説明

通信中継装置、リソース解放方法および通信中継装置のプログラム

【課題】休止状態(「上位層の休止に連動して、上位層のリソースを維持したまま下位層のリソースを解放する」状態)になりうる機器となりえない機器とが混在する場合でも、中継装置のリソースを有効利用できるようにする。
【解決手段】休止候補リンク群決定手段204は、上位層の通信が休止している通信リンクからなる休止候補リンク群を決定して出力する。休止非対応リンク除外手段205は、休止候補リンク群決定手段204が出力した休止候補の通信リンク群から、リンク休止管理手段203が記憶する情報にもとづいて、休止状態に対応していない隣接する中継装置への通信リンクを取り除いて休止させる通信リンク群とし、休止させる通信リンク群を示す情報を出力する。休止指令手段206は、休止非対応リンク除外手段205が出力した情報が示す休止させる通信リンク群について、各通信リンク毎に下位層の通信リソースを解放させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ネットワークにおいて用いられる通信中継装置、リソース解放方法および通信中継装置のプログラムに関し、特に、通信の上位層が休止した際に、上位層のためのリソースを維持したまま、下位層のためのリソースを解放することによって通信ネットワーク機器のリソースを有効利用する通信中継装置、リソース解放方法および通信中継装置のプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信ネットワーク機器のリソース(メモリリソース、帯域割当てリソース、電力リソースなど)を有効に利用する方法として、通信プロトコルが、OSI参照モデルが示すような多層構造をなしていることに着目し、上位層の通信がアイドル状態(通信が行われず、データが流れない状態)になった際に、上位層のためのリソースを維持したまま、下位層のためのリソースを解放する休止状態に移行する。さらに、上位層の通信がアイドル状態から脱した際には、下位層のためのリソースを再度割当てて、維持しておいた上位層のリソースを利用して、上位層の通信を再開する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
なお、上位層とは、通信ネットワーク機器が中継する通信層であり、通信ネットワーク機器にとって、OSI参照モデルにおけるネットワーク層に相当する。ただし、OSI参照モデルにおけるネットワーク層は、IP通信のようなコネクションレス型の通信における層を意味するが、本明細書では、ネットワーク層は、コネクションレス型の通信おける層に限らず、例えば回線交換方式の電話網のようなコネクション型の通信おける層も含むとする。
【0004】
また、下位層とは、通信ネットワーク機器が、自機と隣接する通信ネットワーク機器との通信に用いる通信層であり、通信ネットワーク機器にとって、OSI参照モデルにおけるデータ通信リンク層に相当する。
【0005】
また、リソースの有効利用とは、例えば、メモリリソースの場合、休止状態における上位層に対する下位層のために割当てられているメモリを開放して休止状態でない他の上位層に対する下位層のために割当てるメモリの余地を増やすことを意味する。また、例えば、帯域割当てリソースの場合、休止状態でない他の上位層に対する下位層の通信に帯域の割当を移すことを意味する。また、例えば、電力リソースの場合、電力利用料金を削減することを意味する。
【0006】
特許文献1に記載された技術による通信ネットワーク機器は、以下のように動作する。通信ネットワーク機器は、上位層の通信がアイドル状態であるか否かを判定するために、上位層の通信を監視する。上位層の通信がアイドル状態であるとの判定は、例えば、通信ネットワーク機器が上位層の通信を中継しない時間が、所定の閾値を超えるか否かによって行われる。
【0007】
通信ネットワーク機器は、上位層の通信がアイドル状態であると判定した場合には、上位層のリソースを解放せずに維持したまま、アイドル状態の上位層に対する下位層のためのリソースを解放する。すなわち、休止状態に移行する。上位層がコネクションレス型であった場合には、典型的には上位層のルーティングテーブルを維持したまま、下位層のリソースを解放する。また、上位層がコネクション型であった場合には、典型的には上位層のコネクション管理テーブルを維持したまま、下位層のリソースを解放する。
【0008】
コネクションレス型について例を挙げて説明する。通信ネットワーク機器が下位層として無線LANを用い、上位層としてIP通信を用いる無線ルータ機器であった場合を例にする。無線ルータ機器は、所定の閾値を越える時間にわたってIPパケットが流れなかった無線LAN通信リンクについて、無線LAN通信リンクを休止して、無線LANのリソース(帯域割当て、帰属管理用メモリなど)を解放する。しかし、IPのルーティングテーブルを維持する。その後に到着したIPパケットについて、IPのルーティングテーブルを参照して、休止中の無線LAN通信リンクへと送出することが決定された場合には、休止中の無線LAN通信リンクを再度アクティブにし、IPパケットを中継するように動作する。
【0009】
コネクション型について例を挙げて説明する。通信ネットワーク機器が下位層としてTCP/IP通信を用い、上位層にHTTP通信を用いるような、HTTPプロキシ機器であった場合を例にする。HTTPプロキシ機器は、所定の閾値を超える時間にわたってHTTP通信が流れなかった下位層のTCPコネクションについて、TCPコネクションを切断することにより、TCPコネクションのリソース(ポート番号、シーケンス番号記憶メモリ、ウィンドウサイズ記憶メモリ)を解放する。しかし、HTTPコネクション管理のためのリソース(宛先URL)を維持する。HTTPコネクション上を再度データが流れた場合には、データの送出元の側から、HTTPコネクション管理リソースにもとづいて、TCPコネクションを再接続し、HTTPコネクション上のデータを中継するように動作する。
【0010】
なお、上位層の通信がアイドル状態になったときに上位層のためのリソースを維持したまま下位層のためのリソースを解放する技術を用いない通信ネットワーク機器では、下位層のリソース解放が、上位層のリソース解放を誘発する。下位層のリソースを解放すると、下位層が断絶したとみなして上位層に信号が上がり、上位層のリソースを解放するように動作するためである。そのため、上位層がコネクションレス型の通信であった場合には、上位層のルーティングテーブルから、下位層に対応するテーブルエントリが削除される。また、上位層がコネクション型の通信であった場合には、上位層のコネクション管理テーブルから、下位層に対応するコネクション管理テーブルエントリが削除される。
【0011】
【特許文献1】特表2002−519962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上位層の通信がアイドル状態になったときに上位層のためのリソースを維持したまま下位層のためのリソースを解放する方法では、「上位層の休止(アイドル状態)に連動して、上位層のリソースを維持したまま、下位層のリソースを解放する」技術(以下、休止技術という。)に対応する機器と対応しない機器が混在する通信ネットワークにおいて、リソースを有効利用することができない。休止技術に対応したネットワーク機器と休止技術に対応していないネットワーク機器とが通信リンクで結ばれていた場合に、休止技術に対応したネットワーク機器が、下位層のリソースを解放すると、休止技術に対応していないネットワーク機器は、下位層のリソース解放に伴って、上位層に下位層が切断した旨の信号を上げ、上位層のリソースを解放してしまう。その結果、上位層のリソースを維持したまま下位層のリソースを解放することによってネットワーク機器のリソースを有効利用するという所望の目的が達成できないからである。
【0013】
なお、通信ネットワーク機器間に下位層によって設定される通信経路を「通信リンク」という。
【0014】
そこで、本発明は、休止技術に対応した機器と休止技術に対応しない機器とが混在する通信ネットワークにおいて、通信ネットワーク機器としての通信中継装置のリソースを有効利用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による通信中継装置は、上位層の通信が休止している通信リンクからなる通信リンク群を決定する休止候補リンク群決定手段と、休止候補リンク群決定手段が決定した通信リンク群から、上位層の通信が休止しているときに上位層のためのリソースを維持したまま下位層のリソースを解放する休止機能を有していない隣接する機器への通信リンクを除外し、除外されなかった通信リンクからなる通信リンク群を示す情報を、休止状態とする通信リンク群を示す情報として出力する休止非対応リンク除外手段と、休止非対応リンク除外手段が出力した情報が示す通信リンク群について、各通信リンク毎に、各通信リンクに対応する下位層プロトコルスタックに、下位層のリソースを解放させる制御を行う休止手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明の好ましい態様では、通信中継装置は、以下のように構成される。すなわち、リンク休止管理手段は、自機が通信リンクを介して隣接している、自機以外の各通信ネットワーク機器全てについて、休止技術に対応しているか否かにもとづいて、各通信リンクが休止可能か否かを記憶する。リンク状態管理手段は、自機の全ての通信リンクについて、各通信リンクの状態が「接続状態」、「切断状態」、「休止状態」のいずれの状態であるかを記憶する。中継管理手段は、自機が中継している上位層の各通信が、どの通信リンク上を流れるかを記憶する。
【0017】
休止候補リンク群決定手段は、ある上位層の通信が休止した際に、中継管理手段が記憶する情報とリンク状態管理手段が記憶する情報とにもとづいて、休止した上位層の通信が通じていた通信リンクを検索し、検索結果として得られた通信リンク群を、通信リンクを休止状態にして下位層のリソースを解放する候補である休止候補リンク群として出力する。休止非対応リンク除外手段は、リンク休止管理手段が記憶する情報にもとづいて、休止技術に対応していない機器との通信リンクを検索し、検索結果として得られた通信リンク群を休止候補リンク群から除外し、休止させる通信リンク群として出力する。
【0018】
休止手段は、休止させる通信リンク群に含まれる各通信リンクについて、上位層のリソースを維持したまま、通信リンクを休止状態にして下位層のリソースを解放する。
【0019】
また、復帰リンク群出力手段は、休止していた上位層に再度通信データが流れた場合に、中継管理手段が記憶する情報とリンク状態管理手段が記憶する情報とにもとづいて復帰させる通信リンク群を示す情報を出力する。復帰手段は、復帰させる通信リンク群に含まれる各通信リンクについて、下位層のリソースを再確保して通信リンクを復帰する。すなわち、復帰させる通信リンク群に含まれる通信リンクについて、下位層に再びリソースを割り当て、通信リンクを再度有効にする。
【0020】
上記のように各手段が動作することによって、休止技術に対応した機器間の通信リンクのみを選択的に休止状態にして通信リンクに対応する下位層のリソースを解放し、休止技術に対応した機器と対応しない機器との間の通信リンクを休止しないで維持することによって、休止技術に対応した機器と対応しない機器とのいずれでも上位層のリソースを維持したまま、休止技術に対応した機器についてのみ下位層のリソースを解放することができる。よって、休止技術に対応した機器と対応していない機器とが混在する通信ネットワークにおいて、通信ネットワーク機器のリソースを有効に利用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、休止技術に対応した中継装置と、対応していない中継装置が混在する通信ネットワークにおいて、上位層の通信が休止中のときに、休止中の上位層に対応する下位層のリソースのうち、休止技術に対応した隣接する中継装置への通信リンクのリソースを解放することにより、リソースを有効活用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
実施の形態1.
次に、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1本発明の第1の実施の形態(実施の形態1)の通信中継装置(以下、中継装置という。)を示すブロック図である。図1に示す中継装置100は、105とを備えている。
【0023】
中継装置100は、下位層プロトコルスタック103および下位層プロトコルスタック105によって、隣接した通信中継装置との通信を行う。すなわち、上位層プロトコルスタック101が、下位層プロトコルスタック103および下位層プロトコルスタック105に制御命令を発行し、応答や通信断絶などのイベントを下位層プロトコルスタック103および下位層プロトコルスタック105から受け取るといったデータの授受を行いつつ、通信の中継を行う。中継装置100に接続される各通信リンクには、識別のために、機器内で一意な通信リンク識別子が割り振られているとする。なお、図1には通信リンクが2本の場合の構成が例示されているが、中継装置に接続される通信リンクは3本以上存在してもよい。また、下位層および上位層は相対的な概念である。
【0024】
中継装置100として、例えば、下位層の通信としてイーサネット(登録商標)通信を用い、上位層の通信としてIP通信を用いるIPルータ機器を想定することができる。また、中継装置100として、例えば、下位層の通信としてTCP通信を用い、上位層の通信としてHTTP通信を用いるHTTPプロキシ機器を想定することができる。
【0025】
上位層プロトコルスタック101は、コネクションレス型の通信を中継する操作を行い、動作のために上位層リソース102を利用する。上位層リソース102は、メモリ、帯域割当て、電力などを含む概念である。同様に、下位層プロトコルスタック103は下位層リソース104を利用し、下位層プロトコルスタック105は下位層リソース106を利用する。上位層プロトコルスタック101がリソースを解放すると、その中継装置では上位層の通信を中継が行えなくなり、上位層の通信が断絶する。また、下位層プロトコルスタック103または下位層プロトコルスタック105がリソースを解放すると、その中継装置では下位層の通信が行えなくなり、下位層の通信が断絶する。
【0026】
休止管理手段107は、上位層の通信の中継状況情報を上位層プロトコルスタック101から受け取る。中継状況情報とは、中継している上位層の通信が通じている通信リンクの識別情報、および上位層の通信の休止/非休止情報である。休止管理手段107は、中継状況情報にもとづいて、下位層プロトコルスタックに休止命令および復帰命令を送る。自機の内部の休止管理手段107からの休止命令を受け取った下位層プロトコルスタック105は、隣接する中継装置に通信リンクを通じて休止命令を送り、その後に上位層プロトコルスタック101に通信断絶イベントを送ることなく、自身の利用する下位層リソースを解放する。なお、自機の内部の休止管理手段107から送られる休止命令と、隣接する中継装置に送る休止命令は同じ形式でなくてもよい。
【0027】
隣接する中継装置から通信リンクを通じて休止命令を受け取った下位層プロトコルスタック105は、その直後に、隣接する中継装置から通信リンクが切断された場合には、上位層プロトコルスタック101に通信断絶イベントを送ることなく、自身の利用する下位層リソースを解放する。
【0028】
なお、通信リンクの切断の原因が休止命令ではない場合、つまり下位層プロトコルスタックが何らかの通信異常を検知したり、隣接する中継装置が休止命令なしに通信リンクを切断した場合には、下位層プロトコルスタック105は、下位層リソースを解放して上位層プロトコルスタック101に通信断絶イベントを送る。その場合には、上位層プロトコルスタック101は、上位層の通信の断絶リソースの解放や、上位層の通信経路を別の通信リンクに迂回させるなどの対応をすることになる。
【0029】
自機の内部の休止管理手段107からの復帰命令を受け取った下位層プロトコルスタックは、再び下位層リソースを確保し、隣接する中継装置との通信リンクを接続する。
【0030】
図2は、休止管理手段107の構成例を示すブロック図である。図2に示す休止管理手段107は、中継管理手段201と、リンク状態管理手段202と、リンク休止管理手段203と、休止候補リンク群決定手段204と、休止非対応リンク除外手段205と、休止手段206と、復帰リンク群決定手段207と、復帰手段208とを備えている。
【0031】
なお、中継装置を、プログラムに従って制御を行うCPUを含む構成とし、休止管理手段107における各手段を、ソフトウェアで実現することができる。
【0032】
中継管理手段201は、上位層プロトコルスタック101から受け取った中継状況情報にもとづいて、自機が中継している各通信の状況を記憶する。記憶は、上位層プロトコルスタック101から中継状況情報を受け取ったときに随時更新される。中継管理手段201が記憶する情報は、通信リンク識別子と、その通信リンクを通じる上位層の通信データが、本中継装置に到着した時刻情報との組を、全ての通信リンク識別子について並べたテーブルになる。なお、ある上位層の通信に関して、該当する通信リンクが上位層の通信の入力側で用いられた場合には、該当する通信リンク識別子と時刻情報の組は、「通信リンク識別子が示す通信リンク上を、上位層のデータが通じて、時刻情報が示す時刻に本中継装置が該データを受信した」ことを示す。また、ある上位層の通信に関して、該当する通信リンクが上位層の通信の出力側に指定された場合には、該当する通信リンク識別子と時刻情報の組は、「時刻情報が示す時刻に本中継装置が受信した上位層のデータは、本中継装置中で送信待ちとなっており、通信リンク識別子が示す通信リンクを通じて、本中継装置が送信する予定である」ことを示す。
【0033】
中継状況情報は、上位層プロトコルスタック101から一定時間ごとに送信される。中継状況情報には、直前の中継状況情報作成時から現在までに上位層のデータが通じた通信リンク識別子、および現在上位層プロトコルスタック101においてバッファリングされている上位層のデータが今後送出される予定の通信リンク識別子が含まれている。
【0034】
リンク状態管理手段202は、下位層プロトコルスタックから受け取った通信リンク状態情報にもとづいて、各通信リンクの状態を記憶する。通信リンクの状態は、接続状態、切断状態、および休止状態の3状態である。接続状態とは、上位層と下位層の双方にリソースが割り当てられている状態である。休止状態とは、上述したように、上位層の通信が休止したときにすなわちアイドル状態になったときに上位層のためのリソースを維持したまま下位層のためのリソースを解放する状態である。ただし、下位層プロトコルスタックの種類によっては切断状態と休止状態の区別が不要である場合があるので、その場合には、接続状態と切断状態との2状態でもよい。リンク状態管理手段202が記憶する情報は、通信リンク識別子と通信リンクの状態との組を、全ての通信リンク識別子について並べたテーブルになる。
【0035】
リンク休止管理手段203は、各通信リンクが休止可能なリンクであるか否かを、通信リンク識別子と休止可能かのブーリアン値との組について、全ての通信リンク識別子について並べたテーブルとして記憶する。通信リンクの両端の機器がともに休止状態になることが可能である場合に、その通信リンクは、休止可能な通信リンク(休止状態になりうる通信リンク)である。
【0036】
各通信リンクが休止可能か否かの判定方法として、幾つかの方法が考えられる。例えば、設定情報として中継装置100に事前に与えられる場合が考えられる。設定情報は、具体的には、隣接する機器が下位層のリソースを解放する機能を有しているか否かを示す情報である。また、下位層の通信の特徴から判定できる場合が考えられる。下位層の通信の特徴から判定できるとは、例えば、下位層の通信のプロトコルの特徴として、機器(中継装置100から見ると隣接機器)が対応する通信機器仕様のバージョン情報が通信ヘッダ情報中に含まれていて、仕様のバージョンから機器が休止状態に対応しているか否か、すなわち休止状態になる機能である休止機能を有しているか否かを判定できるといったことである。また、例えば、下位層の通信機器仕様は、その機器(中継装置100から見ると隣接機器)に対して休止機能の問い合わせを行うことが可能であるか否かといったことである。休止機能の問い合わせを行うことが可能である場合には、中継装置100は、隣接機器に対して通信によって問い合わせを行って、隣接機器からの応答をリンク休止管理手段203に記憶させる。
【0037】
なお、休止非対応リンク除外手段205が、隣接機器が休止可能か否かを明確には判定できない場合も考えられる。例えば、通信ヘッダ情報中に仕様のバージョン情報を含めるのが必須ではなく、オプションであるような下位層プロトコルであった場合に、隣接する機器が休止状態に対応しているとも、していないとも判定できないといったことである。このような場合には、該当する隣接する通信機器は、休止状態に対応していないと判定してもよい。その場合には、リソースの有効利用はできないが、上位層の通信の休止時に誤って通信経路を断絶してしまうことは避けられる。
【0038】
休止候補リンク群決定手段204は、中継管理手段201の記憶する情報と、リンク状態管理手段202の記憶する情報にもとづいて、休止候補の通信リンク群を出力する。休止候補の通信リンク群は、通信リンク識別子の集合として表現される。休止候補に選択される基準は、最後に上位層の通信データが流れた時刻から選択時の時刻までの時間が、所定の閾値を超えているか否かである。
【0039】
休止非対応リンク除外手段205は、休止候補リンク群決定手段204が出力した休止候補の通信リンク群から、リンク休止管理手段203が記憶する情報にもとづいて、休止状態に対応していない隣接する中継装置への通信リンクを取り除いて休止させる通信リンク群とし、休止させる通信リンク群を示す情報を出力する。
【0040】
休止手段206は、休止非対応リンク除外手段205が出力した情報が示す休止させる通信リンク群について、各通信リンク毎に、各通信リンクに対応する下位層プロトコルスタックに休止命令を送り、下位層の通信リソースの解放を指示する。
【0041】
復帰リンク群決定手段207は、中継管理手段201が記憶する情報とリンク状態管理手段202が記憶する情報とにもとづいて、復帰させる通信リンク群を決定し、復帰させる通信リンク群を示す情報を出力する。復帰させる通信リンク群を示す情報は、通信リンク識別子の集合として表現される。復帰させる通信リンク群に選択される基準は、中継管理手段201が記憶する情報にもとづく上位層のデータが通じることになっている通信リンクのうち、リンク状態管理手段202が記憶する情報にもとづく休止状態になっている通信リンクである。なお、上位層がデータを受信している状態で、データを送信すべき通信リンクが休止状態の場合には、休止管理手段107が通信リンクを復帰させるまでの間、上位層プロトコルスタック101がデータをバッファリングして送信を待機する。
【0042】
復帰手段208は、復帰リンク群決定手段207が出力した情報が示す通信リンク群(復帰させる通信リンク群)について、各通信リンク毎に、各通信リンクに対応する下位層プロトコルスタックに復帰命令を送り、下位層の通信リソースの再確保を指示する。
【0043】
次に、本発明の第1の実施の形態の中継装置の動作を、図面を参照して説明する。図3には、UMLのアクティビティ図の形式で、中継装置の動作の概要が示されている。上位層プロトコルスタック101からの中継状況情報を休止管理手段107が受信した場合(図3におけるステップS300)には、まず、中継管理手段201が、記憶している情報を、受信した中継状況情報と現在時刻とにもとづいて更新する(ステップS301)。次に、休止候補リンク群決定手段204が休止候補リンク群を決定する(ステップS302)。休止候補リンク群決定手段204の決定動作については後述する。
【0044】
次に、休止非対応リンク除外手段205が、休止候補リンク群決定手段204が決定した休止候補リンク群から、休止不能な通信リンクを取り除き、休止させる通信リンク群を決定する(ステップS303)。次いで、休止手段206が、休止非対応リンク除外手段205が決定した休止させる通信リンク群に含まれる各通信リンクについて、対応する下位層プロトコルスタックに休止命令を送る。休止命令を受信した下位層プロトコルスタックは、下位層リソースを解放して、通信リンクを休止する(ステップS304)。
【0045】
また、復帰リンク群決定手段207は、復帰させる通信リンク群を決定する(ステップS305)。復帰リンク群決定手段207の決定動作については後述する。
【0046】
次に、復帰手段208が、復帰リンク群決定手段207が決定した復帰させる通信リンク群に含まれる各通信リンクについて、対応する下位層プロトコルスタックに復帰命令を送る。復帰命令を受信した下位層プロトコルスタックは、下位層リソースを再確保して、通信リンクを復帰する(ステップS306)。
【0047】
なお、ステップS302〜ステップS304の処理の一連の流れと、ステップS305〜ステップS306の処理の一連の流れとは、どちらが先に実行されてもよいし、並列に実行されてもよい。また、中継装置の各機能がソフトウェアで実装される場合には、タスク切り替えによる擬似並行処理として実行されてもよい。
【0048】
下位層プロトコルスタックからの通信リンク状態情報を休止管理手段107が受信した場合には(図3中のステップS307)、リンク状態管理手段202は、記憶している情報を、受信した通信リンク状態情報にもとづいて更新する(ステップS308)。
【0049】
図4には、UMLのアクティビティ図の形式で、休止候補リンク群決定手段204の決定動作(ステップS302)の例が示されている。休止候補リンク群決定手段204は、まず、休止候補リンク群の初期値として、空集合を設定する(ステップS400)。次に、自機に接続されている全ての通信リンク(下位層のプロトコルによって実現される通信リンク)の各々について、以下の処理を行う。
【0050】
休止候補リンク群決定手段204は、通信リンクの状態が接続状態であるか否かを、リンク状態管理手段202が記憶している情報(上位層プロトコルスタック101から受け取った中継状況情報にもとづく自機が中継している各通信の状況を示す情報)にもとづいて調査する(ステップS401)。接続状態でない場合には、この通信リンクについての処理を終了する。接続状態である場合には、休止候補リンク群決定手段204は、通信リンクにデータが通じていない時間を算出する。具体的には、現在時刻を取得し、中継管理手段201に記憶されている情報にもとづいて、通信リンクを最後にデータが通じた時刻を取得し、現在時刻から最後にデータが通じた時刻を引くことによって通信リンクにデータが通じていない時間を算出する(ステップS402)。
【0051】
次に、休止候補リンク群決定手段204は、算出した経過時間が、所定の閾値以上か否かを調査する。経過時間が閾値以上でない(閾値未満である)場合には、この通信リンクについての処理を終了する(ステップS403)。経過時間が閾値以上である場合には、その通信リンクは上位層の通信が休止している通信リンクであると判断し、その通信リンクを、休止状態にさせる候補の通信リンクとして休止候補リンク群に追加する(ステップS404)。
【0052】
図4に示されているような動作によって、休止候補リンク群決定手段204は、上位層の通信が休止している通信リンクからなる休止候補リンク群を決定し、休止候補リンク群を示す情報を出力する。
【0053】
図5には、UMLのアクティビティ図の形式で、復帰リンク群決定手段207の決定動作(ステップS305)の例が示されている。復帰リンク群決定手段207は、まず、復帰させる通信リンク群の初期値として、空集合を設定する(ステップS500)。次に、自機に接続されている全ての通信リンクの各々について、以下の処理を行う。
【0054】
復帰リンク群決定手段207は、通信リンクの状態が休止状態であるかを、リンク状態管理手段202が記憶している情報にもとづいて調査する(ステップS501)。休止状態でない場合には、この通信リンクについての処理を終了する。
【0055】
休止状態である場合には、復帰リンク群決定手段207は、通信リンクに通じるべきデータが到着してからの経過時間を算出する。具体的には、現在時刻を取得し、中継管理手段201に記憶されている情報にもとづいて、通信リンクを通じるべきデータが最後に中継装置に到着した時刻を取得し、現在時刻から最後にデータが通じた時刻を引くことによって、通信リンクに通じるべきデータが最後に到着してからの経過時間を算出する(ステップS502)。
【0056】
次に、復帰リンク群決定手段207は、算出した経過時間が、所定の閾値未満か否かを調査する。閾値未満でない(閾値以上である)場合には、この通信リンクについての処理を終了する(ステップS503)。閾値未満である場合には、復帰リンク群決定手段207は、復帰させる通信リンク群に、この通信リンクを追加する(ステップS504)。
【0057】
なお、上位層プロトコルスタック101から休止管理手段107への中継状況情報の受け渡しは、上位層プロトコルスタック101から通知する形式でも、休止管理手段107が問い合わせる形式でもよい。ただし、中継状況情報の受け渡しの間隔は、所定の閾値よりも短くなければならない。また、下位層プロトコルスタックから休止管理手段107への通信リンク状態情報の受け渡しは、下位層プロトコルスタックから通知する形式でも、休止管理手段107が問い合わせる形式でもよい。ただし、通信リンク状態情報の受け渡しの間隔は、所定の閾値よりも短くなければならない。
【0058】
図6は、休止状態に対応している中継装置と、休止状態(「上位層の休止に連動して、上位層のリソースを維持したまま、下位層のリソースを解放する」状態)に対応していない中継装置すなわち休止機能を有していない中継装置が混在する通信網での、本実施の形態の中継装置の動作を示す説明図である。なお、図6に示す例では、エンドノード600とエンドノード606間で、上位層の通信が流れている状態が、「通信中」として示されている。
【0059】
中継装置601、中継装置603、中継装置604、中継装置605が本実施の形態の中継装置である。中継装置602は、休止状態に対応していない中継装置であるとする。なお、エンドノード600およびエンドノード606は休止状態に対応していない機器であるが、例えば、エンドノード600として休止状態に対応している機器を想定したい場合には、休止状態に対応していないエンドノード600と中継装置601とが、同一の筺体に格納されているとして扱えばよい。
【0060】
図6(A)に示す状態では、中継装置601、中継装置602、中継装置603、中継装置604、中継装置605、エンドノード606の間の全ての通信リンクが接続状態であり、エンドノード600からエンドノード606までの上位層の通信経路が通じている。
【0061】
図6(B)に示す状態は、エンドノード600’とエンドノード606’間で上位層の通信が休止している状態、すなわち「休止中」の状態である。図6において、休止中の状態における各機器には「’」が付されている。つまり、図6(B)において「n’」の符号が振られた機器は、図6(A)における「n」の符号が振られた機器と同一である。
【0062】
中継装置603’〜中継装置604’間、中継装置604’〜中継装置605’間の通信リンクは、本実施の形態の技術によって通信リンクが休止状態であり、これらの通信リンクのための下位層リソースが節約されている。
【0063】
エンドノード600’〜中継装置601’間、中継装置601’〜中継装置602’間、中継装置602’〜中継装置603’間、中継装置605’〜エンドノード606’間の通信リンクは接続状態である。よって、休止状態に対応していないエンドノード600’,605’および中継装置602において、上位層の通信リソースが解放されることはない。その結果、エンドノード600’〜エンドノード606’間の上位層の通信経路は維持されたままである。
【0064】
節約した下位層リソースを、中継装置内のほかの部分で利用してもよい。例えば電力リソースであれば、電力料金を下げるために節約したままにしておいてもよい。本実施の形態では、上位層の通信経路を維持したまま、リソースを有効に利用するという所望の目的が達成される。
実施の形態2.
【0065】
次に、本発明の第2の実施の形態(実施の形態2)を説明する。ここでは、第1の実施の形態と異なる点のみ説明する。第1の実施の形態と本実施の形態の差異は、第1の実施の形態ではコネクションレス型の通信であったのに対して、本実施の形態では中継する上位層の通信がコネクション型であるという点である。
【0066】
中継管理手段201が記憶する情報は、コネクション識別子、コネクションが通じている通信リンクの通信リンク識別子群、およびコネクションで最後に上位層の通信データが中継された時刻情報の組を、全てのコネクション識別子について並べたテーブルになる。通信リンクの通信リンク識別子群は分岐をしないコネクションであれば2個の通信リンク識別子からなり、分岐するコネクションであれば3個以上の通信リンク識別子からなる場合がある。
【0067】
本発明の第2の実施の形態の動作を説明する。第2の実施の形態の動作の概要は、第1の実施の形態の動作の概要と同様である。すなわち、図3にUMLのアクティビティ図の形式で示された動作と同様である。
【0068】
図7には、本実施の形態における休止候補リンク群決定手段204の決定動作(ステップS302)が、UMLのアクティビティ図の形式で示されている。本実施の形態では、休止候補リンク群決定手段204は、まず、休止候補リンク群の初期値として、自機に接続されている全ての通信リンクの集合を設定する(ステップS700)。次に、自機が中継している全てのコネクション(上位層のプロトコルによって実現される通信コネクション)の各々について、以下の処理を行う。
【0069】
まず、休止候補リンク群決定手段204は、通信リンクにデータが通じていない時間を算出する。具体的には、現在時刻を取得し、中継管理手段201に記憶されている情報にもとづいて、通信リンクを最後にデータが通じた時刻を取得し、現在時刻から最後にデータが通じた時刻を引くことによって、通信リンクをデータが通じていない時間を算出する(ステップS701)。
【0070】
次に、算出した経過時間が、所定の閾値以上か否かを調査する。経過時間が閾値以上である場合には、このコネクションについての処理を終了する(ステップS702)。経過時間が閾値以上でない(閾値未満である)場合には、このコネクションを構成している全ての通信リンクの各々について、休止候補リンク群から、この通信リンクを除外する(ステップS703)。以上の動作により、休止候補リンク群決定手段204は休止候補リンク群を出力する。
【0071】
図8には、本実施の形態における復帰リンク群決定手段207の決定動作(ステップS305)が、UMLのアクティビティ図の形式で示されている。本実施の形態では、復帰リンク群決定手段207は、まず、復帰させる通信リンク群の初期値として、空集合を設定する(ステップS800)。次に、自機が中継している全てのコネクションの各々について、以下の処理を行う。
【0072】
復帰リンク群決定手段207は、まず、通信リンクに通じるべきデータが最後に到着してからの経過時間を算出する。具体的には、現在時刻を取得し、中継管理手段201に記憶されている情報にもとづいて、通信リンクを通じるべきデータが最後に到着した時刻を取得し、現在時刻から最後にデータが通じた時刻を引くことによって、通信リンクを通じるべきデータが最後に到着してからの経過時間を算出する(ステップS801)。
【0073】
次に、算出した経過時間が、所定の閾値未満か否かを調査する。閾値以上である場合には、このコネクションについての処理を終了する(ステップS802)。経過時間が閾値以上でない(閾値未満である)場合には、コネクションを構成している全ての通信リンクの各々について、復帰させる通信リンク群に通信リンクを追加する(ステップS803)。以上の動作によって、復帰リンク群決定手段207は、復帰させる通信リンク群を出力する。
【0074】
図9は、休止状態に対応している中継装置と、休止状態(「上位層の休止に連動して、上位層のリソースを維持したまま、下位層のリソースを解放する」状態)対応していない中継装置が混在する通信網での、本実施の形態の中継装置の動作を示す説明図である。
【0075】
図9における上段では、エンドノード900とエンドノード902間に上位層のコネクションが張られ、上位層の通信が流れている状態が、「上位層経路1:通信中」として示されている。また、エンドノード901とエンドノード903間に上位層のコネクションが張られ、上位層の通信が流れている状態が、「上位層経路2:通信中」として示されている。
【0076】
中継装置904、中継装置905、中継装置906、中継装置907、中継装置908、中継装置909、中継装置911が本実施の形態の中継装置である。中継装置910は、休止状態に対応していない中継装置であるとする。
【0077】
なお、エンドノード900、エンドノード901、エンドノード902およびエンドノード903は休止状態に対応していない機器としているが、例えばエンドノード902として休止状態に対応している機器を想定したい場合には、休止状態に対応していないエンドノード902と中継装置908とが、同一の筺体に格納されているとして扱えばよい。
【0078】
ここで、上位層経路1について、中継装置904、中継装置905、中継装置906、中継装置907、中継装置908、エンドノード902の間の、全ての通信リンクが接続状態であり、エンドノード900からエンドノード902までの上位層の通信経路が通じている。
【0079】
また、上位層経路2について、中継装置904、中継装置905、中継装置909、中継装置910、中継装置911、エンドノード903の間の全ての通信リンクが接続状態であり、エンドノード901からエンドノード903までの上位層の通信経路が通じている。
【0080】
図9における下段では、エンドノード901’とエンドノード903’間で、上位層の通信が休止している状態が、「上位層経路2:休止中」として示されている。図9における下段では各機器に「’」が付されているが、「n’」の符号が振られた機器は、図9の下段における「n」の符号が振られた機器と同一である。
【0081】
中継装置905’〜中継装置909’間の通信リンクは、本実施の形態の技術によって通信リンクが休止状態であり、この通信リンクのための下位層リソースが節約されている。
【0082】
エンドノード901’〜中継装置904’間、中継装置909’〜中継装置910’間、中継装置910’〜中継装置911’間、中継装置911’〜エンドノード903’間の通信リンクは、通信リンクが接続状態である。よって、休止状態に対応していないエンドノード901’および中継装置中継装置910’において、上位層の通信リソースが解放されることはない。その結果、エンドノード901’〜エンドノード903’間の上位層の通信経路は維持されたままである。さらに、中継装置904’〜中継装置905’間の通信リンクは上位層経路1と上位層経路2で共用されているので、上位層経路2が休止中となっても、通信リンクは休止状態にならない。
【0083】
節約した下位層リソースは、中継装置内のほかの部分で利用してもよいし、例えば電力リソースであれば、電力料金を下げるために節約したままにしておいてもよい。このようにして、上位層の通信経路を維持したまま、リソースを有効に利用するという所望の目的が達成される。
【実施例】
【0084】
実施例1.
コネクションレス型の通信の中継装置に、本発明を適用する実施例について説明する。
【0085】
上位層の通信にIP通信を用い、下位層の通信に無線LANを用いる通信網のためのIPルータにおいて、所定の閾値の時間を超えてIPパケットが通じなかった無線LAN通信リンクについては、本発明に対応したIPルータ間の無線LAN接続のみを休止する。このことによって、無線LANで使用する消費電力を削減することができる。この際に、上位層のリソースであるIP網のルーティングテーブルを、そのまま維持する。
【0086】
本発明に対応していないIPルータ(休止機能を有していないIPルータ)と本発明に対応したIPルータ間の無線LAN通信リンクを、そのまま維持する。よって、本発明に対応していないIPルータのルーティングテーブルを、そのまま維持する。その後、維持されていたルーティングテーブルに従って、IPパケットを中継する際に、本発明に対応したIPルータにおいて、休止している無線LAN通信リンクを通す必要が生じた際には、無線LAN通信リンクを再度接続する。
【0087】
隣接するIPルータが本発明に対応しているか否かを、判定する方法として、複数の方法があり得る。例えば、本発明に対応したIPルータに、自機以外の本発明に対応したIPルータのIPアドレスを、あらかじめ設定ファイルとして書き込んでおく方式がある。また、例えば、IPアドレスの代わりに、MACアドレスを設定ファイルとして書き込む方法もある。また、例えば、本発明に対応したIPルータのSSIDに、目印として特定の接頭辞を含めておき、本発明に対応していないIPルータのSSIDの先頭には、その接頭辞が含まれないように設定しておく方式がある。
【0088】
また、例えば、隣接している中継装置に、SNMP(Simple Network Management Protocol)等を用いて、本発明に対応しているか問い合わせる方式もあり得る。
【0089】
なお、IP網において、ある程度の時間が経過するごとにルータ間で通信を行うことによって、ルーティングテーブルを更新するよう動作するものが多い。そのため、本発明に関わる各パラメータを、以下の3本の不等式の関係を満たすよう設定することによって、本発明の所望の効果を得られる。
routing>Tthresh
thresh>Tlasttime
Tthresh>Tlink
【0090】
なお、各変数の意味は以下のとおりである。
routing:ルーティングテーブル更新のための通信の時間間隔
thresh:無線LAN通信リンクを休止する判断に用いる所定の閾値
lasttime:中継状況情報を更新する時間間隔
link:通信リンク状態情報を更新する時間間隔
【0091】
実施例2.
次に、コネクション型の通信の中継装置に、本発明を適用する実施例について説明する。
【0092】
通常のHTTPクライアント(例えば、Webブラウザ)が動作しているエンドノードと、通常のHTTPサーバが動作しているエンドノードと、WebブラウザからHTTPサーバの間に介在する多段のHTTPプロキシとのうちの一部のHTTPプロキシにのみ本発明が適用されたHTTP中継網において、上位層のHTTP通信に、所定の閾値の時間を超えてデータが流れなかった場合、本発明に対応したHTTPプロキシ間のTCPコネクションのみを切断する。
【0093】
このことによって、HTTPプロキシにおいてTCPコネクションの管理に使用するメモリを削減することができる。この際に、上位層のリソースであるHTTP網の中継情報(接続先のURL)を、そのまま維持する。本発明に対応していないHTTPプロキシと、本発明に対応したHTTPプロキシの間のTCPコネクションを、そのまま維持する。よって、本発明に対応していないHTTPプロキシでは、HTTPコネクションが切断されることなく維持される。その後、HTTPクライアント側とHTTPサーバ側との何れかからデータが流れてきたときには、本発明に対応したHTTPプロキシにおいて、維持されていたTCPコネクションを再度接続する。
【0094】
なお、HTTP網において、ある程度の時間が経過するまでは、HTTP通信のデータが流れなくても、HTTPクライアント〜サーバ間のコネクションを維持するオプション(Keep Aliveオプション)が用いられる場合がある。そのため、本発明に関わる各パラメータを、以下の3本の不等式の関係を満たすよう設定することによって、本発明の所望の効果が得られる。
【0095】
Tkeepalive>Tthresh
Tthresh>Tlasttime
Tthresh>Tlink
【0096】
なお、各変数の意味は以下のとおりである。
Tkeepalive:HTTPクライアントとHTTPサーバ間にてKeep Aliveオプションで指定される時間
Tthresh:TCPコネクションを休止する判断に用いる所定の閾値
Tlasttime:中継状況情報を更新する時間間隔
Tlink:通信リンク状態情報を更新する時間間隔
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明を、インターネットを構成する中継装置に適用できる。また、LANを構成する中継装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の第1の実施の形態の中継装置を示すブロック図である。
【図2】休止管理手段の構成例を示すブロック図である。
【図3】UMLのアクティビティ図の形式で中継装置の動作の概要を示す説明図である。
【図4】UMLのアクティビティ図の形式で休止候補リンク群決定手段の決定動作を示す説明図である。
【図5】UMLのアクティビティ図の形式で復帰リンク群決定手段の決定動作を示す説明図である。
【図6】休止状態に対応していない中継装置が混在する通信網での第1の実施の形態の中継装置の動作を示す説明図である。
【図7】UMLのアクティビティ図の形式で第2の実施の形態における休止候補リンク群決定手段の決定動作を示す説明図である。
【図8】UMLのアクティビティ図の形式で復帰リンク群決定手段の決定動作を示す説明図である。
【図9】休止状態に対応していない中継装置が混在する通信網での第2の実施の形態の中継装置の動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0099】
100 中継装置
101 上位層プロトコルスタック
102 上位層リソース
103 下位層プロトコルスタック
104 下位層リソース
105 下位層プロトコルスタック
106 下位層リソース
107 休止管理手段
201 中継管理手段
202 リンク状態管理手段
203 リンク休止管理手段
204 休止候補リンク群決定手段
205 休止非対応リンク除外手段
206 休止手段
207 復帰リンク群決定手段
208 復帰手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下位層のプロトコルを用いて隣接する機器と接続し、上位層のプロトコルを用いて通信を中継し、上位層の通信が休止していると判断した場合には、上位層のプロトコルが用いるリソースを維持したまま、下位層のプロトコルが用いるリソースを解放することによりリソースの有効利用を図る通信中継装置であって、
上位層の通信が休止している通信リンク群を決定する休止候補リンク群決定手段と、
前記休止候補リンク群決定手段が決定した通信リンク群から、上位層の通信が休止しているときに上位層のためのリソースを維持したまま下位層のリソースを解放する休止機能を有していない隣接する機器への通信リンクを除外し、除外されなかった通信リンクからなる通信リンク群を示す情報を、休止状態とする通信リンク群を示す情報として出力する休止非対応リンク除外手段と、
前記休止非対応リンク除外手段が出力した情報が示す通信リンク群について、各通信リンク毎に、下位層のリソースを解放させる制御を行う休止手段とを備えた
ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項2】
休止候補リンク群決定手段は、上位層の通信が休止しているとの判断基準として、所定の閾値以上の時間、上位層の通信が流れなかったことを用いる
請求項1記載の通信中継装置。
【請求項3】
中継する上位層の通信プロトコルとして、コネクションレス型のプロトコルを用い、
休止候補リンク群決定手段は、下位層のプロトコルによって実現される通信リンク毎に、上位層の通信が休止しているか否か判断し、上位層の通信が休止している通信リンク群を決定する
請求項1記載の通信中継装置。
【請求項4】
中継する上位層の通信プロトコルとして、コネクション型のプロトコルを用い、
休止候補リンク群決定手段は、上位層のプロトコルによって実現される通信コネクション毎に上位層の通信が休止しているか否か判断して上位層の通信が休止状態である通信コネクション群を決定し、決定した通信コネクション群にもとづいて、上位層の通信が全て休止している通信リンク群を決定する
請求項1記載の通信中継装置。
【請求項5】
休止非対応リンク除外手段は、あらかじめ自機に設定された情報にもとづいて、隣接する機器が下位層のリソースを解放する機能を有しているか否か判断する
請求項1記載の通信中継装置。
【請求項6】
休止非対応リンク除外手段は、隣接する機器との下位層プロトコルによる通信に含まれる情報にもとづいて、隣接する機器が下位層のリソースを解放する機能を有しているか否か判断する
請求項1記載の通信中継装置。
【請求項7】
休止非対応リンク除外手段は、隣接する機器が下位層のリソースを解放する機能を有しているか否か判断する場合に、隣接する機器への通信による問い合わせに対する隣接する機器からの応答にもとづいて、隣接する機器が下位層のリソースを解放する機能を有しているか否か判断する
請求項1記載の通信中継装置。
【請求項8】
休止非対応リンク除外手段は、隣接する機器が下位層のリソースを解放する機能を有しているか否か不明である場合には、隣接する機器が当該機能を有していないと判断する
請求項1記載の通信中継装置。
【請求項9】
休止状態である通信リンクに含まれ、かつ、その通信リンクを通じて送信されるべき上位層の通信データは、本通信中継装置が受信して送信待ちになっている通信リンクからなる通信リンク群を、復帰させる通信リンク群に決定する復帰リンク群出力手段と、
前記復帰リンク群決定手段が決定した通信リンク群に含まれる各通信リンクについて、下位層リソースを再確保して通信リンクを復帰させる復帰手段とを備えた
請求項1から請求項8のうちのいずれかに記載の通信中継装置。
【請求項10】
下位層のプロトコルを用いて隣接する機器と接続し上位層のプロトコルを用いて通信を中継する複数の通信中継装置が設けられた通信システムにおいて、
少なくとも1つの通信中継装置は、
上位層の通信が休止していると判断した場合には、上位層のプロトコルが用いるリソースを維持したまま、下位層のプロトコルが用いるリソースを解放することによりリソースの有効利用を図る機能を有し、
上位層の通信が休止している通信リンク群を決定する休止候補リンク群決定手段と、
前記休止候補リンク群決定手段が決定した通信リンク群から、上位層の通信が休止しているときに上位層のためのリソースを維持したまま下位層のリソースを解放する休止機能を有していない隣接する機器への通信リンクを除外し、除外されなかった通信リンクからなる通信リンク群を示す情報を、休止状態とする通信リンク群を示す情報として出力する休止非対応リンク除外手段と、
前記休止非対応リンク除外手段が出力した情報が示す通信リンク群について、各通信リンク毎に、下位層のリソースを解放させる制御を行う休止手段とを備えた
ことを特徴とする通信システム。
【請求項11】
下位層のプロトコルを用いて隣接する機器と接続し、上位層のプロトコルを用いて通信を中継する通信中継装置に適用されるリソース解放方法であり、上位層の通信が休止していると判断した場合には、上位層のプロトコルが用いるリソースを維持したまま、下位層のプロトコルが用いるリソースを解放することによりリソースの有効利用を図るリソース解放方法であって、
上位層の通信が休止している通信リンク群を決定し、
決定した前記通信リンク群から、上位層の通信が休止しているときに上位層のためのリソースを維持したまま下位層のリソースを解放する休止機能を有していない隣接する機器への通信リンクを除外し、
除外されなかった通信リンクからなる通信リンク群について、各通信リンク毎に、下位層のリソースを解放させる制御を行う
ことを特徴とするリソース解放方法。
【請求項12】
上位層の通信が休止している通信リンク群を決定する際に、上位層の通信が休止しているとの判断基準として、所定の閾値以上の時間、上位層の通信が流れなかったことを用いる
請求項11記載のリソース解放方法。
【請求項13】
中継する上位層の通信プロトコルとして、コネクションレス型のプロトコルを用い、
上位層の通信が休止している通信リンク群を決定する際に、下位層のプロトコルによって実現される通信リンク毎に、上位層の通信が休止しているか否か判断し、上位層の通信が休止している通信リンク群を決定する
請求項11記載のリソース解放方法。
【請求項14】
中継する上位層の通信プロトコルとして、コネクション型のプロトコルを用い、
上位層の通信が休止している通信リンク群を決定する際に、上位層のプロトコルによって実現される通信コネクション毎に上位層の通信が休止しているか否か判断して上位層の通信が休止状態である通信コネクション群を決定し、決定した通信コネクション群にもとづいて、上位層の通信が全て休止している通信リンク群を決定する
請求項11記載のリソース解放方法。
【請求項15】
休止機能を有していない隣接する機器への通信リンクを除外する際に、あらかじめ自機に設定された情報にもとづいて、隣接する機器が下位層のリソースを解放する機能を有しているか否か判断する
請求項11記載のリソース解放方法。
【請求項16】
休止機能を有していない隣接する機器への通信リンクを除外する際に、隣接する機器との下位層プロトコルによる通信に含まれる情報にもとづいて、隣接する機器が下位層のリソースを解放する機能を有しているか否か判断する
請求項11記載のリソース解放方法。
【請求項17】
隣接する機器が下位層のリソースを解放する機能を有しているか否か判断する場合に、隣接する機器への通信による問い合わせに対する隣接する機器からの応答にもとづいて、隣接する機器が下位層のリソースを解放する機能を有しているか否か判断する
請求項11記載のリソース解放方法。
【請求項18】
休止機能を有していない隣接する機器への通信リンクを除外する際に、隣接する機器が下位層のリソースを解放する機能を有しているか否か不明である場合には、隣接する機器が当該機能を有していないと判断する
請求項11記載のリソース解放方法。
【請求項19】
休止状態である通信リンクに含まれ、かつ、その通信リンクを通じて送信されるべき上位層の通信データは、本通信中継装置が受信して送信待ちになっている通信リンクからなる通信リンク群を、復帰させる通信リンク群に決定し、
決定した通信リンク群に含まれる各通信リンクについて、下位層リソースを再確保して通信リンクを復帰させる
請求項11から請求項18のうちのいずれかに記載のリソース解放方法。
【請求項20】
下位層のプロトコルを用いて隣接する機器と接続し、上位層のプロトコルを用いて通信を中継する通信中継装置に搭載されるプログラムであり、上位層の通信が休止していると判断した場合には、上位層のプロトコルが用いるリソースを維持したまま、下位層のプロトコルが用いるリソースを解放することによりリソースの有効利用を図るためのプログラムであって、
通信中継装置に、
上位層の通信が休止している通信リンク群を決定する休止候補リンク群決定処理と、
前記休止候補リンク群決定処理で決定した通信リンク群から、上位層の通信が休止しているときに上位層のためのリソースを維持したまま下位層のリソースを解放する休止機能を有していない隣接する機器への通信リンクを除外し、除外されなかった通信リンクからなる通信リンク群を示す情報を、休止状態とする通信リンク群を示す情報として出力する休止非対応リンク除外処理と、
前記休止非対応リンク除外処理で出力された情報が示す通信リンク群について、各通信リンク毎に、下位層のリソースを解放させる休止処理と
を実行させるためのプログラム。
【請求項21】
休止候補リンク群決定処理で、上位層の通信が休止しているとの判断基準として、所定の閾値以上の時間、上位層の通信が流れなかったことを用いる
請求項20記載のプログラム。
【請求項22】
通信中継装置は、中継する上位層の通信プロトコルとして、コネクションレス型のプロトコルを用い、
休止候補リンク群決定処理で、下位層のプロトコルによって実現される通信リンク毎に、上位層の通信が休止しているか否か判断し、上位層の通信が休止している通信リンク群を決定するための
請求項20記載のプログラム。
【請求項23】
通信中継装置は、中継する上位層の通信プロトコルとして、コネクション型のプロトコルを用い、
休止候補リンク群決定処理で、上位層のプロトコルによって実現される通信コネクション毎に上位層の通信が休止しているか否か判断して上位層の通信が休止状態である通信コネクション群を決定し、決定した通信コネクション群にもとづいて、上位層の通信が全て休止している通信リンク群を決定するための
請求項20記載のプログラム。
【請求項24】
休止非対応リンク除外処理で、あらかじめ自機に設定された情報にもとづいて、隣接する機器が下位層のリソースを解放する機能を有しているか否か判断するための
請求項20記載のプログラム。
【請求項25】
休止非対応リンク除外処理で、隣接する機器との下位層プロトコルによる通信に含まれる情報にもとづいて、隣接する機器が下位層のリソースを解放する機能を有しているか否か判断するための
請求項20記載のプログラム。
【請求項26】
休止非対応リンク除外処理で、隣接する機器が下位層のリソースを解放する機能を有しているか否か判断する場合に、隣接する機器への通信による問い合わせに対する隣接する機器からの応答にもとづいて、隣接する機器が下位層のリソースを解放する機能を有しているか否か判断するための
請求項20記載のプログラム。
【請求項27】
休止非対応リンク除外処理で、隣接する機器が下位層のリソースを解放する機能を有しているか否か不明である場合には、隣接する機器が当該機能を有していないと判断するための
請求項20記載のプログラム。
【請求項28】
休止状態である通信リンクに含まれ、かつ、その通信リンクを通じて送信されるべき上位層の通信データは、本通信中継装置が受信して送信待ちになっている通信リンクからなる通信リンク群を、復帰させる通信リンク群に決定する復帰リンク群出力処理と、
前記復帰リンク群決定処理で決定された通信リンク群に含まれる各通信リンクについて、下位層リソースを再確保して通信リンクを復帰させる復帰処理と
を実行させるための請求項20から請求項27のうちのいずれか1項に記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−236510(P2008−236510A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74684(P2007−74684)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】