説明

透過性の異なるカーカス補強ワイヤを有するタイヤ

本発明は、金属補強要素(7a)の少なくとも1つの層から成る半径方向カーカス補強材(2)を有するタイヤであって、タイヤは、トレッドで半径方向に覆われた頂部補強材(5)を有し、トレッドは、2つのサイドウォールを経て2つのビードに接合されているタイヤに関する。本発明によれば、カーカス補強材の少なくとも1つの層の金属補強要素のうちの少なくとも70%は、いわゆる透過試験において2cm/分未満の流量を示す非たが掛けケーブルであり、カーカス補強材の少なくとも1つの層の金属補強要素のうちの少なくとも10%は、透過試験において4cm/分を超える流量を示すケーブルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半径方向カーカス補強材を備えたタイヤ、特に、重量物を運搬し、持続速度で駆ける車両、例えばローリ、トラクタ、トレーラ又はロード(路面)バスに取り付けられるようになったタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、重車両用タイヤ形式のタイヤでは、カーカス補強材は、ビードの領域で両側が繋留され、半径方向上側には、互いに重ね合わされた少なくとも2つの層から成るクラウン補強材が設けられ、これら層は、各層内で互いに平行であり、1つの層と次の層との間でクロス掛け関係をなし、周方向と10°〜45°の角度をなす細線又はケーブルで形成されている。さらに、実働補強材を形成する実働層は、補強要素で構成された少なくとも1つのいわゆる保護層で覆われるのが良く、これら補強要素は、有利には、金属であり且つ伸長性であり、弾性補強要素と呼ばれている。保護層は、周方向と45°〜90°の角度をなす伸長性の低い金属細線又はテーブルの層を更に含む場合があり、三角形構造形成(triangulation )プライと呼ばれるこのプライは、カーカス補強材と絶対値で言ってせいぜい45°の角度をなして互いに平行な細線又はケーブルで作られた実働プライと呼ばれる第1のクラウンプライとの間に半径方向に位置する。三角形構造形成プライは、少なくとも実働プライと一緒になって三角形構造形成補強材を形成し、この三角形構造形成補強材は、これが受ける種々の応力下において、生じる変形量が僅かであり、三角形構造形成補強プライの本質的な役割は、タイヤのクラウンの領域中の補強要素の全てが受ける横方向圧縮荷重を吸収することにある。
【0003】
「重」車両用のタイヤの場合、通常、単一の保護層が存在し、その保護要素は、大抵の場合、同一方向に且つ半径方向最も外側の、それ故に半径方向に隣接した実働層の補強要素の角度と絶対値で言って同一の角度で差し向けられている。かなりでこぼこの路面上を走行するようになった建設機械用のタイヤの場合、2枚の保護プライが存在することは、有利であり、補強要素は、1つの層と次の層との間でクロス掛け関係にあり、半径方向内側の保護層の補強要素は、この半径方向内側保護層に隣接して位置する半径方向外側の実働層の非伸長性補強要素とクロス掛け関係をなしている。
【0004】
タイヤの周方向又は長手方向は、タイヤの周囲の方向に一致すると共にタイヤの走行方向によって定められる方向である。
【0005】
タイヤの横方向又は軸方向は、タイヤの回転軸線に平行である。
【0006】
半径方向は、タイヤの回転軸線と交差し且つこれに垂直な方向である。
【0007】
タイヤの回転軸線は、タイヤが通常の使用中に回転する際の中心となる軸線である。
【0008】
半径方向平面又は子午線平面は、タイヤの回転軸線を含む平面である。
【0009】
周方向中間平面又は赤道面は、タイヤの回転軸線に垂直であり且つタイヤを2つの半部に区分する平面である。
【0010】
「ロード」タイヤと呼ばれている或る特定の現行のタイヤは、世界中で道路網が向上していると共に自動車専用道路網が広がっているので、高速で且つますます長距離にわたって走行するようになっている。タイヤが走行するための必要条件の全てにより、疑いもなく、走行距離数を増大させることができ、タイヤの摩耗が少なくなっているが、他方、タイヤの耐久性は、損なわれる。かかるタイヤに対して1回又はそれどころか2回の更生(リトレッド)作業を行なってタイヤの寿命を延ばすことができるようにするためには、かかる更生作業に耐えるのに十分な耐久性を持つ構造体、特にカーカス補強材を提供することが必要である。
【0011】
このようにして構成されたタイヤの特に過酷な条件下における長距離走行により、タイヤは、現に、これらタイヤの耐久性の面での限界に達する。
【0012】
カーカス補強材の構成要素は、特に、走行中、曲げ応力及び圧縮応力を受け、これら応力は、構成要素の耐久性に悪影響を及ぼす。カーカス層の補強要素を構成しているケーブルは、事実、タイヤが走行しているときに相当大きな応力、特に曲げ又は曲率の変化の繰り返しを受け、それにより細線のところに摩擦を伴う擦れが生じ、したがって摩耗及び疲労が生じるが、この現象は、「疲労‐フレッチング(fatigue-fretting)」と呼ばれている。
【0013】
タイヤのカーカス補強材を補強するこれら機能を実現させるため、ケーブルは、第1に、曲げの際に良好な可撓性及び高い耐久性を持たなければならず、このことは、特に、これらの細線が比較的小さな直径、好ましくは、0.28mm未満、より好ましくは0.25mm未満の直径を備えなければならず、一般に、タイヤのクラウン補強材のための従来型ケーブルで用いられている細線の直径よりも小さい直径を持たなければならないということを意味している。
【0014】
カーカス補強材のケーブルも又、ケーブルのそのまさに性状に起因して「疲労‐腐食(fatigue-corrosion )」という現象の作用を受け、かかる疲労腐食は、例えば酸素や水分のような腐食性作用物質の通過を促進し或いは、それどころか、これら作用物質を排出させる。具体的に説明すると、例えば切れ目に続く劣化の結果として又は単に、タイヤの内面の透過度(これは低いけれども)のためにタイヤに入り込んだ空気又は水は、ケーブルの構造そのものの結果としてケーブル内に形成されているチャネルに沿って運ばれる場合がある。
【0015】
一般に「疲労‐フレッチング‐腐食(fatigue-fretting-corrosion)」という包括的な用語でひとくくりされるこれら疲労現象の全ては、ケーブルの機械的性質の徐々に進行する劣化の原因であり、最も過酷な走行条件下において、これらケーブルの寿命に悪影響を及ぼす場合がある。
【0016】
カーカス補強材のこれらケーブルの耐久性を向上させるため、特に、タイヤのキャビティの内壁を形成するゴム層の厚さを増大させることが知られており、その目的は、かかるゴム層の透過度を最も良く制限することにある。この層は、通常、タイヤの気密性を高めるために一部がブチルで構成されている。この種の材料は、タイヤのコストを増大させるという欠点を持つ。
【0017】
また、特にゴムの侵入度を増大させ、かくしてケーブル内に形成されているチャネルを通る酸化剤の通過を制限し又はそれどころか阻止するようケーブルの構成を設計変更することが知られている。このようにして製造されたタイヤは、タイヤ製造中に現われる空気ポケットの問題を提起した。
【0018】
これは、種々の製造段階の結果として、閉じ込め状態の空気ポケットが生じるからである。空気を導くことができるチャネルを形成するような構造のケーブルで作られたカーカス補強材を有するタイヤの場合、これら空気ポケットは、空気が特にケーブル内に存在しているチャネルを通って材料中に拡散するので消失する。ゴムが非常に侵入しやすい構造を持つケーブルで作られたカーカス補強材を有するタイヤの場合、これら空気ポケットは、製造ステップ後においてもそのまま存在する。何が起こるかと言えば、これら空気ポケットがタイヤの硬化ステップ中に動くだけであり、これら空気ポケットは、低い圧力が加えられる領域に向かって移動する。空気の移動は、補強要素相互間に存在する通路を辿ってカーカス補強材に沿って起こり、ゴムコンパウンドの層は、補強要素を覆ってタイヤの硬化ステップ前に補強要素に平行な凹み領域を形成する補強要素を覆う。かくして、これら凹み領域により、空気ポケットが存在している領域に及ぼされる圧力に応じて空気が僅かに移動することができる。圧力又は圧力変化が特にタイヤの硬化ステップ中又はシェーピングステップ(これが行なわれる場合)中に生じる。
【0019】
これら空気ポケットの出現は、通常、これらの出現場所によっては許容できず、タイヤをスクラップにしなければならない場合がある。というのは、これら空気ポケットは、タイヤ内の弱体化領域になる場合があるからである。この場合、製造費は、貧弱な生産速度の結果として受け入れがたいものとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
かくして、本発明者は、特にタイヤインフレーションの面での走行条件とは無関係に且つタイヤの製造費が許容可能なままの状態で、耐摩耗性が路上使用向きに維持され、特に、耐久性が特に「疲労‐腐食」又は「疲労‐フレッチング‐腐食」現象に関して向上した「重量物運搬」型の重車両用タイヤを提供するという仕事に取り組んだ。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的は、本発明によれば、金属補強要素の少なくとも1つの層で構成された半径方向カーカス補強材を有するタイヤであって、タイヤは、それ自体トレッドで半径方向に覆われたクラウン補強材を有し、トレッドは、2つのサイドウォールを経て2つのビードに連結されている、タイヤにおいて、カーカス補強材の少なくとも1つの層の金属補強要素のうちの少なくとも70%は、エアウィッキング試験と呼ばれている試験において2cm3/分未満の流量を示す非たが掛けケーブルであり、カーカス補強材の少なくとも1つの層の金属補強要素のうちの少なくとも10%は、エアウィッキング試験と呼ばれている試験において4cm3/分を超える流量を示すケーブルであることを特徴とするタイヤによって達成された。
【0022】
エアウィッキング(air-wicking )試験と呼ばれている試験は、所与の時間にわたり一定の圧力下で試験体を通過した空気の量を測定することによって試験対象のケーブルの長手方向における空気の透過度又は通気度を求めるために用いられる。当業者には周知であるかかる試験の原理は、ケーブルが空気に対して不透過性であるようにするためにケーブルの処理の有効性を実証することにある。この試験は、例えば、規格ASTM・D2692‐98に記載されている。
【0023】
この試験は、ケーブルが補強している加硫ゴムプライから引き剥がしにより直接取り出されたケーブル及びかくして硬化ゴムが侵入したケーブルに対して行われる。
【0024】
試験をこの場合以下の仕方で包囲ゴムコンパウンド(又は被覆ゴム)で被覆された長さ2cmのケーブル片について実施し、1バールの圧力下で空気をケーブルの入口に注入し、流量計を用いてこれから出る空気の量を測定する(例えば、0〜500cm3/分まで較正する)。測定中、ケーブル試験体をケーブルの長手方向軸線に沿って一端から他端までケーブルを通過した空気の量だけが測定されるよう圧縮シール(例えば、高密度フォーム又はゴムシール)中に不動化する。中実ゴム試験体を用いて、即ち、ケーブルなしのゴム試験体を用いて、シール自体により提供される密封度を、事前チェックする。
【0025】
測定された平均空気流量(10個の試験体に関する平均値)は、ケーブルの長手方向不透過性が高ければ高いほど、それだけ一層低い。測定値は±0.2cm3/分という精度で行われるので、0.2cm3/分以下の測定値は、ゼロと見なされ、これら測定値は、ケーブルの軸線に沿って(即ち、ケーブルの長手方向に沿って)完全に気密であるといえるケーブルに対応している。
【0026】
このエアウィッキング試験は、ゴムコンパウンドによるケーブル侵入度を間接的に測定する簡単な手段にもなる。測定流量は、ゴムによるケーブル侵入度が高ければ高いほど、それだけ一層低くなる。
【0027】
エアウィッキング試験と呼ばれる試験において2cm3/分未満の流量を示すケーブルは、90%を超える侵入度を有する。
【0028】
エアウィッキング試験と呼ばれる試験において20cm3/分未満の流量を示すケーブルは、66%を超える侵入度を有する。
【0029】
ケーブルの侵入度は又、以下に説明する方法を用いて推定できる。層状ケーブルの場合、この方法では、先ず最初に、2〜4cmの長さを持つ試験体の外側層を除去し、次に、長手方向に沿い且つ所与の軸線に沿って、ゴムコンパウンドの長さの和を試験体の長さで除算して得られる値を求める。これらゴムコンパウンド長さ測定では、この長手方向軸線に沿って侵入しなかった空間が除かれる。かかる測定は、試験体の周囲に沿って分布して位置する3本の長手方向軸線に沿って繰り返し実施されると共に5つのケーブルを試験体に対して繰り返し実施される。
【0030】
ケーブルが数個の層を有する場合、最初の除去ステップを最も外側の層となった層について繰り返し、ゴムコンパウンドの長さを長手方向軸線に沿って測定する。
【0031】
次に、ケーブルの侵入度を求めるために、このようにして求められたゴムコンパウンド長さと試験体長さの比の全ての平均を計算する。
【0032】
本発明者の実証したところによれば、本発明に従ってこのように製造されたタイヤにより、耐久性と製造費の妥協点の観点において非常に有利な向上が得られる。特に、かかるタイヤの耐久性は、上述した解決策の場合と同等である。エアウィッキング試験と呼ばれる試験において2cm3/分未満の流量を示すカーカス補強材に少なくとも70%のケーブルが存在することにより、腐食と関連した危険性を制限することができる。さらに、エアウィッキング試験と呼ばれる試験において4cm3/分を超える流量を示すカーカス補強材に少なくとも70%のケーブルが存在することにより、タイヤの製造中に閉じ込められた空気を排出することができ、したがって、その結果、上述の生産性よりも高い生産性が得られ、したがって有利なコストとなる。本発明者は、エアウィッキング試験と呼ばれる試験において4cm3/分を超える流量を示す10〜30%に相当する本数のケーブルがカーカス補強材層中に存在することにより、空気ポケットが形成されるやいなや或いは空気ポケットが上述したようにタイヤの製造段階中にカーカス補強材層の補強要素に平行な方向に沿って移動し始める際に閉じ込め状態の空気が「ドレン」することができるようにするということを実証した。実施した試験により確認されたこととして、エアウィッキング試験と呼ばれている試験において2cm3/分未満の流量を示すケーブルと比較して、これら比率のかかるケーブルで得られた結果は、エアウィッキング試験と呼ばれている試験において2cm3/分未満の流量を示すだけを含むカーカス補強材層で得られた結果とは共通性が殆どがない。具体的に言えば、少なくとも1%のかかるケーブルが設けたことにより、上述のように製造されたタイヤのうちで不合格になったものは事実上なく、したがって製造単価を許容可能な値まで下げることができるからである。
【0033】
補強要素の幾つかの層を有するカーカス補強材の場合、これら層の各々は、本発明による層であるのが良い。有利には、少なくとも半径方向外側層は、エアウィッキング試験と呼ばれている試験において2cm3/分未満の流量を示す少なくとも70%の非たが掛け金属ケーブル及びエアウィッキング試験と呼ばれている試験において4cm3/分を超える流量を示す少なくとも10%の好ましくは非たが掛け状態のケーブルを含む。この選択は、タイヤの製造中に生じる空気ポケットの全てを排出するようにする上で特に有利であり、これら空気ポケットは、本質的に、タイヤの製造中、カーカス補強材の軸方向及び/又は半径方向外面上に現れる。
【0034】
本発明の有利な一実施形態によれば、カーカス補強材の少なくとも1つの層の金属補強要素の少なくとも70%は、少なくとも2つの層を有するケーブルであり、少なくとも、1つの内側層は、ポリマーコンパウンド、例えば好ましくは少なくとも1種類のジエンエラストマーを主成分とする架橋可能な又は架橋済みのゴムコンパウンドから成る層で外装されている。
【0035】
本発明は又、金属補強要素の少なくとも1つの層で構成された半径方向カーカス補強材を有するタイヤであって、タイヤは、それ自体トレッドで半径方向に覆われたクラウン補強材を有し、トレッドは、2つのサイドウォールを経て2つのビードに連結されている、タイヤにおいて、カーカス補強材の少なくとも1つの層の金属補強要素のうちの少なくとも70%は、少なくとも2つの層を備えた非たが掛けケーブルであり、少なくとも1つの内側層は、好ましくは少なくとも1種類のジエンエラストマーを主成分とするポリマーコンパウンド、例えば架橋可能な又は架橋済みのゴムコンパウンドから成る層によって外装され、カーカス補強材の少なくとも1つの層の金属補強要素のうちの少なくとも10%は、エアウィッキング試験と呼ばれている試験において4cm3/分を超える流量を示すケーブルであることを特徴とするタイヤを提供する。
【0036】
「少なくとも1種類のジエンエラストマーを主成分とするコンパウンド(又は組成物)」という表現は、公知のように、かかるコンパウンドが主としてこのジエンエラストマー又はこれらのジエンエラストマーを含んでいる(即ち、質量フラクション(分率)が50%を超える)ということを意味する。
【0037】
本発明によるシースは、有利にはほぼ円形の断面を有する連続スリーブを形成するようシーズが覆っている層の周りに連続的に延びている(即ち、このシースは、ケーブルの半径方向に垂直なケーブルの「オルトラジアル(orthoradial)」方向に連続している)ことに注目されよう。
【0038】
また、このシースのゴムコンパウンドは架橋可能であり又は架橋済みであり、即ち、かかるゴムコンパウンドは、定義上、適当な架橋系であり、かくして、これが硬化を生じている状態で(即ち、これが硬化するが、溶融しない状態で)ゴムコンパウンドが架橋可能であることに注目されよう。かくして、このゴムコンパウンドを「非溶融性」と呼ぶことができる。というのは、このゴムコンパウンドをどのような温度に加熱してもかかるゴムコンパウンドを溶融することができないからである。
【0039】
「ジエン」エラストマー又はゴムという用語は、公知のように、少なくとも一部がジエンモノマー(共役であるか否かを問わず、2つの炭素‐炭素2重結合を備えたモノマー)から得られるエラストマー(即ち、ホモポリマー又はコポリマー)を意味する。
【0040】
ジエンエラストマーは、公知のように、2つのカテゴリ、即ち、「本質的に飽和していない」ジエンエラストマーと呼ばれるカテゴリ及び「本質的に飽和している」ジエンエラストマーと呼ばれるカテゴリに分類可能である。一般に、「本質的に飽和していない」ジエンエラストマーとは、本明細書では、少なくとも一部が15%(モル%)より高いレベルのジエンオリジンのブロック又はユニット(共役ジエン)を有する共役ジエンモノマーに由来するジエンエラストマーを意味する。かくして、例えば、ブチルゴム又はジエン及びEPDM型のα‐オレフィンのコポリマーのようなジエンエラストマーは、前述の定義には含まれず、特に、「本質的に飽和している」ジエンエラストマー(ジエンオリジンのブロックのレベルが低く又は非常に低く、常に15%未満のジエンエラストマー)と呼ばれる場合がある。「本質的に飽和していない」ジエンエラストマーのカテゴリ内において、「高度に飽和していない」ジエンエラストマーとは、特に、50%よりも高いレベルのジエンオリジンのブロック(共役ジエン)を有するジエンエラストマーを意味する。
【0041】
上記のように定義を与えた状態で、本発明のケーブルに使用できるジエンエラストマーは特に、次に記載する内容を意味するものと理解される。
(a)4〜12個の炭素原子をもつ共役ジエンモノマーを重合させることによって得られる任意のホモポリマー
(b)1種類又は2種類以上の共役ジエンを互いに共重合させることにより、或いは11種類又は2種類以上の共役ジエンを、8〜20個の炭素原子をもつ1種類又は2種類以上の芳香族ビニル化合物と共重合させることによって得られる任意のコポリマー
(c)エチレン及び3〜6個の炭素原子をもつα‐オレフィンを、6〜12個の炭素原子をもつ非共役ジエンモノマーと共重合させることにより得られる三元コポリマー、例えばエチレン又はプロピレンを上記種類の非共役ジエンモノマー、例えば1,4‐ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン及びジクロペンタジエンと共重合させることによって得られるエラストマー
(d)イソブテン及びイソプレンコポリマー(ブチルゴム)及びこの種のコポリマーのハロゲン化物、特に塩素化物又は臭化物
【0042】
本発明は、任意種類のジエンエラストマーに利用できるが、本発明は、主として、本質的に不飽和状態のジエンエラストマー、特に上記種類(a)又は(b)のジエンエラストマーを用いて具体化される。
【0043】
かくして、ジエンエラストマーは、好ましくは、ポリブタジエン(BR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、種々のブタジエンコポリマー、種々のイソプレンコポリマー及びこれらのエラストマーの配合物から成る群から選択される。より好ましくは、かかるコポリマーは、スチレン‐ブタジエンコポリマー(SBR)、ブタジエン‐イソプレンコポリマー(BIR)、スチレン‐イソプレンコポリマー(SIR)及びスチレン‐ブタジエン‐イソプレンコポリマー(SBIR)から成る群から選択される。
【0044】
これ又好ましくは、本発明によれば、選択されるジエンエラストマーは、主として(即ち、50phr超える)、イソプレンエラストマーから成る。「イソプレンエラストマー」という用語は、公知のように、イソプレンホモポリマー又はコポリマーを意味し、換言すると、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、種々のイソプレンコポリマー及びこれらエラストマーの配合物から成る群から選択されるジエンエラストマーを意味する。
【0045】
本発明の有利な実施形態によれば、選択されるジエンエラストマーは、もっぱら(即ち、100phrに関し)、天然ゴム、合成ポリイソプレン又はこれらエラストマーの配合物から成り、合成ポリイソプレンは、好ましくは90%を超え、より好ましくは98%を超える含有量(単位は、モル%)の1,4‐シス結合を有する。
【0046】
本発明の特定の一実施形態によれば、この天然ゴム及び/又はこれらの合成ポリイソプレンと、他の高度不飽和状態ジエンエラストマー、特に上述したようなSBR又はBRエラストマーとのカット(配合物)を使用することが可能である。
【0047】
本発明のケーブルのゴムシースは、1種類又は2種類以上のジエンエラストマーを含むことかでき、かかるジエンエラストマーをジエン系のエラストマー以外の任意種類の合成エラストマー又はエラストマー以外のポリマー、例えば熱可塑性ポリマーと組み合わせて用いることが可能であり、エラストマー以外のこれらポリマーは少数ポリマーとして存在する。
【0048】
シースのゴムコンパウンドにはどのようなプラストマーも含まれておらず、かかるシースのゴムコンパウンドは、ポリマーベースとして1種類のジエンエラストマー(又はジエンエラストマーの配合物)しか含まないことが好ましいが、かかるコンパウンドは、エラストマーの質量フラクションxeよりも少ない質量フラクションxpの少なくとも1種類のプラストマーを更に含有しても良い。かかる場合、好ましくは次の関係式、即ち0<xp<0.5xeが適用され、より好ましくは、次の関係式、即ち0<xp<0.1xeが適用される。
【0049】
好ましくは、ゴムシースの架橋系は、加硫系と呼ばれる系であり、即ち、硫黄(又は硫黄供与体)及び第一加硫促進剤を主成分とする系である。この主成分としての加硫系には、種々の公知の第二促進剤又は加硫活性剤を添加できる。硫黄は、0.5〜10phr、より好ましくは1〜8phrの好ましい量で使用され、第一加硫促進剤、例えば、スルフォンアミドは、0.5〜10phr、より好ましくは0.5〜5.0phrの好ましい量で使用される。
【0050】
本発明によるシースのゴムコンパウンドは、上記架橋系に加え、タイヤ用ゴムコンパウンドに使用できる全ての通常成分、例えば、カーボンブラックを主成分とする補強充填剤及び/又は無機補強充填剤、例えば、シリカ、アンチエージング剤(例えば老化防止剤)、エキステンダー油、可塑剤又は未硬化状態のコンパウンドを加工しやすくする加工助剤、メチレン受容体、メチレン供与体、樹脂、ビスマレイミド、「RFS」(レゾルシノール‐ホルムアルデヒド‐シリカ)形式の公知の接着促進剤系又は金属塩、特にコバルト塩を含む。
【0051】
好ましくは、ゴムシースのコンパウンドは、架橋状態では、ASTM・D・412(1998)規格に従って測定して20MPa未満、より好ましくは12MPa未満、特に4〜11MPaの10%伸び率における割線伸びモジュラス(M10と呼ばれる)を有する。
【0052】
好ましくは、このシースのコンパウンドは、本発明によるケーブルが補強用のものである場合のゴムマトリックスに使用されるコンパウンドと同一のものが選択される。かくして、シース及びゴムマトリックスのそれぞれの材料間に不適合性の問題は生じない。
【0053】
好ましくは、上記コンパウンドは、天然ゴムを主成分としており、かかるコンパウンドは、補強充填剤としてカーボンブラック、例えばASTM300、500又は700等級(例えばN326,N330、N347、N375、N683、N772)のカーボンブラックを含む。
【0054】
本発明の変形例によれば、エアウィッキング試験と呼ばれる試験において2cm3/分未満の流量を示すカーカス補強材の少なくとも1つの層の少なくとも70%のケーブルは、[L+M]又は[L+M+N]構造の層状金属ケーブルであり、層状金属ケーブルは、直径d1のL(Lは、1〜4である)本の細線を有する第1の層C1をピッチp2で螺旋の状態に互いに巻かれた直径d2のM(Mは、3〜12である)本の細線を有する少なくとも1つの中間層C2で包囲したものであり、層C2は、オプションとして、ピッチp3で螺旋の状態に互いに巻かれた直径d3のN(Nは、8〜20である)本の細線の外側層C3によって包囲され、少なくとも1種類のジエンエラストマーを主成分とする架橋可能な又は架橋済みゴムコンパウンドから成るシースが、[L+M]構造では、第1の層C1を覆い、[L+M+N]構造では、少なくとも中間層C2を覆う。
【0055】
好ましくは、第1の層又は内側層(C1)の細線の直径は、0.10〜0.5mmであり、外側層(C2,C3)の細線の直径は、0.10〜0.5mmである。
【0056】
これ又好ましくは、外側層(C3)の細線が巻かれている螺旋のピッチは、8〜25mmである。
【0057】
本発明の意味の範囲内において、ピッチは、ケーブルの軸線に平行に測定された長さを表し、ケーブルの端のところでは、このピッチを持つ細線は、ケーブルの軸線回りに丸一回転し、かくして、軸線がこの軸線に垂直であり且つケーブルの構成層の細線のピッチに等しい長さだけ隔てられた2つの平面によって区分された場合、これら2つの平面内に位置するこの細線の軸線は、問題の細線の層に相当する2つの円の両方の上に同一の位置を有する。
【0058】
有利には、ケーブルは、次の特徴のうちの1つ、より好ましくは全てを有する。
‐層C3は飽和層であり、即ち、この層中には、少なくとも直径d3の第(N+1)番目の細線をこれに追加するには不十分なスペースが存在し、この場合、Nは、層C2の回りに層として巻回できる細線の最大本数を表す。
‐ゴムシースは更に、内側層C1を覆うと共に/或いは中間層C2の対ごとの隣り合う細線を互いに隔てる。
‐ゴムシースは、事実上、このゴムシースがこの層C3の対ごとの隣り合う細線を互いに隔てるよう層C3の各細線の半径方向内方の周囲半分を覆う。
【0059】
本発明のL+M+N構造では、中間層C2は、好ましくは、6本又は7本の細線を有し、この場合、本発明によるケーブルは下記の好ましい特徴を有している(d1、d2、d3、p2、p3の単位は、mmである)。
(i) 0.10<d1<0.28
(ii) 0.10<d2<0.25
(iii)0.10<d3<0.25
(iv) M=6又はM=7
(v) 5π(d1+d2)<p2≦p3<5π(d1+2d2+d3
(vi) 層C2,C3の細線は、同一の撚り方向(S/S又はZ/Z)に巻かれている。
【0060】
好ましくは、特徴(v)は、p2=p3であるようなものであり、従って、このケーブルは、更に特性(vi)(層C2及びC3の細線が同一方向に巻かれている)を考慮すると、「コンパクト」であると言える。
【0061】
特徴(vi)によれば、層C2及びC3の全ての細線は、同一撚り方向、即ち、S方向(S/S構造)又はZ方向(Z/Z構造)のいずれかの方向に巻かれる。層C2及びC3を同一方向に巻くと、本発明によるケーブルにおいて、これらの2つの層C2及びC3間の摩擦を最小にでき、従ってこれらの層を構成する細線の摩耗を最小限に抑えることができる(というのは、もはや細線間にクロス掛け接触が存在しないからである)。
【0062】
好ましくは、エアウィッキング試験と呼ばれている試験において2cm3/分未満の流量を示すカーカス補強材の少なくとも1つの層の少なくとも70%のケーブルは、1+M+N構造の層状ケーブルであり、このことは、その内側層C1は、単一細線から成ることを意味している。
【0063】
この場合も又、有利には、比(d1/d2)が、次式のように、層C2中の細線の本数M(6又は7)に従って所与の限度内に設定される。
〔数1〕
M=6の場合、0.9<(d1/d2)<1.3
M=7の場合、1.3<(d1/d2)<1.6
【0064】
小さすぎる比の値は、内側層と層C2の細線との間の摩耗に関して不利な場合がある。比の値が大きすぎると、これは、最終的な強度レベルがほとんど変更されない場合、ケーブルのコンパクトさを損なう場合があり、しかもその柔軟性を損なう場合がある。直径d1が大きすぎることによる内側層C1の剛性の増大は、ケーブリング作業中のケーブルの実現容易性そのものにとって不利な場合がある。
【0065】
層C2及びC3の細線は、同一の直径を有しても良く、或いは、直径は、一方の層と他方の層とで異なっていても良い。特にケーブリングプロセスを単純化すると共にコストを削減するためには、同一直径(d2=d3)の細線を使用することが好ましい。
【0066】
層C2に単一飽和層C3として巻き付けることができる細線の最大本数Nmaxは、当然のことながら、多くのパラメータ(内側層の直径d2、層C2の細線の本数M及び直径d2、層C3の細線の直径d3)で決まる。
【0067】
エアウィッキング試験と呼ばれている試験において2cm3/分未満の流量を示すカーカス補強材の少なくとも1つの層の少なくとも70%は、好ましくは、1+6+10、1+6+11、1+6+12、1+7+11、1+7+12又は1+7+13構造のケーブルから選択される。
【0068】
一方においてケーブルの強度、実現容易性及び曲げ強度と他方においてゴム侵入度との良好な妥協点を見出すためには、層C2及びC3の細線の直径が0.12〜0.22mmの間にあることが好ましい(両者の直径が同一であるにせよそうでないにせよ、いずれにせよ)。
【0069】
かかる場合、次の関係式、即ち、
〔数2〕
0.14<d1<0.22
0.12<d2≦d3<0.20
5<p2≦p3<12(mmで表された小ピッチ)、又は変形例として
20<p2≦p3<30(mmで表された大ピッチ)
を満たすことがより好ましい。
【0070】
0.19mmよりも小さい直径は、ケーブルの曲率が大きく変化しているときに細線の受ける応力レベルを小さくするのに役立つ場合があり、他方、特に細線の強度及び工業的コストに鑑みて0.16mmよりも大きい直径を選択することが好ましい。
【0071】
有利な一実施形態では、例えば、有利には1+6+12構造のケーブルを使用し、p2及びp3を8〜12mmの間に選択するのが有利である。
【0072】
好ましくは、ゴムシースの平均厚さは、0.010mm〜0.040mmである。
【0073】
一般に、本発明に従ってエアウィッキング試験と呼ばれている試験において2cm3/分未満の流量を示すカーカス補強材の少なくとも1つの層の少なくとも70%のケーブルは、任意の種類の金属細線、特にスチール(鋼)細線、例えば炭素鋼細線及び/又はステンレス鋼細線で具体化できる。炭素鋼を使用することが好ましいが、当然のことながら、他のスチール又は他の合金を使用することが可能である。
【0074】
炭素鋼を用いる場合、その炭素含有量(スチールの重量を基準とした%)は、好ましくは、0.1%〜1.2%、特に0.4%〜1.0%である。これら含有量は、タイヤに必要な機械的性質と細線の実現可能性との良好な妥協点となっている。注目されるべきこととして、0.5%〜0.6%の炭素含有量は、最終的に、かかるスチールを安価にする。というのは、これらは、引き抜き加工が容易だからである。また、本発明の別の有利な実施形態では、意図した用途に応じて、特にコストが低く且つ引き抜き加工性が良好なので、低炭素含有量、例えば0.2%〜0.5%の炭素含有量のスチールを用いることができる。
【0075】
本発明に従ってエアウィッキング試験と呼ばれている試験において2cm3/分未満の流量を示すカーカス補強材の少なくとも1つの層の少なくとも70%のケーブルは、当業者に知られている種々の技術によって、例えば2つのステップで、即ち、第1に、押出ヘッドを用いてL+M中間構造又はコア(層C1+C2)を外装し、第2に、このステップの次にこのようにして外装された層C2周りにN本の残りの細線(層C3)をケーブリング又はツイスティングする最終作業によって得ることができる。実施される場合のある中間巻回作業及び巻出し作業中にゴムシースにより引き起こされる未硬化状態における結合の問題は、例えば中間プラスチックフィルムを用いることによって当業者には知られているやり方で解決可能である。
【0076】
本発明の実施形態の第1の変形形態によれば、エアウィッキング試験と呼ばれている試験において4cm3/分を超える流量を示すカーカス補強材の少なくとも10%のケーブルは、層状非外装ケーブルであり、このケーブルの外側層は、飽和している。
【0077】
本発明の意味の範囲内において、ケーブルの層は、ケーブルがこれを構成する細線上にポリマー配合物が存在していない状態でケーブルが製造された場合に、「外装されていない」又は「非外装」状態であると呼ばれる。この場合、ポリマー配合物は、タイヤ又はあらかじめ製作された要素、例えばケーブルによって補強されたポリマー配合物で構成されているプライの製造時までは存在することはない。
【0078】
本発明の意味の範囲内において、外側層は、この外側層中にN本の細線の直径に等しい少なくとも1本の「N+1」番目の細線の追加に足るほどの空間が存在しない場合、「飽和している」又は「完全である」と呼ばれる所与の直径のN本の細線の層である。
【0079】
本発明は又、金属補強要素の少なくとも1つの層で構成された半径方向カーカス補強材を有するタイヤであって、タイヤは、それ自体トレッドで半径方向に覆われたクラウン補強材を有し、トレッドは、2つのサイドウォールを経て2つのビードに連結されている、タイヤにおいて、カーカス補強材の少なくとも1つの層の金属補強要素のうちの少なくとも70%は、少なくとも2つの層を備えた非たが掛けケーブルであり、少なくとも1つの内側層は、好ましくは少なくとも1種類のジエンエラストマーを主成分とするポリマーコンパウンド、例えば架橋可能な又は架橋済みのゴムコンパウンドから成る層によって外装され、カーカス補強材の少なくとも1つの層の金属補強要素のうちの少なくとも10%は、層状非外装ケーブルであり、このケーブルの外側層は、飽和していることを特徴とするタイヤを提案する。
【0080】
カーカス補強材の上述の少なくとも1つの層の金属補強要素の少なくとも10%が、外側層が飽和している層状非外装ケーブルである場合、これらケーブルは、エアウィッキング試験と呼ばれる試験において、4cm3/分よりも著しく高く、好ましくは20cm3/分よりも高い流量を示す。かかるケーブルにより、空気及び水分は、タイヤの製造中及び特にキャビティから来る空気及び水分に関して使用中、拡散することができる。
【0081】
かかる補強要素は、有利には、カーカス補強材の上述の少なくとも1つの層の補強要素の15%未満を占める。「疲労‐フレッチング‐腐食」現象を受けやすいこれら補強要素は、多すぎるほどの量では存在してはならず、もしそうでなければ、これら補強要素は、タイヤの耐久性を劣化させることになり、このタイヤの耐久性は、エアウィッキング試験と呼ばれている試験において2cm3/分の流量を示すカーカス補強材の上述の1つの層の非たが掛けケーブルの少なくとも70%の存在によって決まる。
【0082】
本発明の実施形態の第2の変形形態によれば、エアウィッキング試験と呼ばれている試験において4cm3/分を超える流量を示すカーカス補強材の少なくとも10%のケーブルは、層状非外装ケーブルであり、このケーブルの外側層は、飽和していない。
【0083】
本発明の意味の範囲内において、外側層は、この外側層中にN本の細線の直径に等しい少なくとも1本の「N+1」番目の細線の追加に足るほどの空間が存在する場合、「飽和していない」又は「完全ではない」と呼ばれる所与の直径のN本の細線の層であり、N本の細線のうち数本は、場合によっては、互いに接触状態にある。
【0084】
本発明は、更に、金属補強要素の少なくとも1つの層で構成された半径方向カーカス補強材を有するタイヤであって、タイヤは、それ自体トレッドで半径方向に覆われたクラウン補強材を有し、トレッドは、2つのサイドウォールを経て2つのビードに連結されている、タイヤにおいて、カーカス補強材の少なくとも1つの層の金属補強要素のうちの少なくとも70%は、少なくとも2つの層を備えた非たが掛けケーブルであり、少なくとも1つの内側層は、好ましくは少なくとも1種類のジエンエラストマーを主成分とするポリマーコンパウンド、例えば架橋可能な又は架橋済みのゴムコンパウンドから成る層によって外装され、カーカス補強材の少なくとも1つの層の金属補強要素のうちの少なくとも10%は、層状非外装ケーブルであり、該ケーブルの外側層は、飽和していないことを特徴とするタイヤを提案する。
【0085】
カーカス補強材の上述の少なくとも1つの層の金属補強要素の少なくとも10%が、外側層が飽和していない層状非外装ケーブルである場合、これらケーブルは、エアウィッキング試験と呼ばれる試験において、好ましくは10cm3/分よりも低い流量を示す。かかるケーブルにより、空気及び水分は、特に硬化の最初における先のケーブルと同様、タイヤの製造中、拡散することができ、これらケーブルは、これらを包囲しているポリマー配合物によって依然として浸透されていない。タイヤの硬化段階中、包囲しているポリマーコンパウンドは、これらケーブルを浸透することができ、かくして、これらケーブルが硬化後に指定された値を取るまでエアウィッキング試験と呼ばれる試験においてこれらの流量を次第に減少させることができる。かくして、ポリマーコンパウンドが部分的に浸透したこれらケーブルは又、特にキャビティから来ている空気及び水分をタイヤの使用中、拡散させることがタイヤの使用中、引き続き拡散させることができる。
【0086】
かかる補強要素は、有利には、カーカス補強材の上述の少なくとも1つの層の補強要素の20%以上を占める。これら補強要素は、これらがタイヤの製造中、空気及び水分を除去することができるほど十分な量で存在する必要がある。加うるに、ケーブルの外側層の「非飽和」性状が高ければ高いほど、或いは、換言すると、ケーブルへのポリマーコンパウンドの浸透度が高ければ高いほど、これらの浸透度がそれだけ一層高くなると共にタイヤの製造中、かかる浸透がそれだけ一層迅速になり、その結果、製造中、空気及び水分の満足の行く拡散を保証するために補強要素の本数が多くなければならない。
【0087】
上述したように、実施形態の第2の変形形態としてのケーブルは、これらが「疲労‐フレッチング‐腐食」現象の影響を受けにくいという点で実施形態の第1の変形形態のケーブルと比較して利点を更に有する。
【0088】
本発明の実施形態の第3の変形形態によれば、エアウィッキング試験と呼ばれている試験において4cm3/分を超える流量を示すカーカス補強材の少なくとも10%のケーブルは、外側層が飽和していない層状非外装ケーブルと外側層が飽和している層状非外装ケーブルの組み合わせである。
【0089】
本発明の実施形態のこれら変形形態のいずれによっても、カーカス補強材の少なくとも10%のケーブルは、外側層が飽和していない層状非外装ケーブルであると共に/或いは外側層が飽和している層状非外装ケーブルであり、これらケーブルは、好ましくは、タイヤカーカス補強材中の補強要素として使用できる[L+M]又は[L+M+N]構造の層状金属ケーブルであり、かかる層状金属ケーブルは、直径d1のL(Lは、1〜4である)本の細線を有する第1の層C1をピッチp2で螺旋の状態に互いに巻かれた直径d2のM(Mは、3〜12である)本の細線を有する少なくとも1つの中間層C2で包囲したものであり、層C2は、場合によっては、ピッチp3で螺旋の状態に互いに巻かれた直径d3のN(Nは、8〜20である)本の細線の外側層C3によって包囲される。
【0090】
好ましくは、第1の層又は内側層(C1)の細線の直径は、0.10〜0.5mmであり、外側層(C2,C3)の細線の直径は、0.10〜0.5mmである。
【0091】
これ又好ましくは、外側層(C3)の細線が巻かれている螺旋のピッチは、8〜25mmである。
【0092】
本発明の意味の範囲内において、ピッチは、ケーブルの軸線に平行に測定された長さを表し、ケーブルの端のところでは、このピッチを持つ細線は、ケーブルの軸線回りに丸一回転し、かくして、軸線がこの軸線に垂直であり且つケーブルの構成層の細線のピッチに等しい長さだけ隔てられた2つの平面に沿って区分された場合、これら2つの平面内に位置するこの細線の軸線は、問題の細線の層に相当する2つの円の両方の上に同一の位置を有する。
【0093】
本発明のL+M+N構造では、中間層C2は、好ましくは、6本又は7本の細線を有し、この場合、本発明によるケーブルは下記の好ましい特徴を有している(d1、d2、d3、p2、p3の単位は、mmである)。
(i) 0.10<d1<0.28
(ii) 0.10<d2<0.25
(iii)0.10<d3<0.25
(iv) M=6又はM=7
(v) 5π(d1+d2)<p2≦p3<5π(d1+2d2+d3
(vi) 層C2,C3の細線は、同一の撚り方向(S/S又はZ/Z)に巻かれている。
【0094】
好ましくは、特徴(v)は、p2=p3であるようなものであり、従って、このケーブルは、更に特性(vi)(層C2及びC3の細線が同一方向に巻かれている)を考慮すると、「コンパクト」であると言える。
【0095】
特徴(vi)によれば、層C2及びC3の全ての細線は、同一撚り方向、即ち、S方向(S/S構造)又はZ方向(Z/Z構造)のいずれかの方向に巻かれる。層C2及びC3を同一方向に巻くと、本発明によるケーブルにおいて、これらの2つの層C2及びC3間の摩擦を最小にでき、従ってこれらの層を構成する細線の摩耗を最小限に抑えることができる(というのは、もはや細線間にクロス掛け接触が存在しないからである)。
【0096】
好ましくは、エアウィッキング試験と呼ばれている試験において4cm3/分を超える流量を示すカーカス補強材の少なくとも1つの層の少なくとも10%のケーブルは、1+M+N構造の層状ケーブルであり、このことは、その内側層C1は、単一細線から成ることを意味している。
【0097】
この場合も又、有利には、比(d1/d2)が、次式のように、層C2中の細線の本数M(6又は7)に従って所与の限度内に設定される。
〔数3〕
M=6の場合、0.9<(d1/d2)<1.3
M=7の場合、1.3<(d1/d2)<1.6
【0098】
小さすぎる比の値は、内側層と層C2の細線との間の摩耗に関して不利な場合がある。比の値が大きすぎると、これは、最終的な強度レベルがほとんど変更されない場合、ケーブルのコンパクトさを損なう場合があり、しかもその柔軟性を損なう場合がある。直径d1が大きすぎることによる内側層C1の剛性の増大は、ケーブリング作業中のケーブルの実現容易性そのものにとって不利な場合がある。
【0099】
層C2及びC3の細線は、同一の直径を有しても良く、或いは、直径は、一方の層と他方の層とで異なっていても良い。特にケーブリングプロセスを単純化すると共にコストを削減するためには、同一直径(d2=d3)の細線を使用することが好ましい。
【0100】
層C2に単一飽和層C3として巻き付けることができる細線の最大本数Nmaxは、当然のことながら、多くのパラメータ(内側層の直径d2、層C2の細線の本数M及び直径d2、層C3の細線の直径d3)で決まる。
【0101】
エアウィッキング試験と呼ばれている試験において4cm3/分を超える流量を示すカーカス補強材の少なくとも1つの層の少なくとも10%は、好ましくは、1+6+10、1+6+11、1+6+12、1+7+11、1+7+12又は1+7+13構造のケーブルから選択される。
【0102】
一方においてケーブルの強度、実現容易性及び曲げ強度と他方においてゴム侵入度との良好な妥協点を見出すためには、層C2及びC3の細線の直径が0.12〜0.22mmの間にあることが好ましい(両者の直径が同一であるにせよそうでないにせよ、いずれにせよ)。
【0103】
かかる場合、次の関係式、即ち、
〔数4〕
0.14<d1<0.22
0.12<d2≦d3<0.20
5<p2≦p3<12(mmで表された小ピッチ)、又は変形例として
20<p2≦p3<30(mmで表された大ピッチ)
を満たすことがより好ましい。
【0104】
0.19mmよりも小さい直径は、ケーブルの曲率が大きく変化しているときに細線の受ける応力レベルを小さくするのに役立つ場合があり、他方、特に細線の強度及び工業的コストに鑑みて0.16mmよりも大きい直径を選択することが好ましい。
【0105】
有利な一実施形態では、例えば、有利には1+6+12構造のケーブルを使用し、p2及びp3を8〜12mmの間に選択するのが有利である。
【0106】
一般に、本発明に従ってエアウィッキング試験と呼ばれている試験において4cm3/分を超える流量を示すカーカス補強材の少なくとも1つの層の少なくとも10%のケーブルは、任意の種類の金属細線、特にスチール(鋼)細線、例えば炭素鋼細線及び/又はステンレス鋼細線で具体化できる。炭素鋼を使用することが好ましいが、当然のことながら、他のスチール又は他の合金を使用することが可能である。
【0107】
炭素鋼を用いる場合、その炭素含有量(スチールの重量を基準とした%)は、好ましくは、0.1%〜1.2%、特に0.4%〜1.0%である。これら含有量は、タイヤに必要な機械的性質と細線の実現可能性との良好な妥協点となっている。注目されるべきこととして、0.5%〜0.6%の炭素含有量は、最終的に、かかるスチールを安価にする。というのは、これらは、引き抜き加工が容易だからである。また、本発明の別の有利な実施形態では、意図した用途に応じて、特にコストが低く且つ引き抜き加工性が良好なので、低炭素含有量、例えば0.2%〜0.5%の炭素含有量のスチールを用いることができる。
【0108】
本発明の実施形態の変形形態のうちの任意の1つによれば、外側層が飽和されていない層状非外装ケーブルであると共に/或いは外側層が飽和している互いに隣接した層状非外装ケーブルであるカーカス補強材の少なくとも10%のケーブルの本数は、好ましくは3未満である。
【0109】
1つのカーカス補強材層内において、ケーブルは、これらがポリマーコンパウンドによってのみ互いに分離されている場合、本発明の意味の範囲内において、互いに隣り合っていると呼ばれる。
【0110】
4本以上の隣り合うケーブルでは、「疲労‐フレッチング‐腐食」現象に起因したタイヤ劣化の恐れが強まる。隣り合うケーブルのこの本数は、好ましくは、依然としてゼロであり、このことは、そのケーブルのうちの2本が実際に互いに隣り合っているのではなく、特に外側層が飽和している層状非外装ケーブルの場合、エアウィッキング試験と呼ばれる試験において2cm3/分未満の流量を示す少なくとも1本のケーブルによって常に互いに隔てられていることを意味している。
【0111】
有利には、本発明によれば、外側層が飽和していない層状非外装ケーブルであると共に/或いは外側層が飽和している層状非外装ケーブルであるカーカス補強材の少なくとも10%のケーブルの直径は、エアウィッキング試験と呼ばれる試験において2cm3/分未満の流量を示すケーブルの直径の0.9〜1.1倍である。
【0112】
また、有利には、外側層が飽和していない層状非外装ケーブルであると共に/或いは外側層が飽和している層状非外装ケーブルであるカーカス補強材の少なくとも10%のケーブルの破断強度は、エアウィッキング試験と呼ばれる試験において2cm3/分未満の流量を示すケーブルの破断強度の0.9〜1.1倍である。
【0113】
金属ケーブルの破断強度(Nで表された最大荷重)、破断強度(MPaで表される)及び破断時伸び率(パーセントで表された全伸び率)の測定は、規格ISO6892(1984)による引張り試験下で実施される。
【0114】
本発明の一実施形態によれば、タイヤのクラウン補強材は、周方向と10°〜45°の角度をなして1つの層と次の層との間でクロス掛け関係にある非伸長性補強要素の少なくとも2つの実働クラウン層で形成される。
【0115】
本発明の他の実施形態によれば、クラウン補強材は、周方向補強要素の少なくとも1つの層を更に含む。
【0116】
本発明の好ましい実施形態では、クラウン補強材には、半径方向外側に、保護層と呼ばれる少なくとも1つの補足層が補足されており、かかる保護層は、保護層に半径方向に隣接して位置する実働プライの非伸長性要素のなす角度と同一の方向で周方向に対して10°〜45°の角度をなして差し向けられた弾性要素と呼ばれる補強要素で構成されている。
【0117】
保護層は、幅の最も狭い実働層の軸方向幅よりも小さい軸方向幅を有するのが良い。かかる保護層は、幅の最も狭い実働層の軸方向幅よりも大きな軸方向幅を有しても良く、その結果、かかる保護層は、幅の最も狭い実働層の縁部を覆うようになり、幅の最も狭いものとしての半径方向上側層の場合、保護層は、追加の補強材の軸方向延長方向において軸方向幅にわたり幅の最も広い実働クラウン層に結合され、しかる後、軸方向外側において、厚さが少なくとも2mmの異形要素によりかかる幅の最も広い実働層から結合解除されるようになる。弾性補強要素で形成された保護層は、上述の場合、一方において、オプションとして2つの実働層の縁部を互いに離隔させる異形要素の厚さよりも実質的に小さい厚さを持つ異形要素によって幅の最も狭い実働層の縁部から結合解除され、他方において、幅の最も広いクラウン層の軸方向幅よりも小さい又は大きい軸方向幅を有することができる。
【0118】
上述の本発明の実施形態のうちのいずれにおいても、クラウン補強材には、カーカス補強材とこのカーカス補強材の最も近くに位置する半径方向内側実働層との間で半径方向内側に、周方向と60°の角度をなすと共にカーカス補強材の半径方向に最も近くの層の補強要素のなす角度と同一の方向にあるスチール製の非伸長性金属補強要素の三角形構造形成層が更に補足されている。
【0119】
本発明の他の細部及び有利な特徴は、図1〜図7を参照して行なわれる本発明の例示の実施形態の説明から以下において明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明の一実施形態としてのタイヤを示す子午線略図である。
【図2】図1に示されたタイヤのカーカス補強材層の概略断面図である。
【図3】図1に示されたタイヤのカーカス補強材の少なくとも1つの層の金属補強要素の少なくとも70%を占めるケーブルの第1の実施例の概略断面図である。
【図4】図1に示されたタイヤのカーカス補強材の少なくとも1つの層の金属補強要素の少なくとも70%を占めるケーブルの第2の実施例の概略断面図である。
【図5】図1に示されたタイヤのカーカス補強材の少なくとも1つの層の金属補強要素の少なくとも70%を占めるケーブルの第3の実施例の概略断面図である。
【図6】図1に示されたタイヤのカーカス補強材の少なくとも1つの層の金属補強要素の少なくとも10%を占めるケーブルの第1の実施例の概略断面図である。
【図7】図1に示されたタイヤのカーカス補強材の少なくとも1つの層の金属補強要素の少なくとも10%を占めるケーブルの第2の実施例の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0121】
図1〜図7は、これら図の記載内容を理解しやすくするために縮尺通りには描かれていない。
【0122】
図1では、タイプ315/70R22.5のタイヤ1が2つのビード3内でビードワイヤ4周りに繋留された半径方向カーカス補強材2を有している。カーカス補強材2は、単一の金属ケーブル層で形成されている。カーカス補強材2は、それ自体トレッド6で覆われたクラウン補強材5でたが掛けされている。クラウン補給材5は、内側から外側へ半径方向に、
‐プライの幅全体にわたって連続非たが掛け非伸長性金属ケーブル11.35で形成された第1の実働層、これらケーブルは、18°の角度をなして差し向けられている、
‐プライの幅全体にわたって連続非たが掛け非伸長性金属ケーブル11.35で形成された第2の実働層、これらケーブルは、18°の角度をなして差し向けられると共に第1の実働層の金属ケーブルとクロス掛けされている、
‐6×35弾性金属ケーブルで形成された保護層で形成されている。
【0123】
クラウン補強材5を構成するこれら層の全てが図に詳細に示されているわけではない。
【0124】
図2は、本発明のカーカス補強材層2の概略断面図であり、断面は、補強要素の配向方向に垂直な平面で取られている。この層は、互いに平行に差し向けられると共に圧延層と呼ばれるゴムコンパウンドの2つの層8,9相互間に維持された1組の金属ケーブル7a,7bで構成されている。
【0125】
図2に黒丸(09として示された補強要素7aは、エアウィッキング試験と呼ばれている試験において2cm3/分未満の流量を示す少なくとも70%の非たが掛け金属ケーブルであり、この場合、非たが掛けケーブルは、少なくとも2つの層を有し、少なくとも内側層は、ポリマーコンパウンド、例えば架橋可能な又は架橋済みのゴムコンパウンドから成る層で外装されている。図2に白丸(○)として示された要素7bは、エアウィッキング試験と呼ばれる試験において、4cm3/分を超える流量を示す少なくとも10%の非たが掛けケーブルを表している。
【0126】
本発明によれば、エアウィッキング試験と呼ばれる試験において、4cm3/分を超える流量を示すこれら少なくとも10%の非たが掛けケーブルは、外側層が飽和している非外装層状ケーブルか外側層が飽和していない非外装層状ケーブルかのいずれかである。
【0127】
図1及び図2に従って製造されたタイヤ1のカーカス補強材の層は、90%について補強要素7aを有すると共に10%について補強要素7bを有し、後者の補強要素7bは、外側層が飽和している非外装層状ケーブルである。
【0128】
図3は、図1のタイヤ1のカーカス補強ケーブル7aの概略断面図である。このケーブル7aは、1+6+12構造の非たが掛け層状ケーブルであり、このケーブルは、1本の細線32により形成された中央コアと、6本の細線33で形成された中間層と、12本の細線35で形成された外側層とから成っている。
【0129】
このケーブルは、次の特徴を有する(d及びpの単位は、mmである)。
‐1+6+12構造、
‐d1=0.20(mm)
‐d2=0.18(mm)
‐p2=10(mm)
‐d3=0.18(mm)
‐p2=10(mm)
‐d2/d3=1
上記において、d2及びp2は、それぞれ、中間層の細線の直径及び螺旋ピッチであり、d3及びp3は、それぞれ、外側層の細線の直径及び螺旋ピッチである。
【0130】
細線32で構成された中央コアストランドと、6本の細線33で構成された中間層とから成るケーブルのコアは、加硫されていない(未硬化状態にある)ジエンエラストマーを主成分とするゴムコンパウンド34で外装されている。細線32を6本の細線33で包囲して形成されたコアについて押出ヘッドの使用により外装を実施し、その後、このようにして外装したコアの周りに12本の細線35をツイスティング又はケーブリングする最終作業を実施する。
【0131】
ケーブル7aは、上述したようにエアウィッキング試験と呼ばれている試験において0cm3/分に等しく、したがって2cm3/分未満の流量を示した。ゴムコンパウンドによるその侵入度は、95%に等しい。
【0132】
ゴムシース34を構成するエラストマーコンパウンドは、上述のコンパウンドから作られ、この場合、ケーブルが補強するようになったカーカス補強材の圧延層8,9の調合と同一の天然ゴム及びカーボンブラックを主成分とする調合を有する。
【0133】
図4は、図3のケーブル、即ち、少なくとも1つの内側層がポリマーコンパウンドで構成された層で外装されている少なくとも2つの層を有する少なくとも70%の非たが掛けケーブルの代替ケーブルとして本発明のタイヤに使用できる別のカーカス補強材ケーブル41の概略断面図であり、。このケーブル41は、3+9構造の非たが掛け層状ケーブルであり、このケーブルは、撚り合わされた3本の細線42から成るケーブルで形成された中央コア及び9本の細線43で形成された外側層で構成されている。
【0134】
ケーブルは、次の特徴を有する(d及びpの単位は、mmである)。
‐3+9構造、
‐d1=0.18(mm)
‐p1=5(mm)
‐d1/d2=1
‐d2=0.18(mm)
‐p2=10(mm)
上記において、d1及びp1は、それぞれ、中央コアの細線の直径及び螺旋ピッチであり、d2及びp2は、それぞれ、外側層の細線の直径及び螺旋ピッチである。
【0135】
3本の細線42で形成されたケーブルで構成された中央コアストランドを加硫されていない(未硬化状態にある)ジエンエラストマーを主成分とするゴムコンパウンド44で外装した。ケーブル42の外装を押出ヘッドにより実施し、その後、このようにして外装したコアの周りに9本の細線43をケーブリングする最終作業を行なった。
【0136】
ケーブル41は、上述したようにエアウィッキング試験と呼ばれている試験において0cm3/分に等しく、したがって2cm3/分未満の流量を示した。ゴムコンパウンドによるその侵入度は、95%に等しい。
【0137】
図5は、図3のケーブル、即ち、少なくとも1つの内側層がポリマーコンパウンドから成る層で外装されている少なくとも2つの層を有する少なくとも70%の非たが掛けケーブルの代替ケーブルとして本発明のタイヤに用いることができる別のカーカス補強ケーブル51の概略断面図である。このケーブル51は、1+6構造の非たが掛け層状ケーブルであり、このケーブルは、1本の細線52で形成された中央コアストランド及び6本の細線53で形成された外側層で構成されている。
【0138】
ケーブルは、次の特徴を有する(d及びpの単位は、mmである)。
‐1+6構造、
‐d1=0.200(mm)
‐d1/d2=1.14
‐d2=0.175(mm)
‐p2=10(mm)
上記において、d1は、コアの直径であり、d2及びp2は、それぞれ、外側層の細線の直径及び螺旋ピッチである。
【0139】
細線52で構成された中央コアストランドを加硫されていない(未硬化状態にある)ジエンエラストマーを主成分とするゴムコンパウンド54で外装した。細線52の外装を押出ヘッドにより実施し、その後、このようにして外装したコアの周りに6本の細線53をケーブリングする最終作業を行なった。
【0140】
ケーブル51は、上述したようにエアウィッキング試験と呼ばれている試験において0cm3/分に等しく、したがって2cm3/分未満の流量を示した。ゴムコンパウンドによるその侵入度は、95%に等しい。
【0141】
図6は、図1のタイヤ1のカーカス補強材のケーブル7bの概略断面図である。このケーブル7bは、外側層が飽和している非外装層状ケーブルである。これは、1本の細線62で形成された中央コアストランド、6本の細線63で形成された中間層及び12本の細線65で形成された外側層で構成されている構造1+6+12の非たが掛けケーブルである。
【0142】
このケーブルは、次の特性を有する(この場合、d及びpは、mmで与えられている)。
‐構造1+6+12
‐d1=0.20(mm)
‐d2=0.18(mm)
‐p2=10(mm)
‐d3=0.18(mm)
‐p2=10(mm)
‐(d2/d3=1
上記において、d2及びp2は、それぞれ、中間層の細線の直径及び螺旋ピッチであり、d3及びp3は、それぞれ、外側層の細線の直径及び螺旋ピッチである。
【0143】
このケーブル7bは、細線62で形成された中央コアストランド及び6本の細線63で形成された中間層で構成されたケーブルのコアがゴムコンパウンドで外装されていないことを除き、図3のケーブルとほぼ同じである。
【0144】
このケーブル7bは、上述したように、タイヤの製造中、圧延層8,9のポリマーコンパウンドを浸透させることができず又は僅かな程度しか浸透させることができない飽和ケーブルである。
【0145】
上述したように、エアウィッキング試験と呼ばれる試験において、このケーブルは、24cm3/分に等しい流量を示し、従って、この流量は、4cm3/分を超える。
【0146】
図7は、エアウィッキング試験と呼ばれている試験において4cm3/分を超える流量を示すものとしての図6のケーブルに代えて、本発明のタイヤに用いることができるカーカス補強材の別のケーブル71の概略断面図であり、図7のケーブル71は、外側層が飽和していない非外装層状ケーブルである。
【0147】
このケーブル71は、外側層が飽和していない非外装層状ケーブルである。これは、細線72で形成された中央コアストランド、6本の細線73で形成された中間層及び12本の細線71で構成された外側層で構成されている構造1+6+11の非たが掛けケーブルである。
【0148】
このケーブルは、次の特性を有する(この場合、d及びpは、mmで与えられている)。
‐構造1+6+11
‐d1=0.20(mm)
‐d2=0.18(mm)
‐p2=7(mm)
‐d3=0.18(mm)
‐p2=10(mm)
‐(d2/d3=1
【0149】
上記において、d2及びp2は、それぞれ、中間層の細線の直径及び螺旋ピッチであり、d3及びp3は、それぞれ、外側層の細線の直径及び螺旋ピッチである。
【0150】
上述したように、このケーブル71は、タイヤを硬化させたときに、圧延層8,9のポリマーコンパウンドで浸透される非飽和ケーブルである。
エアウィッキング試験と呼ばれる試験において、上述したように、このケーブルは、7cm3/分の流量を示し、従って、この流量は、4cm3/分を超える。
【0151】
タイヤ製造中、空気及び水分の最適な除去を保証するため、ケーブル71を用いて製作された本発明のタイヤは、72%のケーブル7a及び28%のケーブル71を有する。
【0152】
図1、図2、図3及び図6に示されている本発明に従って製造されたタイヤに対して試験を実施し、コントロールタイヤと呼ばれているタイヤに対して他の試験を実施した。
【0153】
コントロールタイヤは、カーカス補強材の補強要素が例えば図3に示されているケーブルであり、外装層を含まないという点において本発明のタイヤとは異なっている。カーカス補強材は又、本発明の毛管と同様な毛管を全く備えていない。
【0154】
上述のように製造されたタイヤのうちで、本発明のタイヤであれコントロールタイヤであれいずれにせよ空気又は水分の存在に起因する目に見える欠陥を示したものはなかった。
【0155】
転動ドラム上における耐久性試験をタイヤに4415daNの荷重を加える試験機械で実施し、タイヤをタイヤの酸素添加インフレーション状態で40km/時の速度で走行させた。コントロールタイヤに適用された条件と同一の条件下で本発明のタイヤに対して試験を行なった。走行試験をタイヤのカーカス補強材が劣化を示すやいなや停止させた。
【0156】
このようにして実施した試験結果の示すところによれば、これら試験の各々の間に走行した距離は、本発明のタイヤにとって好都合であり、これらタイヤは、300000km走行し、これに対し、コントロールタイヤの走行距離は、250000kmに過ぎなかった。
【0157】
車両駆動アクスルに対する他の転動耐久性試験をタイヤに3680daNの荷重を加えることによって実施し、タイヤは、0.2バールのタイヤ圧力状態において40km/時の速度で走行させた。コントロールタイヤに適用された条件と同一の条件下で本発明のタイヤに対して試験を行なった。走行試験を12000kmの距離にわたり実施し又はタイヤのカーカス補強材が劣化を示すやいなや走行試験を停止させた。
【0158】
このようにして実施した試験結果の示すところによれば、これら試験の各々の間に本発明のタイヤの走行距離は、12000kmの距離を依然として達成することができ、これに対し、コントロールタイヤの走行距離は、せいぜい10000kmに過ぎなかった。
【0159】
さらに、他形式のタイヤを製造した。これらタイヤは、カーカス補強材が図3に示されているようにケーブルだけを含むカーカス補強材を有するという点において本発明のタイヤとは異なっている。
【0160】
これらタイヤの大部分は、タイヤを市販できないようにする空気ポケットの存在に起因してサイドウォール上に目に見える欠陥を呈することが判明した。タイヤを本発明に従って製造することにより、カーカス補強材が図3に示されているようにケーブルだけを有するタイヤと比較して、この種の欠陥に起因して市販できないタイヤの本数をかなり減少させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属補強要素の少なくとも1つの層で構成された半径方向カーカス補強材を有するタイヤであって、前記タイヤは、それ自体トレッドで半径方向に覆われたクラウン補強材を有し、前記トレッドは、2つのサイドウォールを経て2つのビードに連結されている、タイヤにおいて、前記カーカス補強材の少なくとも1つの層の前記金属補強要素のうちの少なくとも70%は、エアウィッキング試験と呼ばれている試験において2cm3/分未満の流量を示す非たが掛けケーブルであり、前記カーカス補強材の少なくとも1つの層の前記金属補強要素のうちの少なくとも10%は、エアウィッキング試験と呼ばれている試験において4cm3/分を超える流量を示すケーブルである、タイヤ。
【請求項2】
エアウィッキング試験と呼ばれている試験において、2cm3/分未満の流量を示す前記カーカス補強材の少なくとも1つの層の前記金属補強要素の前記少なくとも70%は、少なくとも2つの層のケーブルであり、少なくとも1つの内側層は、好ましくは少なくとも1種類のジエンエラストマーを主成分とするポリマーコンパウンド、例えば架橋可能な又は架橋済みのゴムコンパウンドから成る層によって外装されている、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
金属補強要素の少なくとも1つの層で構成された半径方向カーカス補強材を有するタイヤであって、前記タイヤは、それ自体トレッドで半径方向に覆われたクラウン補強材を有し、前記トレッドは、2つのサイドウォールを経て2つのビードに連結されている、タイヤにおいて、前記カーカス補強材の少なくとも1つの層の前記金属補強要素のうちの少なくとも70%は、少なくとも2つの層を備えた非たが掛けケーブルであり、少なくとも1つの内側層は、好ましくは少なくとも1種類のジエンエラストマーを主成分とするポリマーコンパウンド、例えば架橋可能な又は架橋済みのゴムコンパウンドから成る層によって外装され、前記カーカス補強材の少なくとも1つの層の前記金属補強要素のうちの少なくとも10%は、エアウィッキング試験と呼ばれている試験において4cm3/分を超える流量を示すケーブルである、タイヤ。
【請求項4】
エアウィッキング試験と呼ばれている試験において4cm3/分を超える流量を示す前記カーカス補強材の前記少なくとも10%のケーブルは、層状非外装ケーブルであり、該ケーブルの外側層は、飽和している、請求項1〜3のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項5】
金属補強要素の少なくとも1つの層で構成された半径方向カーカス補強材を有するタイヤであって、前記タイヤは、それ自体トレッドで半径方向に覆われたクラウン補強材を有し、前記トレッドは、2つのサイドウォールを経て2つのビードに連結されている、タイヤにおいて、前記カーカス補強材の少なくとも1つの層の前記金属補強要素のうちの少なくとも70%は、少なくとも2つの層を備えた非たが掛けケーブルであり、少なくとも1つの内側層は、好ましくは少なくとも1種類のジエンエラストマーを主成分とするポリマーコンパウンド、例えば架橋可能な又は架橋済みのゴムコンパウンドから成る層によって外装され、前記カーカス補強材の少なくとも1つの層の前記金属補強要素のうちの少なくとも10%は、層状非外装ケーブルであり、該ケーブルの外側層は、飽和している、タイヤ。
【請求項6】
エアウィッキング試験と呼ばれている試験において4cm3/分を超える流量を示す前記カーカス補強材の前記少なくとも10%のケーブルは、層状非外装ケーブルであり、該ケーブルの外側層は、飽和していない、請求項1〜3のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項7】
金属補強要素の少なくとも1つの層で構成された半径方向カーカス補強材を有するタイヤであって、前記タイヤは、それ自体トレッドで半径方向に覆われたクラウン補強材を有し、前記トレッドは、2つのサイドウォールを経て2つのビードに連結されている、タイヤにおいて、前記カーカス補強材の少なくとも1つの層の前記金属補強要素のうちの少なくとも70%は、少なくとも2つの層を備えた非たが掛けケーブルであり、少なくとも1つの内側層は、好ましくは少なくとも1種類のジエンエラストマーを主成分とするポリマーコンパウンド、例えば架橋可能な又は架橋済みのゴムコンパウンドから成る層によって外装され、前記カーカス補強材の少なくとも1つの層の前記金属補強要素のうちの少なくとも10%は、層状非外装ケーブルであり、該ケーブルの外側層は、飽和していない、タイヤ。
【請求項8】
エアウィッキング試験と呼ばれている試験において4cm3/分を超える流量を示す前記カーカス補強材の前記少なくとも10%のケーブルは、外側層が飽和していない層状非外装ケーブルと外側層が飽和している層状非外装ケーブルの組み合わせである、請求項1〜3のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項9】
金属補強要素の少なくとも1つの層で構成された半径方向カーカス補強材を有するタイヤであって、前記タイヤは、それ自体トレッドで半径方向に覆われたクラウン補強材を有し、前記トレッドは、2つのサイドウォールを経て2つのビードに連結されている、タイヤにおいて、前記カーカス補強材の少なくとも1つの層の前記金属補強要素のうちの少なくとも70%は、少なくとも2つの層を備えた非たが掛けケーブルであり、少なくとも1つの内側層は、好ましくは少なくとも1種類のジエンエラストマーを主成分とするポリマーコンパウンド、例えば架橋可能な又は架橋済みのゴムコンパウンドから成る層によって外装され、前記カーカス補強材の少なくとも1つの層の前記金属補強要素のうちの少なくとも10%は、外側層が飽和していない層状非外装ケーブルと外側層が飽和している層状非外装ケーブルの組み合わせである、タイヤ。
【請求項10】
前記少なくとも1つのカーカス補強材層の前記金属補強要素の前記少なくとも70%は、タイヤカーカス補強材中の補強要素として使用できる[L+M]又は[L+M+N]構造の層状金属ケーブルであり、前記層状金属ケーブルは、直径d1のL(Lは、1〜4である)本の細線を有する第1の層C1をピッチp2で螺旋の状態に互いに巻かれた直径d2のM(Mは、3〜12である)本の細線を有する少なくとも1つの中間層C2で包囲したものであり、前記層C2は、場合によっては、ピッチp3で螺旋の状態に互いに巻かれた直径d3のN(Nは、8〜20である)本の細線の外側層C3によって包囲され、少なくとも1種類のジエンエラストマーを主成分とする架橋可能な又は架橋済みゴムコンパウンドから成るシースが、前記[L+M]構造では、前記第1の層C1を覆い、前記[L+M+N]構造では、少なくとも前記中間層C2を覆う、請求項1〜9のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記第1の層C1の前記細線の直径は、0.15〜0.5mmであり、前記層C2,C3の前記細線の直径は、0.15〜0.5mmである、請求項10記載のタイヤ。
【請求項12】
前記外側層C3の前記細線が巻かれている前記螺旋のピッチは、8〜25mmである、請求項10又は11記載のタイヤ。
【請求項13】
前記ジエンエラストマーは、ポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びこれらエラストマーの配合物から成る群から選択される、請求項2〜12のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項14】
少なくとも1種類のジエンエラストマーを主成分とする前記架橋可能又は架橋済みゴムコンパウンドは、架橋状態において、割線伸びモジュラスが20MPa未満、好ましくは12MPa未満である、請求項2〜13のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項15】
カーカス補強材のケーブルの少なくとも10%は、タイヤカーカス補強材中の補強要素として使用できる[L+M]又は[L+M+N]構造の層状金属ケーブルであり、前記層状金属ケーブルは、直径dのL(Lは、1〜4である)本の細線を有する第1の層C1をピッチpで螺旋の状態に互いに巻かれた直径dのM(Mは、3〜12である)本の細線を有する少なくとも1つの中間層C2で包囲したものであり、前記層C2は、場合によっては、ピッチpで螺旋の状態に互いに巻かれた直径dのN(Nは、8〜20である)本の細線の外側層C3によって包囲されている、請求項1〜14のうちいずれか一に記載のタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−510771(P2013−510771A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539263(P2012−539263)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066981
【国際公開番号】WO2011/061082
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】