説明

通信システム

【課題】このように集合建造物内部の信号ケーブルやテレビ用コネクタなどの内部インフラの性能不足に起因して生じうる地上デジタル放送の視聴の困難性を解消できる通信システムを提供する
【解決手段】第1建造物11に設置される送信装置20と、第1建造物11と対向する第2建造物12に設置される受信装置30と、を備え、送信装置20は、ミリ波の電波を出力可能な出力ユニット22と、出力ユニット22からの電波を送信可能な送信パラボラアンテナ21と、を有し、受信装置30は、送信パラボラアンテナ21からのミリ波の電波を受信可能な受信パラボラアンテナ31と、受信パラボラアンテナ31で受信したミリ波の電波を集中して入力する入力ユニット32と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
我が国においては、地上波テレビ放送が、従来の地上アナログ放送から地上デジタル放送へと切り替わりつつある。この地上デジタル放送は、2000年前後から研究開発が進められ、以降、各地域で順次地上アナログ放送と混在して地上デジタル放送が開始されている。このような中、2011年7月には、地上アナログ放送が終了し、地上デジタル放送へ完全に置き換わる予定となっている。
【0002】
テレビ局のいわゆるキー局および地域局は、送信する信号を、地上デジタル放送の規格に合わせたものとしている。これに必要な設備投資や設備変更を大体は終えている状態である。
【0003】
このような環境において、2011年7月の地上デジタル放送への全面切り替えに伴う難視聴地域の問題が取り沙汰されている。ビル影、山陰、密集住宅地域、過疎住宅地域における地上デジタル放送の電波が届きにくいといった問題に起因する。この難視聴地域における問題については、総務省や地方自治体などが共同して、難視聴地域の住宅等にアンテナやセットトップボックス(地上デジタル放送を受信するためのコンバーター)などを配布することで解決が目指されている。
【0004】
このように、地上デジタル放送への全面切り替えに伴う難視聴地域への対応は、ある程度は進んでいる。このため、2011年7月の地上デジタル放送への全面切り替えに伴う混乱は生じないものと一般には考えられている。
【0005】
しかしながら、メディア等では余り着目されていないが、マンション、病院、ビル、事業場、工場などの集合建造物においては、設置されているアンテナには、テレビ局や中継局からの地上デジタル放送の電波は到達できるが、集合建造物内部に信号を送信することができない問題が生じている。
【0006】
テレビ局や中継局から送信されるテレビ放送(アナログ、デジタル共に)の電波は、集合建造物に設置されているアンテナに到達する。アンテナで受信された電波は、アンテナから集合建造物内部に敷設された信号ケーブルを伝播して、各部屋に設置されているテレビ用のコネクタに到達する。テレビ用コネクタは、インピーダンス整合を行ったうえで、接続されているテレビに電波を到達させる。テレビは受け取った電波を復調することで、テレビ画像および音声を表示できる。
【0007】
ところが、築年数の経過している集合建造物に敷設されている信号ケーブルやテレビ用コネクタは、地上アナログ放送に対応したものであって、地上デジタル放送の電波の信号帯域、インピーダンス整合、波長などに対応が不十分である問題がある。
【0008】
しかしながら、このような集合建造物に敷設されている信号ケーブルやテレビ用コネクタを取り替えることは、大掛かりな工事を必要とするので現実的ではない。このような建造物内部のインフラに起因する地上デジタル放送の視聴の困難性が、一般には余り知られていないが、緊急の課題となりつつある。
【0009】
地上デジタル放送の電波を再送信するには、ミリ波を用いることが好適であるが、ミリ波の受信技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11‐150416公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここで、特許文献1は、衛星放送に対応することしかできず、地上デジタル放送のような地上波テレビには適用は困難である。
【0012】
一方、集合建造物に設置されたアンテナは、地上デジタル放送の電波を受信できる。この受信した地上デジタル放送の電波を、アンテナからミリ波に変換して、集合建造物の各部屋のベランダに設置された受信ユニットに対して送信する技術も提案されている。このようなミリ波による地上デジタル放送の電波の送信ユニットは、集合建造物の屋上から下向きにミリ波を送信する。集合建造物の各部屋のベランダには、ミリ波の受信ユニットが設置されている。ミリ波の受信ユニットは、上向きに設置されており、屋上から下向きに送信されるミリ波を受信する。
【0013】
しかしながら、ミリ波は、波長が短いので、送信ユニットおよび受信ユニットとの送受信対向性の調整が非常に困難である。また、送信ユニットおよび受信ユニット共に屋外に設置されることになるので、風雨、野鳥などの外部要因によって送受信調整が狂うこともある。また、受信ユニットを上向きに設置することになると、受信ユニットに雨水が溜まることもあり、受信ユニットの劣化や胡椒といった問題もある。雨水が溜まることで、受信ユニットの受信性能も悪くなりうる。
【0014】
また、屋上に送信ユニットを設置する際には、各部屋のベランダから突出して設置されている受信ユニットと対向するように設置する必要がある。このため設置工事においては屋上から身を乗り出して下方を確認する作業が必要となり、作業の困難性や危険性も生じうる。この結果、設置作業に要するコストも高くなってしまう問題がある。
【0015】
このように、従来技術においては、地上デジタル放送への全面切り替えで問題となりうる、集合建造物内部のインフラに起因する地上デジタル放送の視聴困難性を解決できなかった。
【0016】
また、設置における困難性やコスト高によって、地上デジタル放送の視聴困難を解消する対策工事が遅れてしまう問題も生じうる。この結果、2011年7月における全面切り替えに伴って種々の社会的問題が発生しうる。
【0017】
本発明は、このように集合建造物内部の信号ケーブルやテレビ用コネクタなどの内部インフラの性能不足に起因して生じうる地上デジタル放送の視聴の困難性を解消できる通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の通信システムは、第1建造物に設置される送信装置と、第1建造物と対向する第2建造物に設置される受信装置と、を備え、送信装置は、ミリ波の電波を出力可能な出力ユニットと、出力ユニットからの電波を送信可能な送信パラボラアンテナと、を有し、受信装置は、送信パラボラアンテナからのミリ波の電波を受信可能な受信パラボラアンテナと、受信パラボラアンテナで受信したミリ波の電波を集中して入力する入力ユニットと、を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の通信システムは、集合建造物の屋上から下方に対して電波を送信する必要がなくなり、設置工事における危険性および困難性が低減される。
【0020】
また、集合建造物に対向する建物に設置された送信装置から送信される電波を、受信すればよいので、集合建造物に設置された受信装置は、容易に電波を受信できる。また、送信装置および受信装置は、パラボラアンテナを備えるので、一定距離の離隔があっても、電波を送受信できる。
【0021】
これらの結果、通信システムは、集合建造物内部のインフラに依存して地上デジタル放送の視聴が困難である問題を解決できる。
【0022】
加えて、本発明の通信システムは、地上デジタル放送だけでなく、地域放送や地域通信、あるいはセキュリティ信号の送受信などにおいても、内部インフラの問題に依存せず、電波の送受信を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1との比較としての従来技術での通信システムの全体図である。
【図2】本発明の実施の形態1における通信システムの概要図である。
【図3】本発明の実施の形態1における送信装置と受信装置との動作説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1における送信装置の説明図である。
【図5】本発明の実施の形態1における受信装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第1の発明に係る通信システムは、第1建造物に設置される送信装置と、第1建造物と対向する第2建造物に設置される受信装置と、を備え、送信装置は、ミリ波の電波を出力可能な出力ユニットと、出力ユニットからの電波を送信可能な送信パラボラアンテナと、を有し、受信装置は、送信パラボラアンテナからのミリ波の電波を受信可能な受信パラボラアンテナと、受信パラボラアンテナで受信したミリ波の電波を集中して入力する入力ユニットと、を有する
【0025】
この構成により、内部インフラの整備が遅れている集合建造物において、簡易な設置作業によって、地上デジタル放送などの視聴が可能となる。
【0026】
本発明の第2の発明に係る通信システムでは、第1の発明に加えて、出力ユニットは、送信パラボラアンテナの端部に設置され、入力ユニットは、受信パラボラアンテナの端部に設置される。
【0027】
この構成により、出力ユニットは電波の送信を妨げず、入力ユニットは電波の受信を妨げない。
【0028】
本発明の第3の発明に係る通信システムでは、第2の発明に加えて、出力ユニットは、送信パラボラアンテナの端部から、送信パラボラアンテナの中央部にミリ波の電波を出力し、送信パラボラアンテナは、そのパラボラ面を用いてミリ波の電波を反射して送信する。
【0029】
この構成により、通信システムは、より遠方に向けてミリ波の電波を送信できる。
【0030】
本発明の第4の発明に係る通信システムでは、第2又は第3の発明に加えて、受信パラボラアンテナは、送信パラボラアンテナからのミリ波の電波を、そのパラボラ面の中央から端部に反射させ、入力ユニットは、受信パラボラアンテナの中央から反射されたミリ波の電波を入力する。
【0031】
この構成により、通信システムは、高い精度で、ミリ波の電波を受信できる。加えて、受信した電波を、確実に受像機などへ伝播できる。
【0032】
本発明の第5の発明に係る通信システムでは、第1から第4のいずれかの発明に加えて、第1建造物および第2建造物の少なくとも一方は、集合建造物である。
【0033】
この構成により、内部インフラの整備の遅れた集合住宅などにおいて、通信システムは、高い精度でミリ波の電波を送受信できる。
【0034】
本発明の第6の発明に係る通信システムでは、第1から第5のいずれかの発明に加えて、受信装置は、第2建造物の各戸に設置される。
【0035】
この構成により、受信装置は、必要な各部屋に、必要なデータ受信を可能とさせる。
【0036】
本発明の第7の発明に係る通信システムでは、第1から第6のいずれかの発明に加えて、ミリ波の電波は、地上デジタル放送、地域テレビ放送、地域無線放送およびセキュリティ信号の少なくとも一つのデータを含む。
【0037】
この構成により、通信システムは、視聴や受信が困難となりやすい、様々なデータを、高い精度で送受信できる。
【0038】
本発明の第8の発明に係る通信システムでは、第1から第7のいずれかの発明に加えて、出力ユニットおよび入力ユニットは、送信パラボラアンテナおよび受信パラボラアンテナにおいて、相互に対応する位置に設置される。
【0039】
この構成により、送受信の精度が更に高まる。
【0040】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態について説明する。
【0041】
(実施の形態1)
【0042】
実施の形態1について説明する。
【0043】
まず、本発明の通信システムの比較としての、従来技術でのミリ波による電波送受信を説明する。図1は、本発明の実施の形態1との比較としての従来技術での通信システムの全体図である。
【0044】
建造物1は、マンションや団地などの集合住宅(集合建造物の一つ)である。建造物1は、複数の部屋(住居)2を備えている。複数の部屋2のそれぞれは、ベランダや窓を有しており、このベランダや窓から外に張り出すように、ミリ波の電波を受信する受信ユニット4が設置されている。また、建造物1の屋上5には、地上デジタル放送などのデータを含むミリ波の電波を送信する送信ユニット3が設置されている。送信ユニット3からの電波を受信ユニット4が受信する。
【0045】
なお、図1においては、建造物1は、縦方向に3列の部屋2を備えており、それぞれのベランダや窓に受信ユニット4が備えられている。また、この縦方向の列に合わせて、建造物1の屋上5に、複数の送信ユニット3が設置される。このため、建造物1の左側の列の部屋2のそれぞれには、受信ユニット4Aが設置されている。この受信ユニット4Aに対応して、送信ユニット3Aが設置されている。
【0046】
また、建造物1の中央の列の部屋2のそれぞれには、受信ユニット4Bが設置されている。この受信ユニット4Bに対応して、送信ユニット3Bが設置されている。同様に、建造物1の右列の部屋2のそれぞれには、受信ユニット4Cが設置されている。この受信ユニット4Cに対応して、送信ユニット3Cが設置されている。
【0047】
送信ユニット3と受信ユニット4とは、非常に狭い範囲でしか、電波の送信および受信が行えない。加えて、送信ユニット3は、屋上5に設置されて、設置されている受信ユニット4に対して下向きに電波を送信する。逆に、受信ユニット4は、上向きからに電波を受信する必要がある。矢印A,B、Cは、送信ユニット3から受信ユニット4への電波の送信方向を示す。このような態様のために、受信ユニット4は、送信ユニット3からの電波を受信することが難しく、受信制度は著しく悪くなる。加えて、送信ユニット3の個数も多くなり、コストも上がる。加えて、送信ユニット3および受信ユニット4の設置においては、屋上5やベランダから身を乗り出して作業する必要があるので、作業における危険性も高まる。
【0048】
比較例としての従来技術の通信システムは、図1を用いて説明したように、様々な問題を有している。
【0049】
(全体概要)
本発明の実施の形態1における通信システムの全体概要について説明する。
【0050】
図2は、本発明の実施の形態1における通信システムの概要図である。図2は、通信システム10を行う全体を示している。
【0051】
通信システム10は、第1建造物11に設置される送信装置20と、第1建造物11と対向する第2建造物12に設置される受信装置30と、を備える。第2建造物12は、集合住宅などの集合建造物である。第1建造物11も、集合建造物であることが好適であるが、第1建造物11は、設置している送信装置20から電波を送信する役割を担うので、集合建造物でなくとも、一戸建て住宅のような建造物であってもよい。
【0052】
第1建造物11と第2建造物12とは、対向している。ただし、実際に対向する必要があるのは、送信装置20と受信装置30であるので、第1建造物11と第2建造物12とが、並列するように対向する必要はなく、第1建造物11に設置される送信装置20と第2建造物12に設置される受信装置30とが、向き合うことができればよい。
【0053】
このため、例えば複数の集合住宅が並ぶ団地や集合マンションのように、ある建造物と隣接する建造物とが、相互に対向するような場合には、ある建造物が第1建造物11となり、隣接する建造物が第2建造物12となる。あるいは、マンションとオフィスビルが隣接する場合には、オフィスビルが第1建造物11となりマンションが第2建造物12となる。この場合には、マンションが備える各部屋に、地上デジタル放送などのミリ波の電波を送信したいからである。あるいは、郊外型マンションのように、マンションだけが孤立して建っている場合には、このマンションの近傍に建っている一戸建て住宅、塔、電信柱、などが、第1建造物11となり、このマンションが第2建造物12となる。
【0054】
このように、第1建造物11は、ミリ波の電波を送信できる送信装置20を設置可能な建造物であって、第2建造物12は、内部インフラに問題を有しているために、各部屋へのミリ波の電波の伝播が困難である集合住宅などである。すなわち、第2建造物12は、各部屋に受信装置30を備えて、送信装置20からの電波を受信する。
【0055】
通信システム10における送信装置20および受信装置30とのやり取りを図3を用いて説明する。図3は、本発明の実施の形態1における送信装置と受信装置との動作説明図である。
【0056】
送信装置20は、ミリ波の電波を出力可能な出力ユニット22と、この出力ユニット22から出力される電波を反射させて、対向する方向に電波を送信可能な送信パラボラアンテナ21を備えている。また、ミリ波の電波は、テレビ局や中継局からの電波を受信した集合アンテナ24から通信ケーブル23を介して、出力ユニット22に伝播される。このとき、集合アンテナ24が受信した電波は、ミリ波ではなく、他の周波数に基づく電波であることが多いが、出力ユニット22は、他の周波数に基づく電波をアップコンバージョンして、高い周波数であるミリ波の周波数に基づく電波を生成して出力する。
【0057】
例えば、送信装置20が送信するミリ波の電波は、地上デジタル放送のデータを含んでいる。この場合には、テレビ局や中継局から放送される地上デジタル放送の電波を、集合アンテナ24が受信し、この受信した電波を通信ケーブル23が出力ユニット22に送信する。出力ユニット22は、この電波をミリ波の周波数にアップコンバージョンした上で、ミリ波の電波を出力する。このとき、出力ユニット22は、送信パラボラアンテナの中央に向けてミリ波の電波を出力する。
【0058】
送信パラボラアンテナ21は、放物面すなわちパラボラ面を有しており、このパラボラ面の中央に出力されたミリ波の電波は、対向する受信パラボラアンテナ31に電波を送信できる。このとき、送信パラボラアンテナ21は、パラボラ面を用いて電波を送信できるので、従来技術の送信ユニットに比較して、非常に遠方まで電波を送信することができる。
【0059】
受信装置30は、送信パラボラアンテナ21からのミリ波の電波を受信可能な受信パラボラアンテナ31と、この受信パラボラアンテナ31で反射されたミリ波の電波を入力する入力ユニット32と、を備える。受信パラボラアンテナ31は、送信パラボラアンテナ21と同様にパラボラ面を備えている。送信パラボラアンテナ21から送信されたミリ波の電波は、受信パラボラアンテナ31の中央付近で反射し、中央付近から端部に向けて到達する。
【0060】
入力ユニット32は、受信パラボラアンテナ31の端部に設置されており、受信パラボラアンテナ31の中央から反射されたミリ波の電波を受信する。この受信したミリ波の電波を、入力ユニット32は、入力させて、通信ケーブル33を通じて、受像機34に伝播させる。受像機34は、必要な復調を行って、電波に含まれている地上デジタル放送などのデータを表示できる。
【0061】
このとき、受信装置30も、パラボラ面を有する受信パラボラアンテナ31を備えているので、送信パラボラアンテナ21から送信された遠距離からの電波を容易に受信できる。このため、受信装置30は、高い精度でミリ波の電波を受信できる。このため、ミリ波の電波(言い換えると、地上デジタル放送のデータを含む電波)を受信する必要のある第2建造物12に設置された受信装置30は、離隔している(場合によっては、若干遠方である)第1建造物11からのミリ波の電波を高い精度で受信できる。
【0062】
第2建造物12は、複数の部屋を有しており、各部屋は、この受信装置30を備えている。各部屋の受信装置30は、上述のように、送信装置20から送信された電波を受信できる。この結果、第2建造物12内部のインフラ(通信ケーブルやテレビ用コネクタ)の不備があるとしても、受信装置30によって各部屋は、地上デジタル放送を受信して視聴することができる。
【0063】
このように、地上波テレビが、アナログから地上デジタル放送に全面的に移管されるタイミングの前後で生じうる、内部インフラの不備によって視聴が困難となる集合住宅や事業場などの集合建造物においても、通信システム10は、地上デジタル放送の視聴を可能とする。加えて、内部インフラの再整備という、困難かつ高コストな対応を不要とする。
【0064】
さらには、送信パラボラアンテナ21を備える送信装置20および受信パラボラアンテナ31を備える受信装置30は、第1建造物11の屋上や第2建造物12のベランダなどに簡単に設置できる。特に送信装置20は、第1建造物11の屋上から、外にはみ出した上で下向きに設置する必要がないので、作業の安全性も高い。
【0065】
次に、各部の詳細について説明する。
【0066】
(送信装置)
送信装置20は、上述の通り、送信パラボラアンテナ21と出力ユニット21を備える。ミリ波の電波を受信する必要のある第2建造物12に対向する第1建造物11に、一つの送信装置20が備わればよい。もちろん、ミリ波の電波を送信する役割を担うことができればよいので、複数の送信装置20が、第1建造物11に設置されても良い。複数の送信装置20が設置されることで、送信されるミリ波の電波の電力および送信範囲が高まるため、受信精度が向上する。
【0067】
但し、複数の送信装置20が設置される場合には、ある送信装置20から送信される電波と、別の送信装置20から送信される電波との干渉やマルチパスといった問題が生じないように、複数の送信装置20を設置する必要がある。
【0068】
送信パラボラアンテナ21は、放物面であるパラボラ面を有するアンテナである。但し、送信パラボラアンテナ21は、出力ユニット22から出力されるミリ波の電波を反射させて受信装置30に送信できれば良い。このため、送信パラボラアンテナ21は、アンテナとしての機能を有していなくてもよい。すなわち、反射能力だけでも良い。しかしながら、ミリ波の電波を遠方まで送信するには、必要最小限の電力を必要とするので、送信パラボラアンテナ21そのものが電力を増幅して出力できるようにする必要がある。この場合には、送信パラボラアンテナ21は、電力の供給を受けて、出力ユニット22からの電波を増幅して送信することになるので、送信パラボラアンテナ21は、アンテナとしての機能も備えることになる。
【0069】
送信パラボラアンテナ21は、パラボラ面を備えていればよいので、送信装置20用に製作されても良いし、汎用のパラボラアンテナを流用することでも良い。例えば、衛星放送を受信できるパラボラアンテナを、送信パラボラアンテナ21として利用しても良い。
【0070】
出力ユニット22は、集合アンテナ24などから得られた信号を、ミリ波である周波数の電波に変換する。もちろん、出力ユニット22は、周波数を変換する必要がなければ変換を行わない。ミリ波の周波数への変換は、アップコンバージョン機能を用いる。出力ユニット22は、ミリ波の周波数に変換した電波を、送信パラボラアンテナ21に向けて出力する。このとき、送信パラボラアンテナ21の中央部に電波を出力する。送信パラボラアンテナ21は、中心部で出力ユニット22からの電波を受けることで、パラボラ面の反射を用いて、遠方に向けてミリ波の電波を送信できる。
【0071】
このような送信装置20によるミリ波の電波の送信のために、出力ユニット22は、送信パラボラアンテナ21の端部に設置されるのが好ましい。加えて、出力ユニット22の電波の出力方向が、出力ユニット22が設置されている送信パラボラアンテナ21の端部から送信パラボラアンテナ21の中央部に向けてであることが好ましい。これらは、図4に示されるとおりである。
【0072】
図4は、本発明の実施の形態1における送信装置の説明図である。図4(A)は、送信装置20の正面図を示しており、図4(B)は、送信装置20の側面図を示している。図4から明らかな通り、送信パラボラアンテナ21は、パラボラ面を備えている。
【0073】
また、出力ユニット22は、送信パラボラアンテナ21の端部に設置される。端部に設置された上で、電波を出力する出力面は、送信パラボラアンテナ21の中央部を向いている。この構造により、出力ユニット22は、送信パラボラアンテナ21の中央に向けてミリ波の電波を出力できる。矢印Fは、出力ユニット22から送信パラボラアンテナ21に向けて出力される電波の方向を示している。
【0074】
矢印Fに示されるように、出力ユニット22からの電波は、送信パラボラアンテナ21の中央部に向けて伝播する。この結果、送信パラボラアンテナ21は、中央部での反射によって、受信装置30に向けて、ミリ波の電波を送信できる。送信パラボラアンテナ21からのミリ波の電波の送信は、矢印Gに示されるとおりである。送信パラボラアンテナ21は、矢印Gのように、中央部での反射を用いて、ミリ波の電波を対向する方向に送信する。送信された電波は、受信装置30に到達する。
【0075】
このように、出力ユニット22が、送信パラボラアンテナ21の端部に設置されることで、送信パラボラアンテナ21が、反射させた電波を送信する際の障害とならないメリットもある。ミリ波となる周波数は、障害物を回りこんで伝播させるのが難しい帯域であるので、送信パラボラアンテナ21の中央付近に出力ユニット22が設置されないことも高いメリットをもたらす。
【0076】
以上のように、送信装置20は、送信パラボラアンテナ21と、送信パラボラアンテナ21の端部に取り付けられる出力ユニット22と、を備えることで、対向する第2建造物12に備わる受信装置30に、ミリ波の電波を送信できる。
【0077】
(受信装置)
次に、受信装置30について説明する。
【0078】
受信装置30は、上述の通り、受信パラボラアンテナ31と入力ユニット31を備える。ミリ波の電波を受信する必要のある第2建造物12が備える各部屋に、一つの受信装置30が設置される。各部屋において、受信したミリ波の電波を用いて、地上デジタル放送を視聴する必要があるからである。もちろん、複数の部屋に共通となる受信装置30が設置されても良い。なお、本明細書で記載する部屋とは、第2建造物12がマンションや団地などの集合住宅の場合には、各住居を示す。あるいは、第2建造物12が病院や事業場である場合には、ミリ波の電波を復調する単位となる範囲を基準とする。
【0079】
第2建造物12に設置される受信装置30は、第1建造物11に設置される送信装置20と対応する。
【0080】
受信パラボラアンテナ31は、放物面であるパラボラ面を有するアンテナである。但し、受信パラボラアンテナ31は、入力ユニット32へ、ミリ波の電波を反射する役割を果たせればよい。このため、受信パラボラアンテナ31は、アンテナとしての機能を有していなくてもよい。すなわち、反射能力だけでも良い。
【0081】
しかしながら、ミリ波の電波を受信する精度を高めるためには、反射に加えて、実際のアンテナ受信を行って入力ユニット32に反射させることが好ましい。このため受信パラボラアンテナ31は、アンテナ機能を有していることもよい。
【0082】
受信パラボラアンテナ31は、パラボラ面を備えていればよいので、受信装置30用に製作されても良いし、汎用のパラボラアンテナを流用することでも良い。例えば、衛星放送を受信できるパラボラアンテナを、受信パラボラアンテナ31として利用しても良い。
【0083】
入力ユニット32は、受信パラボラアンテナ31から反射される電波を受信して入力する。受信パラボラアンテナ31は、パラボラ面を有しており、パラボラ面の中央部に到達した電波は、パラボラ面に従って反射する。パラボラ面は、中央部から受信パラボラアンテナ31の端部に反射する。入力ユニット32は、受信パラボラアンテナ31の端部に設置されているので、反射された電波を受信できる。
【0084】
入力ユニット32は、受信した電波を入力し、通信ケーブル33を通じて受像機34に伝播させる。このとき、入力ユニット32は、受像機34が受信可能な状態とするために、ミリ波の周波数をより低い周波数にダウンコンバージョンさせることも好適である。ダウンコンバージョンによって、中間周波数とされた上で、受像機34に信号が入力し、受像機34は、復調および表示を行う。
【0085】
ミリ波の電波が、地上デジタル放送のデータを含む場合には、受像機34は、地上デジタル放送の動画および音声を表示する。あるいは、ミリ波の電波が地域テレビ放送のデータを含む場合には、受像機34は、地域テレビ放送を表示する。
【0086】
上述のように、入力ユニット32は、受信パラボラアンテナ31の端部に設置されることが好ましい。図5は、本発明の実施の形態1における受信装置の説明図である。図5(A)は、受信装置30の正面図を示しており、図5(B)は、受信装置30の側面図を示している。図5から明らかな通り、受信パラボラアンテナ31は、パラボラ面を備えている。
【0087】
入力ユニット32は、受信パラボラアンテナ31の端部に設置される。受信パラボラアンテナ31は、送信装置20から送信された電波を受ける。このとき、パラボラ面の中央部でより多くの電波を受けやすい。受信パラボラアンテナ31は、パラボラ面を有しているので、中央部に到達した電波を端部に向けて反射する。矢印Hは、この中央部から端部に向けた電波の反射を示している。
【0088】
入力ユニット32は、受信パラボラアンテナ31の端部に設置されている。また、入力ユニット32の受信面が受信パラボラアンテナ31の中央部を向いている。この結果、矢印Iに示されるように、受信パラボラアンテナ31の中央部から端部に向けて反射してくるミリ波の電波を、入力ユニット32は容易に受けることができる。入力ユニット32は、受けた電波を、入力して通信ケーブル33に伝播させる。このように、入力ユニット32が、受信パラボラアンテナ31の端部に設置されることで、入力ユニット32は、高い精度で電波を受信して入力することができる。
【0089】
加えて、入力ユニット32が、受信パラボラアンテナ31の端部に設置されることで、受信パラボラアンテナ31が、送信装置20から送信される電波を受信する際の障害物とならないメリットもある。ミリ波である周波数は、障害物を回りこんで伝播させるのが難しい帯域であるので、受信パラボラアンテナ31の中央付近に入力ユニット32が設置されないことも高いメリットをもたらす。
【0090】
以上のように、受信装置30は、受信パラボラアンテナ31と、受信パラボラアンテナ31の端部に取り付けられる入力ユニット32と、を備えることで、対向する第1建造物11に備わる送信装置20から、ミリ波の電波を受信できる。
【0091】
このような受信装置30が、第2建造物12の各部屋に設置されることで、内部インフラの整備が遅れていることによって、地上デジタル放送の視聴が困難である集合住宅などでも、対向する第1建造物11からの電波を受けて地上デジタル放送の視聴が容易となる。
【0092】
また、送信装置20および受信装置30は、対向する建造物のそれぞれに設置するだけでよいので、設置作業における危険性やコストも低減できる。
【0093】
以上、実施の形態1における通信システム10は、内部インフラの遅れによって地上デジタル放送の視聴が困難な建造物においても、簡単な工事によって地上デジタル放送を視聴できるようになる。
【0094】
(実施の形態2)
【0095】
次に、実施の形態2について説明する。
【0096】
実施の形態2では、通信システム10における他の態様について説明する。
【0097】
(通信する電波の態様)
ミリ波の電波は、地上デジタル放送、地域テレビ放送、地域無線放送およびセキュリティ信号の少なくとも一つのデータを含む。
【0098】
現在の社会問題としては、2011年7月に全面的な切り替えとなる地上デジタル放送の視聴が優先課題である。しかしながら、各地域においては、地域テレビ放送や地域無線放送が放送されている。このような放送においても、建造物内部の通信ケーブルやコネクタなどの整備の遅れによって、十分に視聴できない家庭もある。当然ながら、建造物内部の通信ケーブルやコネクタなどの内部インフラを取り替えることは、コストおよび各部屋の同意などの面から現実的ではない。
【0099】
このような集合建造物においても、実施の形態1で説明した通信システム10が適用される。
【0100】
すなわち、第1建造物11に送信装置20が設置される。更に、集合住宅や事業場のような集合建造物である第2建造物12に受信装置30が設置される。送信装置20は、集合アンテナ、優先ケーブルなどの手段によって得た地域テレビ放送や地域無線放送のデータを得る。このデータをミリ波の周波数に変換した上で、受信装置30に向けて送信する。このとき、第1建造物11と第2建造物12とは対向しているので、送信装置20と受信装置30とも対向する。この結果、実施の形態1で説明したように、受信装置30は、送信装置20からの電波を受信できる。
【0101】
受信装置30は、地域テレビ放送や地域無線放送を受信でき、受信装置30を設置している家庭は、これら地域テレビ放送などを視聴できる。
【0102】
また、警報やセキュリティ信号などを、通信システム10が送受信することで、内部インフラの整備が遅れている集合建造物において、これらの信号を受け取ることができるようになる。結果として、様々なセイフティネットが、各家庭において活用されるようになる。
【0103】
(出力ユニットと入力ユニットの態様)
出力ユニット22と入力ユニット32とのそれぞれは、送信パラボラアンテナ21および受信パラボラアンテナ31のそれぞれにおいて、相互に対応する位置に設置される。
【0104】
すなわち、図3に示されるように、出力ユニット22は、送信パラボラアンテナ21の上部側端部に設置されると共に、入力ユニット32は、受信パラボラアンテナ31の上部側端部に設置される。出力ユニット22と入力ユニット32とのそれぞれが、対応する位置に設置されることで、送信装置20と受信装置30との電波の反射経路が同様になるので、設置における受信精度の調整が容易になる。
【0105】
もちろん、出力ユニット22と入力ユニット32とのそれぞれが、送信パラボラアンテナ21と受信パラボラアンテナ31とのそれぞれにおいて、対応しない異なる位置に設置されてもよい。
【0106】
また、送信パラボラアンテナ21と受信パラボラアンテナ31とは、異なる大きさを有していてもよいし、同一の大きさを有していてもよい。出力ユニット22と入力ユニット32とのそれぞれは、市販のミリ波の電波送受信ユニットを利用しても良い。
【0107】
以上のように、実施の形態2における通信システム10は、様々なデータ放送の受信を容易とする。加えて、受信精度を更に高めることができる。
【0108】
以上、実施の形態1〜2で説明された通信システムは、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0109】
1 建造物
2 部屋
3 送信ユニット
4 受信ユニット
5 屋上
10 通信システム
11 第1建造物
12 第2建造物
20 送信装置
21 送信パラボラアンテナ
22 出力ユニット
23 通信ケーブル
24 集合アンテナ
30 受信装置
31 受信パラボラアンテナ
32 入力ユニット
33 通信ケーブル
34 受像機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1建造物に設置される送信装置と、
前記第1建造物と対向する第2建造物に設置される受信装置と、を備え、
前記送信装置は、
ミリ波の電波を出力可能な出力ユニットと、
前記出力ユニットからの電波を送信可能な送信パラボラアンテナと、を有し、
前記受信装置は、
前記送信パラボラアンテナからのミリ波の電波を受信可能な受信パラボラアンテナと、
前記受信パラボラアンテナで受信したミリ波の電波を集中して入力する入力ユニットと、を有する、通信システム。
【請求項2】
前記出力ユニットは、前記送信パラボラアンテナの端部に設置され、前記入力ユニットは、前記受信パラボラアンテナの端部に設置される、請求項1記載の通信システム。
【請求項3】
前記出力ユニットは、前記送信パラボラアンテナの端部から、前記送信パラボラアンテナの中央部にミリ波の電波を出力し、前記送信パラボラアンテナは、そのパラボラ面を用いてミリ波の電波を反射して送信する、請求項2記載の通信システム。
【請求項4】
前記受信パラボラアンテナは、前記送信パラボラアンテナからのミリ波の電波を、そのパラボラ面の中央から端部に反射させ、前記入力ユニットは、前記受信パラボラアンテナの中央から反射されたミリ波の電波を入力する、請求項2又は3記載の通信システム。
【請求項5】
前記第1建造物および前記第2建造物の少なくとも一方は、集合建造物である、請求項1から4のいずれか記載の通信システム。
【請求項6】
前記受信装置は、前記第2建造物の各戸に設置される、請求項1から5のいずれか記載の通信システム。
【請求項7】
前記ミリ波の電波は、地上デジタル放送、地域テレビ放送、地域無線放送およびセキュリティ信号の少なくとも一つのデータを含む、請求項1から6のいずれか記載の通信システム。
【請求項8】
前記出力ユニットおよび前記入力ユニットは、前記送信パラボラアンテナおよび前記受信パラボラアンテナにおいて、相互に対応する位置に設置される、請求項1から7のいずれか記載の通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−119929(P2012−119929A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267732(P2010−267732)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(591235452)日田アンテナ工事株式会社 (1)
【Fターム(参考)】