説明

透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッドおよびその製造方法

【課題】別途の標式付着工程を行なわないで効率的に3次元イメージを得ることができる透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッドを提供する。
【解決手段】上部構造を保護するシートメッシュ110と、シートメッシュ110上に具備されてナノ粒子130が分散している支持膜120とを含む、透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド100とその製造方法を提供する。本発明の透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド100は、従来の3次元観察のための試料準備過程を単純化して、効率的な観察を可能にする。つまり本発明は、試料を付着する前に標識を備える。その結果、試料が非晶質試料、医生物試料および化学試料の場合、従来のグリッドとは異なり、標識を付着するのが難しく3次元イメージを得にくかった点を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド(Moon grid)およびその製造方法に関する。より詳細には、上部構造を保護するシートメッシュと、シートメッシュ上に具備してナノ粒子が分散している支持膜とを含む、透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッドおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy)は、ナノ規模で材料や医生物を研究するのに最も普遍的な研究装備として認識されている。
【0003】
一般的に透過電子顕微鏡は、試料を透過した電子によって形成される2次元のイメージを観察するため、空間分解能が約0.1nm程度と優秀である。
【0004】
しかし、試料の厚さ方向の情報には、電子の進行方向上の上部に位置した物体の影が下部の物体と重なったり、上部に位置した物体の情報と下部に位置した物体の情報とが互いに重畳したりするなどの問題が発生するようになり、重畳した情報を正確に把握することが難しい。
【0005】
このような問題点を解決したり補ったりするために最近では、医薬分野のCT(Computed Tomograph)技術を応用したTEMトモグラフ(Tomography)またはSTEMトモグラフなどが開発されている。前記技術を使用して非晶質材料、高分子材料(化学材料)、および医生物の3次元構造解析を含めた半導体の故障解析など、応用範囲が拡大している。
【0006】
前記のTEMトモグラフまたはSTEMトモグラフ技術を使用して試料の3次元映像を得る過程を、下記に簡略に説明する。
【0007】
まず、透過電子顕微鏡観察が可能になるように薄膜試料を準備する。薄膜試料の試料準備は超薄切片法、分散法、およびFIB法(Pick−up法、Micro−sampleing法など)などのうちからいずれか一つの方法を使用できる。超薄切片法で準備する医生物や高分子薄膜試料の場合、染色を進行させる場合がある。
【0008】
そして薄膜試料をグリッドに付着し、更に標式を付着する。
【0009】
そして、薄膜試料と標式が付着したグリッドを、TEMトモグラフまたはSTEMトモグラフが可能な透過電子顕微鏡の試料支持台に入れて撮影することによって、2次元映像を得る。薄膜試料を連続的に傾斜させることによって、複数の2次元映像を得る。
【0010】
そして、2次元イメージをコンピュータ処理することによって、3次元イメージに再構築する。
【0011】
2次元イメージから3次元イメージに再構築する時、付着した標式を基準点に使用して再構築することになる。
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0057556号公報
【特許文献2】米国特許第7,194,122号明細書
【特許文献3】米国特許第7,366,279号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って前記標式は、2次元イメージを3次元イメージに再構築する際に重要な役割をする。付着した標式の大きさ、数量および分布の適切性の有無は、TEMトモグラフまたはSTEMトモグラフの分解能だけではなく、TEMトモグラフまたはSTEMトモグラフの成敗を左右し得る。
【0013】
薄膜試料によっては、標式付着のための条件設定に多くの時間と努力を要する。場合によっては標式付着に失敗する場合もある。すなわち、前記標式を過多に付着するなどの理由によって、薄膜試料が覆い隠されたり、標式が付着しない標式付着失敗が発生したりする場合もある。
【0014】
このような作業は、効率的なTEMトモグラフまたはSTEMトモグラフの作業に大きな障害になっており、不必要な時間浪費の主要原因である。よって、標式付着過程の高効率化のために標式付着過程の改善が求められている。
【0015】
以上のことに鑑みて、本発明は、このような従来技術の諸般の短所と問題点を解決するための研究の結果、上部構造を保護するシートメッシュと、シートメッシュ上に具備されナノ粒子が分散している支持膜とを含むことを特徴とする、透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッドを製作する。該グリッドが、試料準備過程で別途の標式付着工程を行なわずに効率的に3次元イメージを得ることができることを確認して、本発明を完成した。
【0016】
本発明の目的は、別途の標式付着工程を行なわずに効率的に3次元イメージを得ることができるようにする、透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッドを提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するために本発明は、上部構造を保護するシートメッシュと、シートメッシュ上に具備されてナノ粒子が分散している支持膜とを含む透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッドを提供し、ナノ粒子は2次元イメージを3次元イメージに再構築時の基準点になることを特徴とする。
【0019】
本発明の目的は、支持膜形成用パウダとクロロホルムを混合して支持膜形成用混合溶液を製造する工程(工程1)と、前記混合溶液に一定量のナノ粒子を混合して超音波を使用して分散させる工程(工程2)と、ナノ粒子が分散した前記混合溶液にガラス基板を浸漬させる工程(工程3)と、前記混合溶液に浸漬してナノ粒子が沈積したガラス基板を一定速度で引き上げた後に自然乾燥させることによって、基板ガラス表面にナノ粒子が分散した支持膜を形成する工程(工程4)と、および、前記支持膜をガラス基板から分離してそして支持膜にシートメッシュを積層させることによって3次元観察専用ムーングリッドを形成する工程(工程5)とを含む、透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッドの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッドは、従来の3次元観察のための試料準備過程を単純化して、効率的な観察を可能にする。更に、試料を付着する前に標式を具備している。よって従来のグリッドとは異なり、標識を付着することが難しくて3次
元イメージを得にくかった試料の3次元観察を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッドを提供する。
本発明の透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッドは、上部構造を保護するシートメッシュと、シートメッシュ上に具備されてナノ粒子が分散している支持膜とを含むことができる。
【0022】
ナノ粒子は、以後、透過電子顕微鏡で獲得した2次元イメージを3次元に再構築する時、基準点または標式として使用される。従ってナノ粒子の平均粒径は3mm〜200nmで、透過電子顕微鏡の2次元イメージに標式として残ることができる大きさおよび物質からなることが好ましい。
【0023】
たとえばナノ粒子は、球形および8面体のような多面体などで形態が一定で、マグネシウムの密度(1.783g/cm)よりも大きな非晶質または結晶質物質でありさえすれば使用できる。またナノ粒子に使用され得る物質は、具体的には非晶質シリカ、結晶金粒子、銀、白金、アルミナおよびα−Feなどがある。この理由として、ナノ粒子は2次元イメージで一定形態の標式として残っていさえすれば良いからである。
【0024】
本発明は、透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッドの製造方法を提供する。
本発明の製造方法は、支持膜形成用パウダとクロロホルムを混合して支持膜形成用混合溶液を製造する工程(工程1)と、前記混合溶液に一定量のナノ粒子を混合して超音波を使用して分散させる工程(工程2)と、ナノ粒子が分散した前記混合溶液にガラス基板を浸漬させる工程(工程3)と、前記混合溶液に沈積されたガラス基板を一定速度で引き上げた後に自然乾燥させることによって、基板ガラス表面にナノ粒子が分散した支持膜を形成する工程(工程4)と、および、前記支持膜をガラス基板から分離して支持膜にシートメッシュを積層させることによって3次元観察専用ムーングリッドを形成する工程(工程5)とを含む。
【0025】
前記方法で製造した本発明の透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッドは、以下の問題点を解決できる。従来では試料準備工程、グリッド準備工程、グリッド上に試料付着工程、試料が付着したグリッド上に標式付着工程、多角度イメージ獲得工程、および3次元再構築工程の順に、透過電子顕微鏡3次元観察を進行した。つまり従来では、多角度イメージ獲得前に、グリッド上に試料と標式を順次に付着した。よって従来では、試料によっては標式付着工程のための条件設定に多くの時間と努力を要した。つまり従来では、場合によっては標式付着に失敗する場合もあり、非効率的な実験進行が行なわれていた。しかし本発明の透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッドを使用することによって、このような問題点を解決できる。
【実施例1】
【0026】
本発明の目的と技術的構成およびそれによる作用効果に関する詳しい事項は、本発明の好ましい実施例を図示している図面を参照した以下詳細な説明によって、より明確に理解されるだろう。明細書全体にわたって同一な参照番号は、同一構成要素を示している。
【0027】
図1は、本発明の一実施例による透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド100を示した斜視図である。
【0028】
図1に示すように、本発明の一実施例による透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド100は、シートメッシュ110と支持膜120を含む。
【0029】
本発明の透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド100において、支持膜120には、内部および表面に均一にナノ粒子130が分散されていることができる。ナノ粒子130は、透過電子顕微鏡で観察する時、一定の大きさで均一に表示される。
【0030】
ナノ粒子130は、平均粒径が3mm〜200nm、好ましくは観察倍率によって20mm〜100nmであることが好ましい。
【0031】
ナノ粒子130は、2次元イメージで一定形態の標式として残っていさえすれば良い。よってナノ粒子130は、球形や8面体のような多面体などであり、そして形態一定で、大きさ一定であれば如何なる物質を使用しても構わない。ナノ粒子130は、このような条件を満足し、かつマグネシウムの密度(1.783g/cm)よりも大きな非晶質または結晶質物質でありさえすれば使用できる。またナノ粒子130に使用され得る物質は、具体的には非晶質シリカ、結晶金粒子、銀、白金、アルミナ、およびα−Feなどである。ナノ粒子130の大きさ、形態および材質は、試料によって変化させることができる。
【0032】
本発明の透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド100において、支持膜120は、フォームバー(Formvar)、コロジオン(Collodion)およびビューツバル(Butvar)のうちの一フイルムからなることができる。
【0033】
本発明の透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド100において、シートメッシュ110は、透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド100を支える構造物である。シートメッシュ110の大きさは試料の大きさによって決定できる。
【0034】
一般的にシートメッシュ110のメッシュ(♯)の大きさは、50、75、100、150、200等の多様な大きさであることができる。シートメッシュ110のメッシュ(♯)の大きさを選択する際、試料の大きさよりも小さく、ナノ粒子130の大きさよりも大きなメッシュ(♯)の大きさを選択して使用することが好ましい。この理由は、試料中の被観察領域に対して多角度で2次元観察イメージを得る時、視野が遮られることが起きないようにする大きさでなければならないからである。
【0035】
ここでシートメッシュ110の外径は、多様な大きさ(たとえば2mmまたは3mm)にすることができるが、透過電子顕微鏡試料支持台(TEM holder)の試料設置部分の内径に相応しい大きさで使用する。必要な場合には、シートメッシュ110を2等分または2/3に切断して使用したりする。
【0036】
シートメッシュ110の材質は、Cu、Ni、Au、PtおよびMoなどからなり得る。
【0037】
従って本発明の一実施例による透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド100では、支持膜120の内部および表面にナノ粒子130が均一に分散している。このため、透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド100上(正確には支持膜120表面上)に試料を付着して、透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド100を透過電子顕微鏡に装入して多角度で観察すると、試料とナノ粒子130がそれぞれ試料イメージと標式によって表示される多数個の2次元イメージを獲得できる。よって標式を基準点にして、2次元イメージを3次元イメージに再構築できるようになる。
【0038】
透過電子顕微鏡内に装入された透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド100上の試料について、所定の角度範囲(たとえば+60゜〜−60゜)内で角度を変化させながら多数個の2次元イメージを獲得する。
【0039】
図2(a)〜図2(i)は、本発明の一実施例による透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド100の製造方法を示す。
【0040】
図2(a)に示すように、まず第1ビーカ210などに支持膜形成用パウダとクロロホルムを混合して、支持膜形成用混合溶液220を製造する。
【0041】
支持膜形成用パウダは、フォームバーパウダ、コロジオンパウダおよびビューツバルパウダのうちのいずれか一つであり得る。
【0042】
ここで本発明では、フォームバーパウダを使用して支持膜形成用混合溶液220を製造した。支持膜形成用混合溶液220を製造する方法としては、フォームバーパウダとクロロホルムを混合して、0.3%のフォームバー支持膜形成用混合溶液を製造した。
【0043】
続いて図2(b)に示すように、支持膜形成用混合溶液220の中にナノ粒子130を混合する。ナノ粒子130は、平均粒径が3mm〜200nmで、形態が球形で比重が大きい非晶質粒子であることが好ましい。ナノ粒子130の材質としては、ナノ粒子130が透過電子顕微鏡のイメージにおいて標式になることができるように、透過電子顕微鏡で撮影され得る物質なら、何を使用しても構わない。本発明ではナノ粒子130には、非晶質でありかつ球形であるシリカを使用した。
【0044】
そしてナノ粒子130が混合した支持膜形成用混合溶液220に超音波を加えて、ナノ粒子130が支持膜形成用混合溶液220中に均一に分散するようにする。超音波には、図示していないが超音波洗浄器を使用できる。すなわちナノ粒子130が混合した支持膜形成用混合溶液220が入っている第1ビーカ210を、超音波洗浄器に装入し、一定時間にわたって超音波を第1ビーカ210に加える。その結果、ナノ粒子130を支持膜形成用混合溶液220中に均一に分散できる。
【0045】
次に図2(c)に示すように、ナノ粒子130が分散した支持膜形成用混合溶液220中にガラス基板240を浸漬させる。
【0046】
続いて図2(d)に示すように、ガラス基板240を支持膜形成用混合溶液220外部に一定速度で引き上げる(矢印245方向)。ガラス基板240の引上げ速度は、分速1cm〜分速10cmの範囲にする。ガラス基板240は、表面に支持膜形成用混合溶液220と、支持膜形成用混合溶液220に分散しているナノ粒子130とが付着した状態で外部に出るようになる。
【0047】
そしてガラス基板240を自然乾燥させることによって、ナノ粒子130が分散した支持膜母体225を製造する。支持膜母体225には、図3の写真のようにナノ粒子130が分散している。
【0048】
続いて図2(e)に示すように、支持膜母体225を剃刀刃またはナイフなどの切断部材250で切断して、一定の大きさの支持膜120を形成する。
【0049】
続いて図2(f)に示すように、ガラス基板240を、蒸留水260を入れた第2ビーカ270に入れる。すると、一定の大きさの支持膜120はガラス基板240から分離して、蒸留水260の表面に浮かぶ。
【0050】
次に図2(g)に示すように、蒸留水260表面に浮かんでいる支持膜120上に、一つ以上のシートメッシュ110を積層させる。シートメッシュ110は、透過電子顕微鏡
3次元観察専用ムーングリッド100を支える構造物であり、大きさは試料の大きさによって決定できる。すなわち、シートメッシュ110のメッシュ(♯)の大きさは、試料中の被観察領域に対して多角度で2次元観察イメージを得る時に視野が遮られることが起きない程度に大きくなければならない。
【0051】
続いて図2(h)に示すように、シートメッシュ110が積層された支持膜120上にパラフィルム290を積層させる。パラフィルム290は、シートメッシュ110と支持膜120を、蒸留水260から引き上げる時に保護する役割をする。
【0052】
続いて、支持膜120とシートメッシュ110からなる透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド母体200と、透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド母体200を保護するパラフィルム290とを、ピンセット300などを使用して蒸留水260から引き上げる。
【0053】
続いて図2(i)に示すように、透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド母体200を蒸発皿400などに移動させた後、自然乾燥させる。蒸発皿400にはあらかじめ油紙410などを敷いておいて、透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド母体200から蒸留水が容易に流れ出るようにする。
【0054】
続いて、図2では図示していないが、透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド母体200をパラフィルム290から分離することによって、図1の透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド100を完成する。
【0055】
図4は、本発明の一実施例によって製造された透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド100を使用して、透過電子顕微鏡で3次元立体映像を獲得する方法を示したフローチャートである。
【0056】
図4に示すように、まず図2の上記方法で透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド100を製造する(ステップS1)。
【0057】
続いて、透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド100上に試料を付着する(ステップS2)。透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド100は、シートメッシュ110、ナノ粒子130が分散した支持膜120、および試料の順に積層されている。
【0058】
続いて、透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド100を透過電子顕微鏡内部に装入して装着する(ステップS3)。
【0059】
続いて、透過電子顕微鏡内部に装着された試料を多角度で観察して、多数の2次元イメージを獲得する(ステップS4)。2次元イメージは、透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド100上に付着している試料を+60゜〜−60゜まで角度を変化させながら獲得する。獲得した2次元イメージには、試料のイメージだけではなく、透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド100の支持膜120に分散したナノ粒子130が標式として存在するようになる。
【0060】
続いてコンピュータを使用して、獲得された2次元イメージを3次元イメージに再構築する(ステップS5)。2次元イメージを3次元イメージに再構築する時、2次元イメージに現われる標式を基準点にして再構築する。標式は、図3を参照して説明したナノ粒子130がイメージで現われたものである。
【0061】
従って本発明は、シートメッシュ110と、ナノ粒子130が分散している支持膜12
0とを含む透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド100と、透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド100の製造方法とを提供する。よって従来とは異なり、3次元の透過電子顕微鏡イメージを得にくかった非晶質試料、医生物試料および化学試料などのイメージを手軽に得ることができる。更に、標式に使用されるナノ粒子130が支持膜120内部に予め分散しているため、試料付着後に標式を付着する過程を省略できる。よって実験過程を単純化できる効果がある。
【0062】
本発明は、以上で詳しくみたように好ましい実施例を挙げて図示して説明したが、前記の実施例に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲内で当該発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって多様な変更と修正が可能だろう。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施例による透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッドを示した斜視図。
【図2】図2(a)〜図2(i)は、図1の透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッドの製造工程を示した図。
【図3】本発明の一実施例による、ナノ粒子が分散した支持膜を透過電子顕微鏡で撮影した写真の図。
【図4】図1の透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッドを使用して、透過電子顕微鏡で3次元立体映像を獲得する方法を示したフローチャート。
【符号の説明】
【0064】
100:透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド
110:シートメッシュ
120:支持膜
130:ナノ粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造を保護するシートメッシュと、
前記シートメッシュ上に具備されナノ粒子が分散している支持膜と
を備える透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッドであって、
前記ナノ粒子は2次元イメージを3次元イメージに再構築する時の基準点になることを特徴とする、透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッド。
【請求項2】
前記ナノ粒子の平均粒径は3mm〜200nmである、請求項1に記載のムーングリッド。
【請求項3】
前記ナノ粒子の形態は球形または多面体である、請求項1または2に記載のムーングリッド。
【請求項4】
前記ナノ粒子は、マグネシウムの密度(1.783g/cm)よりも大きな非晶質または結晶質物質である、請求項3に記載のムーングリッド。
【請求項5】
請求項1に記載の透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッドの製造方法であって、前記製造方法は、
支持膜形成用パウダとクロロホルムを混合して支持膜形成用混合溶液を製造する工程と、
前記支持膜形成用混合溶液に一定量のナノ粒子を混合して超音波を使用して分散させる工程と、
前記ナノ粒子が分散した前記支持膜形成用混合溶液にガラス基板を浸漬させる工程と、
前記支持膜形成用混合溶液に浸漬してナノ粒子が沈積したガラス基板を一定速度で引き上げた後、自然乾燥させることによって前記基板ガラスの表面に前記ナノ粒子が分散した支持膜を形成する工程と、および
前記支持膜を前記ガラス基板から分離して、前記支持膜にシートメッシュを積層させて3次元観察専用ムーングリッドを形成する工程と
を備える、請求項1に記載の透過電子顕微鏡3次元観察専用ムーングリッドの製造方法。
【請求項6】
前記ナノ粒子の平均粒径は3mm〜200nmである、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ナノ粒子の形態は球形または多面体である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ナノ粒子は、マグネシウムの密度(1.783g/cm)よりも大きな非晶質または結晶質物質である、請求項6に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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