説明

通信・情報処理機器室等の空調システム

【課題】電子機器室の空調効率を向上させて電子機器の熱負荷を低減させるとともに無駄な電力エネルギーの消費をなくして省エネ化に寄与し、かつ小型で安価な電子機器室を得ることができる通信・情報処理機器室等の空調システムを提供する。
【解決手段】通信・情報処理機器12を上下方向に搭載したラック13が整列してラック列L1〜L4をなし、ラック列が複数設置されている機器室11を空調するシステムであって、ラックの吸い込み面に向けて冷気を吹き出し、その冷気をラック内に回り込ませて上流側から下流側に向けて流し、通信・情報処理機器の冷却を終えて下流側から排出される使用済みの空気を吸い込み、冷却処理をして再びラックの吸い込み面に向けて吹き出す冷気を生成するための高顕熱型の室内機16aを機器室の天井部11cに複数台設置した天井設置型マルチエアコン16と、該エアコンの駆動を制御するコントローラ23とを設けた空調システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信・情報処理用電子機器室等の空調システムに関するものであり、特に、通信・情報処理用の電子機器等、発熱密度の高い電子機器が複数配置されている通信・情報処理用電子機器室等の空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
研究所のコンピュータ室やデータセンター等、通信・情報処理用のコンピュータ(以下、「電子機器」という)を多数設置している施設の電子機器室では、該電子機器から放出される熱で室温が上昇し、高温に上昇した熱で該電子機器が暴走、あるいは、故障したりすることがある。このため、一般に、電子機器室には部屋全体の温度を一定に維持しておく空調システムが採用されている(特許文献1)。
【0003】
図10及び図11に、特許文献1等で知られる従来におけるサーバ室の空調システムの一例を示す。同図において、従来における電子機器室の空調システムは、電子機器室51内に、複数台の電子機器52,52,52,52を上下方向に積層搭載したラック53,53…を複数個一列に並べてなるラック列54が複数列設置されているとともに、同じく電子機器室51内に該電子機器室51の部屋全体の温度を一定に維持するための複数の空調装置55,55…が、床上に設置されている。
【0004】
また、図11に示すように、前記電子機器室51には、床下に空気取り入れ口56と空気排出口57を有する風道としての空気流通空間58を設け、天井に空気取り入れ口59と空気排出口60を有する同じく風道としての空気流通空間61を設けている。
【0005】
そして、この空調システムは、各空調装置55,55…で生成された冷風が、空気取り入れ口56,空気流通空間58,空気排出口57を順に通って床下から電子機器室51内に吹き出され、その冷気が各電子機器52,52…の内部に流れて各電子機器52,52…を冷却する。一方、各電子機器52,52…内で熱交換をして排出されて来る温められた使用済みの空気は、天井側の空気取り入れ口59,空気流通空間61,空気排出口60を順に通って空調装置55内に戻され、冷却されて再び電子機器52,52…に送り出される。したがって、この空気循環により部屋全体の空調が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−56882号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来における通信・情報処理用電子機器室等の空調システムでは、電子機器室の床上に空調装置を設置しているため、ラックの設置スペース以外に空調装置の設置スペースも必要となり、全体として大きな設置スペースを必要とするという問題点があった。
【0008】
また、床下に空気取り入れ口と空気排出口を有する空気流通空間を設けているので、ラックのレイアウト変更や増設を行うような場合に、空調装置からの冷風の到達距離や気流分布を考慮して設置しなければならない。このため、設置に対して制限を受けると言う問題点や、空調効率が悪くなって無駄な電力エネルギーを消費するという問題点があった。
【0009】
さらに、床下を二重構造にしなければならないので、構造が複雑化し、設備コストが高くなるという問題点があった。
【0010】
そこで、電子機器室の空調効率を向上させて電子機器の熱負荷を低減させるとともに、無駄な電力エネルギーの消費をなくして省エネ化に寄与し、かつ小型で安価な空調システムを得ることができるようにするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、通信・情報処理機器を上下方向に搭載したラックが整列してラック列をなし、当該ラック列が複数設置されている機器室を空調するシステムであって、前記ラックの吸い込み面に向けて冷気を吹き出し、その冷気を前記ラック内に回り込ませて上流側から下流側に向けて流し、前記通信・情報処理機器の冷却を終えて下流側から排出される使用済み空気を吸い込み、冷却処理をして再び前記ラックの吸い込み面に向けて吹き出す冷気を生成するための高顕熱型の室内機を前記機器室の天井に複数台設置し、かつ該複数台の室内機を該室内機の台数よりも少ない数の室外機に各々接続してなる天井設置型マルチエアコンと、該エアコンの駆動を制御するコントローラと、を設けた通信・情報処理機器室等の空調システムを提供する。
【0012】
この構成によれば、エアコンの室内機は、機器室の天井に設置しているので、床面側のスペースにはさほど影響を与えることなく、所定の位置に複数台設けることができる。また、その各室内機からラックの吸い込み面に向けて冷気を吹き出し、これをラック内に通して通信・情報処理機器を冷却し、さらに通信・情報処理機器の冷却を済ませた使用済み空気を室内機が吸い込み、この空気を冷却処理して再びラックの吸い込み面に向けて吹き出すようにし、機器室内だけで空気の冷却処理を行うことができる。したがって、床面や天井を二重構造にすることなく、空調処理を行うことができる。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成において、上記コントローラは、上記各室内機が上記ラックの吸い込み面に向けて吹き出す冷気の風量を、上記ラック内を通って下流側から排出される使用済み空気の排出量よりも大きくなるように、前記各室内機を制御してなる通信・情報処理機器室等の空調システムを提供する。
【0014】
この構成によれば、各室内機がラックの吸い込み面に向けて吹き出す冷気の風量を、ラック内を通って下流側から排出される使用済み空気の排出量よりも大きく設定することにより、吹き出し側(上流側)が高圧で吸い込み側が低圧となるため、各室内機から吹き出された冷気がラック内を通らずにバイパスして各室内機側に戻る、あるいは使用済みの空気が吸い込み側へ戻らずにバイパスして吹き出し側に戻るのを防ぐことができる。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の構成において、上記各室内機は、除湿を必要とする場合に除湿運転に切り換え可能な通信・情報処理機器室等の空調システムを提供する。
【0016】
この構成によれば、高顕熱処理だけでなく、空調立ち上げ時等、除湿が必要な場合にモード切り替え等により、除湿運転を行うことができる。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1、2または3記載の構成において、上記各室内機は、平面視略正方形状形成された箱形筐体内に熱交換器が設置され、該熱交換器は上記機器室内の側面を向いた4側面に各々上記使用済み冷気を吸い込むように設けてなるとともに、前記各室内機同士の熱交換器面が正対向しないように該各熱交換器を各々平面視所定角度回転させて設けてなる通信・情報処理機器室等の空調システムを提供する。
【0018】
この構成によれば、各室内機をそれぞれ平面視所定角度回転させ、各室内機同士の側面が正対向しないようにして各室内機を設置することにより、各室内機が使用済み空気を吸い込む量を増加させることができ、使用済み空気の帰りをスムーズにすることができる。
【0019】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の構成において、上記箱形筐体は上記ラックの吸い込み面を向いた傾斜パネル面に上記冷気を吹き出す冷気吹き出し口を設けてなる通信・情報処理機器室等の空調システムを提供する。
【0020】
この構成によれば、各室内機の傾斜パネル面の吹き出し口から冷気がラックの吸い込み面に向けてスムーズに吹き出され、冷気の循環をスムーズにすることができる。
【0021】
請求項6記載の発明は、請求項1,2,3,4または5記載の構成において、上記コントローラは、上記機器室内の発熱量分布の変動に対して上記各室内機を個々に能力制御可能に構成されてなる通信・情報処理機器室等の空調システムを提供する。
【0022】
この構成によれば、機器室内の発熱量分布の変動に対して、各室内機を個々に能力制御することにより、機器室内の温度をより細かく調整することができる。
【0023】
請求項7記載の発明は、請求項1,2,3,4,5または6記載の構成において、上記コントローラは、上記機器室内の発熱量分布の変動に対して上記各室内機を個々に送風量制御可能に構成されてなる通信・情報処理機器室等の空調システムを提供する。
【0024】
この構成によれば、機器室内の発熱量分布の変動に対して、各室内機による送風量を個々に制御することにより、機器室内の温度をより細かく調整することができる。
【0025】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の構成において、上記コントローラは、上記ラックの吸い込み面に向けて吹き出す冷気の温度及び上記ラック内への上部の回り込み気流の温度を各々検出して前記各室内機の送風量を個々に制御する通信・情報処理機器室等の空調システムを提供する。
【0026】
この構成によれば、機器室内におけるラックの吸い込み面に向けて吹き出す冷気の温度及びラック内への回り込み気流の温度の変動に対して、各室内機による送風量を個々に制御することにより、機器室内の温度をより細かく調整することができる。
【0027】
請求項9記載の発明は、請求項1,2,3,4,5,6,7または8記載の構成において、上記機器室内の天井にチャンバーを設け、該天井面に設けた吹き出し口からラックの吸い込み面に向けて冷気を吹き出すとともに、室内から帰る空気を天井面に設けた吸込口から前記天井チャンバーを通して前記各室内機内に吸い込み、該天井チャンバーをレタンチャンバーとして前記各室内機に戻すように構成してなる通信・情報処理機器室等の空調システムを提供する。
【0028】
この構成によれば、機器室内の使用済み空気を、天井のチャンバーを通して各室内機内へスムーズに戻すことができる。
【0029】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の構成において、上記各室内機は、カセット化されて前記チャンバーに脱着可能に取り付けられてなる通信・情報処理機器室等の空調システムを提供する。
【0030】
この構成によれば、各室内機をチャンバーに脱着させることにより、取り付け及び交換等が自由にできる。
【発明の効果】
【0031】
請求項1記載の発明は、エアコンの室内機を機器室の天井に設置しているので、複数台の室内機を機器室内にコンパクトに設置することができる。これにより、機器室の小型化が期待できる。また、床面及び天井面を二重構造とせずに、機器室内だけで空気の冷却処理を行うことができるので、室内機を設置する際及び通信・情報処理機器を設置する際の制限を少なくすることができる。さらに、構造の簡略化及び設備コストの低減が期待できるとともに、空調効率の向上が期待できる。
【0032】
請求項2記載の発明は、各室内機から吹き出された冷気が、ラック内を通らずにバイパスして各室内機側に戻る、あるいは使用済みの空気が吸い込み側へ戻らずにバイパスして吹き出し側に戻るのを防ぐことができるので、さらに空調効率の向上が期待できる。
【0033】
請求項3記載の発明は、空調立ち上げ時等、除湿が必要な場合に除湿運転を行うことができるので、機器室全体の環境をより良い状態に維持しておくことができる。
【0034】
請求項4記載の発明は、各室内機に対し使用済み冷気の帰還をスムーズに行うことができるので、空調効率の向上がさらに期待できる。
【0035】
請求項5記載の発明は、ラックの吸い込み面に向けて、各室内機の傾斜パネル面の吹き出し口から冷気がスムーズに吹き出されて循環をすることができるので、さらに空調効率の向上が期待できる。
【0036】
請求項6記載の発明は、機器室内の発熱量分布の変動に対して各室内機の能力を個々に制御し、機器室内の温度をより細かく調節することができるので、さらに空調効率の向上が期待できる。
【0037】
請求項7記載の発明は、機器室内の発熱量分布の変動に対して各室内機の送風量を個々に制御し、機器室内の温度をより細かく調節することができるので、さらに空調効率の向上が期待できる。
【0038】
請求項8記載の発明は、機器室内におけるラックの吸い込み面に向けて吹き出す冷気の温度及びラック内への回り込み気流の温度の変動に対して各室内機の送風量を個々に制御し、機器室内の温度をより細かく調節することができるので、さらに空調効率の向上が期待できる。
【0039】
請求項9記載の発明は、機器室内の使用済み空気を、天井チャンバーを介して各室内機へスムーズに戻すことができるので、さらに空調効率の向上が期待できる。
【0040】
請求項10記載の発明は、各室内機をチャンバーに対して自由に脱着させることができるので、取り付け及び交換等が簡単になり、作業性の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る通信・情報処理機器室等の空調システムの一実施形態例を模式的に示す側面図。
【図2】図1のA−A線矢視方向より見た側面図。
【図3】室内機設置の一例を示す平面図。
【図4】室内機設置の変形例を示す平面図。
【図5】室内機設置の更に他の変形例を示す平面図。
【図6】室内機設置の更に他の変形例を示す平面図。
【図7】上記空調システムに除湿運転を可能にする機能を付加した実施例を説明する図。
【図8】上記空調システムに発熱量分布の変動に対して室内機の制御を行う機能を付加した実施例を説明する図。
【図9】上記空調システムにラック吸い込み温度及びラック上部の回り込み気流の温度を検出して室内機の風量制御を行う機能を付加した実施例を説明する図。
【図10】従来の通信・情報処理機器室等の空調システムの概要を説明する平面図。
【図11】従来の通信・情報処理機器室等の空調システムの概要を説明する側面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明は電子機器室の空調効率を向上させてサーバの熱負荷を低減させるとともに、無駄な電力エネルギーの消費をなくして省エネ化に寄与し、かつ小型で安価な空調システムを得るという目的を達成するために、通信・情報処理機器を上下方向に搭載したラックが整列してラック列をなし、当該ラック列が複数設置されている機器室を空調するシステムであって、前記ラックの吸い込み面に向けて冷気を吹き出し、その冷気を前記ラック内に回り込ませて上流側から下流側に向けて流し、前記通信・情報処理機器の冷却を終えて下流側から排出される使用済み空気を吸い込み、冷却処理をして再び前記ラックの吸い込み面に向けて吹き出す冷気を生成するための高顕熱型の室内機を前記機器室の天井に複数台設置し、かつ該複数台の室内機を該室内機の台数よりも少ない数の室外機に各々接続してなる天井設置型マルチエアコンと、該エアコンの駆動を制御するコントローラと、を設けたことにより実現した。
【0043】
以下、本発明の実施形態による通信・情報処理機器室等の空調システムについて図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0044】
図1及び図2は本発明に係る通信・情報処理機器室等の空調システムの一実施の形態を模式的に示すもので、図1はその側面図、図2は図1のA−A線矢視方向より見た側面図である。
【0045】
同図において、この空調システムは、通信・情報処理機器室11(以下、単に「機器室11」という)内の床部11aに、サーバ等の通信・情報処理機器12(以下、単に「電子機器12」という)を各々上下方向に多段に積層搭載してなるラック13の列がL1〜L4の4列配設されている。そのラック列L1とL2間、及びラック列L3とL4間には、各々通路空間部14が形成されている。また、ラック列L2とL3間、及び、ラック列L1と機器壁部11b間、並びにラック列L4と機器壁部11b間には、各々通路空間部15が形成されている。
【0046】
なお、前記通路空間部14及び前記通路空間部15の幅は、通常1200mm程度である。また、本実施の形態では、ラック列1列毎に各ラック13の前面または背面同士が向かい合う形をとっているが、このように前記通路空間部14に各ラック13の前面同士が向かい合うように設置することが望ましい。
【0047】
一方、前記機器室11の天井部11cには、該天井部11cから吊り下げられた状態にして、天井設置型マルチエアコン16の室内機16aが設けられている。該室内機16aは、前記通路空間14に沿って列をなすようにして、その通路空間14毎に複数台配設されている。
【0048】
前記エアコン16は、前記室内機16a,16a…と、前記機器室11の外部に設置されている室外機16bを有し、該室内機16a,16a…と該室外機16bとの間が冷媒配管16cで接続されている。そして、冷媒は、冷媒流量を調節するための電子膨張弁16dを各々介して、前記室内機16a,16a…の熱交換器20aと前記室外機16bの冷却コイル16eに供給される。また、前記冷媒配管16cは、例えば天井部11cの内側に取り付けられたパネル17と該天井部11cとの間に形成された天井空間18内を通って配設されており、1台の室外機16bに対して数台の室内機16a,16a…を接続可能になっている。そして、該エアコン16は、1台の室外機16bに対して数台の室内機16a,16a…を接続して、高顕熱型のマルチエアコンとして構成されている。
【0049】
前記天井部11cから吊り下げられた各室内機16a,16a…は、前記通路空間14,14に沿って列をなすようにして、その通路空間14,14毎に複数台配設されている。また、これら各室内機16a,16a…と前記ラック列L1〜L4とは構造的に分離して設置されており、各室内機16a,16a…と各ラック列L1〜L4の間は開放空間となっている。
【0050】
なお、前記各室内機16a,16a…は、前記ラック13の前面に有するラック吸い込み面13aに対向している傾斜パネル面に冷気吹き出し口19を有し、4つの側面に前記機器室11の上部空間における高温空気を取り入れる吸気口20を各々有してなる箱形をした筐体21を備え、該箱形筐体21内に上記熱交換器20aと送風機22を配設している。
【0051】
また、前記各室内機16a,16a…は、図3あるいは図4に示すように該各室内機16a,16a同士の側面に設けた熱交換器20aがそれぞれ正対向しないように、該各熱交換器20a,20a…を各々平面視所定角度回転させて設けている。こうすることにより、該各室内機16a,16a…における熱交換器20a,20a…は、4つ全ての口が常に開放された状態におかれて、前記機器室11の上部空間における高温空気を該各室内機における熱交換器20a,20a…へスムーズに取り入れることができるようになっている。
【0052】
なお、前記各室内機16a,16…の設置は、この構造に限られることなく、色々なバリエーションが可能であり、例えば図5あるいは図6に示すような構成も可能である。すなわち、図5あるいは図6に示す構成は、各熱交換器20a,20a…を各々平面視所定角度回転させて設けた各室内機16a,16a…の整列設置の方法について、該各室内機16a,16a,…の間に空間を設けている。
【0053】
次に、このように構成された空調システムの動作を説明する。前記エアコン16が駆動されると前記送風機22が回転し、内部冷却コイルで冷却処理された冷気が該送風機22で生起される風に乗り、前記冷気吹き出し口19を通って前記ラック13の前面に有するラック吸い込み面13aに向けて吹き出す。該ラック吸い込み面13aに向けて吹き出された冷気は、前記ラック13内を通って前記通路空間15側に向かって流れ、このとき該ラック13内の前記電子機器12の熱を奪って該電子機器12を冷却する。
【0054】
また、前記電子機器12の熱を奪って温められ前記通路空間15に排出された空気は、各室内機16a,16a…の吸気口20,20…を通って各室内機16a,16a内に吸い込まれる。そして、該各室内機16a,16a…内の各熱交換器20a,20a…で冷却処理され、その後、前記送風機22で生起される風に乗せられ、前記冷気吹き出し口19を通って前記ラック吸い込み面13aに向けて再び送り出される。この空気の循環により機器室11内全体の空調が行われる。
【0055】
なお、本実施の形態例では、各室内機16a,16…が間前記ラック列L1とL2の各ラック吸い込み面13a、及び前記ラック列L3とL4の各ラック吸い込み面13aに吹き出される風量、すなわち前記各通路空間14に面する前記ラック吸い込み面13aに向けて吹き出される送風量は、前記ラック13内を通って下流側、すなわち前記通路空間15内に排出される使用済み冷気の排気量よりも大きくなるように設定してある。この調節はコントローラ23により制御される。
【0056】
このように、前記各室内機16a,16a…が前記各通路空間14に面する前記ラック吸い込み面13aに向けて吹き出す風量を、ラック13内を通って下流側から排出される使用済み空気の排気量よりも大きく設定すると、吹き出し側(上流側)が高圧で、吸い込み側が低圧となるため、各室内機16a,16aから吹き出された冷気が、ラック13内を通らずにバイパスして各室内機16a,16a…側に戻る漏れ冷気24a(図1参照)、あるいは使用済みの空気が吸気口20,20…へ戻らずにバイパスして吹き出し側の各通路空間14,14内漏れ冷気に戻る漏れ冷気24b(図1参照)を防ぐことができる。このとき、例えば、吹き出し側の各通路空間14のラック高さから床面までの間にカーテンあるいは開閉扉を設けて、これを閉鎖することにより、バイパス防止の効果を一層高めることができる。
【0057】
したがって、本実施の形態例による空調システムによれば、前記エアコン16の前記室内機16a,16a…を前記機器室11の天井部11cに設置しているので、複数台の室内機16a,16a…を該機器室11内にコンパクトに設置することができ、該機器室の小型化が期待できる。また、床部11aを二重構造とせずに、前記機器室11内だけで冷気の冷却処理を行うことができるので、前記室内機16a…16a…を設置する際の制限を少なくすることができる。
【0058】
なお、上記空調システムでは、上記基本構成に加えて、以下に説明する実施例の構成を付加することも可能である。
【0059】
図7は、上記高顕熱運転を行う基本構成において、空調の立ち上げ時等、除湿が必要となる場合、前記コントローラ23によるモードの切り換えにより除湿運転を可能にする機能を付加した実施例を示す。図7では、前記室内機16a,16a…の周辺に前記吸気口20から吸い込む使用済み冷気の温度を検出する吸い込み温度センサT1と、同じく前記吸気口20から吸い込む使用済み冷気の湿度を検出する吸い込み湿度センサWを設けるとともに、前記冷媒配管16cに冷媒温度センサT2を設け、各センサT1、T2、Wの各情報を前記コントローラ23に送るように構成している。そして、前記コントローラ23では、各センサT1、T2、Wの各情報から、空調の立ち上げ時等、除湿を必要とする場合に運転モードを切り換え、除湿運転を予め設定された時間行い、また除湿を必要としなくなったら高顕熱処理運転に切り替えるようにする。
【0060】
図8は、上記基本構成において、前記機器室11内の発熱量分布の変動に対して室内機16a,16b…の制御を1台毎に行う機能を付加した実施例を示す。図8では、前記室内機16a,16a…の周辺に前記吸気口20から吸い込む使用済み冷気の温度を検出する吸い込み温度センサT1と、同じく前記冷気吹き出し口19から吹き出される冷気の温度を検出する吹き出し温度センサT3を設け、各センサT1、T3の各情報を前記コントローラ23に送るように構成している。そして、前記コントローラ23では、各センサT1、T3の各情報から、前記機器室11内における発熱量分布の変動を検出し、前記室内機16a,16b…の能力制御を1台毎に行い、前記機器室11内全体の温度をより細かく調節して、空調効率を向上させるようにする。
【0061】
なお、前記コントローラ23では、各センサT1、T3の各情報から、前記機器室11内における発熱量分布の変動を検出して前記室内機16a,16b…の送風機22の制御を1台毎に行い、その1台毎の送風機22の風量を制御することにより、前記機器室11内全体の温度をより細かく調節して空調効率を向上させるようにすることもできる。
【0062】
図9は、上記基本構成において、前記機器室11内における各通路空間14に面するラック吸い込み面13aに向けて吹き出す冷気の温度及びラック13内への回り込み気流の温度を検出して室内機の風量制御を行う機能を付加した実施例を示す。図9では、前記室内機16a,16a…の前記冷気吹き出し口19の周辺に該冷気吹き出し口19から前記通路空間14に面するラック吸い込み面13aに向けて吹き出す冷気の温度を検出する吹き出し温度センサT3と、該ラック吸い込み面13aから該ラック13内に流れ込む冷気の温度を検出するラック吸い込み温度センサT4を設け、各センサT3、T4の各情報を前記コントローラ23に送るように構成している。そして、前記コントローラ23では、各センサT3、T4の各情報から、前記室内機16a,16b…における送風機22の風量制御を1台毎に行い、前記機器室11内全体の温度をより細かく調節して空調効率を向上させるようにする。
【0063】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【0064】
例えば、前記機器室11内の天井部11cとパネル17の間に天井空間(チャンバー)18を設ける。また、前記パネル17に吹き出し口と吸気口を設けるとともに、前記各室内機16a,16a…の前記冷気吹き出し口19を前記パネル17の吹き出し口に対応させて、前記チャンバー18内に前記各室内機16a,16a…をカセット方式で脱着可能に設けるようにした構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は通信・情報処理用の電子機器等、発熱密度の高い電子機器が複数配置されている通信・情報処理用電子機器室等の空調システムに限らず、広く一般の空調システムにも応用できる。
【符号の説明】
【0066】
11 通信・情報処理機器室(機器室)
11a 床部
11b 機器壁部
11c 天井部
12 通信・情報処理機器(電子機器)
13 ラック
13a ラック吸い込み面
L1〜L4 ラック列
14 通路空間部
15 通路空間部
16 エアコン(天井設置型マルチエアコン)
16a 室内機
16a 室外機
16c 冷媒配管
16d 電子膨張弁
16e 冷却コイル
17 パネル
18 天井空間
19 冷気吹き出し口
20 吸気口
20a 熱交換器
21 箱形筐体
22 送風機
23 コントローラ
24a,24b 漏れ冷気
T1 吸い込み温度センサ
T2 冷媒温度センサ
T3 吹き出し温度センサ
T4 ラック吸い込み温度センサ
W 吸い込み湿度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信・情報処理機器を上下方向に搭載したラックが整列してラック列をなし、当該ラック列が複数設置されている機器室を空調するシステムであって、
前記ラックの吸い込み面に向けて冷気を吹き出し、その冷気を前記ラック内に回り込ませて上流側から下流側に向けて流し、前記通信・情報処理機器の冷却を終えて下流側から排出される使用済み空気を吸い込み、冷却処理をして再び前記ラックの吸い込み面に向けて吹き出す冷気を生成するための高顕熱型の室内機を前記機器室の天井に複数台設置し、かつ該複数台の室内機を該室内機の台数よりも少ない数の室外機に各々接続してなる天井設置型マルチエアコンと、該エアコンの駆動を制御するコントローラと、を設けたことを特徴とする通信・情報処理機器室等の空調システム。
【請求項2】
上記コントローラは、上記各室内機が上記ラックの吸い込み面に向けて吹き出す冷気の風量を、上記ラック内を通って下流側から排出される使用済み空気の排出量よりも大きくなるように、前記各室内機を制御してなることを特徴とする請求項1記載の通信・情報処理機器室等の空調システム。
【請求項3】
上記各室内機は、除湿を必要とする場合に除湿運転に切り換え可能なことを特徴とする請求項1または請求項2記載の通信・情報処理機器室等の空調システム。
【請求項4】
上記各室内機は、平面視略正方形状形成された箱形筐体内に熱交換器が設置され、該熱交換器は上記機器室内の側面を向いた4側面に各々上記使用済み冷気を吸い込むように設けてなるとともに、前記各室内機同士の熱交換器面が正対向しないように該各熱交換器を各々平面視所定角度回転させて設けてなることを特徴とする請求項1、2または3記載の通信・情報処理機器室等の空調システム。
【請求項5】
上記箱形筐体は上記ラックの吸い込み面を向いた傾斜パネル面に上記冷気を吹き出す冷気吹き出し口を設けてなることを特徴とする請求項4記載の通信・情報処理機器室等の空調システム。
【請求項6】
上記コントローラは、上記機器室内の発熱量分布の変動に対して上記各室内機を個々に能力制御可能に構成されてなることを特徴とする請求項1,2,3,4または5記載の通信・情報処理機器室等の空調システム。
【請求項7】
上記コントローラは、上記機器室内の発熱量分布の変動に対して上記各室内機を個々に送風量制御可能に構成されてなることを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6記載の通信・情報処理機器室等の空調システム。
【請求項8】
上記コントローラは、上記ラックの吸い込み面に向けて吹き出す冷気の温度及び上記ラック内への上部の回り込み気流の温度を各々検出して前記各室内機の送風量を個々に制御することを特徴とする請求項7記載の通信・情報処理機器室等の空調システム。
【請求項9】
上記機器室内の天井にチャンバーを設け、該天井面に設けた吹き出し口からラックの吸い込み面に向けて冷気を吹き出すとともに、室内から帰る空気を天井面に設けた吸込口から前記天井チャンバーを通して前記各室内機内に吸い込み、該天井チャンバーをレタンチャンバーとして前記各室内機に戻すように構成してなる請求項1,2,3,4,5,6,7または8記載の通信・情報処理機器室等の空調システム。
【請求項10】
上記各室内機は、カセット化されて前記チャンバーに脱着可能に取り付けられてなることを特徴とする請求項9記載の通信・情報処理機器室等の空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−88013(P2013−88013A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228304(P2011−228304)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(592031318)富士古河E&C株式会社 (7)
【Fターム(参考)】