説明

逐次二軸延伸フィルムの製造方法

【課題】広幅で高倍率の場合にネックダウン量が不安定になりやすく、ネックダウン変化量を抑えるためにエッジ厚みを上げると、端部でのニップ力が上がるが、口金にてエッジ厚みを厚くしフィルム形状因子αを上げた場合、エッジの予熱が十分に出来ず、延伸時にフィルムが配向結晶化してしまい横延伸工程で破断してしまうが、このような問題を解決する逐次二軸延伸フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】フィルムエッジにエンボス加工を施すエンボス工程、ロール式の縦延伸工程をこの順に有することを特徴とする、逐次二軸延伸フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逐次二軸延伸フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂フィルムの二軸延伸方法として、逐次二軸延伸と同時二軸延伸がある。同時二軸延伸では、生産性を高めるために延伸前のフィルム端部の最大高さはフィルム中央部の平均厚みに比べ1〜3倍厚くする事が提案されている(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−105131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
逐次二軸延伸の縦延伸工程において、延伸前にニップロールを用いフィルムを把持し、ロール間で高いドロー比をかけて延伸を行うが、その時、フィルムが幅方向に縮んでしまう。幅方向の縮み量(ネックダウン量)が不安定で急に大きくなった場合、その後の横延伸工程でクリップがフィルムをうまく把持できず破断する。特に、広幅で高倍率の場合にネックダウン量が不安定になりやすい。ネックダウン変化量を抑えるため、中央部厚みに比べエッジ厚みを厚くすると端部でのニップ力が上がり、ネックダウン量が安定する。しかし、口金にてエッジ厚みを厚くした場合、エッジの予熱が十分に出来ず、横延伸時にフィルムが配向結晶化し横延伸工程で破断してしまい生産性を著しく下げてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するための本発明は、以下である。
1) フィルムエッジにエンボス加工を施すエンボス工程、ロール式の縦延伸工程をこの順に有することを特徴とする、逐次二軸延伸フィルムの製造方法。
2) エンボス工程後縦延伸工程前のフィルム形状因子αが、1.5以上10以下であることを特徴とする、請求項1に記載の逐次二軸延伸フィルムの製造方法。
【0006】
ここで、フィルム形状因子αとは、フィルム端部の最大高さDeに対するフィルム中央部の平均厚みDcの比率(α=De/Dc)である。
3) 縦延伸工程後、横延伸工程を有し、
横延伸工程後、エンボス加工されたフィルムエッジを切断する切断工程を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の逐次二軸延伸フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、縦延伸工程においてネックダウン量が安定し、フィルムが破断せずに安定して生産できる。また、エッジ厚みを口金にて無理に厚くする必要がなく、エッジロス量を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を説明する。
【0009】
本発明におけるフィルムとは、特に限定されないが、熱可塑性樹脂フィルムを意味する。
【0010】
熱可塑性樹脂フィルムとは、特に限定されないが、代表的な例を挙げれば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2、6−ナフタレート、ナイロン−6、ポリフェニリンサルファイドなどが好適に用いられる。
【0011】
上述のポリエチレンテレフタレート等の原料から、粒子含有ペレットや粒子などを実質的に含有しないペレットを作成し、これらを適宜乾燥した後、公知の溶融押出機に供給し、ポリマーフィルターにより濾過する。
【0012】
本発明の製造方法は、フィルムエッジにエンボス加工を施すエンボス工程、及び、ロール式の縦延伸工程をこの順に有することが特徴である。つまり、縦延伸工程前に、エンボス工程を有することが重要である。そこで、縦延伸工程前のエンボス工程について、説明する。
【0013】
スリット状のスリットダイからシート状に押出し、キャスティングロール上で冷却固化して未延伸(未配向)フィルムを作った後、エンボス工程を通過する。
【0014】
エンボス工程では、(未配向)フィルムエッジにエンボス加工を施すが、ここでいうフィルムエッジとは、(未配向)フィルムの両端部の端から0〜30mmの範囲を意味する。エンボス工程では、フィルムの両端部の端から0〜30mmの範囲の少なくとも一部において、エンボス加工を施されることが重要である。
【0015】
また本発明の製造方法は、エンボス工程後、縦延伸工程前のフィルム形状因子αが、1.5以上10以下であることが好ましい。
【0016】
ここで、フィルム形状因子αとは、フィルム端部の最大高さDeに対するフィルム中央部の平均厚みDcの比率(α=De/Dc)である。
【0017】
エンボス工程後、縦延伸工程前のフィルム形状因子αを1.5以上10以下とするためには、エンボス工程におけるエンボス加工によって、フィルム形状因子を1.5〜10とすることが好ましい。
【0018】
エンボス工程後、縦延伸工程前のフィルム形状因子αは、より好ましくは2〜8、さらに好ましくは3〜7である。
【0019】
フィルムエッジにおいてエンボス加工される幅は、3〜10mm、好ましくは5〜7mmである。
【0020】
エンボス加工の方法としては、加熱方式、圧着方式どちらでもよいが、加熱方式の方が好ましい。かかるフィルム端部にエンボス加工をほどこしたフィルムを長手方向および幅方向の二軸に延伸する(縦延伸工程、横延伸工程を通過する)ことにより、二軸延伸ポリエステルフィルムを得ることができる。
【0021】
縦延伸工程においては、延伸温度は、例えば70〜130℃であり、好ましくは75〜120℃、さらに好ましくは80〜110℃である。延伸温度が70℃よりも低いとフィルムが破断しやすく、延伸温度が130℃よりも高いと高分子が配向されず、幅方向に延伸する際に、破断しやすくなる。また、延伸倍率は、2.5〜5.0倍、好ましくは、2.7〜3.8倍である。延伸倍率が2.5倍よりも小さいと、必要な強度が得られにくい場合がある。一方、倍率が5.0倍よりも大きくなると、高分子の配向が強く、幅方向に延伸する際に、破断しやすくなる。
【0022】
逐次延伸法を用いる場合、縦延伸工程後に横延伸工程へ通すこととなるが、フィルム厚み、速度、インラインコーティング有無等によるが、上記の方法で得られた一軸延伸フィルムを、例えば80〜160℃、好ましくは、85〜130℃、さらに好ましくは、90〜120℃で幅方向に好ましくは、2.5〜6.0倍、好ましくは、3.0〜5.5倍、さらに好ましくは3.5〜5.0倍幅方向に延伸する。かかる温度、倍率範囲を外れると延伸ムラあるいはフィルム破断などの問題を引き起こすことがある。特に延伸温度が80℃よりも低いとフィルムが破断しやすく製造が難しい場合がある。一方、延伸温度が160℃よりも高いと離型用途として十分な強度が得られない場合がある。
【0023】
延伸後、必要に応じて200〜240℃、好ましくは205〜235℃、さらに好ましくは210〜230℃で、熱固定を行い、続いて25%以内の弛緩を行い、本発明の二軸配向(二軸延伸)フィルムを得る。特に、熱固定温度が200℃よりも低くなると結晶性が進まないためポリエステルの構造が安定しないことがある。
【0024】
本発明の製造方法は、縦延伸工程後、横延伸工程を有するが、さらに横延伸工程後、厚みが厚いエッジ部分は、切断工程においてエンボス加工部分とともに切断し除去することが好ましい。
【0025】
(実施例)
以下、実施例で本発明を詳細に説明する。
フィルムの特性値の測定方法、並びに効果の評価方法は、次の通りである。
【0026】
1.フィルム端部の最大高さDe
PEACOCK株式会社製ダイヤルシックネスゲージローラ付きタイプ(HR-1)を用い、縦延伸工程後であり、かつ横延伸工程前の走行中のフィルムの厚みを測定した。フィルム端部から40mm内側のところに、測定器を挿入し、エッジ外側に移動させながら厚みを測定し、一番厚い部分を最大厚みDeとした。
【0027】
2.フィルムの中央部平均厚みDc
製品の平均厚みD0、長手方向の倍率d1、幅方向の倍率d2より、縦延伸工程後であり、かつ横延伸工程前のフィルム中央部の平均厚みDcを次の式で算出した
Dc=D0/(d1・d2)
3.形状因子α
上記のDe、Dcより、次の式で算出した。
【0028】
α=De/Dc
4.縦延伸出口のネックダウン変動量評価方法
縦延伸出のフィルム両端に透過型レーザ式判別変位センサを取り付け、1分間、端部位置の変化量を記録する。そして、最大値から最小値を引いた値をネックダウン変動量とした。変動量の評価としては、次のとおりである。
【0029】
変動量 評価
0〜10mm ○
10〜20mm △
2-0〜 ×
5.フィルム破断評価
24時間逐次2軸延伸を行い、破断回数から以下のとおり評価した。
【0030】
破れ回数 評価
0回 ○
1〜2回 △
3以上 ×
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレートのペレットを160℃で8時間乾燥した後、押出機に供給し、275℃で溶融押出しして濾過を行った。その後、285℃に保ったスリットダイを介し冷却ロール上に静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングドラムに巻き付け冷却個化し、未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムに、両端部から10mmの位置に加工幅6mm、形状因子α=7のエンボス加工を行った。かかるフィルムを100℃で長手方向に3.6倍延伸し、一軸配向ポリエステルフィルムを得た。その後、この一軸延伸ポリエステルフィルムを、テンタに導入し、温度100℃で幅方向に3.6倍延伸した後、定長化225℃で熱処理した。その後、さらに幅方向に6%の弛緩処理を施し、全厚みを12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。結果は、表1の通りであった。
【0031】
(実施例2)
形状因子α=1.5以外は、実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。結果は、表1のとおりであった。
【0032】
(実施例3)
形状因子α=10以外は、実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。結果は、表1のとおりであった。
【0033】
(比較例1)
形状因子α=1.2以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。結果は、表1のとおりであった。
【0034】
(比較例2)
エンボス加工を施さず、口金の厚み調整にて形状因子α=7の未延伸フィルムを実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た、結果は、表1のとおりであった。
【0035】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムエッジにエンボス加工を施すエンボス工程、及び、ロール式の縦延伸工程をこの順に有することを特徴とする、逐次二軸延伸フィルムの製造方法。
【請求項2】
エンボス工程後、縦延伸工程前のフィルム形状因子αが、1.5以上10以下であることを特徴とする、請求項1に記載の逐次二軸延伸フィルムの製造方法。
ここで、フィルム形状因子αとは、フィルム端部の最大高さDeに対するフィルム中央部の平均厚みDcの比率(α=De/Dc)である。
【請求項3】
縦延伸工程後、横延伸工程を有し、
横延伸工程後、エンボス加工されたフィルムエッジを切断する切断工程を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の逐次二軸延伸フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2013−59863(P2013−59863A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197952(P2011−197952)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】