説明

通信制御システム及び方法、並びにコンピュータプログラム及び記録媒体

【課題】移動体において効率的にデータのダウンロードを行う。
【解決手段】通信制御システム(100)は、移動体において、通信速度及び通信コストが互いに異なる複数の通信網を用いてデータをダウンロードする。通信制御システムは、複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報を取得する第1取得手段(106)と、データのサイズ及びダウンロード期限情報を取得する第2取得手段(104)と、複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報、並びにデータのサイズ及びダウンロード期限情報に基づいて、ダウンロード期限内にダウンロードを完了するように、且つダウンロードに要する通信コストが低くなるように、データのダウンロードを複数の通信網の各々に割り当てて実行する制御手段(107)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体において外部から配信されるデータをダウンロードする通信制御システム及び方法、並びにコンピュータをこのような通信制御システムとして機能させるコンピュータプログラム及び該コンピュータプログラムを記録した記録媒体の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシステムとして、例えば屋外において、複数の通信網を利用してデータの送受信を行うシステムが知られている。例えば特許文献1では、無線LAN(Local Area Network)による通信を一定時間試み、それが出来なかった場合に移動体通信網(例えば、携帯電話専用の通信網)を用いて通信を行うという技術が提案されている。また特許文献2では、利用可能な複数の通信網の中から、通信状態の安定した通信網を選択して通信を行うという技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−254115号公報
【特許文献2】国際公開2007/032384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されているような技術では、複数の通信網は互いに切替ながら利用される(言い換えれば、複数の通信網を同時に利用することができない)ため、効率的なデータの送受信が行えないという技術的問題点が生ずる。
【0005】
また特許文献2に記載されているような技術では、複数の通信網における通信コストが考慮されていないため、安定した通信を実現できたとしても、通信コストが高くなってしまうおそれがあるという技術的問題点が生じる。
【0006】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、移動体において効率的かつ低コストでデータのダウンロードを行うことが可能な通信制御システム及び方法、並びにコンピュータプログラム及び記録媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の通信制御システムは上記課題を解決するために、移動体において、通信速度及び通信コストが互いに異なる複数の通信網を用いてデータをダウンロードする通信制御システムであって、前記複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報を取得する第1取得手段と、前記データのサイズ及びダウンロード期限情報を取得する第2取得手段と、前記複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報、並びに前記データのサイズ及びダウンロード期限情報に基づいて、前記ダウンロード期限内にダウンロードを完了するように、且つダウンロードに要する前記通信コストが低くなるように、前記データのダウンロードを前記複数の通信網の各々に割り当てて実行する制御手段とを備える。
【0008】
本発明の通信制御方法は上記課題を解決するために、移動体において、通信速度及び通信コストが互いに異なる複数の通信網を用いてデータをダウンロードする通信制御方法であって、前記複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報を取得する第1取得工程と、前記データのサイズ及びダウンロード期限情報を取得する第2取得工程と、前記複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報、並びに前記データのサイズ及びダウンロード期限情報に基づいて、前記ダウンロード期限内にダウンロードを完了するように、且つダウンロードに要する前記通信コストが低くなるように、前記データのダウンロードを前記複数の通信網の各々に割り当てて実行する制御工程とを備える。
【0009】
本発明のコンピュータプログラムは上記課題を解決するために、コンピュータを上述した本発明の通信制御システム(但し、その各種態様も含む)として機能させる。
【0010】
本発明の記録媒体は上記課題を解決するために、上述した本発明のコンピュータプログラムを記録している。
【0011】
本発明の作用及び利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施例に係る通信制御システムの構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施例に係る通信制御システムによるコンテンツのダウンロード処理を示すフローチャートである。
【図3】第1実施例に係る通信制御システムによる回線スケジューリング処理を示すフローチャートである。
【図4】回線特性情報の一例を示すリスト図である。
【図5】コンテンツリストの一例を示すリスト図である。
【図6】ダウンロードすべきコンテンツの各回線への割り当て結果を示す概念図である。
【図7】第2実施例に係る通信制御システムの構成を示すブロック図である。
【図8】第3実施例に係る通信制御システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態に係る通信制御システムは、移動体において、通信速度及び通信コストが互いに異なる複数の通信網を用いてデータをダウンロードする通信制御システムであって、前記複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報を取得する第1取得手段と、前記データのサイズ及びダウンロード期限情報を取得する第2取得手段と、前記複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報、並びに前記データのサイズ及びダウンロード期限情報に基づいて、前記ダウンロード期限内にダウンロードを完了するように、且つダウンロードに要する前記通信コストが低くなるように、前記データのダウンロードを前記複数の通信網の各々に割り当てて実行する制御手段とを備える。
【0014】
本実施形態に係る通信制御システムによれば、移動体において、通信速度及び通信コストが互いに異なる複数の通信網を用いてデータがダウンロードされる。尚、ここでの「移動体」とは、位置が固定されていない物体を意味しており、例えば自動車や電車等の他にも、ユーザが携帯する携帯端末等を含む広い概念である。尚、本実施形態に係る通信制御システムは、その全てが移動体に搭載されていなくともよく、部分的に移動体の外部に配置されるものが存在していてもよい。
【0015】
本実施形態に係る通信制御システムでは、上述したように通信速度及び通信コストが互いに異なる複数の通信網を用いることが可能とされている。複数の通信網としては、例えば、Wi−Fi(wireless fidelity)や3G(3rd Generation:第3世代移動通信システム)が挙げられる。Wi−Fiは3G等の移動体向け通信と比較すると、通信可能な場所が限られ、故に平均として見れば通信速度は低いと言えるが、通信コストは安く済むという特徴がある。
【0016】
本実施形態に係る通信制御システムの動作時には、先ず第1取得手段によって、複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報が取得される。即ち、データのダウンロードに利用できる複数の通信網の単位時間当たりの通信速度を示す情報、及び通信コストを示す情報が夫々取得される。通信速度及び通信コスト情報は、システム内部に予め記憶されている情報を取得するようにしてもよいし、外部から新たに取得するようにしてもよい。また、通信速度情報に関しては、実測の通信速度を取得するようにしてもよい。
【0017】
本実施形態に係る通信制御システムでは更に、上述した通信速度及び通信コスト情報の取得と同時に或いは相前後して、データのサイズ及びダウンロード期限情報が、第2取得手段によって取得される。即ち、ダウンロードすべきデータのデータサイズを示す情報、及びダウンロードを完了すべき期限を示す情報が夫々取得される。データのサイズ及びダウンロード期限情報は、例えばコンテンツリストとして取得される。
【0018】
複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報、並びにデータのサイズ及びダウンロード期限情報が夫々取得されると、制御手段によって、データのダウンロードが複数の通信網の各々に割り当てられる。即ち、ダウンロードすべきデータを、どの通信網を用いてどれだけダウンロードするかが決定される。ここで制御手段は特に、ダウンロード期限内にダウンロードを完了するように、且つダウンロードに要する通信コストが低くなるように、データのダウンロードを複数の通信網の各々に割り当てる。これにより、ダウンロード期限内にダウンロードが完了できる範囲で、できるだけ通信コストが低くなるような通信網が選択される。
【0019】
以上のように、本実施形態に係る通信制御システムによれば、移動体において極めて効率的にデータのダウンロードを行うことが可能である。
【0020】
本実施形態に係る通信制御システムの一態様では、前記移動体は、公共交通機関であり、前記データは、前記公共交通機関における電子広告に用いられるデータである。
【0021】
この態様によれば、移動体は、例えばバスやタクシー等の公共交通機関として構成されている。そして、ダウンロードされるデータは、公共交通機関における電子広告に用いられる。
【0022】
ここで、電子広告に用いられるデータは、その性質上、即座にダウンロードすることが求められない場合が多い。即ち、一般的なデータ比べてダウンロード期限が非常に長い。よって、通信コストが低くなるように通信網を選択すれば、単純に通信速度だけを考慮する場合と比べて、大きく通信コストを下げることが可能である。
【0023】
本実施形態に係る通信制御システムの他の態様では、前記第1取得手段は、所定期間毎に前記複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報を取得する。
【0024】
この態様によれば、複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報が所定期間毎に取得されるため、通信速度及び通信コストが変動した場合であっても、適切な通信網を選択することができる。特に、移動体では、その位置が移動するため、通信速度及び通信コストが変動し易い。よって、上述した効果は、極めて顕著に発揮される。
【0025】
本実施形態に係る通信制御システムの他の態様では、前記移動体の外部において前記複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報を管理する管理手段を備え、前記第1取得手段は、前記複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報を、前記管理手段から取得する。
【0026】
この態様によれば、移動体の外部に設けられる管理手段によって、複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報が管理されている。管理手段は、例えば複数の移動体に対応するサーバとして構成されており、各移動体における通信速度及び通信コスト情報の取得は管理手段から行われる。このようにすれば、複数の移動体で取得される通信速度及び通信コスト情報を、管理手段において一括管理することができるため、好適にシステムを管理することが可能となる。
【0027】
本実施形態に係る通信制御システムの他の態様では、前記データのダウンロード速度から前記複数の通信網の通信速度を算出する算出手段を備え、前記第1取得手段は、前記算出された通信速度を、前記複数の通信網の通信速度情報として取得する。
【0028】
この態様によれば、ダウンロードした際の実測値が通信網の通信速度情報として取得される。このため、通信速度情報の正確性を高めることができる。従って、より適切なダウンロードの割り当てを行うことが可能となる。
【0029】
本実施形態に係る通信制御システムの他の態様では、前記移動体の位置を検出する位置検出手段と、前記複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報をエリア単位で記憶した記憶手段とを備え、前記第1取得手段は、前記移動体が位置する前記エリアに対応する前記複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報を、前記記憶手段から取得する。
【0030】
この態様によれば、移動体の位置は、例えばGPS(Global Positioning System)機能を有する位置検出手段によって検出される。他方で、複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報が、記憶手段にエリア単位で記憶されている。
【0031】
本態様では特に、複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報を取得する際に、移動体が位置するエリアに対応する通信速度及び通信コスト情報が記憶手段から取得される。このようにすれば、例えば地域の通信事情等に即した、より細かなダウンロード制御を行うことが可能となる。
【0032】
本実施形態に係る通信制御方法は、移動体において、通信速度及び通信コストが互いに異なる複数の通信網を用いてデータをダウンロードする通信制御方法であって、前記複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報を取得する第1取得工程と、前記データのサイズ及びダウンロード期限情報を取得する第2取得工程と、前記複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報、並びに前記データのサイズ及びダウンロード期限情報に基づいて、前記ダウンロード期限内にダウンロードを完了するように、且つダウンロードに要する前記通信コストが低くなるように、前記データのダウンロードを前記複数の通信網の各々に割り当てて実行する制御工程とを備える。
【0033】
本実施形態に係る通信制御方法によれば、上述した本実施形態に係る通信制御システムと同様に、複数の通信網を利用した効率的なデータのダウンロードが実行可能である。
【0034】
尚、本実施形態に係る通信制御方法においても、上述した本実施形態に係る通信制御システムにおける各種態様と同様の各種態様を採ることが可能である。
【0035】
本実施形態に係るコンピュータプログラムは上記課題を解決するために、コンピュータを上述した本実施形態に係る通信制御システム(但し、その各種態様も含む)として機能させる。
【0036】
本実施形態に係るコンピュータプログラムによれば、コンピュータを上述した本実施形態に係る通信制御システムとして機能させることができるため、複数の通信網を利用した効率的なデータのダウンロードが実行可能である。
【0037】
本実施形態に係る記録媒体は上記課題を解決するために、上述した本実施形態に係るコンピュータプログラムを記録している。
【0038】
本実施形態に係る記録媒体によれば、記録されているコンピュータプログラムによって、コンピュータを上述した本実施形態に係る通信制御システムとして機能させることができるため、複数の通信網を利用した効率的なデータのダウンロードが実行可能である。
【0039】
本実施形態に係る通信制御システム及び方法、並びにコンピュータプログラム及び記録媒体の作用及び他の利得については、以下に示す実施例において、より詳細に説明する。
【実施例】
【0040】
以下では、図面を参照して本発明の実施例について詳細に説明する。
【0041】
<第1実施例>
先ず、第1実施例に係る通信制御システムの全体構成について、図1を参照して説明する。ここに図1は、本実施例に係る通信制御システムの構成を示すブロック図である。
【0042】
図1において、本実施例に係る通信制御システム100は、例えばバスやタクシー等の移動体に搭載される電子広告システムとして構成されており、コンテンツサーバ300から配信されるコンテンツを表示可能である。
【0043】
本実施例に係る通信制御システム100は、第1無線通信部101と、第2無線通信部102と、データ再構成部103と、コンテンツリスト解析部104と、回線特性格納部105と、回線特性取得部106と、通信制御部107と、コンテンツ格納部108と、コンテンツ表示部109とを備えて構成されている。
【0044】
第1無線通信部101及び第2無線通信部102は、基地局201及び202、並びに通信網Nを経由して、コンテンツサーバ300とデータの送受信が可能とされている。尚、第1無線通信部101及び第2無線通信部102は、互いに異なる通信網を経由してデータを送受信する。具体的には、例えば第1無線通信部101は、Wi−Fiを用いてデータを送受信可能とされ、第2無線通信部は3Gを用いてデータを送受信可能とされる。
【0045】
データ再構成部103は、第1無線通信部101及び第2無線通信部102によって受信したデータをファイルとして再構成する。データ再構成部103は、受信したデータのうち、コンテンツファイルをコンテンツ格納部108へと送り、コンテンツリストをコンテンツリスト解析部104へと送る。
【0046】
コンテンツリスト解析部104は、本発明の「第2取得手段」の一例であり、コンテンツサーバ300から受信したコンテンツリストを解析し、ダウンロードすべきコンテンツのサイズ及びダウンロード期限情報を取得する。ここで取得された情報は、通信制御部107へと送られる。
【0047】
回線特性格納部105は、第1無線通信部101及び第2無線通信部102に用いられる各回線の通信速度及び通信コスト情報を格納している。
【0048】
回線特性取得部106は、本発明の「第1取得手段」の一例であり、回線特性格納部から第1無線通信部101及び第2無線通信部102に用いられる各回線の通信速度及び通信コスト情報を取得する。ここで取得された情報は、通信制御部107へと送られる。
【0049】
通信制御部107は、本発明の「制御手段」の一例であり、コンテンツリスト解析部104で取得されたダウンロードすべきコンテンツのサイズ及びダウンロード期限情報、並びに回線特性取得部106で取得された各回線の通信速度及び通信コスト情報に基づいて、コンテンツのダウンロードを各回線に割り当てる。尚、具体的な割り当て方法については、後に詳述する。
【0050】
コンテンツ格納部108は、データ再構成部103において構成されたコンテンツファイルを一時的に格納し、コンテンツ表示部109へと出力する。
【0051】
コンテンツ表示部109は、例えばモニタ等を含んで構成されており、コンテンツ格納部108から出力されたコンテンツファイルを表示する。
【0052】
次に、第1実施例に係る通信制御システムによるコンテンツのダウンロード処理について、図2を参照して説明する。ここに図2は、第1実施例に係る通信制御システムによるコンテンツのダウンロード処理を示すフローチャートである。
【0053】
図2において、第1実施例に係る通信制御システムの動作時には、先ず通信制御部107によって、ダウンロードすべきコンテンツが存在するか否かが判定される(ステップS101)。ダウンロードすべきコンテンツが存在するか否かは、コンテンツリスト解析部104によるコンテンツリストの解析結果から判定することができる。
【0054】
ダウンロードすべきコンテンツが存在する場合(ステップS101:YES)、通信制御部107によって、回線スケジューリング(即ち、コンテンツの各回線への割り当て)が行われる(ステップS102)。回線スケジューリングは、コンテンツリスト解析部104で取得されたダウンロードすべきコンテンツのサイズ及びダウンロード期限情報、並びに回線特性取得部106で取得された各回線の通信速度及び通信コスト情報に基づいて行われる。回線スケジューリングの具体的な方法については、後に詳述する。
【0055】
回線スケジューリングが終了すると、スケジューリングに基づき通信が行われる(ステップS103)。即ち、回線スケジューリングで割り当てられた回線を用いて、実際にコンテンツのダウンロードが行われる。
【0056】
コンテンツのダウンロード時間は監視されており、ダウンロード開始から所定期間が経過すると(ステップS104:YES)、再びステップS101からの処理が行われる。即ち、回線スケジューリングが再び行われる。このように、所定期間毎に回線スケジューリングを行うようにすれば、各回線の通信速度及び通信コストが変動した場合であっても、適切なダウンロードを実現することができる。
【0057】
上述したように回線スケジューリング及びダウンロードが繰り返し行われ、全てのコンテンツのダウンロードが完了すると(ステップS101:NO)、第1実施例に係る通信制御システムによる一連の処理は終了する。
【0058】
次に、第1実施例に係る通信制御システムによる回線スケジューリング処理について、図3を参照して説明する。ここに図3は、第1実施例に係る通信制御システムによる回線スケジューリング処理を示すフローチャートである。
【0059】
図3において、回線スケジューリング処理では、先ず通信制御部107によって、未スケジュールのコンテンツが存在するか否かが判定される(ステップS201)。具体的には、ダウンロードすべきコンテンツであって、回線スケジューリングが行われていないものが存在するか否かが判定される。
【0060】
未スケジュールのコンテンツが存在する場合(ステップS201:YES)、ダウンロードすべきコンテンツのうち、ダウンロード期限が最も近いコンテンツが1つ選択される(ステップS202)。続いて、第1無線通信部101及び第2無線通信部102で利用可能な回線及び時間帯の組(以下、スロットと呼ぶ)から、選択されたコンテンツのダウンロード期限より前の時間帯で、最も低コストであるスロットが選択される(ステップS203)。
【0061】
選択されたスロットには、ダウンロード期限が最も近いコンテンツとして選択されたコンテンツが割り当てられる(ステップS204)。続いて、データサイズを全て満たすように割り当てられたか否かが判定される(ステップS205)。即ち、割り当てられたスロットによって、コンテンツを全てダウンロードできるか否かが判定される。
【0062】
コンテンツのデータサイズを全て割り当てられなかった場合(ステップS205:NO)、再びステップS203から処理が行われる。これにより、選択されたスロットでダウンロードしきれなかったコンテンツの残りが、他のスロットに割り当てられることになる。一方、コンテンツのデータサイズを全て割り当てられた場合(ステップS205:YES)、再びステップS201から処理が行われる。これにより、割り当て済みとなったコンテンツの次にダウンロード期限が近いコンテンツに対するスケジューリングが行われることになる。
【0063】
上述したようにコンテンツの選択及び割り当てるスロットの選択が繰り返し行われ、全てのコンテンツの割り当てが完了すると(ステップS201:NO)、回線スケジューリング処理は終了する。
【0064】
以下では、上述した回線スケジューリング処理の具体例について、図4から図6を参照して説明する。ここに図4は、回線特性情報の一例を示すリスト図であり、図5は、コンテンツリストの一例を示すリスト図である。また図6は、ダウンロードすべきコンテンツの各回線への割り当て結果を示す概念図である。
【0065】
図4に示すように、コンテンツのダウンロードに利用可能な回線として回線X及び回線Yの2つがあるとする。回線X及び回線Yの1時間当たりの平均通信速度は、回線Xが5MB/h、回線Yが20MB/hであり、それぞれ固定である。また、回線Xの1時間当たりの通信コストは0円で固定である。一方、回線Yの1時間当たりの通信コストは時間帯によって変動し、1時間目が110円、2時間目が80円、3時間目が50円、4時間目が70円、5時間目が100円である。
【0066】
図5に示すように、コンテンツリストにおいて、ダウンロードすべきコンテンツがコンテンツA、コンテンツB、コンテンツCの3つ存在するとする。コンテンツAのデータサイズは40MBであり、ダウンロード期限は5時間以内である。コンテンツBのデータサイズ30MBであり、ダウンロード期限は3時間以内である。コンテンツCのデータサイズは18MBであり、ダウンロード期限は2時間以内である。
【0067】
以上の条件で回線スケジューリングを行う場合、先ずダウンロード期限が最も近いコンテンツは、ダウンロード期限が2時間以内のコンテンツCであるため、割り当て対象のコンテンツとして最初にコンテンツCが選択される。一方で、2時間以内に利用可能で通信コストの低いスロットは、通信コストが0円である回線Xの1時間目及び2時間目であるので、コンテンツCの割り当て先として、まずこれらが選択される。
【0068】
図6に示すように、選択された回線Xには、割り当て対象であるコンテンツCが、1時間目と2時間目に夫々割り当てられる。但し、回線Xは通信速度が5MB/hであるため、これら2スロット分を全て割り当てても、コンテンツCのデータサイズである18MBを全て割り当てることができない。よって、割り当て切れなかったコンテンツCの残りの8MBは、他のスロットへ割り当てられることになる。
【0069】
ここで、2時間以内に利用可能な残りのスロットは回線Yの1時間目及び2時間目であるが、通信コストを見た場合、2時間目の通信コストの方が低い。よって、コンテンツCの残りの8MBは、回線Yの2時間目に割り当てられることになる。これにより、コンテンツCの割り当ては完了する。
【0070】
続いて、割り当て済みのコンテンツCの次にダウンロード期限が最も近いコンテンツは、ダウンロード期限が3時間以内のコンテンツBであるため、割り当て対象のコンテンツとしてコンテンツBが選択される。一方で、通信コストの低い回線は、通信コストが0円である回線Xであるが、回線Xの1時間目及び2時間目は既にコンテンツCに割り当てられているため、利用可能なのは3時間目のスロットのみである。従って、コンテンツBにはまずこのスロットが割り当てられる。
【0071】
ここで再び、割り当て可能な5MBを全てコンテンツBに割り当てても、コンテンツBのデータサイズである30MBを全て割り当てることができない。よって、割り当て切れなかったコンテンツBの残りの25MBは、他のスロットへと割り当てられることになる。
【0072】
ここで、3時間以内に利用可能な残りスロットである、回線Yの1時間目、2時間目及び3時間目の通信コストを見た場合、3時間目の通信コストが最も低い。よって、コンテンツCは、回線Yの3時間目に割り当てられる。但し、回線Yは通信速度が20MB/hであるため、割り当て可能な20MBを全て割り当てても、コンテンツBの残りである25MBを全て割り当てることができない。よって、残りの5MBは、3時間目の次に回線コストの低い2時間目に割り当てられることになる。これにより、コンテンツBの割り当ては完了する。
【0073】
最後に、ダウンロード期限が5時間であるコンテンツAが、割り当て対象のコンテンツとして選択される。コンテンツAに対しては、利用可能なスロットの内、まず通信コストの低い回線Xの4時間目及び5時間目が割り当てられる。ここで再び、これら2つのスロットだけではコンテンツAのデータサイズである40MBを全て割り当てることはできない。よって、割り当て切れなかったコンテンツAの残りの30MBは、回線Yへと割り当てられることになる。
【0074】
ここで、回線Yの1から5時間目の通信コストを見た場合、帯域を全て割り当て済みの3時間目を除いて、4時間目の通信コストが最も低い。よって、コンテンツAは、回線Yの4時間目に割り当てられる。しかしながら、割り当て可能な20MBを全て割り当てても、コンテンツAの残りである30MBを全て割り当てることができない。よって、残りの10MBは、4時間目の次に回線コストの低い2時間目に割り当てられることになる。しかし2時間目においても、割り当て可能な7MB(即ち、コンテンツCの8MB及びコンテンツBの5MBが割り当てられた残りの帯域)を全て割り当てても、コンテンツAの残りである10MBを全て割り当てることができない。よって、残りの3MBは、2時間目の次に回線コストの低い5時間目に割り当てられることになる。これにより、コンテンツAの割り当ては完了する。
【0075】
以上説明したように、第1実施例に係る通信制御システム100によれば、ダウンロード期限内にダウンロードが完了できる範囲で、できるだけ通信コストが低くなるような回線の組み合わせが選択される。このような回線スケジューリングによれば、コンテンツのダウンロード期限を遵守しつつ、可能な限り通信コストを低減することが可能である。
【0076】
<第2実施形態>
続いて、第2実施例に係る通信制御システムについて、図7を参照して説明する。ここに図7は、第2実施例に係る通信制御システムの構成を示すブロック図である。尚、第2実施例に係る通信制御システムは、上述した第1実施例に係る通信制御システムと比べて一部の構成及び動作が異なるのみであり、その他の点については概ね同様である。このため、以下では第1実施例と異なる部分について詳細に説明し、重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0077】
図7において、第2実施例に係る通信制御システム100は、第1無線通信部101と、第2無線通信部102と、データ再構成部103と、コンテンツリスト解析部104と、回線特性取得部106と、通信制御部107と、コンテンツ格納部108と、コンテンツ表示部109と、移動体の外部に設けられる回線特性管理部400とを備えて構成されている。
【0078】
回線特性管理部400は、例えば複数の移動体に対応するサーバとして設けられており、図1で示した回線特性格納部105と同様に、第1無線通信部101及び第2無線通信部102に用いられる各回線の通信速度及び通信コスト情報を格納している。
【0079】
第2実施例では特に、回線特性取得部106が各回線の通信速度及び通信コスト情報を取得する際に、通信網Nを経由した回線特性管理部400との通信が行われる。即ち、各回線の通信速度及び通信コスト情報は、通信網Nを経由して回線特性管理部400から取得される。このようにすれば、複数の移動体で取得される通信速度及び通信コスト情報を、回線特性管理部400において一括管理することができるため、好適にシステムを管理することが可能となる。
【0080】
また、第2実施例に係る回線特性取得部106は特に、データのダウンロード速度の実測値に基づいて、各回線の通信速度情報を得ることもできる。即ち、回線特性取得部106は、本発明の「算出手段」としての機能も有している。このようにすれば、通信速度情報の正確性を高めることができるたね、より適切な回線スケジューリングを行うことが可能となる。
【0081】
尚、実測値に基づいて得られた各回線の通信速度情報を回線特性管理部400にアップロードすれば、他の移動体に搭載される通信制御システムにおいても、上述した効果を享受できる。
【0082】
以上説明したように、第1実施例に係る通信制御システム100によれば、回線特性管理部400が外部に設けられると共に、回線特性取得部106がダウンロードの実測値を各回線の速度情報として取得できるため、より好適にコンテンツのダウンロードを行うことが可能である。
【0083】
<第3実施形態>
続いて、第3実施例に係る通信制御システムについて、図8を参照して説明する。ここに図8は、第3実施例に係る通信制御システムの構成を示すブロック図である。尚、第3実施例に係る通信制御システムは、上述した第1実施例に係る通信制御システムと比べて一部の構成及び動作が異なるのみであり、その他の点については概ね同様である。このため、以下では第1実施例と異なる部分について詳細に説明し、重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0084】
図8において、第3実施例に係る通信制御システム100は、第1無線通信部101と、第2無線通信部102と、データ再構成部103と、コンテンツリスト解析部104と、回線特性格納部105と、回線特性取得部106と、通信制御部107と、コンテンツ格納部108と、コンテンツ表示部109と、位置検出部110とを備えて構成されている。
【0085】
位置検出部110は、本発明の「位置検出手段」の一例であり、GPS機能を用いて移動体の現在位置を検出できる。検出された位置情報は、回線特性取得部106へと送られる。
【0086】
第3実施例では特に、回線特性格納部105が、各回線の通信速度及び通信コスト情報をエリア単位で記憶している。そして、回線特性取得部106が各回線の通信速度及び通信コスト情報を取得する際には、位置検出部110で検出された位置に対応するエリアの各回線の通信速度及び通信コスト情報が、取得される。このようにすれば、例えば地域の通信事情等に即した、より細かなダウンロード制御を行うことが可能となる。
【0087】
尚、第3実施例についても、第2実施例のような回線特性管理部400を移動体外部に備えるシステム構成を適用することが可能である。
【0088】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う通信制御システム及び方法、並びにコンピュータプログラム及び記録媒体もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0089】
100…通信制御システム、101…第1無線通信部、102…第2無線通信部、103…データ再構成部、104…コンテンツ解析部、105…回線特性格納部、106…回線特性取得部、107…通信制御部、108…コンテンツ格納部、109…コンテンツ表示部、110…位置検出部、201,202…基地局、300…コンテンツサーバ、400…回線特性管理部、N…通信網。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体において、通信速度及び通信コストが互いに異なる複数の通信網を用いてデータをダウンロードする通信制御システムであって、
前記複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報を取得する第1取得手段と、
前記データのサイズ及びダウンロード期限情報を取得する第2取得手段と、
前記複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報、並びに前記データのサイズ及びダウンロード期限情報に基づいて、前記ダウンロード期限内にダウンロードを完了するように、且つダウンロードに要する前記通信コストが低くなるように、前記データのダウンロードを前記複数の通信網の各々に割り当てて実行する制御手段と
を備えることを特徴とする通信制御システム。
【請求項2】
前記移動体は、公共交通機関であり、
前記データは、前記公共交通機関における電子広告に用いられるデータである
ことを特徴とする請求項1に記載の通信制御システム。
【請求項3】
前記第1取得手段は、所定期間毎に前記複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報を取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の通信制御システム。
【請求項4】
前記移動体の外部において前記複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報を管理する管理手段を備え、
前記第1取得手段は、前記複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報を、前記管理手段から取得する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の通信制御システム。
【請求項5】
前記データのダウンロード速度から前記複数の通信網の通信速度を算出する算出手段を備え、
前記第1取得手段は、前記算出された通信速度を、前記複数の通信網の通信速度情報として取得する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の通信制御システム。
【請求項6】
前記移動体の位置を検出する位置検出手段と、
前記複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報をエリア単位で記憶した記憶手段と
を備え、
前記第1取得手段は、前記移動体が位置する前記エリアに対応する前記複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報を、前記記憶手段から取得する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の通信制御装置。
【請求項7】
移動体において、通信速度及び通信コストが互いに異なる複数の通信網を用いてデータをダウンロードする通信制御方法であって、
前記複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報を取得する第1取得工程と、
前記データのサイズ及びダウンロード期限情報を取得する第2取得工程と、
前記複数の通信網の通信速度及び通信コスト情報、並びに前記データのサイズ及びダウンロード期限情報に基づいて、前記ダウンロード期限内にダウンロードを完了するように、且つダウンロードに要する前記通信コストが低くなるように、前記データのダウンロードを前記複数の通信網の各々に割り当てて実行する制御工程と
を備えることを特徴とする通信制御方法。
【請求項8】
コンピュータを請求項1から6のいずれか一項に記載の通信制御システムとして機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のコンピュータプログラムを記録したことを特徴とする記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−38739(P2013−38739A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175639(P2011−175639)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】