説明

通信ネットワークにおいて制約されたユーザ・インタフェース

通信システム(10)において、アプリケーションを選択するためのユーザ・インタフェース(例えば、ハイパーリンク)の起動は、アプリケーションに影響を及ぼし得る1つまたはそれ以上の状態(条件)に依存する。各状態が、対応する閾値の範囲をはずれているかどうかを決定するために状態のモニタリング(監視)が行われる。もしはずれていれば、そのインタフェースは、部分的にまたは完全に制約される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイパーリンク(hyperlink)のようなユーザ・インタフェースを、1つまたはそれ以上の制約・制限(constraints)に従って、制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、種々の異なる無線(ワイヤレス)アクセス・ネットワークが、存在する。加入者は、例えば、TDMA(時分割多重アクセス方式)、CDMA(符号分割多重アクセス方式)および携帯電話のGSMサービスを提供する無線電話(ワイヤレス・テレフォニ)ネットワークのプロバイダから、音声およびデータの通信能力を得ることができる。現在、当技術分野で知られている第3世代の移動体通信システムの無線電話規格UMTS‐3GPPに従って、サービスを提供する無線電話サービス・プロバイダもある。更に、無線LAN技術の分野における進歩の結果、休憩施設、カフェ、図書館のような公共の施設でアクセスできる無線LAN(例えば、「ホット・スポット(hot spot)」)が出現している。現在、無線LANは、私的なデータ・ネットワーク(例えば、企業内イントラネット)、または公的なデータ・ネットワーク(例えば、インターネット)へのアクセスを利用者に提供する。無線LANを実行し運営するための比較的低コストおよび利用可能な高帯域幅(通常、10メガビット/秒を超える)により無線LANは、携帯(モバイル)端末の利用者が、外部ソースとパケット交換できる理想的なアクセス機構となっている。
【0003】
現存する種々の無線ネットワークによれば、携帯端末の利用者(ユーザ)は、異なる場所で異なる時間に異なるネットワークに容易に接続できる。各無線ネットワークは、一定レベルのサービス品質(QoS:Quality of Service)、および関連するアクセス・コストを有する。或るネットワーク内で利用できるサービス品質(QoS)レベルは、利用者がアクセスしたいと思うアプリケーションをサポートしないかもしれない。現在アクセスを提供しているネットワークで得られるよりも大きなリソース(即ち、より高いサービス品質(QoS)レベル)を必要とするアプリケーションを実行したいと思う利用者は、そのアプリケーションを実行しようとするときに困難に遭遇する。例えば、そのアクセス・ネットワーク内で利用できる十分な帯域幅(バンド幅)が存在しない場合、ストリーミング・ビデオを含んでいるアプリケーションを実行しようとすると、そのアプリケーションの性能が損なわれる。
【0004】
現在、アプリケーションを実際に実行するまでは、選択したアプリケーションをネットワークがサポートできないことについて、ユーザは事前の知らせを受け取れない。ストリーミング・ビデオの期待はずれのがっかりさせる再生のような、アプリケーションの不満足な性能にもかかわらず、携帯端末の利用者は、選択したアプリケーションを実行するために無線ネットワーク・サービスのプロバイダにより課されるアクセスの変更をこうむる。
【0005】
従って、十分なネットワーク・リソース(資源)が、存在しない場合、或る制約・制限に従って、少なくとも1つのユーザ・インタフェース(例えば、クリックすると関連ページへ移動できるハイパーリンク)の起動を制御し、起動を阻止し、または少なくとも制限して、上述した欠点を解決するための技術が必要である。
【発明の開示】
【0006】
(発明の概要)
簡略すると、本発明の原理により、利用者が選択したアプリケーションを実行するためのハイパーリンクのような、少なくとも1つのユーザ・インタフェースの起動を制御する方法が得られる。この方法では、アプリケーションの性能に影響を及ぼし得る少なくとも1つの状態(condition:条件、状況)をモニタ(監視)して、モニタされた状態が、閾値の限度内にあるかどうか判定する。モニタされた状態が、閾値の限度内にないことが判定されると、ユーザ・インタフェースは、完全にまたは部分的に制約される。完全に制約されるとユーザ・インタフェース(ハイパーリンク)は動作不能となり、ユーザの選択したアプリケーションの実行を完全に阻止する。完全な制約とは異なり、部分的に制約されたユーザ・インタフェースは起動できるが、ユーザによる何か付加的な行為(例えば、希望して選択したアプリケーションの実行が標準以下になることを確かめて容認する)の後にはじめて起動できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1に示す通信システム10は、データ・ネットワーク(インターネット14)を介して相互に作用する、少なくとも1つの(複数が好ましい)無線アクセス・ネットワーク(セル状ネットワーク12と無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)13)を具える。通信リンク15と16は、インターネット14を無線ネットワーク12とWLAN13にそれぞれ接続する。無線ネットワーク12とWLAN13は、少なくとも1つの(複数が好ましい)携帯端末の利用者(17と17)にアクセスさせる。図1で、携帯端末利用者17は、無線リンク18を介して無線電話ネットワーク12にアクセスし、携帯端末利用者17は、無線リンク18を介して無線LAN13にアクセスする。2002年6月28日に出願され本願譲受人トムソン・ライセンシングS.A.に譲渡された、同時係属米国特許出願No.10/186,019(本明細書の参考文献)は、ワイヤレス・テレフォニ(telephony)ネットワーク12およびWLAN13の実施例を開示している。
【0008】
実際に、無線電話(ワイヤレス・テレフォニ)ネットワーク12とWLAN13はそれぞれ、種々のアプリケーションをサポートする。所定のアプリケーションを実行するために、携帯(モバイル)端末の利用者(例えば、ユーザ17と17のうち一人)は、携帯端末のディスプレイ画面上でユーザ・インタフェース(例えば、ハイパーリンク)を起動する。そのアプリケーションがネットワーク自体に存在しない場合もあり、その場合、ネットワークはインターネット14を介してサーバ20にアクセスし、所望のアプリケーションを取得する。従って、例えば、ストリーミング・ビデオ・セグメントへのアクセスを取得するために、携帯端末のユーザ17はハイパーリンクを起動して、無線電話ネットワーク12をサーバ20にアクセスさせ、サーバ20から、リクエストされたストリーミング・ビデオ・セグメントを取得させる。
【0009】
これまで、利用者の選択したアプリケーションに関連するユーザ・インタフェース(例えば、ハイパーリンク)の起動に関しては如何なる制約も存在しなかった。従って、アプリケーションの実行に悪影響を及ぼす不十分な帯域幅のような状態が存在しても、利用者はユーザ・インタフェースを起動することができた。本発明の原理によれば、現在のリソースまたは利用者の特定の要件に従って、ユーザ・インタフェース(ハイパーリンク)を制約する技術が得られる。図2は、ユーザ・インタフェースを制約する方法のステップをフロー・チャートで説明する。図2の方法はステップ100で開始され、ステップ100で、利用者の選択したアプリケーションの局面の幾つかに影響を及ぼし得る、少なくとも1つの状態(条件)がモニタされる。例えば、ストリーミング・ビデオのような選択されたアプリケーションの実行を損なうほどに低下し得る通信リンクの帯域幅が、モニタされる状態として含まれる。モニタされる別の状態は最大リンク帯域幅である。選択されたアプリケーションを最大通信リンク帯域幅がサポートしない場合もある。
【0010】
一般に、アクセス・コストは、ユーザ・インタフェースを介して選択されたアプリケーションの実行に影響を及ぼす別の状態を構成する。無線サービスのプロバイダの多くは、種々の状態(2、3の例を挙げれば、リクエストされた帯域幅、その日の時刻、曜日など)により、異なるアクセス料金を課金する。特定のアプリケーションを選択すると、そのアプリケーションをサポートするために高帯域幅のリンクの使用を必要とすることを、携帯端末の利用者が十分に理解していない場合もある。従って、このようなアプリケーションを選択すると、選択時に利用者に知られていない多額のアクセス料金をこうむることがある。それゆえ、アクセス・コストも、実際の帯域幅に代り、または実際の帯域幅に加えて、ステップ100の間にモニタされる状態(条件)を構成する。ステップ100の間、その他の状態もモニタリングを正当化する。例えば、選択されたアプリケーションを満足に実行するには、利用者の端末が、ハードウェアとソフトウェアに関して或る性能を要求されかもしれない。従って、ステップ100の間に実行されるモニタリング(監視)ステップには、選択されたアプリケーションに要求される性能を利用者の端末が有するかどうか判定することも含まれる。
【0011】
ステップ100の間、上述した状態(条件)の少なくとも1つについて、モニタリングが行われる。実際、ステップ100の間、幾つかの状態(条件)が同時にモニタされることもある。モニタリングを正当化する状態の決定は、設計上の選択の問題となる。選択されたアプリケーションの実行に、或る状態が影響を及ぼす程度により、モニタされる状態が選択される。一般に、ステップ100のモニタリングは、無線電話ネットワーク12、またはWLAN13のような、無線アクセス・ネットワーク内で行われる。その精巧さと性能にも依るが、利用者の端末は、ステップ100で行われるモニタリングを実行する。実際、モニタリングは、ネットワークと利用者の端末との両方による行為を伴う。
【0012】
ステップ100につづき、ステップ110の間、モニタされた状態が規定の閾値内に入るかどうか点検がなされる。もしモニタされた状態がネットワークの帯域幅であれば、その閾値は、アプリケーションの実行の成功に必要とされる最少限度の帯域幅に相当する。もしモニタされた状態がアクセス・コストであれば、その閾値は、携帯端末の利用者に受け入れられる最大限度のアクセス料金に相当する。従って、ステップ100の間にモニタされた状態と比較される閾値は、その状態についての境界値に相当する。
【0013】
ステップ100でモニタされた各状態が、ステップ110で閾値の範囲内に入ることが確かめられると、プログラムの実行はステップ120に進み、選択されたアプリケーションに関連するユーザ・インタフェースは有効となる。従って、もしステップ100でモニタされた状態が実際の帯域幅であり、この帯域幅が、選択されたアプリケーションについて要求される最少限度値(ステップ110で決定された)を超えるならば、利用者が選択したアプリケーションに関連するハイパーリンクは有効となり、利用者はそのアプリケーションを選択することができ、その後、この方法は終了する(ステップ130)。
【0014】
ステップ110の間、モニタされた状態は、その対応する閾値の範囲からはずれるかもしれない。従って、実際の帯域幅は、選択されたアプリケーションに必要とされる帯域幅と等しくならないか、または携帯端末の利用者が認める料金を実際のアクセス料金が超過するかもしれない。このような状況下で、プログラムの実行は、ステップ120ではなく、ステップ140に進む。ステップ140の間、利用者の選択したアプリケーションに関連するユーザ・インタフェース(ハイパーリンク)は、部分的にまたは完全に制約される。完全に制約されたユーザ・インタフェースは動作不能となり、利用者による起動を排除する。実際に、ユーザ・インタフェースの不能に伴いメッセージが表示され、そのユーザ・インタフェースが起動できないことを携帯端末の利用者に警告する。このメッセージには利用者がユーザ・インタフェースを起動できない理由(帯域幅が不十分である、アクセス料金が過大である、など)が含まれる。ステップ140の後に、プログラムの実行は終了する(ステップ130)。ステップ140の間、ユーザ・インタフェースを完全に制約せずに一部だけ制約することもできる。例えば、実際のアクセスの変化が規定の最大量を超える場合、携帯端末の利用者は、その高いコストを負担する意志のあることをはっきり確認して、その関連するユーザ・インタフェース(ハイパーリンク)を起動する。
【0015】
動作の不能化(disablement)、および制御される起動(controlled activation)は、ユーザ・インタフェースを制約する2つの別個の機構を構成する。利用者の端末が、サーバ14によりダウンロードされる1ページの情報を受信すると、そのページ内の全てのハイパーリンクは、各ハイパーリンクに関連する制約を評価するための分析を受ける。1つ以上の状態がハイパーリンクの制約を正当化することが確かめられると、リンクは不能となり、そのリンクが動作不能とされていることを知らせるメッセージが利用者の端末に現れる。携帯端末の利用者が無線電話ネットワーク12から無線LAN13に移行するときに生じる状態の変化は、1つ以上のハイパーリンクの再評価を起こす引き金となり、ハイパーリンクの幾つかは動作可能となる。
【0016】
制御される起動は、ハイパーリンクを制約する別の機構を構成する。事前にハイパーリンクを不能とせずに、ハイパーリンクを起動しようとする携帯端末利用者の試みは、制約(もしそのハイパーリンク上にあれば)の評価を起こす引き金となる。もし制約が存在する(即ち、モニタされた状態がその対応する閾値の範囲外にある)ならば、そのリンクは起動されない。利用者は、そのハイパーリンクを起動できない理由について通知を受け取ることができる。利用者の端末は起動の試みを記録する。ハイパーリンクの制約を正当化しない状態(条件)が変化すると、利用者はそのリンクが有効となっているとの通知を受け取る。
【0017】
一例として、以下のコード・セグメントは、HTMLで書かれ制約されたハイパーリンクを示す(注:HTMLの拡張タグは、説明のためのものであって規格の一部ではない)。




【0018】
このハイパーリンクが指定する制約は、少なくとも最少レート(MinRate)80Kbpsと、中間(平均)レート(MeanRate)100Kbpsを必要とする。アクション(Action)項は、指定された制約に合わないとハイパーリンクを不能にすることを明記する。残りのタグは正規のHTMLタグであって、これはテキスト「Entertainment News(エンタテインメント・ニュース)」と共にリンク http://www.technicolor.com/video/enews.mpg を指定する。このHTMLページが、ブラウザに表示されると、制約に影響を及ぼす種々のパラメータ(例えば、ネットワーク・アクセスのスループットが、要求されるレートに合うかどうか)により、このリンクは、動作可能に、または動作不可能にされる。
【0019】
上述した事項は、1つまたはそれ以上の制約・制限(constraint)に従って、ユーザ・インタフェース(例えば、ハイパーリンク)を制御するための技術である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の、制約されたユーザ・インタフェース技術を実行する通信ネットワークの概略をブロック図で示す。
【図2】ユーザ・インタフェースを制約するための本発明の方法のステップをフロー・チャートで示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が、アプリケーションを選択し実行するための少なくとも1つのユーザ・インタフェースの起動を制御する方法であって、
アプリケーションの性能に影響する少なくとも1つの状態をモニタするステップと、
前記モニタされた状態に合っているかどうか判定するステップと、
前記判定の結果、合っていれば、前記1つのユーザ・インタフェースを制約するステップと、
からなる、前記方法。
【請求項2】
前記モニタするステップで、前記アプリケーションを取得するために前記利用者がアクセスする通信ネットワーク内で前記1つの状態をモニタする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記モニタするステップで、前記利用者が、前記アプリケーションを取得する携帯端末において、前記1つの状態をモニタする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記モニタするステップで、前記アプリケーションを取得するために前記利用者がアクセスする通信ネットワークの実際の帯域幅をモニタする、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記モニタするステップで、前記アプリケーションを取得するために前記利用者がアクセスする通信ネットワークにより課金されるアクセス料金をモニタする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記1つのユーザ・インタフェースを制約するステップで、起動を不可能にするために前記1つのユーザ・インタフェースを完全に制約する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記1つのユーザ・インタフェースを制約するステップで、起動を制限するために前記利用者を部分的に制約する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記1つのユーザ・インタフェースを制約するステップで、起動を遅延させるために前記利用者を部分的に制約する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記ユーザ・インタフェースの動作不能についてメッセージを表示するステップを更に含む、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記ユーザ・インタフェースの制限についてメッセージを表示するステップを更に含む、請求項7記載の方法。
【請求項11】
利用者がアプリケーションを選択し実行するための少なくとも1つのユーザ・インタフェースの起動を制御するシステムであって
前記アプリケーションの性能に影響を及ぼす少なくとも1つの状態をモニタする手段と、
前記モニタされた状態が、対応する閾値の範囲外にあるかどうか判定する手段と、
前記1つのユーザ・インタフェースを制約する手段と、
からなる、前記システム。
【請求項12】
前記アプリケーションを取得するために前記利用者がアクセスする通信ネットワークにおいて、前記モニタ手段が前記1つの状態をモニタする、請求項11記載のシステム。
【請求項13】
前記利用者が前記アプリケーションを取得する携帯端末を前記モニタ手段が含む、請求項11記載のシステム。
【請求項14】
前記アプリケーションを取得するために前記利用者がアクセスする通信ネットワークの実際の帯域幅を前記モニタ手段がモニタする、請求項11記載のシステム。
【請求項15】
前記アプリケーションを取得するために、前記利用者がアクセする通信ネットワークにより課金されるアクセス料金を前記モニタ手段がモニタする、請求項11記載のシステム。
【請求項16】
前記制約する手段が、起動を不可能にするために1つのユーザ・インタフェースを完全に制約する、請求項11記載のシステム。
【請求項17】
前記制約する手段が、起動を制限するためにユーザ・インタフェースを部分的に制約する、請求項11記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2006−500868(P2006−500868A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−539895(P2004−539895)
【出願日】平成15年9月24日(2003.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2003/030222
【国際公開番号】WO2004/029756
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
【Fターム(参考)】