説明

通信システム、通信装置、通信方法及び通信パラメータ決定方法

【課題】リンギングの影響を低減し、通信の高速化を実現可能な通信システム、通信装置、通信方法及び通信パラメータ決定方法を提供する。
【解決手段】ECU1の送信部17が、送信データがドミナントの場合に、1ビット分の送信時間より短いパルス幅Tpに亘る所定信号レベルの信号を通信線5へ出力し、その後は通信線5へ信号出力を停止してハイインピーダンス状態とすると共に、送信データがレセシブの場合に、通信線5へ信号出力をせずハイインピーダンス状態とする。またECU1の受信部18が、サンプリング期間Tdに亘って信号線5の信号レベルをサンプリングし、サンプリングした信号レベルの平均値を算出し、算出した平均値が閾値を超えるか否かに応じてドミナント/レセシブの判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共通の通信線に接続された複数の通信装置が相互に情報の送受信を行うと共に、通信線に対する情報送信の衝突を検知することができる通信システム、通信装置、通信方法及び通信パラメータ決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輌に搭載された複数の電子機器(通信装置)間の通信にはCAN(Controller Area Network)の通信プロトコルが広く採用されている(非特許文献1、2参照)。CANの通信プロトコルでは、共通のCANバスに複数の通信装置が接続されるため、複数の通信装置が同時的に情報送信を行って衝突が発生した場合には、各通信装置にて調停処理(アービトレーション)が行われ、優先度の高い情報送信が実行される。アービトレーションを行うために、各通信装置は、CANバスに送信信号の出力を行うと同時に、CANバスの信号レベルの検出を行い、自らが出力した送信信号に対して、検出した信号の信号レベルがレセシブ(劣性値)からドミナント(優性値)に変化した場合、優先度の高い情報送信が発生したと判断し、送信処理を停止する。CANバス上の信号はレセシブよりドミナントが優位であるため、複数の通信装置からの同時送信が発生してもドミナントを出力した電子機器は送信処理を継続して行うことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】ISO 11898−1:2003 Road vehicles--Controller area network(CAN)--Part1:Data link layer and physical signaling
【非特許文献2】ISO 11519−1:1994 Road vehicles--Low-speed serial data communication--Part1:General and definitions
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、CANの通信プロトコルを採用した通信システムでは、通信線としてツイスト線が用いられ、各通信装置が差動信号による通信を行っており、ツイスト線間の電位差が閾値を超えるものをドミナントとし、電位差が閾値を超えないものをレセシブとしている。また通信装置内のデジタル処理では、ドミナントをデータ0に対応付け、レセシブをデータ1に対応付けている。図18は、従来の通信システムにおける信号波形の一例を示す模式図であり、縦軸をツイスト線間の電位差Vとし、横軸を時間tとしたグラフである。図18に示す信号波形は、CANバス上でドミナントからレセシブへ信号を変化させた場合の波形を示してある。図示のように、通信装置がCANバスへ出力する送信信号をドミナントからレセシブへ変化させた場合、CANバス上の信号レベル(電位差)が徐々に減衰しながら振動する波形が生じる。これは、多くの通信装置を接続するためにCANバスに多くの分岐部分を設ける必要があり、この分岐部分でのインピーダンス不整合などの要因により信号反射などが繰り返されることによって生じるものであり、リンギングと呼ばれる。
【0005】
このようなリンギングが発生した場合、リンギングの信号レベルが有る程度減衰するまで、各通信装置はドミナント/レセシブの判定を行うことはできない。リンギングの信号レベルが減衰する時間は、CANバスを分岐させた分岐線の長さなどにより変化する。またリンギングの信号レベルは、CANバスに接続される通信装置の数などにより変化する。このため各通信装置は、通信システム中の通信装置の数及び分岐線の長さ等を考慮して、リンギングが十分に減衰すると考えられる時間を待機した後でドミナント/レセシブの判定を行う必要があり、CANプロトコルを用いる従来の通信システムはリンギングの影響によって通信の高速化が阻害されるという問題があった。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、リンギングの影響を低減し、通信の高速化を実現可能な通信システム、通信装置、通信方法及び通信パラメータ決定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る通信システムは、共通の通信線を介して接続された複数の通信装置を備え、各通信装置が、前記通信線を介して各ビットが優性値又は劣性値の2値で表される連続した複数ビットの情報を送受信する通信手段をそれぞれ有する通信システムにおいて、前記通信手段は、送信する情報の優性値に対して、1ビット分の情報送信時間より短い所定パルス幅に亘って所定信号レベルのパルスを前記通信線へ出力した後、前記通信線への信号出力を行わず、送信する情報の劣性値に対して、前記通信線への信号出力を行わないようにしてあることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る通信システムは、前記通信装置が、前記通信手段が優性値又は劣性値に係る情報を前記通信線へ出力した場合に、所定サンプリング期間に亘って前記通信線における信号レベルのサンプリングを複数回行って、前記所定サンプリング期間の信号レベルの平均値を算出する算出手段と、該算出手段が算出した平均値に応じて、前記通信線に送信された信号が優性値又は劣性値のいずれであるかを判定する判定手段と、劣性値の情報を送信した後に前記判定手段が優性値であると判定した場合に、他の通信装置からの情報送信を検知する検知手段とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る通信システムは、前記通信装置が、前記通信手段が優性値又は劣性値に係る情報を前記通信線へ出力した場合に、所定サンプリング期間に亘って前記通信線における信号レベルのサンプリングを複数回行って、各サンプリング結果の信号レベルと閾値とを比較する比較手段と、該比較手段の比較結果に基づき、信号レベルが前記閾値を超えるサンプル数及び信号レベルが前記閾値を超えないサンプル数に応じて、前記通信線に送信された信号が優性値又は劣性値のいずれであるかを判定する判定手段と、劣性値の情報を送信した後に前記判定手段が優性値であると判定した場合に、他の通信装置からの情報送信を検知する検知手段とを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る通信システムは、前記通信装置が、前記パルスのパルス幅が異なる複数の優性値の情報を順に送信する試験送信手段と、該試験送信手段が送信した情報に対して異なるサンプリング期間に亘るサンプリングを行って前記判定手段による判定を行い、パルス幅及びサンプリング期間の組み合わせに対して受信結果を評価する評価手段と、該評価手段による評価結果に基づいて、各パルス幅に対して評価が高いサンプリング期間を選別する選別手段とを有し、一の通信装置が前記試験送信手段による送信を行って、各通信装置が前記評価手段による評価及び前記選別手段による選別を行う処理を、全ての通信装置について順に行い、各通信装置の前記選別手段による選別結果に基づいて、前記所定パルス幅及び前記所定サンプリング期間を決定するようにしてあることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る通信システムは、前記試験送信手段が、優性値の情報及び劣性値の情報を交互に送信するようにしてあることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る通信システムは、前記評価手段が、優性値の情報を優性値と判定した数、劣性値の情報を優性値と判定した数及びサンプリング数に応じた評価値を算出するようにしてあることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る通信システムは、前記複数の通信装置には、一の主通信装置及び複数の従通信装置を含み、前記従通信装置は、前記選別手段の選別結果に対応する前記評価手段の評価結果を、前記主通信装置へ送信する評価結果送信手段を有し、前記主通信装置は、複数の前記従通信装置が送信した評価結果を受信する評価結果受信手段と、該評価結果受信手段が受信した複数の評価結果に基づき、前記所定パルス幅を決定する所定パルス幅決定手段と、該所定パルス幅決定手段が決定した所定パルス幅の情報を、複数の前記従通信装置へ送信する所定パルス幅情報送信手段とを有し、前記従通信装置は、前記所定パルス幅情報送信手段が送信した所定パルス幅の情報を受信する所定パルス幅情報受信手段を更に有し、該所定パルス幅情報受信手段が受信した所定パルス幅にて、前記通信手段による以後のパルスの出力を行うようにしてあることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る通信システムは、前記主通信装置は、前記所定パルス幅決定手段が決定した所定パルス幅に応じて、前記所定サンプリング期間を決定する所定サンプリング期間決定手段を有し、該所定サンプリング期間決定手段が決定した所定サンプリング期間にて、以後のサンプリングを行うようにしてあり、前記従通信装置は、前記所定パルス幅情報受信手段が受信した所定パルス幅に応じて、前記所定サンプリング期間を決定する所定サンプリング期間決定手段を有し、該所定サンプリング期間決定手段が決定した所定サンプリング期間にて、以後のサンプリングを行うようにしてあることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る通信装置は、共通の通信線を介して他の装置に接続され、前記通信線を介して各ビットが優性値又は劣性値の2値で表される連続した複数ビットの情報を送受信する通信手段を備える通信装置において、前記通信手段は、送信する情報の優性値に対して、1ビット分の情報送信時間より短い所定パルス幅に亘って所定信号レベルのパルスを前記通信線へ出力した後、前記通信線への信号出力を行わず、送信する情報の劣性値に対して、前記通信線への信号出力を行わないようにしてあることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る通信装置は、前記通信手段が優性値又は劣性値に係る情報を前記通信線へ出力した場合に、所定サンプリング期間に亘って前記通信線における信号レベルのサンプリングを複数回行って、前記所定サンプリング期間の信号レベルの平均値を算出する算出手段と、該算出手段が算出した平均値に応じて、前記通信線に送信された信号が優性値又は劣性値のいずれであるかを判定する判定手段と、劣性値の情報を送信した後に前記判定手段が優性値であると判定した場合に、他の通信装置からの情報送信を検知する検知手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る通信装置は、前記通信手段が優性値又は劣性値に係る情報を前記通信線へ出力した場合に、所定サンプリング期間に亘って前記通信線における信号レベルのサンプリングを複数回行って、各サンプリング結果の信号レベルと閾値とを比較する比較手段と、該比較手段の比較結果に基づき、信号レベルが前記閾値を超えるサンプル数及び信号レベルが前記閾値を超えないサンプル数に応じて、前記通信線に送信された信号が優性値又は劣性値のいずれであるかを判定する判定手段と、劣性値の情報を送信した後に前記判定手段が優性値であると判定した場合に、他の通信装置からの情報送信を検知する検知手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る通信装置は、前記パルスのパルス幅が異なる複数の優性値の情報を順に送信する試験送信手段と、該試験送信手段が送信した情報に対して異なるサンプリング期間に亘るサンプリングを行って前記判定手段による判定を行い、パルス幅及びサンプリング期間の組み合わせに対する受信結果を評価する評価手段と、該評価手段による評価結果に基づいて、各パルス幅に対して評価が高いサンプリング期間を選別する選別手段とを備えることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る通信方法は、共通の通信線を介して、各ビットが優性値又は劣性値の2値で表される連続した複数ビットの情報を送受信する通信方法において、送信する情報の優性値に対して、1ビット分の情報送信時間より短い所定パルス幅に亘って所定信号レベルのパルスを前記通信線へ出力した後、前記通信線への信号出力を行わず、送信する情報の劣性値に対して、前記通信線への信号出力を行わないことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る通信パラメータ決定方法は、上述の通信システムにて、前記所定パルス幅及び前記所定サンプリング期間を決定する通信パラメータ決定方法であって、一の通信装置にて前記パルスのパルス幅が異なる複数の優性値の情報を順に送信し、前記一の通信装置が送信した情報に対して異なるサンプリング期間に亘るサンプリングを行って前記判定手段による判定を行い、パルス幅及びサンプリング期間の組み合わせに対する受信結果を評価し、評価結果に基づいて、各パルス幅に対して評価が高いサンプリング期間を選別し、一の通信装置の送信を行って、各通信装置が評価及び選別を行う処理を、全ての通信装置について順に行い、各通信装置の選別結果に基づいて、前記所定パルス幅及び前記所定サンプリング期間を決定することを特徴とする。
【0021】
本発明においては、送信する情報がドミナント(優性値)の場合、通信装置は、1ビット分の情報送信時間に対して、この時間よりも短い所定パルス幅に亘るハイレベル(所定信号レベル)の信号を通信線へ出力し、その後は通信線への信号出力を停止する(ハイインピーダンス状態となる)。また送信する情報がレセシブ(劣性値)の場合、通信装置は、通信線への信号出力を行わない(ハイインピーダンス状態となる)。
これにより、ドミナントの送信とレセシブの送信とが衝突した場合、通信線上には所定パルス幅に亘ってドミナントに対応する信号が伝送されるため、レセシブを送信した通信装置は通信線上の信号を検出することによって、他の通信装置が送信した優性値の信号を検知することができる。
また通信装置がドミナントを送信する場合、所定パルス幅に亘る信号の出力後に、通信線にはリンギングが発生するが、信号の出力時間を1ビット分の情報送信時間に対して短く設定することにより、信号出力後から次のビットの情報送信が開始されるまでの間に、リンギングを減衰させることができる。また通信装置がレセシブを送信してもリンギングは発生しない。
これにより、通信装置がドミナントを送信した次のビットにおけるリンギングの影響を低減できるため、各ビットにおいてドミナント/レセシブの判定を早いタイミングで行うことが可能となる。よって、通信の高速化が実現できる。
【0022】
また、本発明においては、通信装置は上記のような信号を通信線へ出力する場合、所定サンプリング期間に亘って通信線の信号レベルのサンプリングを複数回行い、複数回のサンプリング結果から信号レベルの平均値を算出する。例えば通信装置は、ドミナントとして出力する信号の出力時間(所定パルス幅)と同程度の時間に亘ってサンプリングを行う。これにより通信装置は、通信線上の信号がドミナントの場合、信号レベルの平均値として、ドミナントとして出力する信号の信号レベルと同程度の値を算出することができる。また通信線上の信号がレセシブの場合、通信装置は、信号レベルの平均値として、0V近傍の値を算出することができる。通信線上にリンギングが発生している場合であっても、リンギングは正負の振幅を繰り返すため、信号レベルの平均値を算出することによってリンギングの影響を排除できる。
通信装置は、例えば算出した信号レベルの平均値が閾値を超えるか否かに応じて、通信線上の信号がドミナント/レセシブのいずれのものであるかを判定し、自らがレセシブの情報を送信した後に通信線上の信号がドミナントと判定した場合、情報送信が衝突したことを検知する。これにより通信装置は、リンギングの影響を低減して、他の通信装置が送信した信号の検知を行うことができる。
【0023】
また、本発明においては、通信装置は上記のような信号を通信線へ出力する場合、所定サンプリング期間に亘って通信線の信号レベルのサンプリングを複数回行い、各サンプリング結果の信号レベルと閾値との比較を行う。この比較の結果から、信号レベルが閾値を超えたサンプル数と、信号レベルが閾値を超えないサンプル数とを比較し、いわゆる多数決判定によって通信線上の信号がドミナント/レセシブのいずれであるかを判定する。
例えば通信装置は、ドミナントとして出力する信号の出力時間(所定パルス幅)と同程度の時間に亘ってサンプリングを行う。サンプリング結果と閾値との比較は、簡単なCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)回路にサンプリング結果の信号レベルを入力し、出力される2値信号を取得することによって容易に行うことができる。
通信装置は、自らがレセシブの情報を送信した後に通信線上の信号がドミナントと判定した場合、他の通信装置がドミナントの信号を送信したことを検知できる。
【0024】
上述のような通信を行うためには、各通信装置にて通信処理を行うために必要な所定パルス幅及び所定サンプリング期間の通信パラメータを適切に設定する必要がある。通信特性は通信線の長さ及び通信装置の数等の影響を受けるため、これら通信パラメータは通信システム毎に適切な設定を行わなければならない。通信システムにて通信特性を測定し、これら通信パラメータを予め決定することが可能であるが、通信システムにおける通信装置の増減又は経年変化等の要因によって通信特性が変化する可能性がある。
そこで本発明においては、例えば通信システムの出荷時、メンテナンス時又は通信装置の数を増減したとき等に、通信システムの各通信装置が試験的な情報の送受信を行い、所定パルス幅及び所定サンプリング期間の通信パラメータを決定する。
【0025】
一の通信装置は、パルス幅が異なる複数の優性値の情報を順に送信する。各通信装置は、一の通信装置が順に送信した情報を異なるサンプリング期間で複数回サンプリングして情報の受信処理を行う。例えば一の通信装置は、パルス幅Tp1、Tp1、Tp1、Tp2、Tp2、Tp2、Tp3、Tp3、Tp3のようにパルス幅を変化させて優性値の情報を順に送信する。これに対して例えば各通信装置は、サンプリング期間Td1、Td2、Td3、Td1、Td2、Td3、Td1、Td2、Td3のようにサンプリング期間を変化させて順にサンプリングを行う。この例の場合、3通りのパルス幅及び3通りのサンプリング期間により、パルス幅及びサンプリング期間の組み合わせは9通りとなる。各通信装置は、各組み合わせの受信結果を評価し、評価結果に基づいて各パルス幅に対して評価の高いサンプリング期間を選別する。上記の例では、各パルス幅Tp1、Tp2、Tp3に対して評価が高いサンプリング期間Td1、Td2、Td3が1つ選択され、選別結果として3通りのパルス幅及びサンプリング期間の組み合わせが得られる。
一の通信装置として試験的な情報送信を行う通信装置を順に変更して、全ての通信装置について同様の処理を行い、これらの処理結果から最終的に所定パルス幅及び所定サンプリング期間を決定する。
これにより、通信システムの通信装置間で試験的な情報の送受信を通信パラメータの種々の条件で行うことができ、何れの条件が適しているかを各通信装置が判断することができる。
【0026】
また、本発明においては、上記のような試験的な情報の送受信を行う際に、一の通信装置は優性値の情報と劣性値の情報とを交互に送信する。これによりリンギングの発生しやすい悪条件で試験的な情報の送受信が行われ、より適切な通信パラメータを決定することができる。
【0027】
また、本発明においては、パルス幅及びサンプリング期間の一の組み合わせに対して、優性値の情報を優性値と判定した数(D0)、劣性値の情報を優性値と判定した数(R0)、及び、サンプリング期間中に行ったサンプリング数(Pd)に応じた評価値(例えば(D0−R0)/Pd)を算出する。各通信装置は、算出した評価値に応じてパルス幅に対して適したサンプリング期間を選別することができる。
【0028】
また、本発明においては、通信システムに一の主通信装置と複数の従通信装置とを含む。従通信装置は、上記のような評価及び選別を行い、選別結果に対応する評価結果を主通信装置へ送信する。主通信装置は、各従通信装置からの評価結果を受信し、この評価結果に基づいて一のパルス幅を所定パルス幅として決定する。主通信装置は、決定した所定パルス幅を各従通信装置へ送信する。各従通信装置は、主通信装置から受信した所定パルス幅にて、以後の情報送信の際のパルス出力を行う。
これにより、各従通信装置での評価結果を主通信装置に集約して所定パルス幅を決定することができ、全ての通信装置が共通の所定パルス幅で以後の通信を行うことができる。
【0029】
また、本発明においては、各従通信装置は主通信装置から受信した所定パルス幅に応じて、所定サンプリング期間を決定する。各従通信装置は、パルス幅に対して評価が高いサンプリング期間を既に選別しているため、選別結果から所定パルス幅に対応するサンプリング期間を選択することによって、所定サンプリング期間を決定することができる。なお所定サンプリング期間は、通信装置毎に異なってよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明による場合は、1ビット分の情報送信時間より短い信号をドミナントとして出力する構成とすることにより、送信する情報の次ビットにリンギングが与える影響を低減することができ、各ビットにおけるドミナント/レセシブの判定を早いタイミングで行うことが可能となるため、CANプロトコルのようなアービトレーションを行う必要がある通信を高速化することができる。
【0031】
また本発明による場合は、各通信装置が試験的な情報の送受信を行って所定パルス幅及び所定サンプリング期間の通信パラメータを決定する構成とすることで、例えば通信装置の数が増減した場合又は経年変化等によって通信特性が変化した場合であっても、変化した通信特性に適した通信パラメータを自動的に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】通信システムの一構成例を示す模式図である。
【図2】通信装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る通信システムにおいて各ECUが送受信する信号を説明するための模式図である。
【図4】シミュレーションにより評価を行った通信システムの構成を説明するための模式図である。
【図5】シミュレーション結果を示すグラフである。
【図6】送信部による送信処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】受信部による受信処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態2のシミュレーション結果を示す表である。
【図9】実施の形態2の受信部による受信処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】実施の形態2の受信部による受信処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】自動設定処理にて出力される試験信号を説明するための模式図である。
【図12】自動設定処理にて行うサンプリングを説明するための模式図である。
【図13】RAMに記憶される選別結果の一例を示す模式図である。
【図14】マスターECUが行う自動設定処理の手順を示すフローチャートである。
【図15】スレーブECUが行う自動設定処理の手順を示すフローチャートである。
【図16】試験信号送信処理の手順を示すフローチャートである。
【図17】試験信号受信処理の手順を示すフローチャートである。
【図18】従来の通信システムにおける信号波形の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(実施の形態1)
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は、通信システムの一構成例を示す模式図である。本実施の形態に係る通信システムは、例えば図示しない車輌に搭載された複数のECU(Electronic Control Unit)1を通信装置として備え、複数のECU1が共通の通信線5を介して接続された構成である。なお、図1においては、複数のECU1にそれぞれ1a〜1eの符号を付して区別すると共に、通信線5を幹線5a及び支線5b〜5dに区別して図示してある。即ち、図示の通信システムは、ECU1a及び1eが幹線5aを介して接続され、通信線5の幹線5aから分岐した3つの支線5b〜5dにそれぞれECU1b〜1dが接続された構成である。
【0034】
例えばECU1bにて通信線5の支線5bへ信号が出力された場合、この信号は支線5bから幹線5a、支線5cを経てECU1cへ至り、ECU1cの端子部などにて反射された反射波が支線5c、幹線5a、支線5bを経てECU1bへ至る(図1中の破線の矢印参照)。また図1において図示は省略するが、ECU1dにおいても同様の反射波が発生する。このような信号の反射が繰り返されることによって、図18に示したようなリンギングとなる。なお、支線5b〜5dの距離が長くなると、信号の出力元へ反射波が戻るまでの時間が長くなるため、リンギングの周期が長くなり、リンギングが継続する時間(減衰までに要する時間)が長くなる。また通信線5の支線5b〜5dの数が多くなる(ECU1の数が多くなる)と、反射波の発生箇所が増加するため、リンギングの振幅が大きくなり、リンギングが減衰するまでに要する時間が長くなる。
【0035】
図2は、通信装置(ECU1)の構成を示すブロック図である。ECU1は、制御部11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、入力部14、出力部15及びCAN通信制御部16等を備えて構成されている。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等の演算処理装置を用いて構成されるものであり、ROM12に記憶された制御プログラムを読み出して実行することにより種々の制御処理を行うことができる。
【0036】
ROM12は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)又はフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ素子で構成されるものであり、制御部11にて実行される制御プログラム及び制御部11が行う処理に必要な情報等が予め記憶されている。RAM13は、例えばSRAM(Static RAM)又はDRAM(Dynamic RAM)等のメモリ素子で構成されるものであり、制御部11の処理に伴って生成された情報及び他のECU1との間で送受信する情報等の種々の情報が記憶される。
【0037】
入力部14は、例えば車輌の車速センサ若しくは温度センサ等のセンサ、又は、車輌の内外に配置された操作用の種々のスイッチ等の入力装置からの信号が入力され、入力信号のサンプリング又はA/D変換等の処理を行って得られた情報を制御部11へ与える。出力部15は、例えばモータ又はランプ等の負荷が接続され、制御部11からの指示に応じてこれらの負荷を駆動する駆動信号を出力する。なお、ECU1は必ずしも入力部14及び出力部15の両方を備える必要はなく、いずれか一方のみを備える構成であってよい。
【0038】
CAN通信制御部16は、通信線5に接続される端子を有しており、この端子に接続された通信線5を介して他のECU1との間でCANプロトコルに従った情報の送受信を行うものである。CAN通信制御部16は、制御部11から与えられた送信情報をCANプロトコルに応じた送信用のデータ(フレーム)に変換して送信部17へ与える。CAN通信制御部16の送信部17は、与えられた送信データの各ビットの値(0(ドミナント)又は1(レセシブ))に応じて、通信線5へ信号を出力する。なおCANプロトコルにおいては、通信線5としてツイスト線が用いられ、送信部17は通信線5へ差動信号を出力する。送信部17は、複数ビットで構成された送信データの各ビットについて順に処理を行い、処理対象ビットの値がドミナントの場合には所定信号レベルの短い信号を出力した後で端子をハイインピーダンス状態とし、処理対象ビットの値がレセシブの場合には端子をハイインピーダンス状態とする。
【0039】
またCAN通信制御部16は、通信線5の信号レベル(ツイスト線の電位差)を検知することによって、通信線5上に送信された信号がドミナント/レセシブのいずれに対応する信号であるかを判定し、各ビットがドミナント/レセシブの2値で表されるデータの受信を行う受信部18を有している。CAN通信制御部16は、受信部18にて受信したデータを制御部11へ与える。またCAN通信制御部16は、送信部17にて自らが送信したデータを受信部18にて受信し、送信データと受信データとが一致しない場合(送信データのレセシブが受信データにてドミナントに変化していた場合)、通信線5に接続された他のECU1の送信との衝突が発生していることを検知し、アービトレーションの処理を行う。なおECU1が行うアービトレーションの処理は、従来のCANプロトコルによるものと同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0040】
図3は、本発明に係る通信システムにおいて各ECU1が送受信する信号を説明するための模式図であり、縦軸を通信線5のツイスト線間の電位差[V]とし、横軸を時間[n秒]としたグラフである。また図3においては、上段に送信信号を示し、下段に受信信号を示してある。図示の例では、ECU1は1Mbpsの通信速度でCANプロトコルに応じた通信を行う構成、即ち1ビットのデータ送信時間が1000nsの通信システムを想定している。また図示の例では、送信部17が0ns〜1000nsにドミナントに対応する信号を出力し、1000ns〜2000nsにレセシブに対応する信号を出力した場合の波形を示してある。
【0041】
ECU1の送信部17は、ドミナントのデータ送信を行う場合、1ビットの送信時間1000nsのうち開始時点から400nsまでの期間に、所定信号レベル(2V)の信号(パルス信号)を出力した後、400ns〜1000nsの期間は信号を出力せずに端子をハイインピーダンス状態とする。また送信部17は、レセシブのデータ送信を行う場合、1ビットの送信時間(図3の1000ns〜2000nsの期間)の全てについて信号を出力せずに端子をハイインピーダンス状態とする。
【0042】
上記のような信号を送信部17が通信線5へ出力した場合、通信線5上の信号は反射波などの影響による例えば図3の下段に示すような波形となる。送信部17が所定信号レベルの信号を出力する0ns〜400nsの期間は、通信線5上の信号は所定信号レベルの近傍で歪んだ波形となる。また送信部17が端子をハイインピーダンス状態とする400ns〜2000nsの期間は、通信線5上の信号は、約0Vを中心として振動すると共に、時間経過に従って徐々に減衰する波形、即ちリンギングの波形となる。
【0043】
ECU1の受信部18は、各ビットの送信時間1000nsのうち開始時点から所定期間(例えば400ns)に亘って、通信線5の信号レベルを例えば5ns周期でサンプリングしている。受信部18は、所定期間のサンプリング結果から信号レベルの平均値を算出し、算出した平均値が予め定められた閾値を超えるか否かに応じて、ドミナント/レセシブの判定を行う。図3下段に示す例では、0ns〜400nsの信号レベルの平均は約1.7Vであり、受信部18は例えば1Vを閾値として判定を行うことによって、0ns〜1000nsの期間はドミナントの送信が行われていると判定する。また1000ns〜1400nsの信号レベルの平均は約0Vであり、受信部18はこの期間にレセシブの送信が行われていると判定する。
【0044】
次に、本発明に係る通信システムのシミュレーションによる評価結果を説明する。本シミュレーションでは、通信速度を1Mビット/s(即ち1ビットのデータ送信時間を1000ns)とし、受信部18が5ns周期で信号レベルのサンプリングを行うものとした。また各サンプリング結果について、雑音の標準偏差σ=1V/サンプルを考慮した。またサンプリング結果の平均値との比較を行う閾値は0.85Vとした。また本シミュレーションは、リンギングの影響が最も大きいドミナント→レセシブのデータを送信した場合について行った。この条件において、ドミナントの送信時に送信部17が出力する信号の信号幅(パルス幅)をTpとし、受信部18が信号レベルのサンプリングを行う期間をTdとした場合に、通信エラー(ビット誤り率)が最小となるTp及びTdの組み合わせについて検討する。
【0045】
図4は、シミュレーションにより評価を行った通信システムの構成を説明するための模式図である。本シミュレーションは、通信に厳しい2つの条件を考慮して行った。条件1は、送信側のECU1から受信側のECU1までの距離が長く、信号の伝搬遅延が厳しい条件である。条件1では、送信側及び受信側のECU1間の距離(通信線5の長さ)を15m(車輌における通信線5の最長距離)とし、送信側及び受信側のECU1での負荷インピーダンスを120Ωとした。また条件2は、リンギングが厳しい条件である。条件2では、ECU1が自ら送信した信号を受信するものとし、ECU1が接続される通信線5の支線の長さを2mとし、ECU1の負荷インピーダンスを40kΩとした。なおビット誤り率BERは、下記の(1)式で算出される。なお(1)式において、A1はドミナントに対応する信号にて受信部18が算出する信号レベルの平均値を示し、A0はレセシブに対応する信号にて受信部18が算出する信号レベルの平均値を示し、Tsはサンプリング時間を示し、erfc()は相補誤差関数である。
【0046】
【数1】

【0047】
図5は、シミュレーション結果を示すグラフであり、横軸をパルス幅Tpとし、縦軸をビット誤り率としたものである。図示のグラフでは、条件1によるシミュレーション結果を破線で示し、条件2によるシミュレーション結果を一点鎖線で示し、両条件の平均を実線で示してある。また図示のグラフでは、ドミナントに対して出力する信号のパルス幅Tpについて、100nsから1000nsまで100ns間隔でシミュレーション結果をプロットしてある。図示のグラフから、ビット誤り率の平均値が最小となるのはパルス幅Tp=400nsであった。またシミュレーション結果の図示は省略するが、パルス幅Tp=400nsに対して、最もビット誤り率の平均値が最小となるサンプリング期間Td=345nsであった。よって本実施の形態の通信システムが通信速度1Mbpsの通信を行う場合、送信部17がドミナントに対して出力する信号のパルス幅Tp=400nsとし、受信部18によるサンプリング期間Td=345nsとすることにより、ビット誤り率が最小となる高精度な通信を実現できる。
【0048】
図6は、送信部17による送信処理の手順を示すフローチャートである。CAN通信制御部16の送信部17は、まず、送信すべきデータの中から送信対象とする1ビットの情報を取得し(ステップS1)、この1ビットがドミナントであるか否かを判定する(ステップS2)。送信対象の1ビットがドミナントである場合(S2:YES)、送信部17は、通信線5に対して所定信号レベルの信号出力を行う(ステップS3)。次いで送信部17は、この信号の出力開始から定められたパルス幅Tpに相当する時間が経過したか否かを更に判定し(ステップS4)、パルス幅Tpに相当する時間が経過していない場合(S4:NO)、ステップS3へ処理を戻し、信号出力を継続して行う。
【0049】
定められたパルス幅Tpに相当する時間が経過した場合(S4:YES)、送信部17は、信号出力を停止して、端子をハイインピーダンス状態とする(ステップS5)。また、送信対象とする1ビットがドミナントでない場合(S2:NO)、即ちレセシブの場合も同様に、送信部17は、信号出力を行わずに、端子をハイインピーダンス状態とする(ステップS5)。その後、送信部17は、1ビットの送信時間が経過したか否かを判定し(ステップS6)、1ビットの送信時間が経過していない場合には(S6:NO)、ステップS5へ処理を戻し、ハイインピーダンス状態を継続する。1ビットの送信時間が経過した場合(S6:YES)、送信部17は、送信データの全ビットの送信を終えたか否かなどを判定することによって、送信を終了するか否かを更に判定する(ステップS7)。送信を終了しないと判定した場合(S7:NO)、送信部17は、ステップS1へ処理を戻し、送信データの次のビットについて同様の処理を行う。送信を終了すると判定した場合(S7:YES)、送信部17は、送信処理を終了する。
【0050】
図7は、受信部18による受信処理の手順を示すフローチャートである。CAN通信制御部16の受信部18は、通信線5の信号レベルが予め定められた閾値を超えたか否かを判定し(ステップS20)、信号レベルが閾値を超えない場合(S20:NO)、信号レベルが閾値を超えるまで待機する。信号レベルが閾値を超えた場合(S20:YES)、受信部18は、通信線5の信号レベルのサンプリングを行い(ステップS21)、サンプリング開始からサンプリング期間Tdが経過したか否かを判定する(ステップS22)。サンプリング期間Tdが経過していないと判定した場合(S22:NO)、受信部18は、ステップS21へ処理を戻し、信号レベルのサンプリングを繰り返し行う。
【0051】
サンプリング期間Tdが経過したと判定した場合(S22:YES)、受信部18は、サンプリング期間Tdにてサンプリングした複数の信号レベルの平均値を算出し(ステップS23)、算出した平均値が予め定められた閾値を超えるか否かを判定する(ステップS24)。信号レベルの平均値が閾値を超えると判定した場合(S24:YES)、受信部18は、受信した信号がドミナントに対応するものであると判定し(ステップS25)、ステップS27へ処理を進める。また信号レベルの平均値が閾値を超えないと判定した場合(S24:NO)、受信部18は、受信した信号がレセシブに対応するものであると判定し(ステップS26)、ステップS29へ処理を進める。
【0052】
また受信部18は、ステップS25にて受信した信号がドミナントであると判定した後、この信号のサンプリングを行っていた期間に送信部17がレセシブの送信を行っていたか否かを判定する(ステップS27)。送信部17がレセシブの送信を行っていた場合(S27:YES)、送信したレセシブがドミナントに変化しているため、受信部18は、他のECU1が信号を送信したことを検知し(ステップS28)、ステップS29へ処理を進める。また送信部17がレセシブの送信を行っていない場合(S27:NO)、受信部18は、他のECU1の信号送信を検知することなく、ステップS29へ処理を進める。
【0053】
その後、受信部18は、1ビットの送信時間が経過したか否かを判定し(ステップS29)、1ビットの送信時間が経過していない場合には(S29:NO)、この時間が経過するまで待機する。1ビットの送信時間が経過した場合(S29:YES)、受信部18は、ステップS20へ処理を戻し、次のビットについて同様の受信処理を行う。
【0054】
以上の構成の通信システムは、ECU1の送信部17が、送信データがドミナントの場合に、1ビット分の送信時間より短いパルス幅Tpに亘る所定信号レベルの信号を通信線5へ出力し、その後は通信線5へ信号出力を停止してハイインピーダンス状態とすると共に、送信データがレセシブの場合に、通信線5へ信号出力をせずハイインピーダンス状態とする。これにより、ドミナントに対応する信号の出力後にリンギングが発生した場合であっても、次のビットの送信時間に至るまでにリンギングを減衰させることができるため、各ビットにおけるドミナント/レセシブの判定を早いタイミングで行うことが可能となり、通信の高速化を実現することができる。
【0055】
また、ECU1の受信部18が、サンプリング期間Tdに亘って通信線5の信号レベルをサンプリングし、サンプリングした信号レベルの平均値を算出し、算出した平均値が閾値を超えるか否かに応じてドミナント/レセシブの判定を行う構成とすることにより、0V近傍にて正負の振幅を繰り返すリンギングの影響を低減して、データ受信及びアービトレーション等の処理を高精度に行うことができる。
【0056】
なお、本実施の形態においては、通信システムが車輌に搭載されるものとしたが、これに限るものではない。また、図1に示した通信システムの構成(ECU1の数、ECU1の接続形態等)は、一例であってこれに限るものではない。また、通信線5としてツイスト線を用いる構成としたが、これに限るものではなく、1つのケーブルを通信線5として用いるなど、その他の構成であってよい。
【0057】
(実施の形態2)
上述の実施の形態1に係る通信システムは、ECU1の受信部18が通信線5の信号レベルをサンプリングし、サンプリング結果の信号レベルの平均値を算出し、この平均値が閾値を超えるか否かに応じてドミナント/レセシブの判定を行う構成である。これに対して実施の形態2に係る通信システムは、ECU1の受信部18が通信線5の信号レベルをサンプリングする点は同様であるが、その後のドミナント/レセシブの判定方法が異なる。実施の形態2に係る通信システムでは、受信部18が各サンプリング結果の信号レベルと閾値との比較を行い、信号レベルが閾値を超えたサンプル数と、信号レベルが閾値を超えないサンプル数とによる多数決判定を行って、ドミナント/レセシブの判定を行う構成である。
【0058】
実施の形態2のECU1の受信部18は、各ビットの送信時間(例えば1000ns)のうち開始時点から所定期間(例えば400ns)に亘って、通信線5の信号レベルを所定周期(例えば5ns周期)でサンプリングし、信号レベルと閾値との比較を所定周期で行っている。例えば受信部18は、通信線5の信号がCMOS回路へ入力される構成とすることができ、このCMOS回路が出力する信号を所定周期で取得する。
【0059】
また受信部18は、信号レベルと閾値との比較結果を計数する2つのカウンタを有しており、信号レベルが閾値を超えたサンプル数と、信号レベルが閾値を超えないサンプル数とをそれぞれのカウンタにて計数している。例えば受信部18は、上記のCMOS回路の出力信号に応じて2つのカウンタのいずれか一方をカウントアップする構成とすることができる。
【0060】
所定期間の経過後、受信部18は、2つのカウンタの値を比較し、信号レベルが閾値を超えたサンプル数が閾値を超えないサンプル数より多い場合、この期間にドミナントの送信が行われていたと判定する。また受信部18は、信号レベルが閾値を超えたサンプル数が閾値を超えないサンプル数より少ない場合、この期間にレセシブの送信が行われていたと判定する。
【0061】
次に、実施の形態2に係る通信システムのシミュレーションによる評価結果を説明する。本シミュレーションでは、通信線5にて送受信される信号の振幅(ツイストケーブル間の電位差)を2.0Vとし、受信部18のCMOS回路の判定レベルを0.9Vとし、信号の最大遅延を0.5μsとし、受信部18が100ns周期で信号レベル(CMOS回路の出力)のサンプリングを行うものとした。また実施の形態1に係る通信システムのシミュレーションと同様に、図4に示した2つの条件(ただし条件2の送受信間距離は0mとした)について、実施の形態2の通信システムのシミュレーションを行った。この条件において、ドミナントの送信時に送信部17が出力する信号の信号幅(パルス幅)をTpとし、受信部18が信号レベルのサンプリングを行う期間をTdとした場合に、多数決判定による通信の正誤(成功/失敗)を検討する。
【0062】
図8は、実施の形態2のシミュレーション結果を示す表である。図示の表は、パルス幅Tpを0.1μsから1.0μsまで0.1μs間隔で変化させ、サンプリング期間Tdを0.1μsから0.5μsまで変化させた場合の、Tp及びTdの各組み合わせについて、誤りなく通信を行うことができた場合を”正”とし、誤りが生じた場合を”誤”として、シミュレーション結果を記載したものである。なお、表中に”−”と記載した組み合わせは、シミュレーションを行っていない(パルス幅Tpよりサンプリング期間Tdを長く設定することはできないため)。なおシミュレーション結果は、Tp及びTdの各組み合わせについて、条件1及び条件2の両条件においてドミナント及びレセシブの両値の判定に誤りが生じなかったものを”正”としてあり、いずれかにて誤りが生じたものを”誤”としてある。
【0063】
図示のシミュレーションの結果から、パルス幅Tpが長い場合、リンギングの影響が現れるため、通信のドミナント/レセシブの判定に誤りが生じることが分かる。これに対してサンプリング期間Tdを長くすることによって、誤りの発生を抑制することができる。
【0064】
図9及び図10は、実施の形態2の受信部18による受信処理の手順を示すフローチャートである。なお本処理においては、受信部18がDカウンタ及びRカウンタの2つのカウンタを用いて処理を行うものとする。実施の形態2のCAN通信部16の受信部18は、まず、Dカウンタ及びRカウンタの2つのカウンタを初期化する(ステップS41)。次いで受信部18は、通信線5の信号レベルが予め定められた閾値を超えたか否かを判定し(ステップS42)、信号レベルが閾値を超えない場合(S42:NO)、信号レベルが閾値を超えるまで待機する。
【0065】
信号レベルが閾値を超えた場合(S42:YES)、受信部18は、通信線5の信号レベルのサンプリングを行い(ステップS43)、サンプリングした信号の信号レベルが閾値を超えるか否かを判定する(ステップS44)。なおステップS42の閾値と、ステップS44の閾値とは同じ値であってよい。受信部18は、信号レベルが閾値を超える場合(S44:YES)、Dカウンタをカウントアップし(ステップS45)、また、信号レベルが閾値を超えない場合(S44:NO)、Rカウンタをカウントアップする(ステップS46)。
【0066】
Dカウンタ又はRカウンタをカウントアップした後、受信部18は、サンプリング開始からサンプリング期間Tdが経過したか否かを判定する(ステップS47)。サンプリング期間Tdが経過していないと判定した場合(S47:NO)、受信部18は、ステップS43へ処理を戻し、信号レベルのサンプリング及び閾値との比較を繰り返し行う。
【0067】
サンプリング期間Tdが経過したと判定した場合(S47:YES)、受信部18は、2つのカウンタの値を比較し、Dカウンタの値がRカウンタの値を超えるか否かを判定する(ステップS48)。Dカウンタの値がRカウンタの値を超えると判定した場合(S48:YES)、受信部18は、受信した信号がドミナントに対応するものであると判定し(ステップS49)、ステップS51へ処理を進める。またDカウンタの値がRカウンタの値を超えないと判定した場合(S48:NO)、受信部18は、受信した信号がレセシブに対応するものであると判定し(ステップS50)、ステップS53へ処理を進める。
【0068】
また受信部18は、ステップS49にて受信した信号がドミナントであると判定した後、この信号のサンプリングを行っていた期間に送信部17がレセシブの送信を行っていたか否かを判定する(ステップS51)。送信部17がレセシブの送信を行っていた場合(S51:YES)、送信したレセシブがドミナントに変化しているため、受信部18は、他のECU1が信号を送信したことを検知し(ステップS52)、ステップS53へ処理を進める。また送信部17がレセシブの送信を行っていない場合(S51:NO)、受信部18は、他のECU1の信号送信を検知することなく、ステップS53へ処理を進める。
【0069】
その後、受信部18は、1ビットの送信時間が経過したか否かを判定し(ステップS53)、1ビットの送信時間が経過していない場合には(S53:NO)、この時間が経過するまで待機する。1ビットの送信時間が経過した場合(S53:YES)、受信部18は、ステップS41へ処理を戻し、次のビットについて同様の受信処理を行う。
【0070】
以上の構成の実施の形態2に係る通信システムは、ECU1の受信部18が、サンプリング期間Tdに亘って通信線5の信号レベルをサンプリングし、サンプリングした信号レベルが閾値と閾値との比較を行って、信号レベルが閾値を超えるサンプル数と、信号レベルが閾値を超えないサンプル数とに応じてドミナント/レセシブの判定を行う構成である。この実施の形態2に係る通信システムの構成は、実施の形態1に係る通信システムの構成と比較して、受信部18の回路構成を容易化することができるため、ECU1の低価格化等を実現することができる。
【0071】
なお実施の形態2においては、受信部18が2つのカウンタを用いて判定を行う構成としたが、これに限るものではなく、1つのカウンタを用いて判定を行う構成であってもよい。例えば信号レベルが閾値を超えると判定した場合にのみカウンタをカウントアップし、このカウンタの値が全サンプリング数の半分を超えるか否かを判定する構成とすることができる。また例えば、信号レベルが閾値を超えると判定した場合にカウンタをカウントアップし、信号レベルが閾値を超えないと判定した場合にカウンタをカウントダウンする構成とすることができる。また、通信線5の信号レベルと閾値との比較をCMOS回路にて行う構成としたが、これに限るものではなく、その他の回路にて比較を行う構成としてもよい。
【0072】
(実施の形態3)
上述の実施の形態1、2に係る通信システムでは、図5及び図8等に示したように、ドミナント送信の際に出力するパルス信号のパルス幅Tpと、受信の際に信号レベルをサンプリングするサンプリング期間Tdとをどのような値とするかが、通信性能に与える影響が大きい。最適なパルス幅Tp及びサンプリング期間Tdは、例えば通信システム(を搭載した車輌)の工場出荷前などに、通信システムの特性を測定して最適値を算出し、各ECU1に予め設定しておく。
【0073】
しかしながら予め算出及び設定されたパルス幅Tp及びサンプリング期間Tdは、例えば車輌のオプション装備の追加/削除などによってECU1の搭載数が増加/減少した場合に通信システムの特性が変化し、最適な値でなくなる可能性がある。またECU1及び通信線5等の経年変化によっても通信特性が変化する可能性があり、予め算出及び設定されたパルス幅Tp及びサンプリング期間Tdが最適な値でなくなる可能性がある。
【0074】
実施の形態3に係る通信システムは、パルス幅Tp及びサンプリング期間Tdの自動設定機能を備えることによって、上記の問題を解決したものである。この自動設定の処理は、例えば通信システムを搭載した車輌の工場出荷前、車輌の点検を行う場合、又は、ECU1の追加/削除を行った場合等に、車輌のディーラ又は工場等にて行われる。自動設定処理を行っている間、通信システムの各ECU1は通常の通信処理を停止する。
【0075】
また実施の形態3に係る通信システムは、パルス幅Tp及びサンプリング期間Tdの自動設定処理の際に、一のECU1がマスターECUとなり、残りのECU1がスレーブECUとなって処理を進める。なお、マスターECUとしての機能は、通信システム中の1つのECU1にのみ設けられていてもよく、又は、複数のECU1に設けられて、状況に応じていずれかのECU1がマスターECUとして動作してもよい。
【0076】
以下の説明においては、図1の通信システムの構成において、ECU1aをマスターECUとし、その他のECU1b〜1eをスレーブECUとする。例えばマスターECU1aには、パルス幅Tp及びサンプリング期間Tdの自動設定処理を動作させるための操作部(図示は省略する)が設けられており、車輌のディーラ又は工場等にて作業者がこの操作部に対する操作を行うことによって、自動設定処理が開始される。
【0077】
マスターECU1aは、自動設定処理の開始命令を、通信線5を介してスレーブECU1b〜1eに送信する。これを受信した各スレーブECU1b〜1eは、通常の制御処理及び通信処理等を停止して、自動設定処理を開始する。なおマスターECU1aが送信する自動設定処理の開始命令は、例えばCANプロトコルに従ったデータとして送信されるものであってよく、また例えばCANプロトコルとは異なる特定信号を通信線5に出力し、この特定信号を各スレーブECU1b〜1eが検知する構成であってもよい。
【0078】
その後、マスターECU1aは、通信線5に対して試験信号の出力を行う。図11は、自動設定処理にて出力される試験信号を説明するための模式図である。マスターECU1aは、試験信号としてドミナント及びレセシブが交互に連なった信号を出力する。図11上段に示すように、試験信号は、Tp1の信号列からTpNの信号列までのN個の信号列がデリミタで区切られた構成である。デリミタは区切りとして予め定められた信号列であり、例えば所定個のレセシブが連続した信号とすることができる。Tpn(n=1、2、…、N)の信号列は、ドミナント及びレセシブの2ビット列をM個連続した構成である。
【0079】
また図11下段に示すように、Tpnの信号列は、それぞれドミナントとして出力するパルス信号のパルス幅が異なる。即ちTp1の信号列におけるドミナントのパルス幅はTp1であり、Tp2の信号列におけるドミナントのパルス幅はTp2であり、…、TpNの信号列におけるドミナントのパルス幅はTpNである。
【0080】
このように、マスターECU1aは、ドミナント及びレセシブの2ビット列をL×N個含む試験信号を通信線5へ出力する。これに対してマスターECU1a及びスレーブECU1b〜1e(即ち通信システムの全てのECU1a〜1e)は、通信線5に出力された試験信号のサンプリングを行う。図12は、自動設定処理にて行うサンプリングを説明するための模式図である。図12上段に示すように試験信号のTpnの信号列には、ドミナントのパルス幅がTpnに設定されたドミナント及びレセシブの2ビット列がM個連続している。
【0081】
これに対して各ECU1a〜1eは、サンプリング期間Tdm(m=1、2、…、M)を変化させながら、試験信号のサンプリングを行う。各ECU1a〜1eは、1つのドミナント及びレセシブの2ビット列に対して同じサンプリング期間Tdmでサンプリングを行い、次の2ビット列に対して別のサンプリング期間Tdmでサンプリングを行う。よって各ECU1a〜1eは、サンプリング期間Td1、Td1、Td2、Td2、…、TdM、TdMのように、同じサンプリング期間Tdmでのサンプリングを2回ずつ行う。試験信号はドミナント及びレセシブが交互に繰り返される信号であるため、同じサンプリング期間Tdmでのサンプリングを2回行うことで、各ECU1a〜1eは、ドミナント及びレセシブのサンプリングを同じサンプリング期間Tdmで行うことができる。
【0082】
また各ECU1a〜1eは、各サンプリング期間Tdmの間に、例えば5nsなどの所定周期で通信線5の電圧値のサンプリングを繰り返し行っており、複数回のサンプリングで得られた複数個のサンプリング結果に基づいて(例えば実施の形態1ではサンプリング結果の平均値に基づいて、また例えば実施の形態2ではサンプリング結果の多数決判定に基づいて)、通信線5上の信号がドミナント又はレセシブのいずれであるかを判定している。自動設定処理において各ECU1a〜1eは、各サンプリング期間Tdmの間に得られた複数のサンプリング結果から、以下の(2)式による評価値を算出する。
【0083】
評価値 = (D0−R0)/Pd …(2)
【0084】
なお評価値の算出は、同じサンプリング期間Tdmで行ったドミナント及びレセシブのサンプリング結果について行う。(2)式において、D0はドミナントの信号をドミナントと判定したサンプリング結果の数であり、R0はレセシブの信号をドミナントと判定したサンプリング結果の数であり、Pdはドミナント又はレセシブの各サンプリング数である。評価値は−1から+1までの値をとり、評価値が0より大きい場合には多数決判定によりドミナント又はレセシブを正しく判定できる。
【0085】
試験信号の一のパルス幅Tpnの信号列に対して上記のサンプリング及び評価値の算出を行った場合、各ECU1a〜1eは、M個の評価値を算出することができる。各ECU1a〜1eは、最も高い評価値となったサンプリング期間Tdmを選別する。試験信号にはN通りのパルス幅Tpnの信号列が含まれているため、各ECU1a〜1eは、各パルス幅Tpnに対してそれぞれ1つのサンプリング期間Tdmを選別することができ、選別したN個のサンプリング期間Tdmを、そのパルス幅Tpn及び評価値と共にRAM13に記憶する。
【0086】
図13は、RAM13に記憶される選別結果の一例を示す模式図である。マスターECU1aによる試験信号の出力、並びに、各ECU1a〜1eによる試験信号のサンプリング及び評価等が終了した後、例えばスレーブECU1bが同様の試験信号を出力し、各ECU1a〜1eにて試験信号のサンプリング及び評価等を行う。このように試験信号の出力を通信システム中の全ECU1a〜1eが順に行い、全ECU1a〜1eが出力した全ての試験信号に対して各ECU1a〜1eがサンプリング及び評価等を行う。例えば通信システム中のECUの搭載数がL個の場合、RAM13には選別されたL×N個のサンプリング期間Tdmが記憶される。
【0087】
なおECU1a〜1eによる試験信号の出力順は、どのような順番であってもよい。上記の説明では、初めにマスターECU1aが試験信号を出力するものとしたが、必ずしもマスターECU1aから試験信号の出力を開始する必要はない。試験信号の出力は、例えばECU1a〜1e毎に予め定められた順番に従って行う構成であってもよく、また例えば各ECU1a〜1eがランダムに試験信号の出力を行う構成であってもよい。ランダムに試験信号を出力する構成では、複数のECU1a〜1eが同時的に試験信号を出力した場合、例えば試験信号の出力を停止してランダムな待ち時間の経過後に再出力を行えばよい。
【0088】
全てのECU1a〜1eによる試験信号の出力が終了した後、マスターECU1aは、スレーブECU1b〜1eに対して、RAM13に記憶した情報の送信を順に要求する。この要求に応じてスレーブECU1b〜1eは、RAM13に記憶した情報を読み出してマスターECU1aへ送信する。マスターECU1aは、全てのスレーブECU1b〜1eからの情報を受信し、RAM13に記憶する。これによりマスターECU1aのRAM13には、自身が作成した情報を含めて、L×L×N個のサンプリング期間及び評価値等の情報が記憶される。
【0089】
次いでマスターECU1aは、RAM13に記憶した情報に基づいて、以後の通信で用いるパルス幅を決定する。マスターECU1aは、L×L×N個の情報に含まれる評価値に基づいて、N個のパルス幅Tpnから一のパルス幅を選択するが、選択方法はどのような方法であってもよい。例えばマスターECU1aは、L×L×N個の情報について、まず評価値が閾値以下のパルス幅Tpnを選択対象から除外し、各パルス幅Tpnの評価値の平均が最も大きいパルス幅Tpnを選択することができる。マスターECU1aは、選択した一のパルス幅Tpnを、スレーブECU1b〜1eへブロードキャストなどにより通知する。
【0090】
マスターECU1aからパルス幅Tpnが通知された各スレーブECU1b〜1eは、RAM13に記憶した情報(図13参照)に基づいて、このパルス幅Tpnに適したサンプリング期間Tdmを決定する。RAM13に記憶された情報には、通知されたパルス幅Tpnに対応するサンプリング期間Tdm及び評価値の情報がL個記憶されており、スレーブECU1b〜1eは、これらの中から1つのサンプリング期間Tdmを選択する。但し選択方法はどのような方法であってもよい。例えばスレーブECU1b〜1eは、L個の情報について、まず評価値が閾値以下のサンプリング期間Tdmを選択対象から除外し、最も評価値が大きいサンプリング期間Tdmを選択することができる。なおマスターECU1aも同様に、自らが決定したパルス幅Tpnに対するサンプリング期間Tdmの決定を、RAM13に記憶された情報の内の自らが作成した情報に基づいて行う。
【0091】
次いで各ECU1a〜1eは、マスターECU1aが決定したパルス幅Tpnと、各自が決定したサンプリング期間Tdmとを、例えばCAN通信制御部16内に設けられた設定値を記憶するための不揮発性メモリなどに記憶し、通信パラメータを更新する。その後、各ECU1a〜1eによる通信は、新たに設定されたパルス幅及びサンプリング期間を用いて行われる。即ち、各ECU1a〜1eは、マスターECU1aにて決定された共通のパルス幅にてドミナントの送信処理を行う。また各ECU1a〜1eは、自らが決定したサンプリング期間にて受信処理を行う。各ECU1a〜1eのサンプリング期間は、それぞれ異なるものであってよい。
【0092】
図14は、マスターECU1aが行う自動設定処理の手順を示すフローチャートである。マスターECU1aは、まず、自動設定処理の開始命令を通信システム中の全スレーブECU1b〜1eへ送信する(ステップS61)。次いでマスターECU1aは、試験信号の送信処理を行うと共に(ステップS62)、試験信号の受信処理を行う(ステップS63)。なおステップS62の試験信号送信処理及びステップS63の試験信号受信処理は並列的に行われる。またステップS62及びS63の処理の詳細な手順は後述する。
【0093】
試験信号受信処理により得られるサンプリング期間及び評価値等の情報に基づいて、マスターECU1aは、パルス幅に対して適したサンプリング期間を選別し(ステップS64)、選別結果をRAM13に記憶する(ステップS65)。次いでマスターECU1aは、通信システムの全ECU1a〜1eが試験信号の送信を終了したか否かを判定する(ステップS66)。全ECU1a〜1eが試験信号の送信を終了していない場合(S66:NO)、マスターECU1aは、ステップS63へ処理を戻し、スレーブECU1b〜1eの試験信号の送信に対して、試験信号受信処理及びサンプリング期間の選別等を行う(なおこの際には、マスターECU1aは試験信号送信処理を行わない。)。
【0094】
全ECU1a〜1eが試験信号の送信を終了した場合(S66:YES)、マスターECU1aは、スレーブECU1b〜1eのいずれかへ、サンプリング期間の選別結果の送信要求を与え(ステップS67)、これに応じてスレーブECU1b〜1eから送信される選別結果を受信し(ステップS68)、受信した選別結果をRAM13に記憶する(ステップS69)。マスターECU1aは、全ECU1a〜1eの選別結果をRAM13に記憶したか否かを判定し(ステップS70)、全ECU1a〜1eの選別結果を記憶していない場合(S70:NO)、ステップS67へ処理を戻し、別のスレーブECU1b〜1eに対する送信要求を行う。
【0095】
全ECU1a〜1eの選別結果を記憶した場合(S70:YES)、マスターECU1aは、RAM13に記憶した情報の評価値に基づいて、一のパルス幅を決定し(ステップS71)、決定したパルス幅を全てのスレーブECU1b〜1eへ通知する(ステップS72)。次いでマスターECU1aは、RAM13に記憶した情報に基づいて、ステップS71にて決定したパルス幅に適したサンプリング期間を決定する(ステップS73)。マスターECU1aは、ステップS71にて決定したパルス幅及びステップS73にて決定したサンプリング期間を、例えばCAN通信制御部16内のメモリなどに記憶することで設定を更新し(ステップS74)、処理を終了する。
【0096】
図15は、スレーブECU1b〜1eが行う自動設定処理の手順を示すフローチャートである。スレーブECU1b〜1eは、マスターECU1aからの自動設定処理の開始命令を受信したか否かを判定し(ステップS81)、開始命令を受信していない場合には(S81:NO)、開始命令を受信するまで待機する。
【0097】
開始命令を受信した場合(S81:YES)、スレーブECU1b〜1eは、自らの送信順であるか否かを判定する(ステップS82)。スレーブECU1b〜1eは、自らの送信順である場合(S82:YES)、試験信号の送信処理を行い(ステップS83)、自らの送信順でない場合(S82:NO)、試験信号の送信処理を行わない。また、スレーブECU1b〜1eは、試験信号の受信処理を行う(ステップS84)。なおステップS83の試験信号送信処理をスレーブECU1b〜1eが行う場合、この試験信号送信処理とステップS84の試験信号受信処理とは並列的に行われる。
【0098】
試験信号受信処理により得られるサンプリング期間及び評価値等の情報に基づいて、スレーブECU1b〜1eは、パルス幅に対して適したサンプリング期間を選別し(ステップS85)、選別結果をRAM13に記憶する(ステップS86)。次いでスレーブECU1b〜1eは、通信システムの全ECU1a〜1eが試験信号の送信を終了したか否かを判定する(ステップS87)。全ECU1a〜1eが試験信号の送信を終了していない場合(S87:NO)、スレーブECU1b〜1eは、ステップS82へ処理を戻し、上記の処理を繰り返し行う。
【0099】
全ECU1a〜1eが試験信号の送信を終了した場合(S87:YES)、スレーブECU1b〜1eは、マスターECU1aからの選別結果の送信要求を受信したか否かを判定する(ステップS88)。選別結果の送信要求を受信していない場合(S88:NO)、スレーブECU1b〜1eは、送信要求を受信するまで待機する。選別結果の送信要求を受信した場合(S88:YES)、スレーブECU1b〜1eは、RAM13に記憶した選別結果をマスターECU1aへ送信する(ステップS89)。
【0100】
次いでスレーブECU1b〜1eは、マスターECU1aにより決定されて通知されるパルス幅を受信したか否かを判定する(ステップS90)。マスターECU1aからパルス幅を受信していない場合(S90:NO)、スレーブECU1b〜1eは、パルス幅を受信するまで待機する。パルス幅を受信した場合(S90:YES)、スレーブECU1b〜1eは、RAM13に記憶した情報に基づいて、ステップS90にて受信したパルス幅に適したサンプリング期間を決定する(ステップS91)。スレーブECU1b〜1eは、ステップS90にて受信したパルス幅及びステップS91にて決定したサンプリング期間を、例えばCAN通信制御部16内のメモリなどに記憶することで設定を更新し(ステップS92)、処理を終了する。
【0101】
図16は、試験信号送信処理の手順を示すフローチャートであり、図14に示すフローチャートのステップS62及び図15に示すフローチャートのステップS83にてECU1(マスターECU1a又はスレーブECU1b〜1e)が行う処理である。また図示のフローチャートでは、処理のループ数をカウントするための変数i、jを用いるが、これらの変数はECU1の制御部11内のレジスタ又はRAM13等の記憶領域に確保される。また定数Nは試験信号中のパルス幅の種類数であり、定数Mは試験信号中の一のパルス幅に関して出力するドミナント及びレセシブの2ビット列連続数である。
【0102】
試験信号送信処理において、まずECU1は、変数i、jの値を1に初期化する(ステップS101)。次いでECU1は、パルス幅をi番目のパルス幅Tpiに設定し(ステップS102)、このパルス幅にてドミナントを出力し(ステップS103)、レセシブを出力し(ステップS104)、変数jの値に1を加算する(ステップS105)。ECU1は、変数jの値が定数Mを超えたか否かを判定し(ステップS106)、変数jの値が定数Mを超えていない場合(S106:NO)、ステップS103へ処理を戻し、ドミナント及びレセシブの出力を繰り返し行う。
【0103】
変数jの値が定数Mを超えた場合(S106:YES)、ECU1は、変数jの値を1に初期化すると共に(ステップS107)、変数iの値に1を加算する(ステップS108)。次いでECU1は、変数iの値が定数Nを超えたか否かを判定する(ステップS109)。変数iの値が定数Nを超えていない場合(S109:NO)、ECU1は、デリミタを出力して(ステップS110)、ステップS102へ処理を戻し、次のパルス幅での信号出力を繰り返し行う。変数iの値が定数Nを超えた場合(S109:YES)、ECU1は、試験信号送信処理を終了する。
【0104】
図17は、試験信号受信処理の手順を示すフローチャートであり、図14に示すフローチャートのステップS63及び図15に示すフローチャートのステップS84にてECU1(マスターECU1a又はスレーブECU1b〜1e)が行う処理である。また変数i、j及び定数M、Nについては、図16に示したフローチャートと同様である。
【0105】
試験信号受信処理において、まずECU1は、変数i、jの値を1に初期化する(ステップS121)。次いでECU1は、サンプリング期間をj番目のサンプリング期間Tdjに設定し(ステップS122)、このサンプリング期間にてドミナントのサンプリングを行い(ステップS123)、レセシブのサンプリングを行う(ステップS124)。ECU1は、ステップS123及びS124のサンプリング結果を基に、(2)式による評価値を算出して、RAM13に記憶する(ステップS125)。次いでECU1は、変数jの値に1を加算し(ステップS126)、変数jの値が定数Mを超えたか否かを判定する(ステップS127)。変数jの値が定数Mを超えていない場合(S127:NO)、ECU1は、ステップS122へ処理を戻し、次のサンプリング期間にてサンプリングを繰り返し行う。
【0106】
変数jの値が定数Mを超えた場合(S127:YES)、ECU1は、変数jの値を1に初期化すると共に(ステップS128)、変数iの値に1を加算する(ステップS129)。次いでECU1は、変数iの値が定数Nを超えたか否かを判定する(ステップS130)。変数iの値が定数Nを超えていない場合(S130:NO)、ECU1は、デリミタを受信した後(ステップS131)、ステップS122へ処理を戻し、上記の処理を繰り返し行う。変数iの値が定数Nを超えた場合(S130:YES)、ECU1は、試験信号受信処理を終了する。
【0107】
以上の構成の実施の形態3に係る通信システムは、通信処理を行うために必要なパルス幅及びサンプリング期間の設定を自動的に行う機能を備える。これによりECU1の搭載数が増減した場合又は経年変化が発生した場合等であっても、例えばECU1の搭載数を増減したとき又は通信システムのメンテナンス時等に自動設定を行うことによって、変化した通信特性に適した通信パラメータでの通信を行うことができる。よって通信システムは、高品質且つ高速な通信を維持することができる。
【0108】
通信パラメータの自動設定の際に、一のECU1が試験信号を順に送信し、全てのECU1がこれを受信する処理を行う。試験信号の送信はドミナントのパルス幅を変化させながら行い、且つ、試験信号の受信はサンプリング期間を変化させながら行う。これによりパルス幅及びサンプリング期間の複数の組み合わせに対して送受信の結果を評価することができ、これらの評価結果から通信システムの通信特性に適したパルス幅及びサンプリング期間を決定することができる。
【0109】
またスレーブECU1b〜1eの評価結果をマスターECU1aに集約し、マスターECU1aが全ての評価結果に基づいてパルス幅を決定して各スレーブECU1b〜1eへ通知する。これにより全てのECU1が共通のパルス幅にて以後の通信を行うことができる。またマスターECU1aが決定したパルス幅と、自らの評価結果とに応じて、各ECU1がサンプリング期間を決定する。これにより各ECU1に適したサンプリング期間を決定することができる。
【0110】
なお本実施の形態においては、(2)式に基づく評価値を算出してパルス幅及びサンプリング期間を決定する構成としたが、これに限るものではなく、その他の算出式に基づいて評価値を算出してもよい。またパルス幅及びサンプリング期間を決定する上記の処理を、各ECU1の制御部11が行う構成としたが、これに限るものではなく、CAN通信制御部16が行ってもよい。
【符号の説明】
【0111】
1、1a〜1e ECU(通信装置)
5 通信線
5a 幹線
5b〜5d 支線
11 制御部(評価手段、選別手段、所定パルス幅決定手段、所定サンプリング期間決定手段)
16 CAN通信制御部(通信手段、算出手段、判定手段、検知手段)
17 送信部(試験送信手段、評価結果送信手段、所定パルス幅情報送信手段)
18 受信部(評価結果受信手段、所定パルス幅情報受信手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の通信線を介して接続された複数の通信装置を備え、各通信装置が、前記通信線を介して各ビットが優性値又は劣性値の2値で表される連続した複数ビットの情報を送受信する通信手段をそれぞれ有する通信システムにおいて、
前記通信手段は、
送信する情報の優性値に対して、1ビット分の情報送信時間より短い所定パルス幅に亘って所定信号レベルのパルスを前記通信線へ出力した後、前記通信線への信号出力を行わず、
送信する情報の劣性値に対して、前記通信線への信号出力を行わないようにしてあること
を特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記通信装置は、
前記通信手段が優性値又は劣性値に係る情報を前記通信線へ出力した場合に、所定サンプリング期間に亘って前記通信線における信号レベルのサンプリングを複数回行って、前記所定サンプリング期間の信号レベルの平均値を算出する算出手段と、
該算出手段が算出した平均値に応じて、前記通信線に送信された信号が優性値又は劣性値のいずれであるかを判定する判定手段と、
劣性値の情報を送信した後に前記判定手段が優性値であると判定した場合に、他の通信装置からの情報送信を検知する検知手段と
を有すること
を特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記通信装置は、
前記通信手段が優性値又は劣性値に係る情報を前記通信線へ出力した場合に、所定サンプリング期間に亘って前記通信線における信号レベルのサンプリングを複数回行って、各サンプリング結果の信号レベルと閾値とを比較する比較手段と、
該比較手段の比較結果に基づき、信号レベルが前記閾値を超えるサンプル数及び信号レベルが前記閾値を超えないサンプル数に応じて、前記通信線に送信された信号が優性値又は劣性値のいずれであるかを判定する判定手段と、
劣性値の情報を送信した後に前記判定手段が優性値であると判定した場合に、他の通信装置からの情報送信を検知する検知手段と
を有すること
を特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記通信装置は、
前記パルスのパルス幅が異なる複数の優性値の情報を順に送信する試験送信手段と、
該試験送信手段が送信した情報に対して異なるサンプリング期間に亘るサンプリングを行って前記判定手段による判定を行い、パルス幅及びサンプリング期間の組み合わせに対して受信結果を評価する評価手段と、
該評価手段による評価結果に基づいて、各パルス幅に対して評価が高いサンプリング期間を選別する選別手段と
を有し、
一の通信装置が前記試験送信手段による送信を行って、各通信装置が前記評価手段による評価及び前記選別手段による選別を行う処理を、全ての通信装置について順に行い、
各通信装置の前記選別手段による選別結果に基づいて、前記所定パルス幅及び前記所定サンプリング期間を決定するようにしてあること
を特徴とする請求項2又は請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記試験送信手段は、優性値の情報及び劣性値の情報を交互に送信するようにしてあること
を特徴とする請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
前記評価手段は、優性値の情報を優性値と判定した数、劣性値の情報を優性値と判定した数及びサンプリング数に応じた評価値を算出するようにしてあること
を特徴とする請求項5に記載の通信システム。
【請求項7】
前記複数の通信装置には、一の主通信装置及び複数の従通信装置を含み、
前記従通信装置は、前記選別手段の選別結果に対応する前記評価手段の評価結果を、前記主通信装置へ送信する評価結果送信手段を有し、
前記主通信装置は、
複数の前記従通信装置が送信した評価結果を受信する評価結果受信手段と、
該評価結果受信手段が受信した複数の評価結果に基づき、前記所定パルス幅を決定する所定パルス幅決定手段と、
該所定パルス幅決定手段が決定した所定パルス幅の情報を、複数の前記従通信装置へ送信する所定パルス幅情報送信手段と
を有し、
前記従通信装置は、
前記所定パルス幅情報送信手段が送信した所定パルス幅の情報を受信する所定パルス幅情報受信手段を更に有し、
該所定パルス幅情報受信手段が受信した所定パルス幅にて、前記通信手段による以後のパルスの出力を行うようにしてあること
を特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれか1つに記載の通信システム。
【請求項8】
前記主通信装置は、
前記所定パルス幅決定手段が決定した所定パルス幅に応じて、前記所定サンプリング期間を決定する所定サンプリング期間決定手段を有し、
該所定サンプリング期間決定手段が決定した所定サンプリング期間にて、以後のサンプリングを行うようにしてあり、
前記従通信装置は、
前記所定パルス幅情報受信手段が受信した所定パルス幅に応じて、前記所定サンプリング期間を決定する所定サンプリング期間決定手段を有し、
該所定サンプリング期間決定手段が決定した所定サンプリング期間にて、以後のサンプリングを行うようにしてあること
を特徴とする請求項7に記載の通信システム。
【請求項9】
共通の通信線を介して他の装置に接続され、前記通信線を介して各ビットが優性値又は劣性値の2値で表される連続した複数ビットの情報を送受信する通信手段を備える通信装置において、
前記通信手段は、
送信する情報の優性値に対して、1ビット分の情報送信時間より短い所定パルス幅に亘って所定信号レベルのパルスを前記通信線へ出力した後、前記通信線への信号出力を行わず、
送信する情報の劣性値に対して、前記通信線への信号出力を行わないようにしてあること
を特徴とする通信装置。
【請求項10】
前記通信手段が優性値又は劣性値に係る情報を前記通信線へ出力した場合に、所定サンプリング期間に亘って前記通信線における信号レベルのサンプリングを複数回行って、前記所定サンプリング期間の信号レベルの平均値を算出する算出手段と、
該算出手段が算出した平均値に応じて、前記通信線に送信された信号が優性値又は劣性値のいずれであるかを判定する判定手段と、
劣性値の情報を送信した後に前記判定手段が優性値であると判定した場合に、他の通信装置からの情報送信を検知する検知手段と
を備えること
を特徴とする請求項9に記載の通信装置。
【請求項11】
前記通信手段が優性値又は劣性値に係る情報を前記通信線へ出力した場合に、所定サンプリング期間に亘って前記通信線における信号レベルのサンプリングを複数回行って、各サンプリング結果の信号レベルと閾値とを比較する比較手段と、
該比較手段の比較結果に基づき、信号レベルが前記閾値を超えるサンプル数及び信号レベルが前記閾値を超えないサンプル数に応じて、前記通信線に送信された信号が優性値又は劣性値のいずれであるかを判定する判定手段と、
劣性値の情報を送信した後に前記判定手段が優性値であると判定した場合に、他の通信装置からの情報送信を検知する検知手段と
を備えること
を特徴とする請求項9に記載の通信装置。
【請求項12】
前記パルスのパルス幅が異なる複数の優性値の情報を順に送信する試験送信手段と、
該試験送信手段が送信した情報に対して異なるサンプリング期間に亘るサンプリングを行って前記判定手段による判定を行い、パルス幅及びサンプリング期間の組み合わせに対する受信結果を評価する評価手段と、
該評価手段による評価結果に基づいて、各パルス幅に対して評価が高いサンプリング期間を選別する選別手段と
を備えること
を特徴とする請求項10又は請求項11に記載の通信装置。
【請求項13】
共通の通信線を介して、各ビットが優性値又は劣性値の2値で表される連続した複数ビットの情報を送受信する通信方法において、
送信する情報の優性値に対して、1ビット分の情報送信時間より短い所定パルス幅に亘って所定信号レベルのパルスを前記通信線へ出力した後、前記通信線への信号出力を行わず、
送信する情報の劣性値に対して、前記通信線への信号出力を行わないこと
を特徴とする通信方法。
【請求項14】
請求項2又は請求項3に記載の通信システムにて、前記所定パルス幅及び前記所定サンプリング期間を決定する通信パラメータ決定方法であって、
一の通信装置にて前記パルスのパルス幅が異なる複数の優性値の情報を順に送信し、
前記一の通信装置が送信した情報に対して異なるサンプリング期間に亘るサンプリングを行って前記判定手段による判定を行い、パルス幅及びサンプリング期間の組み合わせに対する受信結果を評価し、
評価結果に基づいて、各パルス幅に対して評価が高いサンプリング期間を選別し、
一の通信装置の送信を行って、各通信装置が評価及び選別を行う処理を、全ての通信装置について順に行い、
各通信装置の選別結果に基づいて、前記所定パルス幅及び前記所定サンプリング期間を決定すること
を特徴とする通信パラメータ決定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2013−93827(P2013−93827A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−47060(P2012−47060)
【出願日】平成24年3月2日(2012.3.2)
【出願人】(504255685)国立大学法人京都工芸繊維大学 (203)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】