説明

通信システム、中継通信装置、電磁誘導通信装置、中継通信装置及び電磁誘導通信装置の組み合わせ

【課題】電磁誘導方式又は電磁結合方式で通信する通信システム、中継通信装置、電磁誘導通信装置、中継通信装置及び電磁誘導通信装置の組み合わせを提供する。
【解決手段】通信システム10は、ICカード40が、電磁誘導方式で通信可能なICチップ41と、導電プレート42A,42Bとを備え、中継通信装置30が、中継ループアンテナ31と、一対の導電部材32A−1,32B−1,32A−2,32B−2とを備え、導電部材32A−1,32B−1,32A−2,32B−2は、導電プレート42A,42Bを表裏から挟み込むように配置され、電磁誘導通信装置20が、中継ループアンテナ31との間で電磁誘導方式により通信する通信装置側ループアンテナ21aと、ICチップ41との間で通信処理をする制御部27とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導方式又は電磁結合方式で通信する通信システム、中継通信装置、電磁誘導通信装置、中継通信装置及び電磁誘導通信装置の組み合わせに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、利用者が所持するICカードを電磁誘導方式によって読み取る(又は書き込む)通信システムがあった(例えば特許文献1)。このような通信システムのICカードは、少なくとも非接触通信機能を有するICチップとアンテナコイルにより構成されており、ICカード内に具備されたICチップは、リーダライタから送出された信号より駆動電力の供給を受け、リーダライタから送出されるアナログ信号を受信しデジタル変換し、応答信号を返送することによりデータ送受信を実現している。非接触ICカードは、交通システム、電子マネー、社員証システム、物流管理等の各種システムで用いられている。
非接触ICカード用いた通信方式としては、通信周波数帯域に応じて、電磁結合方式、静電結合方式、電磁誘導方式、電波方式が用いられており、カード形態の非接触IC通信システムでは、電磁誘導方式が主流となっている。
しかし、電磁誘導方式の通信システムは、ICカードのアンテナコイルをエッチング等により形成するため高コストであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−123121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、電磁誘導方式又は電磁結合方式で通信するシステムを低コストで実現できる通信システム、中継通信装置、電磁誘導通信装置、中継通信装置及び電磁誘導通信装置の組み合わせを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により、課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。また、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【0006】
第1の発明は、情報記憶媒体と電磁誘導通信装置との間に中継通信装置を介在させ、前記情報記憶媒体と通信する通信システムであって、前記情報記憶媒体(40,240,340,440,540)は、電磁誘導方式又は電磁結合方式で通信可能なICチップ(41,241,341,441,541)と、前記ICチップに接続され、導電性を有する一対の導電プレート(42A,42B,242A,242B,342A,342B,442A,442B,542A,542B)とを備え、前記中継通信装置(30,230,330,430,530)は、中継ループアンテナ(31,331,531)と、前記中継ループアンテナの両端に接続され、前記情報記憶媒体の前記導電プレートとの間で静電結合し、導電性を有する導電部材(32A−1,32A−2,32B−1,32B−2,232A−1,232A−2,232B−1,232B−2,332A−1,332A−2,332B−1,332B−2,432A−1,432A−2,432B−1,432B−2,532A−1,532A−2,532B−1,532B−2)とを備え、前記導電部材の少なくとも1つは、前記一対の導電プレートのうち少なくとも1つを表裏から挟み込むように配置され、前記電磁誘導通信装置(20,320,520)は、前記中継ループアンテナとの間で電磁誘導方式又は電磁結合方式により通信する通信装置側ループアンテナ(21a,521a)と、前記通信装置側ループアンテナが前記中継通信装置との間で電磁誘導方式又は電磁結合方式により通信し、前記中継通信装置及び前記情報記憶媒体が静電結合することにより、前記情報記憶媒体の前記ICチップとの間で通信処理をする制御部(27,327)とを備えること、を特徴とする通信システムである。
第2の発明は、通信システムに設けられた情報記憶媒体及び電磁誘導通信装置との間に介在して、前記情報記憶媒体及び前記電磁誘導通信装置と通信する中継通信装置であって、前記電磁誘導通信装置の通信装置側ループアンテナとの間で、電磁誘導方式又は電磁結合方式により通信する中継ループアンテナ(31,331,531)と、前記中継ループアンテナの両端に接続され、前記情報記憶媒体に設けられ電磁誘導方式又は電磁結合方式で通信可能なICチップ(41,241,341,441,541)に接続された導電性を有する一対の導電プレート(42A,42B,242A,242B,342A,342B,442A,442B,542A,542B)との間で静電結合し、導電性を有する導電部材(32A−1,32A−2,32B−1,32B−2,232A−1,232A−2,232B−1,232B−2,332A−1,332A−2,332B−1,332B−2,432A−1,432A−2,432B−1,432B−2,532A−1,532A−2,532B−1,532B−2)とを備え、前記導電部材の少なくとも1つは、前記一対の導電プレートのうち少なくとも1つを表裏から挟み込むように配置されていること、を特徴とする中継通信装置である。
第3の発明は、第2の発明の中継通信装置において、前記導電プレートを挟み込む前記導電部材(532A−1,532A−2,532B−1,532B−2)は、1つの部材により形成され、前記情報記憶媒体(540)を表面から裏面へと周り込むように配置されていること、を特徴とする中継通信装置である。
第4の発明は、第2から第3までのいずれかの発明の中継通信装置において、前記一対の導電プレート(342A,342B,442A,442B)を搬送方向(Y)とは直交する直交方向(X)に並べて配列した状態で、前記情報記憶媒体(340,440)を前記搬送方向に搬送する搬送装置(360,460)を備え、前記一対の導電部材(332A−1,332A−2,332B−1,332B−2,432A−1,432A−2,432B−1,432B−2)は、前記搬送方向に延在するように配置されていること、を特徴とする中継通信装置である。
第5の発明は、第4の発明の中継通信装置において、前記導電プレートを挟み込む前記導電部材のうち少なくとも1つは、前記情報記憶媒体(340,440)に接しながら前記搬送方向(Y)に回転駆動され、前記搬送装置(360,460)の少なくとも一部を兼用する導電ベルト(332A−1,332A−2,332B−1,332B−2,432A−2,432B−2)であること、を特徴とする中継通信装置である。
第6の発明は、第2から第5までのいずれかの発明の中継通信装置において、前記各導電プレート(342A,342B,442A,442B)は、長方形であり、前記搬送装置は、前記情報記憶媒体の搬送方向(Y)と前記一対の導電プレートの長辺とが、直交するように前記情報記憶媒体を搬送すること、を特徴とする中継通信装置である。
第7の発明は、第1の発明の通信システムに使用され、前記通信装置側ループアンテナ(21a,521a)と、前記制御部(27,327)とを備えること、を特徴とする電磁誘導通信装置である。
第8の発明は、第1の発明の通信システムに使用され、前記ICチップ(41,241,341,441,541)と、前記一対の導電プレート(42A,42B,242A,242B,342A,342B,442A,442B,542A,542B)とを備えること、を特徴とする情報記憶媒体である。
第9の発明は、第1の発明の前記電磁誘導通信装置(20,320,520)と、第1の発明の前記中継通信装置(30,230,330,430,530)と、を備える中継通信装置及び電磁誘導通信装置の組み合わせである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
第1の発明は、中継通信装置が、電磁誘導通信装置との間で電磁誘導方式又は電磁結合方式により信号伝達する中継通信装置側ループアンテナと、情報記憶媒体との間で静電結合方式により信号伝達する導電部材とを備える。これにより、電子情報記憶媒体に駆動電力が伝達されるとともに、電磁誘導通信装置からの送信データを電子情報記憶媒体に伝達でき、また、電子情報記憶媒体からの返信データを中継通信装置を介して、電磁誘導通信装置に伝達できる。
また、第1の発明は、情報記憶媒体にループアンテナを形成する必要がなく、2つの導電プレートを設ければよいので、従来の複雑なエッチング等のアンテナ形成工程が不要となり、低コストで情報記憶媒体を製造できる。このため、情報記憶媒体の発行量が多くなる程、従来のシステムと比較してコスト面で有利になり、低コストでシステムを構築できる。
さらに、第1の発明は、市場で多く流通している電磁誘導方式又は電磁結合方式の電磁誘導通信装置を流用してシステムを構築できるので、低コストで導入できる。すなわち、情報記憶媒体のICチップとして、市場に多く流通している電磁誘導方式又は電磁結合方式の非接触ICカードに用いられるICチップを流用でき、かつ、電磁誘導通信装置として、既存の非接触ICカード用のリーダライタを流用して装置を構成できる。これにより、静電結合用の特殊なICチップと、リーダライタとを新たに開発する必要なく、システムを構築できる。
さらにまた、第1の発明は、情報記憶媒体に一対の導電プレートを設ければよいので、情報記憶媒体にループアンテナを設ける場合と比較すると、情報記憶媒体の外形を小さくできる。これにより、情報記録媒体をさらに低コストで製造できる。
加えて、第1の発明は、中継通信装置の導電部材が、情報記憶媒体の導電プレートを表裏から挟み込むように配置されているので、同一の導電プレート面積であっても、導電部材及び導電プレート間の静電結合の容量が増加するため、通信に最低限必要な導電プレートの面積を抑えることができ、カードを小型にできる。
その上、第1の発明は、導電プレートが導電部材に挟み込まれる構造のため、情報記録媒体の反り、浮き等が生じ、導電プレートが導電プレート表面に対する法線方向に位置ずれした場合であっても、片側の導電部材と導電プレートとの間隔が離れても、もう片側の導電部材と導電プレートとの間隔が狭まるため、情報記録媒体の反り、浮きによらず、導電部材と導電プレートとの静電結合容量変化は少なく、通信安定性を向上できる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明の通信システムの中継通信装置と同様な構成を備える中継通信装置であるので、第1の発明と同様の効果を奏する。
第3の発明は、導電プレートを挟み込む導電部材が、1つの部材により形成され、情報記憶媒体を表面から裏面へと周り込むように配置されており、部品点数を減らすことができるため、構造を簡単でき、またコストを抑えることができる。
【0009】
第4の発明は、搬送装置が、一対の導電プレートを搬送方向とは直交する直交方向に並べて配列した状態で、情報記憶媒体を搬送し、導電部材が、搬送方向に延在するように配置されているので、情報記憶媒体を搬送しながら、導電部材及び導電レールとを対向配置して、通信処理を行うことができる。これにより、情報記憶媒体を搬送させながら通信処理できるため、例えばゲートアクセス処理時間等を短縮できる。
第5の発明は、導電部材が導電ベルトであるので、導電部材をベルト駆動することにより、導電部材と情報通信媒体とを一体で搬送方向に移動できる。これにより、情報記憶媒体を搬送させながら通信処理できるため、例えばゲートアクセス処理時間等を短縮できるとともに、搬送系と導電部材とが一体となり、部品点数を減らすことが出来るため、構造を簡単にでき、またコストを抑えることができる。
第6の発明は、導電プレートが長方形であり、短辺どうしが向かい合うように並べて配置され、搬送方向と導電プレートの長辺とが直交するので、搬送方向とは直交する方向(長辺方向)に情報記憶媒体がずれても、導電プレートと導電部材とが対向する面積の減少率を少なくできるため、位置ずれの許容度を向上でき、通信安定性を向上できる。
第7の発明は、第1の発明の通信システムに使用される、通信装置側ループアンテナと制御部とを備える電磁誘導通信装置であるので、第1の発明と同様な効果を奏する。
第8の発明は、第1の発明の通信システムに使用される、ICチップと一対の導電プレートとを備える情報記憶媒体であるので、第1の発明と同様な効果を奏する。
第9の発明は、第1の発明の電磁誘導通信装置と中継通信装置とを備える中継通信装置及び電磁誘導通信装置の組み合わせであるので、例えば、電磁誘導通信装置に中継通信装置を載置して組み合わせることにより、第1の発明と同様な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態の通信システム10の基本構成を説明する図である。
【図2】中継通信装置30の導電部材32A−1,32A−2及びICカード40の導電プレート42A間の静電結合と、中継通信装置30の導電部材32B−1,32B−2及びICカード40の導電プレート42B間の静電結合とを説明する図である。
【図3】第1実施形態の中継通信装置30の形状を説明する図である。
【図4】第2実施形態の中継通信装置230の形状を説明する図である。
【図5】第3実施形態の通信システム310の斜視図である。
【図6】第3実施形態の中継通信装置330の内部構成を説明する図である。
【図7】第3実施形態のICカード340の平面図、及びICカード340のずれを説明する平面図である。
【図8】第4実施形態の中継通信装置430の搬送装置460の内部構成を説明する図である。
【図9】第5実施形態の通信システム510の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、図面等を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
なお、以下の説明及び図面において、カード表面及び導電部材表面の法線方向を鉛直方向Zとし、鉛直方向Zから見た図を適宜平面図といい、平面図の形状を適宜平面形状という。
【0012】
(基本構成)
最初に、第1実施形態の通信システム10の基本構成について説明する。
図1は、第1実施形態の通信システム10の基本構成を説明する図である。
図1(a)は、通信システム10の斜視図である。
図1(b)は、通信システム10の基本構成を説明する概念図(図1(a)のb−b部矢視断面図に相当する図)である。
【0013】
通信システム10は、電磁誘導通信装置20、中継通信装置30、ICカード40(情報記憶媒体)を備える。
電磁誘導通信装置20は、本来は、電磁誘導方式のループアンテナを備えるICカードとの間で、情報を直接送受信可能な装置であるが、実施形態では、中継通信装置30を介して、静電結合方式の導電プレート42A,42B(後述する)を備えるICカード40との間で情報を送受信する。電磁誘導通信装置20は、例えば、鉄道の改札に配置される改札機や、店舗に配置されるレジスタ等の装置等である。
電磁誘導通信装置20は、リーダライタ21、記憶部26、制御部27を備える。
リーダライタ21は、R/W(リーダライタ)ループアンテナ21a(通信装置側ループアンテナ)を備える。
R/Wループアンテナ21aは、例えば、3回巻き程度のループアンテナであり、大きさが40mm×40mm程度である。R/Wループアンテナ21aは、例えばエッチング等の手法により、プリント配線基板上に銅パターンを配線して形成される。R/Wループアンテナ21aの両端の端子は、制御部27に接続される。
【0014】
記憶部26は、電磁誘導通信装置20の動作に必要なプログラム、情報等を記憶するための半導体メモリ素子等の記憶装置である。記憶部26は、ICカード40に書き込む情報や、ICカード40と照合する情報等を記憶している。
制御部27は、電磁誘導通信装置20を統括的に制御するための制御部であり、例えばCPU等から構成される。制御部27は、記憶部26に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、前述したハードウェアと協働し、本発明に係る各種機能を実現している。
【0015】
中継通信装置30は、リーダライタ21及びICカード40間の通信を可能にする装置である。中継通信装置30は、中継ループアンテナ31、導電部材32A−1,32A−2、導電部材32B−1,32B−2を備える。なお、これらの各部材は、筐体(図示せず)に収容されている。
中継ループアンテナ31は、R/Wループアンテナ21aとの間で電磁誘導方式により通信(結合)するアンテナである。中継ループアンテナ31は、例えば、3回巻き程度のループアンテナであり、大きさが40mm×40mm程度である。中継ループアンテナ31は、例えば、エッチング等の手法により、プリント配線基板上に銅パターンを配線して形成される。
【0016】
導電部材32A−1,32A−2、導電部材32B−1,32B−2は、銅等の導電性材料を板状に形成した部材である。
導電部材32A−1,32A−2は、中継ループアンテナ31の一端に、ケーブル32aによって、接続されている。
導電部材32A−1は、導電プレート42Aの下側Z1に配置されている。導電部材32A−1の上面は、ICカード40の導電プレート42Aの下面に対向配置されている。
導電部材32A−2は、導電プレート42Aの上側Z2に配置されている。導電部材32A−2の下面は、ICカード40の導電プレート42Aの上面に対向配置されている。
これにより、導電部材32A−1,32A−2は、ICカード40の導電プレート42Aにほぼ密着し(例えば、導電部材32A−1,32A−2及び導電プレート42A間の距離が2mm程度)、かつ、この導電プレート42Aにそれぞれ対向配置されることにより、導電プレート42Aは、導電部材32A−1,32A−2双方と静電結合する。
【0017】
導電部材32B−1,32B−2は、中継ループアンテナ31の他端に、ケーブル32bによって、接続されている。
導電部材32B−1,32B−2は、導電部材32A−1,32A−2と同様に、それぞれICカード40の導電プレート42Bの上側Z2、下側Z1に配置され、導電プレート42Bは、導電部材32A−1,32A−2双方と静電結合する。
【0018】
このように、導電部材32A−1,32A−2、導電部材32B−1,32B−2は、それぞれICカード40の導電プレート42A、導電プレート42Bを表裏から挟み込むように配置されている。これにより、後述するように、導電部材32A−1,32A−2、導電部材32B−1,32B−2は、導電プレート42A、導電プレート42Bとの間の静電結合の容量を向上でき、ICカード40を小型にできる。
【0019】
ICカード40は、外部接触端子を備えない非接触型のカードである。ICカード40の大きさは、クレジットカード等のサイズに限定されるものではなく、用途(例えば切符等)に応じて、任意の大きさに設定できる。
ICカード40は、ICチップ41、一対の導電プレート42A,42B、下層43、上層44を備える。
ICチップ41は、電磁誘導方式で通信可能な集積回路であり、従来の電磁誘導方式のICカードに内蔵されているものと、同種のものである。ICチップ41は、ICカード40の動作に必要なプログラム、情報等を記憶する記憶部と、この記憶部に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することによりICカード40を統括的に制御する制御部とを備える。
【0020】
ICチップ41は、厚さが例えば150μm程度である。ICチップ41は、導電プレート42A,42B間のスリットを跨ぐように配置されている。
ICチップ41の入出力部(リードフレーム等)は、導電プレート42A,42Bに対して、異方性導電性ペースト、異方性導電性フィルム、導電性接着剤等の接続部材46によって、それぞれ電気的及び機械的に接続されている。なお、ICチップ41が電磁誘導方式のものであるため、この入出力部は、本来、ループアンテナに接続されるものである。
【0021】
導電プレート42A,42Bは、それぞれ厚さ10μm、短辺×長辺が20mm×25mmのアルミニウム箔である。導電プレート42A,42Bは、下層43に貼り付けられている。導電プレート42A,42Bは、奥行方向Yに細長いスリットを介して配列されている。スリット幅L2は、例えば0.5mm程度である。
【0022】
下層43は、ICカード40の基材である。下層43は、例えば、厚さ180μm、短辺×長辺が25.0mm×57.5mmのPET、PET−G、PVC、ポリイミド等の絶縁性フィルム基材である。
上層44は、絶縁性材料(PET、PET−G、PVC、ポリイミド、紙等)により形成されている。上層44は、例えば厚さ200μm程度である。上層44は、ICチップ41、導電プレート42A,42Bを覆うように、接着材45(液状、フィルム状の接着剤や、粘着剤等)によって下層43に貼り付けられている。
【0023】
(通信方法)
次に、第1実施形態の通信システム10の基本的な通信方法について説明する。
(リーダライタ21及び中継通信装置30間の接続)
R/Wループアンテナ21a及び中継ループアンテナ31の間は、電磁誘導方式により非接触で接続され、情報の伝達をすることができる。電磁誘導方式を用いたICカード40の通信方式は、ISO/IEC14443,ISO/IEC15693,ISO/IEC18092にて規格化されており、13.56MHzの信号周波数が用いられる。
なお、R/Wループアンテナ21a及び中継ループアンテナ31の巻数は、3巻程度である例を説明したが、これに限定されない。両者の間が電磁誘導方式により非接触で接続される巻数であればよく、巻数は、例えば1巻以上であればよい。
【0024】
(中継通信装置30及びICカード40間の接続)
導電部材32A−1,32A−2及び導電プレート42Aとは、コンデンサプレートとして機能して、導電部材32A−1,32A−2及び導電プレート42A間が静電結合方式により非接触で接続される。同様に、導電部材32B−1,32B−2及び導電プレート42B間が静電結合方式により非接触で接続される。これにより、中継ループアンテナ31及びICカード40間が接続され、情報の送受信をすることができる。
【0025】
中継ループアンテナ31及びR/Wループアンテナ21a間の電磁誘導により、中継ループアンテナ31に発生した起電力によって、導電部材32A−1,32A−2及び導電プレート42Aが静電結合し、導電部材32B−1,32B−2及び導電プレート42Bが静電結合する。これにより、ICチップ41に駆動電力が伝達される。また、電磁誘導通信装置20からの送信データをICチップ41に伝達でき、一方、ICチップ41からの返信データを中継通信装置30を介して、電磁誘導通信装置20に伝達できる。
【0026】
以上により、通信システム10は、電磁誘導通信装置20の制御部27と、ICカード40のICチップ41との間で、通信処理を行うことができる。
【0027】
(中継通信装置の導電部材及びICカードの導電プレート間の静電容量)
次に、中継通信装置30の各導電部材及びICカード40の間の各導電プレート間の静電容量について説明する。
図2は、中継通信装置30の導電部材32A−1,32A−2及びICカード40の導電プレート42A間の静電結合と、中継通信装置30の導電部材32B−1,32B−2及びICカード40の導電プレート42B間の静電結合とを説明する図である。
なお、図2では、導電プレート42A,42Bの厚みは、十分に薄いので、説明を簡略するために無視した。
【0028】
図2(a)の状態は、導電プレート42Aが、導電部材32A−1,32A−2間の中心に配置された状態である。つまり、導電部材32A−1の上面及び導電プレート42Aの下面までの距離と、導電部材32A−2の下面及び導電プレート42Aの上面までの距離とが、ともに距離dである。
図2(a)の状態の導電部材32A−1及び32A−2と導電プレート42Aとの間の静電容量の合計を、静電容量Caとすると、これは、以下の式1で表される。
Ca=Ca(32A−1)+Ca(32A−2)=2εs/d・・・式1
但し、
Ca(32A−1):導電部材32A−1及び導電プレート42A間の静電容量
Ca(32A−2):導電部材32A−2及び導電プレート42A間の静電容量
ε:誘電率
s:導電プレート42Aの上面及び下面のそれぞれの面積
【0029】
一方、導電部材32A−1,32A−2のうち一方のみが設けられている場合には、静電容量は、εs/dである。
このように、実施形態の通信システム10は、導電プレート42Aを挟み込むように、導電部材32A−1,32A−2を配置することにより、一方のみを設けた場合に比べて、静電容量を2倍にすることができる。上記説明は、導電部材32B−1及び32B−2と導電プレート42Bとの間の静電容量についても、同様である。
これによって、実施形態の通信システム10は、各導電部材及び各導電プレート間の静電結合の容量を増加できるため、従来の導電部材一方のみを設けた場合と同一の静電結合の容量を得る際は、導電プレート42A,42Bを小さくすることができ、ICカード40を小型にできる。
【0030】
図2(b)の状態は、図2(a)の状態からICカード40が下側Z1に距離α移動して、ICカード40の下面が導電部材32A−1の上面に近よった状態である。
図2(b)の状態の導電部材32A−1,32A−2及び導電プレート42A間の静電容量の合計を、静電容量Cbとすると、これは、以下の式2で表される。
Cb=Cb(32A−1)+Cb(32A−2)=ε(s/(d+α))+ε(s/(d−α))=2εs(d/(d−α))・・・式2
但し、
Cb(32A−1):導電部材32A−1及び導電プレート42A間の静電容量
Cb(32A−2):導電部材32A−2及び導電プレート42A間の静電容量
α:導電プレート42の移動量(0<α)
【0031】
図2(a)の静電容量Ca及び図2(b)の静電容量Cbを比較する。
式2は、以下のように変形できる。
Cb=2εs(1/(d−α/d)・・・式3
ここで、「0<α/d」であるから、「d−α/d<d」である。
従って、
1/d<(1/(d−α/d)・・・式4
【0032】
式1,3,4から、
2εs(1/d)<2εs(1/(d−α/d)
Ca<Cb
が成り立つ。このように、静電容量は、導電プレート42Aが導電部材32A−1,32A−2間の中心に配置された図2(a)の状態が、最も小さくなる。
上記説明は、導電プレート42Aが上側Z2に移動した場合も同様である。
【0033】
これによって、導電プレート42A及び導電部材32A−1,32A−2間の静電容量を設定する場合には、導電プレート42Aが導電部材32A−1,32A−2間の中心に配置された状態に基づいて設定すればよい。つまり、導電プレート42A及び導電部材32A−1,32A−2間の静電容量が最も小さくなる場合に基づいて、導電プレート42Aの大きさ(面積s)や、導電部材32A−1,32A−2間の距離(距離2d)、ICカード40の厚み等を設定すればよい。
導電部材32A−1,32A−2間に配置されたICカード40が鉛直方向Zに移動したり、ICカード40が反ってしまった場合であっても、中心に配置された場合よりも静電容量が小さくなることがなく、安定して通信できるからである。
【0034】
(中継通信装置のポケット形状)
次に、中継通信装置30の形状について説明する。
図3は、第1実施形態の中継通信装置30の形状を説明する図である。
図3(a)は、平面図である。
図3(b)は、側面図(図3(a)を左側X1から見た図)である。
図3(c)は、正面図(図3(a)を手前側Y1から見た図)である。
図3(d)は、断面図(図3(a)のd−d部矢視断面図)である。
なお、図3は、中継ループアンテナ31等の図示を省略し、導電部材32A−1,32A−2、導電部材32B−1,32B−2等の配置を説明する。また、図3(d)では、ICチップ41の図示は、省略した。
【0035】
中継通信装置30は、筐体33を備える。
筐体33は、外形がほぼ直方体である。
筐体33は、ポケット34、切り欠き35を備える。
ポケット34は、筐体33の左側面を、右側X2に向けて窪ませて設けた有底の穴であり、左右方向XにICカード40を挿抜できる。ポケット34は、その幅がICカード40の奥行方向Yの長さよりも大きく、その深さL34がICカード40の左右方向Xの長さよりも大きい。このため、ポケット34は、ICカード40全てを挿入できる。
切り欠き35は、ICカード40をポケット34に挿入した状態で、ICカード40の表裏のうち左側X1の部分を鉛直方向Zに露出させるために設けられている。利用者は、この露出した部分を指で掴んで、ICカード40をポケット34に挿抜できる。このため、安定した通信が可能であるとともに、ICカード40の処理終了後には、容易に抜取りが可能となる。
【0036】
導電部材32A−1,32B−1は、左右方向Xに並べて配列されている。導電部材32A−1は、挿入されたICカード40の導電プレート42Aに下面から静電結合し、一方、導電部材32B−1は、挿入されたICカード40の導電プレート42Bに下面から静電結合する。
図3(d)に示すように、ポケット34の深さL34は、ICカード40の右端がポケット34の底(右端)に当て付いた状態で、導電プレート42A,42B間のスリット40aの中心と、導電部材32A−1,32B−1間のスリット32aの中心とが一致するように設定されている。このため、導電部材32A−1,32B−1は、それぞれ導電プレート42A,42Bに確実に静電結合でき、導電プレート42A,42Bとの間で安定して信号伝達することができる。
【0037】
導電部材32A−2,32B−2は、導電部材32A−1,32B−1と同様に、左右方向Xに並べて配列され、それぞれ挿入されたICカード40の導電プレート42A,42Bの上面から静電結合する。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の通信システム10は、以下の効果を奏する。
(1)R/Wループアンテナ21aと中継ループアンテナ31とが電磁誘導することにより信号が伝達し、中継通信装置30の各導電部材とICカード40の導電プレート42A,42Bとを向かい合わせ、静電結合させることにより信号を伝達できる。
これにより、ICカード40は、ループアンテナが必要なく、導電プレート42A,42Bを設ければよいので、従来の複雑なエッチング等のアンテナ形成工程が不要となり、低コストで製造できる。このため、ICカード40の発行枚数が多くなる程、コスト面で有利になり、低コストでシステムを構築できる。
【0039】
(2)市場で多く流通している電磁誘導通信装置20を転用できるので、容易かつ低コストでシステムを構築できる。
また、新たなシステムを導入する場合であっても、電磁誘導方式のICカードに用いられるICチップを流用でき、かつ、既存の非接触IC用のリーダライタを流用できる。これにより、静電結合用の特殊なICチップと、電磁誘導通信装置とを新たに開発する必要なく、システムを構築できる。
【0040】
(3)中継通信装置30の導電部材32A−1,32B−1、導電部材32A−2,32B−2が、ICカード40の導電プレート42A,42Bの表裏を挟み込むように配置されているので、静電結合の容量を増加できるため、カードを小型にできる。これにより、より低コストでシステムを構築できる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態の通信システムついて説明する。
第2実施形態は、ICカード240の形状、ポケット234の形状を第1実施形態から変形したものである。
なお、以下の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
図4は、第2実施形態の中継通信装置230の形状を説明する図である。
図4(a)は、平面図である。
図4(b)は、断面図(図4(a)を左側X1から見た図)である。
図4(c)は、正面図(図4(a)を手前側Y1から見た図)である。
図4(d)は、断面図(図4(a)のd−d部矢視断面図)である。
なお、図4(d)では、ICチップ241の図示は、省略した。
【0042】
筐体233のポケット234は、筐体233の正面(手前側Y1の側面)を、奥側Y2に向けて窪ませて設けられている。
導電部材232A−1,232B−1は、左右方向Xに並べて配列され、平面形状が奥行方向Yに細長い。導電部材232A−2,232B−2も、同様である。
【0043】
ICカード240は、平面形状が奥行方向Yに細長く、ポケット234に奥行方向Yに挿抜される。ICカード240の奥行方向Yの長さは、ポケット234の深さL234よりも長く、ポケット234の底(奥端)に当てついた状態で、ICカード240の手前側Y1の部分がポケット234から露出するようになっている。利用者は、この露出した部分を指で掴んで、ICカード240をポケット234に挿抜することができる。
導電プレート242A,242Bは、平面形状が奥行方向Yに細長く、左右方向Xに並べて配置されている。
【0044】
本実施形態の通信システムは、ICカード240をポケット234に挿入する場合に、途中まで挿入した場合であっても、導電部材232A−1,232B−1及び導電プレート242A,242Bが対向配置される。同様に、導電部材232A−2,232B−2及び導電プレート242A,242Bが対向配置される。
このため、本実施形態の通信システムは、ICカード240をポケット234に途中まで挿入した状態から、ICカード240及び中継通信装置230間の通信が開始される。これにより、ICカード挿入位置によらず通信が可能になるとともに、ICカード240及び中継通信装置230のアクセス時間を第1実施形態よりも短縮できる。
また、本実施形態の通信システムは、中継通信装置230に切り欠き35(図3参照)を設けなくてもよいので、形状を簡単にできる。
【0045】
(第3実施形態)
次に、本発明を適用した第3実施形態について説明する。
(通信システム310の構成)
図5は、第3実施形態の通信システム310の斜視図である。
通信システム310は、鉄道等の入退場ゲートに用いられる改札システムに接続されている。
この改札システムは、サーバ(図示せず)及び複数の電磁誘導改札機320が接続された従来の改札システムに、新たに、通信システム310がサーバに接続されて構成される。つまり、改札システムは、改札装置として、電磁誘導改札機320単体、及び通信システム310の2種類を備える。改札システムは、切符、定期券等として、ICカードを利用する。
【0046】
サーバは、改札システムを統括的に制御するための制御部であり、例えば、ICカードの情報(乗車区間、期限、利用者の氏名等)を記憶し、券売機等でICカードが再発行される場合等に適宜参照される。
電磁誘導改札機320は、従来の電磁誘導方式の改札機であり、電磁誘導改札機320単体では、電磁誘導方式の従来のICカードとの間で、情報の送受信をすることができる。
【0047】
通信システム310の基本構成は、第1実施形態の通信システム10と同様であり、電磁誘導改札機320と、中継通信装置330とを備える。図5では、通信システム310の手前側から奥側に向かって歩行するようになっている。
通信システム310は、電磁誘導改札機320(電磁誘導通信装置)に対して、中継通信装置330が載置されて構成される。通信システム310は、中継通信装置330を介して、電磁誘導改札機320及び静電結合(静電容量結合)型のICカード340との間で情報を送受信できる。
つまり、この改札システムで用いられる切符、定期券等は、電磁誘導改札機320単体で用いられる電磁誘導方式の従来のICカード、及び通信システム310で用いられるICカード340の2種類である。
【0048】
なお、改札システムは、電磁誘導改札機320を単体では設けずに、複数の通信システム310のみから構成してもよい。また。通信システム310は、従来の電磁誘導改札機320及び中継通信装置330を組み合わせた装置ではなく、新たに専用に設けた一体型の装置でもよい。
【0049】
電磁誘導改札機320は、R/Wループアンテナ(図1に示すR/Wループアンテナ21a参照)を備えた改札機である。つまり、電磁誘導改札機320は、R/Wループアンテナを有するリーダライタ一体の装置である。
電磁誘導改札機320は、通過扉322、改札記憶部326、改札制御部327(通信結果判定制御部)を備える。
通過扉322は、電磁誘導改札機320の筐体に設けられた開閉扉である。通過扉322は、DCモータ等を備える駆動装置によって開閉駆動される。通過扉322の開閉制御は、改札制御部327がICカード340との通信結果に応じて行う。
【0050】
改札記憶部326は、電磁誘導改札機320の動作に必要なプログラム、情報等を記憶するための半導体メモリ素子等の記憶装置である。
改札制御部327は、電磁誘導改札機320を統括的に制御するための制御部であり、例えばCPU等から構成される。改札制御部327は、改札記憶部326に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、前述したハードウェアと協働し、本発明に係る各種機能を実現している。
【0051】
通信システム310は、挿入口334、排出口335、中継記憶部336、中継制御部337を備える。
挿入口334は、利用者がICカード340を挿入するための入口である。挿入口334内部には、挿入されたICカード340を搬送装置360(後述する)に導く送り装置(図示せず)が設けられている。
【0052】
排出口335は、搬送装置360によって搬送されたICカード340を排出する出口である。排出口335内部には、搬送装置360(後述する)によって搬送されたICカード340を、排出口335に導く送り装置(図示せず)が設けられている。
【0053】
中継記憶部336は、中継通信装置330の動作に必要なプログラム、情報等を記憶するための半導体メモリ素子等の記憶装置である。
中継制御部337は、中継通信装置330を統括的に制御するための制御部であり、例えばCPU等から構成される。中継制御部337は、中継記憶部336に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、前述したハードウェアと協働し、本発明に係る各種機能を実現している。
中継制御部337は、電磁誘導改札機320に電気的に接続されており、電磁誘導改札機320及びICカード340間での通信の結果、判定及び状況を確認したり、搬送装置360(後述する)の制御を行う。
【0054】
ICカード340のICチップ341は、ICチップ記憶部341a、ICチップ制御部341b、アナログ回路部341cを備える。
ICチップ記憶部341aは、ICカード340の動作に必要なプログラム、情報等を記憶するための記憶回路である。ICチップ記憶部341aは、例えば、乗車区間、使用期間、利用者の氏名等の情報を、書き換え可能に記憶する。
ICチップ制御部341bは、ICカード340を統括的に制御するための制御部であり、例えばCPU等から構成される。ICチップ制御部341bは、ICチップ記憶部341aに記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、本発明に係る各種機能を実現している。
アナログ回路部341cは、整流回路、変調回路、復調回路、CLK抽出回路等により構成されている。アナログ回路部341cは、ICチップ入出力端子を介して入力された信号に対して、AD変換、クロック生成等を行い、ICチップ制御部341bへの電圧供給、クロック供給、データ入出力等を行う。
【0055】
(搬送装置360近傍の構成)
次に、第3実施形態の中継通信装置330の内部構成について説明する。
図6は、第3実施形態の中継通信装置330の内部構成を説明する図である。
図6(a)は、搬送装置360の平面図(図6(b)のa−a部矢視断面図)である。
図6(b)は、搬送装置360の側面図である。
図6(c)は、搬送装置360近傍の斜視図である。
なお、図6(c)では、搬送装置360の下側部分を図示し、上側部分の図示を省略した。
【0056】
中継通信装置330は、中継ループアンテナ331、導電部材332A−1,332B−1、導電部材332A−2,332B−2、搬送装置360、ロータリコネクタ370を備える。
導電部材332A−1,332B−1は、導電性ゴム等により形成され、平ベルト状に形成されている。導電部材332A−1,332B−1は、ICカード340の奥行方向Y(搬送方向)に沿って延在するように配置されている。導電部材332A−1,332B−1は、下ベルト361(後述する)の外周面に貼り付けられており、上側Z2の部分が下ベルト361と一体で奥行方向Yに移動する。
同様に、導電部材332A−2,332B−2は、上ベルト363(後述する)の外周面に貼り付けられており、下側Z1の部分が上ベルト363と一体で奥行方向Yに回転にする。
【0057】
搬送装置360は、ICカード340を、導電部材332A−1,332B−1及び導電部材332A−2,332B−2と一体で奥側Y2に搬送する装置である。
搬送装置360は、下ベルト361、下ベルト駆動ローラ362(362a,362b)、上ベルト363、上ベルト駆動ローラ364(364a,364b)を備える。
【0058】
下ベルト361及び下ベルト駆動ローラ362は、中継通信装置330内の下側Z1に配置されている。
下ベルト361は、下ベルト駆動ローラ362に巻き掛けられた平ベルトである。下ベルト361は、絶縁材により形成されている。
下ベルト駆動ローラ362a,362bは、下ベルト361を回転する2つのローラである。下ベルト駆動ローラ362a,362bのうち一方には、モータが設けられており、巻き掛けられた下ベルト361の上側部分を、奥側Y2に回転移動するように、下ベルト361を回転する。
【0059】
上ベルト363及び上ベルト駆動ローラ364は、下ベルト361及び下ベルト駆動ローラ362と同様に、導電部材332A−2,332B−2を回転駆動する装置であり、中継通信装置330内の上側Z2に配置されている。
【0060】
ロータリコネクタ370は、中継ループアンテナ331からの配線331a,331bと、導電部材332A−1,332B−1からの配線332a,332bとを中継するコネクタである。ロータリコネクタ370は、一端側及び他端側間が回転可能になっている。これにより、配線331a,331bは、導電部材332A−1,332B−1に追従して回転しても絡まることなく、中継ループアンテナ331からの配線331a,331bとの導通を維持できる。
【0061】
なお、図示は、省略するが、上側Z2に配置された導電部材332A−2,332B−2に対しても、中継ループアンテナ331を中継するロータリコネクタが設けられており、回転駆動時において、中継ループアンテナ331及び導電部材332A−2,332B−2間の導通を維持できる。
また、導電部材332A−1,332B−1、導電部材332A−2,332B−2及び中継ループアンテナ331の接続は、回転している導電部材332A−1,332B−1、導電部材332A−3,332B−2に対して、中継ループアンテナ331の導通が維持できる形態であれば、ロータリコネクタ370を用いたものに限定されない。例えば、導電部材332A−1,332B−1、導電部材332A−2,332B−2にそれぞれ摺接する各接続端子を、中継ループアンテナ331に接続してもよい。
さらに、例えば、導電部材332A−1,332B−1、導電部材332A−2,332B−2に巻き掛けられ、導電部材332A−1,332B−1、導電部材332A−2,332B−2をそれぞれ駆動する各金属性のローラを独立して設けて、このローラを介して接続してもよい。
【0062】
搬送装置360は、上記構成によって、挿入口334(図5参照)に挿入されたICカード340を、導電部材332A−1,332B−1及び導電部材332A−2,332B−2の間に挟み込み、下ベルト361及び上ベルト363が回転駆動することにより、ICカード340を奥側Y2に搬送する。搬送装置360は、導電プレート342A,342Bが奥行方向Y(搬送方向)とは直交する左右方向X(直交方向)に並べて配列した状態で、ICカード340を奥側Y2に搬送する。
【0063】
これにより、搬送装置360は、ICカード340を搬送するときに、導電部材332A−1,332B−1及び導電部材332A−2,332B−2を、ICカード340と一体で移動して、ICカード340の導電プレート342A,342Bに接しながら挟み込み、かつ導電プレート342A,342Bに対向配置する。このため、導電部材332A−1,332B−1、導電部材332A−2,332B−2は、搬送されているICカード340の導電プレート342A,342Bとの間の静電結合を維持できる。そのため、通信システム310は、ICカード340を搬送させながら導電プレート342A,342Bの表裏から静電結合して、通信処理できるため、ゲートアクセス処理時間を短縮できる。
【0064】
また、導電部材332A−1,332B−1、導電部材332A−2,332B−2は、ICカード340を挟み込んだ状態で、回転駆動されることにより、ICカード340を奥側Y2に搬送するように、機能している。つまり、導電部材332A−1,332B−1、導電部材332A−2,332B−2は、搬送装置360の一部としても機能し、搬送装置360の一部を兼用している。このため、中継通信装置330は、構成を簡単にできる。
【0065】
(搬送時のずれにともなう通信安定性)
次に、ICカード340の搬送時のずれにともなう通信安定性について説明する。
図7は、第3実施形態のICカード340の平面図、及びICカード340のずれを説明する平面図である。
なお、図7は、下側Z1に配置された導電部材332A−1,332B−1のみ図示するが、以下の説明は、導電部材332A−2,332B−2についても同様である。
図7(a)に示すように、ICカード340の導電プレート342A,342Bは、ICカード340の長手方向に沿って並べて配置されている。
例えば、ICカード340の外形は、長辺×短辺が、57.5mm×25mmの長方形であり、また導電プレート342A,342Bの外形は、長辺×短辺が、25mm×20mmの長方形である。
【0066】
図7(b)に示すように、中継通信装置330の搬送装置360は、奥行方向Y(搬送方向)と、導電プレート342A,342Bの長辺342aとが直交するように、ICカード340を搬送する。
これにより、ICカード340が左右方向X(搬送方向とは直交する方向(長辺方向))にずれても、ICカード340の導電プレート342A,342Bと中継通信装置330の導電部材332A−1,332B−1とが対向する面積の減少率が少なくなるため、位置ずれの許容度を向上でき、通信安定性を向上できる。
【0067】
ずれにともなう面積の減少率が少なることについて説明する。
図7(c)のICカード140は、導電プレート142A,142Bが、ICカード140の長手方向に細長く、短辺142bの方向に並べて配置されたものである。平面形状において、ICカード340の面積は、ICカード140の面積に等しい。このため、各導電プレートの奥行方向Yの長さは、「L20<L30」である。
例えば、図7(b)、図7(c)に示すように、ICカード340及びICカード140が左右方向Xに長さΔ分ずれた場合を考える。ICカード340の場合は、導電プレート342A,342Bと導電部材332A−1,332B−1とが対向する面積は、「Δ×L20」減少し、一方、ICカード140は、「Δ×L30」減少する。「L20<30」であるため、「Δ×L20<Δ×L30」が成り立つ。
【0068】
このように、ICカード340は、ずれにともなう面積減少量がICカード140よりも少なく、通信安定性を向上できる。
なお、ICカード340、ICカード140が奥行方向Yにずれた場合は、いずれの場合も面積減少はなく、同等の通信安定性を保つことができる。
【0069】
以上説明したように、本実施形態の通信システム310は、ICカード340を搬送させながら通信処理できるため、ゲートアクセス処理時間を短縮できる。
また、通信システム310は、搬送しているICカード340が左右方向Xにずれても、安定して通信でき、位置ずれの許容度を向上できる。
【0070】
(第4実施形態)
次に、本発明を適用した第4実施形態について説明する。
第4実施形態は、搬送装置460の下側部分を、第3実施形態から変更したものである。
なお、以下の説明及び図面において、前述した第3実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
図8は、第4実施形態の中継通信装置430の搬送装置460の内部構成を説明する図である。
図8(a)は、搬送装置460の下側部分の平面図(図8(b)のa−a部矢視断面図)である。
図8(b)は、搬送装置460の断面図(図8(b)のb−b部矢視断面図)である。
【0071】
中継通信装置430は、導電部材432A−1,432B−1、導電部材432A−2,432B−2、搬送装置460等を備える。
導電部材432A−1,432B−1は、板状に形成され、奥行方向Yに沿って延在するように、レール状に配置されている。なお、本発明でレールとは、情報記憶媒体を一定方向に円滑に搬送するために敷かれた金属材の細長いプレート、又は平面形状が長四角形状のプレートをいう。導電部材432A−1,432B−1及び導電部材432A−2,432B−2は、同一の中継ループアンテナ(図示せず)に接続されている。
【0072】
搬送装置460は、ローラ435等を備える。
ローラ435は、導電部材432A−1,432B−1間の隙間に複数配置されている。ローラ435は、左右方向Xの中心軸回りに回転可能に、中継通信装置430内に支持されている。このため、ローラ435の回転方向は、奥行方向Yに平行である。
ローラ435は、側面図(図8(b))において、上側Z2の外周面が、導電部材432A−1,432B−1の上面よりも、上側Z2に突出するように配置されている。
【0073】
搬送装置460の上側部分の構成、すなわち、導電部材432A−2,432B−2、上ベルト463、上ベルト駆動装置464等の構成は、第3実施形態と同様である。
搬送装置460は、上記構成によって、ICカード440を、ローラ435の外周面のうち上側Z2の部分と、導電部材432A−2,432B−2の下面との間に挟み込み、上ベルト463(又はローラ435)が回転駆動することにより、ICカード440を奥行方向Yの奥側Y2に搬送する。
【0074】
これにより、搬送装置460は、第3実施形態と同様に、ICカード440を搬送するときに、導電部材432A−1,432B−1、導電部材432A−2,432B−2を、導電プレート442A,442Bに対向配置し、搬送されているICカード440の導電プレート442A,442Bとの間の静電結合を維持できる。
【0075】
なお、本実施形態では、下側Z1の導電部材432A−1,432B−1のみをレール状にしたが、上下両方の導電部材432A−1,432B−1,432A−2,432B−2をレール状にして、上下両方にローラ435を設けてもよい。この場合には、ローラ435を回転駆動することにより、ICカード440を搬送できる。
【0076】
(第5実施形態)
次に、本発明を適用した第5実施形態について説明する。
図9は、第5実施形態の通信システム510の斜視図である。
通信システム510の導電部材532A−1,532A−2は、1つの部材により形成されている。導電部材532A−1,532A−2は、ICカード540のうち導電プレート542Aに対応する部分の手前側Y1を、上面(表面)から下面(裏面)へと周り込むように配置されている。
同様に、導電部材532B−1,532B−2は、1つの部材により形成され、ICカード540のうち導電プレート542Bに対応する部分を、上面(表面)から下面(裏面)へと周り込むように配置されている。
【0077】
これにより、通信システム510は、部品点数を減らすことができるため、構造を簡単でき、また、コストを抑えることができる。
【0078】
なお、通信システム510は、導電部材532A−1,532A−2及び導電部材532A−1,532A−2のうちいずれか一方を、1つの部材により形成してもよい。
また、通信システム510は、導電部材532A−1,532A−2を左側X1から周り込むように配置し、導電部材532B−1,532B−2を右側X2から周り込むように配置してもよい。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、後述する変形形態のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載したものに限定されない。なお、前述した実施形態及び後述する変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0080】
(変形形態)
(1)実施形態において、リーダライタ及び中継通信装置は、電磁誘導方式により通信する例を示したが、これに限定されない。例えば、リーダライタ及び中継通信装置は、電磁結合方式によって通信してもよい。この場合には、ICカードに設けるICチップを、電磁結合方式によって通信できるタイプにすればよい。
なお、電磁結合は、原理的には電磁誘導と同じである。また、電磁結合方式の通信とは、カード側のアンテナとリーダライタ側のアンテナを対向させ、静止状態で電磁誘導により通信することをいう。
【0081】
(2)実施形態において、中継通信装置は、中継ループアンテナ、導電部材、搬送装置等が一体で1つの筐体内に組み込まれている例を示したが、これに限定されない。これらが一体として機能するシステムであれば、別々の筐体内に設けられていてもよい。
【0082】
(3)実施形態において、中継通信装置は、鉄道の改札システム等に設けられている例を示したが、これに限定されない。このシステムは、電子マネー、社員証システム、物流管理等の各種システム等の様々なシステムに適用できる。例えば、店舗等のレジスタシステムに、電子マネーに関する電磁誘導方式のリーダライタが設けられている場合には、実施形態と同様に、このリーダライタに対して通信する中継通信装置を設ければ、容易に従来のレジスタシステムの適用できるし、また新たなレジスタシステムであっても、低コストで導入できる。
【符号の説明】
【0083】
10,310,510 通信システム
20,520 電磁誘導通信装置
21,521 リーダライタ
21a,521a R/Wループアンテナ
26 記憶部
27 制御部
30,230,330,430,530 中継通信装置
31,331,531 中継ループアンテナ
32A−1,32A−2,32B−1,32B−2,232A−1,232A−2,232B−1,232B−2,332A−1,332A−2,332B−1,332B−2,432A−1,432A−2,432B−1,432B−2,532A−1,532A−2,532B−1,532B−2 導電部材
40,240,340,440,540 ICカード
41,241,341,441,541 ICチップ
42A,42B,242A,242B,342A,342B,442A,442B,542A,542B 導電プレート
326 改札記憶部
327 改札制御部
360,460 搬送装置
361 下ベルト
362 下ベルト駆動ローラ
363,463 上ベルト
364,464 上ベルト駆動ローラ
435 ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報記憶媒体と電磁誘導通信装置との間に中継通信装置を介在させ、前記情報記憶媒体と通信する通信システムであって、
前記情報記憶媒体は、
電磁誘導方式又は電磁結合方式で通信可能なICチップと、
前記ICチップに接続され、導電性を有する一対の導電プレートとを備え、
前記中継通信装置は、
中継ループアンテナと、
前記中継ループアンテナの両端に接続され、前記情報記憶媒体の前記導電プレートとの間で静電結合し、導電性を有する導電部材とを備え、
前記導電部材の少なくとも1つは、前記一対の導電プレートのうち少なくとも1つを表裏から挟み込むように配置され、
前記電磁誘導通信装置は、
前記中継ループアンテナとの間で電磁誘導方式又は電磁結合方式により通信する通信装置側ループアンテナと、
前記通信装置側ループアンテナが前記中継通信装置との間で電磁誘導方式又は電磁結合方式により通信し、前記中継通信装置及び前記情報記憶媒体が静電結合することにより、前記情報記憶媒体の前記ICチップとの間で通信処理をする制御部とを備えること、
を特徴とする通信システム。
【請求項2】
通信システムに設けられた情報記憶媒体及び電磁誘導通信装置との間に介在して、前記情報記憶媒体及び前記電磁誘導通信装置と通信する中継通信装置であって、
前記電磁誘導通信装置の通信装置側ループアンテナとの間で、電磁誘導方式又は電磁結合方式により通信する中継ループアンテナと、
前記中継ループアンテナの両端に接続され、前記情報記憶媒体に設けられ電磁誘導方式又は電磁結合方式で通信可能なICチップに接続された導電性を有する一対の導電プレートとの間で静電結合し、導電性を有する導電部材とを備え、
前記導電部材の少なくとも1つは、前記一対の導電プレートのうち少なくとも1つを表裏から挟み込むように配置されていること、
を特徴とする中継通信装置。
【請求項3】
請求項2に記載の中継通信装置において、
前記導電プレートを挟み込む前記導電部材は、1つの部材により形成され、前記情報記憶媒体を表面から裏面へと周り込むように配置されていること、
を特徴とする中継通信装置。
【請求項4】
請求項2から請求項3までのいずれか1項に記載の中継通信装置において、
前記一対の導電プレートを搬送方向とは直交する直交方向に並べて配列した状態で、前記情報記憶媒体を前記搬送方向に搬送する搬送装置を備え、
前記一対の導電部材は、前記搬送方向に延在するように配置されていること、
を特徴とする中継通信装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の中継通信装置において、
前記導電プレートを挟み込む前記導電部材のうち少なくとも1つは、前記情報記憶媒体に接しながら前記搬送方向に回転駆動され、前記搬送装置の少なくとも一部を兼用する導電ベルトであること、
を特徴とする中継通信装置。
【請求項6】
請求項2から請求項5までのいずれか1項に記載の中継通信装置において、
前記情報記憶媒体は、長方形であり、
前記各導電プレートは、長方形であり、
前記搬送装置は、前記情報記憶媒体の搬送方向と前記一対の導電プレートの長辺とが、直交するように前記情報記憶媒体を搬送すること、
を特徴とする中継通信装置。
【請求項7】
請求項1に記載の通信システムに使用され、
前記通信装置側ループアンテナと、前記制御部とを備えること、
を特徴とする電磁誘導通信装置。
【請求項8】
請求項1に記載の通信システムに使用され、
前記ICチップと、前記一対の導電プレートとを備えること、
を特徴とする情報記憶媒体。
【請求項9】
請求項1に記載の前記電磁誘導通信装置と、
請求項1に記載の前記中継通信装置と、
を備える中継通信装置及び電磁誘導通信装置の組み合わせ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−45167(P2013−45167A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180674(P2011−180674)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】