説明

通信制御システム、親局装置および子局装置

【課題】 親局装置13と子局装置16とがIPネットワーク3上で通信を行う遠方監視制御システムにおいて、UDPによる同報情報の授受を確実にかつ効率よく行う。
【解決手段】 IPネットワーク3で通信制御を行う通信制御システムにおいて、子局装置16から親局装置13へ送信するメッセージに、複数の親局1毎に異なった通番を付加することで、親局装置13は受信したメッセージに含まれる自身の当該通番を参照し、その連続性からメッセージ欠落を検出することができる構成にした。さらに、メッセージ欠落を検出した際は、親局装置13が子局装置16に再送要求を送信し、子局装置16から再送信されたメッセージを受信することにより、欠落したメッセージの補完をすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IPネットワーク間で機器の監視制御を行う通信制御システム、親局装置および子局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の遠方監視における通信制御システムは、監視制御を行う監視制御端末を備える親局と、監視制御の対象機器が接続される子局とを専用回線等により接続し、親局内に備わる親局装置と、子局内に備わる子局装置とが1:1接続方式で情報通信を行う方式を用いていた。
その際、親局の監視制御端末から、子局の監視制御対象機器へ制御データ等のメッセージを送信する場合には、まず親局内で監視制御端末から親局装置へ送信され、親局装置からネットワークを経由して子局の子局装置へ送信され、子局内で子局装置から監視制御対象機器へ送信される構成となっていた。
逆に、監視制御対象機器から監視制御端末へ、機器の状態データや計測データ等の機器情報のメッセージを送信する場合には、まず監視制御対象機器から子局装置へ送信され、子局装置からネットワークを経由して親局装置へ送信され、親局装置から監視制御端末等へ送信される構成となっていた。
【0003】
一方、最近の遠方監視における通信制御システムでは、インターネットプロトコルを用いて複数の親局装置と複数の子局装置とをネットワークで接続し、ある子局装置からのメッセージを複数の親局装置に同時に送信するために、1:多接続方式、あるいは、多:多接続方式により接続する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、非特許文献1では、給電情報伝送システムの交換網で異常が発生した際に、情報の再送回数の最大値まで再送を行った後に迂回が実施されることが記載されている。この非特許文献1の第5−3−9図に示されるように、再送を何度か(この図では3回)実施し、それでもタイムアウトとなった場合には、迂回に移行して別の情報伝送装置に転送する等の方法が一般的に取られている。
【0005】
インターネットプロトコルとしてUDP(User Datagram Protocol)を採用した場合、親局装置と子局装置との間で送受信するメッセージの欠落を防止する仕組みが必要になる。親局装置と子局装置とを1:多接続、あるいは多:多接続方式で接続した場合、例えば、ある子局装置からのメッセージを複数の親局装置へ送信するためには、メッセージに連続性を確保するために通番を付してメッセージを送信し、受信した親局装置では、受信したメッセージの通番について、その連続性を検証する。そして、メッセージの欠落を検出した際には、子局装置に対して再送要求を行い、欠落したメッセージを再送により補完する方式を採用している。
【特許文献1】特開2002−238158号公報(段落0018〜0022、図1)
【非特許文献1】「給電情報伝送システムの信頼度評価とシステム設計」、「電気協同研究」、社団法人電気協同研究会、平成11年5月15日、第55巻、第1号、p.72−77
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、通番によってメッセージ欠落を防止する仕組みをとった場合、親局装置毎にメッセージの受信頻度が異なるため、子局装置は送信するメッセージに対して、親局装置毎に異なる通番を設定する必要があった。例えば、親局装置Aは通番2までメッセージを受信しており、親局装置Bは通番3までメッセージを受信している場合、子局装置が次に両親局装置(A,B)に送信するメッセージは、親局装置A宛には通番3を、親局装置B宛には通番4を付与し、それぞれのメッセージを別々に送信しなければならなかった。
そのため子局装置は、親局装置毎に通番のみ相違するメッセージを送信することとなり、結果としてネットワーク負荷が増加する問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、IPネットワーク間で機器の監視制御を行う通信制御システムにおいて、ある子局装置から複数の異なる親局装置へ、異なる通番のメッセージを一度に送信することができ、ネットワーク負荷の低減を図りつつ、信頼性の高い効率的な通信制御を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、IPネットワーク間で通信制御を行う通信制御システムにおいて、子局装置から親局装置へ送信するメッセージに、複数の親局毎に異なった通番を付加することで、親局装置は受信したメッセージに含まれる自身の当該通番を参照し、その連続性からメッセージ欠落を検出することができるようにした。
【0009】
さらに、親局装置がメッセージ欠落を検出した際は、親局装置から子局装置に再送要求を送信し、子局装置にメッセージを再送信させることにより、欠落したメッセージの補完をすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、IPネットワーク間で機器の監視制御を行う通信制御システムにおいて、ある子局装置から複数の異なる親局装置へ、異なる通番のメッセージを一度に送信することができ、ネットワーク負荷の低減を図りつつ、信頼性の高い効率的な通信制御を実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態(以下「実施形態」とする)について、図面を参照しながら説明する。
なお、本実施形態における「機器情報」とは、子局の監視制御対象機器の状態データや、監視制御対象機器の計測によって得られた計測データ等の情報を指す。また、本実施形態における「メッセージ」とは、親局装置と子局装置との間で送受信する情報であり、このメッセージの種類として、監視制御対象機器からの機器情報を含んだ「同報情報」、メッセージ欠落時の「再送要求」、メッセージが再送できない場合の「再送却下」等がある。これらのメッセージの構成やメッセージを使用した処理については、後で詳しく説明する。
【0012】
(概略説明)
図1は、本実施形態における通信制御システム全体の概略をあらわす構成図である。図1を用いて、通信制御システム全体の概略を説明する。
【0013】
本実施形態における通信制御システムは、1以上の親局1と、この親局1の通信相手である1以上の子局2と、この両方の局(1,2)を接続するIP(Internet Protocol)ネットワーク3とを含んで構成される。
子局2は、図2で説明する監視制御対象機器の機器情報等を管理し、その機器情報をメッセージとして親局1へ送信する局であり、子局番1〜Mが付与されている。なお、子局2は1つでもよい。
親局1は、子局2の監視制御対象機器からの機器情報を含むメッセージを子局2から受信し、親局1内に備わる図2で説明する監視制御端末へ機器情報を送信したり、子局2の監視制御対象機器を制御するための制御データを子局2へ送信したりする等の処理を行う局であり、親局番1〜Nが付与されている。なお、親局1は1つでもよい。
IPネットワーク3は、親局1と子局2とが通信を行うための通信網であり、例えば、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、イントラネット等である。
【0014】
(局構成と装置)
図2は、親局1と子局2のそれぞれの構成をあらわす構成図である。図2(a),(b)を用いて親局1と子局2の構成を詳細に説明する。
【0015】
図2(a)は親局1の構成であり、監視制御端末10が親局装置13に接続され、親局装置13がIPネットワーク3に接続されている。
親局装置13は、CPU(Central Processing Unit)19、記憶部20、ネットワークインタフェースに相当するIP伝送制御部12、図示しない入出力インタフェース等を備えるコンピュータであり、例えば、WS(WorkStation)、PC(Personal Computer)、専用コンピュータ等により実現される。
【0016】
親局装置13の、CPU19には、IP伝送制御部12から入力されるメッセージを解析して監視制御端末10へ通知する等の機能を持つ親局データ編集部11を備え、記憶部20には子局別最新受信済通番テーブル(第1のテーブル)31が備えられている。これらの親局データ編集部11および子局別最新受信済通番テーブル31の、詳細な内容や機能については後記する。
【0017】
また、監視制御端末10も、親局装置13と同様に一般的なコンピュータで実現され、親局装置13から送信された、監視制御対象機器の機器情報等を表示したり、子局2へ送信するための制御データを入力したりする機能を持つ。
【0018】
図2(b)は子局2の構成であり、複数の機器17(1〜K)からなる監視制御対象機器群18が子局装置16に接続され、子局装置16がIPネットワーク3に接続されている。
機器17は、監視制御対象となっている機器であり、例えばポンプ、遮断機、非常灯、信号機、ドア、温湿度計等である。なお、この機器17は1つでもよい。
【0019】
子局装置16は、前記した親局装置13と同様に、CPU21、記憶部22、ネットワークインタフェースに相当するIP伝送制御部14、図示しない入出力インタフェース等を備えるコンピュータにより実現される。
【0020】
子局装置16のCPU21には、機器17から送信される機器情報を用いて、親局1へ送信するメッセージを生成する等の機能を持つ子局データ編集部15を備え、記憶部22には、機器別送信先親局対応テーブル(第2のテーブル)41、送信済データテーブル(第3のテーブル)42、および親局別最新送信済通番テーブル(第4のテーブル)43が備えられている。これらの詳細な内容や機能については後記する。
また、記憶部22にはさらに、親局番カウンタ50,テーブルカウンタ51が備えられている。これらの親局番カウンタ50,テーブルカウンタ51は、子局データ編集部15がカウンタとして一時的に使用する作業エリアである。
【0021】
(メッセージ構成)
図3Aは、IPネットワーク3を介して親局1と子局2との間で送受信するメッセージの分類をあらわし、図3Bは、それぞれのメッセージのデータ構成をあらわしている。図3Aに示すように、メッセージは情報識別子によって、「同報情報」,「再送要求」および「再送却下」の3種類に分類される。それぞれのメッセージのデータ構成を説明する。
【0022】
図3Aにおいて情報識別子=「1」の場合、メッセージは同報情報となる。この同報情報は、機器17の機器情報を監視制御端末10へ送信するために、子局装置16から親局1の親局装置13へ送信するメッセージである。
この同報情報は、図3B(a)の同報情報のとおり、情報識別子24、発信元子局番25A、N個の親局通番25、および機器情報26から構成される。情報識別子24は、メッセージの種類を判別するための情報であり、ここでは1が入力される。発信元子局番25Aは、子局装置16が属する自身の子局番(1〜M)のいずれかが入力される。親局通番25(1〜N)は、親局番(1〜N)毎に、子局装置16から親局装置13への最新送信済メッセージの通番が入力される。機器情報26は、機器17から送信された機器情報等の情報が入力される。
【0023】
図3Aにおいて情報識別子=「2」の場合、メッセージは再送要求となる。この再送要求は、親局装置13が、子局装置16から送信されてきたメッセージ(同報情報)が欠落したと判定した場合に、子局装置16へ再送を要求するメッセージである。
この再送要求は、図3B(b)の再送要求のとおり、情報識別子24、再送要求先子局番27、および再送要求通番28から構成される。情報識別子24は、ここでは2が入力される。再送要求先子局番27は、再送を要求する相手先の子局2の、子局番(1〜M)のいずれかが入力される。再送要求通番28は、親局装置13が再送を要求するメッセージ(同報情報)の通番が入力される。
【0024】
図3Aにおいて情報識別子=「3」の場合、メッセージは再送却下となる。この再送却下は、子局装置16が、親局装置13から送信されてきたメッセージ(再送要求)に対して、要求された当該の同報情報が送信できないことを親局装置13へ通知するメッセージである。
この再送却下は、図3B(c)の再送却下のとおり、情報識別子24、再送要求元親局番29、再送可能通番30から構成される。情報識別子24は、ここでは3が入力される。再送要求元親局番29は、再送要求を送信した親局1の親局番(1〜N)のいずれかが入力される。再送可能通番30は、子局装置16が当該親局装置13に対して再送可能とするメッセージ(同報情報)の通番が入力される。
【0025】
図4は、親局装置13の記憶部20に保存されている、子局別最新受信済通番テーブル31の構成図である。子局別最新受信済通番テーブル31は、子局数であるM個の最新受信済通番32で構成される。この最新受信済通番32は、親局装置13で受信した最新の同報情報の通番が、子局番毎に、最新受信済通番32(1〜M)に保存されている。このテーブルによって、親局装置13は、それぞれの子局2から受信したメッセージ(同報情報)の通番を管理している。
なお、本実施形態では、図4の子局別最新受信済通番テーブル31の各項目には、親局装置13の起動時には予め初期値0が入力されている。
【0026】
図5は、子局装置16の記憶部22に保存されている、機器別送信先親局対応テーブル41、送信済データテーブル42、親局別最新送信済通番テーブル43の構成図である。それぞれのテーブルについて説明する。
【0027】
図5の(a)機器別送信先親局対応テーブル41は、図2における機器17(1〜K)毎の親局1(1〜N)に対する送信要否を保存している。ここで、送信否の場合は0、送信要の場合は1が予め入力されているものとし、図5(a)では、テーブルの一例が示されている。
【0028】
図5の(b)送信済データテーブル42は、最新テーブル番号44と、T個の送信済同報情報45から構成される。送信済同報情報45(1〜T)は、子局装置16から親局装置13へ送信した同報情報をT個分保存しており、最新テーブル番号44には、最新に送信した送信済同報情報45の番号である1〜Tのいずれかの値が保存される。
【0029】
図5の(c)親局別最新送信済通番テーブル43は、親局数であるN個の最新送信済通番46から構成される。この最新送信済通番46は、子局装置16から親局装置13へ送信した最新の同報情報の通番が、親局番毎に、最新送信済通番46(1〜N)に保存されている。このテーブルによって、子局装置16は、それぞれの親局1に送信したメッセージ(同報情報)の通番を管理している。
なお、本実施形態では、図5の(b)と(c)の送信済データテーブル42,親局別最新送信済通番テーブル43の各項目には、子局装置16の起動時には予め初期値0が入力されているものとする。
【0030】
(子局送信処理−同報情報)
図6は、子局装置16が、機器17から送信された機器情報を受信して、親局装置13へ送信するために、受信した機器情報を用いて同報情報を生成し、IPネットワーク3へ送信する処理(子局送信処理)を説明するフロー図である。図6を用いて、適宜図1〜3,図5を参照しながら説明する。
監視制御対象である機器17から送信された機器情報を、子局装置16が受信したら(S201)、子局データ編集部15は、受信した機器情報を、同報情報の機器情報26に入力(セット)する(S202)。
【0031】
子局データ編集部15は、同報情報を送信する親局1を検索するために、記憶部22の親局番カウンタ50(図2参照)に1を入力して初期化する(S203)。
続いて子局データ編集部15は、親局番カウンタ50の値を用いて、記憶部22に保存されている機器別送信先親局対応テーブル41から当該機器17の親局番毎の送信要否をリードし(S204)、リードした値によって親局1毎の送信要否を判定(S205)する。すなわち、値が1であれば当該親局1への送信要となり(S205→Yes)、子局データ編集部15は、親局別最新送信済通番テーブル43から、親局番カウンタ50の値に相当する親局番(1〜N)の最新送信済通番46に保存されている値をインクリメントし(S206)、さらに同報情報において、当該親局番に相当する親局通番25(1〜N)にステップS206でインクリメントした結果の値を入力(セット)する(S207)。
【0032】
一方、判定した結果、値が0であれば、当該親局1への送信否となり(S205→No)、子局データ編集部15は、親局別最新送信済通番テーブル43にも、同報情報の当該親局番の親局通番25にも入力は行わずに、ステップS208の処理へ進む。
【0033】
子局データ編集部15は、ステップS208において、全ての親局番(1〜N)が終了しない間は(S208→No)、親局番カウンタ50をインクリメント(S209)しながらステップS204〜S207の処理を実行する。
【0034】
一方、ステップS208において、全親局分が終了したら(S208→Yes)、子局データ編集部15は、記憶部22の送信済データテーブル42から、最新テーブル番号44をリードし(S210)、その値をインクリメントする(S211)。
さらに子局データ編集部15は、同報情報の発信元子局番25Aに、自身である子局番(1〜M)の値を入力(セット)し(S212)、ステップS211の結果の値が示す送信済同報情報45に、以上の処理で生成した同報情報を入力(セット)する(S213)。
子局データ編集部15は、以上の処理で生成した同報情報をIP伝送制御部14に通知する(S214)。それによって、同報情報がIPネットワーク3を介して親局1へ送信される。
【0035】
(親局受信処理−同報情報)
次に、子局装置16から送信された同報情報を、親局装置13が受信する処理(親局受信処理)について、図7を用いて、適宜図1〜4を参照しながら説明する。
【0036】
まず、親局装置13の親局データ編集部11が、子局2からIPネットワーク3とIP伝送制御部12を介してメッセージを受信する(S101)。受信したメッセージに含まれる情報識別子24を用いて、親局データ編集部11は、受信したメッセージが同報情報か否かを判別する(S102)。受信したメッセージに含まれる情報識別子24が1でない場合、メッセージは同報情報ではないので(S102→No)、ここでの処理は終了する。
【0037】
一方、受信したメッセージに含まれる情報識別子24が1であった場合、メッセージは同報情報なので(S102→Yes)、続いて親局データ編集部11は、子局2から送信された同報情報に含まれている通番と、自身に保存している通番とを比較し、今回受信したメッセージが既に受信済か否かを判定する。まず、受信した同報情報の親局通番25において、自身の親局番(1〜N)に該当する箇所に入力されている通番を抽出する。また、自身の記憶部20に保存してある子局別最新受信済通番テーブル31の最新受信済通番32(1〜M)から、受信した同報情報の発信元子局番25Aの値に該当する箇所の値を抽出し、この値と、前記抽出した同報情報の親局通番25から抽出した通番とを比較し、受信済か否かを判定する(S103)。
【0038】
判定の結果、これらが一致した場合は、親局データ編集部11は今回受信した同報情報が既に受信済であるとして(S103→Yes)、ここでの処理は終了する。
【0039】
一方、判定の結果、これらが一致しなかった場合は(S103→No)、今回受信したメッセージは未受信のメッセージなので、次に、親局データ編集部11は、メッセージが欠落していないかを確認するために、今回受信した通番と、ステップS103で最新受信済通番32から抽出した値に1を加えた結果とを比較して一致するか否かを判定する(S104)。
【0040】
判定の結果、一致した場合は(S104→Yes)、今回受信した同報情報と前回受信した同報情報との間には欠落がないので、親局データ編集部11は、受信した同報情報を監視制御端末10に通知し(S105)、さらに、今回受信した通番の値を、子局別最新受信済通番テーブル31における最新受信済通番32の当該子局番(1〜M)の箇所に入力(セット)する(S106)。
【0041】
(親局受信処理−再送要求)
一方、ステップS104の判定の結果、一致しなかった場合は(S104→No)、今回受信した同報情報と前回受信した同報情報との間に欠落があるので、親局装置13は再送要求を子局2へ送信することとなる。
【0042】
まず、親局データ編集部11は、受信した同報情報の発信元子局番25Aの値を、再送要求の再送要求先子局番27に入力(セット)し(S107)、続いて、再送要求の再送要求通番28に、自身の記憶部20に保存してある子局別最新受信済通番テーブル31における最新受信済通番32の、当該子局番の箇所の値に1を加えた結果(例えば、この親局装置が、当該子局装置からの同報情報を通番5まで受信済であれば、要求するのは次の通番である6となる)を入力(セット)し(S108)、以上の処理で生成した再送要求をIP伝送制御部12へ通知する(S109)。それによって、再送要求がIPネットワーク3を介して子局2へ送信される。
【0043】
(子局送信処理−再送)
次に、親局装置13から送信された再送要求を、子局装置16で受信する処理(子局受信処理)について、図8を用いて、適宜図1〜3,図5を参照しながら説明する。
【0044】
親局1からIPネットワーク3とIP伝送制御部14を介してメッセージを受信したら(S301)、子局装置16は受信したメッセージに含まれる情報識別子24を用いて、受信したメッセージが再送要求か否かを判別する(S302)。受信したメッセージに含まれる情報識別子24が2でない場合、メッセージは再送要求ではないので(S302→No)、ここでの処理は終了する。
一方、受信したメッセージに含まれる情報識別子24が2であった場合、メッセージは再送要求なので(S302→Yes)、子局データ編集部15は、記憶部22の送信済データテーブル42の最新テーブル番号44を、記憶部22のテーブルカウンタ51に入力(セット)する(S303)。
【0045】
子局データ編集部15は、送信済データテーブル42の送信済同報情報45(1〜T)のうち、テーブルカウンタ51の値に該当する箇所の同報情報をリードする(S304)。
子局データ編集部15は、リードした同報情報の親局通番25(1〜N)のうち、再送要求の送信元である親局1に該当する箇所の親局通番25をリードし(S305)、その親局通番25の値と再送要求に含まれる再送要求通番28の値とを比較し、一致するか否かを判定する(S306)。それらが一致した場合は(S306→Yes)、同報情報が再送可能なので、ステップS312へ進み、子局データ編集部15は、送信済データテーブル42の送信済同報情報45(1〜T)から、テーブルカウンタ51の値に該当する箇所の同報情報を抽出してIP伝送制御部14に通知し(S312)、それによって、同報情報がIPネットワーク3を介して親局1へ送信される。さらに、欠落が複数あった場合、欠落となっている次メッセージについても再送するため、テーブルカウンタ51の値をインクリメントし(S313)、テーブルカウンタ51の値が最新テーブル番号44の値を超えるまでの間(S314→No)ステップS312〜S313を繰り返し、超えたら(S314→Yes)ここでの処理は終了する。
【0046】
一方、ステップS306の判定処理において、一致しなかった場合(S306→No)、子局データ編集部15は、送信済データテーブル42で次の送信済同報情報45を検索する処理である、ステップS307へ進む。
ステップS307で、送信済データテーブル42の送信済同報情報45(1〜T)を全て検索し終えるまでの間(S307→No)子局データ編集部15はテーブルカウンタ51の値をデクリメントし(S308)、ステップS304〜S306の処理を繰り返す。
【0047】
一方、送信済同報情報45を全て検索し終えた場合(S307→Yes)、再送を要求された通番の同報情報が子局装置16に存在しないので、子局データ編集部15は、送信済データテーブル42の送信済同報情報45に含まれる親局通番25の情報を用いて、当該親局に再送可能な送信済同報情報の通番を抽出する。子局データ編集部15は、再送却下の再送可能通番30に前記抽出した通番を入力(セット)し(S309)、再送要求元親局番29には再送要求を送信してきた親局番を入力(セット)する(S310)。以上の処理で生成した再送却下をIP伝送制御部14に通知する(S311)。それによって、再送却下がIPネットワーク3を介して親局1へ送信される。
【0048】
(その他)
本実施形態では機器17から送信する情報は、機器の状態データや計測データとして説明したが、これに限るものではなく、機器についての稼動/停止等の情報でもよい。その他についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変形可能である。
【0049】
本実施形態に係る親局装置13および子局装置16は、前記したような処理を実行させる親局データ編集部11,子局データ編集部15を実行させるプログラムによって実現することができ、そのプログラムをコンピュータによる読み取り可能なCD−ROM等の記憶媒体に記憶して提供することが可能である。また、そのプログラムを、ネットワークを介して提供することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明における遠方監視制御システム全体の概略をあらわす構成図である。
【図2】図1における親局と子局のそれぞれの構成図である。
【図3A】本実施形態における親局装置と子局装置間で送受信するメッセージの分類である。
【図3B】図3Aにおけるそれぞれのメッセージのデータ構成図である。(a)は同報情報のデータ構成、図3B(b)は再送要求のデータ構成、図3B(c)は再送却下のデータ構成を示す。
【図4】本実施形態における親局装置で使用する子局別最新受信済通番テーブルのデータ構成図である。
【図5】本実施形態における子局装置で使用するデータ構成図である。(a)は機器別送信先親局対応テーブル、(b)は送信済データテーブル、(c)は親局別最新送信済通番テーブルを示す。
【図6】本実施形態における子局装置のIPネットワークへの送信処理を示すフローチャートである。
【図7】本実施形態における親局装置のIPネットワークからの受信処理を示すフローチャートである。
【図8】本実施形態における子局装置のIPネットワークからの受信処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
1 親局
2 子局
3 IPネットワーク
10 監視制御端末
11 親局データ編集部
12 IP伝送制御部(親局装置)
13 親局装置
14 IP伝送制御部(子局装置)
15 子局データ編集部
16 子局装置
17 機器
19 CPU(親局装置)
20 記憶部(親局装置)
21 CPU(子局装置)
22 記憶部(子局装置)
24 情報識別子
25 親局通番
26 機器情報
27 再送要求先子局番
28 再送要求通番
29 再送要求元親局番
30 再送可能通番
31 子局別最新受信済通番テーブル(第1のテーブル)
32 最新受信済通番
41 機器別送信先親局対応テーブル(第2のテーブル)
42 送信済データテーブル(第3のテーブル)
43 親局別最新送信済通番テーブル(第4のテーブル)
44 最新テーブル番号
45 送信済同報情報
46 最新送信済通番

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IPネットワークで接続される1以上の親局と、1以上の子局とを含む通信制御システムであって、
前記子局は、監視制御対象である1以上の機器と、子局装置とを含み、
前記親局は、前記機器を監視制御する監視制御端末と、親局装置とを含み、
前記子局装置が、
前記機器から受信した情報に基づき、前記親局毎の通番を付加した同報情報を生成し、前記親局装置に送信する手段を備え、
前記親局装置が、
前記子局装置から、前回受信した同報情報に含まれていた通番と、今回受信した同報情報に含まれる通番とを比較することで、前回受信した同報情報と今回受信した同報情報との間に欠落が無いか否かを判定し、欠落があると判定した場合には、欠落した同報情報の再送を要求するメッセージとして、再送を要求する同報情報の通番を含む再送要求を生成し、前記再送要求を前記子局装置に送信する手段
を備えることを特徴とする通信制御システム。
【請求項2】
前記子局装置が、
前記親局装置から前記再送要求を受信し、要求された通番の同報情報が自身に保存されていた場合には、当該親局装置に当該の同報情報を再送し、要求された通番の同報情報が保存されていない場合には、再送を却下するメッセージとして、前記子局装置が送信可能な同報情報の通番を含む再送却下を生成し、前記再送却下を当該親局装置に送信する手段
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の通信制御システム。
【請求項3】
前記親局装置が、
前回受信した同報情報と今回受信した同報情報との間に欠落が無いと判定した場合には、今回受信した同報情報を、前記監視制御端末へ送信する手段
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の通信制御システム。
【請求項4】
前記同報情報は、前記親局毎の最新送信済通番を示す親局通番と、前記機器から受信した情報を含み、
前記再送要求は、前記親局装置に保存されている最新受信済通番に1を加えた通番を含み、
前記再送却下は、前記子局装置に保存されている送信可能な同報情報の通番を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の通信制御システム。
【請求項5】
IPネットワークで接続される1以上の親局に備わる親局装置と、1以上の子局に備わる子局装置とを含む通信制御システムに用いられる前記親局装置であって、
前記子局装置から受信したメッセージについて、欠落の有無を判定する親局データ編集部と、
前記子局から受信したメッセージである同報情報に含まれる前記同報情報の通番を、最新受信済通番として子局毎に管理する第1のテーブルとを備え、
前記第1のテーブルに保存されている、当該子局から前回受信した同報情報の通番である前記最新受信済通番と、今回受信した同報情報に含まれる通番とを比較することで同報情報の欠落を判定し、欠落があると判定した場合には、欠落した同報情報の再送を要求するメッセージである、前記最新受信済通番に1を加えた値を含む再送要求を生成し、前記再送要求を前記子局装置に送信する
ことを特徴とする親局装置。
【請求項6】
IPネットワークで接続される1以上の親局に備わる親局装置と、1以上の子局に備わる子局装置とを含む通信制御システムに用いられる前記子局装置であって、
前記子局内に含まれる機器から受信した情報に基づき、前記親局毎の通番を付加した同報情報を生成する子局データ編集部と、
前記機器と前記親局毎の送信要否を管理する第2のテーブルと、
前記親局装置に送信した同報情報を保存する第3のテーブルと、
前記親局装置に最後に送信した同報情報の通番を最新送信済通番として親局毎に管理する第4のテーブルと
を備え、
前記第2のテーブルを用いて同報情報を送信する相手先となる前記親局への送信要否を判定し、その判定結果に基づいて、前記第4のテーブルに含まれる前記最新送信済通番の値を更新し、前記親局装置へ送信する同報情報に親局毎の前記最新送信済通番を入力して生成した同報情報を前記親局装置へ送信する
ことを特徴とする子局装置。
【請求項7】
前記子局データ編集部は、
前記親局装置から前記同報情報の再送を要求するメッセージである再送要求を受信し、
前記親局装置に要求された通番の同報情報が前記第3のテーブルに保存されている場合には、当該の同報情報を抽出して前記親局装置に送信し、
前記親局装置に要求された通番の同報情報が前記第3のテーブルに保存されていない場合には、再送を却下するメッセージとして、自身が送信可能な同報情報の通番を含む再送却下を生成して前記親局装置に送信する
構成を備えることを特徴とする請求項6に記載の子局装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−28138(P2007−28138A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−206534(P2005−206534)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(390023928)日立エンジニアリング株式会社 (134)
【Fターム(参考)】