説明

通信光検知器

【課題】複数の波長の通信光が通信光伝送路内を伝播している場合であっても、この通信光伝送路内から所望の波長の通信光を取り出して、その通信光を検知することできる通信光検知器を提供する。
【解決手段】通信光検知器は、波長の異なる複数の通信光が伝搬される通信光伝送路と該通信光伝送路に設けた光漏洩部から漏れる前記波長の異なる複数の通信光の漏洩光の内、所望の波長を有する通信光の漏洩光を透過し、所望外の波長を有する通信光の漏洩光を吸収または反射するフィルタ手段と、前記フィルタ手段によって透過された漏洩光から前記所望の波長を有する通信光を検知する光検知部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送路内を伝搬する通信光を検知するための通信光検知器に関する。
【背景技術】
【0002】
通信光検知器が用いられる光通信システム100を図5に示す。
【0003】
光通信会社の設備センター14内には、通信光発信/受信装置11が設けられ、この通信光発信/受信装置11は光分岐合流器15が接続されて設けられている。この光分岐合流器15は、通信光発信/受信装置11から送信される通信光(光信号)を分岐して送信または複数のユーザー宅10から送信された通信光(光信号)を合流して通信光発信/受信装置11で受信させるためのものである。
【0004】
各家庭や事務所などのユーザー宅10内には、光終端装置である通信光受信/発信装置12が設けられる。電柱18の付近には、クロージャー16が取り付けられ、このクロージャー16内には、設備センター14からの通信光を分岐し、各ユーザー宅10からの通信光を合流するための光分岐合流器17が設けられている。また、通信光発信/受信装置11と光分岐合流器17の間、及び、光分岐合流器17と通信光受信/発信装置12の間は、光ファイバ13A、13Bによって接続され、通信光発信/受信装置11と通信光受信/発信装置12とを結ぶ通信光伝送路(光ファイバ13)が形成される。これによって、通信光発信/受信装置11と通信光受信/発信装置12との間で光通信がなされる。そして、この通信光伝送路内を伝搬する光信号を漏洩させるための光漏洩部を光ファイバ13B内に形成し、この光漏洩部からの漏洩光を検知し、通信光伝送路の通信光伝送状態を監視するための光検知部を備えた通信光検知器(図示しない)が設けられている。
【0005】
この通信光検知器として特許文献1には、スリーブ内の接続部に設けられ、光伝送路の端部同士と接合すると共に、光伝送路のコアを貫通する光検知用溝及びその光検知用溝に充填される屈折率整合剤を有する光検知接合体と、光検知接合体の上方に設けられ、光検知用溝を介して漏れる通信光の漏れ光を検知する光検知部とを備え、光検知用溝は、光検知接合体の長手方向に沿った溝幅が50〜150μmであることを特徴とする通信光検知器が記載されている。
【0006】
特許文献2には、心線対照すべき光ファイバに現用光よりも長波長の試験光を入射して現用光と試験光との波長を相互に異ならせるとともに当該試験光の伝送状態にて光線路を曲げ、その曲げ箇所からの漏洩試験光を検知して光ファイバの対照を行なうことを特徴とする光線路の心線対照方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−276627号公報
【特許文献2】特許第2803726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の通信光検知器では、設備センター14からユーザー宅10へ送信される通信光(通常、1.5μm波長帯が用いられる)と、ユーザー宅10から設備センター14へ送信される通信光(通常、1.3μm波長帯が用いられる)の両通信光を検知してしまい、どちらか一方の波長を有する通信光のみを検知することはできない。そのため、光ファイバ13の一端がユーザー宅10に接続されていなくても(光ファイバ13Cのように未使用回線であっても)、設備センター14からは通信光が常に送信され続けているため、特許文献1に記載の通信光検知器では常に漏れ光を検知し続けてしまう。よって、特許文献1に記載の通信光検知器では、光ファイバ13の一端がユーザー宅10に接続されていることを示す、ユーザー宅10からの通信光のみを検知することができず、多数本の光ファイバ13の中から未使用回線(光ファイバ13C)を見つけ出すことは困難である。
【0009】
また、特許文献2に記載のような光ファイバを曲げて漏洩光を発生させる方法では、1.5μm波長帯の通信光の場合は比較的簡単に漏洩させることができるが、1.3μm波長帯の通信光の場合は光ファイバ内への光閉じ込め効果が強く働くため、1.3μm波長帯の通信光を漏洩させることが困難である。従って、特許文献2に記載の心線対照方法であっても、漏洩させたい通信光の波長によっては特許文献1と同様に、多数本の光ファイバ13の中から未使用回線(光ファイバ13C)を見つけ出すことは困難である。
そこで本発明は、上記の課題を解決し、複数の波長の通信光が通信光伝送路内を伝搬している場合であっても、この通信光伝送路内から所望の波長の通信光の漏洩光を取り出して、その通信光の漏洩光を検知することができる通信光検知器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために創案された本発明は、波長の異なる複数の通信光が伝搬される通信光伝送路と該通信光伝送路に設けられた光漏洩部と、前記光漏洩部から漏れる前記波長の異なる複数の通信光の内、所望の波長を有する通信光を透過し、所望外の波長を有する通信光を吸収または反射するフィルタ手段と、前記フィルタ手段によって透過された前記所望の波長を有する通信光を検知する光検知部と、を備えてなる通信光検知器である。
【0011】
前記光漏洩部は通信用光ファイバのコアを貫通する光検知用溝と該光検知用溝に充填される屈折率整合剤とを有する光検知接合体か、通信用光ファイバの途中に設けられた光コネクタ同士の接合箇所か、通信用光ファイバの途中に設けられた光コネクタ同士の軸を微小ずらして接合した接合箇所か、または、通信用光ファイバの途中に設けられた光コネクタ同士の接合箇所の間に通信用光ファイバとコアの構造・成分が異なった光ファイバを挿入することで形成する接合箇所であっても良い。
【0012】
前記フィルタ手段は、孔部付き平板と波長選択フィルタとからなり、前記光漏洩光部から漏れる前記波長の異なる複数の通信光は、前記孔部付き平板の孔部を通って前記波長選択フィルタに入射され、前記孔部付き平板は、前記光漏洩部から漏れる前記波長の異なる複数の通信光の内、前記波長選択フィルタに垂直またはほぼ垂直に入射する垂直入射光を透過させ、前記波長選択フィルタは、前記垂直入射光の内、所望の波長を有する通信光を透過させ、所望外の波長を有する通信光を反射するようにされていても良い。
【0013】
前記孔部付き平板は、その底面及び内壁面に黒色塗料が塗布されているか、または、黒色樹脂によって形成されていても良い。
【0014】
前記通信光伝送路内を伝搬する通信光は、1.3μm波長帯と1.5μm波長帯からなる通信光であり、前記波長フィルタは、1.3μm波長帯を透過し、1.5μm波長帯を反射する特性を有するようにしても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の波長の通信光が通信光伝送路内を伝搬している場合であっても、この通信光伝送路内から所望の波長の通信光を取り出して、その通信光を検知することできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の好適な第1の実施例に係る通信光検知器の使用状態を示す縦断面図である。
【図2】孔部付き平板の孔部の断面形状と漏れ光との関係を示す図である。
【図3】1.3μm波長帯透過/1.5μm波長帯遮断フィルタの波長特性図である。
【図4】本発明の第2の実施例に係る通信光検知器の使用状態を示す縦断面図である。
【図5】通信光検知器が用いられる光通信システムについての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明の好適な第1の実施例を示す通信光検知器の主要部の縦断面図である。
【0019】
図1に示すように、第1の実施例に係る通信光検知器1は、例えば、光伝送路としての光ファイバの端部同士を突き合わせ接続した光ファイバの接続部において、光伝送路の使用状態を監視して通信光の有無(光通信しているか否か)を検知するものである。
【0020】
この通信光検知器1は、光検知接合体2と、その光検知接合体2の両端部がそれぞれ挿入されるスリーブ3a,3bとを備える。光検知接合体2の両端面には、通信光検知器1の使用時に、設備センター14側の光コネクタが備えるフェルール104cとユーザー宅10側の光コネクタが備えるフェルール104yがそれぞれ挿入されて突き合わせ接続される。フェルール104cには設備センター14側の光ファイバ106cが内蔵され、フェルール104yにはユーザー宅10側の光ファイバ106yが内蔵される。
【0021】
光検知接合体2は、光ファイバ106c,106yのコアの端部(光ファイバの接続部側の端部)同士と突き合わせ接続されるコア部とこのコア部を包囲するクラッド部とからなる光ファイバ4と、この光ファイバ4の周囲に設けられるフェルール部5と、このフェルール部5の一部を除去して断面矩形状に形成され、後述の光検知部9が収納される収納溝6と、この収納溝6の底面の位置に光ファイバ4を切断するように形成される、断面矩形状の光検知用溝7と、この光検知用溝7に充填される屈折率整合剤rとからなり、光検知用溝7の上側に光漏洩部16が形成され、その開口部に光検知部9が位置するように形成されている。なお、この光検知用溝7は、少なくとも光ファイバ4のコア部を貫通するように形成されていれば良い。
【0022】
光検知接合体2は、その長手方向の両端面がそれぞれフェルール104c,104yの端面同士と接合される。この光検知接合体2では、光ファイバ4と、この光ファイバ4に臨む屈折率整合剤rが充填された光検知用溝7とからなる部分が検知側の光伝送路8となる。
【0023】
光検知接合体2は、光ファイバ4のコア部が各光ファイバ106c,106yのコアと同じ材料で作製され、クラッド部が各光ファイバ106c,106yのクラッドと同じ材料で作製される。光検知接合体2のフェルール部5は、各フェルール104c,104yやスリーブ3a,3bと同じ材料で作製される。なお、光ファイバ4には、各光ファイバ106c,106yと同様の光ファイバを用いてもよいし、光導波路を用いても良い。
【0024】
光検知接合体2の長手方向の両端面は、通信光検知器1に挿入される各フェルール104c,104yの端面(光ファイバの接続部側の端面)とPC(物理的接触)接続されるため、PC端面となるように研磨される。光検知接合体2の外径は、各フェルール104c,104yの外径と同じである。
【0025】
光検知用溝7は、光検知接合体2の長手方向に沿った溝幅が50〜150μmである。溝幅が50μm未満では、漏れ光発生率が小さすぎて漏れ光の検知が難しくなったり、受光した漏れ光を電気信号に変換した後に、別に増幅器が必要になって部品点数が増えたりする。また、溝幅が150μmを超えると、漏れ光発生率が大きすぎて通信に支障が生じる。
【0026】
通信光検知器1に挿入される光伝送路としての各光ファイバ106c,106yには、石英ガラス製のシングルモード光ファイバや、GI(グレーデッドインデックス)型のマルチモード光ファイバが用いられる。各光ファイバ106c,106yとしてシングルモード光ファイバを用いる場合は、1.3μm波長帯あるいは1.5μm波長帯の通信光が使用される。各光ファイバとしてマルチモード光ファイバを用いる場合には、波長が850nm帯、あるいは1310nm帯の通信光が使用される。
【0027】
図1に戻り、光検知用溝7に充填される屈折率整合剤rには、各光ファイバ106c,106yのコアとほぼ同じ屈折率のものを用いる。屈折率整合剤rとしては、液状のものを使用してもよいし、熱硬化性や紫外線(UV)硬化性の樹脂、あるいは接着剤で、硬化後の屈折率が各光ファイバ106c,106yのコアとほぼ同じものを使用してもよい。
【0028】
スリーブ3aは、フェルール104cと光検知接合体2の光軸位置合わせをするためのものであり、スリーブ3bは、フェルール104yと光検知接合体2の光軸位置合わせをするためのものである。
【0029】
なお、フェルール104cは、設備センター14側の光コネクタプラグ(図示しない)に内蔵され、フェルール104yは、ユーザー宅10側の光コネクタプラグ(図示しない)に内蔵される。これらフェルール104c,104yは、セラミックスあるいは金属で作製され、その端面(光ファイバの接続部側の端面)がPC(物理的接触)端面となるように研磨される。
【0030】
スリーブ3a,3bは、通信光の少なくとも一部を透過する(あるいは通信光を受光するとこれを散乱する)セラミックス製やガラス製のもの、あるいはスリーブ長手方向(軸方向)に延びるスリットを有するセラミックス製、ガラス製、金属製の割スリーブを用いる。通信光の少なくとも一部を透過するセラミックスとしては、例えば、ジルコニアセラミックスがある。
【0031】
通信光検知器1は、光検知接合体2の上方に設けられて光検知用溝7を介して漏れる漏れ光を検知する光検知部9をさらに備える。光検知部9は、漏れ光を受光するためのPD素子91を備えたPD90が、フィルタ手段300(後述の孔部付き平板92と波長選択フィルタ93)と共に、光検知用溝7の上方に対向し、かつスリーブ3a,3bの間に配置されるように、収納溝6に収納されて取り付けられる。そして、PD素子91と光検知用溝7との間に、ドーナツ板形状の孔部付き平板92と、誘電体多層膜からなり、所望の波長を透過させ、それ以外の波長を反射(遮断)する波長選択フィルタ93との順番で、これらが光検知用溝7側から位置するように、PD90の先端部分に取り付けられている。なお、孔付き平板92は光検知器の収納溝6に組み込んでも良い、また、光検知部4は、PD素子91で受光した漏れ光を可視光によって出力する光出力部材(図示しない)と、PD90とが搭載されて光検知回路を構成する回路基板94とを備える。つまり、光検知部9は、PD素子91を備えたPD90と、フィルタ手段300(孔部付き平板92と、波長選択フィルタ93)と、回路基板94とからなる。本実施形態では、PD90として安価なCanパッケージタイプのものを用いた。
【0032】
ここで、フィルタ手段300の役割について説明する。
【0033】
光検知接合体2の光検知用溝7内に入射された通信光は、一部が漏れ光として漏れ、その漏れ光が光ファイバ4のコア部の端面から広がる(散乱する)。孔部付き平板92は、この色々な方向に広がった漏れ光の内、波長選択フィルタ93に垂直に入射しない漏れ光を遮断して、波長選択フィルタ93に垂直に入射する漏れ光を波長選択フィルタ93側に絞って透過させるためのものである。そして、波長選択フィルタ93は、この垂直に入射された漏れ光の内、所望の波長を有する光信号をPD素子91側に透過させ、PD素子91は、この光信号を検知することになる。
【0034】
上記したように、孔部付き平板92を介して波長選択フィルタ93に漏れ光を入射させる理由は、波長選択フィルタ93は誘電体多層膜によって構成されるが、誘電体多層膜は自身に対して光が垂直に入射したときにその波長選択性能が最大限に発揮され、斜めに入射した光に対しては十分な波長選択性能を発揮することができないからで、そのため通信光検知器1が所望の波長を有する光信号を効率良く検知することができなくなる(所望外の波長を有する光信号も検知して信号対雑音比(S/N)が悪くなる)からである。
【0035】
これにより、光検知用溝7で発生した漏れ光のうち、PD素子91に垂直方向の成分を有する漏れ光を波長選択フィルタ93に入射させ、この波長選択フィルタ93によって所望の波長を有する光信号をPD素子91側に効率的に透過させることができる(所望外の波長を有する光信号が、PD素子91に到達することを大幅に減らすことができる)ので、信号対雑音比(S/N)を大幅に改善でき、検知性能を向上させることができる。
【0036】
また上記した効果を得るために、孔部付き平板92は、例えば、その厚さは1〜3mmとし、その外径は5mmとし、貫通孔である孔部の内径(孔径)は0.5〜2mmとすることが好ましい。また、孔部付き平板92の底面及び孔部の壁面に黒色塗料を塗布したり孔部付き平板92そのものを黒色樹脂で製作することによって、漏れ光の絞り効果を高めることができる。
【0037】
さらに孔部付き平板92の断面形状は図2に示すように種々の形状を採用することができる。孔部付き平板92は、矢印のように入射されてきた漏れ光の内、点線で示す入射角度の大きい漏れ光を遮光(吸収または反射)する。図2(a)のものは、その内面壁92aが始端から終端まで全域に亘って断面垂直状をした孔部付き平板92であり、図2(b)のものは、図2(a)の構造に類似し、内面壁92aの形状は始端及び終端形状が切欠状にして(孔部に面取り加工を施して)製造を容易にした形状の孔部付き平板92であり、図2(c)のものは、内面壁92aの形状は終端側狭小型である孔部付き平板92であり、図2(d)のものは内面壁92aの形状は終端末広がり型である孔部付き平板92である。いずれの孔部付き平板92であっても孔径及び傾斜角度を適宜選択し、斜めに入射される漏れ光を遮光し、垂直方向の遮漏光を通過させるように設定することができる。検出を容易にすることからは、図2(a)あるいは図2(b)に示すものが望ましい。
【0038】
また、通信光伝送路中を1.3μm波長帯と1.5μm波長帯の通信光が伝搬しており、この1.3μm波長帯のみを取り出して検知したい場合には、波長選択フィルタ93は、図3に示すような1.3μm波長帯透過/1.5μm波長帯遮断の特性を有することが望ましい。なお、この特性は、自身(フィルタ面)に直角に光を入射した場合に得られるものである。
【0039】
図3に示すように、波長選択フィルタ93は1.3μm波長帯の漏れ光をほぼ100%通過させ、1.5μm波長帯の漏れ光をほぼ0%まで遮断できること示している。
【0040】
第1の実施形態の作用を説明する。
【0041】
使用したい通信光伝送路(光ファイバ13)に光検知器1を取り付ける。具体的には、光検知器1の一端側の光コネクタアダプタに、ユーザー宅10側の光コネクタプラグを挿入して固定し、他端側の光コネクタアダプタに、設備センター14側の光コネクタプラグを挿入して固定し、設備センター14側からユーザー宅10側に向かって1.5μm波長帯で通信すると共に、ユーザー宅10側から設備センター14側に向かって1.3μm波長帯で通信し、双方向通信をしているものとする。
【0042】
この場合、図1に示すように、設備センター14側からの通信光は、設備センター14側の光コネクタプラグに内蔵されたフェルール104c内の光ファイバ106cを通り、ユーザー宅10側からの通信光は、ユーザー宅10側の光コネクタプラグに内蔵されたフェルール104y内の光ファイバ106yを通り、両通信光は光検知接合体2の光検知用溝7に達する。両通信光が光検知用溝7内の屈折率整合剤rに入射すると、両通信光の一部が漏れ光として漏れ、その漏れ光が光ファイバ4のコア部の端面から広がる。なお、設備センター14側からの通信光とユーザー宅10側からの通信光の波長は異なっており、本実施例においては、設備センター14側からの通信光は1.5μm波長帯であり、ユーザー宅10側からの通信光は1.3μm波長帯であるので、漏れ光には、1.5μm波長帯と1.3μm波長帯の両通信光が含まれる。
【0043】
この広がった漏れ光は、孔部付き平板92に達する。そして、この漏れ光は、孔部付き平板92の光検知用溝7側の底面及び孔部の壁面によって吸収または反射されることによって絞られるので、漏れ光の一部は、波長選択フィルタ93に達しない。その他の漏れ光(波長選択フィルタ93に垂直またはほぼ垂直に入射する漏れ光)は、孔部付き平板92の孔部を通って波長選択フィルタ93に達する。
【0044】
本実施形態においては、孔部付き平板92の底面及び孔部の壁面に黒色塗料を塗布した。
【0045】
波長選択フィルタ93は、誘電体多層膜からなり、1.5μm波長帯の光信号を遮断し、1.3μm波長帯の光信号を透過するように設計されている。
【0046】
波長選択フィルタ93に達した漏れ光(垂直入射光)は、この波長選択フィルタ93に垂直またはほぼ垂直に入射することになるので、波長選択フィルタ93の波長選択機能が有効に作用する。よって、波長選択フィルタ93に達した漏れ光は、1.5μm波長帯の光信号は反射(遮断)され、1.3μm波長帯の光信号は透過され、この透過した1.3μm波長帯の光信号は、PD素子91によって検知される。そして、PD素子91は、検知(受光)した光信号を電気信号に変換し、この電気信号が回路基板94を伝送されて光検知部9の光出力部材(例えば、発光ダイオードを用いる)で可視光に変換されて出力される。
【0047】
すなわち、伝送路中を伝搬する通信光(光信号)の波長が複数であっても、所望の波長を有する光信号のみを取り出すことが可能であり、この光信号が変換されて出力される可視光の有無を作業者が目視することで、この通信光伝送路が使用されているか否かを簡単に確認できる。
【0048】
したがって、通信光検知器1によれば、フィルタ手段300を用いることで、複数の波長の通信光が通信光伝送路内を伝搬している場合であっても、この通信光伝送路内から所望の波長の通信光を取り出して、その通信光を検知することできる。よって、通信光検知器1が取り付けられた通信光伝送路が使用中の回線(通信光を検知)か未使用の回線(通信光を検知せず)であるか容易に判別することができる。
【0049】
図4に示す第2の実施形態に係る通信光検知器1は、PD素子91が光検知用溝7の真上部分からフェルール104c側(1.3μm波長帯通信光の下流側)に位置するように場所をずらしたものである。
【0050】
一般に漏れ光の強度が最高値となる位置は通信光発信側から見て、光検知用溝7からわずかに通信光受信側にシフトすることが知られている。従って、通信光発信/受信装置11から発信される1.5μm波長帯の通信光に対して、通信光受信/発信装置12から発信される1.3μm波長帯の通信光が混在するときは、1.5μm波長帯の通信光の漏れ光は光検知用溝からわずかに通信光受信/発信装置12側にシフトした位置に最大強度の出力が得られ、逆に、通信光受信/発信装置12からの1.3μm波長帯の通信光の漏れ光は光検知用溝7からわずかに通信光発信/受信装置11側にシフトした位置で最大強度の出力が得られる。
【0051】
このため、ユーザー宅10から発信された1.3μm波長帯の通信光を検出するためには、その漏れ光強度が最大となる位置すなわち光検知用溝7からわずかに設備センター14側にシフトした位置にPD素子91を取り付けることで感度よく検出することが可能となる。この際、1.5μm波長帯の通信光の漏れ光の出力は、1.3μm波長帯の通信光の漏れ光が最大出力となる位置では、光検知用溝7の真上にある場合よりも小さくなる。したがって、PD素子91の取付け位置とフィルタ手段300とを併用することにより、所望の1.3μm波長帯の通信光の漏れ光を感度良く受光して(波長選択フィルタ93に入射する1.5μm波長帯の通信光を減らして)S/Nの向上を図ることが出来る。
【0052】
なお、この通信光検知器によってもユーザー宅からの1.3μm波長帯の通信光が検知できないときは、その回線は使用されていないと判別できる。
【0053】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、その要旨を変更しない範囲内で種々な変形が可能である。
【0054】
光漏洩部の構成例は特開2009−276627号に記載されているが、例えば、光検知接合体2の長手方向の両端部がそれぞれ光ファイバ106C,106yを内蔵した光コネクタのフェルール104c、104yの端面と接合されるが、この接合部でも通信光が漏洩し、光漏洩部16が形成される。特に光検知接合体2の光ファイバ4の構造パラメータが光ファイバ106c,106yの構造パラメータと異なるときや光検知接合体2の光ファイバ4と光ファイバ106c、106yの光軸が微小ずれていると前記接合部での漏洩光の強度が強くなるので、この光漏洩部からの漏洩光を光検知部9で検知することが出来、光検知用溝7や屈折率整合剤rなどを使用することなく通信光が検知できる。
【0055】
また、波長選択フィルタ93として1.3μm波長帯透過/1.5μm波長帯遮断の特性を有する1種類の波長選択フィルタを用いたが、更に斜め入射光を反射するように1.3μm波長帯透過/1.6μm波長帯遮断の特性を有する波長選択フィルタも組合せて多数の波長透過・遮断特性を備えさせることもできる。すなわちフィルタ手段は、孔部付き平板と複数種類の波長選択フィルタとを併用したものから構成されても、複数種類の波長フィルタの組み合わせのみから構成されても良い。
【0056】
さらに、フィルタ手段300をPD90に脱着可能に形成しておき、フィルタ手段300を取り付けた状態で通信光伝送路に取り付けて1.3μm波長帯の通信光が無いことを検知した後に、フィルタ手段300を取り外した状態で通信光伝送路に取り付けて1.5μm波長帯の通信光の有無を検知することで、設備センター14側から通信光検知器までの回線の正常または異常(断線)かを確認することができるようになる。
【0057】
また、本発明は、通信光検知器の両端から異なった通信光を伝搬させる場合だけでなく、通信光検知器の片端から異なる波長を有する通信光を同時に伝搬させる場合であっても適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…通信光検知器、2…光検知接合体、7…光検知用溝、9…光検知部、13…通信光伝送路、92…孔部付き平板、93…波長選択フィルタ、300…フィルタ手段、r…屈折率整合剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長の異なる複数の通信光が伝搬される通信光伝送路と該通信光伝送路に形成された光漏洩部と、前記光漏洩部から漏れる前記波長の異なる複数の通信光の内、所望の波長を有する通信光を透過し、所望外の波長を有する通信光を吸収または反射するフィルタ手段と、
前記フィルタ手段によって透過された前記所望の波長を有する通信光を検知する光検知部と、
を備えてなる通信光検知器。
【請求項2】
光漏洩部は光検知接合体の通信光伝送路のコアを貫通する光検知用溝と該光検知用溝に充填される屈折率整合剤とで構成されることを特徴とする請求項1に記載の通信光検知器。
【請求項3】
光漏洩部は光検知接合体の長手方向の両端部と両端に接合される光コネクタに内蔵した光ファイバとの接合部で構成されることを特徴とする請求項1に記載の通信光検知器。
【請求項4】
光漏洩部は光検知接合体の長手方向の両端部と両端に接合される光コネクタに内蔵した光ファイバとの接合部で構成され、該光検知接合体の内部の光ファイバは通信光伝送路を形成する光ファイバの構造パラメータと異なることを特徴とする請求項1に記載の通信光検知器。
【請求項5】
前記フィルタ手段は、孔部付き平板と波長選択フィルタとからなり、
前記光漏洩部から漏れる前記波長の異なる複数の通信光は、前記孔部付き平板の孔部を通って前記波長選択フィルタに入射され、
前記孔部付き平板は、前記光漏洩部から漏れる前記波長の異なる複数の通信光の内、前記波長選択フィルタに垂直またはほぼ垂直に入射する垂直入射光を透過させ、
前記波長選択フィルタは、前記垂直入射光の内、所望の波長を有する通信光を透過させ、所望外の波長を有する通信光を反射することを特徴とする請求項4に記載の通信光検知器。
【請求項6】
前記孔部付き平板は、その底面及び内壁面に黒色塗料が塗布されているか、または、黒色樹脂によって形成されていることを特徴とする請求項5に記載の通信光検知器。
【請求項7】
前記通信光伝送路内を伝搬する通信光は、1.3μm波長帯と1.5μm波長帯からなる通信光であり、
前記波長選択フィルタは、1.3μm波長帯を透過し、1.5μm波長帯を反射する特性を有することを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の通信光検知器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−113871(P2013−113871A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257177(P2011−257177)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(504026856)株式会社アドバンスト・ケーブル・システムズ (64)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】