説明

通信システム及び無線処理装置

【課題】通信システムにおいて、通信方式が異なる複数の移動通信システムそれぞれの無線リソース割り当てを動的に変更することを目的とする。
【解決手段】通信エリア毎に複数の搬送波を通信方式が異なる複数の移動通信システムに分配して、各移動通信システムの移動端末との間の通信を行う通信システムであって、通信エリア毎に前記複数の移動通信システムの無線処理部を共用化した無線処理装置を有し、前記無線処理装置は、前記複数の搬送波それぞれの電力を測定する測定手段と、前記測定手段で測定された各搬送波の測定値から各搬送波の利用状況を判定する利用状況判定手段と、前記利用状況判定手段で判定された各搬送波の利用状況に応じて前記複数の移動通信システムそれぞれが使用できるか否かの各搬送波の状態を決定する状態決定手段と、前記状態決定手段で決定した各搬送波の状態を前記複数の移動通信システムに通知する通知手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の搬送波を通信方式が異なる複数の移動通信システムに分配する通信システム及び無線処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信システムは、サービスを提供する通信事業者の戦略と技術の発展により、数年〜十数年の間隔で新たな方式に置き換わり、新規のサービスが提供されている。例えば1980年代後半から1990年代前半にはアナログ方式の携帯電話による音声サービスが提供されていたが、その後PDC(Personal Digital Cellular)やcdmaOne、GSM(Global System for Mobile Communications)等のディジタル方式による音声通信と低速データ通信によるメール等のサービスに置き換わっている。また、2000年代になってからはWCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)やCDMA2000等のいわゆる第3世代(3G)移動通信方式が広く普及し、パケット通信によるインターネット接続や、音楽/動画/ゲームプログラム等のコンテンツ配信サービスが提供されるようになっている。
【0003】
今後の動向を確認すると、日本国内ではWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、XGP(eXtended Global Platform)、LTE(Long Term Evolution)等の方式による高速のパケット通信サービスが展開され、VoIP(Voice over Internet Protocol))を利用した高品質の音声サービスや、ストリーミング配信等のマルチメディアサービスが提供される予定となっており、一部は既に開始されている。
【0004】
これらの新方式によるサービスを提供することで、各通信事業者は高速通信を背景とした新たなビジネスモデルを提案し、収益の拡大やIP通信に親和性の高いシステムの導入によるネットワーク維持/管理コストの削減を目指している。
【0005】
通信事業者が新しい方式を用いたサービスを提供する際に、既にある方式のシステムを用いてサービスを提供していた場合、提供中のサービスを利用しているユーザに対しては従来のサービスを継続しつつ、新規のサービスを利用するユーザを増やして行く必要がある。
【0006】
ところで、基地局において異なる通信方式に割り当てる無線リソース量を対象のエリア内の通信量に応じて最適化する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2007−529127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
移動通信システムは、ユーザの移動端末とのアクセス回線に無線を利用しており、無線を用いることは対応する無線リソースを消費することであり、ある特定の無線周波数帯域中で有用に利用できる無線リソースは有限となっている。移動通信に適した周波数帯域は例えば数100MHz〜2.5GHz程度に限定されている。これらの帯域は、航空/船舶無線等との競合もあるため、全てを移動通信用として利用できるわけではなく、現状は、この有限な帯域を複数の通信事業者が、複数の方式にて分割して利用している。
【0009】
通信事業者は、利用可能な無線周波数帯域の割り当てを受け、割り当てられた帯域内で無線リソースを確保してユーザにサービスを提供する。無線周波数帯域の広さと使用する無線方式によって確保可能な無線リソースの量が決まり、サービスを提供できるユーザの最大数や通信速度も決まる。既に移動通信システムを有している通信事業者が、新しい方式を利用したサービスを展開しようとした場合、システムを実現する機器については設備投資を行い、通信機器メーカ等より購入して設置すれば良い。但し、実際にサービスを提供するためには、利用する無線リソースについても確保する必要がある。この際に考えられる方法としては、新規に周波数帯域の割り当てを受け、この帯域を使用して無線リソースを確保する方法と、既存方式で使用中の周波数帯域を新方式用に振り替えて使用し、無線リソースを確保する方法が考えられる。
【0010】
前者の方法を用いる場合、周波数割り当てのための審議に時間を要し、又は周波数確保のために多額の投資が必要となり、通信事業者のビジネス展開に大きな影響を与える可能性がある。また、後者の場合、既存方式のサービスに用いることが可能な周波数帯域が減少することで既存方式による収容者数の減少やサービス品質の低下が懸念される。
【0011】
既存方式で使用中の周波数帯域を新方式用に振り替えて使用し、無線リソースを確保する方法を用いる場合に、既存方式に対する影響が現れることと、影響を小さくする方法について説明する。
【0012】
移動通信システムのサービス提供エリアの一例を図1に示す。通信事業者は割り当てられた周波数帯域を、特定の帯域幅を持つ複数の搬送波(キャリアA,B,C,D)に分割し、1つのサービスエリアに対して、1つ(又は複数)のキャリアを割り当ててサービスを提供する。キャリアの持つ帯域幅は利用する無線方式によって異なるが、例えばcdmaOneでは1.5MHz、WCDMAでは5MHzとなっている。
【0013】
近年の移動通信システムにおいては、多元接続の主流方式となっているのはCDMAである。CDMAでは各キャリア内にて符号分割を行い、1キャリアあたり数十人のユーザを収容することが可能である。
【0014】
既存方式にて利用していたキャリアの一部を新方式に割り当て、新方式のサービス提供を開始した場合の通信システムのサービス提供エリアの一例を図2に示す。この例では従来は既存方式にて利用していたキャリアA,B,C,Dのうち、キャリアC,Dを新方式側に割り当てることでエリアを構成する。
【0015】
既存方式にて利用していたキャリアの一部を、新方式側で利用するとした場合、既存方式では利用可能な無線リソース量が減少したこととなり、対象のエリア中でサービス提供が可能なユーザの最大数が減少することになる。例えば1キャリアに20人のユーザを収容し、4キャリアで80人を収容していたエリアでは割り当ての変更後は40人までしか収容できなくなり、既存方式に対する影響が現れる。
【0016】
移動通信システムで、移動端末は時間と共に位置を変えて行き、同じ移動端末が異なる時間帯に異なるエリアでサービスを受けられることが期待されている。移動通信を利用するユーザにとってサービスの利用が可能なエリアの広さは重要であり、提供する通信事業者と契約を結ぶ際の重要な選択肢となり得る。このため、新方式でサービス提供を開始する通信事業者は、既存方式から新方式への周波数振り替えを複数のエリアにて同時に実施し、広いサービスエリアを確保してからサービス提供を開始することが、その方式を利用するユーザ数を増やして収益を得て行く上で重要な条件となる。
【0017】
図3に複数エリアにて既存方式側で利用していたキャリアの一部を新方式に割り当てて、サービスを開始した場合のエリア構成例を示す。図3は概念的なものであるが、移動通信ではサービスを受ける移動端末が位置を変えるという特徴から、ある時間帯の特定のエリア内では通信事業者がサービスを提供しているにもかかわらず、対象のエリア内にサービスを受ける移動端末が存在しないタイミングがあることを示している。
【0018】
つまり、図3におけるエリアA2では、キャリアC,Dは新方式側に割り当てを行っているが、エリアA2には移動端末が在圏しておらず実際の通信では使われていない状況となっており、仮にエリアA2側にて既存方式による接続を希望するユーザが多く存在した場合、使われていないキャリアC,Dを既存方式側に割り当てて使用すれば、これらのユーザに対するサービスを提供できる可能性がある。通信事業者が新方式のエリア展開を行った際、サービスを提供しているエリア内に新方式の移動端末が存在せず、既存方式の移動端末は多数存在する状況は、新サービス開始直後の加入者数が少ない状況では顕著に発生することが想定される。
【0019】
開示の通信システムは、通信方式が異なる複数の移動通信システムそれぞれの無線リソース割り当てを動的に変更することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
開示の一実施形態による通信システムは、通信エリア毎に複数の搬送波を通信方式が異なる複数の移動通信システムに分配して、各移動通信システムの移動端末との間の通信を行う通信システムであって、
通信エリア毎に前記複数の移動通信システムの無線処理部を共用化した無線処理装置を有し、
前記無線処理装置は、
前記複数の搬送波それぞれの電力を測定する測定手段と、
前記測定手段で測定された各搬送波の測定値から各搬送波の利用状況を判定する利用状況判定手段と、
前記利用状況判定手段で判定された各搬送波の利用状況に応じて前記複数の移動通信システムそれぞれが使用できるか否かの各搬送波の状態を決定する状態決定手段と、
前記状態決定手段で決定した各搬送波の状態を前記複数の移動通信システムに通知する通知手段と、を有する。
【発明の効果】
【0021】
本実施形態によれば、通信方式が異なる複数の移動通信システムそれぞれの無線リソース割り当てを動的に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】移動通信システムのサービス提供エリアの一例を示す図である。
【図2】通信システムのサービス提供エリアの一例を示す図である。
【図3】複数エリアのエリア構成例を示す図である。
【図4】通信システムの一実施形態の構成図である。
【図5】既存方式と新方式の通信エリアを構成する無線基地局の第1実施形態の構成図である。
【図6】状態発生回路が実行する処理のフローチャートである。
【図7】既存方式と新方式の通信エリアを構成する無線基地局の第2実施形態の構成図である。
【図8】C&Mが実行する処理のフローチャートである。
【図9】共用無線処理装置の一実施形態のハイドウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて実施形態を説明する。
【0024】
<通信システムの構成>
図4は通信システムの一実施形態の構成図を示す。この通信システムは既存方式の移動通信システムと新方式の移動通信システムとで通信エリア毎に複数の搬送波を分配する構成とされている。図4において、既存方式無線基地局装置1に新方式無線基地局装置2を併設し、無線処理部(RE:Radio Equipment)は、既存方式と新方式で共用して利用可能とした共用無線処理装置3を使用する。これにより、新方式に対応したエリアの拡大を早急に行い、かつ、工事等の費用を抑える。
【0025】
<第1実施形態>
図5に既存方式と新方式の通信エリアを構成する無線基地局の第1実施形態の構成図を示す。図5において、通信事業者の局舎10内には、既存方式基地局制御装置11,既存方式無線基地局装置12,新方式無線基地局装置13,CPRI多重化装置14が設けられている。なお、既存方式基地局制御装置11及び既存方式無線基地局装置12が既存方式無線基地局装置1に対応し、新方式無線基地局装置13が新方式無線基地局装置2に対応し、後述の共用無線処理装置15が共用無線処理装置3に対応する。ここで、既存方式をWCDMA、新方式をLTEとした場合、既存方式基地局制御装置11はRNC(Radio Network Controller:基地局制御装置)に対応し、既存方式無線基地局装置12はBS(Base Station:基地局)に対応し、新方式無線基地局装置13はeNOdeB(evolved NOde B)に対応する。
【0026】
既存方式基地局制御装置11は既存方式のコア網に接続されており、呼処理部11aを有している。既存方式無線基地局装置12は無線基地局における制御機能部としての既存REC(Radio Equipment Controller)12aと、既存RECとRE間の同期情報、及びコントロール又はマネジメント情報、及びユーザプレーンデータであるベースバンド信号を光ファイバで伝送する標準インタフェースであるCPRI(Common Public Radio Interface)−INF(Interface)12bを有している。
【0027】
新方式無線基地局装置13は新方式のコア網に接続されており、呼処理部13aと、無線基地局における制御機能部としての新REC13bと、新RECとRE間の標準インタフェースであるCPRI−INF13cを有している。
【0028】
呼処理部11a,13aそれぞれは、移動端末との接続時にシステム内の空いている有線回線リソース、無線回線リソース、処理能力等を確認して、呼の接続に割り当てる各種リソースを決定し、呼処理手順を実行して接続を行う。呼処理部の物理的な配置は、利用する方式とシステム構成によって異なり、既存方式では無線基地局装置12の上位装置である基地局制御装置11に配置され、新方式側では無線基地局装置13内に配置された構成である。
【0029】
CPRI多重化装置14は、光信号と電気信号の変換を行うEO/OE14a,14b,14cと、複数のCPRI信号と1本のCPRI信号との多重/分離を行うCPRIMUX/DMUX14dを有している。EO/OE14a,14b,14cは既存方式無線基地局装置12,新方式無線基地局装置13,共用無線処理装置15それぞれのCPRI−INF12b,13c,21と光ファイバで接続されている。
【0030】
共用無線処理装置15は、CPRI−INF21と、送受信部22と、低雑音増幅器23と、電力増幅器24と、多重分離部25と、監視制御部26と、状態発生回路27と、比較回路28と、積分回路29を有している。CPRI−INF21はREと既存REC及び新REC間の標準インタフェースである。
【0031】
図中TRXと記す送受信部22はCPRI−INF21から供給される送信ベースバンド信号を変調して送信RF(Radio Frequency)信号に変換すると共に、受信RF信号をA/D変換後、受信ベースバンド信号に変換してCPRI−INF21に供給する。図中LNA(Low NOise Amplifier)と記す低雑音増幅器23は受信RF信号を増幅する低雑音の増幅器である。
【0032】
図中T−PA(Transmission Power Amplifier)と記す電力増幅器24は送受信部22から供給される送信RF信号を規定レベルまで増幅する。図中DUP(Duplexer)と記す多重分離部25は送信RF信号及び受信RF信号を分離・多重し、不要な周波数成分に対するフィルタリングを行う。
【0033】
図中C&M(Control and Maintenance)と記す監視制御部26は共用無線処理装置15内の各部の監視と制御を行い、監視機能によって検出されたキャリアの状態をCPRI上のコントロール又はマネジメント情報として上位装置の呼処理部11a,13aに通知する。
【0034】
プローブ30は、対象の通信エリアで利用されるキャリアA〜Dそれぞれの無線出力を測定する。プローブ30は共用無線処理装置15内でキャリア毎の無線出力電力の変動を測定する構成である。この他に、共用無線処理装置15外にて空中線の出力電力をキャリア毎に直接測定する構成のプローブ31を用いても良く、共用無線処理装置15内で受信電力をキャリア毎に測定する構成のプローブ32を用いても良い。
【0035】
積分回路29はプローブ30又は31又は32から供給される無線出力又は受信電力の例えば数msec周期の変動に対し十分に長い例えば数sec〜数min程度の時定数を持っており、供給される無線出力又は受信電力の時間積分を行う。これにより、積分回路29で得られる積分値は各キャリアが有意な信号の送受信を行っている際にプローブの測定電力は高いレベルを示し、信号の送受信が行われない条件では低いレベルを示す。
【0036】
比較回路28は積分回路29が出力する各キャリアの積分値に対し、内部に保持する閾値との比較を行うことで各キャリアの利用状態を判定し、判定結果を状態発生回路27に供給する。なお、比較回路28は各キャリアそれぞれの積分値同士の比較を行う構成としても良い。
【0037】
状態発生回路27は比較回路28からの各キャリアの利用状態の判定結果に基づいて、各キャリアを既存方式と新方式のいずれが使用できるかを示す各キャリアの状態を決定して監視制御部26に供給する。ここで、例えば既存方式無線基地局装置12でキャリアAが使用できる状態とする場合、新方式無線基地局装置13ではキャリアAが使用できない状態とする。
【0038】
監視制御部26は各キャリアの状態を既存方式無線基地局装置12,新方式無線基地局装置13それぞれで無線リソース割り当てを管理する呼処理部11a,13aに対し、状態発生回路27から供給される各キャリアの状態が変化した際に、状態変化のコントロール又はマネジメント情報を送信する。
【0039】
なお、状態発生回路27、比較回路28、積分回路29については、新たに回路を追加して実現しても良いし、元々実装されていたプロセッサ等にて動作するソフトウェアにて各回路の機能を実現しても良い。
【0040】
通常、呼処理部11a,13aは、新規に移動端末との接続を行う際に、故障や他の問題によって利用できないリソースを割り当てることはしない。このため、呼処理部11a,13aは無線処理部等の他装置の状態や各キャリアの状態を任意のタイミングで確認して記憶している、また、移動端末との接続が発生した際に各種リソースの状態を確認する。
【0041】
<第1実施形態の動作説明>
図5に示す構成において、既存方式と新方式の呼処理部11a,13aそれぞれは全てのキャリア(A,B,C,D)が利用できる状態と認識して運用を開始する。共用無線処理装置15内の状態発生回路27は、最初の状態認識として既存方式無線基地局装置12に対してはキャリアC,Dが割り当てられ、新方式無線基地局装置13に対してはキャリアA,Bが割り当てられる、との初期状態を与えられて運用を開始する。また、この状態認識は、比較回路28に対しても供給される。
【0042】
既存方式無線基地局装置12と新方式無線基地局装置13が起動し、既存方式無線基地局装置12,新方式無線基地局装置13それぞれの装置内における各回路間の接続が完了した後、共用無線処理装置15内に設けた状態発生回路27は、監視制御部26に既存方式と新方式それぞれのシステム毎に異なるキャリア状態を供給する。すなわち、既存方式無線基地局装置12に対してはキャリアC,キャリアDを割り当てるため、装置内のキャリアA,キャリアBのサービスを利用できない状態であるという情報を供給する。また、新方式無線基地局装置13に対してはキャリアA,キャリアBを割り当てるため、キャリアC,キャリアDをサービスに利用できない状態であるという情報を供給する。
【0043】
監視制御部26は、既存方式と新方式それぞれのシステムの呼処理部11a,13aに対しキャリアの状態通知を行う。これらの状態の通知はCPRIフォーマット上のコントロール又はマネジメント情報として共用無線処理装置15から各システムの既存REC12a,新REC13bに通知を行い、各REC12a,13bから呼処理部11a,13aに対しては、任意のインタフェースを用いて通知される。上記の状態通知により、それぞれのシステムの呼処理部11a,13aは、通信エリア内で接続に用いるキャリアの一部が利用できる状態であり、他の一部ができない状態であることを認識する。
【0044】
移動端末が呼接続を行う際、それぞれのシステムの呼処理部11a,13aは、利用できないキャリアを避けて無線リソースの割り当てを行う。この動作により、運用開始後、システム毎に利用できる無線リソースの棲み分けが実現される。
【0045】
上記の本状態で運用が開始されるが、運用中それぞれのキャリアにて出力される無線出力電力は、プローブ30で測定され、積分回路29にて積分される。この際の積分回路29の出力をキャリア毎にPwrInt(A)〜PwrInt(D)とする。
【0046】
比較回路28にはキャリアの利用状態が高い、又は低いと判断するための閾値を判定条件として予め与えておく。この閾値は方式毎に設定し、既存方式ではTrd_High、Trd_Low、新方式ではNew_High、New_Lowとする。Trd_High、New_Highは例えば80%〜90数%、Trd_Low、New_Lowは例えば数%〜20%程度の値である。比較回路28はPwrInt(A)〜PwrInt(D)それぞれを、それぞれのキャリアを利用している方式と対応する閾値と比較して、各キャリアの利用状態を判定する。
【0047】
例えばキャリアAはこの時点では新方式側で利用しているため、PwrInt(A)をNew_High、New_Lowと比較して、比較結果を状態発生回路27に通知する。例えば比較結果がPwrInt(A)<New_Low、PwrInt(B)<New_Low、PwrInt(C)>Trd_High、PwrInt(D)>Trd_Highの場合、比較回路28は既存方式側の利用状態が高く、かつ、新方式側の利用状態が低いと判定する。
【0048】
状態発生回路27は比較回路28から通知される判定結果を用いて、それぞれのシステムに対して運用開始時に行った状態通知の内容を更新する。例えば既存方式側の利用状態が高く、かつ、新方式側の利用状態が低いと判定した場合、新方式側のシステムに対してはキャリアBを利用できない状態であることを通知し、既存方式側に対してはキャリアBを利用できる状態となったことを通知する。これにより、新方式で利用しているキャリアBを既存方式側に割り当てることができ、キャリアの利用度合いを平準化できる。
【0049】
状態発生回路27が具体的にどのような判断条件に基づいて状態通知を行うかは、サービスを行う通信事業者の運営方針や装置/通信エリアの構成に依存する。図5の構成において状態発生回路27が実行する処理のフローチャートを図6に示す。
【0050】
図6では、新方式によるサービスが開始されてあまり時間が経過していない時期を想定しており、新方式のユーザは増加傾向にあるが、既存方式を用いてサービスを受けているユーザが現時点では大多数を占めているような状況を想定している。ここでは、ユーザ数が少ない新方式に、既存方式への割り当て量を超える無線リソースを与える必要はないと判断している。また、移動端末が移動することを考慮して、既存方式と新方式それぞれに最低でも1本のキャリアが常に使用できるようにしている。
【0051】
図6において、ステップS1で状態発生回路27は初期状態としては既存方式基地局制御装置11に対してキャリアA,キャリアBがサービスに利用できないことを通知し、また、ステップS2で新方式無線基地局装置13に対してはキャリアC,キャリアDが利用できないことを通知する。つまり、この通信エリアにおいて、現時点で新方式はキャリアA,キャリアBを用いてサービスを行っており、既存方式はキャリアC,キャリアDを用いてサービスを行うこととなる。
【0052】
次にステップS3では新方式側で2本のキャリア(キャリアA,B)以上を使用しているか否かを判断する。初期状態では2本のキャリアを利用しているため、判定がYESとなる。本判定条件では、最初の判定でYESの判断がされた場合にのみ新方式側のキャリア割り当てを減らす判断を行うこととなっており、最低でも1本のキャリアは常に新方式側に割り当てられるようにしている。
【0053】
次のステップS4では新方式側で利用しているキャリアA,キャリアBについて、PwrInt(A)<New_Highと、PwrInt(B)<New_Highが共に成り立つかを判断する。なお、図中のxはA,B,C,Dのいずれかである。ステップS4の判断にてNOとなった場合は、新方式側で利用中のキャリアの利用状態が高いと判断し、以降の新方式側のキャリア割り当てを減らす判断は実施せずに、ステップS3の判定に戻る。
【0054】
ステップS4の判定がYESの場合、次のステップS5では既存方式側で利用しているキャリアC、キャリアDについて、PwrInt(C)>Trd_Highと、PwrInt(D)>Trd_Highが共に成り立つかを判断する。ステップS5の判定がNOの場合、既存方式側で利用中のキャリアに余裕が残っていると判断し、ステップS3の判定に戻る。
【0055】
ステップS5の判定がYESの場合、次のステップS6で新方式側が利用しているキャリアA,キャリアBについて、PwrInt(A)<New_LowとPwrInt(B)<New_Lowのいずれかが成立しているかの判定を行う。ステップS6の判定がNOの場合、新方式側で利用しているキャリアは双方共にある程度は利用されていると判断されるため、新方式側のキャリア割り当てを減らすことはせずに、ステップS3の判定に戻る。
【0056】
ステップS6の判定がYESであり、例えばPwrInt(B)<New_Lowが成立していたとすると、状態発生回路27はステップS7で各方式に出力する状態の内容を変更する。すなわち、新方式無線基地局装置13に対してキャリアBがサービスに利用できなくなったことを出力し、既存方式基地局制御装置11に対してキャリアBがサービスに利用できるようになったことを出力する。また、同時に比較回路28に対してキャリアBの割り当てが既存方式となったことを通知する。この通知により、比較回路28ではPwrInt(B)の比較対象を、New_High、New_LowからTrd_High、Trd_Lowに変更する。
【0057】
一方、新方式で1本のキャリア(キャリアA)のみを利用しており、ステップS3の判定にてNOとなった場合は図中の右側のルートを通り、既存方式に割り当てているキャリアを新方式側に変更できるかの判断を行う。すなわち、ステップS8において、新方式で利用中のキャリアに対して、PwrInt(A)>New_Highが成立しているかを判定する。判定がNOの場合は、新方式側の無線リソースにまだ空きがあると判断し、ステップS3の判定に戻る。
【0058】
PwrInt(A)>New_Highが成立している場合、次のステップS9の判定では既存方式側に割り当てているキャリア全て(キャリアB,C,D)について、PwrInt(B)<Trd_Low、PwrInt(C)<Trd_Low、PwrInt(D)<Trd_Lowを確認し、複数のキャリアで条件が成立するかを判定する。本判定がNOの場合、新方式側の利用状況が高くはなっているが、既存方式側の利用状態が十分に少なくなっていないことを考慮して最初の判定に戻る。
【0059】
ステップS9の判定がYESであり、例えばキャリアCとキャリアDにて条件が成立していた場合、状態発生回路27はステップS10で、既存方式基地局制御装置11に対してキャリアDがサービスに利用できなくなったことを通知し、新方式無線基地局装置13に対してキャリアDがサービスに利用できるようになったことを通知する。また、比較回路28に対しては、キャリアDの割り当てが新方式となったことを通知する。この通知により、比較回路28ではPwrInt(D)の比較対象を、Trd_High、Trd_LowからNew_High、New_Lowに変更する。
【0060】
以上に示した手順にて状態発生回路27は監視制御部26に対して新方式用と既存方式用のそれぞれ新しい状態を出力する。監視制御部26はCPRIフォーマット上のコントロール又はマネジメント情報としてそれぞれのシステムの呼処理部11a,13aに状態を通知する。
【0061】
なお、実際にキャリアを送受信している各回路部で障害が発生した場合には、通信事業者の持つ監視装置に問題が通知され、その情報を基に作業者が対象となる回路部の交換等の作業を実行され、本実施形態で行うキャリアがサービスに利用できなくなった状態の通知では、実際に問題が発生しているわけではなく、回路部の交換等の作業は必要ない。
【0062】
このため、監視制御部26からCPRIフォーマット上のコントロール又はマネジメント情報として各システムに対して通知する状態については、実際に問題が発生した際の状態通知と、無線リソース割り当ての変更のための状態通知を、内容を示すエラーコードを変える等により区別できるように通知して、作業者がエラーコードから作業の要否を判断できるようにしても良い。
【0063】
既存方式及び新方式の呼処理部11a,13aが認識する通信エリア内での接続に利用できるキャリアの状態は、上記の手順により更新される。呼処理部11a,13aはサービスに利用できるキャリアを選んで、接続する移動端末に割り当てるリソースを決定するため、目的としていた無線リソースの動的な割り当ての変更が可能となる。
【0064】
なお、上記実施形態では測定手段の一例としてプローブ30又は31又は32を使用し、利用状況判定手段の一例として比較回路28,積分回路29を使用し、状態決定手段の一例として状態発生回路27を使用し、通知手段の一例として監視制御部26を使用している。
【0065】
<第2実施形態>
第1実施形態では、あまり利用されていないキャリアを共用無線処理装置15にて検出し、装置の故障等の状態通知を用いて、動的に他の方式に割り当てを変更する方法を示した。
【0066】
状態通知を行う契機を求めるため、対象となるキャリアの出力電力レベルからキャリアの利用頻度を求めることとしていたが、利用頻度の高さはある程度判定できても、対象のキャリア内にユーザが全く存在しないことを判断することは困難である。
【0067】
変更対象となるキャリアを用いて通信を行っているユーザが残っている状況で、そのキャリアを利用不可とした場合、利用者が実施中の通信が切断され、サービス品質が低下したと認識される可能性がある。また、通信を行っているユーザが対象のキャリア内に存在している状態で、新しくそのキャリアを利用するシステムが通信を始めた場合には、両方のシステムで通信ができなくなるおそれがある。
【0068】
現状のほぼ全ての移動通信方式は、ハンドオーバの機能を提供している。ハンドオーバ機能は、移動端末が特定の基地局がサポートする通信エリアから、他の基地局がサポートする通信エリアに移動した際に実行し、移動端末の移動性を確保するための機能である。また、ハンドオーバは、基地局間の移動以外に、同一基地局の異なるキャリア間でも実行することが可能である。
【0069】
ハンドオーバの動作を説明する。通信を行っている移動端末は、利用中のキャリアの通信品質が悪化したことを検出すると、他に通信品質の良好なキャリアを探す。移動端末は、ハンドオーバの対象として十分な品質を持つキャリアを検出すると、接続しているシステムに対して、通信品質が所定値以上のキャリアが存在することを通知し、これを契機にシステムがハンドオーバ手順を実行する。第2実施形態では、これを利用して割り当ての変更対象となるキャリアから、接続中のユーザをハンドオーバ機能により他のキャリアに追い出すことを可能とする。
【0070】
図7に既存方式と新方式の通信エリアを構成する無線基地局の第2実施形態の構成図を示す。図7において図5と同一部分には同一符号を付す。図7において、通信事業者の局舎10内には、既存方式基地局制御装置11,既存方式無線基地局装置12,新方式無線基地局装置13,CPRI多重化装置14が設けられている。なお、既存方式基地局制御装置11及び既存方式無線基地局装置12が既存方式無線基地局装置1に対応し、新方式無線基地局装置13が新方式無線基地局装置2に対応し、後述の共用無線処理装置40が共用無線処理装置3に対応する。ここで、既存方式をWCDMA、新方式をLTEとした場合、既存方式基地局制御装置11はRNCに対応し、既存方式無線基地局装置12はBSに対応し、新方式無線基地局装置13はeNOdeBに対応する。
【0071】
既存方式基地局制御装置11は既存方式のコア網に接続されており、呼処理部11aを有している。既存方式無線基地局装置12は無線基地局における制御機能部としての既存REC12aと、既存REC,RE間の同期情報及びコントロール又はマネジメント情報及びユーザプレーンデータを光ファイバで伝送する標準インタフェースであるCPRI12bを有している。新方式無線基地局装置13は新方式のコア網に接続されており、呼処理部13aと、無線基地局における制御機能部としての新REC13bと、新REC,RE間の標準インタフェースであるCPRI−INF13cを有している。
【0072】
なお、呼処理部11a,13aは、移動端末との接続時にシステム内の空いている有線回線リソース、無線回線リソース、処理能力等を確認して、接続に割り当てる各種リソースを決定し、呼処理手順を実行して接続を行う。呼処理部の物理的な配置は、利用する方式とシステム構成によって異なり、既存方式では無線基地局装置12の上位装置である基地局制御装置11に配置され、新方式側では無線基地局装置内に配置された構成である。
【0073】
CPRI多重化装置14は、光信号と電気信号の変換を行うEO/OE14a,14b,14cと、複数のCPRI信号と1本のCPRI信号との多重/分離を行うCPRIMUX/DMUX14dを有している。EO/OE14a,14b,14cは既存方式無線基地局装置12,新方式無線基地局装置13,共用無線処理装置40それぞれのCPRI−INF12b,13c,21と光ファイバで接続されている。
【0074】
共用無線処理装置40は、CPRI−INF41と、送受信部42と、低雑音増幅器43と、電力増幅器44と、多重分離部45と、監視制御部46と、状態発生回路47と、比較回路48と、積分回路49と、減衰回路51を有している。
【0075】
送受信部42はCPRI−INF41から供給される送信ベースバンド信号を変調して送信RF(Radio Frequency)信号に変換すると共に、受信RF信号をA/D変換後、受信ベースバンド信号に変換してCPRI−INF41に供給する。低雑音増幅器43は受信RF信号を増幅する低雑音の増幅器である。
【0076】
電力増幅器44は送受信部42から供給される送信RF信号を規定レベルまで増幅する。減衰回路51は、キャリア(キャリアA〜D)毎に無線出力電力を低下させる。低下量は監視制御部46から制御する。減衰回路51は新規に追加しても良いし、元々、無線出力を制御する機能を有している場合には、その機能を利用しても良い。
【0077】
多重分離部45は送信RF信号及び受信RF信号を分離・多重し、不要な周波数成分に対するフィルタリングを行う。監視制御部46は共用無線処理装置40内の各部の監視と制御を行い、制御情報を状態発生回路47と比較回路48と減衰回路51に供給すると共に、監視機能によって検出されたキャリアの状態をCPRI上のコントロール又はマネジメント情報として上位装置の呼処理部11a,13aに通知する。
【0078】
プローブ52は、対象の通信エリアで利用されるキャリアA〜Dそれぞれの無線出力を測定する。プローブ52は共用無線処理装置40内でキャリア毎の無線出力電力の変動を測定する構成である。この他に、共用無線処理装置40外にて空中線の出力電力をキャリア毎に直接測定する構成のプローブ53を用いても良く、共用無線処理装置40内で受信電力をキャリア毎に測定する構成のプローブ54を用いても良い。
【0079】
積分回路49はプローブ52又は53又は54から供給される無線出力又は受信電力の変動に対し十分に長い時定数を持っており、供給される無線出力又は受信電力の時間積分を行う。これにより、積分回路49で得られる積分値は各キャリアが有意な信号の送受信を行っている際にプローブの測定電力は高いレベルを示し、信号の送受信が行われない条件では低いレベルを示す。
【0080】
比較回路48は積分回路49が出力する各キャリアの積分値出力に対し、それぞれの積分値同士の比較、及び内部に保持する閾値との比較を行うことで各キャリアの利用状態を判定し、判定結果を状態発生回路47に供給する。なお、比較回路48は各キャリアそれぞれの積分値同士の比較を行う構成としても良い。
【0081】
状態発生回路47は比較回路48からの各キャリアの利用状態の判定結果に基づいて、各キャリアを既存方式と新方式のいずれが使用できるかを示す各キャリアの状態を決定して監視制御部46に供給する。ここで、例えば既存方式無線基地局装置12でキャリアAが使用できる状態とした場合、新方式無線基地局装置13ではキャリアAが使用できない状態となる。
【0082】
監視制御部46は各キャリアの状態を既存方式無線基地局装置12,新方式無線基地局装置13それぞれで無線リソース割り当てを管理する呼処理部11a,13aに対し、状態発生回路47から供給される各キャリアの状態が変化した際に、状態変化のコントロール又はマネジメント情報を送信する。
【0083】
<第2実施形態の動作説明>
図7の構成において監視制御部46が実行する処理のフローチャートを図8に示す。この処理では、割り当てを変更する対象となるキャリアから、接続中のユーザをハンドオーバ機能により他のキャリアに追い出す。ここでは、第1実施形態の初期状態と同様に、新方式側に対してはキャリアA,キャリアBが割り当てられており、既存方式側にはキャリアC,キャリアDが割り当てられている状況とする。また、初期状態において減衰回路51は無線出力電力の低下は行っていない。
【0084】
第1実施形態の手順に従い、新方式側での通信量の低下と既存方式側での通信量の増加が検出され、状態発生回路47から監視制御部46に新方式システムで例えばキャリアB(又はキャリアA)がサービスに利用できなくなったことが通知され、既存方式システムでキャリアBがサービスに利用できるようになったことが通知される状態であるか否かを判別する(ステップS21,S22)。
【0085】
上記ステップS21,S22が共にYESとなる条件で、監視制御部46は各方式の呼処理部11a,13aに対する状態の変更通知は実施せず、ステップS23で減衰回路51に対する制御を行い、割り当てを変更しようとするキャリアBの出力を、一定の時間をかけて低下させる。キャリアBの出力低下に伴い、キャリアBを利用していた新方式の移動端末にて、通信の品質が悪化したことが検出される。通信品質の悪化を検出した新方式の移動端末は、他に通信品質の良好なキャリアを探す。この際、同じ通信エリアにてキャリアAによるサービスが行われているため、キャリアAが十分な品質を持つキャリアとして検出される可能性は高いが、隣接する通信エリアに他の通信品質の良いキャリアを検出する可能性もある。その場合ハンドオーバ先は隣接通信エリアとなる。通信品質の良好なキャリアを検出した新方式の移動端末は、システムに対して報告を行い、新方式システムの通常の手順によるハンドオーバが実施される。
【0086】
監視制御部46は、減衰回路51に対する制御を継続してキャリアBの出力を引き続き低下させる。その後、キャリアBの出力が定めておいた一定レベルの閾値以下になったか否かをステップS24で判別する。キャリアBの出力が閾値以下になると、ステップS25で監視制御部46はCPRIフォーマット上のコントロール又はマネジメント情報を用いて、キャリアBが利用できなくなったことを新方式システムの呼処理部13aに通知する。
【0087】
新方式システムの呼処理部13aに対する状態通知の後、ステップS26で監視制御部46は減衰回路51に対して制御を行い、キャリアBの出力低下を解除する。その後、ステップS27で既存方式システムの呼処理部11aに対しキャリアBが利用できるようになったことを通知する。監視制御部46は、同時に比較回路48に対してキャリアBの割り当てが新方式から既存方式に変更となったことを通知する。
【0088】
一方、ステップS21で状態発生回路47から監視制御部46に新方式システムでキャリアBがサービスに利用できなくなったことが通知されていない場合には、状態発生回路47から監視制御部46に既存方式システムで例えばキャリアD(又はキャリアC)がサービスに利用できなくなったことが通知され、新方式システムでキャリアDがサービスに利用できるようになったことが通知されている状態であるか否かを判別する(ステップS31,S32)。
【0089】
上記ステップS31,S32が共にYESとなる条件で、監視制御部46は各方式の呼処理部11a,13aに対する装置状態の変更通知は実施せず、ステップS33で減衰回路51に対する制御を行い、割り当てを変更しようとするキャリアDの出力を、一定の時間をかけて低下させる。キャリアDの出力低下に伴い、キャリアDを利用していた既存方式の移動端末にて、通信の品質が悪化したことが検出される。通信品質の悪化を検出した既存方式の移動端末は、他に通信品質の良好なキャリアを探す。この際、同じ通信エリアにてキャリアCによるサービスが行われているため、キャリアCが十分な品質を持つキャリアとして検出される可能性は高いが、隣接する通信エリアに他の通信品質の良いキャリアを検出する可能性もある。その場合ハンドオーバ先は隣接通信エリアとなる。通信品質の良好なキャリアを検出した新方式の移動端末はシステムに対して報告を行い、新方式システムの通常の手順によるハンドオーバが実施される。
【0090】
監視制御部46は、減衰回路51に対する制御を継続してキャリアDの出力を引き続き低下させる。その後キャリアDの出力が定めておいた一定のレベルの閾値以下になったか否かをステップS34で判別する。キャリアDの出力が閾値以下になると、ステップS35で監視制御部46はCPRIフォーマット上のコントロール又はマネジメント情報を用いてキャリアDが利用できなくなったことを既存方式システムの呼処理部11aに通知する。
【0091】
既存方式システムの呼処理部11aに対する状態通知の後、ステップS36で監視制御部46は減衰回路51に対して制御を行い、キャリアDの出力低下を解除する。その後、ステップS37で新方式システムの呼処理部13aに対しキャリアDが利用できるようになったことを通知する。監視制御部46は、同時に比較回路48に対してキャリアBの割り当てが新方式から既存方式に変更となったことを通知する。
【0092】
このようにして、割り当ての変更を行うキャリア内に残っているユーザを他の通信エリア、又は他のキャリアに対してハンドオーバ手順を用いて追い出し、サービス品質の低下を感じさせずに、無線リソースの動的な割り当ての変更を行うことが可能となる。
【0093】
なお、上記実施形態では測定手段の一例としてプローブ52又は53又は54を使用し、利用状況判定手段の一例として比較回路48,積分回路49を使用し、状態決定手段の一例として状態発生回路47を使用し、通知手段の一例として監視制御部46を使用し、減衰手段の一例として減衰回路51を使用している。
【0094】
<共用無線処理装置のハイドウェア構成>
図9に共用無線処理装置15,40の一実施形態のハイドウェア構成図を示す。図9において、共用無線処理装置60は光モジュール61,FPGA(LSI)62,Rx_LSI63,Tx_LSI64,デュプレクサ65,CPU66,ワークメモリ67,不揮発性メモリ68,外部インタフェース69,電源回路70を有している。
【0095】
先ず、状態発生回路27,47と、比較回路28,48と、積分回路29,49をソフトウェアで構成する場合について説明する。CPRI−INF21,41は光モジュール61,FPGA(LSI)62にて構成する。送受信部22,42はFPGA(LSI)62にて構成する。低雑音増幅器23,43はRx_LSI63で構成する。電力増幅器24,44はTx_LSI64で構成する。多重分離部25,45はデュプレクサ65で構成する。監視制御部26,46は不揮発性メモリ68に保存されたプログラムをワークメモリ67に展開しCPU66で実行することで実現する。
【0096】
状態発生回路27,47は比較回路の処理結果に基づき各キャリアの利用状態を決定する処理をCPU66で実行し実現する。比較回路28,48はワークメモリ67に格納された積分回路出力を不揮発性メモリ68に保存した閾値と比較する処理をCPU66で実行し実現する。積分回路29、49はプローブの出力を周期的にCPU66で読み出して積算しワークメモリ67に格納することで実現する。プローブ30,52はTx_LSI64のモニタ信号及びFPGA(LSI)62内のロジックにて実現する。減衰回路51はFPGA(LSI)62内のロジックに対しCPU66から減衰量を制御することで実現する。
【0097】
次に、状態発生回路27,47と、比較回路28,48と、積分回路29,49をハードウェアで構成する場合について説明する。CPRI−INF21,41は光モジュール61,FPGA(LSI)62にて構成する。送受信部22,42はFPGA(LSI)62にて構成する。低雑音増幅器23,43はRx_LSI63で構成する。電力増幅器24,44はTx_LSI64で構成する。多重分離部25,45はデュプレクサ65で構成する。監視制御部26,46は不揮発性メモリ68に保存されたプログラムをワークメモリ67に展開しCPU66で実行することで実現する。
【0098】
状態発生回路27,47はFPGA(LSI)62内のロジックにて構成し比較回路の処理結果から各キャリアの利用状態を決定する。比較回路28,48はFPGA(LSI)62内のロジックにてワークメモリ67に格納された積分回路出力を不揮発性メモリ68に保存した閾値と比較する。積分回路29、49はプローブの出力をFPGA(LSI)62内のロジックにて積算しワークメモリ67に格納する。プローブ30,52はTx_LSI64のモニタ信号及びFPGA(LSI)62内のロジックにて実現する。減衰回路51はFPGA(LSI)62内のロジックに対しCPU66から減衰量を制御することで実現する。
【0099】
第1実施形態、第2実施形態により、通信方式が異なる複数の移動通信システムそれぞれへの無線リソース割り当て量の動的な変更を実現することが可能となる。また、無線リソース割り当てに関連する通知を、共用無線処理装置15,40からの状態通知といった既存のインタフェースを用いることで、網側の既存方式基地局制御装置11、新方式無線基地局装置13におけるアプリケーションの大幅な改造は必要ない。
(付記1)
通信エリア毎に複数の搬送波を通信方式が異なる複数の移動通信システムに分配して、各移動通信システムの移動端末との間の通信を行う通信システムであって、
通信エリア毎に前記複数の移動通信システムの無線処理部を共用化した無線処理装置を有し、
前記無線処理装置は、
前記複数の搬送波それぞれの電力を測定する測定手段と、
前記測定手段で測定された各搬送波の測定値から各搬送波の利用状況を判定する利用状況判定手段と、
前記利用状況判定手段で判定された各搬送波の利用状況に応じて前記複数の移動通信システムそれぞれが使用できるか否かの各搬送波の状態を決定する状態決定手段と、
前記状態決定手段で決定した各搬送波の状態を前記複数の移動通信システムに通知する通知手段と、
を有することを特徴とする通信システム。
(付記2)
付記1記載の通信システムにおいて、
前記利用状況判定手段は、前記各搬送波の測定値を所定期間積分した積分値を所定の閾値と比較することで各搬送波の利用状況を判定する
ことを特徴とする通信システム。
(付記3)
付記2記載の通信システムにおいて、
前記状態決定手段は、前記複数の移動通信システムのうち一の移動通信システムで使用できる状態の搬送波の利用状態が低く、他の一の移動通信システムで使用できる状態の全ての搬送波の利用状態が高い場合、前記一の移動通信システムで使用できる状態の搬送波を前記他の一の移動通信システムで使用できる状態の搬送波に変更する決定を行う
ことを特徴とする通信システム。
(付記4)
付記3記載の通信システムにおいて、
前記状態決定手段から前記一の移動通信システムで使用できる状態の搬送波を前記他の一の移動通信システムで使用できる状態の搬送波に変更する決定により、前記前記一の移動通信システムで使用できる状態の搬送波を減衰させる減衰手段を有し、
前記減衰手段で前記搬送波を減衰させたのち、前記通知手段で前記一の移動通信システムで使用できる状態の搬送波を前記他の一の移動通信システムで使用できる状態の搬送波に変更する決定を前記複数の移動通信システムに通知する
ことを特徴とする通信システム。
(付記5)
通信エリア毎に複数の搬送波を通信方式が異なる複数の移動通信システムに分配して、各移動通信システムの移動端末との間の通信を行う通信システムで、通信エリア毎に前記複数の移動通信システムの無線処理部を共用化した無線処理装置であって、
前記複数の搬送波それぞれの電力を測定する測定手段と、
前記測定手段で測定された各搬送波の測定値から各搬送波の利用状況を判定する利用状況判定手段と、
前記利用状況判定手段で判定された各搬送波の利用状況に応じて前記複数の移動通信システムそれぞれが使用できるか否かの各搬送波の状態を決定する状態決定手段と、
前記状態決定手段で決定した各搬送波の状態を前記複数の移動通信システムに通知する通知手段と、
を有することを特徴とする無線処理装置。
(付記6)
付記5記載の無線処理装置において、
前記利用状況判定手段は、前記各搬送波の測定値を所定期間積分した積分値を所定の閾値と比較することで各搬送波の利用状況を判定する
ことを特徴とする無線処理装置。
(付記7)
付記6記載の無線処理装置において、
前記状態決定手段は、前記複数の移動通信システムのうち一の移動通信システムで使用できる状態の搬送波の利用状態が低く、他の一の移動通信システムで使用できる状態の全ての搬送波の利用状態が高い場合、前記一の移動通信システムで使用できる状態の搬送波を前記他の一の移動通信システムで使用できる状態の搬送波に変更する決定を行う
ことを特徴とする無線処理装置。
(付記8)
付記7記載の無線処理装置において、
前記状態決定手段から前記一の移動通信システムで使用できる状態の搬送波を前記他の一の移動通信システムで使用できる状態の搬送波に変更する決定により、前記前記一の移動通信システムで使用できる状態の搬送波を減衰させる減衰手段を有し、
前記減衰手段で前記搬送波を減衰させたのち、前記通知手段で前記一の移動通信システムで使用できる状態の搬送波を前記他の一の移動通信システムで使用できる状態の搬送波に変更する決定を前記複数の移動通信システムに通知する
ことを特徴とする無線処理装置。
(付記9)
付記4記載の通信システムにおいて、
前記利用状況判定手段は、前記積分値を比較する閾値を前記複数の移動通信システム毎に異ならせる
ことを特徴とする通信システム。
(付記10)
付記8記載の無線処理装置において、
前記利用状況判定手段は、前記積分値を比較する閾値を前記複数の移動通信システム毎に異ならせる
ことを特徴とする無線処理装置。
【符号の説明】
【0100】
11 既存方式基地局制御装置
11a 呼処理部
12 既存方式無線基地局装置
12a 既存REC
12c CPRI−INF
13 新方式無線基地局装置
13a 呼処理部
13b 新REC
13c CPRI−INF
14 CPRI多重化装置
15,40 共用無線処理装置
14a,14b,14c EO/OE
14d CPRIMUX/DMUX
21,41 CPRI−INF
22,42 送受信部
23,43 低雑音増幅器
24,44 電力増幅器
25,45 多重分離部
26,46 監視制御部
27,47 状態発生回路
28,48 比較回路
29,49 積分回路
30,31,32,52,53,54 プローブ
51 減衰回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信エリア毎に複数の搬送波を通信方式が異なる複数の移動通信システムに分配して、各移動通信システムの移動端末との間の通信を行う通信システムであって、
通信エリア毎に前記複数の移動通信システムの無線処理部を共用化した無線処理装置を有し、
前記無線処理装置は、
前記複数の搬送波それぞれの電力を測定する測定手段と、
前記測定手段で測定された各搬送波の測定値から各搬送波の利用状況を判定する利用状況判定手段と、
前記利用状況判定手段で判定された各搬送波の利用状況に応じて前記複数の移動通信システムそれぞれが使用できるか否かの各搬送波の状態を決定する状態決定手段と、
前記状態決定手段で決定した各搬送波の状態を前記複数の移動通信システムに通知する通知手段と、
を有することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
請求項1記載の通信システムにおいて、
前記利用状況判定手段は、前記各搬送波の測定値を所定期間積分した積分値を所定の閾値と比較することで各搬送波の利用状況を判定する
ことを特徴とする通信システム。
【請求項3】
請求項2記載の通信システムにおいて、
前記状態決定手段は、前記複数の移動通信システムのうち一の移動通信システムで使用できる状態の搬送波の利用状態が低く、他の一の移動通信システムで使用できる状態の全ての搬送波の利用状態が高い場合、前記一の移動通信システムで使用できる状態の搬送波を前記他の一の移動通信システムで使用できる状態の搬送波に変更する決定を行う
ことを特徴とする通信システム。
【請求項4】
請求項3記載の通信システムにおいて、
前記状態決定手段から前記一の移動通信システムで使用できる状態の搬送波を前記他の一の移動通信システムで使用できる状態の搬送波に変更する決定により、前記前記一の移動通信システムで使用できる状態の搬送波を減衰させる減衰手段を有し、
前記減衰手段で前記搬送波を減衰させたのち、前記通知手段で前記一の移動通信システムで使用できる状態の搬送波を前記他の一の移動通信システムで使用できる状態の搬送波に変更する決定を前記複数の移動通信システムに通知する
ことを特徴とする通信システム。
【請求項5】
通信エリア毎に複数の搬送波を通信方式が異なる複数の移動通信システムに分配して、各移動通信システムの移動端末との間の通信を行う通信システムで、通信エリア毎に前記複数の移動通信システムの無線処理部を共用化した無線処理装置であって、
前記複数の搬送波それぞれの電力を測定する測定手段と、
前記測定手段で測定された各搬送波の測定値から各搬送波の利用状況を判定する利用状況判定手段と、
前記利用状況判定手段で判定された各搬送波の利用状況に応じて前記複数の移動通信システムそれぞれが使用できるか否かの各搬送波の状態を決定する状態決定手段と、
前記状態決定手段で決定した各搬送波の状態を前記複数の移動通信システムに通知する通知手段と、
を有することを特徴とする無線処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−5059(P2012−5059A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140856(P2010−140856)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】