説明

通信システム及び通信方法

【課題】データを送受信する通信装置にデータを分配する際に、各通信装置が同様の順序でデータを受信することができる通信システム及び通信方法を提供する。
【解決手段】ECU1aから送信された、データを含むメッセージA及びECU1cから送信されたメッセージCを、GW装置3,3はECU1bへ送信することなく、分配装置4へ送信する。分配装置4は、メッセージA及びCからデータをデータベース41に記憶し、メッセージA及びCをECU1b及びECU1dへ送信する。この場合、分配装置4はメッセージA及びCを受信した順序、夫々に付与されているメッセージIDに対応する数値の小さい(大きい)順、又は、夫々を受信した時刻の早い順等、所定の順序で分配装置4からメッセージA及びCを送信し、GW装置3,3は分配装置4から送信されたメッセージをECU1b,1dへ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データを送受信する通信装置からなる通信装置群と、通信装置から送信されるデータを収集して記憶しておき、記憶してあるデータを各通信装置へ分配する一又は複数の分配装置とを含み、分配装置によって異なる群に属する通信装置間のデータの送受信を実現する通信システムに関する。特に、データが各通信装置から送信された順序を維持し、各通信装置へ同様の順序でデータが到着する通信システム及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、複数の通信装置に夫々機能を割り振って夫々を接続し、相互にデータを交換させて多様な処理を行なわせるシステムが各分野で利用されている。例えば、車輌に配される車載LAN(Local Area Network)の分野では、通信装置としてECU(電子制御装置;Electronic Control Unit)を用い、各ECUに夫々特化させた処理を行なわせ、相互にデータを交換することにより、システムとして多様な機能を実現させている。
【0003】
各通信装置の機能の特化、また各通信装置が行なうことができる機能の増加に伴ない、通信媒体に接続される通信装置の数及び種類も増加する。更に、システムとして多様な機能が期待されるようになることから、各通信装置がデータを共有して連携する必要が生じ、送出されるデータの量は増加する。
【0004】
そこで、通信装置を複数の群に分け、群毎に通信媒体に接続する構成が一般的である。これにより、通信媒体に接続される通信装置の数が減少するので、通信量を減少させることができ、データの衝突等を回避させることができる。また、通信装置の増大に対して効率的に通信媒体を利用するために、通信装置の群を送受信するデータの種類で分別し、群毎に通信速度の異なる通信媒体に接続する構成もある。これらの構成では、異なる群はデータの送受信を制御するゲートウェイ装置により接続される。
【0005】
特許文献1には、車載LANの分野におけるECUを複数の群に分けて群毎に車内通信回線に接続し、車内通信回線を更にゲートウェイ装置で接続する構成とし、送受信されるデータに優先順位を識別するための優先度情報を付加し、ゲートウェイ装置が異なる車内通信回線間のデータの送受信を中継する場合に、受信したデータの優先度情報から優先度を判別して優先度が高いデータを優先的に送信し、車内通信回線の通信負荷が増加した場合でも優先度が高いデータの送信が大きく遅れないようにする技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−159568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通信装置を複数の群に分けて、各群の間をゲートウェイ装置を介して接続する場合、一の群の通信装置から他の群の通信装置へデータを送信する都度、ゲートウェイ装置が通信装置から他の通信装置へデータを送信する。しかしながら、特にゲートウェイ装置を複数介してデータを送受信する場合、各通信装置でデータが到着する順序が逆転するときがある。
【0007】
図13は、ゲートウェイ装置(GW装置)がデータを受信する都度、他の通信装置又は他のゲートウェイ装置へデータを送信する場合の各通信装置におけるデータの到着順序を模式的に示す説明図である。図13(a)は各通信装置6a,6b,6c,6dとGW装置7a,7b,7cとの接続構成を示すブロック図である。図13(a)に示すように通信装置6a,6bはGW装置7aに接続されており、通信装置6c,6dはGW装置7cに接続されている。GW装置7aはGW装置7bを介してGW装置7cに接続されており、通信装置6a,6b,6c,6d間で送受信されるデータはGW装置7a,7b,7cによって中継される。
【0008】
図13(b)は、図13(a)のような構成の場合に、通信装置6a及び通信装置6cから夫々送信されたデータA及びデータCが、通信装置6b及び通信装置6dに到着する順序を示している。通信装置6aがデータAを送信した場合、データAはGW装置7aから通信装置6bへ送信されると共に、GW装置7a,7b,7cによって中継されて通信装置6dへ送信される。同様に、通信装置6cがデータCを送信した場合、データCはGW装置7cから通信装置6dへ送信されると共に、GW装置7c,7b,7aによって中継されて通信装置6bへ送信される。したがって、図13(b)に示すように、通信装置6bと通信装置6dとでは、データA及びデータCを受信する順序が異なる。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、通信装置から送信されたデータを収集して記憶しておき、他の通信装置へ分配する分配装置が、記憶してあるデータを読み出して、各通信装置へ同一の順序で到着するように所定の送信順序で送信する構成とすることにより、各通信装置で同様の順序でデータを受信することができる通信システム及び通信方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の他の目的は、分配装置が記憶したデータを送信する送信順序は、分配装置がデータを受信した順序とする構成とすることにより、送信された順序を維持して、各通信装置が同様の順序でデータを受信することができることができる通信システムを提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、分配装置が記憶したデータを送信する送信順序は、データに付与されている識別情報に対応する値による順序とする構成とすることにより、各通信装置が同様の順序でデータを受信することができる通信システムを提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、分配装置が記憶したデータを送信する順序は、各分配装置がデータを受信した時刻が早い順とする構成とすることにより、送信された順序を維持し、各通信装置が同様の順序でデータを受信することができる通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1発明に係る通信システムは、データを送受信する複数の通信装置からなる通信装置群と、複数の通信装置群の内の一又は複数の通信装置群に接続されており、各通信装置から送信されるデータを収集し、他の群の通信装置へデータを分配する一又は複数の分配装置とを含む通信システムであって、前記分配装置は、各通信装置から収集したデータを記憶しておく記憶手段と、該記憶手段に記憶してあるデータを、各通信装置へ同様の順序で到着するように所定の送信順序で送信する手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
第2発明に係る通信システムは、前記分配装置は、各通信装置から受信した受信順序をデータに対応付けて記憶する手段を備え、各データに対応付けて記憶した前記受信順序を前記所定の送信順序としてあることを特徴とする。
【0015】
第3発明に係る通信システムは、前記通信装置から送信されるデータには、数値で表わされる識別情報が付与されており、前記分配装置は、前記記憶手段に記憶されているデータに付与されている識別情報で表わされる値の小さい順又は大きい順を、前記所定の送信順序としてあることを特徴とする。
【0016】
第4発明に係る通信システムは、前記分配装置は、計時手段と、各通信装置からデータを受信した受信時刻を記憶する手段とを備え、前記受信時刻が早い順を前記所定の送信順序としてあることを特徴とする。
【0017】
第5発明に係る通信システムは、前記分配装置を複数含む場合、各分配装置は、前記記憶手段に記憶されているデータと共に、対応する前記受信時刻を他の分配装置へ送信する手段を備えることを特徴とする。
【0018】
第6発明に係る通信方法は、データを送受信する複数の通信装置からなる通信装置群と、複数の通信装置群の内の一又は複数の通信装置群に接続されており、各通信装置から送信されるデータを収集して他の群の通信装置へデータを分配する複数の分配装置とを含む通信システムで、前記分配装置によりデータを分配する通信方法であって、前記分配装置は、通信装置から収集したデータを記憶しておき、記憶したデータを他の分配装置へ送信し、他の分配装置から送信されたデータを受信して記憶してあるデータの内容を同期させ、記憶してあるデータを各通信装置へ送信するに際し、夫々同様の順序で到着するように所定の送信順序で送信することを特徴とする。
【0019】
本発明では、通信装置から送信されたデータが分配装置によって収集され、更に各通信装置へ分配送信されるに際し、各通信装置へ同様の順序で到着するように所定の送信順序で送信される。
【0020】
本発明では、分配装置が通信装置からデータを受信した順に、通信装置へデータが送信される。
【0021】
本発明では、分配装置により、データに付与されている識別情報に対応する値の小さい順又は大きい順にデータが送信される。また、分配装置が複数ある場合、記憶してあるデータに付与されている識別情報に対応する値の小さい順又は大きい順にデータが送信されるので、いずれの分配装置からも同様の順序で送信され、各通信装置に同様の順序で到着する。
【0022】
本発明では、分配装置がデータを通信装置から受信した受信時刻が記憶され、受信時刻が早い順にデータが送信される。
【0023】
また本発明では、分配装置が複数含まれる場合、各分配装置が記憶しているデータの内容を同期させるためにデータが送受信されると共に、各データの受信時刻が相互に送受信されて記憶される。いずれの分配装置からも、データの受信時刻が早い順にデータが送信されるので、異なる通信線に接続されている通信装置へも夫々同様の順序で到着する。
【発明の効果】
【0024】
本発明による場合、ゲートウェイ装置がデータを受信する都度、各通信装置へ逐次転送するのではなく、分配装置は、各通信装置に同様の順序でデータが到着するように所定の送信順序でデータを送信する。各通信装置は、分配装置が送信した順序でデータを受信する。データを受信して記憶しておく機能を有した分配装置が起点となってデータが各通信装置へ送信されるので、各通信装置が同様の順序でデータを受信することができる。
【0025】
本発明による場合、分配装置がデータを一度記憶しておき、記憶してあるデータをそのデータを受信した順に他の分配装置及び通信装置へ当該データが送信されるので、送信された順序が維持され、各通信装置で同様の順序でデータを受信することができる。
【0026】
本発明による場合、分配装置がデータを一度記憶しておき、記憶してあるデータを読み出して送信する際に、予め付与されているデータの番号、アルファベット等で表わされる識別情報に対応する値の小さい又は大きい順序でデータが送信される。したがって、分配装置が複数ある場合でも同様の順序でデータが送信され、同様の順序で各通信装置にデータが到着する。
【0027】
本発明による場合、分配装置が通信装置からデータを受信した時刻が記憶され、時刻が早い順に送信されるので送信された順序がほぼ維持されて各通信装置に到着する。これにより、送信された順序で各通信装置でデータを受信することができる。
【0028】
また本発明による場合、分配装置が複数備えられる場合であっても、いずれの分配装置も受信時刻をデータと共に送受信して共通して記憶する。したがって、データが送信された順序がほぼ維持されて各通信装置に到着する。これにより、各通信装置で同様の順序でデータを受信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。なお、以下の実施の形態では、データの送受信処理を行なうECUを複数含む車載LANに、本発明に係る通信システムを適用した車載通信システムを例に説明する。
【0030】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における車載通信システムの構成を示す構成図である。実施の形態1における車載通信システムは、データを送受信する通信装置であるECU(Electronic Control Unit)1a,1b,1c,1dと、ECU1a,1b,1c,1dを群毎に接続している通信線2a,2bと、データの送受信を逐次中継するGW装置3,3と、ECU1a,1b,1c,1dから送信されるデータを一度記憶してECU1a,1b,1c,1dへ分配する分配装置4と、GW装置3,3及び分配装置4を接続している通信線5とを含む。
【0031】
分配装置4は通信線5を介してGW装置3,3に接続されている。そしてECU1a,1bが通信線2aを介してGW装置3に接続されており、GW装置3を介してECU1a,1bと分配装置4との間でデータの送受信が実行される。また、ECU1c,1dが通信線2bを介してGW装置に接続されており、GW装置3を介してECU1c,1dと分配装置4との間でデータの送受信が実行される。
【0032】
このように実施の形態1における車載通信システムは、幹線となる通信線5に接続されたGW装置3,3及び分配装置4を介し、複数の群に分けられたECU1a,1b,1c,1d間のデータの送受信を中継する幹線型の車載ネットワークを構成している。
【0033】
ECU1a,1b,1c,1dの通信線2a,2bを介した接続形態は、バス型、スター型、ディジーチェーン型等、いずれの形態でもよい。GW装置3,3及び分配装置4間の通信線5を介した接続形態は、実施の形態1ではディジーチェーン型とする。
【0034】
ECU1a,1b,1c,1dは、測定値、計算値、制御値等の各種物理量の数値情報を含むデータの送信又はエンジン、ブレーキ等のマイクロコンピュータによる制御が可能な装置である。例えばECU1aはABS(Antilock Brake System)として機能し、車輪の回転速度(車輪速)を検知する図示しないセンサと接続されている。一のECU1aは、車輌の制動時にセンサを介して検知した車輪速に基づいてブレーキを制御すると共に、車輪速の測定値を含むデータを通信線2aへ送信する。
【0035】
分配装置4は基本的に、ECU1a,1b,1c,1d間のデータの送受信を中継する中継装置であるが、データベース41として使用する記憶領域を備えている。分配装置4は、ECU1a,1b,1c,1dから送信されたデータを収集してデータベース41に記憶し、データベース41からデータを読み出し、GW装置3,3を介してECU1a,1b,1c,1dへデータを送信することによってデータを中継する。つまり、実施の形態1における車載通信システムでは、分配装置4が起点となり、分配装置4が送信する順序で各ECU1a,1b,1c,1dへデータが送信される。
【0036】
なお、以下に説明する実施の形態1では、ECU1a,1b,1c,1d及び分配装置4間におけるデータの送受信は、複数のデータがまとめられた「メッセージ」の送受信によって実行される。ECU1a,1b,1c,1dは、自身の動作によって得られるデータ群をメッセージとして送信する。分配装置4は受信したメッセージからデータを読み出してデータベース41に記憶し、ECU1a,1b,1c,1dへ送信する際には、データベース41から読み出したデータを必要に応じて組み合わせてメッセージとして送信する。
【0037】
図2は、実施の形態1における車載通信システムを構成するECU1a及び分配装置4の内部構成を示すブロック図である。ECU1b,1c,1dの内部構成はECU1aと同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0038】
ECU1aは、以下に示す各構成部の動作を制御する制御部10と、不揮発性のメモリを利用した記憶部11と、通信線2aに接続されている通信制御部12と、図示しないセンサからの信号を入力する入力部13と、図示しない制御対象装置へ制御信号を出力する出力部14とを備える。ECU1a,1b,1c,1dによっては、入力部13及び出力部14は、いずれか一方のみ備える構成又はいずれも備えない構成でもよい。
【0039】
例えばECU1aの制御部10は、図示しない車輌のオルタネータ、バッテリー等の電力供給装置から電力の供給を受け、入力部13を介してECU1aに接続されている図示しないセンサからの測定値を表わす信号を検知し、出力部14を介してECU1aに接続されている制御対象の装置へ制御信号を出力する。
【0040】
記憶部11には、制御部10が処理の過程で発生する各種情報、受信したメッセージ、又はセンサから入力された信号が表わす測定値が一時的に記憶される。
【0041】
通信制御部12は、ネットワークコントローラチップを有して通信線2aとの通信を実現する。ECU1aの制御部10は、自身の動作により得られた物理量の測定値、計算値、制御値等を含むデータをメッセージとして通信制御部12により送信する。
【0042】
また、ECU1aの制御部10は、通信制御部12によりGW装置3を介して分配装置4から送信されるメッセージを受信する。制御部10は、受信したメッセージから各データを読み出し、制御に使用する。
【0043】
分配装置4は、以下に示す各構成部の動作を制御する制御部40と、揮発性のメモリを利用した記憶部42と、通信線5に接続されている通信制御部43とを備える。
【0044】
制御部40は、図示しない車輌のオルタネータ、バッテリー等の電力供給装置から電力の供給を受け、図示しない不揮発性の内蔵メモリに記憶されている制御プログラムを読み出して実行し、各構成部を制御する。
【0045】
記憶部42には、制御部40がECU1a,1b,1c,1dから受信したデータを記憶するためのデータベース41の記憶領域が設けられている。制御部40は、ECU1a,1b,1c,1dから受信したメッセージに含まれる「車輪速」、「操舵角」、「オイル温度」等のデータの種類毎に、対応する具体的な測定値、計算値、制御値を読み出してデータベース41に記憶する。
【0046】
通信制御部43は、通信線5を介して接続されているGW装置3,3を介したECU1a,1b,1c,1dとのメッセージの送受信を実現する。また通信制御部43は、複数のポートを備え、ECU1a,1b側の通信線5と接続しているポート430と、ECU1c,1d側の通信線5と接続しているポート431とを区別する。
【0047】
上述のように構成される車載通信システムにおいて、ECU1a,1b,1c,1dから送信されるデータがGW装置3,3及び分配装置4によって中継される処理について説明する。
【0048】
図3は、実施の形態1における分配装置4及びECU1a,1b,1c,1d間でデータが送受信される処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、図3のフローチャート中ではGW装置3,3における送受信の処理については省略する。
【0049】
ECU1aの制御部10は、自身の動作により得られたデータを含むメッセージAをGW装置3を介して分配装置4へ送信する(ステップS101)。このときGW装置3は、ECU1aから受信したデータをECU1bへ送信することなしに分配装置4へ送信する。
【0050】
分配装置4の制御部40は、ECU1aから送信されたメッセージAを通信制御部43のECU1a,1b側のポート430により受信し(ステップS102)、メッセージAに含まれているデータを読み出してデータベース41に記憶し(ステップS103)、受信順序「A」を記憶する(ステップS104)。
【0051】
この間にECU1cの制御部10は、自身の動作により得られたデータを含むメッセージCをGW装置3を介して分配装置4へ送信する(ステップS105)。GW装置3は、ECU1cから受信したデータをECU1dへ送信することなしに分配装置4へ送信する。
【0052】
分配装置4の制御部40は、ECU1cから送信されたメッセージCを通信制御部43のECU1c,1d側のポート431により受信し(ステップS106)、メッセージCに含まれているデータを読み出してデータベース41に記憶し(ステップS107)、受信順序「A」に受信したメッセージCの受信順序を加えた「A,C」を記憶する(ステップS108)。
【0053】
制御部40は、記憶してある受信順序「A,C」に従い、通信制御部43のポート430,431夫々から同様にメッセージA、メッセージCの順で送信させることにより、ECU1b,1dへメッセージA及びメッセージCを送信する(ステップS109、ステップS110)。
【0054】
これにより、ECU1bの制御部10は、分配装置4から送信されたメッセージAを受信し(ステップS111)、次にメッセージCを受信する(ステップS112)。
【0055】
また、ECU1dの制御部10は、分配装置4から送信されたメッセージAを受信し(ステップS113)、次にメッセージCを受信し(ステップS114)、処理を終了する。
【0056】
図3のフローチャートに示したように、分配装置4の制御部40が、各ECU1a,1b,1c,1dから受信したメッセージからデータをデータベース41に記憶し、分配装置4が記憶したデータを受信順序と同じ送信順序で送信する。これにより、送信された順序がほぼ維持されてECU1b,1dで同様にメッセージA、メッセージCの順序で受信することができる。
【0057】
実施の形態1では上述のように、分配装置4の制御部40はメッセージを受信した受信順序を記憶した。この場合、受信したメッセージをキュー(First In First Out)により記憶部42に記憶し、通信制御部43のポート430,431夫々に同様の順序で送信するように出力することで実現可能である。
【0058】
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1におけるGW装置3,3を分配装置に置き換えた場合の例を示す。したがって、実施の形態2における車載通信システムのハードウェア構成は、GW装置3,3が含まれずに分配装置が複数含まれていることが異なる。以下、実施の形態1と共通の構成については同一の符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0059】
図4は、実施の形態2における車載通信システムの構成を示す構成図である。実施の形態2における車載通信システムは、ECU1a,1b,1c,1d,1e,1fと、ECU1a,1b,1c,1d,1e,1fを群毎に接続している通信線2a,2b,2cと、ECU1a,1b,1c,1d,1e,1fから送信されるメッセージに含まれるデータを一度記憶してECU1a,1b,1c,1d,1e,1fへ分配する分配装置4a,4b,4cと、分配装置4a,4b,4cを接続している通信線5とを含む。
【0060】
ECU1a,1bは、通信線2aを介して分配装置4aに接続されている。ECU1c,1dは、通信線2bを介して分配装置4bに接続されている。また、ECU1e,1fは、通信線2cを介して分配装置4cに接続されている。
【0061】
分配装置4a,4b,4cは実施の形態1における分配装置4同様に夫々、ECU1a,1b,1c,1d,1e,1f夫々から送信されるデータを読み出して記憶するためのデータベース41a,41b,41cとして使用する記憶領域を備えている。ECU1a,1bはメッセージを分配装置4aへ送信し、ECU1c,1dはメッセージを分配装置4bへ送信し、ECU1e,1fはメッセージを分配装置4cへ送信する。ECU1a,1b,1c,1d,1e,1fは夫々異なる機能に応じたデータをメッセージに含めて分配装置4a,4b,4cへ送信するので、分配装置4a,4b,4cが夫々データベース41a,41b,41cに記憶し、更新するデータの種類は分配装置4a,4b,4c毎に異なる。
【0062】
そこで、分配装置4a,4b,4cはデータベース41a,41b,41cに記憶されているデータを相互に送受信してデータの内容を同期させ、内容が同期された夫々のデータベース41a,41b,41cからデータを読み出してメッセージに含めて各ECU1a,1b,1c,1d,1e,1fへ分配するように送信する。これにより、異なる通信線2a,2b,2cに接続しているECU1a,1b,1c,1d,1e,1fが夫々同一のデータを使用することができる。
【0063】
実施の形態2における車載通信システムはこのように、幹線となる通信線5に接続された分配装置4a,4b,4cが、ECU1a,1b,1c,1d,1e,1fから受信したデータが記憶され、且つ内容が同期されたデータベース41a,41b,41cから読み出したデータをECU1a,1b,1c,1d,1e,1fへ送信することにより、ECU1a,1b,1c,1d,1e,1f間のメッセージの送受信を中継する幹線型の車載ネットワークを構成している。
【0064】
ECU1a,1b,1c,1d,1e,1fは、実施の形態1におけるECU1a,1b,1c,1dと同様の構成であるので、同一の符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0065】
図5は、実施の形態2における車載通信システムを構成するECU1a及び分配装置4aの内部構成を示すブロック図である。分配装置4b,4cの内部構成は、分配装置4aと同様であるので詳細な説明を省略する。
【0066】
分配装置4aは、各構成部の動作を制御する制御部40aと、揮発性のメモリを利用した記憶部42aと、通信線2a及び通信線5に接続されている通信制御部43aとを備える。
【0067】
制御部40aは、図示しない車輌のオルタネータ、バッテリー等の電力供給装置から電力の供給を受け、図示しない不揮発性の内蔵メモリに記憶されている制御プログラムを読み出して実行し、各構成部を制御する。
【0068】
記憶部42aには、制御部40がECU1a,1b,1c,1d,1e,1fから受信したデータを記憶するためのデータベース41aの記憶領域が設けられている。制御部40aは、ECU1a,1b,1c,1d,1e,1fから受信したメッセージに含まれる「車輪速」、「操舵角」、「オイル温度」等のデータの種類毎に、対応する具体的な測定値、計算値、制御値を読み出してデータベース41aに記憶する。
【0069】
通信制御部43aは、ECU1a,1b及び分配装置4bとのメッセージの送受信を実現する。また通信制御部43aは複数のポートを備え、制御部40aは通信線2aを介してECU1a,1bに接続しているポート430aと、通信線5を介して分配装置4bに接続しているポート431aとを区別することが可能である。
【0070】
なお、分配装置4bの通信制御部43bも同様に複数のポート430b,431b,432bを備え、制御部40bは通信線2bを介してECU1c,1dに接続しているポート430bと、通信線5を介して分配装置4aに接続しているポート431bと、通信線5を介して分配装置4bに接続しているポート432bとを区別することが可能である。同様に分配装置4cの通信制御部43cも複数のポート430c,431cを備え、制御部40cは、通信線2bを介してECU1e,1fに接続しているポート430cと、通信線5を介して分配装置4bに接続しているポート431cとを区別することが可能である。
【0071】
分配装置4aの制御部40aは、データベース41a,41b,41cを同期させるために、データベース41aからECU1a,1bにより送信されて更新されるデータを含むメッセージを通信制御部43aにより分配装置4b,4cへ送信する。また、分配装置4aの制御部40aは、分配装置4b,4cから同様に送信されるメッセージを通信制御部43aにより受信してデータを読み出し、データベース41aに記憶する。
【0072】
このように構成される車載通信システムにおいて、ECU1a,1b,1c,1d,1e,1f及び分配装置4a,4b,4cが、メッセージを送受信する処理について説明する。まず、ECU1a,1b,1c,1d,1e,1f及び分配装置4a,4b,4cは、基本的に所定の周期で動作するように構成されている。また、当該周期は、ECU1a,1b,1c,1d,1e,1fと、分配装置4a,4b,4cとの間でメッセージを送受信する送受信期間と、分配装置4a,4b,4c間でメッセージを送受信してデータベース41a,41b,41cを同期させる同期期間とに分けられている。
【0073】
分配装置4a,4b,4cは、送受信期間でECU1a,1b,1c,1d,1e,1fから送信されるメッセージを受信してデータを読み出してデータベース41a,41b,41cに夫々記憶する。分配装置4a,4b,4cは、送受信期間で新しいデータが記憶されたデータベース41a,41b,41cを、同期期間で同期させる。次の送受信期間で分配装置4a,4b,4cは、同期されたデータベース41a,41b,41cから読み出したデータをメッセージとしてECU1a,1b,1c,1d,1e,1fへ送信する。
【0074】
実施の形態2では、送受信期間で分配装置4a,4b,4cがメッセージをECU1a,1b,1c,1d,1e,1fへ送信するに際し、そのメッセージを送信する順序を、メッセージに付与されるメッセージIDに対応する値に基づく順序とする。
【0075】
なお、メッセージIDは、メッセージに含められるデータの組み合わせに応じて予め定められた数値で表わされる識別情報である。ECU1a,1b,1c,1d,1e,1f及び分配装置4a,4b,4cは、メッセージIDにより、例えば「車輪速」及び「操舵角」を含むメッセージであるのか、又は「オイル温度」を含むメッセージであるのかを識別することが可能である。なお、メッセージは2進数のデジタル信号によって送信されるので、メッセージIDは例えば、「10」、「500」などの数値を2進数で示したビット列で表わされている。なお、メッセージIDをアルファベット、又は記号で表わし、デジタル信号で表わす場合、アルファベット又は記号とビット列とを対応させて表現してもよい。
【0076】
図6は、実施の形態2における分配装置4aの制御部40aが同期処理後に、メッセージをECU1a,1bへ送信する処理手順の一例を示すフローチャートである。分配装置4b,4cの制御部40b,40cによる送信の処理手順は、分配装置4aの制御部40aによる処理手順と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0077】
分配装置4aの制御部40aは、同期処理終了後、通信線2aを介して接続しているECU1a,1bへ送信すべきデータを含むメッセージを生成し(ステップS21)、メッセージに付与されるメッセージIDを読み出す(ステップS22)。制御部40aは、メッセージIDが表わす数値が小さい順を送信順序とする(ステップS23)。制御部40aは、各メッセージをステップS23で定めた送信順序で通信制御部43aのポート430aにより送信させることにより、通信線2aを介してECU1a,1bへメッセージを送信し(ステップS24)、処理を終了する。
【0078】
また、図6のフローチャートに示した処理手順を、送受信期間中に分配装置4b,4cでも同様に実行することにより、分配装置4a,4b,4cから夫々メッセージIDに対応する数値が小さい順に同様の順序でメッセージが送信される。
【0079】
図7は、実施の形態2における分配装置4a,4b,4c及びECU1a,1b,1e,1f間でのメッセージの送信順序及び到着順序を模式的に示す説明図である。図7の説明図は、下方に時間の経過を表わし、ECU1a及びECU1eから送信されたメッセージA及びメッセージEが、ECU1b及びECU1fに到着する順序を示している。なお、図7の説明図を用いて以下に示す説明では、メッセージAに付与されるメッセージIDに対応する数値は、メッセージEに付与されるメッセージIDに対応する数値よりも小さいとする。
【0080】
送受信期間中にECU1aから送信されたメッセージAは、ECU1aが通信線2aを介して接続している分配装置4aにより受信され、データベース41aに記憶される。一方、送受信期間中にECU1eから送信されたメッセージEは、ECU1eが通信線2cを介して接続している分配装置4cにより受信され、データベース41cに記憶される。
【0081】
次に同期期間中に、分配装置4a,4b,4c間でデータベース41a,41b,41cが同期される。したがって、ECU1aから送信されたメッセージAに含まれていたデータも分配装置4aから分配装置4b及び分配装置4cへ送信されてデータベース41b,データベース41cに記憶される。同様にECU1eから送信されたメッセージEに含まれていたデータも分配装置4cから分配装置4a及び分配装置4bへ送信されてデータベース41a,データベース41bに記憶される。
【0082】
次の送受信期間中は、メッセージA及びメッセージEに含まれるデータを必要とするECU1b及びECU1fへ、夫々に接続している分配装置4a及び4cからメッセージA及びメッセージEが送信される。このとき、分配装置4a及び4cの制御部40a及び制御部40cは夫々、メッセージIDに対応する数値が小さいメッセージAを先に送信し、次にメッセージEを送信する。
【0083】
したがって、図7の説明図に示したように、ECU1b及びECU1fのいずれでも、メッセージA、メッセージEの順序でメッセージを受信することができる。
【0084】
なお、実施の形態2では、メッセージEがECU1eから送信された時刻がメッセージAがECU1aから送信された時刻よりも早いか遅いかに関わらず、分配装置4a,4b,4cからは、メッセージIDが表わす数値が小さいメッセージAがメッセージEよりも先に送信される。つまり、図7の説明図に示した場合とは逆に、メッセージEがECU1eから送信された時刻がメッセージAがECU1aから送信された時刻よりも早い場合であっても、分配装置4a及び分配装置4cからはメッセージA、メッセージEの順序で送信される。
【0085】
実施の形態2では、図6のフローチャートに示したように送信順序をメッセージIDに対応する数値が小さい順とした。しかしながら、本発明はこれに限らず、メッセージIDに対応する数値が大きい順を送信順序とする構成でもよい。
【0086】
また、実施の形態2では分配装置4a,4b,4cが複数含まれる場合を示した。しかしながら本発明はこれに限らず、実施の形態1と同様に分配装置4が1つ含まれる実施の形態1における車載通信システムで、分配装置4の制御部40が図6のフローチャートに示した処理手順を実行する構成としてもよい。これにより、各ECU1a,1b,1c,1dがメッセージを受信する順序が同様となる。
【0087】
(実施の形態3)
実施の形態2では、分配装置4a,4b,4cがメッセージを送信する送信順序をメッセージに付与されるメッセージIDに対応する数値が小さい順とした。これに対し、実施の形態3では、分配装置4a,4b,4cは、ECUからメッセージを受信した受信時刻を記憶し、受信時刻が早い順をメッセージの送信順序とする。
【0088】
実施の形態3における車載通信システムを構成する各装置の構成及び接続関係は、実施の形態2における各装置の構成及び接続関係と同様である。実施の形態3では、分配装置4a,4b,4cが、メッセージを受信した時刻を取得するための計時部を備えていることが異なる。したがって、以下の実施の形態3の説明では、実施の形態1及び2と共通する構成については同一の符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0089】
図8は、実施の形態3における車載通信システムを構成するECU1a及び分配装置4aの内部構成を示すブロック図である。分配装置4b,4cの内部構成は分配装置4aと同様であるので詳細な説明を省略する。
【0090】
分配装置4aは、制御部40aと、記憶部42aと、通信制御部43aとを備え、タイマである計時部44aを更に備える。
【0091】
計時部44aは、所定の周波数での計数に基づくタイムスタンプ(UTC;Coordinated Universal Time)を発行し、タイマとして機能する。制御部40aは、計時部44aから発行されたタイムスタンプを時刻として取得することが可能である。なお計時部44aは、UTCに限らず、所定の周波数での計数の値を時刻として出力してもよい。
【0092】
なお、分配装置4a,4b,4c夫々の計時部44a,44b,44cにより計られる時刻は適度な精度で同期されていることが望ましい。
【0093】
制御部40aは、メッセージを受信した場合、受信時刻を計時部44aから取得し、メッセージ又はメッセージに含まれるデータに対応付けて受信時刻を記憶する。制御部40aは、他の分配装置4b、4cとデータベース41a,41b,41cの内容を同期させるためにデータをメッセージに含めて送受信するに際し、メッセージの受信時刻も共に送受信し、受信時刻が早い順にECU1a,1b,1c,1d,1e,1fへメッセージを送信する。
【0094】
次に、実施の形態3における分配装置4aの制御部40aが、メッセージを受信する際に受信時刻を記憶しておき、データベース41aを他のデータベース41b,41cと同期させるときに受信時刻を共にメッセージを送受信し、受信時刻を基準にECU1a,1b,1c,1d,1e,1fへメッセージを送信する各処理について説明する。
【0095】
図9は、実施の形態3における分配装置4aの制御部40aがメッセージをECU1a,1bから受信する処理手順の一例を示すフローチャートである。分配装置4b,4cの制御部40b,40cによる処理手順は、分配装置4aの制御部40aによる処理手順と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0096】
分配装置4aの制御部40aは、ECU1a又はECU1bからメッセージを受信し(ステップS31)、メッセージを受信した時刻(受信時刻)を計時部44aから取得する(ステップS32)。制御部40aは、取得した受信時刻をメッセージと共に記憶し(ステップS33)、ECU1a又はECU1bからメッセージを受信する処理を終了する。
【0097】
分配装置4aの制御部40aは、図9のフローチャートに示した処理をメッセージを受信する都度実行する。次に、分配装置4aの制御部40aは、他の分配装置4b,4cと共にデータベース41a,41b,41cのデータの内容を同期する。
【0098】
図10は、実施の形態3における分配装置4aの制御部40aがデータベース41a,41b,41cの同期のためにメッセージを分配装置4bへ送信する処理手順の一例を示すフローチャートである。分配装置4b,4cの制御部40b,40cによる処理手順は分配装置4aの制御部40aによる処理手順と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0099】
分配装置4aの制御部40aは、同期期間中にデータベース41a,41b,41cの同期のためにデータベース41aからデータを読み出し(ステップS41)、メッセージを生成する(ステップS42)。このとき、制御部40aは、共に記憶した受信時刻を読み出し(ステップS43)、メッセージ及び受信時刻を分配装置4bへ送信する(ステップS44)。
【0100】
分配装置4bの制御部40bは、分配装置4aから送信されたメッセージ及び受信時刻を受信し(ステップS45)、受信したメッセージからデータを読み出してデータベース41bに記憶し(ステップS46)、データに対応付けて受信時刻を記憶する(ステップS47)。
【0101】
分配装置4a,4b,4cの制御部40a,40b,40cは、図10のフローチャートに示す処理手順を夫々実行することによりデータベース41a,41b,41cのデータの内容を同期させると共に、メッセージを受信した時刻を共有する。
【0102】
図11は、実施の形態3における分配装置4aの制御部40aがデータベース41aから読み出したデータを含むメッセージをECU1a,1bへ送信する処理手順の一例を示すフローチャートである。分配装置4b,4cの制御部40b,40cによる処理手順は分配装置4aの制御部40aによる処理手順と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0103】
分配装置4aの制御部40aは、同期処理終了後、送受信期間中に通信線2aを介して接続しているECU1a,1bへ送信すべきデータを含むメッセージを生成し(ステップS51)、メッセージに対応する受信時刻を読み出す(ステップS52)。なお、ステップS52におけるメッセージに対応する受信時刻は、同一のメッセージがECUから送信された場合の受信時刻が記憶されて共有されているときは当該受信時刻でもよく、データを必要に応じて組み合わせてメッセージに含める場合、メッセージに含まれるデータに対応付けられる受信時刻の内の最も早い時刻を受信時刻としてもよい。
【0104】
制御部40aは、受信時刻が早い順を送信順序とする(ステップS53)。制御部40aは、各メッセージをステップS53で定めた送信順序で通信制御部43aのポート430aにより送信させることにより、通信線2aを介してECU1a,1bへメッセージを送信し(ステップS54)、処理を終了する。
【0105】
図11のフローチャートに示した処理手順を、送受信期間中に分配装置4b,4cでも同様に実行することにより、メッセージが送信され、受信された順序を維持して分配装置4a,4b,4cからECU1a,1b,1c,1d,1e,1fへ夫々メッセージが送信される。これにより、ECU1a,1b,1c,1d,1e,1fによっては、受信順序が逆転するといったことが起こらず、ECU1a,1b,1c,1d,1e,1fで同様の順序でメッセージが受信される。
【0106】
図12は、実施の形態3における分配装置4a,4b,4c及びECU1a,1b,1e,1f間でのメッセージの送信順序及び到着順序を模式的に示す説明図である。図12の説明図は、実施の形態2のおける図7の説明図と同様に下方に時間の経過を表わし、メッセージA及びメッセージEが、ECU1b及びECU1fに到着する順序を示している。
【0107】
実施の形態3では、分配装置4a,4b,4cは、分配装置4a,4b,4cのいずれかで受信した時刻の早い順にECU1a,1b,1c,1d,1e,1fへ送信する。したがって、図12の説明図に示した例では分配装置4aがECU1aからメッセージAを受信した時刻ta と、分配装置4cがECU1eからメッセージEを受信した時刻te とで、早い時刻te に受信されたメッセージEが先に送信される。逆に、分配装置4cがECU1aからメッセージAを受信した時刻ta が分配装置4cがECU1eからメッセージAを受信した時刻te よりも早かった場合は、図12の説明図に示した例とは異なり、分配装置4a,4b,4cからはメッセージA、メッセージEの順序でECU1b,1fへメッセージA及びメッセージEが送信される。
【0108】
図12の説明図に示したように、ECU1b及びECU1fのいずれでも、メッセージA及びメッセージEを、それらが送信され、受信された順序が維持されたままに、メッセージE、メッセージAの順序で受信することことができる。
【0109】
なお、実施の形態3では、分配装置4a,4b,4cが複数含まれる場合を示した。しかしながら本発明はこれに限らず、実施の形態1と同様に分配装置4が1つである場合でも、分配装置4の制御部40が図9及び図11のフローチャートに示した処理手順を実行し、メッセージの受信時刻が早い順でメッセージを送信する構成としてもよい。これにより、各ECU1a,1b,1c,1dがデータを受信する順序が同様となる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】実施の形態1における車載通信システムの構成を示す構成図である。
【図2】実施の形態1における車載通信システムを構成するECU及び分配装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1における分配装置及びECU間でデータが送受信される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】実施の形態2における車載通信システムの構成を示す構成図である。
【図5】実施の形態2における車載通信システムを構成するECU及び分配装置の内部構成を示すブロック図である。
【図6】実施の形態2における分配装置の制御部が同期処理後に、メッセージをECUへ送信する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態2における分配装置及びECU間でのメッセージの送信順序及び到着順序を模式的に示す説明図である。
【図8】実施の形態3における車載通信システムを構成するECU及び分配装置の内部構成を示すブロック図である。
【図9】実施の形態3における分配装置の制御部がメッセージをECUから受信する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図10】実施の形態3における分配装置の制御部がデータベースの同期のためにメッセージを分配装置へ送信する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態3における分配装置の制御部がデータベースから読み出したデータを含むメッセージをへ送信する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図12】実施の形態3における分配装置及びECU間でのメッセージの送信順序及び到着順序を模式的に示す説明図である。
【図13】ゲートウェイ装置(GW装置)がデータを受信する都度、他の通信装置又は他のゲートウェイ装置へデータを送信する場合の各通信装置におけるデータの到着順序を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0111】
1a,1b,1c,1d,1e,1f ECU(通信装置)
4,4a,4b,4c 分配装置
40a,40b,40c 制御部
41,41a,41b,41c データベース
42,42a,42b,42c 記憶部
44a,44b,44c 計時部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを送受信する複数の通信装置からなる通信装置群と、複数の通信装置群の内の一又は複数の通信装置群に接続されており、各通信装置から送信されるデータを収集し、他の群の通信装置へデータを分配する一又は複数の分配装置とを含む通信システムであって、
前記分配装置は、
各通信装置から収集したデータを記憶しておく記憶手段と、
該記憶手段に記憶してあるデータを、各通信装置へ同様の順序で到着するように所定の送信順序で送信する手段と
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記分配装置は、
各通信装置から受信した受信順序をデータに対応付けて記憶する手段を備え、
各データに対応付けて記憶した前記受信順序を前記所定の送信順序としてあること
を特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記通信装置から送信されるデータには、数値で表わされる識別情報が付与されており、
前記分配装置は、前記記憶手段に記憶されているデータに付与されている識別情報で表わされる値の小さい順又は大きい順を、前記所定の送信順序としてあること
を特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記分配装置は、
計時手段と、
各通信装置からデータを受信した受信時刻を記憶する手段と
を備え、
前記受信時刻が早い順を前記所定の送信順序としてあること
を特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項5】
前記分配装置を複数含む場合、
各分配装置は、前記記憶手段に記憶されているデータと共に、対応する前記受信時刻を他の分配装置へ送信する手段を備えること
を特徴とする請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
データを送受信する複数の通信装置からなる通信装置群と、複数の通信装置群の内の一又は複数の通信装置群に接続されており、各通信装置から送信されるデータを収集して他の群の通信装置へデータを分配する複数の分配装置とを含む通信システムで、前記分配装置によりデータを分配する通信方法であって、
前記分配装置は、
通信装置から収集したデータを記憶しておき、
記憶したデータを他の分配装置へ送信し、
他の分配装置から送信されたデータを受信して記憶してあるデータの内容を同期させ、
記憶してあるデータを各通信装置へ送信するに際し、夫々同様の順序で到着するように所定の送信順序で送信する
ことを特徴とする通信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2009−49933(P2009−49933A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216433(P2007−216433)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】