターム(参考)】