説明

通信システム

【課題】 ハードウェアを変更することなく、装置間の制御/監視信号の種類を増やすことができる通信システムを提供する。
【解決手段】 防護中継装置4から中央装置1への制御/監視信号に5C2トーン信号用いる場合に、防護中継装置4は、最初に「信号なし」区間を設け、次に5C2トーン信号を送信する「信号1」区間を設け、更に当該5C2トーン信号と同一又は異なる5C2トーン信号送信する「信号2」区間を設けて通信を行い、中央装置1は、「信号なし」区間、「信号1」区間の5C2トーン信号の内容、「信号2」区間の5C2トーン信号の内容を解析し、信号1と信号2の順番による組み合わせによって装置間の状態を判断する通信システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車等の移動体無線通信を行う通信システムに係り、特に、ハードウェアを変更することなく、制御/監視信号の種類を増やすことができる通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来の列車無線の通信システムでは、装置間の制御/監視信号として5C2トーンを使用しているものがある。
5C2トーンとは、5つの周波数の中から2波を選択して合成し、2波合成の信号を用いて送受信を行うものである。
【0003】
[共用システムの5C2コード:図7]
次に、A社・B社共用システムの5C2コードについて図7を参照しながら説明する。図7は、共用システムの5C2コードテーブルを示す図である。
図7では、「f4+f5」がA社の「防護受信」を示し、「f1+f2」がB社の「防護受信」を示し、その他は共用のコードとなっている。
このように、2波を合成した信号によって特定の意味を持たせるようになっている。
【0004】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2001−278049号公報「列車無線通信システム」(株式会社日立国際電気)[特許文献1]がある。
特許文献1には、列車の移動無線機が列車番号を含む位置登録情報を無線基地局に送信し、無線基地局が中央装置に位置登録信号を送信し、中央装置が列車番号と基地局を対応付けて指令卓に表示して通話を行う列車を容易に認識できることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−278049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の通信システムでは、装置間の制御/監視信号として5C2トーンを使用しているので、5波から2波を選択する関係で、信号の種別として10種類しか使用することができず、信号の種別に制約を受けるという問題点があった。
【0007】
特に、図7に示したような共用システムでは、10種類の信号の種別では装置間の制御/監視の信号として十分に有効活用できないものとなっていた。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、ハードウェアを変更することなく、装置間の制御/監視信号の種類を増やすことができる通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、装置間の制御/監視信号に複数の周波数信号から選択した周波数信号を組み合わせて合成した信号を用いて通信を行う通信システムであって、信号を送信しない区間を設け、合成した信号を送信する第1の区間を設け、当該合成した信号と同一又は異なる組み合わせの合成した信号を送信する第2の区間を設けて通信を行う中継装置と、信号を送信しない区間、第1の区間の信号、第2の区間の信号を解析し、第1の区間の信号と第2の区間の信号との順番による組み合わせによって装置間の状態を判断する中央装置とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、装置間の制御/監視信号に複数の周波数信号から選択した周波数信号を組み合わせて合成した信号を用いて通信を行う通信システムであって、中継装置が、信号を送信しない区間を設け、合成した信号を送信する第1の区間を設け、当該合成した信号と同一又は異なる組み合わせの合成した信号を送信する第2の区間を設けて通信を行い、中央装置が、信号を送信しない区間、第1の区間の信号、第2の区間の信号を解析し、第1の区間の信号と第2の区間の信号との順番による組み合わせによって装置間の状態を判断する通信システムとしているので、ハードウェアを変更することなく、装置間の制御/監視信号の種類を増やすことができ、従来に比べて数多くの状態を認識できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る通信システムの構成ブロック図である。
【図2】防護中継装置の構成ブロック図である。
【図3】中央装置の構成ブロック図である。
【図4】5C2コートテーブルの概略を示す図である。
【図5】5C2信号処理の概略を示す図である。
【図6】別の5C2コートテーブルの概略を示す図である。
【図7】共用システムの5C2コードテーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る通信システムは、装置間の制御/監視信号に5C2トーン信号用いる場合に、最初に「信号なし」区間を設け、次に5C2トーン信号を送信する「信号1」区間を設け、更に当該5C2トーン信号と同一又は異なる5C2トーン信号送信する「信号2」区間を設けて通信を行う中継装置と、「信号なし」区間、「信号1」区間の5C2トーン信号の内容、「信号2」区間の5C2トーン信号の内容を解析し、信号1と信号2の順番による組み合わせによって装置間の状態を判断する中央装置1とを有するようにしているので、ハードウェアを変更することなく、装置間の制御/監視信号の種類を増やすことができ、従来に比べて数多くの状態を認識できる。
【0013】
[本通信システム:図1]
本発明の実施の形態に係る通信システムについて図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る通信システムの構成ブロック図である。
本発明の実施の形態に係る通信システム(本通信システム)は、図1に示すように、中央装置1と、監視PC(パーソナルコンピュータ)2と、基地局装置3と、防護中継装置4と、運行管理システム5と、列車の無線機6とを基本的に有している。
尚、列車は、実際に複数台走行するものであり、基地局装置3と防護中継装置4もセットで線路沿いに設置されるようになっている。
【0014】
[本通信システムの各部]
中央装置1は、コンピュータで実現されるもので、列車の移動無線機6からの位置登録情報、通話データ等の情報を基地局装置3から受信し、基地局装置3に通話データ等を送信する。
また、中央装置1は、防護中継装置4との間で5C2トーンの信号を用いて制御/監視信号等の送受信を行う。
【0015】
更に、中央装置1は、監視PC2に監視情報を出力し、運行管理システム5に列車の位置登録情報、制御/監視の情報等を出力し、運行管理システム5からは運行管理に関する情報等を入力して各装置に出力する。
中央装置1の構成については後述する。
【0016】
監視PC2は、中央装置1に接続し、監視に関する情報を表示する。
基地局装置3は、列車の無線機6と中央装置1との間で通話データ、位置登録情報等を中継する。
防護中継装置4は、列車の無線機6から防護無線信号を受信し、制御/監視の信号を5C2のトーン信号で中央装置1に送信し、また、中央装置1から制御/監視の信号を受信する。
防護中継装置4の構成については後述する。
【0017】
[防護中継装置4:図2]
次に、防護中継装置4について図2を参照しながら説明する。図2は、防護中継装置の構成ブロック図である。
防護中継装置4は、図2に示すように、防護無線受信部41と、防護無線判定部42と、5C2トーン信号発生部43と、記憶部44とを備えている。
【0018】
防護無線受信部41は、接続するアンテナから防護無線の信号を入力し、受信動作を行う。そして、受信信号を防護無線判定部42に出力する。
防護無線判定部42は、防護無線受信部41からの受信信号を入力し、受信信号を判定し、判定結果を5C2トーン信号発生部43に出力する。
防護無線判定部42は、防護無線の信号だけでなく、防護中継装置4内の状態を示す信号(例えば、計器等の異常信号)も入力し、判定して結果を5C2トーン信号発生部43に出力する。
【0019】
5C2トーン信号発生部43は、防護無線判定部42から入力された判定結果に基づき記憶部44に記憶された5C2コードテーブルを参照し、5C2トーン信号を発生させ、送信する。
5C2トーン信号は、5つの周波数の信号の中から2つの周波数の信号を合成して生成された信号(例えば、「f1+f2」で表す)である。
【0020】
5C2トーン信号発生部43は、合成された信号を「信号1」(例えば、f3+f5)と「信号2」(例えば、f1+f2)の組で発生させる。
「信号1」「信号2」は例えば、各々200msの間隔で送信し、「信号1」の区間の前に、200msの「信号なし」の区間を設けるようにする。また、「信号1」「信号2」は繰り返し送信する。
記憶部44は、後述する5C2コートテーブルが記憶されている。
【0021】
[中央装置:図3]
次に、中央装置1の構成について図3を参照しながら説明する。図3は、中央装置の構成ブロック図である。
中央装置1は、図3に示すように、制御部11と、記憶部12と、5C2トーン信号送受信部13と、その他で構成されている。
【0022】
制御部11は、5C2トーン信号送受信部13から入力された5C2トーン信号を解析し、合成された2つの周波数を特定して第1の信号(信号1)と第2の信号(信号2)を取得し、記憶部12に記憶されている5C2コートテーブルを参照して第1の信号と第2の信号の組み合わせによる信号内容を取得する。取得された信号内容は、監視PC2又は運行管理システム5に出力される。
記憶部12は、5C2コートテーブルを記憶している。
【0023】
5C2トーン信号送受信部13は、防護中継装置4との信号の送受信を行うものである。
具体的に、5C2トーン信号送受信部13は、防護中継装置4から送信された5C2トーン信号を特定間隔(例えば50ms間隔)でサンプリングし、信号なしの区間(例えば200msの区間)、第1の信号区間(例えば200msの区間)、第2の信号区間(例えば200msの区間)を検出すると共に、第1の信号区間における周波数と第2の信号区間における周波数を検出し、検出結果を制御部11に出力する。
【0024】
中央装置1には、この他に基地局装置3、運行管理システム5との信号の送受信を行う送受信部が備えられ、また、監視結果を監視PC2に出力するインタフェース部も備えられている。
【0025】
[5C2コートテーブル:図4]
次に、防護中継装置4の記憶部44、及び中央装置1の記憶部12に記憶されている5C2コートテーブルの概略について図4を参照しながら説明する。図4は、5C2コートテーブルの概略を示す図である。
5C2コートテーブルは、図4に示すように、第1の信号(信号1)と第2の信号(信号2)との組み合わせによって状態が特定されるものである。
【0026】
例えば、項番「1」で、信号1が「f2+f5」で信号2が「f1+f2」の場合に、「状態1」となっている。
信号1と信号2は、5つの周波数から2波を選択するものであるから、組み合わせとして100通りあり、状態も100通り形成できる。
【0027】
[5C2信号処理:図5]
5C2の信号処理について図5を参照しながら説明する。図5は、5C2信号処理の概略を示す図である。
図5では、最初の200msに信号なしの区間が、次の200msに第1の信号の区間が、次の200msに第2の信号区間が設定されている。
【0028】
そして、200msを50ms間隔でサンプリングし、第1〜4までのサンプリングで「信号なし」区間をサンプリングし、第5〜8までのサンプリングで「信号1」区間をサンプリングし、第9〜12までのサンプリングで「信号2」区間をサンプリングする。
図5では、「信号なし」区間で、サンプリング(4)までに信号なしが確定し、「信号1」区間のサンプリング(5)〜(7)で、3回連続で信号1:f3+f5が検出されて確定し、「信号2」区間のサンプリング(9)〜(11)で、3回連続で信号2:f1+f2が検出されて確定している。
【0029】
そして、「信号2」区間終了後は、200msの「信号1」区間、200msの「信号2」区間が繰り返される。
ここで、「信号2」区間後に、「信号なし」区間を設けるようにして、「信号1」区間と「信号2」区間を区別し易くしてもよい。
尚、同一信号を5回連続でサンプリングした場合、5回目を信号2の1回目とカウントすることにより、信号1と信号2が同一の信号であると判断することができる。
【0030】
[別の5C2コードテーブル:図6]
次に、別の実施の形態に係る5C2コードテーブル(別の5C2コードテーブル)について図6を参照しながら説明する。図6は、別の5C2コートテーブルの概略を示す図である。
別の5C2コードテーブルは、図6に示すように、信号1はこれまでと同様の内容を示し、信号2で、信号1で示された内容の詳細を示すようにしたものである。
【0031】
具体的には、信号1が「f2+f5」の場合は「障害」を示し、信号2が「f1+f2」の時に「電源異常」を示すが、信号2が「f1+f3」の時には「ファン異常」を示し、信号2が「f1+f4」の時に「無線機異常」を示すようになっている。
【0032】
図6の例では、信号1をこれまでと同様の内容にしているが、信号1で状態の上位概念を定義し、信号2でその下位概念を定義するような利用法としてもよい。
【0033】
[実施の形態の効果]
本通信システムによれば、防護中継装置4から中央装置1への制御/監視信号に5C2トーン信号用いる場合に、防護中継装置4は、最初に「信号なし」区間を設け、次に5C2トーン信号を送信する「信号1」区間を設け、更に当該5C2トーン信号と同一又は異なる5C2トーン信号送信する「信号2」区間を設けて通信を行い、中央装置1は、「信号なし」区間、「信号1」区間の5C2トーン信号の内容、「信号2」区間の5C2トーン信号の内容を解析し、信号1と信号2の順番による組み合わせによって装置間の状態を判断できるようにしているので、ハードウェアを変更することなく、装置間の制御/監視信号の種類を増やすことができ、従来に比べて数多くの状態を認識できる効果がある。
【0034】
尚、上述した実施形態では、図1に示す無線通信システムに本発明を適用した場合を例にあげて説明した。しかし、本発明は、装置間で信号を送信するシステムであれば、どのようなシステムにも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、装置間の制御/監視信号の種類を増やすことができる通信システムに好適である。
【符号の説明】
【0036】
1...中央装置、 2...監視PC(パーソナルコンピュータ)、 3...基地局装置、 4...防護中継装置、 5...運行管理システム、 6...列車の無線機、 11...制御部、 12...記憶部、 13...5C2トーン信号送受信部、 41...防護無線受信部、 42...防護無線判定部、 43...5C2トーン信号発生部、 44...記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置間の制御/監視信号に複数の周波数信号から選択した周波数信号を組み合わせて合成した信号を用いて通信を行う通信システムであって、
信号を送信しない区間を設け、前記合成した信号を送信する第1の区間を設け、当該合成した信号と同一又は異なる組み合わせの合成した信号を送信する第2の区間を設けて通信を行う中継装置と、
前記信号を送信しない区間、前記第1の区間の信号、前記第2の区間の信号を解析し、前記第1の区間の信号と前記第2の区間の信号との順番による組み合わせによって装置間の状態を判断する中央装置とを有することを特徴とする通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−199778(P2012−199778A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62627(P2011−62627)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】