説明

透過電子顕微鏡および透過電子顕微鏡像の観察方法

【課題】透過電子顕微鏡像の観察時に試料が受ける磁場の影響を低減することができる透過電子顕微鏡を提供する。
【解決手段】透過電子顕微鏡100は、電子線源2と、照射レンズ4と、対物レンズ6と、第2対物レンズ8と、制限視野絞り16と、投影レンズ10と、検出器12と、少なくとも照射レンズ4、第2対物レンズ8、および投影レンズ10を制御する制御部と、を含み、第1面17は、第2対物レンズ8と投影レンズ10との間に位置し、制御部22は、試料Sに電子線Lが照射されるように照射レンズ4を制御し、試料Sの回折パターンが第1面17に結像されるように第2対物レンズ8を制御し、第2対物レンズ8で結像された試料Sの透過電子顕微鏡像が第2面(受光部13)に結像されるように投影レンズ10を制御する第1処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過電子顕微鏡および透過電子顕微鏡像の観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透過電子顕微鏡は、例えば特許文献1に開示されているように、電子線源、照射レンズ、対物レンズ、対物絞り、第2対物レンズ(対物ミニレンズ)、制限視野絞り、投影レンズ等を含んで構成されている。透過電子顕微鏡では、試料の回折パターンや実空間像等の透過電子顕微鏡像を観察することができる。
【0003】
このような透過電子顕微鏡において、試料の回折パターンを観察する方法の1つとして、制限視野電子線回折法が知られている。
【0004】
図26は、制限視野電子線回折法を用いて試料の回折パターンを観察する際の従来の透過電子顕微鏡1000の動作の一例を説明するための図である。
【0005】
図26に示すように、透過電子顕微鏡1000では、電子線源1002で発生した電子線Lを、照射レンズ1004および集束絞り1014を用いて試料Sに照射し、試料Sに電子線Lを照射して得られる電子線回折パターンを、対物レンズ1006および投影レンズ1010を用いて結像する。ここで、制限視野絞り1016によって試料Sの領域を選択することで、選択された領域の回折パターンを観察することができる。また、回折パターンを得た状態から、対物レンズ1006の条件を固定し、投影レンズ1010の条件を変えることで、この領域の実空間像を得ることができる。このように、制限視野電子線回折法を用いることで、回折パターンと実空間像とを対応づけたデータを取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−334858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した観察方法では、対物レンズを用いるため、試料に強磁場が印加される。これにより、例えば、試料が磁場の影響を受けやすい磁性体等の場合、試料内部の状態そのものが印加された磁場によって変化してしまう場合がある。そのため、磁場の影響を受けやすい試料では、観察時に試料が受ける磁場の影響によって、試料本来の状態を観察することができないという課題があった。
【0008】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、透過電子顕微鏡像の観察時に試料が受ける磁場の影響を低減することができる透過電子顕微鏡および透過電子顕微鏡像の観察方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る透過電子顕微鏡は、
電子線を発生させる電子線源と、
前記電子線源からの前記電子線を試料に照射するための照射レンズと、
前記試料に磁場を印加してレンズ作用を発生させて、前記試料を透過した前記電子線で前記試料の透過電子顕微鏡像を結像するための対物レンズと、
前記試料を透過した前記電子線で前記試料の透過電子顕微鏡像を結像するための第2対物レンズと、
第1面に配置され、前記試料を透過した前記電子線の通過を制限するための制限視野絞りと、
前記対物レンズまたは前記第2対物レンズで結像された前記試料の透過電子顕微鏡像を第2面に結像するための投影レンズと、
前記第2面に配置された受光部を有し、前記試料の透過電子顕微鏡像を検出する検出器と、
少なくとも前記照射レンズ、前記第2対物レンズ、および前記投影レンズを制御する制御部と、
を含み、
前記第1面は、前記第2対物レンズと前記投影レンズとの間に位置し、
前記制御部は、
前記試料に前記電子線が照射されるように前記照射レンズを制御し、
前記試料の回折パターンが前記第1面に結像されるように前記第2対物レンズを制御し、
前記第2対物レンズで結像された前記試料の透過電子顕微鏡像が前記第2面に結像されるように前記投影レンズを制御する第1処理を行う。
【0010】
このような透過電子顕微鏡によれば、制御部が第1処理を行うことにより、第2対物レンズおよび投影レンズによって、試料の透過電子顕微鏡像を結像することができる。そのため、透過電子顕微鏡像の観察時に、試料が受ける磁場の影響を低減することができる。
【0011】
(2)本発明に係る透過電子顕微鏡において、
前記制御部は、動作モードとして、前記第1処理を行う第1モードと、第2処理を行う第2モードと、を有し、
前記制御部は、さらに、前記対物レンズを制御し、
前記第2処理は、
前記試料に前記電子線が照射されるように前記照射レンズを制御し、
前記試料の透過電子顕微鏡像が結像されるように前記対物レンズを制御し、
前記対物レンズで結像された前記試料の透過電子顕微鏡像が前記第2面に結像されるように前記投影レンズを制御する処理を含んでいてもよい。
【0012】
このような透過電子顕微鏡によれば、制御部は、例えば、磁場の影響を受けやすい試料を観察する場合には、第1モードで動作し、磁場の影響を受けにくい試料を観察する場合には、第2モードで動作することができる。したがって、このような透過電子顕微鏡によれば、例えば、試料が磁場の影響を受けやすいか否かなど、観察対象となる試料に応じて、動作モードを選択して動作させることができる。
【0013】
(3)本発明に係る透過電子顕微鏡において、
前記制御部は、前記第1処理において、前記投影レンズを制御して、前記第2面に結像される前記試料の透過電子顕微鏡像の向きを調整する処理を行ってもよい。
【0014】
このような透過電子顕微鏡によれば、例えば、試料の向きと透過電子顕微鏡像の向きとを一致させることができる。
【0015】
(4)本発明に係る透過電子顕微鏡において、
走査信号を生成する走査信号発生部と、
前記走査信号に基づいて、前記照射レンズからの前記電子線で前記試料上を走査するための走査コイルと、
前記検出器からの検出信号を前記走査信号に同期させて画像化する走査像生成部と、
を含んでいてもよい。
【0016】
このような透過電子顕微鏡によれば、走査像を生成することができる。
【0017】
(5)本発明に係る透過電子顕微鏡像の観察方法は、
照射レンズを用いて、電子線源からの電子線を試料に照射する工程と、
第2対物レンズを用いて、前記試料を透過した電子線で前記試料の回折パターンを制限視野絞りが配置される面に結像する工程と、
投影レンズを用いて、前記第2対物レンズによって結像された前記試料の透過電子顕微鏡像を検出器の受光部に結像する工程と、
を含む。
【0018】
このような透過電子顕微鏡像の観察方法によれば、透過電子顕微鏡像の観察時に、試料が受ける磁場の影響を低減することができる。
【0019】
(6)本発明に係る透過電子顕微鏡像の観察方法において、
前記投影レンズを用いて前記試料の透過電子顕微鏡像を結像する工程では、前記投影レンズを用いて、前記第2面に結像される前記試料の透過電子顕微鏡像の向きを調整してもよい。
【0020】
このような透過電子顕微鏡像の観察方法によれば、例えば、試料の向きと透過電子顕微鏡像の向きとを一致させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態に係る透過電子顕微鏡の構成を説明するための図。
【図2】第1実施形態に係る透過電子顕微鏡の対物レンズおよび第2対物レンズを模式的に示す断面図。
【図3】第1実施形態に係る透過電子顕微鏡の処理部の第1処理の一例を示すフローチャート。
【図4】処理部が第1処理を行う場合(第1モード)の透過電子顕微鏡の動作を説明するための図。
【図5】第1実施形態に係る透過電子顕微鏡の処理部の第1処理の第1変形例の一例を示すフローチャート。
【図6】処理部が第1処理の第1変形例の処理を行う場合の透過電子顕微鏡の動作を説明するための図。
【図7】第1実施形態に係る透過電子顕微鏡の処理部の第1処理の第2変形例の一例を示すフローチャート。
【図8】処理部が第1処理の第2変形例の処理を行う場合の透過電子顕微鏡の動作を説明するための図。
【図9】制限視野絞りを用いて回折パターンの透過波を選択する手法を説明するための図。
【図10】第1実施形態に係る透過電子顕微鏡の処理部の第1処理の第3変形例の一例を示すフローチャート。
【図11】処理部が第1処理の第3変形例の処理を行う場合の透過電子顕微鏡の動作を説明するための図。
【図12】制限視野絞りを用いて回折パターンの回折波を選択する手法を説明するための図。
【図13】第1実施形態に係る透過電子顕微鏡の処理部の第2処理の一例を示すフローチャート。
【図14】処理部が第2処理を行う場合(第2モード)の透過電子顕微鏡の動作を説明するための図。
【図15】第2実施形態に係る透過電子顕微鏡の構成を説明するための図。
【図16】第2実施形態に係る透過電子顕微鏡の処理部の第1処理の一例を示すフローチャート。
【図17】処理部が第1処理を行う場合(第1モード)の透過電子顕微鏡の動作を説明するための図。
【図18】第2実施形態に係る透過電子顕微鏡の処理部の第1処理の第1変形例の一例を示すフローチャート。
【図19】処理部が第1処理の第1変形例の処理を行う場合の透過電子顕微鏡の動作を説明するための図。
【図20】第2実施形態に係る透過電子顕微鏡の処理部の第1処理の第2変形例の一例を示すフローチャート。
【図21】処理部が第1処理の第2変形例の処理を行う場合の透過電子顕微鏡の動作を説明するための図。
【図22】第2実施形態に係る透過電子顕微鏡の処理部の第2処理の一例を示すフローチャート。
【図23】処理部が第2処理を行う場合(第2モード)の透過電子顕微鏡の動作を説明するための図。
【図24】第2実施形態の変形例に係る透過電子顕微鏡の構成を説明するための図。
【図25】透過電子顕微鏡の制限視野絞りを模式的に示す平面図。
【図26】制限視野電子線回折法を用いて試料の回折パターンを観察する際の従来の透過電子顕微鏡の動作の一例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0023】
1. 第1実施形態
1.1. 透過電子顕微鏡の構成
まず、第1実施形態に係る透過電子顕微鏡の構成について説明する。図1は、第1実施形態に係る透過電子顕微鏡100の構成を説明するための図である。
【0024】
透過電子顕微鏡100は、図1に示すように、電子線源2と、照射レンズ4と、対物レンズ6と、第2対物レンズ8と、投影レンズ10と、検出器12と、制限視野絞り16と、処理部20と、を含む。透過電子顕微鏡100は、例えば、さらに、集束絞り14と、鏡筒18と、操作部30と、表示部32と、記憶部34と、情報記憶媒体36と、を含む。
【0025】
透過電子顕微鏡100では、電子線源2、照射レンズ4、集束絞り14、対物レンズ6、第2対物レンズ8、制限視野絞り16、投影レンズ10、検出器12が、透過電子顕微鏡100の光軸Aに沿ってこの順で鏡筒18の内部に収容されている。ここで、透過電子顕微鏡100の光軸Aとは、各レンズ4,6,8,10の中心を結ぶ仮想直線をいう。鏡筒18の内部は、排気装置(図示せず)によって減圧排気されている。
【0026】
電子線源2は、電子線Lを発生させる。電子線源2は、陰極から放出された電子を陽極で加速し電子線を放出する。電子線源2として、公知の電子銃を用いることができる。
【0027】
照射レンズ4は、電子線源4で発生した電子線Lを試料Sに照射するためのレンズである。照射レンズ4は、例えば、複数のレンズ(図示せず)で構成されている。照射レンズ4は、試料Sに照射される電子線(入射電子線)の量(照射量)を調整することができる。照射レンズ4は、例えば、処理部20の制御部22によって制御される。
【0028】
集束絞り(コンデンサー絞り)14は、例えば、照射レンズ4と対物レンズ6との間に配置されている。集束絞り14は、例えば、試料Sに照射される電子線Lの照射角(開き角)や照射量を調整することができる。
【0029】
対物レンズ6は、照射レンズ4の後段に配置されている。対物レンズ6は、試料Sに磁場を印加して、レンズ作用を発生させることができる。これにより、対物レンズ6は、試料Sを透過した電子線Lで透過電子顕微鏡像を結像することができる。ここで、透過電子顕微鏡像とは、回折パターン(回折像)や実空間像などの透過電子顕微鏡法において得られる像をいう。なお、実空間像は、明視野像および暗視野像を含む。明視野像とは、試料を透過した電子(電子線)のうち、試料で散乱されずに透過した電子、および小さい角度で散乱した電子を検出して作られた像をいう。また、暗視野像とは、試料を透過した電子(電子線)のうち、試料で散乱・回折した電子線を検出して作った像をいう。対物レンズ6は、例えば、制御部22によって制御される。
【0030】
なお、図示はしないが、対物レンズ6の後焦点面には、対物絞りが配置されていてもよい。
【0031】
第2対物レンズ8は、対物レンズ6の後段に配置されている。第2対物レンズ8は、試料Sを透過した電子線Lで透過電子顕微鏡像を結像することができる。第2対物レンズ8は、例えば、投影レンズ10の物面に透過電子顕微鏡像を結像することができる。第2対物レンズ8は、制限視野絞り16が配置される第1面17に試料Sの回折パターンを結像する。第2対物レンズ8は、例えば、制御部22によって制御される。
【0032】
図2は、透過電子顕微鏡100の対物レンズ6および第2対物レンズ8を模式的に示す断面図である。
【0033】
対物レンズ6は、図2に示すように、コイル6aと、ヨーク6bと、ポールピース6cと、を含んで構成されている。対物レンズ6は、コイル6aを励磁することによって発生した磁束を、ヨーク6bを通じてポールピース6cから空間に漏洩させる。ポールピース6cの上極6c−1と下極6c−2との間には回転対称の強い磁場が発生し、電子線Lを集束させることができる。なお、ヨーク6bと、ポールピース6cとが、一体的に形成されていてもよい。
【0034】
試料Sは、図2に示すように、ポールピース6cの上極6c−1と下極6c−2との間に配置される。そのため、対物レンズ6を動作させると、試料Sには、強い磁場が印加される。試料Sは、例えば、試料ステージ(図示せず)によってポールピース6cの上極6c−1と下極6c−2との間に保持される。試料ステージは、試料Sを水平方向(電子線Lに対して直交する方向)や垂直方向(電子線Lに沿う方向)に移動させ、また、試料Sを傾斜させることができる。
【0035】
第2対物レンズ8は、図2に示すように、コイル8aと、ヨーク8bと、を含んで構成されている。すなわち、第2対物レンズ8は、磁場を強めるためのポールピースを有していない。第2対物レンズ8は、対物レンズ6のヨーク6bと切り離されており、対物レンズ6とは独立して動作するレンズである。第2対物レンズ8は、例えば、対物レンズ6に対して、数十mm離れた位置に配置されている。第2対物レンズ8は、磁場を強めるためのポールピースを有さず、また、対物レンズ6と独立して試料Sから離れた位置に配置されている。そのため、第2対物レンズ8を動作させたときに試料Sが受ける磁場の影響は、対物レンズ6を動作させたときに試料Sが受ける磁場の影響よりも、極めて小さい。
【0036】
制限視野絞り16は、図1に示すように、第2対物レンズ8と投影レンズ10との間に配置される。制限視野絞り16は、第2対物レンズ8と投影レンズ10との間であって、光軸Aと直交する第1面17に配置(挿入)される。制限視野絞り16は、鏡筒18の外から、絞りの孔径の選択や位置の調整を行うことができる可動絞りである。制限視野絞り16の孔径や位置の制御は、例えば、処理部20が行ってもよい。この場合、透過電子顕微鏡100は、例えば、制限視野絞り16を移動させるための駆動部(図示しない)を有していてもよい。処理部20は、この駆動部に制御信号を出力し、駆動部は、この制御信号に基づいて、制限視野絞り16を移動させてもよい。
【0037】
制限視野絞り16は、試料Sを透過した電子線Lの通過を制限することができる。制限視野絞り16は、例えば、制限視野回折を行う際、回折パターンを得る試料Sの領域を選択することができる。また、制限視野絞り16は、後述するように、例えば、第2対物レンズ8が第1面17上に生成した試料Sの回折パターンから、透過波や回折波を選択するための絞りとして用いることができる。
【0038】
投影レンズ10は、第2対物レンズ8の後段に配置されている。投影レンズ10は、対物レンズ6または第2対物レンズ8で結像された透過電子顕微鏡像を検出器12の受光部13に結像することができる。投影レンズ10は、例えば、対物レンズ6または第2対物レンズ8で結像された透過電子顕微鏡像を拡大して、受光部13に結像することができる。また、投影レンズ10は、透過電子顕微鏡像の向き(回転)を調整する機能を有していてもよい。これにより、例えば、回折パターンの向きと実空間像の向きとを一致させることができる。投影レンズ10は、例えば、複数のレンズで構成されている。投影レンズ10は、制御部22によって制御される。
【0039】
検出器12は、電子線Lを検出するための受光部13を有している。検出器12は、例えば、2次元的に配置されたCCD(Charge Coupled Device)で形成された受光部13を有するCCDカメラである。受光部13は、投影レンズ10の結像面(第2面)に配置されている。検出器12は、受光部13に結像された透過電子顕微鏡像を検出して、この透過電子顕微鏡像の情報を、処理部20に出力する。処理部20は、この情報に基づいて透過電子顕微鏡像を生成し、生成した透過電子顕微鏡像を表示部32に表示させることができる。
【0040】
操作部30は、ユーザーが操作情報を入力するためのものであり、入力された操作情報を処理部20に出力する。操作部30の機能は、キーボード、マウス、タッチパネル型ディスプレイなどのハードウェアにより実現することができる。
【0041】
表示部32は、処理部20によって生成された画像を表示するものであり、その機能は、LCD、CRTなどにより実現できる。表示部32は、例えば、処理部20により生成された透過電子顕微鏡像を表示する。
【0042】
記憶部34は、処理部20のワーク領域となるもので、その機能はRAMなどにより実現できる。情報記憶媒体36(コンピュータにより読み取り可能な媒体)は、プログラムやデータなどを格納するものであり、その機能は、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク(MO)、磁気ディスク、ハードディスク、或いはメモリ(ROM)などにより実現できる。処理部20は、情報記憶媒体36に格納されるプログラムに基づいて本実施形態の種々の処理を行う。情報記憶媒体36には、処理部20の各部としてコンピューターを機能させるためのプログラムを記憶することができる。また、情報記憶媒体36には、透過電子顕微鏡100を構成する各レンズ4,6,8,10のレンズ条件を設定するためのデータを記憶することができる。
【0043】
処理部20は、例えば、照射レンズ4、対物レンズ6、第2対物レンズ8、および投影レンズ10を制御する処理や、表示部32に透過電子顕微鏡像を表示させる処理等を行う。また、処理部20は、制限視野絞り16の孔径や位置を制御する処理を行ってもよい。
【0044】
処理部20の機能は、各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。処理部20は、制御部22を含む。
【0045】
制御部22は、例えば、照射レンズ4、対物レンズ6、第2対物レンズ8、および投影レンズ10を制御する処理を行うことができる。処理部20(制御部22)は、動作モードとして、第1処理を行う第1モードと、第2処理を行う第2モードと、を有している。
【0046】
第1処理は、試料Sに電子線Lが照射されるように照射レンズ4を制御し、試料Sの回折パターンが制限視野絞り16が配置される第1面17に結像されるように第2対物レンズ8を制御し、第2対物レンズ8で結像された試料Sの透過電子顕微鏡像が検出器12の受光部13に結像されるように投影レンズ10を制御する処理を含む。また、制御部22は、第1処理において、投影レンズ10を制御して、検出器12の受光部13に結像される透過電子顕微鏡像の向き(回転)を調整する処理を行うことができる。すなわち、第1処理を行う第1モードでは、対物レンズ6を動作させることなく、試料Sの透過電子顕微鏡像を得ることができる。そのため、観察時に、試料Sが受ける磁場の影響を低減することができる。したがって、第1モードは、例えば、磁性体などの、磁場の影響を受けやすい試料を観察する場合に有効である。
【0047】
また、第2処理は、試料Sに電子線Lが照射されるように照射レンズ4を制御し、試料Sの透過電子顕微鏡像が結像されるように対物レンズ6を制御し、対物レンズ6で結像された試料Sの透過電子顕微鏡像が検出器12の受光部13に結像されるように投影レンズ10を制御する処理を含む。すなわち、第2処理を行う第2モードでは、対物レンズ6を動作させて、試料Sの透過電子顕微鏡像を得ることができる。
【0048】
透過電子顕微鏡100では、例えば、試料Sが磁場の影響を受けやすいか否かなど、試料Sに応じて、所望の動作モード(第1モードまたは第2モード)を選択することができる。例えば、ユーザーは、操作部30を操作することによって、動作モードを選択することができる。
【0049】
1.2. 透過電子顕微鏡の処理
次に、第1実施形態に係る透過電子顕微鏡の処理部の処理について説明する。まず、透過電子顕微鏡100の処理部20の第1処理およびその変形例について説明し、次に第2処理について説明する。
【0050】
1.2.1. 第1処理
まず、第1処理について説明する。図3は、透過電子顕微鏡100の処理部20の第1処理の一例を示すフローチャートである。図4は、処理部20が第1処理を行う場合(第1モード)の透過電子顕微鏡100の動作を説明するための図である。
【0051】
まず、制御部22は、試料Sに電子線Lが照射されるように照射レンズ4を制御する処理を行う(ステップS100)。具体的には、制御部22は、照射レンズ4に所定量の励磁電流を供給し、照射レンズ4を動作させる。これにより、図4に示すように、照射レンズ4に磁場Mが発生し、この磁場Mによって電子線Lを集束させることができる。この照射レンズ4の動作によって、試料Sに照射される電子線Lの量を調整し、試料Sに電子線Lを照射することができる。なお、照射レンズ4に加えて、さらに、集束絞り14を用いて電子線Lの照射量や開き角を調整してもよい。制御部22は、例えば、情報記憶媒体36に記憶された照射レンズ4のレンズ条件を設定するためのデータに基づいて、照射レンズ4を制御する処理を行う。
【0052】
次に、制御部22は、試料Sの回折パターンが制限視野絞り16が配置される第1面17に結像されるように第2対物レンズ8を制御する処理を行う(ステップS102)。具体的には、制御部22は、第2対物レンズ8(コイル8a)に所定量の励磁電流を供給し、第2対物レンズ8を動作させる(磁場Mを発生させて電子線Lを集束させる)。これにより、図4に示すように、試料Sを透過した電子線Lで試料Sの回折パターンDを第1面17に結像することができる。制御部22は、例えば、情報記憶媒体36に記憶された第2対物レンズ8のレンズ条件を設定するためのデータに基づいて、第2対物レンズ8を制御する処理を行う。
【0053】
次に、制御部22は、試料Sの回折パターンDが検出器12の受光部13に結像されるように、投影レンズ10を制御する処理を行う(ステップS104)。具体的には、制御部22は、投影レンズ10に所定量の励磁電流を供給し、投影レンズ10を動作させる(磁場Mを発生させて電子線Lを集束させる)。
【0054】
図4の例では、制御部22は、第1面17に結像された試料Sの回折パターンDが受光部13に結像されるように投影レンズ10を制御している。すなわち、制御部22は、投影レンズ10の物面が第1面17に設定されるように投影レンズ10を制御している。また、制御部22は、例えば、回折パターンDが受光部13に所望の大きさ(所望のカメラ長に相当する大きさ)で結像されるように、試料Sの構成元素や傾斜(光軸Aに対する試料Sの傾斜角度)の程度に応じて投影レンズ10を制御することができる。さらに、制御部22は、例えば、投影レンズ10によって、受光部13に結像される試料Sの回折パターンDの向き(回転)を調整する処理を行うことができる。これにより、例えば、試料Sの向き(実空間像の向き)と、試料Sの回折パターンDの向きとを一致させることができる。
【0055】
制御部22は、例えば、情報記憶媒体36に記憶された投影レンズ10のレンズ条件を設定するためのデータに基づいて、投影レンズ10を制御する処理を行う。
【0056】
次に、処理部20は、表示部32に試料Sの回折パターンDを表示させる処理を行う(ステップS106)。試料Sの回折パターンDの情報は、検出器12から出力されて、処理部20に入力される。処理部20は、この試料Sの回折パターンDの情報に基づいて、試料Sの回折パターンDを表示部32に表示させる処理を行う。そして、処理部20は処理を終了する。
【0057】
なお、上述の例では、制御部22が、ステップS100、ステップS102、ステップS104の順で処理を行ったが、この順番は特に限定されず、例えば、制御部22が、ステップS100,ステップS102,ステップS104を同時に行ってもよい。
【0058】
第1処理により、第2対物レンズ8および投影レンズ10によって、回折パターンDを結像することができる。すなわち、対物レンズ6を用いなくても、回折パターンDを結像することができる。したがって、試料Sの回折パターンDの観察時に、試料Sが受ける磁場の影響を低減することができる。
【0059】
1.2.2. 第1処理の第1変形例
次に、第1処理の第1変形例について説明する。図5は、処理部20の第1処理の第1変形例の一例を示すフローチャートである。図6は、処理部20が第1処理の第1変形例の処理を行う場合の透過電子顕微鏡100の動作を説明するための図である。なお、図5において、図3に示すステップ(S100〜S106)と同様の処理を行うステップには同じ符号を付している。以下、上述した図3に示す第1実施形態と同様の処理については、その詳細な説明を省略する。
【0060】
上述した図3に示す第1実施形態に係る第1処理では、処理部20は、試料Sの回折パターンDを取得するための処理を行った。これに対して、本変形例では、処理部20は、実空間像を取得するための処理を行うことができる。
【0061】
より具体的には、上述した図3に示す第1実施形態に係る第1処理では、処理部20は、試料Sの回折パターンDが検出器12の受光部13に結像されるように投影レンズ10を制御した。これに対して、本変形例では、図5および図6に示すように、試料Sの実空間像Rが検出器12の受光部13に結像されるように投影レンズ10を制御することができる。
【0062】
まず、制御部22は、上述したステップS100、ステップS102の処理を行う。
【0063】
次に、制御部22は、試料Sの実空間像Rが検出器12の受光部13に結像されるように投影レンズ10を制御する(ステップS114)。
【0064】
ここで、第2対物レンズ8は、図6に示すように、第1面17に回折パターンDを結像し、第1面17とは異なる面に実空間像Rを結像する。制御部22は、投影レンズ10の物面が第2対物レンズ8で結像された実空間像Rが得られる面になるように、投影レンズ10を制御する処理を行う。これにより、投影レンズ10は、試料Sの実空間像Rを受光部13に結像することができる。
【0065】
そして、処理部20は、例えば、検出器12で検出された試料Sの実空間像Rを、表示部32に表示させる処理を行う(ステップS116)。そして、処理部20は処理を終了する。
【0066】
第1変形例に係る処理により、第2対物レンズ8および投影レンズ10によって、実空間像Rを結像することができる。したがって、実空間像Rの観察時に、試料Sが受ける磁場の影響を低減することができる。
【0067】
1.2.3. 第1処理の第2変形例
次に、第1処理の第2変形例について説明する。図7は、処理部20の第1処理の第2変形例の一例を示すフローチャートである。図8は、処理部20が第1処理の第2変形例の処理を行う場合の透過電子顕微鏡100の動作を説明するための図である。なお、図7において、図3に示すステップ(S100〜S106)と同様の処理を行うステップには同じ符号を付している。以下、上述した第1実施形態、および第1変形例と同様の処理については、その詳細な説明を省略する。
【0068】
上述した図3に示す第1実施形態に係る第1処理では、処理部20は、試料Sの回折パターンDを取得するための処理を行った。これに対して、本変形例では、処理部20は、明視野像BIを取得するための処理を行うことができる。
【0069】
まず、処理部20は、上述したステップS100,S102,S104,S106を行い、試料Sの回折パターンDを表示部32に表示させる。
【0070】
次に、処理部20は、回折パターンDの透過波が選択されるように制限視野絞り16の位置を調整する処理を行う(ステップS120)。
【0071】
図9は、制限視野絞り16を用いて回折パターンDの透過波TWを選択する手法を説明するための図である。図9は、制限視野絞り16を、光軸A方向からみた平面図である。
【0072】
まず、処理部20は、制限視野絞り16を移動させるための駆動部(図示せず)を駆動させて、制限視野絞り16を第1面17に挿入(配置)する。この時、表示部32には、回折パターンDとともに制限視野絞り16が表示される。次に、処理部20は、例えば、表示部32に表示された画像から、制限視野絞り16の貫通孔16aの位置と、透過波TWの位置とを特定し、貫通孔16aと透過波TWとの間の位置関係の情報を生成する。そして、処理部20は、この位置関係の情報を駆動部に出力する。駆動部は、この位置関係の情報に基づいて、透過波TWが制限視野絞り16の貫通孔16aを通過するように(透過波TWの位置と貫通孔16aの位置とを一致させるように)制限視野絞り16の位置を移動させる。これにより、図9に示すように、透過波TW(のみ)が制限視野絞り16の貫通孔16aを通過することができる。すなわち、透過波TWを選択することができる。この手法により、処理部20は、透過波TWを選択するための処理を行うことができる。透過波TWを選択することにより、図8に示すように、試料Sの明視野像BIが結像される。
【0073】
なお、ここでは、処理部20が透過波TWを選択する処理を行ったが、例えば、ユーザーが表示部32に表示された回折パターンDおよび制限視野絞り16をみながら、透過波TWが制限視野絞り16の貫通孔16aを通過するように制限視野絞り16の位置を手動で調整してもよい。
【0074】
次に、制御部22は、試料Sの明視野像BIが検出器12の受光部13に結像するように投影レンズ10を制御する処理を行う(ステップS122)。これにより、検出器12は、明視野像BIを検出することができる。
【0075】
次に、処理部20は、例えば、検出器12で検出された試料Sの明視野像BIを、表示部32に表示させる処理を行う(ステップS124)。そして、処理部20は処理を終了する。
【0076】
第2変形例に係る処理により、第2対物レンズ8および投影レンズ10によって、明視野像BIを結像することができる。したがって、明視野像BIの観察時に、試料Sが受ける磁場の影響を低減することができる。
【0077】
1.2.4. 第1処理の第3変形例
次に、第1処理の第3変形例について説明する。図10は、処理部20の第1処理の第3変形例の一例を示すフローチャートである。図11は、処理部20が第1処理の第3変形例の処理を行う場合の透過電子顕微鏡100の動作を説明するための図である。なお、図10において、図3に示すステップ(S100〜S106)と同様の処理を行うステップには同じ符号を付している。以下、上述した第1実施形態、および第1,第2変形例と同様の処理については、その詳細な説明を省略する。
【0078】
上述した図3に示す第1実施形態に係る第1処理では、処理部20は、試料Sの回折パターンDを取得するための処理を行った。これに対して、本変形例では、処理部20は、暗視野像DIを取得するための処理を行うことができる。
【0079】
まず、処理部20は、上述したステップS100,S102,S104,S106を行い、試料Sの回折パターンDを表示部32に表示させる。
【0080】
次に、処理部20は、回折パターンDの回折波が選択されるように制限視野絞り16の位置を調整する処理を行う(ステップS130)。
【0081】
図12は、制限視野絞り16を用いて回折パターンDの回折波DWを選択する手法を説明するための図である。図12は、制限視野絞り16を、光軸A方向からみた平面図である。
【0082】
まず、処理部20は、制限視野絞り16の駆動部(図示せず)を駆動させて、制限視野絞り16を第1面17に挿入(配置)する。この時、表示部32には、回折パターンDとともに制限視野絞り16が表示される。次に、処理部20は、例えば、表示部32に表示された画像から、制限視野絞り16の貫通孔16aの位置と、所定の回折波DWの位置とを特定し、貫通孔16aとこの回折波DWとの間の位置関係の情報を生成する。そして、処理部20は、この位置関係の情報を駆動部に出力する。駆動部は、この位置関係の情報に基づいて、回折波DWが制限視野絞り16の貫通孔16aを通過するように(回折波DWの位置と貫通孔16aの位置とを一致させるように)制限視野絞り16の位置を移動させる。これにより、図11に示すように、所定の回折波DW(のみ)が制限視野絞り16の貫通孔16aを通過することができる。すなわち、回折波DWを選択することができる。この手法により、処理部20は、所定の回折波DWを選択するための処理を行うことができる。所定の回折波DWを選択することにより、図11に示すように、試料Sの暗視野像DIが結像される。なお、選択される回折波DWの情報は、例えば、予め記憶部34に記憶されていてもよい。
【0083】
なお、ここでは、処理部20が回折波DWを選択する処理を行ったが、例えば、ユーザーが表示部32に表示された回折パターンDおよび制限視野絞り16をみながら、回折波DWが制限視野絞り16の貫通孔16aを通過するように制限視野絞り16の位置を手動で調整してもよい。
【0084】
次に、制御部22は、試料Sの暗視野像DIが検出器12の受光部13に結像するように投影レンズ10を制御する処理を行う(ステップS132)。これにより、検出器12は、暗視野像DIを検出することができる。
【0085】
次に、処理部20は、例えば、検出器12で検出された試料Sの暗視野像DIを、表示部32に表示する処理を行う(ステップS134)。そして、処理部20は処理を終了する。
【0086】
第3変形例に係る処理により、第2対物レンズ8および投影レンズ10によって、暗視野像DIを結像することができる。したがって、暗視野像DIの観察時に、試料Sが受ける磁場の影響を低減することができる。
【0087】
1.2.5. 第2処理
次に、第2処理について説明する。図13は、第1実施形態に係る透過電子顕微鏡の処理部20の第2処理の一例を示すフローチャートである。図14は、処理部20が第2処理を行う場合(第2モード)の透過電子顕微鏡100の動作を説明するための図である。なお、図13において、図3に示すステップ(S100〜S106)と同様の処理を行うステップには同じ符号を付している。以下、上述した図3に示す第1処理と同様の処理については、その詳細な説明を省略する。
【0088】
まず、制御部22は、試料Sに電子線Lが照射されるように照射レンズ4を制御する処理を行う(ステップS100)。
【0089】
次に、制御部22は、試料Sの回折パターンDが結像されるように対物レンズ6を制御する処理を行う(ステップS140)。具体的には、制御部22は、対物レンズ6(コイル6a)に所定量の励磁電流を供給し、対物レンズ6を動作させる。これにより、図14に示すように、例えば、投影レンズ10の物面に、試料Sの回折パターンDを結像することができる。対物レンズ6が動作することにより、試料Sには、磁場Mが印加される。
【0090】
次に、制御部22は、試料Sの回折パターンDが検出器12の受光部13に結像するように、投影レンズ10を制御する(ステップS142)。
【0091】
次に、処理部20は、例えば、検出器12で検出された試料Sの回折パターンDを、表示部32に表示させる処理を行う(ステップS144)。そして、処理部20は処理を終了する。
【0092】
ここで、制限視野絞り16によって試料Sの領域を選択することで、この領域の回折パターンDを観察することができる。具体的には、処理部20は、駆動部(図示せず)を制御して、試料Sの所定の領域が選択されるように、制限視野絞り16の位置を調整する。これにより、試料Sの所定の領域の回折パターンDを得ることができる(制限視野電子線回折法)。また、回折パターンDを得た状態から、制御部22が、対物レンズ6の条件を固定し、投影レンズ10の物面が実空間像が結像される面に設定されるように投影連zう10を制御する処理を行うことで、この領域の実空間像を得ることができる。このように、制限視野電子線回折法を用いることで、回折パターンDと実空間像とを対応づけたデータを取得することができる。
【0093】
第2処理により、対物レンズ6および投影レンズ10によって、試料Sの回折パターンDや実空間像等の透過電子顕微鏡像を結像することができる。
【0094】
本実施形態に係る透過電子顕微鏡100および本実施形態に係る透過電子顕微鏡像の観察方法は、例えば、以下の特徴を有する。
【0095】
本実施形態に係る透過電子顕微鏡100によれば、上述したように、処理部20(制御部22)が第1処理を行うことにより、第2対物レンズ8および投影レンズ10によって、試料Sの透過電子顕微鏡像(回折パターンD、実空間像R、明視野像BI、暗視野像DI)を結像することができる。すなわち、対物レンズ6を用いなくても、透過電子顕微鏡像を結像することができる。そのため、透過電子顕微鏡像の観察時に、対物レンズ6を用いた場合と比べて、試料Sが受ける磁場の影響を低減することができる。したがって、例えば、磁場の影響を受けやすい試料の透過電子顕微鏡像を、当該試料の内部の状態を変化させることなく、観察することができる。
【0096】
また、本実施形態に係る透過電子顕微鏡100では、処理部20(制御部22)が、動作モードとして、上述した第1処理を行う第1モードと、上述した第2処理を行う第2モードとを有することができる。これにより、処理部20は、例えば、磁場の影響を受けやすい試料Sを観察する場合には、第1モードで動作し、磁場の影響を受けにくい試料Sを観察する場合には、第2モードで動作することができる。したがって、透過電子顕微鏡100によれば、試料が磁場の影響を受けやすいか否かなど、観察対象となる試料に応じて、動作モードを選択して動作させることができる。
【0097】
また、本実施形態に係る透過電子顕微鏡100では、制御部22が、投影レンズ10によって、受光部13に結像される試料Sの回折パターンDの向き(回転)や実空間像Rの向きを調整する処理を行うことができる。これにより、例えば、試料Sの向きと透過電子顕微鏡像の向き(回折パターンDの向きや実空間像Rの向き)を一致させることができる。さらに、例えば、回折パターンDの向きと、実空間像Rの向きを一致させることができる。
【0098】
また、本実施形態に係る透過電子顕微鏡像の観察方法によれば、第2対物レンズ8および投影レンズ10によって、試料Sの透過電子顕微鏡像(回折パターンD、実空間像R、明視野像BI、暗視野像DI)を結像することができる。すなわち、対物レンズ6を用いなくても、透過電子顕微鏡像を結像することができる。したがって、透過電子顕微鏡像の観察時に、試料Sが受ける磁場の影響を低減することができる。
【0099】
2. 第2実施形態
2.1. 透過電子顕微鏡の構成
次に、第2実施形態に係る透過電子顕微鏡の構成について説明する。図15は、第2実施形態に係る透過電子顕微鏡200の構成を説明するための図である。以下、透過電子顕微鏡200において、上述した透過電子顕微鏡100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0100】
透過電子顕微鏡200は、図15に示すように、上述した図1に示す透過電子顕微鏡100の構成部材に加えて、さらに、走査コイル210と、走査信号発生部220と、走査像生成部230と、を含んで構成されている。透過電子顕微鏡200は、走査型の透過電子顕微鏡である。
【0101】
走査信号発生部220および走査像生成部230は、図示の例では、処理部20に含まれている。なお、走査信号発生部220および走査像生成部230は、処理部20に含まれず、処理部20とは別に設けられていてもよい。
【0102】
走査コイル210は、照射レンズ4の後段に配置されている。走査コイル210は、照射レンズ4と対物レンズ6との間に配置されている。走査コイル210は、照射レンズ4から射出された電子線Lで試料S上を走査する。走査コイル210は、走査信号発生部220で生成された走査信号に基づいて、電子線Lを走査する。
【0103】
走査信号発生部210は、走査信号を生成する(発生させる)処理を行う。走査信号は、試料S上の位置情報に対応する。走査信号発生部210は、走査信号を走査コイル210に入力する処理を行う。
【0104】
走査像生成部230は、検出器12からの検出信号(電子線Lの強度信号)を、走査信号に同期させて画像化する処理を行う。これにより、走査像が生成される。ここで、走査像とは、検出信号と、走査信号とを同期させて得られた、試料位置に対応した信号量(電子線の強度)の分布を示す像である。なお、走査像は、透過電子顕微鏡で得られる像であり、透過電子顕微鏡像に含まれる。走査像生成部230は、表示部32に走査像を表示させる処理を行う。
【0105】
2.2. 透過電子顕微鏡の処理
次に、第2実施形態に係る透過電子顕微鏡の処理部の処理について説明する。まず、透過電子顕微鏡200の処理部20の第1処理およびその変形例について説明し、次に第2処理について説明する。
【0106】
2.2.1. 第1処理
まず、第1処理について説明する。図16は、第2実施形態に係る透過電子顕微鏡200の処理部20の第1処理の一例を示すフローチャートである。図17は、処理部20が第1処理を行う場合(第1モード)の透過電子顕微鏡200の動作を説明するための図である。なお、図16において、図3に示すステップ(S100〜S106)と同様の処理を行うステップには同じ符号を付している。以下、上述した図3に示す第1実施形態と同様の処理については、その詳細な説明を省略する。
【0107】
まず、制御部22は、試料Sに電子線Lが照射されるように照射レンズ4を制御する処理を行う(ステップS100)。具体的には、制御部22は、電子線Lを細く絞った電子線プローブが試料S上に生成されるように、照射レンズ4を制御する処理を行う。
【0108】
次に、制御部22は、試料Sの回折パターンDが制限視野絞り16が配置される第1面17に結像されるように第2対物レンズ8を制御する処理を行う(ステップS102)。これにより、図17に示すように、試料Sを透過した電子線Lで試料Sの回折パターンDを第1面17に結像することができる。
【0109】
次に、制御部22は、試料Sの回折パターンDが検出器12の受光部13に結像されるように、投影レンズ10を制御する処理を行う(ステップS104)。制御部22は、投影レンズ10の物面が第1面17に設定されるように投影レンズ10を制御する処理を行う。
【0110】
次に、走査信号発生部220は、走査信号を生成して、電子線プローブ(電子線L)で試料S上を走査するように走査コイル210を制御する処理を行う(ステップS200)。具体的には、走査信号発生部220は、試料S上の位置に対応する走査信号を生成し、走査コイル210に入力する。走査コイル210は、この走査信号に基づいて、電子プローブ(電子線L)を試料S上で走査する。
【0111】
次に、走査像生成部230は、試料Sの走査像を生成する処理を行う(ステップS202)。
【0112】
走査像生成部230には、検出器12から電子線の強度情報を含む検出信号が入力される。また、走査像生成部230には、走査信号生成部220から走査信号が入力される。走査像生成部230は、検出信号と、走査信号とを同期させて、試料位置に対応した信号量(電子線の強度)の分布、すなわち、試料Sの走査像を生成する処理を行う。
【0113】
次に、走査画生成部230は、生成した試料Sの走査像を、表示部32に表示させる処理を行う(ステップS204)。そして、処理部20は処理を終了する。
【0114】
なお、上述の例では、処理部20が、ステップS100、ステップS102、ステップS104、ステップS200、ステップS202、ステップ204の順で処理を行ったが、この順番は特に限定されず、例えば、これらのステップを同時に行ってもよい。
【0115】
第1処理により、第2対物レンズ8および投影レンズ10によって、回折パターンDを結像することができる。すなわち、対物レンズ6を用いなくても、回折パターンDを結像することができる。したがって、試料Sの回折パターンDおよび走査像の観察時に、試料Sが受ける磁場の影響を低減することができる。
【0116】
2.2.2. 第1処理の第1変形例
次に、第1処理の第1変形例について説明する。図18は、処理部20の第1処理の第1変形例の一例を示すフローチャートである。図19は、処理部20が第1処理の第1変形例の処理を行う場合の透過電子顕微鏡100の動作を説明するための図である。なお、図18において、図16に示すステップ(S100〜S104、S200〜S204)と同様の処理を行うステップには同じ符号を付している。以下、上述した図16に示す第2実施形態と同様の処理については、その詳細な説明を省略する。
【0117】
上述した図16に示す第2実施形態に係る第1処理では、処理部20は、試料Sの回折パターンDを取得するための処理を行った。これに対して、本変形例では、処理部20は、明視野像BI(走査像)を取得するための処理を行うことができる。
【0118】
まず、処理部20は、上述したステップS100,S102,S104,S200,S202,S204を行い、試料Sの走査像を表示部32に表示させる。
【0119】
次に、処理部20は、回折パターンDの透過波が選択されるように制限視野絞り16の位置を調整する処理を行う(ステップS210)。処理部20は、上述した図7に示すステップS120の処理と同様の処理を行って、透過波が選択されるように制限視野絞り16の位置を調整する処理を行う。
【0120】
次に、走査信号発生部220は、走査信号を生成して、電子線プローブ(電子線L)で試料S上を走査するように走査コイル210を制御する処理を行う(ステップS212)。
【0121】
次に、走査像生成部230は、試料Sの明視野像BI(走査像)を生成する処理を行う(ステップS214)。
【0122】
走査像生成部230には、検出器12から電子線の強度情報を含む検出信号が入力される。また、走査像生成部230には、走査信号生成部220から走査信号が入力される。走査像生成部230は、この検出信号と、走査信号とを同期させて、試料位置に対応した信号量(電子線の強度)の分布、すなわち、試料Sの走査像を生成する処理を行う。ここでは、試料Sの走査像は、試料Sの明視野像BIに相当する。
【0123】
次に、走査画生成部230は、生成した試料Sの明視野像BI(走査像)を、表示部32に表示させる処理を行う(ステップS216)。そして、処理部20は処理を終了する。
【0124】
第1変形例に係る処理により、第2対物レンズ8および投影レンズ10によって、明視野像BI(走査像)を結像することができる。したがって、試料Sの明視野像BI(走査像)の観察時に、試料Sが受ける磁場の影響を低減することができる。
【0125】
2.2.3. 第1処理の第2変形例
次に、第1処理の第2変形例について説明する。図20は、処理部20の第1処理の第2変形例の一例を示すフローチャートである。図21は、処理部20が第1処理の第2変形例の処理を行う場合の透過電子顕微鏡100の動作を説明するための図である。なお、図20において、図16に示すステップ(S100〜S104、S200〜S204)と同様の処理を行うステップには同じ符号を付している。以下、上述した図16に示す第2実施形態と同様の処理については、その詳細な説明を省略する。
【0126】
上述した図16に示す第2実施形態に係る第1処理では、処理部20は、試料Sの回折パターンDを取得するための処理を行った。これに対して、本変形例では、処理部20は、暗視野像DI(走査像)を取得するための処理を行うことができる。
【0127】
まず、処理部20は、上述したステップS100,S102,S104,S200,S202,S204を行い、試料Sの走査像を表示部32に表示させる。
【0128】
次に、処理部20は、回折パターンDの所定の回折波が選択されるように制限視野絞り16の位置を調整する処理を行う(ステップS220)。処理部20は、上述した図10に示すステップS130の処理と同様の処理を行って、所定の回折波が選択されるように制限視野絞り16の位置を調整する処理を行う。
【0129】
次に、走査信号発生部220は、走査信号を生成して、電子線プローブ(電子線L)で試料S上を走査するように走査コイル210を制御する処理を行う(ステップS222)。
【0130】
次に、走査像生成部230は、試料Sの暗視野像DI(走査像)を生成する処理を行う(ステップS224)。
【0131】
走査像生成部230には、検出器12から電子線の強度情報を含む検出信号が入力される。また、走査像生成部230には、走査信号生成部220から走査信号が入力される。走査像生成部230は、この検出信号と、走査信号とを同期させて、試料位置に対応した信号量(電子線の強度)の分布、すなわち、試料Sの走査像を生成する。ここでは、試料Sの走査像は、試料Sの暗視野像DIに相当する。
【0132】
次に、走査画生成部230は、生成した試料Sの暗視野像DI(走査像)を、表示部32に表示させる処理を行う(ステップS226)。そして、処理部20は処理を終了する。
【0133】
第2変形例に係る処理により、第2対物レンズ8および投影レンズ10によって、暗視野像DI(走査像)を結像することができる。したがって、試料Sの暗視野像DI(走査像)の観察時に、試料Sが受ける磁場の影響を低減することができる。
【0134】
2.2.4. 第2処理
次に、第2処理について説明する。図22は、第2実施形態に係る処理部20の第2処理の一例を示すフローチャートである。図23は、処理部20が第2処理を行う場合(第2モード)の透過電子顕微鏡200の動作を説明するための図である。なお、図22において、図16に示すステップ(S100〜S106,S200〜S204)と同様の処理を行うステップには同じ符号を付している。以下、上述した図16に示す第1処理と同様の処理については、その詳細な説明を省略する。
【0135】
まず、制御部22は、試料Sに電子線Lが照射されるように照射レンズ4を制御する処理を行う(ステップS100)。
【0136】
次に、制御部22は、試料Sの回折パターンDが生成されるように対物レンズ6を制御する処理を行う(ステップS230)。具体的には、制御部22は、対物レンズ6(コイル6a)に所定量の励磁電流を供給し、対物レンズ6を動作させる。これにより、図23に示すように、電子線Lを試料S上に集束させることができる。対物レンズ6によって、試料Sを透過した電子線Lで、試料Sの回折パターンDを結像させることができる。
【0137】
次に、制御部22は、対物レンズ6によって結像された試料Sの回折パターンDが検出器12の受光部13に結像するように、投影レンズ10を制御する処理を行う(ステップS232)。
【0138】
次に、処理部20は、上述したステップS200、S202、S204の処理を行う。これにより、表示部32に試料Sの回折パターンDが表示される。そして、処理部20は処理を終了する。
【0139】
なお、回折パターンDを得た状態から、制御部22が、対物レンズ6の条件を固定し、投影レンズ10の物面が実空間像が結像される面となるように投影レンズ10を制御する処理を行うことで、この領域の実空間像を得ることができる。
【0140】
第2処理により、対物レンズ6および投影レンズ10によって、試料Sの回折パターンDや実空間像等の透過電子顕微鏡像を結像することができる。
【0141】
本実施形態に係る透過電子顕微鏡200は、例えば、以下の特徴を有する。
【0142】
本実施形態に係る透過電子顕微鏡200によれば、走査コイル210、走査信号発生部220、および走査像生成部230を含んで構成されているため、走査像を生成することができる。
【0143】
また、本実施形態に係る透過電子顕微鏡200によれば、上述したように、処理部20(制御部22)が第1処理を行うことにより、第2対物レンズ8および投影レンズ10によって、試料Sの透過電子顕微鏡像(走査像)を結像することができる。すなわち、対物レンズ6を用いなくても、透過電子顕微鏡像を結像することができる。そのため、透過電子顕微鏡像の観察時に、試料Sが受ける磁場の影響を低減することができる。したがって、例えば、磁場の影響を受けやすい試料の透過電子顕微鏡像を、当該試料の内部の状態を変化させることなく、観察することができる。
【0144】
さらに、本実施形態に係る透過電子顕微鏡200では、処理部20(制御部22)が、動作モードとして、上述した第1処理を行う第1モードと、上述した第2処理を行う第2モードとを有することができる。これにより、処理部20は、例えば、磁場の影響を受けやすい試料Sを観察する場合には、第1モードで動作し、磁場の影響を受けにくい試料Sを観察する場合には、第2モードで動作することができる。したがって、透過電子顕微鏡100によれば、試料が磁場の影響を受けやすいか否かなど、観察対象となる試料に応じて、動作モードを選択して動作させることができる。
【0145】
2.3. 透過電子顕微鏡の変形例
次に、第2実施形態に係る透過電子顕微鏡の変形例について説明する。図24は、第2実施形態の変形例に係る透過電子顕微鏡300の構成を説明するための図である。図25は、透過電子顕微鏡300の制限視野絞り316を模式的に示す平面図である。なお、図25は、制限視野絞り316を、光軸A方向からみた図である。以下、透過電子顕微鏡300において、上述した透過電子顕微鏡200の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0146】
透過電子顕微鏡300では、図24および図25に示すように、制限視野絞り316は、環状のスリット316aを有している。
【0147】
制限視野絞り316は、環状のスリット316aによって、所定の角度(透過波に対する角度)の回折波DW(のみ)を通過させることができる。すなわち、制限視野絞り316によって、所定の角度の回折波DW(のみ)を選択することができる。これにより、環状暗視野像(走査像)を生成することができる。また、制限視野絞り316は、例えば、格子振動による熱散漫散乱によって高角度に非弾性散乱された電子(回折波)を選択して検出することにより、高角度散乱暗視野像(HAADF−STEM像)を生成することができる。
【0148】
なお、透過電子顕微鏡300の処理部20による処理のフローチャートは、図20に示すフローチャートと同様であるので、その図示および説明を省略する。
【0149】
透過電子顕微鏡300によれば、制限視野絞り316が、環状のスリット316aを有しているため、例えば、環状暗視野像や高角度散乱暗視野像を生成することができる。
【0150】
なお、制限視野絞りに環状のスリットを設けずに、環状の検出器(図示しない)を用いて、透過波を検出できないようにすることにより、同様の環状暗視野像や高角度散乱暗視野像を得てもよい。
【0151】
例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。また、必要に応じて、上述した実施形態にもこれらの変形例を適用できる。
【0152】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0153】
S 試料、L 電子線、A 光軸、M 磁場、R 実空間像、D 回折パターン、
BI 明視野像、DI 暗視野像、TW 透過波、DW 回折波、2 電子線源、
4 照射レンズ、6 対物レンズ、6a コイル、6b ヨーク、6c ポールピース、
8 第2対物レンズ、8a コイル、8b ヨーク、10 投影レンズ、12 検出器、
13 受光部、14 集束絞り、16 制限視野絞り、16a 貫通孔、17 第1面、
18 鏡筒、20 処理部、22 制御部、30 操作部、32 表示部、
34 記憶部、36 情報記憶媒体、100 透過電子顕微鏡、
200 透過電子顕微鏡、210 走査コイル、220 走査信号発生部、
230 走査画像生成部、300 透過電子顕微鏡、316 制限視野絞り、
316a 貫通孔、1000 透過電子顕微鏡、1002 電子線源、
1004 照射レンズ、1006 対物レンズ、1008 第2対物レンズ、
1010 投影レンズ、1012 検出器、1014 集束絞り、
1016 制限視野絞り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線を発生させる電子線源と、
前記電子線源からの前記電子線を試料に照射するための照射レンズと、
前記試料に磁場を印加してレンズ作用を発生させて、前記試料を透過した前記電子線で前記試料の透過電子顕微鏡像を結像するための対物レンズと、
前記試料を透過した前記電子線で前記試料の透過電子顕微鏡像を結像するための第2対物レンズと、
第1面に配置され、前記試料を透過した前記電子線の通過を制限するための制限視野絞りと、
前記対物レンズまたは前記第2対物レンズで結像された前記試料の透過電子顕微鏡像を第2面に結像するための投影レンズと、
前記第2面に配置された受光部を有し、前記試料の透過電子顕微鏡像を検出する検出器と、
少なくとも前記照射レンズ、前記第2対物レンズ、および前記投影レンズを制御する制御部と、
を含み、
前記第1面は、前記第2対物レンズと前記投影レンズとの間に位置し、
前記制御部は、
前記試料に前記電子線が照射されるように前記照射レンズを制御し、
前記試料の回折パターンが前記第1面に結像されるように前記第2対物レンズを制御し、
前記第2対物レンズで結像された前記試料の透過電子顕微鏡像が前記第2面に結像されるように前記投影レンズを制御する第1処理を行う、透過電子顕微鏡。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御部は、動作モードとして、前記第1処理を行う第1モードと、第2処理を行う第2モードと、を有し、
前記制御部は、さらに、前記対物レンズを制御し、
前記第2処理は、
前記試料に前記電子線が照射されるように前記照射レンズを制御し、
前記試料の透過電子顕微鏡像が結像されるように前記対物レンズを制御し、
前記対物レンズで結像された前記試料の透過電子顕微鏡像が前記第2面に結像されるように前記投影レンズを制御する処理を含む、透過電子顕微鏡。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記制御部は、前記第1処理において、前記投影レンズを制御して、前記第2面に結像される前記試料の透過電子顕微鏡像の向きを調整する処理を行う、透過電子顕微鏡。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
走査信号を生成する走査信号発生部と、
前記走査信号に基づいて、前記照射レンズからの前記電子線で前記試料上を走査するための走査コイルと、
前記検出器からの検出信号を前記走査信号に同期させて画像化する走査像生成部と、
を含む、透過電子顕微鏡。
【請求項5】
照射レンズを用いて、電子線源からの電子線を試料に照射する工程と、
第2対物レンズを用いて、前記試料を透過した電子線で前記試料の回折パターンを制限視野絞りが配置される面に結像する工程と、
投影レンズを用いて、前記第2対物レンズによって結像された前記試料の透過電子顕微鏡像を検出器の受光部に結像する工程と、
を含む、透過電子顕微鏡像の観察方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記投影レンズを用いて前記試料の透過電子顕微鏡像を結像する工程では、前記投影レンズを用いて、前記第2面に結像される前記試料の透過電子顕微鏡像の向きを調整する、透過電子顕微鏡像の観察方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2013−96900(P2013−96900A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241274(P2011−241274)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】