説明

通信ナビゲーションシステム、情報配信サーバおよびプログラム

【課題】 地下街や建物内部であっても、階をまたいだ経路探索を効率的に行うことができる通信ナビゲーションシステム、情報配信サーバおよびプログラムを提供する。
【解決手段】 通信ナビゲーションシステム10は携帯端末30と情報配信サーバ20とから構成され、携帯端末30は、出発地と目的地の階を含む位置情報とともに経路探索要求を送信する経路探索要求部32を備え、情報配信サーバ20は、ノードデータとリンクデータとコストデータからなる地図データを蓄積した地図データベース23と経路探索部24とを備え、リンクデータには各リンクに該リンクが位置する階の情報を属性情報として付加し、階をつなぐリンクには前記階の情報とは異なる属性情報を付加し、経路探索部24は、携帯端末からの経路探索要求に基づいて地図データベースを参照して出発地から目的地に至るリンクをたどり、最適なリンクを案内経路として決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話などの携帯端末から送られる出発地と目的地および移動手段などの経路探索条件に基づいて経路探索を行い、地図データおよび案内経路データを携帯端末に提供する通信ナビゲーションシステム、情報配信サーバ(ナビゲーションサーバ)およびプログラムに関するものであり、特に、携帯端末の測位手段であるGPS(Global Positioning System)処理ができない地下街、建物内など、垂直方向に階層を有する構造物内の経路探索を可能とした通信ナビゲーションシステム、情報配信サーバおよびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などの携帯端末の発展には目覚ましいものがあり、単なる通話のための端末装置から、インターネットなどのネットワークを介して種々のサーバに接続してデータ通信を行う総合的な携帯端末装置として使用され、携帯端末の普及率も極めて高いものになっている。特に、現在は一部の携帯電話にしか搭載されていない測位ユニット、例えば、GPS(Global Positioning System)衛星からの信号を受信して測位するGPS受信機などの搭載が、第三世代と称される携帯電話では全ての機種に搭載されるような趨勢にある。
【0003】
このような測位機能を有する携帯端末の利用技術としては、種々の分野の技術が提案されており、例えば、自動車用のナビゲーション装置(カーナビ)を発展させ、携帯電話を端末として地図・経路情報を情報配信サーバ(経路探索サーバ)から配信する歩行者用の通信型ナビゲーションシステムが提案されている。また、携帯電話を端末として利用した決済システムや様々なインターネット取引システムなども提案されている。そして最近では、事件や事故の際の通報に携帯電話が使用されることも多くなってきており、通報場所を特定する技術の必要性が増大しつつある。また、老人の所在場所を携帯電話の測位システムを利用して特定しようという試みもなされており、その用途は今後も拡大を続けるものと思われる。
【0004】
例えば、国土交通省では、非特許文献1(「歩行者ITS(Intelligent Transport System)と高精度測位技術」と題する報告書、2002年3月)に障害者などを含む歩行者に経路案内をするための案内システムの骨格について開示している。この非特許文献1には、歩行者が携帯端末(杖などの器具)に位置情報を送信するための種々の技術が示されている。例えば、GPS受信機を搭載する技術の他に、歩行空間に無線IDタグを設置する技術やブルートゥース(Bluetooth:登録商標)を利用したタグを設置する技術が示されている。タグには固有の識別情報が記録され、これに基づいてタグの設置位置を中心とした範囲に存在する携帯端末の場所を特定(位置を測位)しようとするシステムである。一方、総務省では、携帯電話からの緊急通報における発信者位置情報通知機能に関する検討を進めており、このための測位システムを確立する必要性も増大している。
【0005】
GPS受信機を搭載して携帯端末の現在位置を測位する技術はカーナビや通信型ナビゲーションシステムで実用化されており、測位精度の向上も図られているが、GPS衛星からの信号を受信できることが前提となるため、地下街や建物の内部での測位には適していないのが現状である。これに対してブルートゥース(Bluetooth:登録商標)を利用したタグを歩行空間に設置する技術は、地下街や建物の内部に経路に沿って適宜の間隔でタグを設置することによって携帯端末に位置情報を提供することができ、GPS測位システムを補間する技術として利用することができる。
【0006】
ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)は、比較的微弱な電波を用いた無線通信方式であり、現状の電波到達範囲は半径10m程度である。この通信方式を利用した送信ユニットにはIDタグ(ROMなどのメモリに記録された固有のID情報)が備えられ、IDタグに記録された情報を無線で携帯端末に送信するものである。携帯端末にはこの無線通信方式に対応した受信機を搭載しておき、受信したID情報を位置情報センターに送り当該携帯端末の位置を特定するシステムを構成することができる。この場合、送信ユニットの間隔は電波の干渉を防止するため、半径10m(直径20m)の間隔で設置すればよく、位置の測位精度は現状のGPS測位の精度よりも高く、小さな位置範囲まで特定することができる。
【0007】
一方、携帯電話などの携帯端末の位置を特定するための技術としては、例えば、下記の特許文献1(特開2002−109679号公報)に開示された位置情報提供サービスがある。この位置情報提供サービスシステムは、特定エリアにおける旅行者の通路を、路上に設置された物理的手段により通路ネットワークとして構成し、通路ネットワークのノード及びターミナルポイントには無線通信アクセスを可能にする情報通信手段を具備して旅行者に情報提供することができるようにした情報提供システムである。そして、このシステムは、更に、通路ネットワークのノードとターミナルポイント及び旅行者の各々の情報通信手段はそれぞれ個別番号を有していて、その個別番号に対応する個別信号が中央処理装置に伝送され、かつ適切に処理されて旅行者の位置情報データベースが生成され、その
位置情報データベースを活用した旅行者の位置情報提供サービスがインターネットを経由して旅行者または第三者に提供できるようにしたものである。
【0008】
また、下記の特許文献2(特開2003−344093号公報)には、地下街などGPS信号が受信できない場所において携帯端末に経路を案内する経路案内システムが開示されている。すなわち、この経路案内システムは、地下街のように現在地の認識が困難な場所においても、歩行者としての操作者が適切に現在地を認識することができ、また、目的地までの経路を容易に把握することができるようにすることを目的としたものである。そして、この経路案内システムは、地図データに基づいて地下経路を探索する経路探索部と、地図データと案内看板データとに基づいて、探索された地下経路を案内する案内データを作成する経路案内データ作成部と、作成された案内データに基づいて、案内看板の文字列を表示画面に表示させる送信データを作成する送信データ作成部とから構成したものである。
【0009】
同様に階層のある屋内の経路探索装置として下記の特許文献3(特開2003−240591号公報)が開示されている。この特許文献3に開示された経路探索装置は、ノードデータとリンクデータとを記憶した通行路データ記憶部と、コストデータ(所要時間)を記憶したコストデータ記憶部とを保持する電子地図データを用いて経路の探索を行うようにしたものである。
【0010】
すなわち、ノードとは、通路や経路の端点、分岐点であり、分岐点には階段、エスカレータ、エレベータなど階をつなぐ経路に分岐する分岐点も含まれる。各ノードにはノード番号が与えられ、各ノードには属性としてそのノードが存在する「階数」がパラメータとして設定されている。そして、リンクとは、ノードとノードを結ぶ経路であり、それぞれのリンクの特徴を表すリンク種別、リンク長が関連付けられている。リンク種別はリンクの種類である「通路」、「エレベータ」、「エスカレータ」、「階段」などであり、また、リンク属性として通路の幅員、階段の段数、段差の有無などを設定している。コストデータとは各リンクの長さや移動に要する所要時間である。
【0011】
これによって、出発位置と目的位置が与えられれば、出発地のノードから、そのノードに接続されているリンクをたどり、コスト(長さや移動時間)が最も小さくなるリンクを接続していけば、目的位置までの最短の経路を探索し、案内経路を決定することができる。そして、ノード、リンクから構成されている地図データに案内経路を重ねるなどして端末に送り、表示してナビゲーションすることができる。目的位置が出発位置と異なる階にあるときには、階数をパラメータとして持つノードを見つけ、探索することによって、複数の階層が存在する百貨店やスーパーマーケット、あるいは自走式の立体駐車場等において、出入り口等の出発位置から上層階に存在する目的位置までの経路探索を可能としたものである。
【0012】
上記のような位置情報提供システムあるいはGPS測位システムにより得た位置情報を利用する1つの応用として、携帯端末から出発地と目的地の情報を情報配信サーバに送り、情報配信サーバで道路網や交通網のデータから最短の経路を探索して案内するナビゲーション装置が実用化されている。このようなナビゲーションシステムにおける経路探索方法としてはダイクストラ法(ラベル確定法)が用いられる。下記の特許文献4(特開2001−165681号公報)には、ダイクストラ法を用いた経路探索の方法の概略が開示されている。
【0013】
【特許文献1】特開2002−109679号公報(図4、図6、図7)
【特許文献2】特開2003−344093号公報(図16〜図23)
【特許文献3】特開2003−240591号公報(図2)
【特許文献4】特開2001−165681号公報(図1、段落[0003]〜[0010])
【非特許文献1】「歩行者ITS(Intelligent Transport System)と高精度測位技術」と題する報告書、2002年3月、国土交通省
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
一般的なナビゲーション装置やナビゲーションシステムでは、ノードデータ、リンクデータ、コストデータなどから構成された地図データがデーダベース化されているため、出発地と目的地の位置データ(緯度・経度)が指定されれば、前述のダイクスラ法などを用いて経路探索は可能である。従って、経路探索とその結果(地図データと案内経路)のみを提供するだけであれば、現在位置を測位する手段は、本質的には必要としない。しかしながら、案内経路上のどこに現在位置しているかを表示し、あるいは、移動に伴って音声などの手段で進行方向や右左折などを案内(ガイド)するためには、現在位置を測位する手段が必要になる。このため、一般的なナビゲーション装置やナビゲーションシステムにおける携帯端末には、GPS受信機などの測位手段が設けられている。
【0015】
前述したように、携帯端末にGPS受信機を搭載して測位を可能とした場合であっても、建物の内部や地下街などのように、GPS衛星信号を受信できない場所では、携帯端末の位置を特定することができない。このため、上記特許文献2(特開2003−344093号公報)に開示された経路案内システムでは、地下街などの通路、出口等に設置されている案内看板を利用して経路案内を行っている。しかしながら、この案内システムでは、案内看板の設置場所を結ぶ経路しか案内できないため、必ずしも最短の経路案内ができないという問題点がある。
【0016】
仮に、建物内部にてGPS衛星信号が受信できたとしても、GPS測位システムによって得られる位置情報は、緯度、経度のみであり、建物の内部や地下街では携帯端末が位置する階(フロア)が異なっても、同じ緯度、経度の測位結果になり、階の特定ができないという問題点がある。
【0017】
また、建物内部にGPS衛星信号と等価な信号を発生させる設備、あるいは前述の無線IDタグやブルートゥース(Bluetooth:登録商標)を利用したタグを経路に沿って設置する場合、送信のための設備やIDタグなどを設置するインフラストラクチャー構築の費用が莫大なものになるという問題点がある。
【0018】
また、特許文献3(特開2003−240591号公報)に開示された経路探索装置においては、各階の経路および階を結ぶ経路の端点、分岐点に設定したノードとそのノードが位置する階数情報をバラメータとして加えたノードデータ、各ノードをつなぐリンクとリンク長や通路、階段、エレベータ、エスカレータなどリンク種別を含むリンクデータを記憶した通行路データ記憶部と、各リンクのコストデータ(リンクノ距離、所要時間など)を記憶したコストデータ記憶部とを保持する電子地図データを用いて経路の探索を行うようにしている。
【0019】
しかしながら、上記特許文献3に開示された経路探索装置においては、各階の経路および階を結ぶ経路の端点、分岐点に設定したノードとそのノードが位置する階数情報をバラメータとして加えたノードデータ、各ノードをつなぐリンクとリンク長や通路、階段、エレベータ、エスカレータなどリンク種別を含むリンクデータに基づいて経路探索を行っている。このようなデータ構造の地図データを用いて経路探索を行った場合、探索の結果求められた案内経路に対するガイドを行うと、階の切り替わりにおける判定の効率が悪いという問題点が生じる。
【0020】
例えば、エレベータのノードにおけるガイダンスを作ろうとした場合、該当ノードと手前のノードが同じ階で、次のノードが別の階なら、エレベータの乗り口である。常に3つのノードを比較しないとわからない。また、エレベータを降りる階も、該当ノードと手前のノードが別の階で、次のノードが該当ノードと同じ階というようにこの方式では3つのノードを調べないとわからない。これでは、サーバでルート探索してガイダンスポイントまで生成する方式では、サーバの負荷が大きくなるので適さないという問題点がある。
【0021】
また、上記特許文献3に開示された経路探索装置においては、現在位置の取得方法については具体的記述がなく、装置にGPSを搭載することがわずかに記載されているのみであり、建物内での位置情報の提供方法については言及していない。また、建物内の地図がどのように表示されるか、具体的な記述がない。通常のナビゲーション装置では地図は1平面の地図でありそのまま表示しても問題ないが、複数の階の地図データをそのまま表示した場合には、経路が重なりあって、視認が困難なものになるという問題点が生じる。
【0022】
本願の発明者は、前記の問題点を解消するため、種々検討を重ねた結果、リンクデータに属性として「階」の情報を示す属性情報を付加する(「階」をつなぐリンクには階情報を付加せず他の属性情報とする)ことによって、リンクをたどっていった時に、階情報が付加されていないリンクに到達したらその手前のノードが階をつなぐリンクの入口(起点)で、先のノードがその出口(終点)であるとシンプルに判定でき、前記の問題点を解消できることに想到し本発明を完成するに至ったものである。
【0023】
また、上記のように地図データに「階」の情報を付加したものであるから、地図データを表示する際には、階ごとの地図データを提供することによって視認し易い経路の案内を提供することができ、更に、GPS測位が不能になる地下街などで、携帯端末に現在位置の情報、特に、緯度、経度と「階」の情報を与える位置情報提供手段として、例えば、照明設備用電源のソケットなどの電源供給部を利用して無線IDタグやブルートゥース(Bluetooth:登録商標)を利用したタグに相当する位置情報送信ユニット(無線送信機)を設置し、位置情報送信ユニットには設置位置の緯度、経度、階の情報を位置情報として記憶させておくことにより、案内経路をガイドするための位置情報を容易に提供できることに着想したものである。
【0024】
このように構成すれば、地下街や建物内部であっても、階をまたいだ経路探索を効率的に行うことができ、また、探索した案内経路を視認しやすく携帯端末に表示させることができ、更に、案内経路をガイドするための位置情報を容易に提供することができるようになる。
【0025】
すなわち、本発明は、前記の問題点を解消することを課題とし、地下街や建物内部であっても、階をまたいだ経路探索を効率的に行うことができる通信ナビゲーションシステム、情報配信サーバおよびプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前記課題を解決するために、本願の請求項1にかかる発明は、携帯端末と情報配信サーバとがネットワークを介して接続される通信ナビゲーションシステムであって、
前記携帯端末は、出発地と目的地の階を含む位置情報とともに経路探索要求を送信する経路探索要求部を備え、
前記情報配信サーバは、ノードデータとリンクデータとコストデータからなる地図データを蓄積した地図データベースと経路探索部とを備え、
前記リンクデータには各リンクに該リンクが位置する階の情報を属性情報として付加し、階をつなぐリンクには前記階の情報とは異なる属性情報を付加し、
前記経路探索部は、携帯端末からの経路探索要求に基づいて前記地図データベースを参照して出発地から目的地に至るリンクをたどり、最適なリンクを案内経路として決定することを特徴とする。
【0027】
また、本願の請求項2にかかる発明は、請求項1の通信ナビゲーションシステムにおいて前記経路探索部は、前記探索した案内経路および地図データを階毎に分離し、前記携帯端末に配信することを特徴とする。
【0028】
また、本願の請求項3にかかる発明は、出発地と目的地の階を含む位置情報とともに経路探索要求を送信する経路探索要求部を有する携帯端末がネットワークを介して接続される通信ナビゲーションシステムを構成する情報配信サーバであって、前記情報配信サーバは、ノードデータとリンクデータとコストデータからなる地図データを蓄積した地図データベースと経路探索部とを備え、
前記リンクデータには各リンクに該リンクが位置する階の情報を属性情報として付加し、階をつなぐリンクには前記階の情報とは異なる属性情報を付加し、
前記経路探索部は、携帯端末からの経路探索要求に基づいて前記地図データベースを参照して出発地から目的地に至るリンクをたどり、最適なリンクを案内経路として決定することを特徴とする。
【0029】
また、本願の請求項4にかかる発明は、請求項3の情報配信サーバにおいて、前記経路探索部は、前記探索した案内経路および地図データを階毎に分離し、前記携帯端末に配信することを特徴とする。
【0030】
また、本願の請求項5にかかる発明は、出発地と目的地の階を含む位置情報とともに経路探索要求を送信する経路探索要求部を有する携帯端末がネットワークを介して接続される通信ナビゲーションシステムを構成する情報配信サーバであって、ノードデータとリンクデータとコストデータからなる地図データを蓄積した地図データベースと経路探索部とを備え、前記リンクデータには各リンクに該リンクが位置する階の情報を属性情報として付加し、階をつなぐリンクには前記階の情報とは異なる属性情報を付加した情報配信サーバを構成するコンピュータに、
携帯端末からの経路探索要求に基づいて前記地図データベースを参照して出発地から目的地に至るリンクをたどり、最適なリンクを案内経路として決定する経路探索部としての処理を実行さることを特徴とするプログラムである。
【0031】
また、本願の請求項6にかかる発明は、請求項5のプログラムにおいて、前記情報配信サーバを構成するコンピュータに、
携帯端末からの経路探索要求に基づいて前記地図データベースを参照して出発地から目的地に至るリンクをたどり、最適なリンクを案内経路として決定し、探索した案内経路および地図データを階毎に分離する経路探索部としての処理を実行させることを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0032】
請求項1にかかる発明においては、リンクデータに属性として「階」の情報を示す属性情報を付加する(「階」をつなぐリンクには階情報を付加せず他の属性情報とする)ことによって、リンクをたどっていった時に、階情報が付加されていないリンクに到達したらその手前のノードが階をつなぐリンクの入口(起点)で、先のノードがその出口(終点)であるとシンプルに判定でき、地下街や建物内部であっても、階をまたいだ経路探索を効率的に行うことができるようになる。
【0033】
請求項2にかかる発明においては、探索した案内経路および地図データを階毎に分離し、前記携帯端末に配信するものであるから、携帯端末に表示する地図、案内経路をユーザに視認し易い表示にすることができるようになる。
【0034】
請求項3にかかる発明においては、リンクデータに属性として「階」の情報を示す属性情報を付加する(「階」をつなぐリンクには階情報を付加せず他の属性情報とする)ことによって、リンクをたどっていった時に、階情報が付加されていないリンクに到達したらその手前のノードが階をつなぐリンクの入口(起点)で、先のノードがその出口(終点)であるとシンプルに判定でき、地下街や建物内部であっても、階をまたいだ経路探索を効率的に行うことができるようになる。そして、請求項1の発明にかかる通信ナビゲーションシステムを構成する情報配信サーバを提供することができるようになる。
【0035】
請求項4にかかる発明においては、探索した案内経路および地図データを階毎に分離し、前記携帯端末に配信するものであるから、携帯端末に表示する地図、案内経路をユーザに視認し易い表示にすることができるようになり、請求項2の発明にかかる通信ナビゲーションシステムを構成する情報配信サーバを提供することができるようになる。
【0036】
請求項5にかかる発明においては、請求項3にかかる情報配信サーバを実現可能なプログラムを提供することができ、請求項6にかかる発明においては、請求項4にかかる情報配信サーバを実現可能なプログラムを提供することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明にかかる通信ナビゲーションシステムを構成する情報配信サーバと携帯端末の構成を示すブロック図である。図2は、本発明にかかる通信ナビゲーションシステム10が経路案内のサービスを提供する地下街、建物などの構造物の例を示す平面図であり、図3は、地下街や建物などの構造物を断面で示した断面図である。図4は、図2の平面図におけるノードの位置を示す平面図であり、図5は、図2の平面図におけるリンクの位置を示す模式図である。図6は、携帯端末に位置情報を送信する位置情報送信ユニットの構成を示す模式図であり、図7は、位置情報送信ユニットを地下街や建物内部の照明用電源を利用して所定の間隔で多数設置した状態を示す概念図である。図8は、ガイドポイントで携帯端末に表示するアイコンを示す図であり、図9は、携帯端末に表示される地図、案内経路、アイコン等の表示画面例を示す図である。図10は、本発明にかかる通信ナビゲーションシステムにおける経路探索の手順を示すフローチャートである。図11は、本発明にかかる通信ナビゲーションシステムにおける案内経路のガイダンスの手順を示すフローチャートである。
【実施例】
【0038】
図1は、本発明の実施例にかかる通信ナビゲーションシステム10およびその構成要素である本発明にかかる情報配信サーバ20、携帯端末30の構成を示すブロック図である。図1に示すように、情報配信サーバ20と携帯端末30とがネットワーク12を介して接続され通信ナビゲーションシステム10が構成される。携帯端末30が携帯電話である場合には、携帯端末30は、無線により基地局と通信し、基地局を介してインターネットなどのネットワーク12を経由して情報配信サーバ20と接続関係が確立され、経路探索要求などのサービス要求を情報配信サーバ20に送り、また、情報配信サーバ20から地図情報、経路探索の結果などの配信を受ける。
【0039】
携帯端末30は、主制御部31、経路探索要求部32、案内データ記憶部33、地図・経路記憶部34、位置情報受信部35、GPS処理部36とから構成されている。携帯端末30は図示していないが、操作部、表示部を備えており、操作部から所望の入力、操作指示を行い、表示部に情報配信サーバ20から配信された地図や案内経路を表示する。主制御部31は、マイクロプロセッサを中心に構成され、一般的なコンピュータ装置と同様にRAM、ROMなどの記憶手段を備えており、これらの記憶手段に蓄積されたプログラムによって各部を制御する。
【0040】
経路探索要求部32は、出発地、目的地、移動手段などの経路探索要件を情報配信サーバ20に送り、経路探索の要求を行う。出発地、目的地は緯度、経度によって指示するのが一般的であるが、住所や電話番号を入力し、情報配信サーバ20のデータベースで緯度、経度の情報に変換する方法や、携帯端末30に表示される地図上でポイントを指定し緯度、経度の情報に変換する方法などがとられる。本発明の実施例においては、出発地、目的地の情報は、緯度、経度の情報の他に「階」の情報が必要になる。移動手段は、例えば、徒歩、自動車、徒歩と交通機関の併用などである。「階」の情報は、例えば、操作部から入力しなくてもよく、入口の番号や目的とするお店の名前、携帯端末に表示される地図上でポイントして指定する方法などが利用できる。もちろん、出発地の情報としては、後述する位置情報受信部35から受信した測位地点の緯度、経度、階の情報を使用することもできる。
【0041】
案内データ記憶部33には、情報配信サーバ20からダウンロードまたはプレインストールした経路のガイダンス、例えば、交差点や分岐点(ガイドポイント)に携帯端末30が近づいた際に、「この先、右折です」等の表示、音声による案内のパターンが記憶されており、携帯端末30が情報配信サーバ20から配信を受けた案内経路やガイドポイント(案内ポイント)のデータに従って、設定された案内(ガイド)を表示したり、音声ガイドしたりすることができる。地図・経路記憶部34は、経路探索要求の結果、情報配信サーバ20が経路探索した結果、携帯端末30に配信する地図データ、案内経路データを記憶し、表示部に地図、経路を表示するためのものである。
【0042】
位置情報受信部35は、後述する位置情報送信ユニットから位置情報(緯度、経度、階の情報)を受ける受信手段であり、GPS処理部36は、通常のナビゲーション端末(携帯端末)と同様に、GPS衛星信号を受信、処理して現在位置を測位するためのものである。前述したように、地下街や建物などの構造物内ではGPS衛星信号を受信できないため、測位が不能になる。位置情報受信部35は、後述するように地下街などの構造物内に設置され、現在位置を「階」情報まで含めて携帯端末30に提供する位置情報送信ユニットから位置情報を得るものであり、地下街などにおいてGPS処理部36の機能を補間する測位手段として機能する。
【0043】
一方、情報配信サーバ20は、主制御部21、送受信部22、地図データベース(DB)23、経路探索部24、データ配信25、案内ポイントデータ作成部26、案内データデータベース(DB)27、アイコンデータベース(DB)28とを備えている。主制御部31は、マイクロプロセッサを中心に構成され、一般的なコンピュータ装置と同様にRAM、ROMなどの記憶手段を備えており、これらの記憶手段に蓄積されたプログラムによって各部を制御する。
【0044】
送受信部22は、携帯端末30からのデータやサービス要求を受信し、また、携帯端末に要求されたデータやサービスに必要なデータを送信(配信)するためのものである。地図データベース(DB)23は、携帯端末30に配信して表示するための地図情報と経路探索のための地図データ(ノードデータ、リンクデータ、コストデータ)を蓄積したデータベースであり、経路探索部24は、携帯端末30から送られた経路探索の要件に従って、地図DB24を参照して、主発地から目的地までの最短の案内経路を探索する。探索の手法は、前述の特許文献4に開示されたダイクストラ法を使用することができる。
【0045】
データ配信部25は、経路探索部24で探索した最短の案内経路のデータ、地図データ、案内データ等のデータを携帯端末30に配信するためのものであり、案内経路は経路探索部24によってベクターデータとして作成され、携帯端末30に地図データに付加されて配信され、携帯端末30は、配信された地図データと案内経路データに従って、表示部に地図および案内経路を表示する。案内ポイントデータ作成部26は、探索した案内経路に交差点や分岐点などが含まれる場合に、音声や表示によるガイドのパターンと、この音声パターンや表示実行するポイントを示すデータを作成するためのものである。案内データDB27は、携帯端末30に予めダウンロードもしくはプレインストールする案内(ガイド)パターンを蓄積したデータベースである。携帯端末30は、前記地図データ、案内経路データとともにこの案内ポイントデータも配信を受け、案内ポイントに到達した時点で所定のガイドを受けることかできる。
【0046】
アイコンDB28は、携帯端末30に表示する現在地や目的地、案内経路に存在するリンクの種類(例えば、階をつなぐリンクであるが階段、エスカレータ、エレベータなど)を視認しやすく表すためのアンコンパターンを蓄積したデータベースであり、ガイドのための音声パターン、表示パターンと同様に、携帯端末30に予めダウンロードもしくはプレインストールさせておき、携帯端末に表示する案内経路の目的地表示あるいは現在地表示などの際にこのアンコンを表示させることができる。
【0047】
図2は、本発明にかかる通信ナビゲーションシステム10が経路案内のサービスを提供する地下街、建物などの構造物の例を示す平面図である。図2において、1F〜B2は建物のフロア(階)を示し、1Fは地上1階、B1は地下1階、B2は地下2階を示している。図3は、このような地下街や建物などの構造物を断面で示した断面図である。このような建物内には、フロア内の経路(通路)およびフロア間をつなぐ経路、例えば、図3に示す階段311、エレベータ312、エスカレータ313などがある。通常のナビゲーションに使用される地図データと同様に、フロア毎の経路、フロアをつなぐ経路を地図データとして作成し、蓄積しておくことによって経路探索、経路案内が可能である。
【0048】
通常のナビケーションにおける経路探索と異なる点は、経路の一部にフロアとフロアを垂直方向に移動する経路が存在する点のみである。従って、垂直方向に移動する経路を含め、全ての経路の起点/終点(端点)および水平方向、垂直方向の進行方向が変わる分岐点(道路では交差点などに該当する)をノードとしてノードID(ノード番号)を決め、各ノードを結ぶリンク毎の移動時間(コスト)をデータベース化しておけば、前記特許文献4に開示されているダイクストラ法を用いて出発場所から目的の場所に至る最短の経路を探索することができる。地下街や該建物内の経路探索の場合は、経路探索の基となる出発地や目的地の位置情報として緯度、経度の他に階(フロア)の情報が必要になる。
【0049】
本発明においては、ノードデータとしては、各ノード毎の緯度、経度による位置情報を蓄積し、各ノードをつなぐリンクのリンクデータに各リンクが位置するフロア(階)の情報を属性情報と付加して蓄積し、コストデータには、各リンクのリンク長や所要時間を蓄積しておく。リンクのうち、フロア間をつなぐリンクは特定のフロアのみに位置しているものではないため、フロア(階)情報が属性情報として付加されることはないが、リンクの種別、すなわち、階段、エスカレータ、エレベータなどの種別情報を属性情報として付加しておく。このことから、経路探索において、出発地から目的地までの各ノードをつなぐリンクをたどっていった時に、フロア(階)情報が付加されていないリンクに到達したらその手前のノードが階をつなぐリンクの入口(起点)で、先のノードがその出口(終点)であり、リンク種別が何であるかをシンプルに判定できるようになる。なお、図3においてBTで示すユニットは、携帯端末30に現在位置情報を提供するための位置情報送信ユニットである。この位置情報送信ユニットについては後で詳細に説明する。
【0050】
図4は、図2の平面図におけるノードの位置を示す平面図である。図4において、各ノードにはノードID(ノード番号)が決められており、ノードn100、n110は地上1階(1F)に位置するノードであり、ノードn200〜n212は地下1階(B1)に位置するノード、ノードn300〜n320は地下2階(B2)に位置するノードであることを示している。これらのノードをつなぐリンクが図5に示されている。すなわち、図5は、図2の平面図におけるリンクの位置を示す模式図である。図5に示すようにリンクL1〜L28は、各ノードをつなぐ経路であって階をつなぐリンクを含め、すべてのノードはこれらのリンクによって結ばれている。
【0051】
例えば、図4において、地上1階(1F)のノードn100から地下2階(B2)の地下鉄改札口のノードn320までの経路は、
ノード n100〜n201〜n202〜n302〜n301〜n320 をつなぐ経路である。これらのノードをつなぐリンクの属性で分けると、
ノードn100〜ノードn201は、リンクL5(図5参照)でつながれた階段である。
ノードn201〜ノードn202は、リンクL8でつながれた通路である。
ノードn202〜ノードn302は、リンクL21でつながれた階段である。
ノードn302〜ノードn301は、リンクL17でつながれた通路である。
ノードn301〜ノードn320は、リンクL19でつながれた通路である。
リンクL8、リンクL17、リンクL19は、フロア内の通路であり属性情報としてその「階」のデータが付加されている。これに対してリンクL5とリンクL21は、フロアにまたがる経路であり特定のフロアのみに位置するものではないため、属性情報として「階」のデータは付加されていない。
【0052】
従って、携帯端末30から経路探索要件として、出発地のノードn100、目的地のノードn320の位置情報が、移動手段として徒歩が指定され情報配信サーバ20に送られると、経路探索部24は、地図DB23に蓄積されたノードデータ、リンクデータ、コストデータを参照して、出発地のノードを起点にリンクをたどり、所要時間あるいはリンク長の最も短い案内経路を探索していく。リンクデータには各リンクに属性情報として「階」の情報が付加されており、階をつなぐリンクには「階」の属性情報が付加されていないから、フロア(階)情報が付加されていないリンクに到達したらその手前のノードが階をつなぐリンクの入口(起点)で、先のノードがその出口(終点)であると判断することができ、階をまたがる経路探索を一度に行うことができる。
【0053】
このようにして情報配信サーバ20で探索した案内経路のデータは、地図データとともに、携帯端末30に配信される。また、情報配信サーバ20は、案内経路に分岐点であるノードをガイドポイントとし、そのガイドポイントで案内に使用する音声案内などによるガイダンスのパターンを指定した案内ポイントデータを作成して携帯端末30に配信する。「階」をまたがるリンクガ存在する場合もその起点、終点となるノードをガイドポイントとし、そのガイドポイントでガイドするガイダンスのパターンを指定した案内ポイントデータを作成することはいうまでもない。例えば、ノードn201をガイダンスポイントとし、「この階段を地下1階におりて下さい」などのガイダンスパターンを指定した案内ポイントデータを作成する。
【0054】
情報配信サーバ20が携帯端末30に地図データ、案内経路データを配信する場合、フロア(階)毎に分けた地図データ、案内経路データ、案内ポイントデータを配信すると好都合である。出発地から目的地までの複数の階にまたがった地図データは、基本的には緯度、経度を同一にするものであるから、そのまま携帯端末30に表示したとしても、複数のフロアの経路データを透視する表示形態、あるいは、3次元表示などの立体的な表示方法で表示するなどの工夫が必要である。しかしながら、そのような表示形態をとったとしても携帯端末30が携帯電話のように限られた表示面積の画面しか持たない場合には、ユーザにとって視認し難い表示となることは避けられない。ユーザにとっては、現在位置するフロア(階)の地図と案内経路が表示されれば十分であり、階をまたがる経路を経て、次の階に到達した時点でその階の地図、案内経路が表示されれば、視認もし易くナビゲーションサービスを利用するには何ら支障がない。
【0055】
情報配信サーバ20から地図データ、案内経路データ、案内ポイントデータの配信を受けると、携帯端末30は、地図・経路記憶部34に地図データ、案内経路データを記憶し、案内ポイントデータを案内データ記憶部33に記憶する。そして、携帯端末30は地図・経路記憶部34と案内データ記憶部33からそれぞれのデータを読み出して表示部に地図および案内経路を表示し、ガイドポイントに到達する毎に音声案内などのガイダンスを受けて移動することができる。
【0056】
前述したように、携帯端末30が案内経路に沿って移動する際に現在案内経路のどの地点にいるか、また、音声案内などによるガイダンスを再生するポイントに到達したか否かを判断するためには、携帯端末30の現在位置がわかる必要がある。通常、携帯端末30はGPS処理部36により現在位置を測位しているが、地下街や建物内などの構造物の内部においては、GPS衛星信号を受信できないため、測位をすることができない。これを補間するのが、位置情報受信部35であり、本実施例においては、無線通信により
設置位置の緯度、経度、階の情報からなる位置情報を送信する位置情報送信ユニットが構造物内に設置されている。
【0057】
図6は、この位置情報送信ユニットの構成を示す模式図である。位置情報送信ユニット100は、図6(a)、図6(b)に示すように位置情報送信ユニット本体102と蛍光ランプあるいは電球からなるランプなどで構成される照明器具本体202とからなり、位置情報送信ユニット本体102は照明器具本体202のランプ支持部206に取り付けられている。位置情報送信ユニット本体102は、図6(c)に示すように電源部104と通信部(通信モジュール)106とマイコン(マイクロコンピュータ)108とから構成されており、電源部104には照明器具本体202の口金204から電源線が接続されるように構成されている。この位置情報送信ユニット100が天井や壁に設けられた照明用ソケットに差し込まれる。図6(a)に示すようにランプ208が蛍光管から構成される場合、口金204から供給される交流電圧を電源としたインバータ回路があり、制御回路のために直流電源も用意されていることから、これに電源部104を接続すればよい。また、図6(b)に示すようにランプ208が電球から構成される場合にはインバータ回路に相当する交流電圧−直流電圧変換回路を中継して電源部104に接続する構成にすればよい。
【0058】
位置情報送信ユニット本体102は、マイコン(マイクロコンピュータ)108を中心に構成されている。マイコン(マイクロコンピュータ)108は、周知のようにプロセッサ、ROM、EEPROMなどから構成されており、ROMに記録された制御プログラムにより通信部106を制御し、通信部106から受信した情報をEEPROMに記録し、または、EEPROMに記録された位置情報を通信部106を介して送信する。EEPROMには当該位置情報送信ユニット100が設置される場所の緯度、経度、階の情報が位置情報として記録される。通信部106は、例えば、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)による通信方式に適合した通信モジュールである。ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)は、比較的微弱な電波を用いた無線通信方式であり、現状の電波到達範囲は、例えば、半径10m程度である。従って、携帯端末が位置情報送信ユニット100の設置場所から半径10mの範囲に位置した場合、EEPROMに記録した設置場所の緯度、経度、階の情報を位置情報として該携帯端末30に送信することができる。
【0059】
EEPROMに記録する位置情報は、緯度、経度、階の情報に加えて、あるいは、階の情報の替わりに、ホテルや集合住宅、オフィスなどの建物の場合、部屋番号を付加することもできる。この場合、携帯端末が取得する位置情報には、部屋番号が含まれ、例えば、携帯端末としての携帯電話から緊急通話があった場合の発信場所の特定に有効な手段となる。
【0060】
このように照明器具本体202に位置情報送信ユニット本体102を取り付けた構成にすると、照明器具設置用のソケットやシーリング、コンセントなどの既存の電源供給部を利用することによって電源系統の配線設備を用意することなく、簡単に位置情報送信ユニットを設置することができる。また、建物内部や地下街においては一定の間隔で多数の位置情報送信ユニット100を設置する必要があるが、位置情報送信ユニット本体102を構成する電源部104、通信部106、マイコン108などもコストダウンが進み安価に入手できるようになっており、量産による更なるコストダウンが可能になる。
【0061】
また、地下街や建物内の照明器具用のソケットなどは、通常は常時電源が供給されており、位置情報送信ユニット本体100を設置するだけでスタンドアロンで動作させることができる。従って、多数の位置情報送信ユニット100を設置する場合、製造現場で各位置情報送信ユニットに設置場所の位置情報を記憶させる必要はなく、別途設置する地下街や建物内の設置場所と各位置情報をPC(パソコン)にデータベース化して記憶しておき、設置現場でPCから個々の位置情報送信ユニットに書き込んでいくことも可能である。
【0062】
図7は、このような位置情報送信ユニット100を地下街や建物内部の照明用電源を利用して所定の間隔で多数設置した状態を示す概念図である。すなわち、構造物内には、位置情報送信ユニット100a〜100cが所定の間隔でエリアA〜Cに設置されている。。位置情報送信ユニット100a〜100cが前述したブルートゥース(Bluetooth:登録商標)による通信方式に適合したものである場合、その電波到達範囲は半径10m程度である。従ってエリアA〜Cのそれぞれは直径20mでありその中心に位置情報送信ユニット100a〜100cを設置する。地下街や建物内の照明器具用ソケットなどの設置間隔は数mの単位であるから、各位置情報送信ユニット100a〜100cの電波の干渉が起きない間隔でエリアA〜Cを区切って設置することは容易である。
【0063】
携帯端末30がエリアAの範囲に入ると、位置情報送信ユニット100aからの位置情報、すなわち、位置情報送信ユニット100aが設置された場所の緯度、経度、階の情報が携帯端末30に送信され、携帯端末30は情報配信サーバ20その他のサーバに現在位置を通知することができる。この場合、携帯端末30と情報配信サーバ20との間は、インターネットなどのネットワークを介して通信可能な状態にあることが必要である。現在では地下鉄施設内を始め、地下街や建物内においても携帯電話の使用が可能なように中継施設や基地局が設置されていることが多く、このような設備を構築すれば十分実用に供することができ、携帯端末30と情報配信サーバ20などとの間でデータ通信が可能である。
【0064】
本実施例においては、図6に示した位置情報送信ユニット100を、図4に示す各ノードの位置に設けられている照明設置位置に設置したものとして、以下の説明を行う。もちろん位置情報送信ユニット100を全てのノード位置に設置する必要はなく、少なくとも分岐点のノード、階をつなぐリンクにおける端点のノードの位置など、ガイドポイントとするノード位置に設置してあれば、携帯端末30がガイドポイントに到達したことを判断し、設定された音声ガイドを再生するなどの処理が行える。
【0065】
一般にナビゲーション装置においては、出発地、目的地、現在位置などをユーザにわかり易く表示するためにアイコンを表示している。このアイコンは、一般的には限られた種類のパターンを用意しておき、携帯端末30にプリインストールあるいは情報配信サーバ20からダウンロードさせて携帯端末30に蓄積しておくようにされる。例えば、出発地を「S」という文字アンコンで、目的地を「G」という文字アイコンで、現在位置を星印等の図形アンコンで表示するものである。
【0066】
本実施例においては、図8に示すようにエレベータ、エスカレータ、階段などリンクの種別に応じたわかり易いアンコンのパターンを用意しておき、携帯端末30が該当するリンクの端点であるノードに到達した時点で地図、案内経路とともに、このアイコンを表示することによって、視認しやすい表示を行う。図8において(a)はエスカレータで8階に上がることを意味するアイコン、(b)はエスカレータで階を下ることを意味するアイコン、(c)は階段で階を上がることを意味するアイコンである。図8(d)はエレベータで8階に上がることを示すアイコンであり、(e)はエレベータがバリアフリーであり、このエレベータで8階に上がることを示すアイコンである。先に述べたように、地図、案内経路は携帯端末30が現在位置する階だけについて表示するものであり、図9に示すように、その階の出発地をアイコン「S」として表示し、階をつなぐリンクであるエレベータがこの階における仮の目的地(ゴール)である。そして仮のゴール地点であるエレベータによるリンクの端点のノードには、図8(e)のようにエレベータで8階に上がるというアイコンを表示することによってユーザに視認し易い案内をすることができるようになる。このようなアイコンは、通常のナビゲーションシステムにも適用することが可能であり、タクシーのアイコンや鉄道会社毎に車両の色や特徴点を図形化したアイコン、地下鉄などの駅番号を示すアイコンなどを利用することができる。
【0067】
以上、説明した本発明にかかる通信ナビゲーションシステムにおける経路探索とその案内の手順について説明する。図10は、以上説明した本実施例にかかる通信ナビゲーションシステムにおける経路探索の手順を示すフローチャート、図11は案内経路のガイダンスを行う手順を示すフローチャートである。
【0068】
携帯端末30が地下街、建物内において、情報配信サーバ20と通信して経路探索、あるいは、案内経路のガイダンスや案内データを受けるためには、前述したように、地下街や建物内において、携帯端末30と情報配信サーバ20との間のデータ通信環境が整っていること、経路探索サーバに前述したような経路データ(地図データ)が蓄積されていることが前提条件となる。このような前提条件が満たされているものとして以下に経路探索、経路案内の手順を説明する。また、携帯端末30は通常の通信ナビゲーションシステムにも対応するものであって、GPS処理部36を備えており測位を行うことができるものとする。
【0069】
図10のフローチャートにおいて、携帯端末30は、ステップS120において、ユーザによって、前述した出発地、目的地、移動手段などの経路探索の要件が入力、決定される。次に、携帯端末30は、ステップS121でこれらの経路探索の要件を情報配信サーバ20に経路探索要求として送信する。情報配信サーバ20は、携帯端末30から送られた経路探索の要件に従って、ステップS122において経路探索部24によって図3ないし図5を用いて説明した地図データを参照して、出発地から目的地まで、階をまたがった経路を探索する。この探索の手法は前述したダイクストラ法などの方法を使用することができる。探索の結果、最短の経路を案内経路とする。同時に、案内経路データ、ガイドポイントと音声案内の案内パターンを設定した案内データを作成する。
【0070】
次に、情報配信サーバ20は、ステップS123〜ステップS125でそれぞれ、階毎の地図データを分離、階毎の案内経路データを分離、階毎の案内データを分離する。そして、情報配信サーバ20は、ステップS126で携帯端末30から現在位置情報(緯度、経度、階の情報からなる)データを受信する。携帯端末30が位置情報を測位する方法は図7で説明した位置情報送信ユニット100から得ることは既に説明した。ステップS127で携帯端末30から地図・経路データ(地図データ、案内経路データ、案内データ)の要求があれば、情報配信サーバ20は、携帯端末30から受信した位置情報に基づいて、データ配信部25がステップS127において携帯端末30が位置する階の地図データ、案内経路データ、案内データ(ステップS123〜125で階毎に分離したデータ)を携帯端末30に配信して処理を終了する。携帯端末30から地図・経路データの要求が無ければそのまま処理を終了する。携帯端末30が移動して新たな位置情報を測位すると、ステップS121からステップ128の処理が繰り返され、他の階に移動すると、その階の地図データ、案内経路データ、案内データが携帯端末30に配信される。
【0071】
次に、情報配信サーバ20から地図データ、案内経路データ、案内データを受信した携帯端末30における地図、経路の描画および案内(ガイダンス)の手順について図11に示すフローチャートを参照して説明する。
【0072】
携帯端末30が地図データ、案内経路データなどの配信を受けるにあたって、出発地と目的地の位置情報(階の情報を含む)、移動手段などの経路探索の要件は、携帯端末30から情報配信サーバ20に送られ、情報配信サーバ20において既に出発場所から目的の場所までの経路探索が完了しているものとする。このような状態で、経路案内が開始され、ステップS101において、携帯端末30は現在位置するエリアに設置された位置情報送信ユニット100に位置情報を要求する。ステップS102において、携帯端末30が位置情報送信ユニット100から位置情報の受信を完了していなければステップS102の受信ステップを繰り返し、位置情報の受信が完了していればステップS106に進む。ステップS102で位置情報の受信にエラーがあれば、ステップS103に進みGPS測位を要求する。ステップS104でGPS測位が完了していなければステップS104の測位を繰り返し、完了していれば、ステップS106に進む。ステップS104でGPS測位にエラーがあれば、ステップS105でエラー表示をして処理を終了する。一方、ステップS102で位置情報送信ユニット100からの位置情報受信が完了した場合には、ステップS103、ステップS104のGPS測位の手順は行われない。
【0073】
このステップS101〜ステップS105の手順は、GPS測位に対して位置情報送信ユニット100から位置情報を得る手順を優先するための手順である。すなわち、位置情報送信ユニット100から位置情報を受信できる場所に携帯端末30が存在する場合には、GPS測位を無効にする手順をとるものである。一般的に位置情報送信ユニット100から位置情報を取得できる場所に携帯端末30が位置するということは地下街や建物内に携帯端末30が位置することを意味しており、この場合にはGPS衛星からの信号が受信できない場所である確率が高い。位置情報送信ユニット100とGPS衛星からの信号の両方が受信できる場所は地下街の入り口あるいは建物の入り口などであって、この場合、地下街や建物の内部に入る可能性も高く、携帯端末30側でGPS測位を無効にして位置情報送信ユニット100からの位置情報を得るようにしても、通常のナビゲーション、地下街や建物内の案内に不都合がないためである。
【0074】
次いで、ステップS106において携帯端末30は情報配信サーバ20と通信し、位置情報送信ユニット100から受信した位置情報を情報配信サーバ20に送信し、携帯端末30が位置する場所(緯度、経度、階)の地図データ、案内経路データまたはガイドポイントを含む案内データなどの送信を要求する。ステップS107で要求したデータの受信が完了していなければ、ステップS107の受信処理を繰り返し、ステップS107で受信が完了すれば、ステップS108で情報配信サーバ20から受信した地図を携帯端末30の表示部に描画する。そして、ステップS109で携帯端末30の位置がガイドポイントであるかを判定し、ガイドポイントであれば、ステップS110でそのガイドポイントに設定された音声案内を行ってステップS111に進み、ガイドポイントでなければ、ステップS110の案内処理を飛ばしてステップS111に進む。ステップS111では携帯端末30の位置が目的の場所(目的地)であるか否かが判断され、目的の場所に到達していれば処理を終了し、目的の場所に到達していなければ、ステップS101の処理に戻る。
【0075】
以上、詳細に説明したように、本発明にかかる通信ナビゲーションシステムにおいては、リンクデータに属性として「階」の情報を示す属性情報を付加する(「階」をつなぐリンクには階情報を付加せず他の属性情報とする)ことによって、リンクをたどっていった時に、階情報が付加されていないリンクに到達したらその手前のノードが階をつなぐリンクの入口(起点)で、先のノードがその出口(終点)であるとシンプルに判定できるようになる。
【0076】
また、ここで表示される地図データは、地図データに「階」の情報を付加したものであるから、地図データを表示する際には、階ごとの地図データを提供することによって視認し易い経路の案内を提供することができ、更に、GPS測位が不能になる地下街などで、携帯端末に現在位置の情報、特に、緯度、経度と「階」の情報を与える位置情報提供手段として、照明設備用電源のソケットなどの電源供給部を利用して無線IDタグやブルートゥース(Bluetooth:登録商標)を利用したタグに相当する位置情報送信ユニット(無線送信機)を設置し、位置情報送信ユニットには設置位置の緯度、経度、階の情報を位置情報として記憶させておくことにより、案内経路をガイドするための位置情報を容易に提供できるようになる。
【0077】
このように構成した通信ナビゲーションシステムによれば、地下街や建物内部であっても、階をまたいだ経路探索を効率的に行うことができ、また、探索した案内経路を視認しやすく携帯端末30に表示させることができ、更に、案内経路をガイドするための位置情報を携帯端末に容易に提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明にかかる通信ナビゲーションシステムを構成する情報配信サーバと携帯端末の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明にかかる通信ナビゲーションシステムが経路案内のサービスを提供する地下街、建物などの構造物の例を示す平面図である。
【図3】地下街や建物などの構造物を断面で示した断面図である。
【図4】図2の平面図におけるノードの位置を示す平面図である。
【図5】図2の平面図におけるリンクの位置を示す模式図である。
【図6】携帯端末に位置情報を送信する位置情報送信ユニットの構成を示す模式図である。
【図7】位置情報送信ユニットを地下街や建物内部の照明用電源を利用して所定の間隔で多数設置した状態を示す概念図である。
【図8】ガイドポイントで携帯端末に表示するアイコンを示す図である。
【図9】携帯端末に表示される地図、案内経路、アイコン等の表示画面例を示す図である。
【図10】本発明にかかる通信ナビゲーションシステムにおける経路探索の手順を示すフローチャートである。
【図11】本発明にかかる通信ナビゲーションシステムにおける案内経路のガイダンスの手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0079】
10・・・・通信ナビゲーションシステム
12・・・・ネットワーク
20・・・・情報配信サーバ
21・・・・主制御部
22・・・・送受信部
23・・・・地図DB(地図データベース)
24・・・・経路探索部
25・・・・データ配信部
26・・・・案内ポイントデータ作成部
27・・・・案内データDB(案内データデータベース)
28・・・・アイコンDB(アイコンデータベース)
30・・・・携帯端末
31・・・・主制御部
32・・・・経路探索要求部
33・・・・案内データ記憶部
34・・・・地図・経路記憶部
35・・・・位置情報受信部
36・・・・GPS処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末と情報配信サーバとがネットワークを介して接続される通信ナビゲーションシステムであって、
前記携帯端末は、出発地と目的地の階を含む位置情報とともに経路探索要求を送信する経路探索要求部を備え、
前記情報配信サーバは、ノードデータとリンクデータとコストデータからなる地図データを蓄積した地図データベースと経路探索部とを備え、
前記リンクデータには各リンクに該リンクが位置する階の情報を属性情報として付加し、階をつなぐリンクには前記階の情報とは異なる属性情報を付加し、
前記経路探索部は、携帯端末からの経路探索要求に基づいて前記地図データベースを参照して出発地から目的地に至るリンクをたどり、最適なリンクを案内経路として決定することを特徴とする通信ナビゲーションシステム。
【請求項2】
前記経路探索部は、前記探索した案内経路および地図データを階毎に分離し、前記携帯端末に配信することを特徴とする請求項1に記載の通信ナビゲーションシステム。
【請求項3】
出発地と目的地の階を含む位置情報とともに経路探索要求を送信する経路探索要求部を有する携帯端末がネットワークを介して接続される通信ナビゲーションシステムを構成する情報配信サーバであって、前記情報配信サーバは、ノードデータとリンクデータとコストデータからなる地図データを蓄積した地図データベースと経路探索部とを備え、
前記リンクデータには各リンクに該リンクが位置する階の情報を属性情報として付加し、階をつなぐリンクには前記階の情報とは異なる属性情報を付加し、
前記経路探索部は、携帯端末からの経路探索要求に基づいて前記地図データベースを参照して出発地から目的地に至るリンクをたどり、最適なリンクを案内経路として決定することを特徴とする情報配信サーバ。
【請求項4】
前記経路探索部は、前記探索した案内経路および地図データを階毎に分離し、前記携帯端末に配信することを特徴とする請求項3に記載の情報配信サーバ。
【請求項5】
出発地と目的地の階を含む位置情報とともに経路探索要求を送信する経路探索要求部を有する携帯端末がネットワークを介して接続される通信ナビゲーションシステムを構成する情報配信サーバであって、ノードデータとリンクデータとコストデータからなる地図データを蓄積した地図データベースと経路探索部とを備え、前記リンクデータには各リンクに該リンクが位置する階の情報を属性情報として付加し、階をつなぐリンクには前記階の情報とは異なる属性情報を付加した情報配信サーバを構成するコンピュータに、
携帯端末からの経路探索要求に基づいて前記地図データベースを参照して出発地から目的地に至るリンクをたどり、最適なリンクを案内経路として決定する経路探索部としての処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】
前記情報配信サーバを構成するコンピュータに、
携帯端末からの経路探索要求に基づいて前記地図データベースを参照して出発地から目的地に至るリンクをたどり、最適なリンクを案内経路として決定し、探索した案内経路および地図データを階毎に分離する経路探索部としての処理を実行させることを特徴とする請求項5に記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−17647(P2006−17647A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197653(P2004−197653)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(500168811)株式会社ナビタイムジャパン (410)
【Fターム(参考)】