説明

通信ネットワークにおける複合型マルチレイヤメッシュ回復方法およびシステム

【課題】任意のネットワーク階層における障害を回復できる費用対効果の高いネットワークアーキテクチャを提供する。
【解決手段】ネットワーク中の光レイヤでの潜在的リンク障害を障害の生じたトラフィック量の少ない順にソートする。また、障害の生じたトラフィック量の少ない順で潜在的光リンク障害毎に、潜在的光リンク障害の上位層での回復を用いて、潜在的光リンク障害と関連する上位層の既存リンクに要求される上位層の追加リンク容量を決定し、光レイヤでの回復を用いて、潜在的光リンク障害と関連する前記上位層の既存リンクを回復するために要求される前記光レイヤの追加容量を決定し、決定された前記上位層の追加リンク容量および決定された前記光レイヤの追加容量に基づいて、前記潜在的光リンク障害と関連する前記上位層の既存リンクの回復のために、前記上位層および前記光レイヤの内の1つを回復レイヤとして選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2011年10月5日に出願された“Hybrid Multi-layer Mesh Restoration in Optical Networks”と題する米国仮出願第61/543,583号の優先権を主張し、その全体が本願明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して通信ネットワークに関し、特に、光通信ネットワークにおける複合型マルチレイヤメッシュ回復の方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
電気通信システム、ケーブルテレビシステム、およびデータ通信システムでは、遠隔地点間で多量の情報を迅速に伝送するために光ネットワークが用いられる。光ネットワークでは、情報は、光ファイバを介して光信号の形式で伝送される。光ファイバは、長距離に渡って低損失で信号を通信可能な細長い一連のガラスで構成される。
【0004】
電気通信では、情報は、Open System Interconnection Reference Model(OSI参照モデルまたはOSIモデル)に従ってしばしば送信され、受信され、処理される。その最も基本的な形式では、OSIモデルは、ネットワークアーキテクチャをアプリケーション層、プレゼンテーション層、セッション層、トランスポート層、ネットワーク層、データリンク層、物理層の上層から下層までの7階層に分け、それらの層は、レイヤ7(L7)、レイヤ6(L6)、レイヤ5(L5)、レイヤ4(L4)、レイヤ3(L3)、レイヤ2(L2)、およびレイヤ1(L1)としてもそれぞれ知られている。このため、OSI7階層モデルとしばしば称される。
【0005】
レイヤ1は、典型的には、装置の電気的物理的な仕様を定義する層である。具体的には、レイヤ1は、銅または光ケーブル等の伝送媒体と装置との関係を定義し得る。これには、ピンのレイアウト、電圧、ケーブルの仕様、ハブ、中継器、ネットワークアダプタ、ホストバスアダプタ(ストレージエリアネットワークに使用されるHBA)等が含まれる。光ネットワークでは、レイヤ1は、「光レイヤ」とも称される。
【0006】
レイヤ2は、典型的には、広域ネットワークの隣接ノード間または同じローカルエリアネットワーク・セグメント上のノード間のデータを転送する層である。レイヤ2は、ネットワーク・エンティティ間でデータを転送する機能および手続方法を提供し、また、レイヤ1で生じ得るエラーを検出し、場合によっては訂正する方法を提供し得る。レイヤ2プロトコルの一例としては、ローカルエリアネットワーク(多ノード)用のイーサネット(登録商標)、2点(2ノード)接続用のPoint-to-Point Protocol(PPP)、HDLC、およびADCCPが挙げられる。レイヤ2のデータ転送は、スイッチとして周知の装置により処理され得る。
【0007】
レイヤ2がレイヤ3パケットのペイロードの搬送に関与し、レイヤ3エンティティ間の通信を可能にするのに対して、レイヤ3は、介在するホストを通過するルーティングを含むエンド・ツー・エンド(送信元から宛先まで)のパケット配信に関与する。レイヤ3プロトコルの最もよく知られた例としては、おそらくインターネットプロトコル(Internet Protocol、IP)が挙げられ、それ故、レイヤ3は、「IPレイヤ」としばしば称される。レイヤ3のデータ転送は、ルータとして周知の装置により処理され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
光通信ネットワークを含む通信ネットワークでは、高い信頼性と可用性を実現するために、特定の通信経路に障害が発生した場合に冗長の予備の通信経路が利用できるように、そうしたネットワークに冗長性がしばしば持たされる。メッシュネットワークでは、主経路の障害に応じて予備経路を利用することを「メッシュ回復(mesh restoration)」と称し得る。ネットワークの障害は、多層のネットワーク階層において多様なソースから起こり得る。ネットワーク回復設計における主な試みの1つは、任意のネットワーク階層における障害を回復できる費用対効果の高いネットワークアーキテクチャを開発することである。
【0009】
光レイヤでの回復は、広く研究されており、光レイヤでの回復技術は、成熟しているが、多くのIPネットワークでは、純然たるIPレイヤでの回復が現在要望されている。この要望の主な理由の1つには、光レイヤでは、IPレイヤでの障害を回復できないため、IPレイヤでの障害回復のためには、IPレイヤの追加容量がなお必要とされ、純然たるIPレイヤでの回復と比較してコスト面での優位性がない結果となることが挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の実施形態に従った方法は、ネットワーク中の光レイヤでの潜在的リンク障害を障害の生じたトラフィック量の少ない順にソートする。また、障害の生じたトラフィック量の少ない順で潜在的光リンク障害毎に、潜在的光リンク障害の上位層での回復を用いて、潜在的光リンク障害と関連する上位層の既存リンクに要求される上位層の追加リンク容量を決定し、光レイヤでの回復を用いて、潜在的光リンク障害と関連する前記上位層の既存リンクを回復するために要求される前記光レイヤの追加容量を決定し、決定された前記上位層の追加リンク容量および決定された前記光レイヤの追加容量に基づいて、前記潜在的光リンク障害と関連する前記上位層の既存リンクの回復のために、前記上位層および前記光レイヤの内の1つを回復レイヤとして選択する。
【発明の効果】
【0011】
本開示の1つ以上の技術的優位性は、本明細書に含まれる図面、説明、および請求項から当業者であれば容易に理解し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本開示の実施形態に従った例示的なネットワークのブロック図である。
【図2】本開示の実施形態に従った例示的なネットワーク要素のブロック図である。
【図3】本開示の実施形態に従った、純然たるIPレイヤでの回復と比較される例示的な複合型マルチレイヤメッシュ回復スキームを描写するブロック図である。
【図4】本開示の実施形態に従った、障害の生じたIPリンクでのネットワークインタフェース(ルータラインカードやWDMラインカード等)の再利用を容易にするために用いられ得る再構成可能な光レイヤ技術の説明図である。
【図5】本開示の実施形態に従った例示的な複合型マルチレイヤメッシュ回復方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明およびその特徴や優位性をよりよく理解するために、添付の図面と併せて以下に説明する。
【0014】
本発明の実施形態およびその優位性は、様々な図面の同様のまたは対応する部分に同様の番号が付されている図1〜図5を参照することによって、より理解される。
【0015】
図1は、本開示のある実施形態に従った例示的なネットワーク10のブロック図である。ある実施形態では、ネットワーク10は、イーサネットワークであり得る。ネットワーク10は、ネットワーク10の構成要素によって通信される1つ以上の信号を伝送するよう動作する1つ以上のリンク12を含む。リンク12によって相互が連結されたネットワーク10の構成要素には、複数のネットワーク要素102が含まれ得る。図示したネットワーク10では、各ネットワーク要素102は、4つの他のノードと連結される。しかしながら、ネットワーク10は、任意の適切な数のネットワーク要素102の任意の適切な構成によって作り出され得る。ネットワーク10は、短距離のメトロポリタンネットワーク、長距離の都市間ネットワーク、または任意のその他の適切なネットワークもしくはネットワークの組み合わせに用いられ得る。
【0016】
各々のリンク12は、ネットワーク装置102を相互に通信的に連結し、かつ対応するネットワーク装置102間で情報を通信するように構成された任意のシステム、機器、または装置を含み得る。例えば、伝送媒体12には、光ファイバ、イーサネットケーブル、T1ケーブル、WiFi信号、Buluetooth信号、またはその他の適切な媒体が含まれ得る。
【0017】
ネットワーク10は、リンク12を通じて情報または「トラフィック」を通信し得る。そうしたトラフィックには、音声、画像、文字、および/もしくは任意のその他の適切なデータを符号化するよう構成された光信号または電気信号が含まれ得る。データは、リアルタイムまたは非リアルタイムであってもよい。トラフィックは、任意の適切な通信プロトコルを介して通信され得、そうした通信プロトコルには、Open System Interconnection(OSI)標準およびインターネットプロトコル(Internet Protocol、IP)が含まれるが、これらに限定されない。また、ネットワーク10で通信されるトラフィックは、任意の適切な方法で構造化され得、非限定的には、フレーム、パケットに構造化され、または非構造化ビットストリームであり得る。
【0018】
ネットワーク10中の各ネットワーク要素102は、トラフィックを送受信するよう動作する任意の適切なシステムを含み得る。図示した実施形態では、各ネットワーク要素102は、1つ以上の他のネットワーク要素102へトラフィックを直接送信でき、1つ以上の他のネットワーク要素102からトラフィックを直接受信するよう動作し得る。ネットワーク要素102については、図2に関してより詳細に以下で説明する。
【0019】
開示の範囲から逸脱することなく、ネットワーク10に変更、追加、または省略が行われ得る。記載したネットワーク10の構成要素および素子は、個別のニーズに従って統合または分離され得る。また、ネットワーク10の運用は、より多くの、もしくはより少ない構成要素、または他の構成要素によって実施され得る。
【0020】
図2は、本開示のある実施形態に従った例示的なネットワーク要素102のブロック図である。上述したように、各ネットワーク要素102は、1つ以上のリンク12を介して1つ以上の他のネットワーク要素102と連結され得る。しかしながら、実施形態によっては、全てのネットワーク要素102が図2に示したように直接連結されなくてもよい。各ネットワーク要素102は、一般的には、1つ以上の他のネットワーク要素102からデータを受信し、および/または1つ以上の他のネットワーク要素102にデータを送信するように構成され得る。ある実施形態では、ネットワーク要素102は、ネットワーク要素102が受信したデータをネットワーク要素102と連結した別の装置(例えば、別のネットワーク要素102)へ送信するように構成されたスイッチまたはルータを含み得る。
【0021】
図2に示したように、ネットワーク要素102は、プロセッサ103、メモリ105、スイッチング素子104、およびスイッチング素子104と通信的に連結された1つ以上のネットワークインタフェース106を含み得る。
【0022】
プロセッサ103は、プログラム、命令、および/もしくは処理データを解釈ならびに/または実行するように構成された任意のシステム、機器、または装置を含み得、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、Digital Signal Processor(DSP)、Application Specific Integrated Circuit(ASIC)、またはプログラム、命令、および/もしくは処理データを解釈ならびに/または実行するように構成された任意のその他のデジタルもしくはアナログ回路を含み得るが、これらに限定されない。実施形態によっては、プロセッサ103は、メモリ105および/もしくはネットワーク要素102の別の構成要素に格納されたプログラム、命令、および/もしくは処理データを解釈ならびに/または実行し得る。図2には、ネットワークインタフェース106から独立した構成要素としてプロセッサ103が図示されているが、実施形態によっては、ネットワークインタフェースおよび/またはネットワーク要素102の他の構成要素上に1つ以上のプロセッサ103が存在し得る。
【0023】
メモリ105は、プロセッサ103と通信的に連結され得、プログラム、命令、および/もしくはデータを一定時間保持するように構成されたシステム、機器、または装置(例えば、コンピュータ読み取り可能媒体)を含み得る。メモリ105は、Random Access Memory(RAM)、Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory(EEPROM)、PCMCIAカード、フラッシュメモリ、磁気記憶装置、光磁気記憶装置、またはネットワーク要素102への電源切断後にデータを保持し得る揮発もしくは不揮発性のメモリの任意の適切な選択または配列であり得る。図2には、ネットワークインタフェース106から独立してメモリ105が図示されているが、実施形態によっては、ネットワークインタフェース106および/またはネットワーク要素102の他の構成要素上に、1つ以上のメモリ105が存在し得る。
【0024】
図2に示すように、メモリ105は、回復モジュール108を含み得る。回復モジュール108は、本明細書で詳述するように、複合型マルチレイヤ回復を独立してまたは他のネットワーク要素102の回復モジュール108と共同して実行するように構成された任意のシステム、機器、または装置を含み得る。実施形態によっては、回復モジュール108は、プロセッサ103が読み取り実行し得るプログラムの命令に具現化され得る。回復モジュール108は、メモリ105上に格納されるものとして図示されているが、実施形態によっては、回復モジュール108は、ネットワーク要素102のハードウェア部品および/またはファームウェア部品に実装され得る。また、回復モジュール108は、メモリ105上に格納されるものとして図示されているが、実施形態によっては、回復モジュール108は、ネットワーク要素102の別の構成要素の不可欠な部品であり得る(例えば、回復モジュール108は、ネットワークインタフェース106に不可欠であり得、またはネットワーク要素102の複数のネットワークインタフェース106に分配され得る)。
【0025】
スイッチング素子104は、ネットワークインタフェースを介してトラフィックを受信し、かつトラフィックを搬送するデータグラムの内容の分析に基づいておよび/またはデータグラムを搬送する信号の特徴(例えば、信号の波長および/もしくは変調)に基づいて、そうしたトラフィックを特定のネットワークインタフェース106および/またはポート110へ転送するように構成された任意の適切なシステム、装置、または機器を含み得る。例えば、ある実施形態では、スイッチング素子104は、スイッチファブリック(switch fabric、SWF)を含み得る。
【0026】
各ネットワークインタフェース106は、スイッチング素子104と通信的に連結され得、ネットワーク要素102とリンク12との間のインタフェースとして機能するように構成された任意の適切なシステム、装置、または機器であり得る。各ネットワークインタフェース106は、任意の適切な伝送プロトコルおよび/または伝送規格を用いて、自身と関連するネットワーク要素102が他のネットワーク要素102と通信できるようにし得る。ネットワークインタフェース106およびその各種構成要素は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの任意の組み合わせを用いて実装され得る。例えば、ある実施形態では、1つ以上のネットワークインタフェース106は、ネットワークインターフェースカードを含み得る。同じまたは別の実施形態では、1つ以上のネットワークインタフェース106は、ラインカードを含み得る。これらおよびその他の実施形態では、1つ以上のネットワークインタフェースは、Network Processing Unit(NPU)を含み得る。ネットワーク10が光IPネットワークである実施形態では、1つ以上のネットワークインタフェースは、Internet Protocol/Wavelength Division Multiplexing(IP/WDM)ラインカードを含み得る。
【0027】
図2に示したように、各ネットワークインタフェース106は、1つ以上の物理ポート110を含み得る。各物理ポート110は、対応するリンク12とネットワークインタフェース106との間の物理インタフェースとして機能するように構成された任意のシステム、機器、または装置を含み得る。例えば、物理ポート110は、イーサネットポート、光ポート、またはその他の適切なポートであり得る。実施形態によっては、通信トラフィックの「動作中」ないし「アクティブ」パスとして1つ以上のポート110が設計されると共に、「動作中」ないし「アクティブ」パスのリンク障害もしくはその他の障害の際に用いられる冗長的な「プロテクション」ないし「スタンバイ」パスとして他のポート110が設計され得るような冗長性スキームに物理ポート110は設定され得る。例えば、複数のポート110は、IEEE規格802.1AX−2008または別の適切な冗長性スキームに従ったリンクアグリゲーショングループのメンバーポートであり得る。
【0028】
運用中、1つ以上の回復モジュール108および/またはネットワーク要素102の1つ以上の他の構成要素は、複合型回復スキームを実施するように構成され得、その複合型回復スキームでは、いくつかの経路が1つの層(例えば、光レイヤないしレイヤ1)で回復され得ると共に、他の経路が別の層(例えば、IPレイヤないしレイヤ3)で回復され得る。例えば、動作中のトラフィックは、最短の経路ルーティングを用いて所定のIPネットワーク上を通過し得る。各々のファイバリンクに障害が生じると、選択されたIPリンクが光レイヤで回復され得、残りの障害の生じたトラフィックは、IPレイヤで回復され得る。ネットワークインタフェース106(例えば、ルータラインカードおよび/またはWavelength Division Multiplexing(WDM)ラインカード(例えば、光トランスポンダ))は、光レイヤ技術を用いて光学的に回復された、障害の生じたIPリンクで再度利用される。各々のルータの障害に対して、複合型の手法が適用され得る。その結果、想定される全ての障害の間に要求される最大容量が供給される。こうした複合型の回復を実施するために、少なくとも2つの重要な課題に対処する必要があり得る。(i)障害の生じたIPリンクにおいてルータラインカードおよびWDMラインカードを如何にして再度利用するか、および(ii)光レイヤで回復されるIPリンク一式を如何にして決定するかである。
【0029】
図3(a)〜図3(c)は、本開示の実施形態に従った、純然たるIPレイヤでの回復と比較される例示的な複合型マルチレイヤメッシュ回復スキームを描写するブロック図である。図3(a)は、A、B、C、D、およびEにラベルされたネットワーク要素102を含み、(C,D)での1つのファイバリンクの障害(例えば、CおよびDにラベルされたネットワーク要素102間のリンク12の障害)が2つのIPリンクの障害(C,D)および(A,D)を生じさせているIP/WDMネットワークを示す。図3(a)の一例に示すように、様々なネットワーク要素間のIPリンクは、任意の適切な伝送レートであり得る。この一例のために、ルータラインカードおよびWDMラインカードは、40Gbpsのレートで動作するものとする。
【0030】
図3(b)は、純然たるIPレイヤでの回復が用いられた場合に3つの追加のIP/WDMリンクが必要となる回復手法を示す。一方、図3(c)は、複合型メッシュ回復スキームが用いられた回復手法を示す。そうした複合型スキームでは、IPレイヤにおいて何らトポロジの変化が生じないように、動作中の経路C−Dからディスジョイントな光レイヤの経路C−B−D(曲線)を確立することによって、IPリンク(C,D)が光学的に回復され得る。また、IPリンク(A,D)上のトラフィックは、(経路A−C−Dに渡る点線により示された)別のIPレイヤの経路A−C−Dによって、IPレイヤにおいて回復され得る。IPリンク(C,D)上において、ルータラインカードおよびWDMラインカードは、共に再度利用され得る。したがって、追加のラインカードやその他のネットワークインタフェースは、回復のために何ら必要とされなくてよい。ただし、光学的な回復経路が対応する動作中の経路よりも長いと、光再生器等の追加のWDMレイヤ資源が必要とされ得る。
【0031】
図4(a)および図4(b)は、本開示に従った、障害の生じたIPリンクでのネットワークインタフェース(例えば、ルータラインカードやWDMラインカード)の再利用を容易にするために用いられ得る再構成可能な光レイヤ技術を示す。こうした再構成可能な光レイヤ技術は、Fiber Cross Connect(FXC)、Optical Transport Network(OTN)、またはカラーレスで無指向性であるNext-Generation Reconfigurable Add-Drop Multiplexer(NG−ROADM)を含み得るが、これらに限定されない。図4(a)に示すように、典型的なReconfigurable Add-Drop Multiplexer(ROADM)がFXCまたはOTN技術と共に用いられる場合には、ルータラインカードは、再度利用され得る。こうしたアーキテクチャでは、障害の生じたIPリンクを動作中の経路から光レイヤにおいてディスジョイントな回復経路へ変更するために、追加のWDMラインカードが必要となり得る。図4(b)に示すように、ルータラインカードおよびWDMラインカードは共に、NG−ROADMと共に再度利用され得、光レイヤでの回復のために追加のラインカードは何ら必要とされなくてよい。
【0032】
図5は、本開示の実施形態に従った複合型マルチレイヤメッシュ回復の例示的な方法500のフロー図である。方法500は、1つ以上の回復モジュール108および/またはネットワーク要素102の1つ以上の他の構成要素により実施され得る。一実施形態に従えば、方法500は、ステップ502において開始される。上述したように、本開示の技術は、ネットワーク10の多様な構成において実施され得る。そのため、方法500に望ましい開始地点や方法500に含まれるステップ502〜522の順序は、選択された構成に従い得る。
【0033】
ステップ502において、まず、光レイヤでの潜在的リンク障害が、障害の生じたトラフィック量の少ない順でソートされ得る。例えば、図3(a)の例では、光リンク(B,D)が120Gbpsのトラフィックを搬送し得るのに対して、光リンク(C,D)は、40Gbpsのトラフィックを搬送し得る。そこで、光レイヤでの潜在的リンク障害が少ない順でソートされる場合には、光リンク(B,D)より前に光リンク(C,D)がソートされる。
【0034】
ブロック504に示したように、ステップ506〜520は、所定の倍数因子毎に実施され得る。倍数因子は、IPレイヤでの回復に関連するコストを光レイヤでの回復に関連するコストと正規化して選択された因子であり得る(例えば、IPレイヤの構成要素は、実施にコストがよりかかり得るため、倍数因子は、IPレイヤの構成要素と光レイヤの構成要素との間の相対コストを占める値であり得る)。IPレイヤの構成要素と光レイヤの構成要素との間の相対コストは、一定であり得るが、コストの推定手法が粗くなり得、ノードの障害が考慮されていないという理由から、倍数因子は、相対コストに近似する範囲の値であり得る。一例として、倍数因子が大きい場合には、光レイヤでの回復のためにより多くのIPリンクが選択され、それ故、光レイヤでのリンク障害に必要となるルータラインカードはより少なくなる。しかしながら、これは、ルータノードでの障害に再度利用できる、光レイヤでのリンク障害に対するルータラインカードがより少なくなるため、ルータノードの障害回復に必要となるルータラインカードがより多くなる結果をもたらす。光レイヤでの回復のために選択されるIPリンク一式は、所定の要因に従って異なり得る。
【0035】
ブロック506に示すように、ステップ508〜516は、(例えば、ステップ502からの)ソートされた光レイヤでの潜在的リンク障害の順序で、光レイヤでの潜在的リンク障害i毎に実施され得る。
【0036】
ステップ508では、光レイヤでの潜在的リンク障害i毎に、IPレイヤでの回復のために、光レイヤでの潜在的リンク障害と関連する既存のIPリンクに要求されるIPリンクの追加容量が、動作中のIPリンク上の未使用のIPレイヤの容量または既存のIPリンク上の回復容量に由来し得る、予備のIP容量を考慮して決定され得る。
【0037】
ステップ510では、光レイヤでの潜在的IPリンク障害iと関連する既存のIPリンクを回復するために必要な光レイヤの追加容量が次に決定される。ステップ512では、光レイヤでの潜在的リンク障害の回復のために、回復レイヤ(例えば、光レイヤまたはIPレイヤ)が選択される。回復のためのレイヤの選択は、(i)IPレイヤでの回復のためのIPリンクの数と、IPレイヤでの回復に用いられるIPリンクと関連する光再生器の数とを加算した数と、倍数因子との乗算(因子×(IPリンク+IPレイヤでの回復のための再生器))、および(ii)光レイヤでの回復のための光リンクの数と、光レイヤでの回復に用いられる光リンクと関連する光再生器の数との加算(光リンク+光レイヤでの回復のための再生器)の比較に基づき得る。(i)が(ii)よりも小さい場合には、光レイヤでのリンク障害と関連する、障害の生じたIPリンクは、IPレイヤでの回復のために選択され得る。それ以外では、光リンクの障害と関連する、障害の生じたIPリンクは、光レイヤでの回復のために選択され得る。ステップ514では、ルータノードの全ての潜在的障害に対する追加の回復容量がネットワークに追加され得る。追加の回復容量は、1つのリンク障害に対するただ1つの光レイヤを回復するために追加され得、ネットワークの回復容量は、それぞれの潜在的障害が判断された後に徐々に更新され得る。
【0038】
ステップ516では、光レイヤでの全ての潜在的リンク障害に対してステップ508〜514が実施されたか否かについて判定され得る。光レイヤでの全ての潜在的リンク障害に対してステップ508〜514が実施された場合には、方法500は、ステップ518に進み得る。それ以外では、方法500は、ステップ506へ再度進み得る。ステップ518では、光レイヤでの全ての潜在的リンク障害に対してステップ508〜514が実施されたとの判定に応じて、ノードの障害回復を含む全ての潜在的光リンクの障害が考慮された供給ネットワークが獲得され得る。実施形態によっては、ノード障害に対する容量の供給とは別に、ノード障害に対する容量の供給が実施され得る。そうした実施形態では、ノード障害に対する容量の供給は、ステップ518で実施され得る。
【0039】
ステップ520では、全ての所定の倍数因子に対してステップ506〜518が実施されたか否かが判定され得る。全ての所定の倍数因子に対してステップ506〜518が実施された場合には、方法500は、ステップ522に進む。それ以外では、方法500は、ステップ504へ再度進む。ステップ522では、全ての所定の倍数因子に対してステップ506〜518が実施されたとの判定に応じて、全ての所定の倍数因子および潜在的光リンク障害に渡って低コストの供給ネットワークが決定され得る。ステップ522の完了後、方法500は終了し得る。
【0040】
方法500に従えば、所定の光レイヤでのリンク障害に対して低回復コストをもたらす回復されたIPリンク一式が選ばれ得る。
【0041】
図5には、方法500に関して履行される特定数のステップが開示されているが、方法500は、図5に示したこれらのステップよりも多いまたは少ないステップで実行され得る。また、図5には、方法500に関して履行されるある順序のステップが開示されているが、方法500に含まれるステップは、任意の適切な順序で達成され得る。
【0042】
方法500は、ネットワーク10または方法500を履行するよう動作する任意のその他のシステムに実装され得る。ある実施形態では、方法500は、コンピュータ読み取り可能媒体に具現化されたソフトウェアおよび/またはハードウェアに一部またはすべてが実装され得る。
【0043】
上述では、IPレイヤでの回復と光レイヤでのネットワーク回復とから選択する方法およびシステムが検討されている。しかしながら、こうした方法およびシステムは、IPレイヤよりも上位の層(例えば、レイヤ4、レイヤ5、レイヤ6、レイヤ7等)での回復と光レイヤよりも上位の層(例えば、Optical Transport Network(OTN)レイヤ)でのネットワーク回復とからの選択にも適用し得る。
【0044】
ネットワーク10の構成要素および/またはネットワーク要素102は、インタフェース、ロジック、メモリ、および/またはその他の適切な要素を含み得る。インタフェースは、入力を受信し、出力を送信し、入力および/もしくは出力を処理し、ならびに/または他の適切な動作を実行する。インタフェースは、ハードウェアおよび/またはソフトウェアを含み得る。
【0045】
ロジックは、構成要素の動作を実行し、例えば、入力から出力を生成する命令を実行する。ロジックは、ハードウェア、ソフトウェア、および/またはその他のロジックを含み得る。ロジックは、1つ以上の有形のコンピュータ読み取り可能記憶媒体中に符号化され得、コンピュータにより実行されると動作を実行し得る。プロセッサ等のあるロジックは、構成要素の動作を管理し得る。プロセッサの一例としては、1つ以上のコンピュータ、1つ以上のマイクロプロセッサ、1つ以上のアプリケーション、および/またはその他のロジックが挙げられる。
【0046】
メモリは、情報を格納する。メモリは、有形で、コンピュータが読み取り可能な、および/またはコンピュータが実行可能な1つ以上の記憶媒体を含み得る。メモリの一例としては、コンピュータメモリ(例えば、Random Access Memory(RAM)またはRead Only Memory(ROM))、大容量記憶媒体(例えば、ハードディスク)、リムーバブル記憶媒体(例えば、Compact Disk(CD)またはDigital Video Disk(DVD))、データベースおよび/もしくはネットワーク記憶装置(例えば、サーバ)、ならびに/またはその他のコンピュータ読み取り可能媒体が挙げられる。
【0047】
発明の範囲から逸脱することなく、ネットワーク10および/またはネットワーク要素102に変更、付加、または削除を加え得る。ネットワーク10の構成要素および/またはネットワーク要素102は、集積また分離し得る。さらに、ネットワーク10および/またはネットワーク要素102の動作は、より多く、より少ない、またはその他の構成要素により実行され得る。また、ネットワーク10および/またはネットワーク要素102の動作は、任意の適切なロジックを用いて実行され得る。本明細書において「各(各々、それぞれ)」とは、ある集合に属するそれぞれの要素、またはある集合の部分集合に属するそれぞれの要素を指す。
【0048】
本開示は、いくつかの実施形態によって記述されているが、それらの実施形態の代替および置換は、当業者にとって明らかである。したがって、実施形態の上記記載は、本開示を制約しない。請求項の範囲に規定されるように、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、その他の変更、置換、および代替が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク中の光レイヤでの潜在的リンク障害を障害の生じたトラフィック量の少ない順にソートし、
障害の生じたトラフィック量の少ない順で潜在的光リンク障害毎に、
前記潜在的リンク光障害の上位層での回復を用いて、前記潜在的光リンク障害と関連する上位層の既存リンクに要求される前記上位層の追加リンク容量を決定し、
光レイヤでの回復を用いて、前記潜在的光リンク障害と関連する前記上位層の既存リンクを回復するために要求される前記光レイヤの追加容量を決定し、
決定された前記上位層の追加リンク容量および決定された前記光レイヤの追加容量に基づいて、前記潜在的光リンク障害と関連する前記上位層の既存リンクの回復のために、前記上位層および前記光レイヤの内の1つを回復レイヤとして選択する、
方法。
【請求項2】
要求される前記上位層の追加リンク容量の決定は、前記ネットワークの上位層の動作中リンク上の前記上位層の未使用量に由来する上位層の予備量を考慮することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
要求される前記上位層の追加リンク容量の決定は、前記上位層の既存リンク上の回復容量を考慮することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記回復レイヤの選択は、
上位層での回復のための上位層のリンクの数と上位層での回復に用いられる前記上位層のリンクと関連する光再生器の数とを加算した数を倍数因子に乗算した量を第1の量とし、光レイヤでの回復のための光リンクの数と光レイヤでの回復に用いられる前記光リンクと関連する光再生器の数を加算した量を第2の量として、前記第1の量と前記第2の量とを比較し、
前記第1の量が前記第2の量よりも小さい場合には、前記回復レイヤとして前記上位層を選択し、
前記第1の量が前記第2の量よりも小さくない場合には、前記回復レイヤとして前記光レイヤを選択する
ことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記倍数因子は、上位層での回復と関連するコストを光レイヤでの回復と関連するコストと正規化して選択された因子である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記上位層は、インターネットプロトコル層である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記上位層は、レイヤ3以上の層である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
プロセッサと、
前記プロセッサと通信的に連結され、1つ以上の他のネットワーク要素に不可欠な1つ以上の他の資源割り当てモジュールと共同してまたは独立して、
ネットワーク中の光レイヤでの潜在的リンク障害を障害の生じたトラフィック量の少ない順にソートし、
障害の生じたトラフィック量の少ない順で潜在的光リンク障害毎に、
前記潜在的光リンク障害の上位層での回復を用いて、前記潜在的光リンク障害と関連する既存の上位リンクに要求される前記上位層の追加リンク容量を決定し、
光レイヤでの回復を用いて、前記潜在的光リンク障害と関連する前記上位層の既存リンクを回復するために要求される前記光レイヤの追加容量を決定し、
決定された前記上位層の追加リンク容量および決定された前記光レイヤの追加容量に基づいて、前記潜在的光リンク障害と関連する前記上位層の既存リンクの回復のために、前記上位層および前記光レイヤの内の1つを回復レイヤとして選択する、
資源割り当てモジュールと
を含む、ネットワーク要素。
【請求項9】
要求される前記上位層の追加リンク容量の決定は、前記ネットワークの上位層の動作中リンク上の前記上位層の未使用量に由来する上位層の予備量を考慮することを含む、請求項8に記載のネットワーク要素。
【請求項10】
要求される前記上位層の追加リンク容量の決定は、前記上位層の既存リンク上の回復容量を考慮することを含む、請求項8に記載のネットワーク要素。
【請求項11】
前記回復レイヤの選択は、
上位層での回復のための上位層のリンクの数と上位層での回復に用いられる前記上位層のリンクと関連する光再生器の数とを加算した数を倍数因子に乗算した量を第1の量とし、光レイヤでの回復のための光リンクの数と光レイヤでの回復に用いられる前記光リンクと関連する光再生器の数を加算した量を第2の量として、前記第1の量と前記第2の量とを比較し、
前記第1の量が前記第2の量よりも小さい場合には、前記回復レイヤとして前記上位層を選択し、
前記第1の量が前記第2の量よりも小さくない場合には、前記回復レイヤとして前記光レイヤを選択する
ことを含む、請求項8に記載のネットワーク要素。
【請求項12】
前記倍数因子は、上位層での回復と関連するコストを光レイヤでの回復と関連するコストと正規化して選択された因子である、請求項11に記載のネットワーク要素。
【請求項13】
前記上位層は、インターネットプロトコル層である、請求項8に記載のネットワーク要素。
【請求項14】
前記上位層は、レイヤ3以上の層である、請求項8に記載のネットワーク要素。
【請求項15】
コンピュータ読み取り可能媒体と、
前記コンピュータ読み取り可能媒体で搬送されるコンピュータ実行可能な命令であって、プロセッサが読み取り可能であり、読み取りおよび実行すると、前記プロセッサが
ネットワーク中の光レイヤでの潜在的リンク障害を障害の生じたトラフィック量の少ない順にソートし、
障害の生じたトラフィック量の少ない順で潜在的光リンク障害毎に、
前記潜在的光リンク障害の上位層での回復を用いて、前記潜在的光リンク障害と関連する上位層の既存リンクに要求される前記上位層の追加リンク容量を決定し、
光レイヤでの回復を用いて、前記潜在的光リンク障害と関連する前記上位層の既存リンクを回復するために要求される前記光レイヤの追加容量を決定し、
決定された前記上位層の追加リンク容量および決定された前記光レイヤの追加容量に基づいて、前記潜在的光リンク障害と関連する前記上位層の既存リンクの回復のために、前記上位層および前記光レイヤの内の1つを回復レイヤとして選択する、
前記コンピュータ実行可能な前記命令と
を含む、製品。
【請求項16】
要求される前記上位層の追加リンク容量の決定は、前記ネットワークの上位層の動作中リンク上の前記上位層の未使用量に由来する上位層の予備量を考慮することを含む、請求項15に記載の製品。
【請求項17】
要求される前記上位層の追加リンク容量の決定は、前記上位層の既存リンク上の回復容量を考慮することを含む、請求項15に記載の製品。
【請求項18】
前記回復レイヤの選択は、
上位層での回復のための上位層のリンクの数と上位層での回復に用いられる前記上位層のリンクと関連する光再生器の数とを加算した数を倍数因子に乗算した量を第1の量とし、光レイヤでの回復のための光リンクの数と光レイヤでの回復に用いられる前記光リンクと関連する光再生器の数を加算した量を第2の量として、前記第1の量と前記第2の量とを比較し、
前記第1の量が前記第2の量よりも小さい場合には、前記回復レイヤとして前記上位層を選択し、
前記第1の量が前記第2の量よりも小さくない場合には、前記回復レイヤとして前記光レイヤを選択する
ことを含む、請求項15に記載の製品。
【請求項19】
前記倍数因子は、上位層での回復と関連するコストを光レイヤでの回復と関連するコストと正規化して選択された因子である、請求項18に記載の製品。
【請求項20】
前記上位層は、インターネットプロトコル層である、請求項15に記載の製品。
【請求項21】
前記上位層は、レイヤ3以上の層である、請求項15に記載の製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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