説明

通信シミュレータ

【課題】DICOM通信の際の通信データを手作業で入力する必要がない通信シミュレータを提供すること。
【解決手段】通信システム内でDICOM通信が行われている際の通信データを通信データ捕捉部105aにより捕捉し、この捕捉された通信データから、通信シミュレーションを実行するのに必要なデータを通信データ取得部105bにより取得し、この取得した通信データに基づいて通信部105gにより通信シミュレーションを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器間の通信が所定のプロトコルに従って正しくなされているかを確認するための通信シミュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療現場で利用されるCT装置やMRI装置等の生体画像を取得する装置(モダリティと呼ばれる)は、取得された画像を保存及び管理するためのPACS等の画像管理システムとネットワークを介して接続され、各種情報が管理されている。この際の通信は、DICOM(Digital Imaging Communications in Medicine)と呼ばれる医用画像の通信に特化したプロトコルに従って行われる。
【0003】
このようなDICOM通信の際に、通信データのプロトコル解析を行って、通信が適正なプロトコルで行われているかを判断するための技術が特許文献1において提案されている。
【0004】
また、機器間の通信が適正なプロトコルで行われているかを実際に機器間での接続を行わずに確認するための別の手法として通信シミュレータ(DICOMシミュレータ)が知られている。このDICOMシミュレータは、機器との間でDICOM通信を行い、その通信結果から、通信が適正なプロトコルで行われているかを判定するための装置である。
【特許文献1】特開2005−198776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来のDICOMシミュレータは、DICOM通信をシミュレートするためのプログラム及びそれを実行するための装置のみで構成されており、DICOM通信のシミュレートの際の通信データは、使用者が手作業で入力する必要がある。したがって、通信データの入力ミスが起こる可能性がある。この場合、通信の結果、DICOM規約に従った通信が行われていなかったとしても、それが入力ミスによるものなのか、或いは実際にDICOM規約に従ったプロトコルで通信が行われていないためであるのかを判断することは困難である。
【0006】
また、既存のDICOM通信機能を有する機器と同条件の通信データを入力するのは非常に手間のかかる作業である。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、DICOM通信の際の通信データを手作業で入力する必要がない通信シミュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る通信シミュレータは、ネットワークを介して接続された機器間で所定のプロトコルに従った通信が行われているか否かを確認するための通信シミュレータであって、前記機器間で前記ネットワークを介して通信される通信データを捕捉する通信データ捕捉手段と、前記捕捉された通信データから、前記所定のプロトコルに従った通信を実行するのに必要なデータを取得する通信データ取得手段と、前記機器のうちの何れかと、前記取得された前記所定に従った通信を実行するのに必要なデータに従って通信を行う通信シミュレート手段とを具備することを特徴とする。
【0009】
この請求項1の通信シミュレータによれば、実際に機器間で通信されている通信データを取得して、通信のシミュレーションに利用することができるので、使用者が手作業で通信データを入力する必要がない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、DICOM通信の際の通信データを手作業で入力する必要がない通信シミュレータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る通信シミュレータを備える通信システムの構成図である。図1に示す通信システムは、ネットワーク101に放射線科情報システム(RIS)102と、ハブ(HUB)103aを介してCT装置103と、画像サーバ104とが相互に通信可能に接続されて構成されている。また、HUB103aには、本発明の一実施形態に係る通信シミュレータ105が接続されている。
【0012】
ネットワーク101は、例えばLAN等の病院内ネットワークであり、図1に示す各機器やシステムを相互に通信自在に接続する。
【0013】
放射線科情報システム102は、放射線科内の検査受付や各モダリティの稼動状況等の、放射線科内の各種情報の管理を行う。CT装置103は、患者の断層像を撮影して取得する。ここで、ネットワーク101には、CT装置103以外の、MRI装置や超音波診断装置等の各種モダリティが接続されていても良い。
【0014】
画像サーバ104は、CT装置103で撮影された画像を格納する。この画像サーバを構成するための記憶装置は、画像データを多数格納しておくことができる比較的大容量の記憶装置であれば特に限定されるものではない。この画像サーバ104の記憶装置としては、例えばDVD等の光ディスクやハードディスク等を用いることができる。
【0015】
通信シミュレータ105は、CT装置103と、その他の機器やシステムとの間でDICOM規約に従った適正な通信がなされているかを確認するための通信シミュレーションを行う。なお、図1においては、通信シミュレータ105がネットワーク101とCT装置103との間に設けられているが、ネットワーク101とRIS102との間、ネットワーク101と画像サーバ104との間に設けるようにしても良い。
【0016】
ここで、通信シミュレータ105は、通信データ入出力部105aと、通信データ捕捉部105bと、保存部105cと、通信データ取得部105dと、通信データ解析部105eと、操作入力部105fと、通信部105gと、通信結果出力部105hとから構成されている。
【0017】
通信データ入出力部105aには、ネットワーク101を介して流れる通信データがHUB103aを介して入力される。若しくはこの通信データ入出力部105aから、通信部105gからの通信データが出力される。通信データ捕捉部105bは、通信データ入出力部105aを介して入力された通信データを捕捉し、保存部105cに一時保存する。
【0018】
通信データ取得部105dは、保存部105cに保存された通信データの中から、DICOM通信に必要なデータを、SCU(Service Class User)及びSCP(Service Class Provider)単位で取得する。ここで、SCUはDICOM規約において通信サービスを受ける側、つまりユーザ側の機器のことであり、SCPはDICOM規約において通信サービスを提供する側、つまりサーバ側の機器のことである。以後、それぞれを単にユーザ側、サーバ側と称する。
【0019】
通信データ解析部105eは、通信データ取得部105dによって取得されたDICOM通信に必要なデータを、ユーザ側及びサーバ側に分けてそれぞれ解析し、通信データがDICOM規約に従ったデータであるかを判定する。
【0020】
操作入力部105fは、通信シミュレータの使用者が通信シミュレーションに用いる通信データを選択操作したり、その他の通信シミュレータ105の各種操作を行うための操作部である。
【0021】
通信部105gは、操作入力部105fを介して選択された通信データで、DICOM通信を行う。通信結果出力部105hは、通信データ解析部105eによる解析結果を表示したり、紙面に印刷したりする等の手法により外部に出力する。
【0022】
次に、図1に示す通信システムにおけるDICOM通信について説明する。ここでは、図2(a)に示すようなCT装置103から画像サーバ104に画像を転送して格納する際の通信を例に説明する。
【0023】
図2(b)に示すように、CT装置103から画像サーバ104に対してアソシエーション確立のための要求信号が送信される。要求信号が受信されると、画像サーバ104からはアソシエーションが確立した旨を通知するための応答信号がCT装置103に送信される。応答信号が受信されると、CT装置103において取得された撮影画像がDIMOMデータフォーマットに従って送信される。撮影画像の転送が終了すると、アソシエーションが解放され、その旨がCT装置103に通知される。
【0024】
図3は、DICOM通信の際に送信される通信データの一例を示す図である。図3に示すように、DICOM規約に従った通信においては、通信データがタグ番号と実際のデータとから構成されている。タグ番号は、送信するデータ毎にDICOM規約上で定められた番号であり、それぞれのタグ番号毎に意味付けがなされている。図3の例においては、通信データが患者氏名、患者ID、患者の生年月日、患者の性別、患者の身長、患者の体重、画像を撮影した機器(モダリティ)の種類、検査の予約日、撮影開始日、撮影画像データから構成されており、それぞれがタグ番号で記述される。
【0025】
つまり、タグ番号とデータとが対応していない場合には、DICOM規約に従った通信がなされていないことになる。その他、データ長が規約に規定するものよりも長すぎたり、画像データの記録フォーマットが規約に従っていない場合等も通信エラーとなる。このような通信データの解析が通信データ解析部105eにおいてなされる。
【0026】
本一実施形態の要部としての通信シミュレータ105は、上述図2(b)のような通信がなされているときに、HUB103aを介して図3に示す通信データを取得し、保存部105cに保存する。そして、保存部105cに保存された通信データを用いて後述する通信シミュレーションを行う。
【0027】
通信シミュレータ105による通信シミュレーションの際には、図4に示すようにして通信シミュレータ105と、RIS102、CT装置103、又は画像サーバ104とを通信接続してDICOM通信を行う。例えば、図2(b)に示す通信をシミュレートする場合には、CT装置103と通信シミュレータ105とを通信接続して通信シミュレータ105を画像サーバ104として動作させるか、或いは通信シミュレータ105と画像サーバ104とを通信接続して通信シミュレータ105をCT装置103として動作させれば良い。
【0028】
図5及び図6は、通信シミュレータ105の動作について示すフローチャートである。ここで、図5は通信データの捕捉の際のフローチャートであり、図6は通信シミュレーションの際のフローチャートである。
【0029】
まず、通信データの捕捉の際の処理について図5を参照して説明する。図2(b)に示すような通信がなされている際に、通信データ捕捉部105bにより、HUB103aを介して通信データが捕捉される(ステップS101)。次に、通信データ取得部105dにより、通信データ捕捉部105bで捕捉された通信データの中から、図3に示すようなDICOM通信に必要なデータが取得される(ステップS102)。その後に、通信データ取得部105dで取得された通信データが、SCU及びSCP単位に分けられて、それぞれ解析される。そして、その結果が保存部105cに保存される(ステップS103)。また、解析の結果は、例えば図3に示すような形式で視認可能に表示される。
【0030】
解析結果の表示がなされた後、使用者による操作入力部105fの操作により、後の通信シミュレーションに使用する通信データが選択され、その選択された通信データが保存部105cに保存される(ステップS104)。そして、図5の処理が終了する。
【0031】
次に、通信シミュレーションの際の処理について図6を参照して説明する。まず、通信シミュレータ105の使用者により、通信シミュレータ105が起動される(S201)。続いて通信シミュレータ105のネットワーク設定が行われる(S202)。このネットワーク設定の処理では、通信シミュレータ105を、ユーザ側とサーバ側の何れで動作させるのかが使用者による操作入力部105fの操作により決定される。例えば、図2(b)に示す通信をシミュレートする場合には、CT装置103がユーザ側の機器であり、画像サーバ104がサーバ側の機器である。
【0032】
ネットワーク設定の後、保存部105cの保存されている通信データの中から通信シミュレーションに必要な通信データが選択される(ステップS203)。そして、必要ならば、通信データの内容の編集又は削除が行われる(ステップS204)。例えば、通信データがDICOM規約に従っていない場合等では、DICOM規約に従うように修正することができる。
【0033】
その後、通信シミュレータ105が動作を開始して、通信シミュレーションの動作が開始され(ステップS205)、ステップS203で選択された通信データがステップS04において編集された内容に基づいてDICOM通信される(ステップS206)。このDICOM通信がなされている際、HUB103aを介して通信データが取得され、通信データ解析部105eにおいて解析される。この結果、通信データがDICOM規約に従って通信されているかが判定され、その判定結果が通信結果出力部105hに送られる。そして、通信結果出力部105hにより、通信結果のレポートが表示又は印刷等の手法によって出力される(ステップS207)。その後に、図6の処理が終了する。
【0034】
以上説明したように、本実施形態によれば、実際に機器間でのDICOM通信がなされているときに通信データを捕捉し、この捕捉した通信データに基づいて通信シミュレーションを行うことができる。したがって、通信シミュレーションに先立って使用者が手作業で通信データを入力する必要がない。
【0035】
また、通信シミュレータ105は、ユーザ側として取得した通信データに従って通信シミュレーションを行うことも、逆にサーバ側として取得した通信データに従って通信シミュレーションを行うことも可能である。つまり、通信シミュレータ105同士を接続し、一方をユーザ側として動作させ、一方をサーバ側として動作させることで、通信シミュレータ105のみで通信データ捕捉時のDICOM通信を再現することも可能である。
【0036】
更に、捕捉した通信データは保存部105cに保存されるので、図1に示す通信システム以外の機器やシステムに接続して通信シミュレーションを行うことも可能である。
【0037】
また、操作入力部105fにより、通信データの編集や削除を行うことができるので、全てを手作業で入力するよりも簡便に、使用者の所望する通信データで通信シミュレーションを行うことが可能である。
【0038】
また、通信データ解析部105eにより、通信データがDICOM規約に従っているか否かが解析されるので、使用者に専門的な知識がなくとも、通信が適正になされているか否かを判定することが可能である。
【0039】
以上実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0040】
更に、上記した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、上述したような課題を解決でき、上述したような効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係る通信シミュレータを備える通信システムの構成図である。
【図2】図1に示す通信システムにおけるDICOM通信について説明するための図である。
【図3】DICOMフォーマットに従った通信データの一例を示す図である。
【図4】通信シミュレーションの概念について説明するための図である。
【図5】通信データの捕捉の際の処理について示すフローチャートである。
【図6】通信シミュレーションの際の処理について示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
101…ネットワーク、102…放射線科情報システム(RIS)、103…CT装置、103a…ハブ(HUB)、104…画像サーバ、105…通信シミュレータ、105a…通信データ入出力部、105b…通信データ捕捉部、105c…保存部、105d…通信データ取得部、105e…通信データ解析部、105f…操作入力部、105g…通信部、105h…通信結果出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して接続された機器間で所定のプロトコルに従った通信が行われているか否かを確認するための通信シミュレータであって、
前記機器間で前記ネットワークを介して通信される通信データを捕捉する通信データ捕捉手段と、
前記捕捉された通信データから、前記所定のプロトコルに従った通信を実行するのに必要なデータを取得する通信データ取得手段と、
前記機器のうちの何れかと、前記取得された前記所定のプロトコルに従った通信を実行するのに必要なデータに従って通信を行う通信シミュレート手段と、
を具備することを特徴とする通信シミュレータ。
【請求項2】
前記通信データ取得手段は、前記所定のプロトコルに従った通信を実行するのに必要なデータをユーザ側とサーバ側とに分けて取得し、
前記通信シミュレート手段は、前記ユーザ側として取得されたデータに従って前記通信を行う場合にはユーザ側の通信を行い、前記サーバ側として取得されたデータに従って前記通信を行う場合にはサーバ側の通信を行うことを特徴とする請求項1に記載の通信シミュレータ。
【請求項3】
前記取得された前記所定に従った通信を実行するのに必要なデータの一部を選択するための通信データ選択手段を更に具備することを特徴とする請求項1に記載の通信シミュレータ。
【請求項4】
前記取得された前記所定に従った通信を実行するのに必要なデータを修正するための通信データ修正手段を更に具備することを特徴とする請求項1に記載の通信シミュレータ。
【請求項5】
通信シミュレート手段による通信の結果を解析して、前記所定のプロトコルに従った通信がなされているか否かを判定する通信データ解析手段と、
前記通信データ解析手段の判定結果を出力する通信結果出力手段と、
を更に具備することを特徴とする請求項1に記載の通信シミュレータ。
【請求項6】
前記所定のプロトコルに従った通信は、DICOM通信であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1つに記載の通信シミュレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−275183(P2007−275183A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103215(P2006−103215)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】