説明

通信システム

【課題】歩行数を確実に計測可能であり、ユーザにとって利便性の高い通信システムを提供する。
【解決手段】人体(60)を信号伝送路として人体に装着された第1通信装置(2)と第2通信装置(50,50)との間で通信を行い、路面(70)の歩行数を計測可能な通信システム(1)である。第1通信装置は、人体と容量的に結合し、第2通信装置との間で信号の送信或いは受信が可能な第1信号電極(22,32)と、路面であるアースを介して第2通信装置と容量的に結合する第1GND電極(28)とを備える。第2通信装置は、路面の近傍にて人体に装着されるとともに、人体と容量的に結合し、第1通信装置との間で信号の受信或いは送信が可能な第2信号電極(52)と、アースを介して第1通信装置と容量的に結合する第2GND電極(58)とを備える。そして、第1通信装置は、第2通信装置の信号強度の変化に基づいて歩行数を計測して記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界結合を利用した通信を行う通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、通信システムには、有線通信の他、RFID(Radio Frequency IDentification)、赤外線通信、短距離無線通信等の方式が知られており、この無線電波等によって非接触の通信を行うことができるので、例えばイベント会場や駅の改札口等の様々な場面で活用されている。
【0003】
一方、この電波を用いた機器は法律の規制を受けるし、また、他の機器からの干渉や妨害を受け易いことから、電界結合を利用した新たな通信方式の技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4074661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来の技術によれば、上記無線電波等による諸問題は解決可能である。しかしながら、当該技術では、ユーザが実際に使用できる程度の具体性には未だ乏しく、この点については依然として課題が残されている。
ここで、当該課題を解決する一例としては、歩数計による計測結果を送信機から電界信号で外部機器に出力することが考えられる。
【0006】
この歩数計には振り子式や加速度センサ式があり、前者の振り子式は人体の振動を検知して歩行数を計測しており、安価であるものの、計測した歩行数と実際の歩行数との誤差が大きくなる。例えば、椅子から立ち上がる動作による振動や乗り物の振動の如く、歩行以外で人体に生じた振動も歩行数として計測してしまうし、また、人体への装着方向を誤ると、歩行による振動を計測できないからである。
【0007】
これに対し、後者の加速度センサ式は人体の加速度を検知して歩行数を計測するため、歩行以外の振動は歩行数として計測しなくなるが、前後、左右、及び上下の3方向の加速度をいずれも計測可能な加速度センサを備えておく必要がある。1方向や2方向の加速度を検知するのみでは、やはり人体への装着方向を誤ると、歩行数を正確に計測できないのである。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消し、歩行数を確実に計測可能であって、ユーザにとって利便性の高い通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための第1の発明は、人体を信号伝送路として人体にそれぞれ装着された第1通信装置と第2通信装置との間で通信を行い、人体による路面の歩行数を計測可能な通信システムである。
そして、第1通信装置は、人体と容量的に結合し、第2通信装置との間で信号の送信或いは受信が可能な第1信号電極と、路面であるアースを介して第2通信装置と容量的に結合する第1GND電極とを備える。
【0010】
一方、第2通信装置は、路面の近傍にて人体に装着されるとともに、人体と容量的に結合し、第1通信装置との間で信号の受信或いは送信が可能な第2信号電極と、アースを介して第1通信装置と容量的に結合する第2GND電極とを備えており、第1通信装置は、第2通信装置の信号強度の変化に基づいて歩行数を計測して記憶している。
【0011】
第1の発明によれば、この通信システムは、人体による路面の歩行数を計測するにあたり、人体を信号伝送経路としており、同一人体に2種の通信装置が装着されている。
詳しくは、第1通信装置の第1信号電極は、人体と容量的に結合し、第2通信装置の第2信号電極との間で信号の送信或いは受信が可能である。一方、この第1通信装置の第1GND電極は、路面であるアースを介して第2通信装置の第2GND電極と容量的に結合しており、これら全体で閉ループを形成する。
【0012】
そして、この第2通信装置は路面の近傍にて人体に装着され、人体の歩行動作に連動可能な位置に配置されている。
よって、第2通信装置で検出した信号強度は、これら第2通信装置と路面との距離に応じて変化するため、この変化に基づいて歩行動作を認識できる。このように、電界信号の強弱現象を歩行数の計測に利用すれば、従来に比して歩行以外で人体に生じた振動のみでは歩行数として計測されず、また、3軸方向の加速度センサを用いなくても歩行数を確実に計測可能になる。
【0013】
この結果、これら第1,2通信装置は、電界信号で通信する機能の他、歩行数を正確に計測する機能を有するので、上記振り子式や加速度センサ式の歩数計による計測結果を電界信号で単に外部機器に出力する場合に比して利便性が高く、しかも、この第1通信装置は、計測した歩行数を記憶する機能も有していることから、利便性がより高い。
【0014】
第2の発明は、第1の発明の構成において、第1信号電極は、人体に対峙して配置され、第1GND電極は、第1信号電極を挟んで人体とは反対側に配置されている。
一方、第2通信装置は、人体に履かれる靴に装着されるとともに、第2信号電極は、人体に対峙する靴の足裏側に配置され、第2GND電極は、第2信号電極を挟んで人体とは反対側の靴の靴底側に配置されていることを特徴とする。
【0015】
第2の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、第2通信装置は、人体に履かれる靴に装着されているため、人体の歩行動作に確実に連動することができるし、しかも、これら第1,2信号電極は、第1,2GND電極よりも人体の近くにそれぞれ配置されているので、通信効率が向上する。
第3の発明は、第1や第2の発明の構成において、人体を信号伝送経路として第1通信装置との間で通信を行うとともに、外部機器に接続された第3通信装置をさらに備え、第3通信装置は、人体と容量的に結合し、第1通信装置との間で信号の受信或いは送信が可能な第3信号電極と、アースを介して第1通信装置と容量的に結合する第3GND電極とを備え、記憶された歩行数を外部機器に蓄積させることを特徴とする。
【0016】
第3の発明によれば、第1や第2の発明の作用に加えてさらに、第3通信装置の第3信号電極もまた、人体と容量的に結合し、第1通信装置の第1信号電極との間で信号の受信或いは送信が可能であるし、この第3通信装置の第3GND電極も、アースを介して第1通信装置の第1GND電極と容量的に結合しており、これら全体で閉ループを形成している。
【0017】
よって、RFIDや、短距離無線通信等を利用した従来に比して、人間が第3通信装置に触れる、又は握る等の自然な動きで第1通信装置と第3通信装置、ひいては外部機器とをつなぐことができ、読み取り機にかざす手間を省略でき、使い易い。また、この情報は、短距離無線通信等に比べ、人体から外部に漏洩しにくく、セキュリティも確保される。さらに、通信距離が短いし、電波も放出しないため、第1〜3通信装置の消費電力も少なくて済む。
【0018】
しかも、記憶された歩行数を外部機器の例えばデータ管理ソフトにダウンロードすれば、日々の歩行数のデータを蓄積でき、その管理が容易になる。
第4の発明は、第1から第3の発明の構成において、第1通信装置は、計測した歩行数を表示する表示パネルを有しており、第1GND電極は、表示パネルの構成基板のGND端子と接続されていることを特徴とする。
【0019】
第4の発明によれば、第1から第3の発明の作用に加えてさらに、第1通信装置は、計測した歩行数を表示する機能も有するので、利便性がさらに高くなるし、また、第1GND電極が、表示パネルの構成基板のGND端子と接続され、第1GND電極の拡大化が図られていることから、信号強度の変化の検出精度の向上に寄与する。
【0020】
第5の発明は、第2の発明の構成において、第2GND電極は、靴の靴底の面積に相当する大きさで形成されていることを特徴とする。
第5の発明によれば、第2の発明の作用に加えてさらに、第2GND電極が、靴底の面積に相当する程度に拡大されているため、この点も信号強度の変化の検出精度の向上に寄与する。
【0021】
第6の発明は、第1から第5の発明の構成において、各通信装置は、人体への電圧印加によって生じた電界を利用し、人体を信号伝送経路として各通信装置との間で通信を行うことを特徴とする。
第6の発明によれば、第1から第5の発明の作用に加えてさらに、各通信装置が、人体への電圧印加によって生じた電界を利用し、人体を信号伝送経路としており、各信号電極や各GND電極は人体の皮膚に直接に触れない非接触通信が可能である。よって、人体の汗等が通信に及ぼす影響は小さく、また、通信装置に接触しなくても、この通信装置に近づけば通信を行えるので、汎用性も高くなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、電界信号の強弱現象を歩行数の計測に利用しており、歩行数を確実に計測可能であり、且つ、ユーザにとって利便性の高い通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施例に係る第1,2通信装置の装着状態を示す図である。
【図2】(a)は図1の第1通信装置の外観斜視図であり、(b)は(a)の内部構造図である。
【図3】図1の第1通信装置の概略構成図である。
【図4】(a)は図1の第2通信装置の外観正面図であり、(b)は(a)の内部構造図である。
【図5】図1の第2通信装置の概略構成図である。
【図6】図1の第1,2通信装置による歩行数計測の説明図である。
【図7】(a)は図1の第1通信装置との間で通信を行う第3通信装置や外部機器の外観図であり、(b)は(a)の第3通信装置の概略構成図である。
【図8】図1の第1通信装置及び図6の第3通信装置による歩行数蓄積の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
当該形態の通信システム1は3つの通信装置で構成され、図1に示されるように、まず、第1,2通信装置2,50が人体60にそれぞれ装着されている。
詳しくは、本実施例の第1通信装置2は送受信機であり、人体60の衣服62のうち、例えば胴部分の衣服62に取り付けられている。
【0025】
より具体的には、この送受信機2は、図2(a)に示される如く箱型形状の筐体4を備え、筐体4は外部に表出する長方形の正面6を有している。この正面6の中央部分には、液晶の表示パネル29がスイッチとともに設けられており、各スイッチを押すと、各種の設定値の他、歩行数、歩行距離、歩行時間に加え、消費カロリーや脂肪燃焼量等の測定値がパネル29に表示される。
【0026】
この正面6の周縁には4つの側面10が人体60に向けて延設され、同じく長方形の背面8に連なっている。この背面8の適宜位置には図示しない取り付け具が設けられており、送受信機2を人体60の胴部分の衣服62に装着することができる(図1)。なお、この送受信機2は上記胴部分の他、手首、胸、或いは腰部分の衣服62にも装着可能である。
【0027】
一方、図2(b)に示されるように、この筐体4の内部には人体通信用の出力電極(第1信号電極)22、検出電極(第1信号電極)32や第1GND電極28がそれぞれ配置される。
前者の出力電極22や検出電極32は、筐体4の内部において衣服62側、つまり、人体60に対峙する背面8の近傍に配置され、この背面8の面積よりもやや小さな長方形の面を有している。
【0028】
これに対し、後者の第1GND電極28は、出力電極22や検出電極32を挟んで人体60とは反対側、つまり、正面6の近傍に配置される。本実施例の第1GND電極28は、表示パネル29の周囲を囲繞する略U字形状の面を有しており、当該パネル29の構成基板のGND端子に電気的に接続されている。
また、この筐体4の内部において、これら出力電極22や検出電極32と第1GND電極28との間には第1回路基板24が配置され、本実施例の第1GND電極28は、第1回路基板24のGND端子にも電気的に接続される。なお、本実施例の第1回路基板24は、一定の厚みを有した図示しない絶縁層に配置されており、出力電極22や検出電極32と第1GND電極28との距離が長く確保されている。
【0029】
ここで、本実施例の送受信機2は、人体60を信号伝送経路とし、第2通信装置50や図7にて後述する第3通信装置80との間で通信を行う。
本実施例の第2通信装置50は送信機であり、人体60のうち路面70の近傍、例えば靴64,64にそれぞれ取り付けられている。
まず、左足用の足下送信機50について説明すると、この送信機50は、左足用の靴64の外面65、足裏66、及び靴底68に分けてそれぞれ配置されている(図4)。
【0030】
より具体的には、足裏66は、図4(b)に示されるように、人体60の左足の裏に対峙しており、この足裏66には人体通信用の出力電極(第2信号電極)52が配置されている。本実施例の出力電極52は足裏66の面積と略同等の足型形状の面を有している。
一方、靴底68は路面70に対峙し、これら靴底68と出力電極52との間であって、靴底68の近傍には人体通信用の第2GND電極58が配置されている。本実施例の第2GND電極58も靴底68の面積と略同等の足型形状の面を有する。
【0031】
また、これら出力電極52と第2GND電極58との間には、一定の厚みを有した絶縁層57が設けられており、出力電極52と第2GND電極58との距離が長く確保されている。
外面65は、図4(a)に示されるように、左足の指、甲や踝の近傍部分を覆っており、この外面65の適宜位置には第2回路基板54が配置され、本実施例の第2GND電極58は、第2回路基板54のGND端子に電気的に接続されている。
【0032】
なお、右足用の足下送信機50についても、左足用の足下送信機50と同じ構造である。
ところで、送信機50の出力電極52は、図5に示されるように、送信側の第2制御部(第2回路基板)54に電気的に接続されている。
【0033】
本実施例の第2制御部54は、送信信号を例えば一定の割り込み周期で出力電極52に向けて出力しており、その際に、電位信号を発生させて出力電極52を駆動する。
また、この送信機50はメモリ56を有し、このメモリ56には、当該送信機50に固有のID(識別信号)が記憶されている。
【0034】
そして、第2制御部54は、通信情報、つまり、第1通信装置2との間で云えば固有のIDの送信信号を出力電極52に向けて出力する。
ここで、第2制御部54がプラスの電荷を与える電圧を出力電極52に印加した場合を想定すると、この出力電極52には電界が発生し、この電極52からの送信信号は衣服62を透過して人体60に達する。出力電極52近傍の人体60には、この出力電極52が正極になるため、マイナスの電荷が誘起される(電界結合)。
【0035】
これに伴い、第1通信装置2近傍の人体60にはプラスの電荷が誘起され、この人体60に電界が発生する。この人体60に発生した電界は検出電極32で検出される。
検出電極32は、図3に示される如く、送受信制御可能な第1制御部(第1回路基板)24に電気的に接続されている。検出電極32で検出された信号は、第1制御部24に設けられた受信回路で電気信号に変換される。また、この第1制御部24では、当該受信したIDが正規のIDであるか否かを判別している。そして、仮に正規のIDである旨を判定した場合には、当該送信機50が特定される。
【0036】
ところで、足下送信機50の出力電極52,52から人体60を介して送受信機2の検出電極32に至る電界結合が信号線になるが、各送信機50には、路面70であるアースを介して受信機2と電界結合する基準線があり、これら信号線及び基準線で1つの閉ループが形成されている。
【0037】
つまり、図3の第1GND電極28は路面70と電界結合し、図5の第2GND電極58も路面70と電界結合しており、本実施例で云えば負極になる。
そして、これら各送信機50,50の第2GND電極58,58から空気や路面70を介して受信機2の第1GND電極28に至る電界結合が基準線になる。
【0038】
本実施例の送信機50,50が上述の電界信号を送受信機2に向けてそれぞれ送信すると、図1や図6(a)に示される如く、靴底68,68がいずれも路面70に接している場合には、左足の送信機50で検出した電界信号の強度と、右足の送信機50で検出した電界信号の強度とは略同じ値になり、これらの強度に大きな差異は生じない。
【0039】
続いて、右足だけを前方に出し、図6(b)に示されるように、左足の靴底68は路面70に接するものの、この右足の靴底68が路面70から離れた場合には、左足の送信機50で検出した電界信号の強度が、右足の送信機50で検出した電界信号の強度よりも高くなり、これらの強度に大きな差異が生ずることになる。
【0040】
そして、送受信機2の第1制御部24が、図6(a)に示された右足の送信機50で検出した電界信号の強度と、図6(b)に示された右足の送信機50で検出した電界信号の強度との変化量が所定の閾値を超えている旨を判定した場合には、右足が歩行したものと擬制し、右足の歩行数を1つカウントアップし、メモリ26に記憶する。
【0041】
以後、左足の歩行数についても同様に、電界信号の強度の変化量から歩行数を1つずつカウントアップしてメモリ26に記憶すれば、人体60の歩行数を計測でき、送受信機2は、この計測結果から歩行数、歩行距離、歩行時間、消費カロリーや脂肪燃焼量の測定値を求め、メモリ26に記憶させる。
次に、このメモリ26に記憶された各種の設定値や測定値は、図7(a)に示されるパーソナルコンピュータ(外部機器)90に蓄積可能である。
【0042】
具体的には、このコンピュータ90は管理用受信機(第3通信装置)80に電気的に接続され、この管理用受信機80と上述した送受信機2との間では、人体60を信号伝送経路とした通信が行われている。
より詳しくは、送受信機2の第1制御部24は、通信情報、つまり、この管理用受信機80との間で云えば、メモリ26に記憶された固有のIDに加え、各種の設定値や測定値を変調した送信信号を出力電極22に向けて出力する(図3)。そして、上述した送信機50の出力電極52が正極になる本実施例で云えば、この送受信機2の出力電極22近傍の人体60には、このプラスの電荷が誘起される(電界結合)。
【0043】
これに伴い、管理用受信機80近傍の人体60にはマイナスの電荷が誘起され、この人体60に電界が発生する。
この管理用受信機80もまた人体通信用の検出電極(第3信号電極)82を有しており(図7(b))、人体60に発生した電界を検出する。
【0044】
検出電極82は受信側の第3制御部(第3回路基板)84に電気的に接続され、検出電極82で検出された信号は、第3制御部84に設けられた受信回路で電気信号に変換される。また、この制御部84では、当該検出信号を復調し、この受信したIDが正規のIDであるか否かを判別している。そして、仮に正規のIDである旨を判定した場合には、当該送受信機2が特定され、得られた各種の設定値や測定値の通信情報をコンピュータ90の例えばデータ管理ソフトにダウンロードさせる。
【0045】
なお、送受信機2と管理用受信機80との間においても、信号線及び基準線で1つの閉ループが形成される。すなわち、管理用受信機80は、人体通信用の第3GND電極88を有しているため、出力電極22から人体60を介して検出電極82に至る電界結合が信号線になるし、この第3GND電極88から空気や路面70を介して送受信機2の第1GND電極28に至る電界結合が基準線になる。これら第1GND電極28や第3GND電極88は本実施例で云えば負極になる。
【0046】
以上のように、本発明は、電界信号の強弱現象で歩行数を計測する点に着目したものである。
そして、本実施例によれば、この通信システム1は、人体60による路面70の歩行数を計測するにあたり、人体60を信号伝送経路としており、同一人体60に送受信機2及び足下送信機50,50が装着されている。
【0047】
詳しくは、送受信機2の検出電極32は、人体60と容量的に結合し、足下送信機50の出力電極52との間で電界信号の送信或いは受信が可能である。一方、この送受信機2の第1GND電極28は、路面70であるアースを介して足下送信機50の第2GND電極58と容量的に結合しており、これら全体で閉ループを形成する。
【0048】
そして、この送信機50,50は路面70の近傍にて人体60に装着され、人体60の歩行動作に連動可能な位置に配置されている。
よって、送信機50,50で検出した電界信号の強度は、図6に示されるように、これら送信機50,50と路面70との距離に応じて変化するため、この変化に基づいて歩行動作を認識できる。
【0049】
このように、電界信号の強弱現象を歩行数の計測に利用すれば、人体の振動を検知して歩行数を計測する振り子式の歩数計に比して、歩行以外で人体60に生じた振動のみでは歩行数として計測されず、また、人体の加速度を検知して歩行数を計測する加速度センサ式の歩数計に比して、3軸方向の加速度センサを用いなくても歩行数を確実に計測可能になる。
【0050】
この結果、これら送受信機2及び足下送信機50,50は、電界信号で通信する機能の他、歩行数を正確に計測する機能を有するので、上記振り子式や加速度センサ式の歩数計による計測結果を電界信号で単に外部機器に出力する場合に比して利便性が高く、しかも、この送受信機2は、計測した歩行数等をメモリ26に記憶する機能も有していることから、利便性がより高い。
【0051】
また、足下送信機50,50は、人体60に履かれる靴64,64に装着されていることから、人体60の歩行動作に確実に連動することができるし、しかも、出力電極52は第2GND電極58よりも人体60の近くに配置され、検出電極32についても、第1GND電極28よりも人体60の近くに配置されているので、通信効率が向上する。
【0052】
さらに、出力電極52は第2GND電極58との距離や、検出電極32と第1GND電極28との距離は、絶縁層57等を設けることで、より強い電界信号の強度が得られ、安定した通信が可能となる。また、送受信機2或いは送信機50として機能する第1,2回路基板24,54を絶縁層57等にそれぞれ配置すれば、送受信機2や送信機50の小型化が可能になる。
【0053】
さらに、管理用受信機80の検出電極82もまた、人体60と容量的に結合し、送受信機2の出力電極22との間で信号の受信或いは送信が可能であるし、この管理用受信機80の第3GND電極88も、路面70であるアースを介して送受信機2の第1GND電極28と容量的に結合しており、これら全体で閉ループを形成している。
【0054】
よって、RFIDや、短距離無線通信等を利用した従来に比して、図8に示されるように、人間が管理用受信機80に触れる、又は握る等の自然な動きで送信機2と管理用受信機80、ひいてはコンピュータ90とをつなぐことができ、読み取り機にかざす手間を省略でき、使い易い。また、無線は微弱な電波であっても数メートルは飛び、しかも全方位に飛ぶことから、通信情報が傍受され易いものの、本実施例の情報は、短距離無線通信等に比べ、人体60から外部に漏洩しにくく、セキュリティも確保される。さらに、通信距離が短いし、電波も放出しないため、送受信機2、足下送信機50、及び管理用受信機80の消費電力も少なくて済む。
【0055】
しかも、記憶された歩行数等をコンピュータ90のデータ管理ソフトにダウンロードすれば、各種の設定値や日々の歩行数等の測定値を蓄積でき、その管理が容易になる。
さらにまた、送受信機2は、計測した歩行数等を表示パネル29に表示する機能も有するので、利便性がさらに高くなるし、また、その第1GND電極28が、第1回路基板24のGND端子の他、パネル29の構成基板のGND端子とも接続され、第1GND電極28の拡大化が図られていることから、電界結合による電気容量も大きくでき、信号強度変化の検出精度の向上に寄与する。
【0056】
また、送信機50の第2GND電極58が、第2回路基板54のGND端子の他、靴底68の面積に相当する程度に拡大されているため、やはり電界結合による電気容量も大きくでき、この点も信号強度変化の検出精度の向上に寄与する。
さらに、送受信機2、足下送信機50、及び管理用受信機80が、人体60への電圧印加によって生じた電界を利用し、人体60を信号伝送経路としており、この方式の信号は衣服62や靴64等を透過できるので、出力電極22,52、各検出電極32,82や、各GND電極28,58,88は人体60の皮膚に直接に触れない非接触通信が可能である。
【0057】
よって、人体60の汗等が通信に及ぼす影響は小さく、また、送受信機2は、足下送信機50や管理用受信機80に接触しなくても、この足下送信機50や管理用受信機80と人体60を信号伝送路として通信を行えるので、汎用性も高くなる。
本発明は、上記実施例に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。例えば上記実施例の各構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。
【0058】
また、上述の実施例では、送受信機2を人体60の胴部分に、送信機50,50を靴64,64に配置した例が示されているが、電界信号の強度変化に基づいて歩行数を計測できる限り、本発明の第1通信装置と第2通信装置とは、胴部分に装着された送信機と足下部分に装着された受信機とで構成されていても良い。
【0059】
さらに、上記実施例の電界方式を利用すれば、汗等による通信への影響が小さく、衣服等を介した通信が可能となるため、汎用性も高くなるものの、人体が信号線及び基準線になる電流方式を利用しても良い。
【符号の説明】
【0060】
1 通信システム
2 送受信機(第1通信装置)
22 出力電極(第1信号電極)
26 メモリ
28 第1GND電極
29 表示パネル
32 検出電極(第1信号電極)
50,50 足下送信機(第2通信装置)
52,52 出力電極(第2信号電極)
58,58 第2GND電極
60 人体
64 靴
66 足裏
68 靴底
70 路面(アース)
80 管理用受信機(第3通信装置)
82 検出電極(第3信号電極)
88 第3GND電極
90 パーソナルコンピュータ(外部機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体を信号伝送路として該人体にそれぞれ装着された第1通信装置と第2通信装置との間で通信を行い、該人体による路面の歩行数を計測可能な通信システムであって、
前記第1通信装置は、前記人体と容量的に結合し、前記第2通信装置との間で信号の送信或いは受信が可能な第1信号電極と、前記路面であるアースを介して前記第2通信装置と容量的に結合する第1GND電極とを備える一方、
前記第2通信装置は、前記路面の近傍にて前記人体に装着されるとともに、前記人体と容量的に結合し、前記第1通信装置との間で信号の受信或いは送信が可能な第2信号電極と、前記アースを介して前記第1通信装置と容量的に結合する第2GND電極とを備えており、
前記第1通信装置は、該第2通信装置の信号強度の変化に基づいて前記歩行数を計測して記憶することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の通信システムであって、
前記第1信号電極は、前記人体に対峙して配置され、前記第1GND電極は、前記第1信号電極を挟んで前記人体とは反対側に配置されており、
前記第2通信装置は、前記人体に履かれる靴に装着されるとともに、前記第2信号電極は、前記人体に対峙する前記靴の足裏側に配置され、前記第2GND電極は、前記第2信号電極を挟んで前記人体とは反対側の前記靴の靴底側に配置されていることを特徴とする通信システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の通信システムであって、
前記人体を信号伝送経路として前記第1通信装置との間で通信を行うとともに、外部機器に接続された第3通信装置をさらに備え、
該第3通信装置は、前記人体と容量的に結合し、前記第1通信装置との間で信号の受信或いは送信が可能な第3信号電極と、前記アースを介して前記第1通信装置と容量的に結合する第3GND電極とを備え、前記記憶された歩行数を前記外部機器に蓄積させることを特徴とする通信システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の通信システムであって、
前記第1通信装置は、前記計測した歩行数を表示する表示パネルを有しており、前記第1GND電極は、該表示パネルの構成基板のGND端子と接続されていることを特徴とする通信システム。
【請求項5】
請求項2に記載の通信システムであって、
前記第2GND電極は、前記靴の靴底の面積に相当する大きさで形成されていることを特徴とする通信システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の通信システムであって、
前記各通信装置は、前記人体への電圧印加によって生じた電界を利用し、該人体を信号伝送経路として前記各通信装置との間で通信を行うことを特徴とする通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−219976(P2010−219976A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65420(P2009−65420)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)